森久保乃々「わ……」関裕美「私たち」松尾千鶴「アイドルやめ隊!」 (45)

乃々「親戚に誘われて……アイドルは一回だけって話だったんですけど……」

P「よし、わかった! じゃあ、あと一回だけな!」

乃々「この間もそう言っていたんですけど……あぅ」

千鶴「こんな衣装……少女趣味みたい……嫌じゃないけど……けど……」

P「お、来たか千鶴。衣装、似合ってるぞ」

千鶴「に、似合ってる? そんなわけない……そんなわけ……」

P「自分でも可愛いと思うだろ? その衣装」

千鶴「こんな少女趣味な衣装なんて、私には似合わないし、こんな格好で歌って踊るなんて、私には無理。だって、これ恥ずかしすぎるし! ハッ……もしかして、これってわざとですか?」

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P「よしよし。じゃあ2人でちょっと待っててくれるか? 俺はディレクターに挨拶してくる」

乃々「……はい」

千鶴「わかりました」

乃々「……」

千鶴「……」

乃々・千鶴「「あの」」

乃々「あ、ど、どうぞ……」

千鶴「いえ。どうぞお先に」

乃々「あ……ええと、千鶴ちゃんはアイドル……楽しい?」

千鶴「……わかりません」

乃々「え?」

千鶴「正直、騙されたとも思ってます」

乃々「そ、そうなん……ですか?」

乃々(千鶴ちゃんも、もしかして仲間?)

千鶴「こんな衣装を着たからって……中身が変わるわけじゃなし。可愛くなんて……なんて……」ブツブツ

乃々「ち、千鶴ちゃん?」

千鶴「ハッ! す、すみません。なんか私、思ったことをブツブツ言っちゃうクセがあって」

乃々「そ、そうなんですか」

千鶴「それで乃々ちゃんは? アイドルやってて楽しいですか?」

乃々「わ、私……アイドルやめたいんですけど……」

千鶴「え?」

乃々「私は静かに暮らしたいんですけど……」

千鶴「そうなんですか?」

千鶴(乃々ちゃん、アイドルやりたくないんだ)

千鶴「わかります。やった方がいいとか、可愛くなれるとか言われてやってみたけど、向いていないんですよね。本質的に」

乃々「そ、そうですー……一回だけって言われてたのに、うぅ……」

千鶴「私もね、友達に……千鶴はお硬い、真面目だってずっと言われてて……」

乃々「そ、そうなんですか」

千鶴「クラスの男子とかは、松尾はガミガミうるさくて可愛くないよなー……って大声で……」

乃々「……」

千鶴「あのプロデューサーさんに可愛いって言われて嬉しくて、もっと可愛くなれるって言われたけど……あの人、みんなにそう言ってスカウトしてるみたいなんです」

乃々「わ、私も言われました……」

千鶴「そうでしょう!? やっぱり……本気にしたのは間違い? でも……でも」ブツブツ

乃々「みんなに見られるのはいやなのに、わかってもらえなくて……はうぅ」

千鶴「可愛くないのにこんな衣装着ているのが、なんか恥ずかしいというか、勘違いしてるって思われるのは嫌なんです」

乃々「そ、そうだよね。こういう衣装、恥ずかしくて嫌ですよね」

千鶴「……ふふっ。なんだか少し、ホッとしました」

乃々「わ、私も……わかってもらえる人がいて、嬉しいんですけど……」

千鶴「じゃあやめちゃいましょうか。アイドル」

乃々「え? え?」

千鶴「今すぐは無理でも。いつか、いっしょに」

乃々「は、はいぃ……誰かがいっしょなら、心強いんですけど」

千鶴「決まり! 今後は計画を練ってやめられるようにがんばりましょう!」

乃々「お、おねがいします……」

千鶴(……でも乃々ちゃんは本当に可愛いし、向いてると思うんだけどアイドル……私と違って……)

乃々(ち、千鶴ちゃん頼もしいんですけど……可愛いし頼れるし、アイドル向いてると思うんですけど……)

関裕美「あ、あの、その話……私も入れて欲しいの」

乃々「え?」

千鶴「裕美ちゃん? 裕美ちゃんもアイドルやめたいの?」

裕美「ええ……というか、やっぱり可愛くないのにアイドルって無理があるわよね……」

裕美(私、目つきがきついし……)

千鶴(裕美ちゃんは、可愛いけど……)

