もし現代に艦娘が舞い降りたら。side:加賀 (108)
もし現代に~的なif物語が中心です。夢と妄想と願望を煮込んだような感じなので突っ込みどころ満載ですが目をつぶってください。
初SSなので、稚拙&意味不的表現が多々あると思いますが大目に見てやってくださいイベント前の資材繰りで死にかけてます。
加賀さんがメインです。
加賀さんと旅行したいです。
駄文に付き合ってくれる心優しい人は読んでくれると嬉しいです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398087850
目が覚めるともうすでに下車駅のすぐ手前であった。薄暗く人が少ないからか冷房が効きすぎた車内に響く私鉄車掌独特の放送は目的地である駅を案内している。膝の上のパソコンを閉じ、降りる支度を整え、ドアの前まで移動する。トンネルを抜けるとすぐに駅だ。
神奈川県横須賀市、横須賀鎮守府。
明治17年に横浜東海鎮守府が横須賀に移転されて以来、昭和20年の太平洋戦争終戦時までの約60年間、大日本帝国海軍の中枢軍港であり、終戦後もその場所には在日米海軍が基地を構え、周辺には海上自衛隊の施設もあった。
「あっついなー」
電車のドアが開くと日本とは到底思えないような熱気に襲われ、全身から汗が滲み出てきた。思わずネクタイを緩める。
発車ベルが鳴り終わりドアが閉まると、赤い電車はホームに俺だけを残し、滑るようにまたトンネルへと消えていった。雲ひとつ無い快晴の空から燦々と太陽が照りつけ、俺は逃げるように出口へと向かう。
改札を抜け、駅前ロータリーにはまばらに人がいる程度でいつになく活気が無い。駅前のコンビニでスポーツドリンクと新聞、あとチョコ菓子を買う。ここいら周辺じゃ営業している商業施設と言えばここくらいで、俺がここに配属されてからは随分とお世話になっていた。店員と軽く会釈を交わし、店を出る。嫌に甘いスポドリを口に含み閉鎖された駅前の大型商業施設の脇へと歩みを進める。普段、徒歩5分とかからないのにその5分がまるで致命傷になりかねないようなくらいに日差しが強い。商業施設の脇は大層な大通りなのに車は一台も通らなく、ただただ逃げ水を映すだけだ。
(たった数年でここまで変わるものなのか)
誰もいない、街だった場所を歩きながら、そんな事を思った。
変化。
そして、こうも思う。
この数年で一番大きく変わったもの。
それは世界情勢でもなければ時の政権でも、この寂れた横須賀の街でもない。
俺自身であった。
今から2年ほど前に、貨物船やタンカーが外洋航海中に頻繁に襲われる事件を期に沿岸地方への攻撃が多発した。稀に低空で飛行していた旅客機が撃墜される事態までもが発生した。当初はテロ組織による襲撃事件とされていたが、それも表向きのもので実際には違っていた。
深海棲艦。
その存在が事件の真相だと広く世の中に知れ渡ったのは今年に入ってからである。それが何者でどこから来たのか、何を理由に人を襲うのかなど、全てが謎のベールに包まれていた。ハッキリしている事は、それが人類の敵である事、そして、人類が有する核以外のありとあらゆる攻撃手段に有効性が見られないという事であった。現に、米国、ロシアを初め各国の陸海空軍が数え切れない程の戦闘を交えているがどれも深海棲艦の侵攻を阻むことは出来ても、倒すことは出来なかった。その深海棲艦の発現からは世界情勢が大きく乱れ、沿岸地域の避難、外洋航路の封鎖、資源輸出入の滞り、物資の不足、人々の生活に大きな支障が出るようになっていった。特に島国である我が国は甚大な影響を受け、沖縄県と鹿児島県の一部を含む全域全島避難から始まり、小笠原諸島などの本土から離れた離島、また本土でも危険とされる沿岸部からの避難指示が出され多くの市民が内陸への避難を強いられる事となった。加えて多くを輸入に頼っている食料や燃料等の不足、それに伴う電力不足が深刻になり、特に電力については一時、国内総発電量の半分を喪失する事態にまで至り、東京などの大都市圏以外の送電が全てストップされるという、まさに非常事態。そう、まるで戦争のような状況に陥ったのだった。
俺は駅から庁舎まで片道5分の長い長いシルクロードを歩き終え、庁舎玄関のドアを開ける。冷気。最高だ。ああ、もう死んでもいい。
「おはようございます、提督」
極上の脱力感に身を委ねていると、横から声を掛けられた。
「今日は随分と早かったんですね。まだ午前中ですよ。」
栗色でロングストレートの髪におっとりとした目元口元。白い上衣に赤い袴の弓道着の装い。声の主は赤城だった。
「ああ、単に事務連絡だったからな。このくらい電話で欲しいものだ。赤城はどこ行ってたんだ?」
「えっ?!わ、私ですか!ええと、食d……中庭を散歩していました。」
嘘こけ!誰が好き好んでこの灼熱の炎天下の中を散歩すんだよ!
