サシャ「味も匂いもたまりません!」(80)

・1『サシャ「キスの味、私に教えてください」』(過去ログ倉庫行き)
 2『サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」』(過去ログ倉庫行き)
 3『サシャ「二人だけの、秘密の味です」』
 4『サシャ「とくと味あわせてあげましょう!」』
 5『サシャ「同じ味を、知りたいですから」』
 6『サシャ「味気なくなんかないですよ?」』
 7『サシャ「……興味ないです」』の続きです

・たぶんネタバレなし。今回は過去最長。いつも通りのご都合主義&展開です

・ちょこっとだけ中の人ネタあり


―― 深夜 女子寮 ユミルたちの部屋

クリスタ「……zzz」スヤスヤ

ユミル「……zzz」スースー

サシャ「……」ジーッ

サシャ(月明かりだけで勉強するのはちょっと限界がありますね……)メモトゴシゴシ

サシャ(今日はこの辺にして、そろそろ寝ましょう……よいしょっと)ゴロン





ミカサ「……」

サシャ「……」


サシャ「……ミカサ、どうして私のベッドの中にいるんですか?」

ミカサ「サシャ、サシャ。私と遊ぼう」クイクイ

サシャ「い、今からですか?」

ミカサ「うん」コクコク

サシャ「もう、今日のミカサは甘えん坊さんですね……いいですよ、何しますか?」クスッ

ミカサ「アルミンの本棚から本を一冊借りてきた。ので、一緒に見よう」ゴソゴソ

サシャ(? 暗くてよく見えませんね……)ジーッ

ミカサ「アルレルト書院秘蔵の本らしい。よくわからないけれど」



   つ   『海辺のプリンセス 百選』

サシャ「う、うみ……? ってなんですか?」

ミカサ「壁外にある、大きな塩辛い湖のことらしい」

サシャ「しょっぱいなら飲んでもおいしくなさそうですね」キッパリ

ミカサ「詳しいことは今度アルミンに聞いてみる。この本を返す時にでも」

サシャ「というか、これは絵本ですかね……? 随分本物っぽい絵ですけど……」パラッ

サシャ「……」

サシャ「……///」カァッ

サシャ「……あの、ミカサ」

ミカサ「何?」

サシャ「な、なんで女の人みんな下着姿なんですか……?///」ドキドキ

ミカサ「さあ? よくわからない」キョトン

サシャ「これを……読むんですか……?///」ドキドキ

ミカサ「うん。二人で読もう」


サシャ(えっと……アルレルト書院ってことは、アルミンの本なんですかね……?)パラパラ

サシャ(暗くてよく見えなくて、よかったかも……)パラッ

サシャ「……なんでこの女の人は身体に氷菓子を盛ってるんですか? もったいない」チッ

ミカサ「よくわからない」

サシャ「しかも、みんな胸に大きい果物二つもつけてますね。重くないんでしょうか?」

ミカサ「よくわからない」

サシャ「……あ、これおいしそうですね」ジュルリ

ミカサ「これはわかる。確か……果物の一種。市場で一度だけ見たことがある」

サシャ「へえ、食べてみたいですねー……――そうだ!」ポン


―― 数日後 男子寮 エレンたちの部屋

エレン「うあー、あっつー……風呂入ったばかりなのに……」ゴローン

ベルトルト「もう汗だくだよね……このまま寝るのはなぁ……」グデーン

アルミン「うーん……どこ行ったのかなー……」ゴソゴソ

ライナー「どうしたアルミン? 何か探し物か?」ダラーン

アルミン「うん、本が一冊見当たらなくて……」ゴソゴソ

エレン「探すの手伝うかー?」ゴロゴロ

アルミン「ううん、大丈夫……うーん、おかしいなぁ……」ゴソゴソ

ベルトルト「アルミンが物をなくすなんて珍しいね。何の本?」

アルミン「『海辺のプリンセス 百選』の初版本だよ」ゴソゴソ


ライナー「…………あれか。タイトルの割に中身がしっかりしてたな」

ベルトルト「…………あれね。袋とじの女体盛りがなかなかだったね」

アルミン「うん、あれだよ。……ふぅ、やっぱりダメだ。見当たらないや」ガックリ

エレン「アルミン、顔汗だくだぞ? ……ほらタオル」ポーイ

アルミン「わっ……ありがとう、エレン」フキフキ

エレン「おう、気にすんなよ。……しっかし、こう暑いと眠れねえよ……なんとか涼しくなんねーかなぁ」ウーン

アルミン「!! じゃあ僕が涼しげな話をしてあげる!」キラキラキラキラ

エレン「」ダッ


ライナー「……なんでベルトルトの陰に隠れてるんだ、エレン」

エレン「アルミンの怖い話はマジで怖いんだよ……!」ガタガタガタガタ

アルミン「やだなぁ、怖い話じゃなくて涼しげな怪談だってば。怪談」ハハハ

ベルトルト「エレンが本気で怯えてる……」

ライナー「怖いってどれくらいだ?」

エレン「夜中トイレに一人で行けなくなるくらいだ……!」クワッ!