乃々(目力が強くて、頼れる感じですけど……)

乃々「な、なんだか心強いです。ひとりだと、どうしていいかわからなかったけど……」

千鶴「そうね。仲間がいると、心強いですね」

裕美「みんなでがんばりましょう」

千鶴・裕美「「おー!」」

乃々「ぉー!」

~数日後 事務所にて~


千鶴「まずは、いかに私たちがアイドルに向いていないかというアピールが大事だと思うんです」

乃々「それは、はい……」

千鶴「乃々ちゃんは、アイドルと言えばなんだと思います?」

乃々「やっぱりアイドルは、歌が上手くないといけないと思うんですけど……」

千鶴「なるほど。大事な要素ですね」カキカキ

裕美「それも大事だけど、私は見た目が大事だと思うわ」

乃々「み、見た目……?」

裕美「ええ。可愛いとか、綺麗とか」

千鶴「ビジュアル面ということですね?」

裕美「それに加えて……その、表情というか」

乃々「表情……?」

裕美「笑顔が素敵な人って、魅力的だと思うのよね」

千鶴「なるほど。では、見た目と表情、と」カキカキ

乃々「千鶴ちゃんは、どう思うの?」

千鶴「私は……今二人が挙げた事の他に加えるなら、仕草という要素はどうかなと思います」

裕美「仕草?」

千鶴「可愛い娘って、なんていうか挙動のひとつひとつが可愛らしいじゃないですか」

乃々「な、なるほど……」

千鶴「私なんて……いつも背筋伸ばしてて、威圧的とか堅苦しいとか言われてて……」

裕美「わ、私もね、目がキツいってよく言われるし、上手に笑えないし……」

乃々「わ、わたしは……静かに暮らしていたいのに……」

千鶴・裕美・乃々「「「はあ……」」」

千鶴「いいえ。嘆息するために、私たちは集まったんじゃなかったわ」

裕美「そうよね。自分がいかにアイドルに向いてないか、それをアピールするんだったわよね」

乃々「あ、あの……今、言った事を上手にできる人とレッスンしてみるのはどうでしょう」

千鶴「え?」

乃々「あ、だからその……アイドルにとって大事な要素が、その人と比べていかにわたしたちが欠けているかわかったら、その……」

裕美「なるほど、プロデューサーも私たちがアイドルに向いてないとわかってくれるのかも」

千鶴「……いい考えかも知れませんね。表向きはちゃんとレッスンしつつ、私たちがアイドルに向いてないことをわからせるわけね」

裕美「じゃあ早速、明日から作戦を実行しましょうよ」

乃々「う、うん……」

千鶴「では、私が手配をしておくわね」

~翌日 レッスンスタジオ~


島村卯月「あ、みんなおはよう」

千鶴「おはようございます。今日は無理を言って、申し訳ありません」

卯月「いいんだよ。一緒にレッスン、がんばろうね」

裕美「卯月さん……やっぱり笑顔がすてきよね。うらやましいな……」

卯月「裕美ちゃんも乃々ちゃんも、今日はよろしくね」

裕美「あ、はい……おねがいします……」

乃々「……お、おはようございます」

P「ん? 今日は4人でレッスンか?」

千鶴「はい! 私たち、卯月さんに色々と教えていただきたくて」

P「感心だな。卯月、頼むぞ」

卯月「私なんかが教えることなんて別にないけど、みんなでがんばろうね」

若林智香「特訓と聞いてっ☆」

卯月「あ、智香ちゃん。良かったら私たちを応援してくれる?」

智香「いいよっ☆ みんな、がんばろー!」

裕美「それで……あの、早速なんですけど……どうすれば卯月さんみたいに、すてきな笑顔になれるんでしょうか?」

卯月「え?」

裕美「私、可愛くないから……笑顔もうまくできないし……」

卯月「……そうだね」

乃々「え、その、そんな……」

卯月「裕美ちゃん、いつもがんばって笑顔にしようとしてるよね」

千鶴「え?」

卯月「でもね、無理すると笑顔ってよけいに難しいよ? それよりは……そうだな、じゃあ裕美ちゃん。あ、乃々ちゃんと千鶴ちゃんも」

裕美「え?」

乃々「は……」

千鶴「はい?」

