ラブライブSS
※どろどろ注意
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絵里「ねぇ、希」
希「んーなんや絵里ちー?」
絵里「私、海未のことが好きなの」
希「そんなん知ってるでー?」
絵里「えぇっ!? 嘘でしょ?」
希「というか最近の絵里ちと海未ちゃん見てたらわかるやろ?」フフ
絵里「うっ……地味に恥ずかしいわね」
希「絵里ちなら大丈夫やって! 脈流ドクドクやよ?」
絵里「だって……失敗したら恥ずかしいじゃない」
希「しゃあないなぁーカードで占ってあげようか?」
絵里「それで死神とか愚者は出てきたらどうするのよ……」
希「100%……とは言わんけど99%以上は成功すると思うけどなー」
絵里「うぅ……私はなんてへたれなのかしら……」
希「絵里ちはここぞというときに押せへんなぁ」
絵里「しょうがないじゃない! 怖いんだもん!」グスッ
希「わかったから! わかったから潤んだ瞳で見つめんといて!?」
――――――
ことり「大丈夫だって! 海未ちゃんなら行けるよ! ねぇ穂乃果ちゃん?」
穂乃果「……そうだね、海未ちゃんは綺麗だから絵里ちゃんとはお似合いだよっ?」
海未「恥ずかしながら私には勇気がありません……」
ことり(絵里ちゃんは受け手だからなぁ……)
穂乃果「可能性感じたなら……行ってみるべきだよ!海未ちゃん!」
ことり「うんっ♪」
海未「……私が絵里とお似合い……あああぁっ恥ずかしくて顔から火が出そうです……」
穂乃果「絵里ちゃんアタックです!」
ことり「顔に出やすいからもう皆わかってると思うんだけど……」
海未「もっと恥ずかしくなりました……やっぱり来月まで……」
穂乃果「ダメじゃないけど……海未ちゃんそれで後悔しない?」
海未「何を……ですか?」
ことり「こうしてる間に絵里ちゃん……盗られちゃうかも」
ことり(まぁ、有り得ないと思うけどねっ)
海未「……絵里が他の人に盗られる……?」
穂乃果「……希ちゃんとかいっつも絵里ちゃんの近くにいるからね~」
ことり「それにただでさえ、絵里ちゃんはモテちゃうからっ♪」
海未「分かりました……絵里にアタックします!」
海未「絵里ちゃんアタックです!」ビシッ
穂乃果「……頑張ってね海未ちゃん」
ことり「ファイトー♪」
――――――
希「絵里ち、このままだと後悔するよ?」
絵里「えっ?」
希「海未ちゃんの周りには、後輩もたくさんいるし」
希「靴箱にラブレターなんてたっぷりはいってるで?」
絵里「海未が他の人と……」
希「……穂乃果ちゃんやことりちゃんだって十分魅力的だと思わない?」
希(穂乃果ちゃんやことりちゃんならともかく、後輩はあり得んけど)
絵里「忘れてたわ……海未は相当モテてるわね」
希「……絵里ちが本当にやりたいことをやればいいと思う」
希「…………でも後悔だけはしたらダメやよ?」
絵里「ありがとう……希! 私頑張ってみるわ!」
希「ファイトや! 絵里ち!」
――部室――
絵里「きょ、今日は皆居ないのね?」
絵里(希が手配してくれたのかしら)
海未「え、えぇ皆もう帰ってしまったみたいで」
海未(穂乃果とことりには感謝しなければ)
絵里「海未!」ザッ
海未「絵里!」バッ
絵里「……」
海未「……」
絵里「海未から言いたいことがあるんじゃない?」
海未「いえいえ、絵里こそお先にどうぞ」
――部室外――
希(あぁああ何やっとんのや! コントか!)
穂乃果(……じれったいなぁ……!)
