八雲「私とあの人の共に過ごせなかった時」 (83)

このSSは岩館真理子さんの漫画作品
『わたしが人魚になった日』のストーリーをほぼそのままなぞったものです。

1:八雲「私とあの人だけの共に過ごしてきた時」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395919636/)
2:八雲「私とあの人だけの共に過ごしていく時」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396013267/)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396262472






好き・・・・・・



播磨「い、妹さん・・・・・・」



播磨さん・・・・・・



八雲「は、はい・・・・・・・・・・・・」



好き・・・・・・



播磨「や・・・・・・」

播磨「八雲、って・・・・・・・・・・・・呼んでいいか・・・・・・・・・・・・?」



八雲「・・・・・・・・・・・・!!」

八雲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・」



大好き・・・・・・



播磨さん・・・・・・








私の想い



八雲「・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」



私の想い・・・・・・



播磨「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





私が播磨さんで
播磨さんが私になっていた



播磨「・・・・・・・・・・・・八雲・・・・・・・・・・・・」




私のからだは溶けていって




八雲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・播磨さん・・・・・・・・・・・・」




八雲「・・・・・・・・・・・・拳児・・・・・・さん・・・・・・」




播磨さんとひとつになっているの・・・・・・











ジリリリリリリ・・・・・・








八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・あれ・・・・・・?)

八雲(・・・・・・私、昨日は拳児さんの所に泊まったはず・・・・・・)


八雲「・・・・・・なんで自分の部屋にいるんだろう・・・・・・」



八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・夢・・・・・・?)



カァッ!!!!!!


八雲(ゆ、夢なら私・・・・・・・・・・・・なんて夢を・・・・・・・・・・・・!!)

八雲(・・・・・・でも、拳児さん・・・・・・・・・・・・)

八雲(かっこよかった・・・・・・・・・・・・)ポッ


グゥ~


八雲(・・・・・・取りあえず何か食べよう・・・・・・)



天満「あれっ?おはよう八雲、随分早起きだね!」

八雲「おはよう姉さん。随分って・・・・・・もう9時じゃない」

天満「なに言ってるの!いつもお寝坊さんで、日曜はお昼に起きてくる八雲がそんなこと言う~?」

八雲「そ、そうだったっけ・・・・・・?」

天満「さ、それより朝ごはん食べよう!」

八雲「えっ!?姉さんが用意してくれたの?」

天満「そうだよ!って、大体休みの日はいつも私が準備してるじゃん!ちょっと八雲、今日は私の事からかってるの?」

八雲「ご、ごめん姉さん・・・・・・そんなつもりじゃ・・・・・・」

天満「ま、いっかー!さ、ごはんよーそろっと!」


八雲(・・・・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・・・・?)



八雲(・・・・・・・・・・・・何か変・・・・・・・・・・・・)

八雲(そもそも、やっぱり家で目覚めたのもそうだし)

八雲(私が休みの日はいつも昼起きだとか)

八雲(姉さんが毎回朝食を用意してるとか)

八雲(・・・・・・そもそも、姉さんの口調がいつもと全然違う!!)


ニャーン


八雲「あっ、伊織」

天満「え?なに言ってるの八雲、その子の名前は順平でしょ?」

八雲「・・・・・・えっ?」



八雲「ね、姉さん何を言って」

天満「それはこっちのセリフ。今日早起きしすぎて寝ぼけてるの?」

八雲(・・・・・・・・・・・・!)

八雲「姉さん今日は何月何日?」

天満「えっ!?し、4/1だけど」

八雲「私たちの通ってる学校は?」

天満「お、降神(おりがみ)学院高等学校・・・・・・」

八雲「ね、姉さんの好きな人の名前は・・・・・・!?」

天満「ええっ!?もう本当にどうしたの今日は!!」

天満「鳥丸君よ!と り ま る 君!!」

天満「っていうかもう鳥丸くんとは付き合ってるじゃない!!」



八雲(・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!)




八雲(違う・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!)

八雲(全然違う・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!)

八雲(私の知っている日常じゃない・・・・・・・・・・・・!!)

八雲(どうして・・・・・・!?)

八雲(どうして・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?)


ダッ!! バァン!!

天満「ちょ、ちょっと八雲!寝巻きでどこに行くの!?」


ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ・・・・・・

八雲(どうして!?)

八雲(私の知らない世界なの!?ここは・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・助けて)

八雲(・・・・・・・・・・・・・・・・・・助けて、拳児さん!!)



