姫川友紀「おいしい日本酒えらびたい」 (29)
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ロケから帰る車内にて――
P「2人とも、温泉ロケお疲れ様でした」
「「おつかれさまでしたー」」
P「しかし楓さん、やっぱ浴衣似合いますねぇ。いい画が撮れてましたよ」
楓「ふふっ、ありがとうございます」
P「ユッキも結構似合っていたぞ。ただな、もう卓球でホームランは打たないようにな?」
友紀「えー、ああいうのでフルスイングってのは誰もがする事でしょ。プロデューサーもやってるでしょ?」
P「やってたけれど中学生までだよ!ところでせっかくこういう所に来たわけですし、何かおみやげでも買って帰りますか?」
楓「そうですね、じゃあ……この辺りの地酒でも買って帰りたいですね」
友紀「いいですねー!あたしもお酒買いたい!」
P「よーし、じゃあ決定。この先に酒屋があるんでそこに寄りましょうか」
友紀「おー……いっぱい並んでいるねぇ」
楓「えっと、プロデューサーさん。昨日の夜に飲んだお酒ってなんでしたっけ」
P「あれは『花の咲く』の確か純米吟醸ですね。この辺りでそこそこ名の通っているやつなんで多分あると思いますよ」
楓「花の咲く……は・な・の・さ・く……あっこれ。あら、結構いろんな種類があるんですね」
P「ええ。吟醸だけでも何種類かありますし、同じ名前で焼酎とかも作っていますからね。違うのを選んでも面白いかもしれませんよ」
友紀「……ねえプロデユーサー。あたしも日本酒買いたいんだけどさぁ」
P「ん?買えばいいじゃないか」
友紀「いや、あたし日本酒って全然わかんなくってさ。なんか美味しいやつの選び方とかってない?」
P「んー……まあ、勘かな」
友紀「えーっ!そんなぁ!」
P「といってもだいたい傾向みたいなものはあるんだけどな」
友紀「なんだぁ。じゃあちょっと教えてくれない?吟醸とかなんとかって名前は聞いた事あるんだけど」
P「ああ。えーっと、まず日本酒ってのは大きく分けて純米かそうじゃないかってのと、どれだけお米を磨いているか、つまりどれだけ米の中心に近い部分を使っているか。あと吟醸造りっていう製法を使ったかっていうので種類が分けられるんだ」
友紀「ふむふむ。で、どうちがうの?」
P「純米は文字通り米と米麹だけで作られたお酒。純米じゃないやつは醸造アルコールっていうアルコールを入れて作ったお酒なんだ。これは味を調整する為や香りを開いたりする為、あー……要は香りをより出す為に使われてたりするんだ。ただし大量生産されてる安い日本酒だといわゆるかさ増しする為に使われている事もあるから注意が必要だな」
友紀「なるほど、要するに醸造アルコールってのは助っ人外人みたいなもんなんだね?」
P「うん……うんっ!?」
友紀「入っていていい時もあれば悪い時もある。つまりロペスみたいにいい選手の時もあればミセリみたいにハズレの時もあるって事でしょ?」
P「まあ、そう……なるのかなぁ」
P「で、さっき言ってた吟醸とかの意味だけど、これは吟醸造りっていう香りを華やかにしたりする作りで作られているかという事と、米をどれだけ磨いているかっていう事の目安になるんだ」
友紀「へー、やっぱたくさん磨いてる方がいいお酒って事?」
P「一応そういうわけではないんだけど、米の良い部分だけ使えるし削っちゃうぶん使うお米の量は増えるからそのぶん贅沢なお酒とも言えるね。大体の所は大吟醸が最高級にされてるし」
友紀「その大吟醸ってのは良く聞くけど、普通の吟醸とは何が違うの?」
P「大吟醸はより米を磨いていないと名乗れないんだ。磨かなきゃいけない順に並べると、大吟醸、吟醸と特別純米と特別本醸造、純米酒と本醸造、そして普通酒の順番になるね」
友紀「おお、よくそんなスラスラとすぐ出てくるね」
P「お前もキャッツの選手の背番号や守備位置はスラスラ言えるだろ?そういうことだ」
友紀「なるほど、なるほど。で、仕組みはわかったんだけどどれが美味しいのよ」
P「まあどれがって言われると好みになっちゃうんだけど、『ハズレが少ない』のは純米ってついているお酒だね。でも大吟醸ならよほど安物じゃなければ大きなハズレは少ないと思うし、普通の吟醸もちゃんとしたのは添加したアルコールで香りがより良くなっていたりするから安いのを選ばなければハズレは多くないかな。傾向としては磨けば磨くほど雑味の少ない洗練された味になりやすくて、普通の純米酒はお米の特徴がよく出る濃いお酒になりやすいって感じかね」