ことり(ダメだあの二人……受け受けすぎて……)
希「お?」
穂乃果「ん?」
ことり「え?」
希「なるほど」
ことり「希ちゃんもかー」
穂乃果「おんなじ目的みたいだねっ」
希「絵里ち……ヘタレすぎるで……」
穂乃果「海未ちゃんもだよぉ……穂乃果に勉強教えるときはあんなに厳しいのに」
ことり「あはは……」
絵里「海未は……好きな人とか居る?」
海未「……居ますよ」
絵里「へ、へぇ、海未が好きになるなんてその人は幸せね……」ショボン
海未「そういう絵里はいるんですか……?」
絵里「……えぇ、いるわ」
海未「絵里ほど魅力的な女性に好かれた方は幸福ですね……」ショボン
絵里「海未に好かれた方が幸せよ!」ダンッ
海未「絵里に好意を持たれた方のほうが幸福です!」ダンッ
絵里「……強情ね……」
海未「同感です……!」
ことり(なんで居合の試合みたいになってるの……)
穂乃果(……)
希(……)
ことり(二人とも真剣に……)
絵里「私は……私は園田海未を好きなのよ!」
海未「私だって……私だって絢瀬絵里が好きなんです!」
絵里「どうやったって……!」
海未「どうしてこんなことに……!」
絵里「…………ん?」
海未「…………え?」
絵里「海未、リピート・アフター・ユー」
海未「ノーノー、絵里こそリピート・アフター・ユー」
絵里「私、海未好き」
海未「私、絵里好き」
えりうみ「わぁお……」
ガラッ!
穂乃果「やったー! 海未ちゃんおめでとー!」
希「やったやん! 絵里ちおめっと!」
海未「ほ、穂乃果!? それに希まで!」
絵里「希!? ずっと見てたの!?」
ことり(あ、逃げよう……)ササッ
希「バッチリ見てたで! いやー焦ったわぁ」
海未「……何処から見ていましたか?」
穂乃果「もー最初からだよっ? 喧嘩すると思ってびっくりしちゃった」
絵里「海未」
海未「はい」ピシャッ
希「時に海未ちゃん、どうしてドア閉めるんや?」
穂乃果「絵里ちゃん、顔が怖いよ……?」
絵里「覗き見してたマナーのなっていない希はしつけないと」ニコ
海未「人の恋沙汰を盗み見るような輩はたたっ斬らないと」ニコ
希「ウチらだけやないって! ことりちゃんも……」
穂乃果「そうだよ? ことりちゃんだって……!」
海未「ことり? 居ないじゃないですか」
絵里「人に罪をなすりつけようなんて……」
希「待って! 待って二人とも!」
穂乃果「ストップ! ことりちゃん助けてー!」
ほののぞ「うわああああああああぁっ!?」
なんやかんやあって、絵里ちと海未ちゃんは付き合うことになった。
絵里ちが幸せならウチも幸せや。
なんだか大変だったけど、海未ちゃんと絵里ちゃんが付き合うことになったよっ。
海未ちゃんが幸せだったら穂乃果も幸せなんだっ!
でも……本当は……
ダメや考えたら……。
ダメだよ、そんなこと……。
2週間も経てば、自然とギクシャク感は無くなっている。
にこ「へぇ、まさかあんたたちが付き合うなんてねー」
真姫「相変わらず両方共へたれだったのね」
にこ「真姫ちゃんは~もっと素直になればいいにこ☆」
真姫「ふんっ、にこちゃんが余裕を持っていられるのは今のうちよ」
凛「絵里ちゃんと海未ちゃん幸せそうだにゃー!」
花陽「そ、そうだね!」
凛「凛もかよちんといるから幸せ~」スリスリ
花陽「わわっ、人前だよ凛ちゃん!」
海未「明日はショッピングに行きたいのですが、いいでしょうか」
絵里「えぇ、いいわよ。私もその時間を空けておくわ」
海未「お母様以外の人と着物を見に行ってみたいと思いまして」
絵里「あら、私がお母様以外で初めてなのかしら、嬉しいわ」
穂乃果「……ことりちゃんケーキ食べに行く?」
ことり「うんっ♪」
穂乃果「海未ちゃんも一緒に……」
