穂乃果「美味しくなるおまじない」 (45)


穂乃果「お昼休みだ!」ガタッ

穂乃果「絵里ちゃんのとこ行っていまーす!」

海未「穂乃果! お昼はどうするんで……行ってしまいました」

ことり「あれ? 海未ちゃん聞いてない?」

海未「何をです?」

ことり「今日のお昼ご飯、穂乃果ちゃんは絵里ちゃんがお弁当作ってきてくれてるんだって」

海未「ああ、だから……」



穂乃果「♪~」



ほのえりです

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3年教室


絵里「……」


エリチャーン!


希「ほら。絵里ち来たで?」

絵里「……ええ」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「穂乃果……」

穂乃果「どこで食べる?」

穂乃果「教室? 中庭? それとも……」

絵里「屋上に行こうと思ってたんだけど、そこで良いかしら?」

穂乃果「うん!」

穂乃果「えへへ、昨日からずーっと楽しみだったんだー!」

絵里「そ、そう……」



希「……」

にこ「……」


にこ「……ねえ」

希「ん?」

にこ「なんであんなに表情が引きつってるの?」

希「……色々と事情があってん」

にこ「まさか、とは思うけど……」

希「……うん」





穂乃果「おっべんと、おっべんと♪」

絵里「……」

穂乃果「絵里ちゃんのおっべんと♪」

絵里(……言えない)



絵里(今朝に限って寝坊して作ってこれなかったなんて……!!)


絵里(どーして目覚ましが鳴らなかったの! 時計もケータイも両方!)

絵里(前日に仕込もちゃんとして、盛り付けのイメージもしっかり決めて!)

絵里(それなのに……)



穂乃果「絵里ちゃん?」

絵里「へ?」

穂乃果「大丈夫? なんだか顔色が……」

絵里「へ、平気よ。ちょっと考え事してただけだから」

穂乃果「ふーん。そっか!」



絵里(……起きた事を悔やんでも仕方ないわ)

絵里(とにかく、物が無い以上、気持ちだけはしっかりと伝えないと……!)


