閑無「あやまる方法」杏果「プフー」 (64)

墨を摩る音が部屋に響く––––

上から下へ……上から下へ……

石飛閑無は、その規則的な反復にひたすら身を置いた。

傍らには羊毛の大筆と、雪のように真っ白な半紙がある。

書をしたためるつもりでいるのだ––––

これらの一連の動作、ただ己の心を鍛錬するだとか、学校の宿題だとか、山女に署名を強請られただとかの為ではない。遺書なのだ––––

墨を摩り終えると、筆の穂を全て硯に浸す。


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辞世の言葉はすでに決まっている。卓に置かれた半紙に筆を運ぶと、迷いの無き山犬の眼のような筆で一気に書き上げた。

『基本無敵』

なかなかになかなかな筆である。


その四文字は、彼女の綺羅星のように短い生涯を示すに十分であった。

何故、彼女が此の様な行為に至ったか、それは今から数日前のことである。

事は、彼女が瑞原はやりに麻雀により完膚なきまでに敗北した事が始まりである。

それまで、彼女は何事も人並み以上にこなし、負けることなどあり得なかった。

しかし、完敗した。相手とは経験で差があるとはいえ、大層悔しかった。彼女の能面のように張り付いた勝利の笑みが、安いアナログテレビに焼き付いた像のように石飛閑無の頭の中の一角を占拠していた。

石飛閑無は考える、牌を選ぶその一挙一動、そこに間違いなど無いはずだ、そこから導かれる彼女なりの回答……

『麻雀なんて理不尽すぎるクソゲー』

そう理不尽なのだ、運が絡む遊戯だ、たった1ゲームで実力や才能が推し量れる訳がない。そう、まだ完敗したわけじゃない––––

このまま、運否天賦と決め込むのは本当の敗北である––––

そうと決まれば、目指すは打倒はやり。

早速、稲村杏果と取り巻きに麻雀卓の用意をさせる、打ち尽くしの猛特訓である。当然、自分以外は素人である。それ故、閑無は取り巻きにハンデを与える事にした。

取り巻きA「………」

取り巻きB「ぽん………」

杏果「えーっとロン……」

閑無「ちっ………」イライラ

※ちなみに筆者は鳥頭故、麻雀のルールも碌に覚えておらず、細かい描写は割愛させていただく。

取り巻きA「………」

取り巻きB「………」

杏果「えっと……」

閑無「トイトイだよ……」イライラ

杏果「あ、あれ……たまたまだよ……たまたま」

閑無「ちっ……」

取り巻きA「すごい!杏果ちゃん、あの閑無ちゃんに勝っちゃった!」

取り巻きB「閑無ちゃんたいした事無いねwwww」

杏果「………」あせあせ

自分より数段劣ると思われる相手に敗北した、屈辱––––

閑無「あーもう!!やっぱクソゲーだな!!」バン!!

取り巻きA・B「!?」びくっ!

杏果「!?」びくっ!

閑無「おまえらみたいな足りねーのには、こういう運ゲーのほうが向いてるもんな!!」

取り巻きA・B「………」

閑無「ハッ……」

堪えきれず、言ってはならない台詞を吐き捨て、教室を飛び出してしまう。
しかし、すぐさま自分の非に気付き後悔の念にかられすぐ戻ってくる。

取り巻きA「最近の閑無ちゃんてさ、威張り散らしてなんか厭な感じだよね」

取り巻きB「というか、私閑無ちゃんの家でゲームしたかっただけだし」

蒲原「ワハハ、私はアイスが食べたいぞ」

杏果「………」

聞きたく無かった友の本音––––

足下から世界が崩れて往くような感触、自分が今まで信じてた友情は只の伽藍堂過ぎなかったのか––––

閑無「………」

独り帰路につく、その姿は朽ちた大木が川の流れに身を委ねるかのように寂しいものだった。

思えば全て自分の我侭が原因なのかもしれない。はやりに勝ちたいのも自分の勝手な都合である、なのに思い通りにならないからといって、協力してくれた相手に勝手に怒り心無い台詞を吐いてしまったのである。