「これから執務室へ戻られますか?」
「ああ、そうだよ。」
「では、ご一緒します。」
なんでだよ。何故ついてくる。
「今日も猛暑の中ご苦労様です提督。あ、カバンお持ちしましょうか。」
うわ、キモい。
「……本音は?」
「お菓子をください。」
ですよねー。そうだと思いましたよ。俺が本省に呼び出される度になんか買って帰っていたらこのざまである。本当に食べ物には目がないやつだ。そういうところも、そっくりだけどな。
「はい、これ」
と駅前で買ったチョコ菓子を与える。
「わー、ありがとうございます」
これはちょっと可愛い。うん。
「って、これ、きのこじゃないですか。私、たけのこ派なんですけど。」
うるせぇ文句あっか、俺はきのこ派だ。
「じゃあ、お返し願おう。」
「嘘です。ごめんなさい、すごい嬉しいです。」
なんて茶番を繰り広げている間に執務室につく。
「ああ、疲れた。てか、暑かった。」
椅子に座り机に突っ伏す。
「提督、着替えないのですか?」
と、赤城がカバンを机に置きながら言う。
「着替えなきゃダメ?」
突っ伏したまま返答。
「ダメです」
即答。なんでも彼女らからするとスーツ姿というのは好みでは無いらしい。俺は基本的に自衛官では無いからあまり制服を着たくないのだが彼女らが言うんだからしょうがない。
「はいはい、わかりましたよ。着替えますよ。」
「そうですか、では私は外に出てますね。」
と言って赤城は素早く出て行ってしまった。そんなに制服のがいいのかね。仕方がないのでお着替え、上着を脱ぎ、ネクタイを外す。
(半袖のやつでいいよな。暑いし。)
「ちゃんと第一種の方を着用してくださいよ」
ドアを少し開け、顔だけを出した赤城が釘を挿す。思い切り見透かされたようだ。
「はいはいはい、わかったわかった」
正直、第一種の方は長袖だから嫌なんだけど。確かに、この制服の方が海軍らしいっちゃらしいけどね。
渋々それに着替え終え、カバンからPCを出し電源に繋げると赤城が戻ってきた。
「やはり、その格好の方が様になりますね。はい、これ麦茶です。冷えてますよ。」
コップを机の上に置いた。結構、気が利くじゃないか。
「ありがとう。」
夏に冷えた麦茶って最高だと思いませんか。出来ればビールの方がいいけども。赤城は自分の分の麦茶を持ちながら秘書机の椅子に座り、少し真剣な眼差しで俺を見つめた。
「提督。」
「んー?」
あー麦茶ウマイ。
「加賀に会ったことあるって本当ですか?」
「ぶっ!!!?」
盛大に吹きこぼした。
「ど、どこでそれを!?」
「提督が戻る前に食堂でマミヤさんに聞きました」
何ゲロっちゃってんのあの人ォォ!てか赤城さん散歩してたんじゃないんですか!