海未「すみません穂乃果。先に絵里との約束があるので……」
穂乃果「うん、また今度行こうねっ」ズキッ
希「……ウチ教室に忘れ物あったから、それを取ってから帰るね」ガラッ
希(胸が痛いなぁ……あんな絵里ちの幸せそうな顔……見たことなかったわ……)
希(でも海未ちゃんなら幸せにしてくれるやろ……)
希「またか……」
絵里ちの机や椅子は画鋲などが無造作に散らばっている。
良くある嫉妬ってやつやな。1年生の時から絵里ちに嫉妬する人は多かった。
希「ウチが守れば問題ないで……」ヒョイヒョイサッサッ
希「今日頑張りすぎやろ……」
――――清掃終了――――
希「ふぅ、帰ろか……」
ザーーーーーーーーーー
希「雨やな…………」
希「傘……部室にあるかもしれへん」
希「……誰もいない……雨降ってきてるししゃあないか……」
希「教室にも傘はない……ん?」
希「何してるのかな? 君たち」
絵里ちの机の前、なんかしよーとしている人が3人位。
「なんでもない」「あんたには関係ない」
希「そんなん言うても絵里ちはウチの……」
ウチの……なんやろ……
希「ともかく、自分ら卑怯なことはしないで自分の輝けるところで見返したほうがええで?」ニコッ
行為を恥じたのかわからんけど、皆逃げていった。なんだかんだでこれも数十回目。
帰り道、雨に打たれながらずっと考えていた。
希「ウチって絵里ちの……なんなんや……?」
希「少なくとも……恋人ではないのは確かやな……ふふ」
自嘲めいた笑いやった。
神社についた時、よく見る制服の子がお参りをしていた。
希「傘ささんでお参りしても風邪引くだけやよー?」
そこにいたのは……
穂乃果「あぁ、希ちゃん。ずっと待ってたよっ♪」ニコッ
ずぶ濡れでにこにこしている穂乃果ちゃんが……居た。
希「ほ、穂乃果ちゃん……どうしたん?」
穂乃果「お参りしてたの」
希「こんなずぶ濡れで?」
穂乃果「どうしてもさ、叶えたい夢あるんだよね」
希「……」
穂乃果「優しい希ちゃんなら聞いてくれるかな?」
希「いいけど……まずはウチの家には入ろ?」
希「風邪引いたら心配かけるで?」
穂乃果「わかった……」
――家――
希「まずは、お茶でも……」コトッ
穂乃果「ありがと、希ちゃん」
希「それで、困ったこと……何かあったん?」
穂乃果「ううん、嬉しくて嬉しくて……嬉しすぎて困ってる」ポロッ
希(涙……)
穂乃果「大好きな海未ちゃんが、幸せそうに笑っていてくれて嬉しいの」ポロポロ
穂乃果「今まで見たことのない、素敵な笑顔なの……」
穂乃果「でも……隣にいるのは穂乃果じゃないんだよね」
穂乃果「そうだよ、海未ちゃんの隣にいるのは絵里ちゃん」
希「もう……いいやろ? 穂乃果ちゃん」
穂乃果「穂乃果じゃない……穂乃果じゃない……あはは」
希「やめるんや……穂乃果ちゃん……」
穂乃果「知ってたんだ。それで応援してたんだ。叶うはずのない夢を」
穂乃果「私って……私って本当にさ……」
希「やめて!!!!」
希「ごめん……大声出して……」
希「穂乃果ちゃんの気持ちもわかるよ、それでも」
希「好きな人の幸せそうな顔……奪えないやろ……?」
希「仮に絵里ちがいなくなって……海未ちゃんが穂乃果ちゃんのところに来て……」
希「幸せそうな笑顔……向けてくれなかったら……それこそ……」
穂乃果「うん。穂乃果もそう思う」
希「それなら……!」
穂乃果「でもさ、穂乃果馬鹿だから……つい隣に海未ちゃんが居るような気がするんだ」
穂乃果「誰よりも近くにいてさ、誰よりも長い時間を過ごしたのに報われないなんて……悲しすぎないかな……希ちゃん?」
希「そ…………それ……は……」ズキ
穂乃果「だからって絵里ちゃんを排除する……なんて穂乃果は考えてないから心配しないでね?」