ライナー「……子どもかお前は」

エレン「ライナーは聞いたことねえからそんな風に言えるんだよっ……!!」ジワッ

ベルトルト(泣いちゃってるよ……)ウワァ


エレン「そうじゃなくてだな……なんかこう、スッキリっていうかサッパリしたいんだよ、俺は!!」ギュゥッ

ライナー「語彙力が残念な回答だな」

ベルトルト「もう少し具体的なイメージはないの? ……あとエレン、シャツが伸びるから放してくれるかな」

エレン「イメージ……イメージか……」グヌヌ

ベルトルト「エレン? 聞いてる?」

アルミン「――そうだ、川に涼みに行くってのはどうかな!」ポン

エレン「それだ!」ビリィッ

ベルトルト「」

ベルトルト(僕のシャツ……)シクシク


ライナー「川? この辺りに川なんてあったか?」

アルミン「うん。立体機動の訓練場のかなり端の方だけどね。この前エレンとミカサの三人で見つけたんだ」

エレン「細い川だったけどな、水遊びくらいならできると思うぜ!」キラキラキラキラ

ミカサ「――それなら私にいい考えがある」スタッ

ライナー「……天井から降ってきてももう突っ込まんぞ、ミカサ」

ミカサ「受け入れてもらえるのは嬉しいけれど、それはそれで寂しい」ニンニン


ミカサ「実は、今度の休日にその川で遊ぶ計画がある。でも、今の人数だと厳しい。……胃が」

ベルトルト「伊賀?」ニンニン

ライナー「ベルトルト、乗っかるな」

ミカサ「だから、男子も誘いたい。人数は多くなっても構わないから」

アルミン「男子……ってことはそっちは全員女子ってことだよね? 今の人数は?」

ミカサ「女子が六人。私とアニ、ミーナ、ユミル、クリスタ、サシャ」ユビオリ

ライナー「いつもの面子か。……俺たち四人が加わったら十人だぞ? 大丈夫か?」

ミカサ「もう少し多くても平気だと思う。二玉あるらしいから」

エレン「玉って……何を用意するつもりだよ」

ミカサ「ないしょ」シーッ

ベルトルト「……なら、ジャンたちも誘っていいかな?」


ライナー「! ベルトルト、お前……」

ベルトルト「みんなが嫌ならやめるけど……どう?」

エレン「ジャンたち……ってことは、マルコとコニーもか。俺はいいぜ?」

アルミン「うん、男女比も近くなるしいいんじゃないかな。どうかなミカサ?」

ミカサ「私は構わない。ライナーは?」

ライナー「ああ、俺もいいが……」

エレン「けど意外だなー、いつの間にジャンたちとそんなに仲良くなったんだ?」

ベルトルト「最近よく話すようになってさ」アハハ



ライナー(ああ、妹萌えの話かぁ……)アタマカカエ

ライナー(親近感の方向が間違ってるのを、正してやるべきなんだろうか……?)ウーン


アルミン「じゃあ、集まる日は次の休みの日ってことでいいのかな?」

ミカサ「色々準備があるので、午後からにしてほしい。男子のほうの参加者は、私から女子のみんなに伝えておく」ゴソゴソ

ミカサ「というわけでアルミン。これは返そう」スッ


   つ   『海辺のプリンセス 百選』


アルミン「」

ライナー「」

ベルトルト「」

エレン「おっ、なくなってた本じゃん。よかったなーアルミン見つかって」


アルミン「み、ミカサ……これはどこから……?」オロオロ

ミカサ「この前エレンの下着を回収しに来た時に見つけた。床に落ちたままだと汚れるので、そのまま持って帰った」

アルミン「できればそのまま本棚に戻してほしかったけど……まあ、無事ならいいや」ハハハ

ミカサ「この前は早く寮に戻らないといけなかった。ので……次は気をつける。ごめんなさい」シュン

アルミン「ううん、いいよ。ところでこの本は他の人には見せてないよね?」

ミカサ「見せた」

アルミン「」

ライナー「」

ベルトルト「」


アルミン「何してるんだよミカサぁっ!」バンッ

ライナー「見せたって誰にだ、ユミルか? ミーナか!?」ズイッ

ベルトルト「アニやクリスタには見せてないよね!?」ズイッ

ミカサ「その四人には見せていない。サシャと見た」

ライナー「」

ミカサ「あと、アルレルト書院とも言った」

アルミン「」


アルミン「うぅ……ひどいよミカサ……」シクシク

ライナー「ちなみに、サシャはなんて……?」

ミカサ「……ないしょ。本人に直接聞くといい」シーッ

ライナー「ぐっ……」ギリッ

ミカサ「ところでアルミン、海のことを詳しく教えてほしい。サシャに教えたい」

アルミン「この流れでよく言えるね!?」



エレン「? そんなに面白い本なのか? アルミン、今度俺にも貸してくれよ」

ベルトルト「エレン。あの本はね……エロ本だよ」

エレン「…………アルミン、俺それ借りたことない」

アルミン「後でね……」シクシクシクシク


―― 数日後 兵舎廊下

サシャ「おっひるーおっひるーひっるごっはんー♪」テクテク

サシャ「きょーうのスープはなーんだーろなー♪」テクテク

ライナー「……なんだその歌は」

サシャ「あ。……ライナー、こんにちは!」ニコニコ

ライナー「おう。……今度の休日、みんなで遊びに行く話は聞いてるんだよな?」

サシャ「はい、楽しみですよねっ!」ワクワク

ライナー「……意外だな。食い物が絡まない行事には、興味がないと思っていたんだが」

サシャ「うっ……実はその通りというかなんというか……」モゴモゴ

ライナー「……ミカサと二人で何か企んでるのか?」

サシャ「それは秘密です! 当日楽しみにしていてくださいね?」シーッ


―― 休日 昼過ぎ 教官室

アルミン(なんで今日に限って……)チラッ