誰も居ない自宅に帰る、両親は共働きだ何にも関さず自分の室に在る日本製のディスクトップPCを立ち上げる。

米国会社製の検索エンジンに入力したのは『あやまる方法』––––

膿みのように肥大した自尊心は、自分の中の素直な気持ちを喉の奥に痞えさせる。
故に文明の利器を使い、少しでも自然に謝る方法を探る––––

閑無(あめぞう掲示板にもオラサイトにも碌なことが書いてないな……)

詫び状を書く、お詫びの品を渡す、土下座する……
どれも自分には向いていないような気がする、もっと……もっと無敵感がある謝罪方法を。

閑無「お!ここなら良いのがありそうだ……」

其の時、目に付いた一際目立つ謝罪の方法、圧倒的無敵感を放つ存在––––

閑無「ふんふむ、せっぷく?」

古来より行われて来た絶対的謝罪方法にして究極のスポーツ『切腹』

閑無「これだ!!」

まるで濃い霧が晴れるかのごとく、鮮明に自分の進べき道を指し示した。これしかない––––

早速、閑無は杏果にこの事を相談した、始めは大層驚かれたが、閑無のその真剣な面差しに噓偽りの無い事をすぐさま感じ取った。

杏果(……この意志、一朝一夕に考えついたわけじゃないな……)

それならば、親友の意志を尊重することが大事である、直様杏果は取り巻き達に切腹の手配をさせた。

こうして今に至るのである。

石飛閑無の決意は、荒い水流に逆い遮るように沈む巨岩のごとく迷い無く確固であった。

それは先程書き上げた書が証明している。

部屋には、取り巻きや杏果、閑無が人生の好敵手と認める瑞原はやりが其の意志の貫通を見届けんと、静かに唖止まっている。

桶に張られた水で沐浴を行う、次いで髪を結う、それらの行為は全て自分一人で行う。

通常、切腹を行う時には介錯人を要する。

腹を切るのを切腹人、其の後介錯刀にて切腹人の首を切る介錯人によって行われるのが切腹の正しい作法なのだが、基本無敵の閑無である、今回までに至った経緯を全て自分独りで決着を着けたいが為、介錯人を介さず全て独りで行うと決めたのだ。

今が……ただいま……
  ただいまが……今……

閑無が傍らに供えてあった小刀のさやを抜く––––

一同はそれを神妙な面持ちで見つめた。

蒲原「ワハハ、これより切腹を執り行うぞ」

検視役が其の様子を見届ける。

小刀を自身の白い腹に突きつけると、一気に一文字に斬りつけた。その様、凄まじい光景であった。

閑無「!?グッ……!!」

鉄の冷たさに、体内の暖かさが混ざり合う、まるで大地を割り溶岩が吹き出てくるような苦しみが閑無の腹部から喉元まで登って行く。

あまりの苦痛に下唇を堅く噛み絞める、何度も何度も襲う激痛に身悶えしそうになるのをぐっと堪えた。その無限にも思われる激痛の荒波に標縄のように強大であった意志もまるで、頼りない糸屑のように感じられてくる。