穂乃果「絵里ちゃんもμ’sの仲間だから」
穂乃果「ところでさ、希ちゃん」
穂乃果「さっきから苦しそうだけど大丈夫?」ウフフ
希(……この穂乃果ちゃんは……なんかわからんけどヤバイ……)
希「大丈夫。心配させてしまってごめんね」テヘ
穂乃果「……唐突だけど希ちゃん……悩みを話せる友達っているかな?」
希(絵里ち……が真っ先に浮かんだけど……今は……)
希(にこっち……いや真姫ちゃんとか巻き込んで大事にしたくはない……)
希「…………いないで」
穂乃果「ちょっと意地悪でごめんね。責めたいわけじゃなくてさ……」
穂乃果「……今日一日、穂乃果が希ちゃんの玩具になってあげる」
希「玩具……?」
穂乃果「言い方が悪かったかな……穂乃果が話し相手になるよ?」
希「話し相手に……?」
穂乃果「うん。希ちゃん専用の話し相手に」
穂乃果「希ちゃんは誰にも悩みを打ち明けないし……」
穂乃果「多分問い詰めても適当にはぐらかしちゃうでしょ?」
穂乃果「だから今日一日……後4時間くらいかな? 全部ぶちまけてもいいんだよ?」
穂乃果「もし……忘れて欲しいなら穂乃果は全部忘れてあげる……どう?」
希「……でもそれだと穂乃果ちゃんに得は……」
穂乃果「そういうと思ってさ、1日……半日くらい穂乃果の言うこと何でも聞いてほしんだ」
穂乃果「……ダメかな?」
希(…………そんなことして、もし……最悪の場合は……)
希「……何でもってのはちょっと気になるなぁ……」
穂乃果「当然無理なことはやらなくてもいいよ」
穂乃果「穂乃果も無理難題を頼むのは……嫌だからね」
希(ウチにもう守るものはなんもない……それに……)
希(後3時間半……いいんやろか……)
穂乃果「……希、遠慮するなんて貴女らしくないわね」ニコッ
希(……あ……絵里ち…………)
穂乃果「穂乃果は代替品でいいよ、……希」
希(今、耳を貸したら……でも……でも…………っ)
希「あ……穂乃果……ちゃん……っ」ギュッ
穂乃果「…………頑張ったわね、希」ヨシヨシ
希「絵里ち……絵里ち…………ずっと一緒に居たかった」
希「とられたくなかったんや……」
絵里ちの名前を呼びながら、穂乃果ちゃんに縋ってしまった。
年長者の威厳なんてなんもない。
「絵里ち……ずっとずっと……一年生の時から……好きやったのに……」
穂乃果ちゃんがどういう心境で絵里ちの真似をしてくれたのかはわからなかった。
ただ、だまって笑みを浮かべながら、ハグしてくれた。
涙が止まらない。溜めてたものが全部決壊しちゃった。
「希、貴女は優しいから……ありがとね」
甘い言葉が脳内に溶けていく。愛情の飢えが満たされていく。
徐々に境界線が見えなくなっていた。心のタガが外されて行くのを……感じた。
偽りの誘う言葉。偽りの人物像、変換される想い出。
暴力的なまでに、穂乃果ちゃんに……絵里ちにぶつけた。
穂乃果「最後のキスだからね、希」
希「わかった……絵里ち……」
最後に長いキスをして、夢の様な時間は終わった。
穂乃果「……気が済んだかな、希ちゃん」
その言葉でようやく我に返った。
希(あ……ウチ……最低やったな……ほんま救えない……)
希「あ、う、穂乃果ちゃん……ごめんな?」
穂乃果「いいよ、希ちゃんの気持ちわかってるから」
穂乃果「穂乃果のお願いなんだけどさ……」
穂乃果「明日……もう今日になっちゃうのかな」
穂乃果「穂乃果とデートして欲しいんだ」
希「……ウチでいいならいいよ、穂乃果ちゃん」
穂乃果「……きっと希ちゃん。幻滅するかも」
希「それをいうなら……ウチは……」
希「穂乃果ちゃんの中に絵里ちを見てた……」
希「本当に……ごめんな……!」
穂乃果「ううん、全然気にしないでいいよ?」
穂乃果「だって、穂乃果も――――」
