男「超能力殺人事件簿」 (45)
女「だ、誰か助け……」ゼェゼェ
赤髪の男「んん〜鬼ごっこも大好きなんだが、足が疲れてきたな。これ以上は人目に付いちまいそうだし」
赤髪「【セレモニー】……地に伏せて[ピーーー]っ!」
女「がっ!?」
「あ、あぁっ……」ドサッ
赤髪「良いねぇ最高じゃないか、人が死ぬ瞬間ってのは! それが若い女なら尚の更だっ」ハァハァ
赤髪「へへ、勃ってきちまったよ。それじゃあいつも通りにいただくとしますか」スッ
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最近俺の住むこの街では、殺人事件が相次いで起きている。
死体はいつだって頭と四股だけが棄てられていて、胴体だけはどうしても見つからないのだとか。
被害者総数は十三人。
これだけの人数が殺されていながら、まるで手掛かりを残していないらしいのだから流石と言わざるを得ない。
この事件は常識を越えた何かが関わっているのではないだろうか?
例えば、魔法。
例えば超能力。
男「今日の日記はこんなもんで良いかな」カキカキ
天使「ふーん、なかなか察しが良いじゃん」ヒョイッ
男「だ、誰だよお前っ!」ガタッ
天使「ボクは天使。連続殺人事件を止めるためにこの街にやってきたんだよ」ニコッ
天使「よろしくねっ」ギュッ
男「袖掴むなよ電波ヤロー」バッ
天使「むぅ……」
男「つーか天使って要するに何をする奴らなんだよ」
天使「基本的に天界にゴロついて、神さまからもらった食料食べてるだけだけど?」
男(引き籠もって親の脛かじってるだけのニートみたいだな)
天使「神さまがトイレに行っている間に、100と1つの超能力を堕天使が盗んで下界に逃げちゃったのさ」
天使「それをボクは回収しにきたってワケ」
男「は、はぁ……。ひょっとしてそれってさ、いやひょっとしなくてもそれってお前らの不始末の延長でこっちで連続殺人事件が起きてるってことか?」
天使「失敬な。野放しにしても良かったのにわざわざ助けにきてあげたボクにそんなこと言っちゃう?」
天使「堕天使はきっと100と1つの能力を適当な人間にバラまいているんだと思う。だからキミにはその人間をサックサックと殺して能力を引き剥がして欲しいんだ」
男「……殺さなきゃ回収できないのか?」
天使「やろうと思えばできるけど、生きてる人間に天界の力を行使することは禁じられてるから。それが後々問題視されたら最悪ボクが堕天させられちゃうし」
男(……言ってることは意味わかんねー電波話だけど、頭の輪っかと背中の翼が気に掛かる)
男「そのさ、白い布取ってみろよ」
天使「やっ、ヤダ急に服を脱げだなんてっ! ケダモノ変態コガネムシっ!」
「だから下界なんて来たくなかったんだよっ!」アタフタ
男「翼確認したいだけだし、上半身だけで良いから。お前みたいなガキンチョ見ても何も思わねーつーっの」
天使「わ、わかったよう。それで信用してくれるなら……」グスッ
男「早くしろっつーの。こっちには背中向けてて良いから」
天使「こ、これで良い?」スッ
男「確かに背中から直に生えてるな」
天使「あんまりジロジロ見ないでよぅ……」
男「引っ張っても取れない」グイグイ
天使「……」
男「えいっ」ギュッ
天使「痛イッ!」
男「痛覚もあるのか」
天使「も、もう良いでしょう?」
男「変だな、背中は普通なのに」スリスリ
天使「にゃうっ!」
天使「ロリコン……」
男「ロリコンじゃねーよ。もう布巻いて良いぞ」
天使「最悪だよ……。下界に来て初めて会った人間がロリコンなんて笑えないよ」グスッ
男「は?」イラッ
「ロリコンじゃねーつってんだろ。ほらズボン引き延ばしても勃ってねーだろーが」グイッ
天使「……」プイッ
男(何百何千と生きてるのかと思いきや、案外ウブなんだな)
男「はいはい、とりあえずは信じてやるから泣き止めよ」
天使「じゃ、じゃあ引き受けてくれるんだね!」パァッ
男「……嫌に決まってんだろ。何で俺が超能力持った化け物相手に殺し合いなんてしなきゃいけねーんだよ」
天使「……半裸見た癖に」グスッ