まさに片腹大激痛である––––

閑無「!?グッグギィ……!!!」

杏果「………」

取り巻きA「………」

取り巻きB「………」

慕「………」

はやり「………」

リチャードソン「………」

蒲原「ワハハ………」

あまりの痛々しい光景である、しかし誰も傍らに行って止めさせようとはしない、否、それは彼女の選んだ意志を裏切ることに他ならない。

一同、この様子を静かに見守る。

彼女の腹から臓物が飛び出す、閑無は溜まらなくなり何度も何度も吐き出した––––

その桜色をした腸は、苦痛に歪む彼女の状態とは裏腹に健康そうに脈打っていた。

最後に小刀を喉本に突き出し搔っ切ろうとするが、激痛に身悶えるその身では、一気に搔っ切るのは至難である。

閑無「カッ……ハッ……」ぐちゃ……

杏果「!?」

一番の親友であった杏果、これに堪え兼ねて手を下しそうになるが、それをシノが止めに入る。

慕「………」ふるふる…

杏果「………」がくっ…

これは石飛閑無独りで決めた事、ならば独りの力で達成しなければならない。ここはぐっと堪え、その強固な意志が貫通するのをじっと見守らなければならない。

閑無「」

やがて、石飛閑無は目をかっ開いた凄まじい形相で事切れた––––

––––次の日の朝刊で石飛閑無が自宅にて割腹自殺を遂げたと報じられる。
知人である白築慕は「石飛閑無の最期、誠に鬼神のごとき有り様であった。」とだけ述べた––––

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―――――――――――――

戒能「人は誰でも間違いを犯す」

戒能「思わず友達に嘘をつく、よかれと思ってやった事が相手を傷つける」

戒能「それは仕方のないこと、その場で素直に謝ればよし……」

戒能「それが出来なければ遺恨を残す事になる……」

戒能「この人はそれが出来ずに大げさな行為に及んでしまったのですね」

はやり「はやや?良子ちゃん私が怒ってるのに誰と話してるのかな?」

戒能「そ、ソーリー」

はやり「せっかくの記念日を忘れた事、絶対許さないよ」

戒能「こ、この通りです。な、なんでもします」ドゲザー

はやり「ん?今なんでもするって言ったよね?」

戒能「ごくり……」

はやり「ならさ、この小刀で腹搔っ捌いてよ☆」

戒能「そ、それだけは勘弁を……」

はやり「問答無用☆」ザシュー

戒能「NOooooo!!」グサー

ブシュー………

世にも奇妙な咲-saki- 

とある焼き肉屋

加治木「………」

船Q「………」

末原「………」

まこ「………」

オキャーサンタンシオオモチシャーシタノヨー

※ちなみにみんな成人している設定

加治木(よし、焼くか……)

加治木「………」じゅー

加治木(タンは肉の中でも焼く時間が断トツで速い、それ故気をつけなければ焼きすぎることに……)

末原「………」ばっ!

加治木「!?」(私のタン塩を……)

末原(なんや、あんま焼き過ぎてもあかんし私が食べさせてもらったわ、鶴賀の大将さん)

加治木(くっ!ぬかったか!)

まこ(一枚一枚上品に食べようとするからそうなるんじゃ、ここは一気に焼いて……)

末原(な!?タンを一気に敷き詰めて、タン塩でプレートを染め上げたやと!?)

まこ(ふふん、わしの得意な染手じゃ♪)

まこ「………」じゅー

まこ(もうそろそろ左側はええじゃろ……)じゅー

船Q「………」ばっ!

まこ(な!アイツ左端から一気に全部取りやがったわ!)

船Q「………」もぐもぐ

船Q(そこのワカメ……あんまり舐めた真似してるとデータ関係なくとばしたるで!)

まこ「………」

船Q(みんながあっけに囚われてるうちにもう一枚……)もぐもぐ

加治木「………」バッ!

船Q「!?」

加治木(そのタン塩取る必要なし!)

加治木(どうやら欲張り過ぎたようだな、一度に大量の肉を取った故行動が鈍くなる、その隙をつかせてもらった……)

加治木「………」もぐもぐ

末原「………」じゅー

船Q「………」じゅー

まこ「………」じゅー

オキャーサンドリンクトカルベブタトロオモチシャーシタノヨー

加治木「………」ごくごく

末原「………」ごくごく

船Q「………」ごくごく

まこ「………」ごくごく

末原(さて、普通に焼いたらさっきみたいに食べられてまう……)

末原(なにも考えへんと焼いたらほんまの凡人や……焼き肉焼いて、頭も燃やすで……)

