やよい「私の恩人」 (39)

やよい「ぷ、プロデューサー!」

P「やったな、やよい!ついにお前もBランクアイドルだ!」

やよい「私…私…たった一年でここまでこれるなんて夢にも……」ウルッ

P「いや、やよいは頑張ったよ!側で見てた俺が一番よく分かってる!」

やよい「プロデューサー……」グスッ

P「こら、泣くな。『まだ』Bランクアイドルなんだからな。道のりは長いぞ?」

やよい「…はいっ!これからもよろしくお願いします!」

P「ああ、一緒に頑張っていこう!」








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やよい「えへへ…プロデューサーは私の恩人ですー!」

P「おいおい、それは大げさだろ」

やよい「そんなことないです!私、プロデューサーに恩返しできるかどうか……」

P「ははは。やよいらしいな。そうだな…じゃあ今度晩飯でもご馳走になりに行こうかな」

やよい「へ?そんなことでいいんですかぁ?」

P「ああ。もやしパーティーのときには呼んでくれ」

やよい「うっうー!絶対呼んじゃいますー!」

P「ああ、楽しみにしてるよ。ははは」



ー翌日ー

やよい「プロデューサー、お疲れさまでしたぁ!」

P「お疲れやよい。また明日な」

やよい「…あの……」

P「ん?どした?」

やよい「晩ごはん……」

P「?」

やよい「ご馳走するって……」

P「ああ、昨日の話しか。やよいの家族の迷惑にならないなら、俺はいつでもいいぞ」

やよい「今日!」

P「え?」

やよい「今日…ご馳走したいです……一日でも早く……」

P「いや、俺は今日でもかまわないんだけど、昨日の今日でやよいの家族に」

やよい「つ、作りに…行きたいかなーって……」

P「晩ごはんを?どこに?」

やよい「プロデューサーのお部屋に……」

P「いやいやいや!」

やよい「ダメ…ですかぁ?」

P「散らかってるからダメ。資料とか山積みだし」

やよい「お仕事にガンバってるってことですー!」

P「いや、そういう問題じゃ……」

やよい「恩人…だから……プロデューサーは、私の…だから……」ウルッ

P(おい、泣くなよなぁ…)

やよい「……」グスッ

P(はぁ…いつまで経っても弱いんだよな、俺。この泣き顔に……)

P「…いいよ」

やよい「…え?」

P「部屋で晩ごはん作ってくれ」

やよい「ほ、ホントですかぁ!?」

P「やよいに嘘ついてどうなる?ただし」

やよい「う?」

P「21時までには帰らせるからな」

やよい「大丈夫です!ご飯作ったらすぐに帰りますから!」

P「ああ、そうしてくれ」

ーそしてPの部屋ー

やよい「ジャーン!いっぱい食べて下さいね!」

P「おお、予想外だ!もやしが無い!」

やよい「うー。私、もやし無くてもちゃんとお料理作れるんですよぉ?」

P「はは、悪い悪い。つい」

やよい「えへへ」

P「おかしなこと聞くようだけど、家計の方はいくらかラクになったのか?」

やよい「はい!リフォームとかできちゃいそうですー!」

P「お、それはスゴいな。ついこの前給食費借りにきてたのに」

やよい「うぅ…それは忘れて下さい……」

P「ははは」

やよい「…えへへー」

ー翌日ー

やよい「おはようございます、プロデューサー」

P「おはよう。夕べはご馳走さま」

やよい「お皿洗わずに帰っちゃって、ごめんなさい……」

P「気にすんな。そこまでさせるワケにはいかないしな」

やよい「はい」

P「今日は新曲の打ち合わせだな。Aランク目指して頑張ろう!」

やよい「はい!よろしくお願いしますー!」

ーその日の夕方ー

P「お疲れさん。いい曲になりそうだな」

やよい「はい!とっても可愛くてステキな曲になりそうですー!」

P「売れっ子の作曲家さんがオファー受けてくれたしな。これもBランク効果かな?」

やよい「プロデューサーのおかげです!」

P「またそうやって持ち上げる」

やよい「えへへ。それで…あの……」

P「ん?どうした?」

やよい「今日も晩ごはん作りに……」

P「…は?いやいやいや!」

やよい「ダメ…ですかぁ?」

P「ダメとかじゃなくてな。そんなに気を使わなくていいと言うか……」

やよい「だってプロデューサーは恩人だし…恩返ししたいし……」ウルッ

P「そんなに思い込むことないんだぞ?それにな、俺のしたことなんて微々たるもので」

やよい「違います!」

P「やよい?」

やよい「プロデューサーじゃなかったら…プロデューサーとじゃなかったら…私…私……」グスッ

P「…ハァ……」

やよい「ごめんなさい……」グスグスッ

P「作ったらすぐに帰ること。いいな?お前はまだ中学生だ。ホントなら晩飯作らせるのだって心苦しいんだからな」

やよい「…はい。ごめんなさい……」

P(まぁ、気持ちは嬉しいけどな)