穂乃果「――――穂乃果も同じこと頼むんだから」ニコッ
その笑顔はどこか狂気じみていた。
ウチを見ているようで、見ているのはウチじゃなかった。
――次の日――
希「穂乃果ちゃん遅いなぁ」
穂乃果「あー待ったー? ごめんねちょっと楽しみだったから」
希「え、えぇ、待ちましたよ穂乃果……」
希「こんなかんじで大丈夫?」
穂乃果「ん~もうちょっと凛々しくお願いね♪」
希「穂乃果、それでは行きましょうか」キリッ
穂乃果「うんっ、楽しみにして昨日眠れなかったんだ~」
希「ウチ……じゃなくて私もそうでした」
穂乃果「今日はいっぱい遊ぼうね!……海未ちゃんっ♪」
有り体に言ってしまえば、穂乃果ちゃんはウチを見ていなかった。
希「穂乃果、ほっぺたにクリームがついていますよ」
穂乃果「えへへ、ありがと海未ちゃんっ」
ウチは希。東條希は決して園田海未ではない。
希「ふふ、穂乃果は本当にそそっかしいですね」
穂乃果「え~海未ちゃんだって結構抜けてるじゃん!」
……簡単な事やった。穂乃果ちゃんはとっくに……
穂乃果「穂乃果はねー海未ちゃんのことがすっごく大好きなんだよっ」チュッ
希「えぇ、私も好きです。……穂乃果」ギュッ
穂乃果ちゃんはとっくに擦り切れてた……
穂乃果「ねぇ、海未ちゃん……」
希「……どうしましたか?」
穂乃果「また……同じことをお願いしてもいいかな……」
希(ここで断ったら……穂乃果ちゃんは…………)
希(でも……こんなおままごとを続けても……悲しくなるだけやん……)
希「……いいよ、また一緒に遊ぼう……」
穂乃果「ありがとう! 海未ちゃん! だーいすきっ!」
希(これで良かったんやろか……)
希(ウチが……ウチが穂乃果ちゃんの心、守ってあげないと……)
希(……たとえウチが……海未ちゃんの代わりでも……)
希(このとびきりの笑顔見れるんやったら……悪くないよね……)
――次の日学校――
希(昨日考えすぎたせいで……眠れんかった……)
にこ「希ー? あんたが授業中に寝そうになってるなんて珍しいわね」
希「にこっちかー真姫ちゃんどどうや?」
にこ「可もなく不可もなくって感じかな」
希「……ウチも応援してた甲斐があるってもんやなー」
にこ「ふふ、感謝してるわよ。真姫ちゃんの様子見てくるわ」
希「通い妻やん」ニヤ
にこ「はいはい、行ってくるわね」
希「余裕やなぁ……」
絵里「希ー? 体調悪そうだけど……?」
希(絵里ち…………もう……その優しさに触れる資格はウチにない……)
希「東條って呼んでくれませんか……絢瀬さん……」
絵里「えっ、寝ぼけてるの、希……?」
希「……私は真面目です。絢瀬さん……」
絵里「そんな……どうして急に冷たくするのよ……希……」
希「……」
希(答えれるわけが……ない……)
絵里「一年生の時からずっと一緒に……」
希(……今はもう一緒やない……)
絵里「!? 希……その顔怖いわよ」
希(どんな表情してるんやろ……なんか爆発してしまいそうや……)
希「……すいません絢瀬さん。体調が悪いので帰らせてもらいます……」ガタッ
5分後
にこ「あれ、希は?」
絵里「帰ったわ……」
にこ「体調悪そうだったからね」
絵里「ねぇ、にこ。私なにか希に悪いことしたかしら」
にこ「知らないわ。でも親友なんだからとっとと仲直りしちゃいなさい」
絵里「うん。……ってあれ希じゃない?」
にこ「どしゃぶりにあのまま帰ってるの……?」
絵里「傘を渡してくるわ」ダダッ
絵里「希ー! っていない……」
海未「穂乃果ー! 傘ですよ!」
絵里「海未……どうしたの?」
海未「穂乃果が体調不良で……帰ることに……」
絵里「あの二人が一緒に……?」
絵里「穂乃果に変わったところはあった?」
海未「いつも通りの笑顔でしたよ? 穂乃果は」