まこ「………」じゅー

末原「!?」

まこ「………」もぐもぐ

末原(な!アイツ私がこんなに考えてるのに、普通に焼いて普通に食べやがった……メゲるわ……)

まこ「………」もぐもぐ

まこ(あんさんが何考えとるんか知らんけど、時には直感を信じて直感で行動するのも大事やからのう……)

末原「………」じゅー

船Q(ブタトロは油が多い故、火が強うなる……そやから先にブタトロを焼いて火力を強くする……)

船Q(そうすれば火が壁になって相手の箸は鈍る、その上火力が強いからバンバン焼けるって寸法や……)

船Q「………」じゅー

加治木(ふん、千里山の副将お前の考えはお見通しだ!ブタトロくらいくれてやる!)

加治木(さっき清澄の中堅がタン塩を一気に焼いてくれたおかげでタン塩の皿が片付いた……)

加治木(そこでひそかにカルビの皿が私から近くかつお前の対面にくるように配置した……)

加治木(そう、ブタトロの火力で取りにくくなるのはお前の方なんだよ!)

加治木「………」じゅー

船Q(甘い!甘いで、鶴賀の大将!)

船Q(そんなん計算済みや!誰が自分とこで焼くゆうた!)

加治木(な!ブタトロをまんべんなく……)

船Q(こうする事によって全域で火力が強うなった、そうしてウチの手を読みにくうする……)

まこ「………」じゅー

末原「………」じゅー

末原「………」バッ!

加治木「!?」

船Q「!?」

末原「………」もぐもぐ

加治木(な!しまった!ノーマークだった!)

船Q(ちっ、うちのブタトロが!漁夫の利か……)

末原「………」ニヤッ

オキャーサン、ホルモートロースオモチシャーシタノヨー

加治木「………」

船Q「………」

末原「………」

まこ「………」

末原(ふぅ……ここは相手の出方を見るか……)

加治木(とりあえず焼きにくいホルモンから……)

船Q(ふん、鶴賀の大将め、あえて肉の皿をそちらさんに近い所に置いて、肉を焼かせる……)

船Q(ホルモンは焼けるの遅いさかいにそっちに気い取られてる隙に、ほかのもん横取りする……)

船Q(根金祭しゃぶり尽くしたるで~)ニヤッ

船Q「………」じゅー

まこ(とまぁ、大体そんなこと考えとるんちゃうんかの?)

まこ(あんさんの行動パターンはすでに覚えさせてもらった、あとはあんさんより早く動けばええっちゅうわけじゃ……)

まこ(悪いがのう、千里山の人利用させてもらうけんのう……)クックックッ

まこ「………」じゅー

末原(清澄と千里山、考えてるのは大体こんなとこやろか……)

末原(せやからウチの出来る事は清澄の動きをよく観察することや……)

末原(千里山のパターンを把握した清澄の動きを見て、ウチがそれより早く動く……これが凡人が出した答えや……!)

末原「………」じゅー

加治木(馬鹿め!私が何も考えずに肉を焼いてるとでも思ったのか!)

加治木(おそらく清澄は千里山の、姫松は千里山の動きを読んで行動してくるはず……)

加治木(だから、肉を焼ける順番を計算して、姫松に近い方から早く焼けるようにすれば相手のリズムを崩せる……!)

加治木(この勝負!肉を制した私の勝ちだ!)ハハハ

加治木「………」じゅー

船Q「………」じゅー

末原「………」じゅー

まこ「………」じゅー

加治木(そこだ!)バッ!

末原(しまっ……!!)

まこ(ちっ、パターンが崩れたわ!)

加治木(な!?まだ生焼けだと……)

船Q(鶴賀の大将さん、そうくると思ってさっきブタトロを焼く時、姫松の方はあえて置かんかったんや……)

船Q(つまりブタトロによる火力の増強で計算しとったあんたの計算は間違っとる事になる……その隙に……)

まこ(今じゃ!このパターンじゃと千里山が次に動きようる……)

船Q(な!?この状況でも正確にパターンが読めるんか!?)