男「嫌なもんは無理だから、さっさと諦めてどっか行けよ」
天使「むぅ」
天使「神の決定に刃向かうと言うのかこのロリコンはぁ!」
「きっと地獄に落ちるよ。知らないよ?」ジタバタ
男「さっさと出てけマジで。そろそろ女の子を無表情で殴れる外道になれそうだ」
プルルルルル
男「おっ電話だ。話が終わる前には帰っとけよ。でないときっと酷い目に合わせるからな」スッ
天使「むむむぅ……」
男「はい男ですが……」
『ああ、ごめんなさいねこんな夜遅くに。今女と一緒じゃないかしら?』
男「いえ、何かあったんですか?」
『帰りが遅くて連絡も取れなくて……』
男「そうですか。何かわかったら掛け直しますね」
『ありがとう。ごめんなさいね』
男「いえいえ……」ガチャ
天使「誰からだったー?」
男「友達の母親。ったくアイツプチ家出でもしてんのか?」
天使「本当にそれ、家出かなぁ?」
男「……何が言いたい」
天使「いやいや、何故だか最近この辺りは物騒だって耳にしたものだから事件に巻き込まれたんじゃあないのかってさ」
男「……」
天使「キミが望むのなら、ボクの知る情報の全てを掲示してあげなくもない。ただその時は能力者達と闘うことを契約してもらうけどね」
男「んな無茶苦茶な契約誰が結ぶかっ!」
天使「実のところ、今巷を騒がせているバラバラ殺人鬼についてはほとんど調べがついてるよ」
「居場所もすぐわかるし、キミが望むのなら飛んで連れて行ってあげないこともない」チラッ
男「……」
天使「気が進まないなら仕方ないか、無理強いはしないよ。変に喰い下がって悪かったね。堕天使を止めたい一心だったんだ」
「友達さんのことが気に掛かるなら、さっきの取り決めとは別に殺人鬼のところまで連れていってあげるよ」
男「でも、そこに俺の友達がいるとは限らないし……」
天使「ボクの勘が告げているんだよ。キミの友達が大変な目に遭っているってね」
天使「キミも心配でしょ、万が一って考えちゃうと。キミの友達がいなかったらいないですぐ帰れば良いじゃない」
男「それも、そうかな。うん」
天使「よしっ! じゃあボクの手に捕まって」
男「……あ、やっぱりお前だけ行って見て来てくれよ。写真あるから」
天使「は?」
男「え、俺なんか変なこと言ったか?」
天使「いやいや、おかしいでしょ? なんで代行になってくれる見込みのない人間のためにボクがわざわざ見て帰って来なきゃいけないの?」
「立場、履き違えてない?」
男「え゛、いや別に直接見に行ったとしても絶対お前の代行になんかならないと思うが……」
天使「いいから、キミもついて来るんだよ。根性なしの臆病者に時間を裂く気はないね」
男「じゃ、じゃあ遠慮しておきます」
天使「……キミの友達を思う気持ちはその程度だったんだね。ボクの見込み違いだったよ」ハァ
男「そこまで言わなくても」
天使「きっとキミの友達は殺されるね。キミがへたれなせいで殺される」
男「……」
天使「サヨナラ、時間の無駄をありがとう。今日のことは失敗談として覚えておくよロリコンさん」
男「やっぱり、俺行くよ」
天使「さっすが、ボクの見込み通りキミは勇気に溢れた素晴らしい人間だよ」パァッ
男(なんか、騙された感がハンパない)
天使「じゅあボクの手に捕まって! 窓から飛ぶよ」
男「おっ、おう」ガシッ
天使「つぇいやぁっ!」シュンッ
男「痛い痛い痛い痛い痛いッ!」
「降ろしてくれ、早くッ! 手が裂けちまう」
天使「え、降ろして欲しいの?」シュンッ
ガツッ
男「ゆ、ゆっくり降ろして欲しかった」
天使「早く降ろせって」
男「常識の範囲内で考えろよ大馬鹿野郎」
天使「ごめんね。よくよく考えたら手に捕まって飛ぶなんて不可能だったよ。ボク、時速35km近く出るし」
男「仕方ない。おんぶしてやるからそれで飛べ」
天使「イヤだよ。子供っぽい」
男「ガキンチョみたいな外見しやがって何を言うんだ。本当は何歳かしらないけど」
天使「ふっふっふっ。こう見えてボクは300000神月環を生きる大天使様なんだよ」
男「ふぅーん。やっぱり天使って人間とは違う時を生きてるんだな」