ーPの部屋ー

やよい「プロデューサー!」

P「ど、どうした?」

やよい「昨日のお皿、まだ洗ってないです!」

P「ああ、やよいが帰ったあと、ちょっと仕事しててな。そのままになってた」

やよい「もう!食べてすぐ洗わないのは、お行儀が悪いんですよぉ!」

P「ごめんなさい……」

やよい「先にお皿洗っちゃいますから、座ってて下さい!」

P「俺もてつだ」

やよい「座ってて下さいー!」

P「はい……」

P「フゥ…今日も美味かった……」

やよい「えへへー。いっぱい食べてくれてありがとうございます!」

P「いっぱい作ってくれてありがとうございます」


やよい「じゃあ、お皿洗っちゃいますね?」

P「いや、それは俺が」

やよい「またほったらかしにしちゃいます!」

P「きょ、今日はちゃんと洗うって……」

やよい「プロデューサー」

P「はい」

やよい「座ってて下さい」

P「はい…分かりました……」

P(どっちが中学生だか分かんないな、これじゃあ……)

ー翌日ー

P「お。やよい、おはよう」

やよい「おはようございますー!」

P「昨日は悪かったな、食器まで洗わせて」

やよい「大丈夫です!慣れてますから!」

P「大家族だもんなぁ。家の食器はあんなもんじゃないよな」

やよい「はい!だから今日は、プロデューサーは何も言わずに座ってて下さい!」

P「…今日?今日って?」

やよい「へ?今日の晩ごはんのことですけど?」

P「今日も来るのか!?」

やよい「…イヤ……ですか?」

P「…あのな、やよい」

やよい「はい」

P「恩返ししなきゃとか、そんな…なんて言うのかな…そう、脅迫観念に囚われなくてもいいんだぞ?」

やよい「きょうはくかんねん?」

P「〇〇しなきゃ…みたいな」

やよい「そんなこと思ってないです!私、恩返ししたいからやってるだけです!」

P「だけどな…」

やよい「私…なんにもできなかったんです……」ウルッ

P「やよい……」

やよい「だけどプロデューサーのおかけで、ちょっとだけ自信が持てるようになったんです!」グスッ

P「その気持ちだけで十分だよ、やよい」

やよい「ダメです!」

P「ちょっと落ち着け。落ち着いてゆっくり話をしよう」

やよい「…今日は、ハンバーグです」

P「やよい?」

やよい「ハンバーグ食べてもらうんです!夕べから決めてたんです!」

P「あのな…一回ソファーに座って」

やよい「………」タタタッ

P「あ、やよい!」

P(純粋すぎるんだよな、あいつ。どうしたもんかな……)

P「」

ー夜ー

P(帰ってこなかったな、やよい)テクテク

P(今日はレッスンだけだったから、なんとか取り繕えたけど……)テクテク

P(音無さんか伊織に相談してみようかな……)テクテク

やよい「…おかえりなさい」

P「やよい!?なんでここに!?」

やよい「プロデューサーのお部屋ですから」

P「ずっと待ってたのか、ドアの前で?」

やよい「ずっとじゃないです。5時間くらいです」

P「ずっとって言うんだよ、それ……」

やよい「ハンバーグ、作らなきゃいけないから」

P「……」

やよい「恩人だから…お兄ちゃんみたいに思ってるから……」

P「…とりあえず中に入ろう。夜はまだ冷える」ガチャ

やよい「はい……」

やよい「さぁいっぱい 食べよぉーよ♪」コネコネ

P(…ちゃんと話をしなきゃな、今度こそ)

P(恋愛感情とか、そんなのとは違う)

P(恩返ししてる自分に酔ってるわけでもない)

P(ただただ純粋に、俺に喜んでもらおうと……)

P(なんて言えばキズつけずに済むかな……)

やよい「えへへー」ニコニコ コネコネ

P(難問だな……)