まこ(な!?生焼けじゃと!?)

船Q(!?!?なんでや……ウチの計算に狂いはないはず……)

末原「………」バッ!

末原「………」もぐもぐ

末原(実はロースとホルモンが来る前、間違って生焼のままのトントロ取ってもうたんや……)

末原(そやさかい、ウチが取った場所だけ火力が弱いままやったんやな……)

ワハハオキャクサマサイゴノオーダーニナルゾ

加治木「………」

船Q「………」

末原「………」

まこ「………」

加治木(ふふ……なんだかんだで楽しい焼き肉だったな……)

船Q(みんなもなかなかやるやないか……)

末原(みんなとこうやって焼き肉出来て楽しかったな……)

まこ(また、このメンバーで来たいのう……)

ワハハビールオモチシマシタゾ

加治木「………」ごくごく

船Q「………」ごくごく

末原「………」ごくごく

まこ「………」ごくごく

加治木・船Q・末原・まこ「「「「麦茶だこれ!!!」」」」バッ!!

世にも奇妙な咲-saki-

戒能「みなさん、タイムカプセルに何を入れましたか?」

戒能「未来の自分へ向けた手紙、大事にしていた宝物や思い出の品」

戒能「過去から未来へ託された思いは何時の日か、タイムカプセルと共に掘り起こされるはずです」

戒能「現在から過去へ、そんなタイムカプセルがあれば皆さんどうしますか?」

戒能「今回はそんな二人の話です」
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―――――――――――――

哩(………)

哩(姫子おそいな……)

姫子「お待たせしました!ぶちょー!」だきつきー

哩「うわわ、姫子!ここではやめろ//」

私と姫子は中学の時から付き合とる、女同士やけ周りの目もきびしかやけど、それでも私は姫子が好きや。

姫子「ぶちょー今日の服とても可愛かですよ」

哩「姫子もよお似合とるばい」

姫子「もう//ぶちょー//」

姫子「今日はどこ行きますか?」

哩「そやな……新しいアクセサリーがほしいしなぁ……」

姫子「そんならあの店ば行きましょ」

お店

姫子「これも可愛いしぶちょーに似合いますよ」

哩「そうか?」

私は姫子に、姫子は私に勧められた服やアクセサリーを身につけるように成り、自然と姫子はボーイッシュに私は女性らしい格好になっていった。

哩「このアクセ欲しかったんやけど売り切れてもうたな……」

姫子「そうですか」

哩「あぁ、まぁ隣り町のショッピングモールに同じの売っとったさかい、来週見に行ってみるわ」

姫子「………」

哩「次は……」

姫子「ぶちょーあの店なんかどうです?」

『カンコロ雑貨店』

哩「なんか、ちょっと怪しいなぁ……それになんか不吉やし……」

姫子「いいじゃないですか!行きましょうよ」

哩「まぁええけど……」

なんや、怪しいというか、此処ではない異世界の店って感じやった……

店内

「ワハハ、いらっしゃいませだぞ」

哩「………」

『神様が降りてくる枕』

『一巡先を読めるように成る人形』

『透明になる薬』

哩(なんや変なもんいっぱい置いとるな……)

姫子「ぶちょーこっちは本がたくさん置いてありますよ」

『人肉を食った姉妹の噺』

『未来からロボットが殺しに来た噺』

『若くして割腹自殺した少女の噺』

『焼き肉屋で肉を焼く噺』

哩(なんや……不気味な本ばっかりやな……ちょっと読んでみようか……)

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
『人肉を喰った姉妹の噺』

「犬鍋美味しいね、お姉ちゃん」

「はふはふ、旨い旨い」

「一杯あるからたくさん食べてね」

「やったー…………
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

「ワハハ、それはくだらない作り噺だぞ……」

哩「!?」びくっ!