屋上


穂乃果「来たよ屋上!」

絵里「……」

穂乃果「さあ絵里ちゃん! 楽しみにしていた穂乃果のお弁当を……」

絵里「……」スッ


つ【ラン〇パック】


穂乃果「……えっ」

絵里「……」

穂乃果「これ、ラン〇パッ……え?」

穂乃果「絵里ちゃん、穂乃果のお昼ご飯は……」

絵里「これよ」

穂乃果「えっ、ほんとに?」

絵里「でもコレをそのまま渡すような真似はしないわ」

絵里「ここに一手間加えて、私から穂乃果への特別な一品にしてあげる」

穂乃果「特別?」

絵里「……好き」

穂乃果「え?」



絵里「好き好き大好き」

絵里「エリチカ、穂乃果だーい好き!」

絵里「ちゅっ」チュッ



穂乃果「」

絵里「はい。これで私の愛情がたっぷり詰まったパンに早変わりー///」

穂乃果「……」

絵里「な、なんちゃってー……///」

穂乃果「……」

絵里「……///」

穂乃果「……」

絵里「あ、あの、何かしらの反応が欲しいんだけど///」

穂乃果「……はっ!? 突然過ぎて頭が真っ白になっちゃってた!」


………
……



穂乃果「もー」モグモグ

穂乃果「寝坊しちゃったなら正直にそう言ってくれれば良いのに」

絵里「だって、楽しみにしててくれた穂乃果に……」

穂乃果「誤魔化される方がヤダよ」

絵里「ごめんなさい……」

穂乃果「でも、おかげで良い物が見れちゃったなー」

絵里「!///」

穂乃果「『エリチカ、穂乃果だーい好き!』」

絵里「……///」

穂乃果」「絵里ちゃんの愛が詰まってるからか、このラン〇パックもいつもより美味しい!」

絵里「も、もういいでしょ! あれは胸の中にしまっておいて!///」

穂乃果「はーい」


絵里「そろそろ戻りましょうか」

穂乃果「そうだね」

穂乃果「次の授業は何だったかなー」

絵里「……穂乃果」

穂乃果「なに?」

絵里「今日は本当にごめんなさい」ペコッ

穂乃果「ちょ! そこまでしなくてもいいよ!」

絵里「明日こそはちゃんとお弁当を……あっ」

穂乃果「?」

絵里「今日は金曜日だから、明日は土曜日……」

穂乃果「あ、じゃあお弁当は来週の月曜日にだね」

絵里「……」


絵里「ねえ穂乃果」

絵里「今晩、何か予定入ってる?」

穂乃果「ううん、特に無いけど」

絵里「じゃあ、ウチにお夕飯食べに来なさい!」

穂乃果「急! 話が急だよ絵里ちゃん!」

絵里「月曜日までなんて待っていられないわ!」

絵里「私は穂乃果に手料理を食べて欲しいの!」

穂乃果「おおー!」

絵里「それに!」

穂乃果「それに!?」

絵里「……今日は両親が帰ってこないから、妹と2人で少し心細くて」

穂乃果「そっちの理由の方が大きいってことは無いよね?」


2年教室


穂乃果「というわけで、絵里ちゃんのお家に晩御飯を食べに行くことになったんだー」

海未「そうですか」

穂乃果「むっ。反応薄くない?」

海未「これ以上どう反応しろと……」

ことり「ねえねえ穂乃果ちゃん!」

ことり「絵里ちゃんがパンにかけたおまじないって、どんなのだったの?」

穂乃果「え?」

海未「あ、それは私も気になりました」

ことり「どういう風にやったの?」

穂乃果「んー……」

穂乃果「……内緒!」

ことうみ「「えー」」

穂乃果「ごめんね!」

まだ続きます


あっという間に時間は過ぎて

高坂家


穂乃果「ただいまー!」

雪穂「おかえり、お姉ちゃん」

穂乃果「あれ? 雪穂、どこか出かけるの?」

雪穂「うん。ちょっとね」

穂乃果「そうなんだ」

穂乃果「実は穂乃果もこれから出かけるんだ」

雪穂「そうなの?」

穂乃果「うん!」

穂乃果「だから早く支度しなくちゃ!」


ドタドタドタ…


雪穂「騒がしいなぁ」

雪穂「……私も支度済ませなきゃ」


穂乃果「あ、そうだ。雪穂!」

雪穂「なに?」

穂乃果「今日の晩御飯、穂乃果の分はいらないからね」

雪穂「え、お姉ちゃんも?」

穂乃果「も?」

雪穂「私も今日は外で食べてくるから」

穂乃果「おー。流石姉妹だね!」

雪穂「何が流石なの……」


雪穂「じゃ、行ってきまーす」

穂乃果「気をつけてねー」

雪穂「お姉ちゃんもねー」


穂乃果「……」


穂乃果「この時間から出掛けて、晩御飯はいらない」

穂乃果「しかも普段とはちょっと違ったオシャレまでして」

穂乃果「……なるほど」

穂乃果「雪穂にも“そういう人”が出来たのかなー」

穂乃果「こういう時、姉はどうしてあげれば良いのか絵里ちゃんに相談してみよ」


絢瀬家


ピンポーン


『はーい!』


穂乃果「お。この声は亜里沙ちゃんだね」


ガチャ!


亜里沙「どちら様で……穂乃果さん?」

穂乃果「こんにちは、亜里沙ちゃん!」

亜里沙「……あ、分かった!」

亜里沙「ちょっと待ってて下さいね! すぐに呼んで来ますから!」

穂乃果「?」

亜里沙「雪穂ー! 穂乃果さんが来たよー!」

穂乃果「えっ、雪穂!?」


リビング


穂乃果「……」

雪穂「……」


絵里「ゆっくりしててね」

絵里「今、お茶を淹れてくるから」

亜里沙「私も手伝う!」


穂乃果「……」

雪穂「……」


穂乃果「雪穂の出掛ける先って、絵里ちゃんの家だったんだね」

雪穂「お姉ちゃんの方こそ、亜里沙の家だったんだ」


穂乃果「……」

雪穂「……」


ほのゆき((何だか分からないけどなんか気まずい……!!))