天使「ふっふーん。人間時間に直して54年と少し、キミの倍以上生きてる訳だよボクは。敬語使いな、敬語」
男「なんでだよっ!」ベシッ
天使「いたぁっ! 酷い、なんてことをするんだ」
男「54は駄目だろ54歳は!」
天使「そ、そんなに怒らなくても……」
男「数千歳ぐらいだったら神聖な感じがして許せるけど、54歳のボクっ娘は色々嫌だ」
天使「そんな人間の感覚を語られてもボクにはどうしようもないというか……」
男「54って俺の母親と同い年じゃねーか……。これはなんかもう本当に無理だわ」ブツブツ
「300000神月環で54年って1神月環で何秒だよ。馬鹿なのか?」
天使「……とにかく友達助けに行くんでしょ?」
「もうおんぶでも肩車でも良いから早く行こうよっ」
男「よし、おんぶで行くか。上に乗っかれ54歳」
天使「その呼び方は止めて欲しいかな……。あっ、あとやっぱりおんぶより肩車が良い」
男「いや無理だろ、それお前だけが飛んで行くぞ。そんなに肩車して欲しいなら今度暇な時に言ってくれ」
天使「おんぶは子供っぽいし。そ、それに体が密着するし……///」
男(なんでこの54歳は変なところでウブなんだよっ!)イラッ
男「早くしろよ、急いでるんだろうが」
天使「は、はい……」
男「急に潮らしくなるなよ」ハァ
男「……これでもやっぱ、手痛いな。普通にお前に道案内してもらいながら電車に乗った方が良かったんじゃないか?」
天使「た、確かにそうだったかもしれない。私も結構しんどいし」ハァハァ
「ああ、もう無理。吐き気してきたよ」
男「耳元で息粗くしないでくれ、ちょっと興奮するから」
天使「……」イラッ
男「それにしてもあれだな」
天使「うん?」
男「もっと当たるものかと思ったけど、全然そういうのはないんだな。まぁ小さいしこんなものか」
天使「何の話?」
男「お前の胸」
天使「は?」イラッ
男「つーか、マジで今から降りて電車とかで目指した方が良くないか? お前遅いし、俺もう手疲れたもん」
「今俺のスキップと大差ない早さだぞ。ほら今チャリに抜かされたし」
天使「しょうがないよ、キミが乗ってるんだし。障害物を気にせず最短距離行けるからこっちの方が良いでしょ?」
男「二階建て越えれないぐらいの高度じゃあねぇ……」
天使「うぅ」
男「何? なんでそんなに頑なに飛びたがってるの?」
天使「ぜ、絶対ボクが飛んで行った方が良いもん」
男「ひょっとして引っ込み付かなくなってるだけとか」
天使「……」
男「図星かよ」
天使「あ、ほら見えてきたよ。アイツに間違いない」
男「どれだ?」
赤髪「……」
男「っ!」
男「おい大丈夫か、目合ったぞ今」ボソボソ
天使「そりゃこっちぐらい見るでしょ。おんぶして空を低速飛行してるんだから、見ない方がおかしいに決まってるよ。通行人皆こっち向いてたよ、気付いてなかったの?」
男「うっすら気付いてたよバカッ! だから電車で行こうって言ったんだチクショー」
天使「おめでとう、明日の新聞の一面はきっとキミだよ」
男「こっのクソ天使が……。着いて来るんじゃなかったよマジで」
男「で、今更だけどなんでアイツが犯人だってわかったんだ?」
天使「ボク達天使には、人の魂が見えるんだよ。あの人、ドス黒い色をしてる。何人も殺した証拠だよ」
男「ふーん」
天使「そして、能力持ちだよ。ボク能力の場所は感知できるから」
男「……何の能力なんだ?」
天使「わからない……あの能力自体、一つの箱に閉じ込めて何神月環も保管してきたものだから」
男「その変な単位鼻につくからやめろ」
天使「善処するよ」
男「にしても女の奴はいないな。アイツも幾らなんでも人殺した夜に呑気に散歩なんかできないだろうし帰るか」
天使「え、いやもっと詳しく調べないとわからないよほら」
男「帰りは電車で帰るわ。お前ももう帰れよ、天界だか地獄だか知らんが」
男「で、今更だけどなんでアイツが犯人だってわかったんだ?」
天使「ボク達天使には、人の魂が見えるんだよ。あの人、ドス黒い色をしてる。何人も殺した証拠だよ」
男「ふーん」