卯月「今から絶対に笑っちゃダメだよ。笑ったら……みんなにアイスをおごってもらうからね」

裕美「ええ?」

乃々「笑っちゃ……だめなんですか?」

千鶴「わ、わかりました」

卯月「そういえばね」

裕美「え?」

卯月「この間みんなで、事務所からデリバリーを頼んだんだけど」

裕美「はい」

卯月「うどん以外のメニューを頼む時、みんな肇ちゃん(藤原肇)に申し訳なさそうにして注文するの。ごめんね、肇ちゃんって言いながら」

裕美「? はい」

卯月「でも当の肇ちゃんは、なんでみんながそんなに申し訳なさそうにしてるのかわからないの」

裕美「そうなんですか」

卯月「……あれ?」

裕美「な、なんですか?」

卯月「面白くなかった?」

裕美「え? な、なにがですか?」

卯月「……?」

裕美「……?」

卯月「……あ、じゃあこれはまた別の話なんだけど」

裕美「あ、はい」

卯月「奈緒ちゃん(神谷奈緒)が、凛ちゃんを呼ぶ時にね」

裕美「はい」

卯月「なあ、おいって呼んでたんだよ!」

裕美「そうなんですか」

卯月「……あれ?」

裕美「えっ?」

卯月「面白くなかった?」

裕美「あの……」

卯月「……?」

裕美「……?」

智香「卯月ちゃん、卯月ちゃんっ☆ 卯月ちゃんのトークはほら、オチがない事で有名だからっ」

卯月「えー……面白くなかったのぉ……うーん」

裕美「え? あ、ご、ごめんなさい」

卯月「ううん。私こそ、笑っちゃいけないって言われると、余計におかしくなっちゃうことを体験させてあげようと思ったのに……ごめんね」

裕美「え? あ、そうだったんですか!?」

卯月「あー私、先輩としても年上としても失格だなー。裕美ちゃんを笑わせてあげられないなんて……」ズーン

裕美「あ、う、卯月さん。落ち込まないでください」

卯月「なーんて! ほんとは泣いてないよーん」

裕美「え?」

卯月「ないよーん」ニコニコ

裕美「……」プッ

智香「えへへっ☆ 裕美ちゃん、今……」

裕美「え? あ」

卯月「笑ったね。よーし、アイスおごってもらっちゃお」

裕美「今……その」

卯月「あんまりね、笑おう笑おうってしなくていいんだよ?」

裕美「そうなんですか?」

卯月「裕美ちゃんはほら……可愛いから」

裕美「でも私……目つきがキツいって……」

卯月「キツいっていうか、しっかりしてるよね。でもその力のある目が笑うと、とっても可愛い」

裕美「え?」

卯月「笑顔も、力強く感じるよ。ね、智香ちゃん」

智香「うんうんっ☆ 裕美ちゃんの笑った顔、とーってもイイねっ!」

裕美「ありがとう……ございます////」

千鶴「……なんだか特訓、うまくいきましたね」

裕美「ちょっと……嬉しかったな。卯月さんに誉められて」

乃々「裕美さんの笑顔……その、もりくぼも可愛いと思いました……」

裕美「……うん」

千鶴「次はカワイイ仕草を学ぶレッスンだけど……」

智香「がんばってね!」

ガチャッ

輿水幸子「やあ、みなさんのカワイクなりたいという希望、ボクが教えてあげてもいいんですよ」ドヤァ

裕美「……」

乃々「……」

千鶴「……あ、お願いします……」

千鶴「あの……幸子ちゃん?」

幸子「なんですか?」

千鶴「アイドルとしての特訓じゃなくて、これは……」

幸子「ヤレヤレ、見てわかりませんか? これは宿題です」

千鶴「宿題とアイドルとどういう関係が……」

幸子「書道が趣味なだけあって、千鶴さんは字が綺麗ですね。まあ、ボクも負けていませんけど」

千鶴「え? ええ」

幸子「最近はですね、授業にもタブレットとかノートパソコンを持ち込む子もいるんですよ。後で編集しやすいとか言って」

千鶴「そうなの? でもそういうのって、どうなのかしら」

幸子「ボクも千鶴さんと同意見ですね。こうして手書きで問題を解いたり、整理して書き直すのが頭に入るし、知識を自分のものにしていっているという実感があるじゃないですか」