ジャン(よりにもよって……)チラッ

キース「上位者総出で、立体機動の自主訓練か……ふむ」ジロッ

アルミン「」ビクッ

ジャン「」ビクッ

キース「……立体機動装置に水は入れるなよ」ボソッ

アルミン・ジャン「!!」

キース「……返事はどうした」

アルミン・ジャン「はっ! 了解しました!」バッ



                               \ガチャッ...バタン/


アルミン「……バレてたね」

ジャン「だな。わかってて見逃してくれたってことか」

アルミン「……楽しい日にしようね、ジャン」

ジャン「……そうだな。せっかくの機会だしな」

アルミン「僕らも追いかけようか。もうみんな先に行ってるんだよね?」

ジャン「ああ。まあライナーとマルコがいるんだから大丈夫だろ」


―― 昼過ぎ 立体機動訓練場

コニー「あーあっぢぃ! 焼ける!! 頭焦げる!!」ジリジリ

マルコ「早く機動装置外したいな……表面も結構な高温だ」ジリジリ

ベルトルト「建前上、着けてこないわけにはいかないからね……」ジリジリ

ライナー「エレン! あとどのくらいだー?」

エレン「もうちょいだ! 林を抜けてからちょっと歩くけどなー」

ライナー「なら、林を抜ける少し前で降りてくれ! 立体機動装置は林の中に置いていく!」

コニー「あぁ? 川まで着けていかねーのか?」

マルコ「装置の中に水が入ったら面倒だからね、外していったほうがいいと思うよ」

ベルトルト「林の中なら日陰も多いし、高温にもならないだろうしね」

エレン「わかった……っと、よーしこの辺だ! 降りるぞー!」パシュッ


―― 昼過ぎ 立体機動訓練場の端 とある細い川

コニー「うおおおお……っ!」ワクワクワクワク

エレン「すげーだろ? な? な?」ワクワクワクワク

マルコ「思ったより澄んでるね。さすがに飲んだりするのは無理そうだけど」

ベルトルト「うん。川底まで見える……すごいな」

コニー「よし、入ろう入ろう今すぐ入ろう!!」ウズウズウズウズ

ライナー「待て待てお前ら、靴脱いでから入れよ? 帰りのことも考えろ」

コニー「わかってるよ!」ポーイ

エレン「俺一番!」バシャッ

コニー「あっ、ずりぃぞエレン!」バシャッ


アルミン「ただいま、男子全員分の届け出してきたよ」

ジャン「……ミカサたちはまだ来てねえのか?」キョロキョロ

マルコ「うん、まだ僕たちだけだよ」

ライナー「時間と場所はあってるんだよな?」

アルミン「そのはずだけど……おかしいなぁ、エレンもいるのにミカサが遅刻するわけないんだけど」ウーン

ジャン「どうせその辺で道草食ってんだろ。先に涼んでようぜ」ポーイ


コニー「……エレン」ヒソヒソ

エレン「……ああ、ライナーたちは俺に任せろ」ヒソヒソ



ジャン「へー、足つけるだけで結構違うもんだな」バシャッ

コニー「……おらぁっ!」トビゲリッ

ジャン「」バッシャーン!!

ジャン「痛ぇなこの馬鹿、シャツまで濡れちまったじゃねえか何しやがる!」バシャッ

コニー「そんなもん後から乾くだろ! んなちっせぇこと気にしてんじゃねぇよ!」バシャバシャ

ジャン「チビはてめぇだろうが馬鹿!」バシャバシャ

コニー「俺は背は小さくても器がでかいんだよ!!」バシャバシャ


ライナー「おい、あまりハメを外すな――ぅわっ!」バッシャーン!!

エレン「よおライナー、背中ががら空きだったぜ?」ニヤニヤ

ライナー「……やったな?」ニヤッ

ベルトルト「二人とも、あまりやりすぎるのは――」

ライナー「よーしベルトルト、お前も来い!!」グイッ

ベルトルト「ちょっ、なんで僕まで――ってうわっ!?」バッシャーン!!



マルコ「……止める?」チャプチャプ

アルミン「楽しそうだからいいんじゃないかな。女子は僕たちで待ってようよ」チャプチャプ

マルコ「……気持ちいいね、足つけてるだけなのに」ホンワカ

アルミン「だよね」ホンワカ


ユミル「……おーおー、先におっぱじめてんなぁ」スタスタ

クリスタ「わあ……きれいな川……!」キラキラキラキラ

マルコ「やあ、遅かったね」

ユミル「ミカサの説明が下手すぎんだよ。あいつ本当に頭いいのか?」

アルミン「あれ? 一緒に来たんじゃないの?」キョロキョロ

ミーナ「ミカサなら朝から出かけてるよ?」

アニ「サシャも一緒にね」

アルミン「二人で……? 一体どこに行ったんだろう」


アニ「それにしても……」チラッ



     \オラァー!!/   \ギャアアアアア!!/   \バッシャーン!!/



アニ「……まるで子どもだね、男子」ハァ

ミーナ「……」ニヤッ

クリスタ「えっと……私たちも涼んでていいのかな?」

マルコ「うん。気にしないで遊んできていいよ」

アルミン「僕たちはここにいる予定だから、ミカサたちが来たら教えるね」


アニ「……じゃあ、私もここに残ろうかな。暑いの嫌だし」

ミーナ「……」

ユミル「私はどうすっかな……クリスタはどうする?」

クリスタ「うーん……二人だけに任せたら悪いし、ここに残ろうかな」

ユミル「じゃあ私もそうするか。じゃあミーナは――」



ミーナ「アニごめんねっ! ――えーいっ!」ウワギスッポーン

アニ「」



ユミル「」

クリスタ「」

マルコ「」メカクシ

アルミン「」メカクシ


アニ「…………………………ミーナ? 上着返してくれる?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ミーナ「せっかく来たんだからさ、アニも遊ぼうよ!」ニコニコ