この人もこの人なりに加賀さんを心配してるようだ。考えてみれば、最初に加賀さんを兵器と揶揄したのは加賀さんを人間として見ているからこそなのかもしれない。
「……全ての人が、アマギさんのような考えを持ってくれればいいのですが」
風の音に消されそうな細い声で意味深な事を囁く。
「それは一体」
「え、ああ、いやいや、なんでもありません。気にしないでください。」
こちらこそ、いやいやですよ。そこまで聞いたら気になってしかたがないでしょうが。俺が後5年若ければ絶対に踏み込んでるとこだよここ。
「それより、加賀さんの能力は単に飛行機を出現させるだけじゃないんですよ。」
話をはぐらかされたように感じたがまぁいい。
「やっぱり飛行機だったんですか、あれ」
自己紹介で空母と言われたしな、形も飛行機だったし。
「まぁ飛行機です。詳しくは後でお話するとして、その飛行機を使って加賀さんは未知なる敵と対等に戦闘を行う事が可能なんです。」
やはり、そういう事だったか。まさに人類の希望である。
「えと、その加賀さんの能力?じゃないとその未知なる敵とやらは倒せないですよね、確か。」
「そのとおりです。それは先ほど廊下で話した通り、我々の兵器ではまったくもって有効打を与えられませんでした。1発100万ドルのミサイルが聞いて呆れますよね。」
ミサイル1発1億円か。うまい棒1000万本分だな。
「では、何故加賀さんがその未知なる敵と渡り合えると分かるんですか?」
「ああ、それはですね。実際にこの目で見たからですよ。」
実際にこの目で、どうマミヤさんは言った。ということは少なくとも1回は加賀さん含めここの米軍部隊がその未知なる敵と会敵したことになる。空港の警備の厳重さも少しわかった気がした。
「私が見たのは今までに2回、でも加賀さんはそのうちの1回しか覚えていないようですが」
「そ、それは私が話を聞いてもいい案件なんですか?」
実際の戦闘の話となると何故か身構えてしまう平和国家の公務員である。
「ええ、構わないですよ。いつかあなたの耳にも入ることですし、まずは1回目、それは2週間前ですね」
いつか俺の耳に入る?意味深発言が連発している。そんなことより2週間前というとマミヤさんが通訳を始めたとか言ってた時期とかぶるじゃないか。
「そうですね、我々が加賀さんを発見したまさにその時です。」
通訳を始めたってそういうことだったのか。加賀さんが発見された時、それは気になる。
「2週間前の夕刻、我々の軍事衛星がミッドウェー諸島近くの領海に不明艦を発見したんです、全長は700フィート、いえ200m以上。とてつもない大型艦でした。」
200m以上の大型艦を領海に侵入されるまで気づかないものなのだろうか。
「もちろん、ミッドウェーと言ったら一番近いのはここの基地なので、直ちに戦闘機をスクランブルさせ戦闘艦を緊急出港させたそうです。」
「あの、話の途中ですいません。アマギさんはここの基地にいたんじゃないですか?」
ここの職員をしています、とか通訳とか言ってなかったけマミヤさん。
「いえ、その時はジョージ・ワシントンに乗艦していました。空母ですね。」
ジョージ・ワシントン。米海軍で唯一、米国外に活動拠点を設ける原子力空母。職業上よく知っている艦だった。それに乗艦していたとは、この人、本当にただの職員なのか。
「知ってます。横須賀基地に配備されている艦ですよね。」
「そうです。第7艦隊の一部になりますね。その当時我々は、ミッドウェー島の300km南を横須賀に向け航行している最中で、不明艦発見の一報もジョージ・ワシントンに逐一情報が寄せられいつでもスクランブルが出来る準備が整えられていました。」
両手を腰の前で握り加賀さんを見ながらマミヤさんは続ける。
「そして、我々にも出撃命令が出たのです。ナイトホーク、えとヘリですね。」
そこは戦闘機では無いのか。
「我々に出撃命令が出るということは、それなりに事態が逼迫しているという状況ですので仮にその不明艦が敵戦闘艦であった場合は戦闘機を飛ばすはずです。ですが、その時のオーダーはヘリ、しかも、戦闘関係ではなく要救助者の救出という内容でした。」
不明艦発見と要救助者の救出。どうも繋がらない。
「我々としてはとんだ拍子抜けでしたね。一時は戦闘を身構えていたので、まぁなんというか安堵感がありました。そして、直ちに搭載しているヘリを現場海域まで向かわせる事なったのですが、その場所はどう見ても不明艦が発見された場所と一致していたんです。後々わかったことですが、その不明艦は加賀さんだったらしいんですよ。」
んん?一気にまたわからなくなってしまった。不明艦が加賀さん?さっき全長200m以上とか言ってなかったけか?どうみても170cmも無いですよ加賀さん。
「その不明艦については置いておくとして、その要救助者というのが加賀さんだったんです。」