絵里「希の調子はひどく悪そうだったわ……」
海未「気になりますね……」
絵里「お見舞いに……」
ことり「穂乃果ちゃんのお見舞いは私が行くよ」
ことり「だから、海未ちゃん。穂乃果ちゃんは任せてねっ♪」
海未「ですが……!」
ことり「授業始まっちゃうからまずもどろっか」
希「もう……限界やな……絵里ちがそばにいるだけで辛い……」
希「弱音吐くなんて……ウチらしくないな……」
希「風邪引いたことにして……明日は休もう」
希「雑念を払って……何事もなかったように振る舞うんや」
希「できるやろ? ウチなら……できる」ズキズキ
雨もひどく強い。階段を登り一息つこうとしたら。
穂乃果「待ってたよ、海未ちゃん」
希「穂乃果ちゃん……」
待っていた。私のことを。
希「穂乃果ちゃん、また風邪引いてしまうで?」
穂乃果「ううん、一人でいたら悲しいから会いに来たんだ海未ちゃんに」
希(口調も何も変えてないのに……)
希「でも、まだ授業中やし心配されるんじゃない?」
穂乃果「いいよ、海未ちゃんの側にいれるなら」
希(認識できてない……あくまで穂乃果ちゃんの視点に映ってるんは……海未ちゃんか……)
希「穂乃果、そのお気持ちは嬉しいです」
希「手を握っていただけませんか……」
穂乃果「海未ちゃんの頼みならなんでも聞いちゃうよっ!」ギュー
希(温かいなぁ……本当に……ううっ……久しぶりやな……)
希「穂乃果、雨の中デートしませんか?」
穂乃果「うんっ! 海未ちゃんと一緒ならどこでもいいよっ」
希「ずぶ濡れデートですね」
穂乃果「うんっ!」
ことり(あれは穂乃果ちゃんと……希ちゃん? 希ちゃん髪下ろしてるんだ……)
穂乃果「水溜りばっしゃーん」バシャッ
希「こら、穂乃果! 濡れてしまうではありませんか!」
穂乃果「えー?もう濡れてるんだからいいじゃーん!」
希「それもそうですが……」
穂乃果「こんな経験、大人になればどんどんできなくなるんだよー?」
希「そうですね、ではっ」バシャッ
穂乃果「海未ちゃんやったなー!」バシャバシャ
ことり(え? 希ちゃんのこと穂乃果ちゃん今……海未ちゃんって)
穂乃果「う~みちゃんっ」
希「甘えた声も可愛いですよ穂乃果」
穂乃果「ねぇ、ちゅーしよっ」
希(これが最後やな……もうここまで来たら戻れへん)
希(ウチ頑張ったし……これくらいのご褒美あっても……ええよね?)ピシ
希(全部が偽物に……演じきろう。最期まで)
希「いいですよ、目を閉じてください穂乃果……」
穂乃果「う、うんっ!」ギュッ
希(ようやく光が見えた……この光は手放したら――――)
ことり「だめ……そんなのだめええええええええ!」
穂乃果「ことりちゃん……」
希「ことりちゃん…………」
ことり「だめだよ……そんなの穂乃果ちゃん!」
ことり「希ちゃんを好きなるのはいいけど! 海未ちゃんとして、希ちゃんと接してたらだめだよ!」
ことり「希ちゃんが……可哀想だよ……」
穂乃果「……何言ってるの? 穂乃果の隣にいるのは海未ちゃんだよ?」キョトン
ことり「……えっ?」
希(…………光を手放したくない。でもこのままじゃ穂乃果ちゃんのタメにはならん)
希「穂乃果…………」
希(殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ……)
希(自分の感情を殺すんや……ウチなら……できる…………)ピシッ
希「穂乃果ちゃん、約束の時間はもう終わりや」
穂乃果「えっ、海未ちゃん何言ってるの……? 嫌だよ……そんなの」
希「ウチは園田海未じゃなくて……東條希や」
ことり「希ちゃん……」
希「穂乃果ちゃん。穂乃果ちゃんにはこんなに想ってくれている親友いるやん?」
希「ウチはウチや……決して海未ちゃんやない。な、ことりちゃん」