P「ご馳走さま」

やよい「お粗末さまでしたー!」

P「じゃあ、皿洗いを」

やよい「プロデューサー、はい」スッ

P「へ?」

やよい「最近『人間をダメにするソファー』っていうのが流行ってるって」

P「ああ、ネットで見たかも」

やよい「これはね、プロデューサーをダメにするソファーですー!」

P「ソファーってお前…ただの膝枕だろ、それ……」

やよい「あ、ひどいですー!私の膝枕ですよぉ!」

P「いや、なんでもかまわないんだけどさ…さすがにそういうのは……」

やよい「私が中学生からですかぁ!」

P「それもあるし、お前が二十歳を越えてたとしても、プロデューサーとアイドルだ」

やよい「そんなの分かってますー!」

P「分かってるなら」

やよい「私、プロデューサーとお付き合いしたいとか、そんなこと思ってません!」

P「当たり前だろ……」

やよい「私はただ…ただ…プロデューサーに何かしてあげたくて…恩人だから…だけど私…
なんにも……」

P「気持ちだけで十分だって言ったろ?」

やよい「だけど…だけど…だけど……」グスッ

P「今日はもう帰りなさい」

やよい「……」

P「やよい。俺は怒ってるわけでも鬱陶しがってるわけでもない。分かるな?」

やよい「はい……」

P「明日こそ、ちゃんと話をしよう。ゆっくり、落ち着いてだ」

やよい「…ここが一番」ボソッ

P「ん?」

やよい「このお部屋が一番、ゆっくりできます。落ち着けます」

P「…なら、明日も来なさい。晩ごはんは作らなくてもいい。だからちゃんと話そう」

やよい「はい」

P「ん。じゃあ、今日はここまで」

やよい「…お疲れさまでした…おやすみなさい……」

P「おやすみ、やよい」

ー翌日、夜ー

P「……」

やよい「ノンストップで いってみーましょ♪」グツグツ

P(…まぁ、材料買ってきたんなら仕方ないよな)

P(今日で…4日連続か?)

P(4日も自炊しなかったの、久しぶりだな)

P(なんか……)チラッ

やよい「ごまえー ごまえー♪」コトコト

P(ラク…だな……)

P(……)

P「ご馳走さま」

やよい「お粗末さまでした!今日もいっぱい食べてくれて嬉しいですー!」

P「…美味いからな、やよいの料理」

やよい「ホントですかぁ!うっうー!」

P「……」

やよい「じゃあ、お皿洗っちゃいますね?」

P「うん」

やよい「はれ?今日は何かお話しするんでしたっけ?」

P「…だったかな?」

やよい「プロデューサーが言ったんですよぉ!ゆっくり落ち着いて、って」

P「…だったかもな」

やよい「もう!プロデューサー、しっかりして下さい!」

P「律子の真似か、それ?」

やよい「あ、バレちゃいました。えへへー」

P「ははは」

やよい「お皿とお鍋、洗い終わりましたー!」

P「ごくろうさん…じゃなくて、ありがとう」

やよい「気にしないで下さい!恩返しなんですから」

P「…そっか」

やよい「それで、えっと…なんのお話しでしたっけ?」ニコニコ

P「ん?ああ、そうだな……」

やよい「?」ニコニコ

P「…………プロデューサーをダメにするソファー」

やよい「へ?」

P「なんか夕べ、そんなこと話してた気がする」

すいません、今日はここまでです。

やよい「えへへー。ちゃんとおぼえてたんですね」

P「まぁ…な」

やよい「それじゃあ、はい」ストン

P「なんか、自分で掘り返しといてアレだけど…いまさらながら罪悪感が……」

やよい「大丈夫です!ただの恩返しですから!」

P「そう…だよな。はは」

やよい「それじゃあプロデューサー、どうぞ!」

P「う、うん…」コテン

やよい「どうですかぁ?」

P「…いい感じだ」

P(ホントはちょっと固いけど……)

P(仕方ないよな。まだ中2だし)

P(それにやよい「善意」をムダにはできないしな)

やよい「よかったですー!プロデューサーをダメにするソファー、大成功です!」

P「おいおい、ダメにはなってないぞ?」

やよい「あっ、そうでしたぁ」

P(まぁ…これくらいはな。やよいなりの恩返しなんだから)

P(これくらいは……)ウトウト

ー翌朝ー

P「…膝枕されたまま寝てしまったのか」

P「ん?」

   プロデューサーねちゃったから、おふとんかけて帰りますね。
   カギをかけて、ポストの中にいれておきます。
   明日は肉じゃが作ります!

            やよい

P「……」

P「5日連続、か」

P「まいったな……」

P「……久しぶりだな、肉じゃが」ボソッ

    

ーーその日の夜

P「ああ、食った食ったー」ゲプッ

やよい「お粗末さまでした!お皿洗ってきますね」

P「うん、お願い」コテン

やよい「ゆーめーを みてれぅー♪」カチャカチャ

P「毎日来てくれてるけどさ、家の人は何も言わないのか?」

やよい「大丈夫です!お父さんもお母さんもプロデューサーには感謝してるし、それに……」カチャカチャ


P「それに?」

やよい「私、幼稚園くらいのときにずっと『お兄ちゃんが欲しい!』って言ってお父さんたちを困らせてて……」

P「やよいが一番上だもんな」

やよい「はい。それでプロデューサーへの恩返しのこと話したら『お兄ちゃんができてよかったね』って」カチャカチャ

P「…そっか」


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