アニ「暑いの嫌なんだってば……」イライラ

ミーナ「このままだと私、男子と遊ぶことになっちゃうじゃん。そんなの寂しいし。――ね? いいでしょ?」

アニ「……人の話聞いてる?」

ミーナ「聞こえなーい! じゃあ先に行ってるね!」バシャバシャ



アニ「……私は手加減しないからね?」...ニヤッ


ベルトルト「うう、ひどい目にあった……」シクシク

ライナー「……おいベルトルト。見ろよあれ」

ベルトルト「何? ……あ、ミーナとアニだね。どうかしたの?」

ライナー「アニの顔だ、顔」

ベルトルト「…………笑ってるね」

ライナー「かなりぎこちないけどな」

ベルトルト「……」

ライナー「……来てよかったな」

ベルトルト「……うん」


クリスタ「涼しい……」ホンワカ

ユミル「だなー……」ホンワカ

アルミン「生き返るー……」ホンワカ

マルコ「気持ちいいー……」ホンワカ



サシャ「――みなさーん! お待たせしましたー!」タッタッタッ

ミカサ「ごめんなさい、遅れた」タッタッタッ

アルミン「やあ、遅かったね。二人ともどこ行ってたの?」

サシャ「ふっふっふ……それは後からのお楽しみです!」

ミカサ「あと一時間ほどでちょうどよくなると思う。ので、それまで待っててほしい」

サシャ「ということで……私も遊びます!!」ポーイ

ミカサ「私も」ポーイ


ミーナ「――あ! ミカサとサシャが来たよ? おーい、二人ともー!」フリフリ

アニ「……もういいでしょ? 私は休むよ。疲れたし」

ミーナ「ダメだってばー! 私より体力あるのに疲れるわけないでしょ!」グイグイ

アニ「……あとちょっとだけだからね」ハァ

ミーナ「そうこなくっちゃ!」ニコニコ


―― 一時間後

ジャン「……絞っても絞っても水出てくるな」ギュー ジャバー

ライナー「ちゃんと絞っとけよ? 濡れたまま着てたら風邪ひくからな」ギュー ジャバー

コニー「シャツの替え持ってくりゃよかったなー」ギュー ジャバー

エレン「着てればそのうち乾くだろ」ギュー ジャバー

ベルトルト「夏でよかったよね。……そもそも夏じゃないとこんなことしないけど」ギュー ジャバー

コニー「……げ、パンツまで染みてる」ウワァ

エレン「お前一番はしゃいでたもんなー」ハハハ

コニー「エレンも人のこと言えねえだろ!」


ユミル「男子は気軽に上半身裸になれていいよなー」ジーッ

クリスタ「ダメだよユミル、そんなに見ちゃ……///」

ユミル「鍛えてるだけあって、いい体つきしてんなぁ」マジマジ

ユミル「そうだな、例えば……ライナーとかいいんじゃねぇか?」ニヤニヤ

サシャ「」ピクッ

サシャ「……気になるんですか? ユミル」

ユミル「さーて、どうだかねー」ニヤニヤ

クリスタ「……ユミル? 怒るよ?」ジロッ

ユミル「わかったわかった。……そんな気ねえから安心しろ、サシャ」

サシャ「そ、そうですか……」ホッ


ユミル「ていうかそんなに気になるならもうあいつの胸でも揉んでこいよ。胸筋あるから揉めるだろきっと」

サシャ「も……っ!? 何言ってるんですか揉みませんよ!!」

ユミル「揉みしだけ!!」クワッ!!

サシャ「やりません!!」

ユミル「……あーそっか。お前味しか興味ないんだっけ?」

サシャ「なっ……!? なんで知ってるんですか!?」

ユミル「ライナーに聞いた」シレッ

サシャ(ライナーの馬鹿ー!!)アタマカカエ


ユミル「それでよぉ、……サシャ、お前ライナーの匂いには興味ないのか?」

サシャ「匂い……?」キョトン

ユミル「なんだよ、考えたこともないって面してるな。……ちょっとこっち来い」テマネキ

サシャ「はぁ……」トコトコ

ユミル「いいか? 想像しろ、お前の目の前に一枚肉がある……大きさはお前の手のひらくらいだな。厚さは……そうだな、五センチってところか?」ボソボソ

サシャ「……そこまで厚いと食べにくそうです」ムー...

ユミル「いいんだよ、厚いなら切ればいいだろ切れば。鉄板の上で脂が弾ける音が聞こえてくる……味も舌触りも最高だ……でもな、メシには匂いがつきものだろ?」ボソボソ

サシャ「……あの、ライナーはご飯じゃないんですが」

ユミル「男もメシもお前にとっちゃ同じだろ?」

サシャ「そんな風に言われるのは心外です」むぅ


ユミル「ていうかさ、単純に……嗅ぎたくねえのか? ライナーの匂い」

サシャ「だから、そういうことは考えたこともありませんってば……///」

ユミル「私ら訓練兵は肉なんてそんなに食わないからな、そこまで体臭もきつくないはずだ」

ユミル「風呂にもちゃんと定期的に入ってるしな。――いい匂いすんぞ、絶対」グッ

サシャ「で、でも、他の人の匂いを嗅ぐなんて、ちょっと……///」カァッ

ユミル「ディープキスだの甘噛みだのやってる奴が今更どこで照れてんだよ」

サシャ「……わかりましたよ、そんなに言うならあとで頼んでみます」モジモジ


サシャ(話の流れとはいえ、とんでもないことを頼むハメになっちゃいましたよ……?)

サシャ(というか……味のことをユミルが知ってるってことは、ライナーがユミルに話したってことですよね)...イラッ

サシャ「……?」

サシャ(あれ? 今のって……)

ミカサ「――サシャ、そろそろ行こう」クイクイ

サシャ「あ、はい。わかりました」

ミカサ「……ユミル?」ジロッ

ユミル「なんだよ、直接手出しはしてねえぞ?」ニヤニヤ

ミカサ「……なんでもない」ムー...


―― 数分後

サシャ「というわけで、お待たせしました! 本日のメインディッシュです!」ヨイショ

ミカサ「ほどよく冷えた。ので、食べ頃のはず」ヨイショ



    つ   スイカ  ×2



一同「でかっ!?」



アルミン「これって……もしかして、スイカ?」

サシャ「さすがはアルミン、正解です!」ピンポーン!