「ワハハ、すまんな気に入ったならどうだ?安くしとくぞ……」

哩「いえ、今回は……」

姫子「ぶちょー面白いもんありましたよ」

『過去へ手紙を送れるポスト』

哩「過去へ手紙?なんか怪しいな……」

「ワハハ、試しに手紙を送ってみるか?大丈夫ただでいいぞ」

哩「!?い、いえ結構です……」

姫子「?ぶちょー?」

なんや、厭に怪しかったしなんも買わんとそのまま出てもうた。
姫子はちょっと不満そうやったけど、あんな店何があるかもわからん……

帰り道

姫子「ねぇぶちょータイムカプセル埋めたん憶えてますか?」

哩「あぁ、私が中学卒業するときに二人だけで埋めたよな……」

哩「姫子は手紙を入れて……」

姫子「ぶちょーは私が初めてあげた『しんどうくん』の人形を入れた……」

姫子「また、ぶちょーが高校を卒業するとき掘り返そうって……」

哩「あぁ……」

そうか……あれからもうだいぶたつな……

姫子「明後日はぶちょーの誕生日ですよ!」

哩「そやっけ?」

姫子「もう!ぶちょー!自分の誕生日も憶えとらんですか?」

哩「ふふ、冗談ばい」

こうして楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。この時私はこんな時間がいつまでも……少なくとも私の大学進学までは続くんやろなと思っとった……

次の日、姫子は用事があると一人出掛けてた、姫子が一人で出掛けるのは珍しかけん、たまには私以外のと遊びたくなるんやろなと思って別段気にせえへんかったと。

哩「暇やし美子んとこでもいこか……」

新道寺寮 美子の部屋

煌「哩部長!おはようございます!」

美子「どうしたん?急に遊びたいて?」

仁美「姫子はどうしたん?」ちゅー

哩「あぁ、なんや今日は用事がある言うとったからな……」

煌「なんにせよすばらですよ!これで四人で麻雀が出来ますからね」

美子「さんまやとあんまり練習にならんからね」

哩「そんじゃ、まざらしてもらうばい」

仁美「アベ◯ミクスで儲けた私の腕、見せてやるばい」ちゅー

そんなこんなで夕方……

哩「!もうこんな時間か……」

仁美「あれ?姫子から連絡ないね……」

哩「どうしたんやろ……姫子……」

美子「ちょっと忘れてるだけですよ」

いやな予感がした、考え過ぎやと思っても次から次へとまるで波が引いては押し寄せるみたいに私の頭の中で最悪の想像として積っていった。

煌「た、大変です!!」

そしてそういう予感は見事に的中してもうた……

煌「姫子が乗った電車が脱線事故を起こしたらしいです!!」

哩「!?」

美子「そ、それで姫子ちゃんは!!」

煌「まだわかりません……」

私はすぐさま現場にも駆けつけた……

哩「姫子!!姫子は無事か!?」

救助隊員「危ないですから下がっててください!」

美子「姫子ちゃん……」

煌「………」

仁美「………」

現場は凄惨とした状況やった、何人もの人が電車から運ばれて行く。私たちは祈る思いで現場から少し離れた所で運ばれる人の顔を覗き込んでいった……

「いました!鶴田姫子さんです!」

哩「!?姫子!!」

現実は残酷やった……
姫子は電車が脱線した時に頭を強く打ち付けて即死やったそうな。

数日後、姫子の葬儀が行われた。私らの他に姫子の両親や遠くの親戚、インハイで一緒に闘った他校の生徒も来てくれた。

煌「うぅ……姫子……」

美子「………姫子ちゃん……ぐすっ」

仁美「……なんもかんも……なんもかんも……うぅ」

哩「………」

私はまだ姫子がいなくなった実感が涌かなかった。今でも部屋へ戻ると姫子が笑顔で迎えてくれるんやないかと期待しとった……

でも、実際は姫子の名前を呼んでも残酷な静寂が返ってくるばかり……

私は幽鬼のように町をさまよった。今は少しでも姫子のことを忘れたかった……

哩(……あの店は……)