友紀「ふむふむ、要は大吟醸みたいに洗練されたお酒はヨシノブで、普通の純米酒はモトキやゴトウみたいな選手って事だね?」
P「……まあ間違っちゃいないけど」
友紀「よーし、だいたいわかった!日本酒って野球選手に似ているんだね!ありがと、プロデューサー!」
P「あっ……俺もハシモト位の酒を探すかぁ」
友紀「うーん、ヤマグチやヨシノブは高くて買えないしヤノくらいのいいお酒は無いかなぁ……おっ冷蔵庫にも日本酒が入ってる」
楓「あら、それは生のお酒ね」
友紀「なま?他のお酒は焼いているって事ですか?」
楓「せいかいっ」
友紀「えーっ!?じょ、冗談で言ったんだけどなぁ」
楓「ふふふっ。本当は火入れっていう加熱処理を2回しているって事。あってるでしょ?」
友紀「なんだ、てっきり丸焼きにしてるのかと……ん?2回?」
楓「普通は発酵を止めるためや殺菌する為に2回火入れをするんだけど、その片方をしないと生詰めや生貯蔵酒になって両方しないと生酒になるの。まあ、細かい分け方はまだ気にしなくてもいいかな」
友紀「とりあえず2回やってなければ生なんですね。それで、生って事はやっぱいいお酒なんですか?」
楓「うーん、いいお酒と言うよりは違ったタイプのお酒かしら」
友紀「違ったタイプ……俊足巧打とホームランバッターみたいな?」
楓「そこまで違うかどうかはわからないけど、生のお酒はじわーって口に広がる『お酒っ』って感じの独特のクセというか風味が特徴かしら」
友紀「じゃあお酒好きなら生を選べ!って感じなんですか?」
楓「それは人によって好き好きあるから好みの問題と思うわ。多分プロデューサーさんは生じゃないお酒の方が好きみたいですし」
友紀「へー、ってなんで知ってるんですか」
楓「いつも頼んでいるお酒を見てなんとなく、ね。あ、でも生のお酒は冷やしてないといけないし1度開けたらすぐ味が落ちてしまうからいま自分用に買うのはやめといたほうがいいかもしれないわ」
友紀「あー、まだ帰るまで時間かかりますしねぇ。それに1本を1人で飲むには時間がかかるかも。同じ日本酒だけどタイプが違って長時間は持たない……あ、そうか!野球で言えば」
楓「先発と抑えみたいな関係ね」
友紀「あぁ!あたしが言おうとしたのに!」
楓「いわせないわ。ふふっ。」
友紀「ストッパーじゃないんですからぁー」
楓「ふふふっ。あ、あと書いてある物だと『原酒』って書いてあるのは濃さが調整されてない絞ったそのままのお酒だから、味が濃くて少しアルコールの度数が高い物が多いわよ」
友紀「調整って普通の日本酒って味が調整されてるんですか?」
楓「普通は絞った後にお水やアルコールを加えて味やアルコール度数を調整するの。それをしないそのままの物が原酒よ」
友紀「日本酒って意外と手間暇かかってるんだ……他に何か書いてあるので気にした方がいいのって何かありますか?」
楓「山廃と生酛とかひやおろしとかあるけど、まだそんなに気にしなくていいんじゃないかしら。後は細かい違いになるし、こういうのはお酒と同じでいっきもとてもよくないですし」
友紀「そうですね、ありがとうございます!よーし、」
楓「ふふっ、もし迷ったら詳しい人やお店の人に聞いてみるのも良い方法ですよ」
友紀「うーん、とりあえずは純米で生じゃなくて……」
P「おーい、決まったか-?」
友紀「あ、ねえプロデユーサー。日本酒買いたいんだけどさぁ……」
P「ん?買ってやらんぞ」
友紀「違うよっ!なんとなく良さそうなお酒ってのはわかったんだけどさ、こんだけ種類があるとどのお酒を選んだらいいのかわからなくて。一応ハズレが少ないのは純米だっけ?それだけでも端から端までいくつもあるし」
P「あー、そういう時は裏のラベルを見てみるのも1つの手だな。物によるけど味の傾向やオススメの温度、お酒のウリとかが書いてあったりするから。あと名前で選ぶっていうのもいい方法かな」
友紀「名前で?『極上』とか『特選』とか?」
P「そういうのとか『辛口』とかも目安にはなるんだけど、飲みたい銘柄っていうのも結構重要だよ」
友紀「というと?」
P「聞いた事あるような銘柄を選ぶっていうのもそうだし、最後に決める時には飲んでみたいような名前のお酒を選んでみてもって事だ。例えば『一球入魂』って名前のお酒があったら飲んでみたいだろ?」