アルミン「スイカってかなりの高級品だよね? 値段もそうだけど……そもそもどこからどうやって手に入れたの?」

サシャ「知り合いの食堂さんに頼んで卸してもらったんです。小ぶりですけど二つも都合してもらっちゃいました」エヘヘ


コニー「小ぶりったって、結構でけえぞ、これ……」ゴクッ

マルコ「果物なんてしばらく食べてないや……」ゴクッ

ライナー「なるほど……この大きさなら女子だけじゃ食べきれないだろうな」

エレン「むしろ俺は一人で食いたい!」ワクワクワクワク

ジャン「これだけはエレンに同感だな……かぶりつきてえ」ワクワクワクワク

ベルトルト「二人とも、お腹壊すよ?」



ユミル「思ってたよりでかかったな……すげえ」

クリスタ「だよね、この人数で食べきれるのかな?」

アニ「……」ソワソワ チラッチラッ

ミーナ「私、あんな大きい果物食べたことないから楽しみだなー!」ワクワク


アルミン「二人とも、この準備のために遅くなったんだね?」

ミカサ「スイカが浸かるほど深くて日陰のあるところが、上流にしかなかった」

ミカサ「というわけで、食べよう。不平や不満が出ないように、私がミリ単位で均等に切り分ける」ジャキンッ!!

アルミン「待ってミカサ! どうせなら楽しく食べようよ」

ミカサ「楽しく?」キョトン

アルミン「うん。――というわけでみんな、直径5センチ以内、長さ1メートル20センチ以内の手頃な木の枝を探してきてくれる?」

ジャン「やけに細かいな」

アルミン「だってそれが公式ルールだからね!」ニコッ


―― 更に数分後

アルミン「――うん、これで大丈夫! 太さも長さもちょうどいいよ!」ニコニコ

ベルトルト「そ、そう……よかったね……」ゼエゼエ

コニー「チェック厳しいな、アルミン……」ゼエゼエ

エレン「アルミンは……昔から少し凝り性だからさ……」ゼエゼエ

マルコ「少し……?」ゼエゼエ

アルミン「あとは目隠し用の手ぬぐいだけど……ないからタオルでいいかなー」ゴソゴソ

ジャン(……そこは適当なのかよ!)ゼエゼエ

ライナー「で、どういう遊びなんだ?」ゼエゼエ

アルミン「えっと……タオルで目隠しした人が、周りの人の声だけを頼りにスイカを割る遊びなんだ」

ジャン「……面白いのか? それ」ゼエゼエ

アルミン「やってみればわかるよ。スイカは二つあるから……男子と女子、それぞれ一人ずつ代表を出すことにしよう」


ミーナ「じゃあ女子の代表はアニで!」グイッ

アニ「……嫌だよ。面倒くさい」プイッ

ミーナ「からの~?」

アニ「しないってば。……なんで今日はそんなにしつこいの?」ギロッ

ミーナ「うっ……ごめん、そんなにしつこかった?」ショボン...

アニ「別に謝らなくていいけど……理由くらい教えてよ」

ミーナ「……だってアニって、あまりこういうことに参加しないじゃない? だから今日一緒に来るって言った時は嬉しかったんだもん……」ショボン...

アニ「……」

ミーナ「ごめんね? もう無理強いしないようにする……」ショボーン...

アニ「……今回だけだからね」フイッ

ミーナ「! ――やったぁーっ! ありがとアニ、大好きっ!」ギューッ

アニ「暑いからくっつかないでよ……」


エレン「男子はどうする? 誰かやりたい奴いるか?」

マルコ「僕はパス……」ゼエゼエ

ライナー「俺もパスだな。力加減がわからん」

コニー「今回は俺もやめとくわ。他の奴らで決めてくれ」

ジャン「……珍しいな。お前が一番やりたがると思ってたのに」

コニー「まあ、やりたくねえって言ったら嘘だけどよ……アルミン、ちょっと棒と目隠し貸してくれ」

アルミン「? はい、どうぞ」

コニー「よっと……目隠しってこんな感じか?」ギュッ

アルミン「公式ルールでは目隠し度合いの確認のために目の前に一万」

コニー「よーし見えねえ見えねえ。で、スイカは……」スタスタ...



コニー「……ここだな?」コン


エレン「す、すげえ……! 目隠しのままどこにスイカがあるか当てやがった……!?」

ベルトルト「サシャならともかく、コニーにそんな才能があったなんて……!」

コニー「まあなー俺天才だし? あとほら、狩人の勘?」ニヤッ

ジャン「うっわ、腹立つなお前」イラッ

アルミン「えっと……じゃあ改めて、男子は誰がやる? 僕は審判役で参加できないし……」

マルコ(審判って何するんだろう……?)

ジャン「――よし。ベルトルト、お前やれよ」

ベルトルト「僕? なんで?」キョトン

ライナー「まあまあ、たまにはいいだろ? こういうのも」ポン


―― 一番手 アニ

ミーナ「よいしょっと……こんな感じかな? アニ、きつくない?」ギュッ

アニ「……大丈夫」ムスッ

ライナー(かなり不機嫌そうだな……)

アルミン「公式ルールでは目隠し度合いの確認のために目の前に一万」

ミカサ「じゃあ、はじめよう。――アニ、まずはまっすぐ歩いて」

アニ「わかったよ……」テクテク...

コニー「おい、そっちじゃねえよ右だ右!」

アニ「!? 右……?」テクテク...

アニ(くっ……足元が見えないからふらつく……!)フラフラ


サシャ「そこまで右じゃないですよ、戻ってくださーい!」

アニ(戻る? ……戻る)フラフラ

クリスタ「もうちょっと左だよ! アニ、頑張って!」

アニ(左……)フラフラ

エレン「おい、行き過ぎだって! 右行け右!」

アニ(右……いや、もう結構前に進んだから、そろそろ微調整するべきかな)

アニ(あまり前に進まないようにして……左右だけを合わせるように……)

ユミル「だーかーらー、もうちょい左だって、アニ……!?」



アニ「……」ヨチヨチ...ヨチヨチ...