穂乃果「雪穂は、亜里沙ちゃんに誘われたんだよね?」

雪穂「うん」

雪穂「今日はお姉さんと2人で寂しいから、一緒に晩御飯食べに来て、って」

雪穂「お姉ちゃんは?」

穂乃果「穂乃果は絵里ちゃんの手料理を食べに」

雪穂「そっ」

穂乃果「こんな偶然あるんだね」

雪穂「まぁ、姉妹がそれぞれ友達なら、ありえないことじゃないかな」

雪穂「すっごい偶然なのは同意するけど」

穂乃果「流石は姉妹!」

雪穂「……うん、流石かも」


絵里「お待たせ」

亜里沙「お待たせー」

穂乃果「わっ! チョコレートが山盛り!」

絵里「全部私のとっておきよ?」

穂乃果「そんなの食べていいの?」

絵里「もちろん」

穂乃果「ありがとー!」ギュー」

絵里「もう、大袈裟なんだから」ナデナデ

雪穂「……」



雪穂(そう言えば、さっきはスルーしちゃったけど)

雪穂(“手料理を食べに”って、そこはかとない親密感が)

雪穂(ただご飯を食べに来るだけならそんな言い方しないだろうし)

雪穂(もしかして、お姉ちゃんと絵里さんって……)



亜里沙「雪穂?」

雪穂「!? な、なに?」

亜里沙「食べないの?」

雪穂「う、ううん! いただきます!」

雪穂(今は考えるのやめとこ)

つづきます


絵里「それにしても凄い偶然よね」

絵里「妹が連れてきた友達が、姉が連れてきた友達の妹だなんて」

穂乃果「やっぱりそう思うよね」

亜里沙「私、穂乃果さんは雪穂のことを連れ戻しに来たのかと思っちゃいました」

亜里沙「やっぱりお泊りはダメだったのかな、って」

穂乃果「お泊り?」

穂乃果「雪穂、泊まるつもりだったの?」

雪穂「あれ? 言ってなかった?」

穂乃果「言ってないよ!」

雪穂「お母さんからも聞いてない?」

穂乃果「聞いてないよ!」


穂乃果「ずるい! 穂乃果もお泊りしたい!」

穂乃果「絵里ちゃん、良いでしょ?」

絵里「私は構わないけれど、雪穂ちゃんみたいにちゃんとご両親の許可を貰わないとね?」

穂乃果「うん!」

穂乃果「それじゃ、一旦家に帰って色々と支度してくるね!」


ドタバタ バタバタ…


雪穂「すみません、騒がしい姉で……」

絵里「いいのよ。穂乃果らしくて良いじゃない」

絵里「……あっ」

雪穂「?」

絵里「ちょっと失礼」スクッ


スタスタスタ…


雪穂「……」

亜里沙「おしっこかな?」

雪穂「亜里沙、はっきり言い過ぎ……」
 


玄関


穂乃果「よーし。それじゃあひとっ走り……」

絵里「穂乃果」

穂乃果「あ、絵里ちゃん。なーに?」

絵里「晩御飯、何が食べたい?」

穂乃果「穂乃果が決めていいの?」

絵里「ええ。そのために招待したんですもの」

穂乃果「んー……」

穂乃果「……何でも良いよ!」

絵里「何でも?」

穂乃果「うん。何でも」

絵里「そう……」

絵里「穂乃果は、私の料理に興味なんてないのね……」

穂乃果「え!? ち、違うよ!」

穂乃果「穂乃果は絵里ちゃんが作ってくれた物なら何でも嬉しいから、それで……」

絵里「……ふふっ」

穂乃果「へ?」

絵里「ごめんなさい。ちゃんと分かってるから大丈夫よ」クスクス

穂乃果「もー! びっくりさせないでよー!」
 


絵里「じゃあ、メニューは私に任せてくれるのね」

穂乃果「うん。お任せします」

絵里「任されました」

穂乃果「それじゃ穂乃果はちょっと行ってくるね」

絵里「気をつけてね」

穂乃果「……えへへ」

穂乃果「玄関でこういう会話するのってさ、なんか……」

絵里「……!」

穂乃果「どうする? いってらっしゃいのチューとかもしておく?」

絵里「……暗くならない内に早く行ってきなさい」

穂乃果「はーい」


ガチャッ バタンッ


絵里「もう、穂乃果ったら……///」

絵里「……しておくべきだったかしら///」
 

 