友紀「確かにそれは飲まざるを得ないね」
P「な?明らかな地雷はともかく、こういう風に選んでも楽しいし、当たりでもハズレでも自分で納得のいく物が選べるんじゃないかな。最終的には飲みたいお酒を選ぶのが一番だ。あくまでもお酒は『楽しみ』なんだからさ」
友紀「それもそうだね!よーし……といってもいきなりはピンと来ないなぁ。あ、そうだ。プロデューサー、なにかオススメのお酒ってあったりする?」
P「そうだな、じゃあ俺が買うこの『香り豊か 純米吟醸原酒』はどうだ?名前の通り吟醸らしいフルーティーな甘い香りが豊かで、甘みから酸味と苦みで締めてくるいろんな要素が入ったクリアで飲みやすいお酒だ。原酒だけれど癖が少ない日本酒好きにも余り飲まない人にもオススメのやつだよ」
友紀「お、なかなかよさそう。選手に例えるとどんな感じ?」
P「そうだな、絶好調のフジムラってところかな。値段も手頃だし」
友紀「なかなか絶賛するね。じゃあせっかくだしそれにしよっと!」
P「俺が1番好きな日本酒だからな。それじゃあ会計するぞー」
友紀「はーい。あっ、ねえプロデユーサー。それ買いたいんだけどさぁ……」
P「ん?今度はどうした」
友紀「ほら、せっかく仕事がうまくいったたんだからさ。ご褒美に買ってくれたらな~、なんて」
P「あ?さっき買わないって言っただろ」
楓「あら、友紀ちゃんいいわね。プロデューサーさん、友紀ちゃんだけなんてずるいですよ」
P「ちょ、何言ってるんですか楓さんまで」
友紀「いやーさっすがプロデューサー、2人の分も買ってくれるなんて」
楓「プロデューサーさん、ありがとうございます。ふふっ」
P「えぇー……」
P「よーし、じゃあ出発するぞー。ちゃんとベルト締めとけよー」
友紀「さあ、事務所へ向けてしゅっぱーつ!あーいいもの買えたー!どんなお酒なんだろうなー」キキッカキッカキキ
P(……結局買わされてしまった。まあ、2人共ロケ頑張ってたし喜んでいるならいいか…………カキキ?)
友紀「あ、楓さんもいります?」
楓「そうね、じゃあせっかくだし貰おうかしら」ツトララララ……
P「……おい、ユッキ。お前なにやってんだ?」
友紀「え?何って、楓さんにお酒を注いでるんだけど」
P「そうじゃねぇよ!てか楓さんも何やってるんですか!」
楓「あら、プロデューサーさんも飲みますか?」
P「今飲んだら捕まりますよ!てかユッキ、なんで開けてるんだよ!」
友紀「これっていいお酒なんでしょ?そう思っていたら我慢できなくてさ。ほら、いいものはみんなで楽しみたいじゃん」
P「いや、確かにそうだけど!」
楓「あ、おいしい。友紀ちゃん、これすごく美味しいわよ」
友紀「本当ですか?どれどれ……」
楓「あ、こんな所に昨日の残りのおつまみが」
友紀「ほんとだ、美味しい!いやー、さすがプロデューサー」
P「そりゃどうもっ!」
友紀「ほらほら、運転に集中してないと危ないよ。この辺りは取り締まり厳しいらしいんだって。あ、楓さんそのおつまみ少し貰えますか?」
楓「はい、友紀ちゃん。プロデューサーさん、捕まったら警察には何を言ってもとり付くしまもないですからね。ふふふっ」
P「畜生っ!わかってますよっ!」
おしまい
正直日本酒って何を選んだら良いかわからないですよね。
そもそも余り飲む人も多くないですし、居酒屋で不味いのを飲んで嫌いになる人も多いでしょうし。
そんな中でも、少しでも美味しい日本酒に当たって日本酒が嫌いが減っていけばなぁ、などと思いながら書きました。
因みに、SS内のお酒の選び方はただ単にこのPの考えた選び方なんで異論はいくらでも受け付けます(笑)
ここまで読んでくださった方、少しでも読んでくださった方、ありがとうございました。
読んでくださった方々、コメントありがとうございます。
皆さん結構色々お気に入りの銘柄があるんですね。
私は長野県の豊香という銘柄が1番好きですね。
16で出てきた御渡りの所が作る別銘柄です。
長野に行った際はぜひ探してみてください。
24で書いたお酒、御渡りじゃなくて神渡でした。
訂正します、すいません。
神渡の純米吟醸原酒も飲んでみましたけど、甘いのに後味はクリアでこれも美味しいですね 。
そろそろHTML化を以来しようと思います。
皆さん、読んでくださりありがとうございました。
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