一同(よちよち歩き……だと……!?)ズキュウウウン


アニ「……ちょっと、指示は?」イラッ
...
アルミン「そうだよ、サポーターがちゃんと指示しないと割る人が前に進めないよ!」

マルコ「あ、ああ……ごめん」ドキドキ

ジャン(でも、これは……反則だろ……?)ドキドキ

ベルトルト(アニのこんな姿なんて、滅多に……どころか見たことがない……!)ドキドキ

ライナー「……来てよかっただろ?」ボソッ

ベルトルト「うん。……うん!」コクコク


アニ(さっきから指示が来なくて、思ったように進まない……)

アニ「……ねえ、どこにあるの? スイカ」イライライライライライライライラ

ミーナ「え? えーっと……あと五センチ左? かなー……?」

アニ「」ブチッ

アニ「……」ブォンッ バコッ

ミカサ「……お見事。真っ二つ」パチパチ

アニ「……もうこういうことはやらないからね。金輪際」シュルッ ポーイ


―― 二番手 ベルトルト

ライナー「……よし、結んだぞ」

ベルトルト「ありがとう。――じゃあ、はじめるね」

ベルトルト(僕はアニよりも歩幅が大きいから……えーっと)トコトコ

エレン(! まっすぐスイカに向かっていった……!?)

コニー(何も言ってねえのに……!)

アニ(……私が後からやればよかった)イライライライラ

ベルトルト(……この辺かな)ピタッ

ミーナ(すごい……ぴったり真上……!)

マルコ(あとは振り下ろすだけだ……!)グッ



ベルトルト「やあっ!」ブォンッ ピタ...ッ!!



一同(寸止め……!? 振り下ろす位置が高すぎて、ギリギリ届いてない……っ!)


ベルトルト「? もしかして、ここじゃない……?」

ユミル「いや……ベルトルさん、そこで合ってるよ……! ……ぷっ」プルプルプルプル

クリスタ「ちょっとユミル、笑っちゃダメだよ……っ!」プルプルプルプル

エレン「……」プルプルプルプル

ミカサ「エレン、それ以上いけない」クチフサギ

コニー「……」プルプルプルプル

マルコ「ダメだからね、コニー」クチフサギ

サシャ「……」プルプルプルプル

ライナー「わかってるよな、サシャ」クチフサギ

アニ「……」プルプルプルプル

ミーナ(アニが複雑そうな顔してる……)プルプルプルプル

アルミン「振れるのはあと二回までだよ! 頑張って!」


ジャン(普通だ……)

ジャン(これが現実ってもんだろうな……)

ジャン(俺は……夢か幻でも見ようとしてたのか?)

ジャン(俺は知ってたハズだ……現実ってヤツを)

ジャン(普通に考えれば、簡単にわかる……)



ジャン(こんなでけぇヤツが棒を振っても、スイカに届かないってことぐらい……)プルプルプルプル



ベルトルト「あれ? えっ?」 スカッ スカッ


―― 数分後

クリスタ「んー♪ この果物おいしいね!」シャクシャク

ユミル「結構汁が垂れるな、川が近くでよかったよ」シャクシャク

アルミン「」シャクシャクシャクシャク

クリスタ「ふふっ。アルミンってば言葉もないみたい」ニコニコ

アルミン「ううっ……ミカサ、ありがとう……ありがとう……っ!」ポロポロ

ユミル「……感動しすぎて泣いてんじゃねえか」

ミカサ「どういたしまして、アルミン。これはこの前の、せめてもの罪滅ぼし」

クリスタ「? 何かあったの?」キョトン

ミカサ「海辺の」

アルミン「やめて言わないで!!」


アニ「……」シャリッ...シャリッ...

ジャン(すっげー怒ってる……)

ミーナ「おいしいねーアニ♪」ニコニコッ

ジャン(この状態でなんで普通に話しかけられるんだよ!?)

ジャン(そんでもって……)チラッ

ベルトルト(結局屈まないと割れなかった……)ズーン

ジャン「その……ベルトルト、悪かったな。俺が無理にすすめたせいで……」

ベルトルト「ううん、ジャンは悪くないよ、大丈夫……」ズーン



コニー「なーなー、この種って食っても大丈夫なのか?」シャクシャク

エレン「出すもんなんじゃねえの? そもそも種って食えるか?」シャクシャク

マルコ「植物の中には一応食べられる種もあるけどね。これはどうなんだろう……?」ウーン


サシャ「♪~」シャリシャリシャクシャク

ライナー「サシャ、隣いいか?」

サシャ「!! どうぞどうぞ!」

ライナー「どうも。――さっき言ってた知り合いの食堂って、いつものところか?」

サシャ「そうですそうです! ――前にですね、肉とか野菜は直接卸してもらってるって話を聞いたことがあったので、ダメもとで聞いてみたら都合してもらえたんです」

ライナー「じゃあ、今度お礼に行かないとな」

サシャ「はい、ミカサともそういう話してたんですよ! 今度食事に行こうって――」

ライナー「その時は俺もついていっていいか?」

サシャ「……いいんですか?」

ライナー「ああ。むしろお礼を言いに行かないと失礼だろ」

サシャ「そ、そうですよね、お礼は大事ですよね、はい」モジモジ


サシャ(なんというか……隣に座ると気になってきますね、匂い)ソワソワ

サシャ(ユミルに言われたからじゃないですけど、聞くくらいなら……)チラッ

サシャ「……あのですね、ライナー」モジモジ

ライナー「んー?」シャクシャク

サシャ「その、匂いが……」モジモジ

ライナー「匂い?」シャクシャク

サシャ「匂いが…………………………その、たまらないですよね。味も。このスイカ」

ライナー「ああ、そうだな。珍しい匂いと味だ」シャクシャク

サシャ(……あれ?)