『カンコロ雑貨店』

「ワハハ、いらっしゃいませだぞ」

今は藁にもすがりたい思いだった……

このポストに数日前の私宛へ、姫子が一人で出掛けるからどうやっても止めろと書いて送った。こんなもの眉唾なのに、今の私にはどんなちっぽけな可能性にもすがりたかった。

哩「!?」

手紙を出した瞬間、あたりがぐらついた。
一瞬めまいを起こし全ての世界が崩壊するような錯覚に堕ちいった。

目が覚めると一目散に寮に帰った、もしかしたら姫子が何事も無かったかのように私を迎えてくれるかもしれない、しかし姫子はそこには居なかった。
私はそれならばと部室に急いだ。

哩「姫子!姫子はいるか?」

やっぱり、部室にも居るはずはなかった……

私は祈る思いであの日の新聞にめを通した……

事故記事にははっきり鶴田姫子の名前があった……

哩「姫子!!」

やっぱりあんなもんデタラメやったんや!

解っていたことや、そんなこと……

それでも現実を直視するのは今の私には辛すぎた。

煌「部長!何してるんですか!?」

哩「はなだ……姫子が……」

部活の為にやって来た花田が話しかけて来た。

煌「?……それより今日は退院日ですよ?早く迎えに行きましょう」

哩「!?」

花田に言われるまま病院へ行くと姫子が私に抱きついてきた。どうやらあの事故の後、病院にしばらく入院して寮には帰って来れんかったらしい。

姫子「ぶちょー!!」

哩「姫子!!本当よかったばい!!」ぐすっ

美子「本当大げさばい」くすくす

煌「すばらですよ!」

仁美「なんもかんも良かったばい」

どうやら、あの日の前日、私は必要に姫子を止めに入って大げんかになったらしい。

姫子「ぶちょーに腹がたって喧嘩別れした後、タイムカプセルのこと思い出して気晴らしに私だけで堀あけたったんよ」

その時、タイムカプセルから掘り出した『しんどうくん』の人形が、上手い事クッションになってあの事故でも比較的軽症で済んだらしい。

次の日、私と姫子はあの店にもう一回尋ねてみる事にした。

哩「あれ?この辺にあったはずやけど……」

姫子「おかしいですねぶちょー……」

仁美「ほんまにそんな怪しか店あるんですか?」

美子「見間違いじゃない?」

哩「そんなはずは……」ドン!

「おや?ソーリー、少し考え事をしてたものですからね……」ぺこり

哩「いえ、こちらこそ」ぺこり

「はやや!良子ちゃん遅いよ!」

「お待たせしましたね」

「ワハハ、カオリとの待ち合わせに遅れるぞ」

煌「カップルですか?すばらですね」

哩「………」

あの後、いくら探してもあの不思議な店は影も形もなかった。
確かに手紙を送った直後はあったはずなのに……

姫子「ぶちょー!何考えてるんですか♪」

哩「あぁ、ちょっとな……」

姫子「教えて下さいよ!ぶちょー!」

そんなことより、今は姫子とやみんなとの時間を精一杯楽しもうと思う。

煌「すばらですよ!」

美子「くすくす」

仁美「またのろけばい」ちゅー

姫子「ぶちょー!」だきつきー

哩「うわわ!姫子、ここではやめるばい!」

戒能「さまざまな人々、さまざまな物語」

戒能「それは一つ一つは繋がってはおらず、本当にあったのかさえわからない……」

戒能「あったかも知れない過去、来るはずだった未来……」

戒能「もしかしたらそれらがパラレルワールドのように無数に存在するのかもしれません……」

はやり「はやや?誰に話してるの?」

戒能「いえ、何でもありません」

はやり「ふ~ん……まぁいいや☆」

戒能「それではみなさんさようなら」

世にも奇妙な咲-saki- カン!

乙 前も聞きたかったんだけどめげるワンも同んなじシリーズなのか

>>61
はい同シリーズです

長編はもうしばらくお待ちを……

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