絵里「さあ、それじゃ早速……」

亜里沙「お姉ちゃん、もうお料理始めるの?」

絵里「ええ、そのつもりだけど」

亜里沙「あのね、今日は私もお手伝いして良いかな?」

絵里「それは構わないけど……」

絵里「せっかく雪穂ちゃんが来てるんだから、2人でゆっくりしてて良いのよ?」

亜里沙「それも良いんだけど……」

亜里沙「私も雪穂のこと、オモテナシしてあげたいなーって」

亜里沙「……お姉ちゃんたちみたいに」

絵里(!? さっきの見られてた!?///)

 
亜里沙「ねえ、良いでしょ?」

絵里「……そうね」

絵里「じゃあ今夜は、絢瀬姉妹から高坂姉妹へ、特別な夜をプレゼントしましょう」

亜里沙「うん!」










雪穂「……」キキミミ

雪穂(……と)

雪穂(特別な夜って何!? ナニ!?///)

雪穂(高坂姉妹、まさかの同じ屋根の下で揃って貞操の危機……!?///)
 

 
高坂家


穂乃果「よし! これで準備オッケー!」

穂乃果「本日3度目の、いってきまー……」

海未「御免下さ……」


ほのうみ「「……」」


穂乃果「海未ちゃん?」

海未「穂乃果?」
 

 
海未「絵里の家に行っているのではなかったのですか?」

穂乃果「うん。ちょっと荷物を取りに戻って来たんだ」

穂乃果「そうそう! 聞いてよ海未ちゃん!」

穂乃果「穂乃果ね、今日は絵里ちゃんの家にお泊りするんだー」

海未「お泊り……」

穂乃果「うん!」

穂乃果「それで、海未ちゃんはこんな時間にどうしてうちに?」

海未「私はこれを届けに来たんです」スッ

穂乃果「? なにこれ?」

海未「週明けの小テストの対策集です」

穂乃果「えっ」

海未「おば様に渡しておくつもりでしたが、良いタイミングに来たみたいですね」

海未「これも持って行って、絵里にしっかりと見てもらって下さい」

穂乃果「ええー!?」
 

 
穂乃果「い、いらな……」

海未「何ですか?」キッ

穂乃果「うっ……」

穂乃果「あ、ありがたく、頂戴します……」

海未「はい」

穂乃果「とほほ。今夜は絵里ちゃんとオールナイトの予定が……」

海未「すればいいじゃないですか。オールナイト勉強会」

穂乃果「海未ちゃんの鬼!」

海未「何とでも言って下さい」

穂乃果「ちぇー……」
 

 
穂乃果「あ、そろそろ行かなきゃ」

海未「すみません、引き留めてしまって」

穂乃果「ううん」

穂乃果「海未ちゃん、わざわざありがとう」

穂乃果「流石にオールナイトは無理だけど、ちゃんとやるからね」

海未「はい。そうしてくれると作った甲斐があります」

穂乃果「それじゃ!」

海未「ええ。また練習で」


タッタッタッタッ…


海未「……はぁ」

海未「会わないように来たのに、なんて間の悪い……」

海未「……」

海未「帰りましょうか」
 

 
絢瀬家 リビング


雪穂「……」


亜里沙「お姉ちゃん、次は?」

絵里「次はそれを……」


雪穂(キッチンに並んで立つ金髪美人姉妹)

雪穂(……ここ日本だよね?)


ピンポーン


雪穂「!」

絵里「穂乃果かしら?」
 

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