天使「そして、能力持ちだよ。ボク能力の場所は感知できるから」
男「……何の能力なんだ?」
天使「わからない……あの能力自体、一つの箱に閉じ込めて何神月環も保管してきたものだから」
男「その変な単位鼻につくからやめろ」
天使「善処するよ」
男「にしても女の奴はいないな。アイツも幾らなんでも人殺した夜に呑気に散歩なんかできないだろうし帰るか」
天使「え、いやもっと詳しく調べないとわからないよほら」
男「帰りは電車で帰るわ。お前ももう帰れよ、天界だか地獄だか知らんが」
赤髪「……」
男「!」ピクッ
天使「どうしたの?」
男「アイツの付けてる指輪、俺が昔女に縁日で買ってやった奴だ」
天使「……」
男「おい、テメェ!」ダッ
赤髪「やっぱし、コイツが天使とその代行か」ボソッ
天使「う、迂闊に近付かない方がッ!」
男「うらぁっ!」ドカッ
赤髪「ぐっ……」
男「お前が、連続殺人犯か」ギロッ
赤髪「んん〜、お前は俺を捕まえにきたつもりかも知れないが……」
「残念ながら、立場がまるで逆なんだよぉ! 俺がお前達をおびき出したんだ」ニャッ
少女「些か卑怯な気もしますが、不意を突かさせてもらいますよ」サッ
男「コイツ、ずっと自動販売機の陰に隠れて……」
少女「【ブレッタ】」ヒュンッ
男(なんだこれは、指先からエネルギーの塊のようなものをッ!)サッ
ドガンッ
男「あ、危ねぇ。後数センチ体の真ん中を狙われてたら、避けきれず死んでたな……」
少女「わざと外したんですよ。避けない方が良かったかもしれませんね」
男「え……?」クルッ
天使「……ハナから、こっち狙いだったんだね」ポタポタ
(この娘、この歳ですでに魂が真っ黒だ……)
赤髪「俺は眠いから帰っぞ。俺の能力、今日はもう使っちまったから明日まで何もできないし」タッタッタッ
少女「少し寂しいですが、囮の役目は十二分に果たしてくれましたし仕方ありませんね」
男(……赤髪の能力、インターバルが長いのか。なら尚更今日の内に女のことを問い詰めてやりたいが、今は追う余裕はないな)
天使(焦ったかな……あんな便利な攻撃方法持った相手と対峙することになっちゃうなんて)ヨロッ
男(ここは無難に逃げておきたいところだが、そうすれば手負いの天使逃げ切れない)
(となると、まずはアイツの攻撃対象を天使から俺に変えてもらわないとな。さっきもわざわざ確実に殺せる距離にいた俺を無視して天使を攻撃したんだ。目的はわからないが、コイツら俺なんか眼中にねーみたいだな)
男(……ちょうど良いところに缶ジュースが落ちてやがる)チラッ
少女「……私捨て子だったらしくて、教会暮らしだったんですよ。まぁ物心付いた時から神さまだの天使とか大嫌いだったんですけど……」
天使「……」
少女「でもまさか、本当に天使殺せるような日が来るとは思ってませんでしたよ」スッ
少女「ブレッ……」
バシャンッ
少女「……」
男「いやー、ごめんごめん。まさか中身がまだ残ってたとは思わなかったよ」
「大丈夫? ベタベタしない? お兄ちゃんが着替えさせてあげようか?」
男(……これでとりあえず険悪感とか攻撃の矛先はこっちを向くだろ。何か大事な物を失った気がするが)
天使(助けてもらった直後に言うのもなんだけど、やっぱりこの人地でロリコンなんじゃ……)
少女「……」
少女「そんなあからさまな挑発に乗るのは、私のプライドが許さないのですが……」
男「ダメ、か」
少女「それを踏まえて尚気持ち悪かったので、アナタの誠意に免じて先に殺してあげましょう」スッ
男「なんだろう、成功したはずなのに満たされない気持ちは」
少女「【ブレッタ】!」ヒュンッ
男「……良いことを教えてやろう。大人ってのはな」
「勝算のない喧嘩は売らないんだ」サッ
天使「……あの早さを、避けた?」
(大人だったんだ)
少女「そ、そんな……。今まで、この距離で避けられたことはなかったのに」
(高校生ぐらいかと思ってたけど、大人なんだ)
男「女の子を蹴飛ばすのは趣味じゃねーけど、許せ正当防衛だッ!」グッ
(勢いで言っちまったけど、19歳の学生って大人に入るのか?)