置いておくんだ。到底信じられない事が起きる世の中なのだからまぁ色々あるんだろう。
話は変わるが、俺、今日1日でかなり順応力が高くなった気がする。今なら万能細胞の存在も信じるよ。
「海に漂っているところを我々に救助されヘリが母艦まで戻っくる間もずっと加賀さんは意識を失ったままでした。ヘリから降ろした時は、まず最初に服装に違和感を覚えましたね。いまでこそ見慣れましたが、どう考えても不釣り合いですからね。」
そりゃ、ミッドウェー島近海に弓道着(仮)を纏った女性が漂っていることなんて万に一つもないような状況だからな。俺は陸で初めて加賀さんを見たからあまり違和感を覚えなかったけど海上で漂流者として見た人はかなり驚愕だろう。
「その時の加賀さんはよく覚えています。外見でも分かるくらい衰弱していましたからね。顔面蒼白で不謹慎な話、生きているのか亡くなっているのかわからないくらいでしたよ。日没前ギリギリで救助出来なければ死んでしまっていたかもしれません。すぐ艦内の医務室に運ばれました。」
そこまで言うと、マミヤさんはズボンの右のポケットから1枚の写真を取り出し、俺に見せてくれた。
「これ、なんだと思いますか?」
望遠を目一杯きかしたようなその写真には、靄のようなものに覆われた船影のような姿が写っていた。まるで風呂場のガラス越しに船を見たような、おおまかな輪郭しか捉えられないようなそんな感じ。
「これが、その未知なる敵というやつですか?」
「そうです。レーダーにも映らない謎の船。この写真を撮ったのは加賀さんを収容してから12時間くらい経った昼前時ですかね。艦の横に突如現れ、攻撃してきたんです。」
いきなり攻撃か、未知なる敵というのは随分と好戦的なようだ。
「我々もありとあらゆる形で応戦しましたが、全て効果がありませんでした。ゆうなれば、手を縛った状態でボクシングするものですよ。一方的に攻撃を浴び続けるわけです。そして攻撃を浴び続ければいつしかダウンします。ジョージ・ワシントンもそんな状況でした。ただ唯一救いであったのは、我々のもとには加賀さんが居たということでした。」
そう言うとマミヤさんはは加賀さんの方を向き、少し笑う。
「あの時は、どうすればいいか皆が右往左往しているなか、医務室で意識を失っていた加賀さんがいきなり飛行甲板上に現れるやいなや、救助時には何も持っていなかったはずなのに、大きな弓を携え、次々に甲板から矢を放ち、敵を沈黙させてしまったのです。」
すごいな加賀さん。原子力空母をも凌ぐ戦闘力の持ち主なのかよ。
「敵を完全に沈黙させた後、加賀さんはまた膝から崩れ落ちるように意識を失ったそうです。この事自体、加賀さんは覚えていないらしいのですが。もし加賀さんがいなかったら、今頃ジョージ・ワシントンは海の上に浮いていられなかったのかもしれません。それが1回目の未知なる敵との戦闘です。」
加賀さんがこの基地内で随分と丁重に饗されている理由がわかった。まさか原子力空母1つを救っていたとは。
「なるほど、それで2回目は?」
そう尋ねるとマミヤさんは未知なる敵の写真をポケットに戻しながら言った。
「アマギさんがいらっしゃる1時間ほど前です」
マジかよ!!
「ハワイ島の沖合にて小型ですが未知なる敵との会敵がありました。今回の戦闘においても加賀さん大活躍でしたよ。出来ればお見せしたかったんですが。」
ハワイに来る途中、空港の閉鎖で1時間遅れたことを思い出す。
「あ、そろそろ時間のようです、では行きましょう。」
滑走路の方へ近づくマミヤさん。加賀さんは弓を射る構えを解き、滑走路の真ん中で空を見上げていた。自らが飛ばした飛行機の行方でもみているのだろうか。遠くからまた音が近づいてくるのが聞こえ、加賀さんが滑走路の先に目をやる。1機のプロペラ機が滑走路へと高度を下げてきていた。大きな翼の下には車輪が2脚展開され、航空大の訓練機のような単発のプロペラ、遠目でもエンジンの周りが黒いのが分かる。機体は全体的に灰色のような色で尾翼と胴体には赤い線が何本か入っており、大きな日の丸が印されていた。
少なくとも現代の飛行機では無い、それだけは理解できた。
飛行機は滑るように滑走路へと降り、真っ直ぐとこちらに近づいてきていた。そして、ちょうど加賀さんの手前5m程で完全に停止し、それに合わせてエンジンも止まった。プロペラの動きが鈍くなる。大きなエンジンの音が消えると滑走路上では風と波の音だけになり、妙な静寂に包まれた。それにしても目の前から迫ってきている飛行機を前に微動だにしない加賀さんすごい。
「いやぁ、ここまで間近で見るのはこれが初めてですけど、本当に零戦なんですね!」
マミヤさんがやや興奮気味にその飛行機へと駆け寄るように近づいていき、回転が停まったプロペラに触れる。ん、え?