サシャ(もう一回……『匂い嗅がせてください』って言うだけ……言うだけ……)

サシャ「…………スイカの種は消化されないみたいですけど、食べても問題ないらしいですよ」

ライナー「ほう……じゃあ食っちまうか。いちいち出すのも面倒だしな」シャクシャク

サシャ(…………あれー?)

サシャ(今更照れることなんてないですよね、そうですよ……!)グッ

サシャ「………………えと、似たような丸くて大きい果物でメロンっていうのもあったんですけど、みんなで食べるなら断然こっちだって店員のお姉さんに言われまして」

ライナー「メロンか……名前だけでもうまそうだな」シャクシャク

サシャ「ですよね……」

サシャ(………………あれれー?)

ライナー「今日はよく喋るな、サシャ。手が止まってるぞ?」シャクシャク

サシャ「そんなことないですよ……そんなことないですよ!!」クワッ!!

ライナー「? そうか?」シャクシャク


サシャ(くっ……キスの味は簡単に言えたのに、どうして……!!)ギリッ...

ライナー「――おい、顔に汁ついてるぞ」

サシャ「ふぇっ? どこですか?」ゴシゴシ

ライナー「そっちじゃない。……ほら、こっち向け」

サシャ「はぁい」クルッ

ライナー「口元ベタベタだな……お前な、子どもじゃないんだから気をつけて食えよ?」ゴシゴシ

サシャ「はぁ、すみません……」シュン

サシャ(……匂いは、今度二人きりになったときにお願いしてみましょう)ガックリ



ジャン「…………」メリィッ...!!

ベルトルト「わぁ、ジャンって握力すごいんだね」

ジャン「まあな……」メキ...ッ!!


―― 数十分後 夕方

コニー「あー、遊んだ遊んだー!」

マルコ「もうすっかり夕方だね」

エレン「スイカの皮、これで全部か?」ズシッ...

ベルトルト「二つに分けたけど、結構な量だね……」ズシッ...

ミーナ「うわー……スイカの皮ってこんなにかさばるんだね……」マジマジ

アニ(……どこから持ってきたんだろ、あの麻袋)

ミカサ「ありがとうエレン、ベルトルト。ゴミの処分は私に任せて欲しい」


ジャン「……なあ、そのゴミってどうすんだ? 燃やすのか?」

ミカサ「そのままだと燃えにくいらしい。ので、干してから焼却炉で燃やす。証拠隠滅は大事」

ミカサ「その後は、麻袋もちゃんと洗う。……この前のような事態は避けなければならない」ギリッ

エレン「この前ってゴ」

ベルトルト「ダメだよエレン」クチフサギ

ジャン「なら、片付けは男子でやるよ。俺たち結局何もしてねえし、持って帰るのも大変だろ? その量だと」

ミカサ「……」キョトン

エレン「そうだな、こんなうまいモン食わせてもらって何もしないのはよくねえよな!」

コニー「交替で運べばそこまで疲れねえだろうし――よーし、いっちょやるか!」


ミカサ「……」ジッ

ジャン「な、なんだよ?」



ミカサ「……ありがとう、ジャン」ニコッ

ジャン「」





アルミン「うん、忘れ物もないみたいだね」キョロキョロ

ジャン「……アルミン」

アルミン「どうしたの? ジャン。――!?」

ジャン「今日は……いい日だったな……!!」ブワッ

アルミン「う、うん、そうだね……?」

アルミン(なんで泣いてるんだろう……?)


ライナー「――クリスタ、ユミル。もう帰っていいぞ」

クリスタ「うん、ありがとう……でも」チラッ

ユミル「そうしたいんだけどよ、サシャが寝ちまったんだよ」

サシャ「……zzz」スヤスヤ

ライナー「なんだ……遊び疲れて寝たのか?」

クリスタ「ううん、違うと思う。毎晩夜遅くまで起きてるから、その疲れが出ちゃったのかも」

ユミル「毎日毎日訓練にアニとの特訓に夕食後にミカサとお勉強だろ? よくバテねえよなーこいつ」プニプニ

サシャ「んー……」ムニャムニャ

クリスタ「ダメだよユミル、起こしちゃうでしょ?」

ユミル「起こさねえでどうすんだよ、このまま待ってるのか?」


ミカサ「……サシャはライナーが連れて帰るので大丈夫」スタスタ...

ライナー「いや……連れて帰るのはいいが、入れんだろう」

ミカサ「今日の夕方から、寮母さんはいない。だから入れる」

ミカサ「それに、先に帰ったアニとミーナに手引きを頼んである」

ライナー「……用意周到だな」

ミカサ「何事も、下準備は大事」ニンニン

ライナー「他の男子は?」

ミカサ「アルミンとあなた以外は、スイカの皮を担いで先に帰った」

ミカサ「私はもう少しこの辺りを見て回る。ので、クリスタとユミルは、サシャの機動装置を持って帰ってあげてほしい」

ユミル「……わかったよ。行くぞクリスタ」スタスタ...

クリスタ「うん……じゃあライナー、お願いね?」トテトテ

ライナー「ああ、任せとけ」


ライナー「スイカ……だっけか。高かったんだろ? あの果物」

ミカサ「あまりにも高いので、分割払いにしてもらった」

ライナー「……あとで男連中からいくらか集めて渡す」

ミカサ「そうしてあげてほしい。このままだとサシャの懐が半年ほど氷河期」

ライナー「そういえば、そのうちあそこにお礼に行くんだろ? その時は俺もついていっていいか?」

ミカサ「! ……その時は、エレンも連れて行っていい?」

ライナー「? 別に構わんが」

ミカサ(ダブルデートダブルデートダブルデートダブルデート!!)クワッ!!