ことり「うんっ……ことりは穂乃果ちゃんが好きなの!」
穂乃果「ことりちゃん……」
穂乃果「ごめん……ごめんね希ちゃん……」
希(これで守れたんかな……穂乃果ちゃん)
希「……雨降ってるし、ことりちゃん傘さして穂乃果ちゃんと一緒に帰りぃな」
穂乃果「希ちゃん……ごめん……ごめんなさい……」
希「ええよ、ウチは約束守っただけや」ニコッ
ことり「ありがと、希ちゃん」
希「……ことりちゃん、穂乃果ちゃんは任せるね」
ことり「希ちゃんはどこに?」
希「早退したから教科書机んなかやから……戻らんと」フフ
ことり「気をつけてね?」タタッ
希「うん。心配ありがとさん」スカッ
希(温もり……ないなぁ……雨とおててつなごか……)パキン
希「じゃあね、ことりちゃん……絵里ち……」ボソッ
希(もう支える必要はない……)ピチャ
希(なんも力も出ないなぁ……)パシャン
希(学校に未練……タロット……忘れてた……)ペチャ
希「生徒会室……電気ついとるな……絵里ちいるんかな……」グチャ
希「絵里ちは……抜けてるからなぁ……」ブツ
希「絵里ちにはウチがいないと……支えないと……」ブツブツ
希「………………………………………………」チラッ
希「必要ないみたい……やな」
――生徒会室――
絵里「全く……穂乃果もことりもいないんだから……」
海未「すみません……手伝って頂いて」
絵里「さすがに一人でこの量を管理するのは難しいでしょ?」
海未「はい、絵里が居てくれてとても心強いです」
絵里「これを早く終えて、希のお見舞いに行かないと」
海未「穂乃果の方はことりが無事に送り届けたようです」
絵里「希は……心配ね。誰にも話さないから……」
海未「はい……早く終わらせてしまいましょう」
「………………」
絵里「希っ!?」バッ
シーン
海未「どうしました?」
絵里「気のせいだったみたい」
ガッッシャーン
希「タロット……あった……あっ」バラバラバラ
希「落としてしもうた……」
希「……はぁ、また画鋲……好きやなぁあの子達も」サッ
希(……なんでこんなことしてるんやろ)
希(絵里ちはもう振り向いてくれないんや……)
希(絵里ちの隣は……ウチじゃないんや……)
希「あ、画鋲ケースが……」カシャーン
希「しまった……」ガンッ
ガッッシャーン
希「つぅ……机倒してもうた……」
パチッ
絵里「希……?」
絵里「電気も付けないでどうした……の?」チラッ
希「え……? あ……」
倒れた絵里ちの机。そこに散らばっている画鋲。
絵里「……まさかこれ……」
希「やめてや! ウチや無い!」ダッ
絵里「ちがっ、待ちなさい希!」ツルッ
絵里「カードが希の机に一枚……それ以外は床に落ちてるわね」ピラッ
絵里「このカードは……」
希(もうダメや……)
希(絵里ち……絵里ち……)
無我夢中で走った。
希(絵里ちずっとずっと好きやった)
希「はぁ…………んぐっ、はぁ…………」
まばゆい光がウチを照らしてくれる。その中に絵里ちを見た。
希「絵里ち……大好きや……」
その光はウチを引き込んだ。たしかにこの瞬間絵里ちの声を聞いた。内側から絵里ちの温もりを一瞬感じた後、視界はブラックアウトした。
――2分前――
絵里「このカードは……」
絵里「確かに予言的中率は高いけど、100%じゃないでしょうに」
絵里「貴女がやったなんて、思わないわよ希」
絵里「久々に、希の家でロシア料理でも作ってあげましょうか」
絵里「……早く終わらせないと仕事」
開示されたカードは『死神』の正位置。
意味は――終末、破滅、離散、終局、清算、決着、死の予兆。
……FIN
お疲れ様でした。見てくださって有難うございます。では、また次回にお会いしまそう。
このSSまとめへのコメント
おもしろかった!