千鶴「そうよね」

幸子「千鶴さん、字は綺麗ですけどもう少し崩してみてもいいんじゃないですか?」

千鶴「え?」

幸子「点の位置とか、末尾をほら……こうにょろ~んと」

千鶴「あ、ちょっといいわね」

幸子「こうすると書いている時も、後から見る時も、印象に残るんですよ」

千鶴「こう、かしら」

幸子「そうそう。千鶴さんの字は、書道で裏打ちされたしっかりした固い字だからちょっと崩しただけで、印象深くなりますね」

千鶴「そう……ね。うん」

幸子「アイドルとしての振り付けや仕草も、同じだと思うんですよ」

千鶴「!」

裕美ちゃんのスマイルは破壊力抜群

http://i.imgur.com/EBtDPDP.jpg

幸子「姿勢も良くて、しっかりした表情や動きの千鶴さんは、ちょっとだけそれを崩したらカワイクなれますよ」

千鶴「可愛く……私が……私が? 本当に……でも……」

幸子「もちろん、ボクの次ぐらいにですけどね!」

千鶴「ふ、ふふっ……そう、そうね」

幸子「ええ」

智香「おおっ。千鶴ちゃんも、何かを掴んだみたいだねっ☆」

乃々「な、なんだか取り残されてる気分ですけど……」

P「心配するな! 乃々!!」

乃々「ひ、ひうっ。も、もりくぼは特訓中ですのであしからず……」

P「乃々には練習より実践だ!!!」

乃々「え、え?」

智香「お仕事ですかっ?」

P「ああ! 『逃走中』という番組を知っているか?」

乃々「いちおうは……知ってますけど……」

智香「ハンターといわれる人たちから、一定時間逃げおおせたら賞金がもらえるんですよね?」

P「乃々の出演が決まった!」

乃々「え……」

智香「すごいね! よかったね、乃々ちゃんっ☆」

乃々「あの、もりくぼはそういう番組は心細くて……」

P「ウチの事務所からは乃々以外にも、茜(日野茜)と真尋(北川真尋)と亜季(大和亜季)、そして特別にマスタートレーナーさんも出演てくれる!」

智香「豪華ですねっ☆」

乃々「ちょ、ちょっと心強く思えてきましたけど……」

P「ただし!」

乃々「みなさんの陰で、もりくぼはこそこそ……え?」

智香「ただし?」

P「乃々以外の娘は、ハンター役だ!」

乃々「……え?」

P「これからすぐに、収録だあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

乃々「いーーーやーーーあーーーぁーーー!!!」

茜「誰よりも速く、どこよりも遠くまで追いかけますよ! ボルトーーー!!!」

真尋「直線距離なら、誰にも負けないよ!」

地獄トレーナー「亜季、エナンザムは使うなよ」

亜季「了解! エナンザム!!!」

乃々「もりくぼは……もりくぼは……もりくぼはしずかりくらしたいのにーーー………………」

智香「乃々ちゃーん! がんばれえーーーっっっ☆」

そ し て


卯月「裕美ちゃん、良かったよ。とってもいい笑顔だった」

裕美「はい。笑顔で、歌えたの」

幸子「なかなかカワイク歌えてましたよ」

千鶴「少しだけ……少しずつだけど自信が出てきたの。私でも可愛くなれるって。でも……幸子ちゃんの次に、ね」

智香「裕美ちゃんも、千鶴ちゃんも自信が出てきたねっ! アタシも応援できて嬉しいよっ☆」

P「問題は……乃々だな」

智香「え? 乃々ちゃんがどうかしたんですかっ?」

P「この間の逃走中……乃々、最後まで逃げ切って逃走成功したろ?」

智香「? はい」

P「そのせいか、なにやら妙な自信をつけたしまったみたいでな」

ともか「えっ?」

乃々「いざとなれば……もりくぼは逃げきれます。逃げられます。大丈夫……だいじょうぶ……だよね。あうぅ……」


お わ り

>>25画像、ありがとうございます。
関ちゃん、可愛い!

逃げ切れたのかよw

http://i.imgur.com/ANpwyJk.jpg
http://i.imgur.com/nyHi1v3.jpg
松尾千鶴(15)

http://i.imgur.com/RAa6yKn.jpg
http://i.imgur.com/LmjlgUT.jpg
若林智香(17)

以上で終わりです。
松尾千鶴ちゃん、少しずつ成長していっての堂々のSRおめでとう!

関裕美(14)
http://i.imgur.com/EBtDPDP.jpg

松尾千鶴(15)
http://i.imgur.com/LgOO0JZ.jpg

森久保乃々(14)
http://i.imgur.com/divShkI.jpg

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