ライナー「先に行くぞ?」ヨイショット

ミカサ「とても楽しみ」

ライナー「は?」

ミカサ「なんでもない。……それじゃあよろしく」


アルミン「スイカの種が何個か落ちてるけど……これくらいなら、まあバレないかな」ウーン

ミカサ「……アルミン」

アルミン「ミカサ? 女子は全員帰っ……!?」

ミカサ「いい人生だった……!!」ブワッ

アルミン「もしもしミカサ? 大丈夫?」ユサユサ

アルミン(ジャンといい、ミカサといい……そんなに楽しかったのかな……?)


―― 数十分後 女子寮 ユミルたちの部屋の前

ミーナ「部屋はここね。ベッドの位置はわかる?」

ライナー「ああ、大丈夫だ。……ありがとな」

ミーナ「ううん、どういたしまして」

アニ「夕食まで時間があるから、私たちは少し空けるけど……一人で帰れるよね」

ライナー「あと少しでユミルたちも帰ってくるだろうからな、うまくやるさ」ガチャッ

ミーナ「それじゃ、ごゆっくりー」バタンッ





ミーナ「……ねえ、なんでライナーがサシャのベッドの位置知ってるの?」

アニ「さあね。――いいからお風呂行こうよ。結構身体冷えたし」スタスタ...


―― 女子寮 ユミルたちの部屋

ライナー(……よく考えたらアニとミーナに任せたらよかったな)

ライナー「よっと……」ポスッ

サシャ「……zzz」スヤスヤ

ライナー(川から歩いて、立体機動装置で移動して、ここまで歩いてきて、これで起きないって相当だぞ……?)ジーッ

サシャ「んー……」モゾモゾ

ライナー(このままだと身体が冷えそうだな……布団だと暑そうだな。上着でいいか)バサッ

ライナー(しかし、こんなに熟睡するほど疲れてたのか……)ジーッ


―― 肩を並べるのは無理かもしれませんが、寄りかかるような関係には、なりたくないんです

―― ……同じ味を、一緒に知っていきたいですから」



ライナー(あの言葉、まさか本気だったとは……)

ライナー「……言えば、俺が教えてやるってのに」ボソッ

サシャ「……zzz」ムニャムニャ

ライナー「……」ジーッ...

ライナー(もう少しだけ、眺めてるかな……)


―― 消灯後 女子寮 ユミルたちの部屋

サシャ「……」パチッ

サシャ「……?」ボンヤリ

サシャ(夜……真っ暗……消灯時間……!?)

サシャ(ああああああ夜ご飯食べ損ねました……!! もったいない……!!)ワナワナ

サシャ(スイカだけじゃ……っ! スイカだけじゃ物足りないです……っ!!)ゴロゴロ

サシャ(というか、川でスイカを食べた後から記憶がないんですが、誰がここまで運んできてくれたんでしょう……? ミカサですかね……?)モゾモゾ


サシャ(あれ? 上着……私やミカサのにしては大きいような……?)

サシャ(取り敢えず広げてみましょうか……)ピロッ

サシャ(わっ……肩幅大きい……)マジマジ

サシャ(腕も太い……ということはこれって……)

サシャ(ライナーの上着……!?)ワナワナ

サシャ(ということは、ここまで送ってくれたんですかね……?)

サシャ(いやいやでもベルトルトかもしれませんし! 他にも背が大きい男子はいっぱいいますし!)ブンブン

サシャ(名前……は書いてない! イニシャルもない!!)ウラガエシ

サシャ(なんで書いてないんですか!? 洗濯しないんですか!? これ、一体誰に返したらいいんですか!?)ジタバタジタバタ


サシャ「……」ジーッ

サシャ(……匂いを嗅げば、わかったりしませんかね……?)

サシャ(……でも人としてどうなんでしょう!? 勝手に匂い嗅ぐのってどうなんでしょう!?)

サシャ(…………でもでも、ちょっとだけならいいですよね? だって男の人はああいう本読んでるんですから、おあいこですよね?)

サシャ(それに比べたら、全然変なことじゃないですよ、そうですよ)

サシャ(変じゃない、変じゃない、変じゃない……)

サシャ「……」ジーッ...



サシャ「……」





サシャ「……」   ...クンクン


ユミル(ふむふむ、今は方言女子が熱いのか……)ジーッ

ユミル(クリスタの方言……)


クリスタ『ユミル、おはよごす!』キュピーン☆

クリスタ『この風呂ずんぶあずましいな!』チャプチャプ


ユミル(……うん。ないな)

ユミル(ていうか男の好み毎月コロコロ変わりすぎだろ……ちゃんと調査してんのか? この雑誌)ペラッ

ユミル(先月は『本能のままに生き急げ! 彼の匂いで野性の勘を取り戻そう!』だったんだよなー……)

ユミル(これ全部こなせるなら超人だぞ……)ペラッ


                       \ドサッ!!/


   「あいたぁっ!?」


ユミル「!? なんだぁ!?」バッ


ユミル「……何してんだ、サシャ。床に転がって」シャガミコミ

サシャ「ど、どうしましょう、ユミルぅ……///」

ユミル「ああ? 顔真っ赤だぞ、冷えて熱で出たか? ていうかその上着、誰の……」

サシャ「わ、私……おかしくなっちゃったのかもしれないです……///」

ユミル「……お前元からおかしいだろ」

サシャ「違うんです、そうじゃなくてぇっ……!///」

サシャ「ユミルの、言った通りでした……!///」



サシャ「味も、匂いも……たまらないです……///」ギュゥッ



ユミル「…………………………はぁ?」





おわり

終わりです。読んでくださった方ありがとうございました!あー妄想楽しい
いつも短い短いと言われるので色々盛り込んでみましたけど、やっぱり長めのはキツいので次回から短めに戻ります


この上着は返ってこないなwww

乙ありがとうございますー嬉しいです!

>>75 さん
借りた物は返すまでが一セットなので次回ちゃんとやります、お楽しみにー

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