伊織「雨の日」 (16)



いおりん誕生日おめでとう。

スーパーショートなお話です。



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朝、765プロ事務所。


仕事のアイドルはもう出かけた。
まだ来てないアイドルも当然いる。
事務所には、私一人だけ。

小鳥は、事務所の備品を補充しに、この雨の中出かけていった。
プロデューサーは、今日もせかせかと外回りだそうだ。


私は一人、窓の外の雨を眺めていた。


さあさあと降り続ける雨。
予報では、昼頃には止むらしいけど。


ふと、後ろを振り向く。
視界の端には、プロデューサーの事務机。
そして、みんなと騒がしく過ごしてきた、見慣れた光景が広がる。


客用のガラステーブル一つ見るだけで、本当に色々なことを思い出す。

私たちの記事が載ったことで、雑誌を回し読みして一喜一憂したり。
そんな懐かしい時期もあったわね。

「約束」の歌詞を書くために、みんなでここに集まったり。
あの歌、今じゃ千早の十八番ね。

バケーションアイランド国際音楽祭の時、春香たちが悩んでたり。
音楽祭の後、本当に満足げな顔してたわ。


今ではどれも、懐かしくて、大切な思い出。
何にも代えがたい、宝物。


ガラステーブルに歩み寄って、指先でつうと撫でる。
このテーブルも、新調したソファと一緒に、まだまだ現役ね。

でも、これだってほんの一部。
事務所を歩けば歩くほど、宝物はいくらだって出てくる。


プロデューサーの机。
あいつが事務所に来て、まだ二年経ってないのかしら?
あの時から輝きだした日々が、今もまだ続いている。

劇場のアイドルたちとアリーナでライブやった時に、誰かが「輝きの向こう側」なんて言ってたけど。
……アイツなしじゃ、ここまで来ることは出来なかった。
もちろん、他のアイドルたち、スタッフさんたち、ファンのみんな、諸々含めてだけど。


輝きの向こう側に、私たちは今、いるのかな。


短いようで、長いようで。
周りからは、名実共にトップアイドルになったなんて言われるようになった。

けど、私はそうは思わない。まだまだ先があるはず。
輝いてもなお、見えないものがあるはず。



私は、それが見てみたい。

会議の資料やら、アイドルの情報をまとめたノートやらでぐちゃぐちゃの、小鳥と律子のプロデューサーの机。

この机たちの上から生まれる、私たちの未来を見てみたい。


ふと外を見ると、雨は上がっていた。


物思いに耽っていたら、思った以上に時間を使っていたみたい。
雲の切れ間から、綺麗な光が差し込んでいた。

窓の外の大通りでは、傘を差している人は、もう誰もいなかった。

通りを歩く人たちに混じって、甲高い声がいくつも、集まってやってくる。



「にひひっ、来るのが遅いのよ」


私は、輝きの先の、更に先を見てみたい。
たとえ、空が曇っても。たとえ、何度土砂降りの雨に降られても。
その先にある、誰も知らないような輝きを、見てみたい。


そのためには、誰一人、欠けたらいけない。
765プロの、誰が欠けても、私たちは輝けない。

だって、私たちはずっと――






――仲間、でしょう?



     了。

SSは以上です。
以下いおりんをただ可愛がるスレ。


ご覧頂き、ありがとうございました。
日付が変わり次第HTML化申請してきます。

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