男「うらァッ!」ゲシィッ
少女「あがっ」ドサッ
男「顔は止めておいてやっただけ、ありがたく思えよ」
少女「くっ、【ブレッタ】」ヒュンッ
男「スピードを上げても無駄だっ」
「俺はお前の指の人差し指の動きを見て避けてるんだからさ」サッ
男「そら、大人しくしな」ガシッ
少女「はっ、離してェ!」ジタバタ
天使(や、やっぱりロリコンなんだ)ゴクッ
男「ふんッ」ギュッ
男「両手首を縄で縛った、これであの能力は使えまい」
天使「自信満々な所悪いけど、はたから見たら女の子縛り付けてるただの変態だよ……」
「そもそも、何用に縄なんか持ってたの? 持ち歩いてるの、変態なの?」
男「いやいや、落ちてただけだからッ!」
少女「くっ」
男「じゃあ行くぞ天使、赤髪を追おう」
少女「え?」
天使「そ、その前にその娘にトドメを刺さないと……」
「生かしておくと後で邪魔になるかも知れないし、能力を回収できないよ」
男「知ったことか、俺は天界のいざこざにも殺人事件にも興味はねェ。女の安否優先だ」
天使「……あくまでボクの代行になる気はないんだね」
「でも、多少尋問して知ってること喋ってもらった方が良いんじゃない? なんで能力者が二人組で動いているのか、なんで天使であるボクを狙って来たのかも気になるし」
男「ならないね。赤髪を見失う方が怖い」
「今日一杯は、アイツは能力を使えないんだろう?」
少女「……」
天使「わかったよ。ただ赤髪は回収して欲しいね」
男「場合によっては……な。アイツが殺人犯なら、あんな危ない人間ほっとく訳には行かないんだし」
少女「……私、放っておいて良いんですか? 後で何するかわかりませんよ」
男「人[ピーーー]のなんか嫌だし……それに」
「お前、本当は良い奴って感じがするから」
少女「!」
男「じゃあな、悪いがお前の仲間を追わさせてもらうぞ」タッタッタッ
少女「……」
天使「ま、待ってよ」スンッ
男「目立つから飛ぶの止めろよお前……。つーか、次は手負いの天使庇いながら戦う自信ないぞ」
天使「大丈夫、ボク回復早いから」
天使「でも何考えてるのさ、あの娘は本当は良い奴だーっ! だなんて」
男「なんつーかさ、そういう風に見えちまったんだよ本当に」
「仲間が去った時に見せた寂しそうな様子とか、どこか悲し気な横顔とかさ。何だか昔の俺と重なって見えちまって……」
天使「ふーん」
男「それより、赤髪の位置はわかるか?」
天使「うん。こっちから能力の気を感じるよ」
男「家……か、家族とかいたら嫌だな」
天使「放火とかして片付けちゃう?」
男「お前、本当に天使か?」
「それに、俺はまずアイツに女のことを訊かないといけない」
天使「んー、じゃあ正面突破しかないかな。男に会う前から赤髪の様子を見てたんだけど、一人暮らしだと思うよ」
男「じゃあちょっと非合理的に不法侵入させてもらうか。それで気絶させてどっかに縛ろう」
天使「まぁそれが一番妥当なんだろうけど、なぜか悪虐非道の所業に聞こえるよ」
男「つっても窓から入ってる所見られたりしても面倒だし、普通に玄関から入るか」ガラッ
男「……足音立てないように行かないとな」
天使「まぁボクは飛べるから大丈夫だけどね」バッサバッサ
男「バカかお前! 羽音でけーんだよ」
天使「ごっ、ごめん……素で気が付かなかった」
赤髪「誰だ、誰か来たのか?」タッタッタッ
男「こりゃ誤魔化せないな……」
赤髪「テメーさっきの……まさか少女の奴は死んだのかッ!?」
男「殺してはねーよ、俺は別に殺し合いをしたいワケじゃあない。ただ女がどうなったのかを知りたくてな」
赤髪「それは良かった。アイツはいつか俺のコレクションに加えるって決めてたからな、うん」