「ゼロ戦?!?!」
裏返る声が滑走路に響く。零戦、それは俺でも知っている。それどころか日本人なら誰しもが一度は耳にしたことがあるだろう。太平洋戦争時、日本軍が有した艦上戦闘機の略称、それが零戦である。問題はこの代物が70年前の戦闘機であることで、今は零戦が活躍していた時期から70年後ということだ。
「そうです!零戦です!本物です!」
マミヤさんは満面の笑みで右翼側の胴体の部分をポンポン叩いていた。加賀さんも何故か満更でもないような感じでプロペラを手で撫でている。どうやら俺が想像していた空母とはまるで違う様だった。特に時代が。
「さっぱりわからない、って顔してますね」
いつの間にか主翼の裏にまで回っていたマミヤさんが言う。
「え、ええ、何がなんだか」
加賀さんが空母であり未知なる敵と戦えて飛行機を出現させる能力があるのは分かった、だけど何故零戦。
「もしかして、加賀さんの、「加賀」ってわかりませんか?」
加賀さんの加賀の意味?日本の旧国名とか石川県の市名とかしか知らない。
「加賀さんのお名前じゃ無いんですか?」
「そうです、確かにそうですけど。……ああ、そうか、ごめんなさい説明するの忘れてましたね」
何?なになに?まだ驚愕する事実があるの?もう俺の理解の範疇はとうに超えているんですけど。
「加賀さんの加賀は旧日本海軍が所有していた空母の名前です。」
ということは、加賀さん言っていた空母というのは昔、日本海軍にいた本物の空母ということか?
「わかりやすく言うと、ほら、アマギさんも戦艦大和は知っているでしょう。大和はその艦の名前ですよね。それと同じで、その昔、日本海軍では航空母艦として加賀という艦名の艦を運用していたんです。それが加賀さんです。」
今の説明でわかりやすくなっているのなら、俺はまた理解するという事を投げ捨てなくてはならない。
「え、えーと、じゃ、加賀さんはその日本海軍の加賀という船の生まれ変わりみたいなものなんですか?」
「ああ!そうです!そっちのほうがわかりやすいですね!」
なんとか理解できた。いやもうなんていうか、常識を理性で押さえつけてやっと理解できた。
「な、なーるほどー」
幸いマミヤさんは零戦に夢中で自分でも分かる最高の棒読みは聞かれていなかった。
俺も観察してみようと零戦に近づこうとすると加賀さんがプロペラは撫でる手を止め、こちらを振り向き、少し身構え俯く。明らかにこの能力を見せる前と雰囲気が違う。
「えっと、俺も見ていい?」
そう断ってみる。加賀さんは、まだ何かに怯えるような表情を醸し出す。やばい、また俺なんかやらかしたのか。
「いや!別に加賀さんが嫌だったらいいよ!全然!」
そう言って胸の前で手を振りながら、踏み出した足を一歩戻すと、加賀さんが重く閉じた口を開いた。
「…………私の事、怖いとか、奇妙だとか思わないの?」
それさっきもマミヤさんに同じようなこと聞かれたような気がする。あ、怖いとか変とかは聞かれなかったか。……そうか、もしかして加賀さん気にしてるのか。でも考えてみれば恐怖とか奇妙というのは感じなかったな。ただただ驚くだけで。
「いや、まぁただ常人とは違う能力を持っているだけで、それ以外は変わらないんでしょ。加賀さんは加賀さんなんだからそれで俺はいいと思う。」
やばい、超偉そうに加えていつの間にか言葉が砕けて丁寧語忘れてる。しかも、なんか全て分かってます的な態度がクソムカつく。自分でもそう思う。
「そう、ですか。」
やばいやばい、「そう」と「ですか」の間に句点が入っている。これは嫌われたかもしれない。
「変わった人ね、あなたって。」
やばいやばいやばい、これ完全に嫌われたじゃん。
そう言って加賀さんは背を向けた。
こ、これしか今週は書き溜めれなかったっぽい。
また、来週までに書くっぽい。
見てくれた人、すぱしーば。
投下するときは「これから投下します」
終了する時は「本日の投下終了です」
とか入れておくといいよ
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