男「コレクション?」
赤髪「で、女って誰だよ?」
男「お前のその、指輪の持ち主だって訊いたらわかるか?」
赤髪(ああ、よりによってコイツあの娘の彼氏かよ。面倒くせぇな)
赤髪「これ? 良い指輪だろこれ、昔ヒモ生活してる時に店で買ってもらったん」
男「……それは夜店の安物だよバカヤロー」
赤髪「……」
「わかる? わかっちゃうかぁー。そっかそっかぁ……」
男「やっぱりテメーが……」
赤髪「ごめんっ! 俺見栄張っちまった! これは夜店で買った奴だ」
男「今更そんなので誤魔化されるかよっ!」
赤髪「うッぜーガキだな」スン
ブシュッ
男「ぐあッ! てめぇ……」
赤髪「小型ナイフ内ポケットに入れておいて良かったよ、いやマジで」
赤髪「あーッ! 返り血付いちまったよ汚らしい、女ならまだしも男の返り血付いちまったよクソ」
男「……アイツになんかしたのは、お前ってことで良いんだな」
赤髪「あれ、浅かったかな?」
男「オラァッ」ブン
バキィ
赤髪「な……なんて力だコイツ!」ドサッ
男「女はどうした?」ギロッ
赤髪「……」
「ち、違うんですっ! 俺、俺いつも命令されて……、脅されてて……」
男「?」
赤髪「若い女を気絶させて、誘拐して来いって……」
男「誰にだよ?」
赤髪「女は……ここの地下室にいる。地下にはアイツがいるはずだから今どうなってるかはわからねぇ」
天使「堕天使? いや、でも堕天使の奴が生贄を集める理由なんて……」ブツブツ
男「で、その地下室とやらはどこにあるんだ?」
赤髪「……え、えーとだな」
男「この期に及んでくだらない嘘や出し惜しみは止めた方が良いんじゃねーか?」ギロッ
赤髪「……寝室の畳の下だ」
男「そうか、じゃあ見てくるわ」
赤髪「……」ホッ
男「っとその前に」スッ
ガツンッ
赤髪「痛ェッ!」
男「これで早くは逃げられないだろ。天使、お前はコイツを見張って逃げようとしたら俺を呼んでくれ」タッタッタッ
バタンッ
男「それっぽい入り口がでてきたな。ここが地下室か」ガチャッ
男「なんだこの、嫌な感じ……。冷房でも効かせてるのか、冷気が漂ってきやがる。おーい女っ! いるのか?」
男「……中に入るか」スッ
男「んだよここ……死体が、並んでやがる」
「う゛……う゛ぇ、吐き気が」
男「全部、胴体だけの女の死体だ。なんか薬品掛けてあるのか腐ってはねーけど」チラッ
男「女っ、女はどこだ?」キョロキョロ
男「……首の繋がった死体なんて、一つもねーじゃねーか」グッ
天使「キャーッ!」
男「今のは、天使の悲鳴?」
「あの赤髪ヤロー片足折ってやったのにまだなんかやる気かよっ!」ダッ
堕天使「不様ね、赤髪ちゃん。だから能力の乱用は抑えろと言ったのよ」
赤髪「んんー……流石に身に染みた。天使御一行様々が滅ぶまでは控えようかな」
「【セレモニー】が残っていればこんな情けないことにはならなかったんだからよぉ」
男「黒い羽、そうかコイツが……」
天使「う、うぐ……」
赤髪「せっかくの天使を[ピーーー]チャンスなんだろうが、今はスマネェが俺を連れて逃げてくれねぇか、堕天使よぉ? 」
「足が、やられちまってな」
男「……」
堕天使「元よりそのつもりよ。天使ちゃん、弱々しいフリしてるけどヘタに近づいたら何されるかわからないもの」
「だから天使が危害を加え辛い、人間を使って殺そうだなんて回り諄いことしてるんだから」
赤髪「ふーん、そうかい。早いところを俺を乗せて飛んでくれ」スッ
堕天使「じゃあねぇ天使ちゃん、そういうワケでここは大人しく引かせてもらうわぁ」ヒュンッ
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