ドンッ


八雲「いたっ・・・・・・あ、す、すみません!!」

沢近「いえ、私もボーっとしてたから・・・・・・ごめんなさいね」

八雲(!!)

八雲「さ、沢近先輩!!」

沢近「!?」


沢近(な、何この子・・・・・・)

沢近(すごい形相で、しかも寝巻き・・・・・・)

沢近(さらに私の事を知ってるなんて・・・・・・どこかで会ったかしら?)


八雲「あ、あのっ!沢近先輩!!」


天満「ちょっとやくもーーーーー!!」

八雲「!!」

天満「ハァッ・・・・・・ハァッ・・・・・・も~いきなり飛び出したから何かとおもったよ!」

天満「・・・・・・あれ?この人は?」

沢近「どうも、この子と今ぶつかっちゃって・・・・・・ごめんなさい」

天満「いえいえ、こちらこそご迷惑おかけしました」


八雲(!?)


八雲(姉さんと先輩が友達じゃない!?)

八雲(どういうことなの!?)

八雲「ちょ、ちょっと姉さん・・・・・・」

天満「もーーほら帰るよ八雲!こんな薄着でいたら本当に風邪引いちゃう!さ、帰ろ帰ろ」

八雲「ね、姉さん!待って!ちょっと待って!」


ズルズルズル・・・・・・



八雲(待って・・・・・・姉さん・・・・・・沢近先輩の・・・・・・・・・・・・)

八雲(沢近先輩の・・・・・・・・・・・・視線の先に居たのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・居たのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・)




沢近「・・・・・・・・・・・・何だったのかしら今のは・・・・・・」

沢近「ま、邪魔も去ってちょうどよかったわ」

沢近「・・・・・・」


沢近「雨が降ってきたわね・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・ねぇ」

沢近「別れたいんじゃないの?私と・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒゲ・・・・・・・・・・・」



播磨「・・・・・・」







八雲「拳児・・・・・・・・・・・・さん・・・・・・・・・・・・」




八雲(・・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・・?)







天満「もー八雲ったら!知らない人にあんな失礼な事しちゃだめでしょ!」

八雲「ね、姉さん・・・沢近先輩の事、知らないの・・・?」

天満「え?沢近先輩?あんな上級生うちの学校にいたかなぁ?」

天満「あ、っていうか、制服自体違うじゃん!」

八雲「・・・・・・」

天満「・・・・・・本当に、大丈夫?」

八雲「・・・・・・だ、大丈夫・・・・・・」

八雲「私、少し休むね・・・・・・」フラ・・・・・・

天満「あ、八雲・・・・・・」

八雲「・・・・・・」


八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・嫌・・・・・・)

八雲(嫌だよ・・・・・・・・・・・・)

八雲(どうして?)

八雲(こんな世界・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・私の知ってる世界じゃない・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・拳児さん・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・どうしてあそこにいたの・・・・・?)

八雲(・・・・・・・・・・・・どうして私に気づかなかったの・・・・・・?)

八雲(・・・・・・・・・・・・どうして助けてくれなかったの・・・・・・?)

八雲(・・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・沢近先輩と・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・待ち合わせしてる様子だったの・・・・・・・・・・・・?)


八雲「・・・・・・・・・・・・」



・・・・・・

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・あれ、もう朝・・・・・・?」

八雲(あれからずっと寝てたんだ・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・夢だよね、昨日のは・・・・・・)

八雲(そう、きっとそう・・・・・・)


コンコン


天満「八雲、入るよー」


ガチャッ


天満「八雲、具合はどう?」

八雲「あ、姉さん・・・・・・まあ、よくなったと思う・・・・・・」

天満「・・・・・・まだそんなによくないみたいね、顔色悪いよ?」

八雲(・・・・・・姉さん、着ている制服が違う・・・・・・)

天満「今日は休みなさい!連絡はしといてあげるから」

天満「じゃ、鳥丸君が迎えに来てるから、私もういくね」

八雲(名前が違う・・・・・・)

天満「あったかくして寝てるんだよー八雲!」


ガチャッ

タタタタ・・・・・・


ゴメントリマルクン マッタ?
ダイジョウブダヨテンマサン ・・・・・・


八雲「・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・」

八雲(やっぱり、夢じゃないんだね・・・・・・・・・・・・・・・・・・)



同日PM12時


グゥ~


八雲「・・・・・・」

八雲「さすがにお腹がすいたな・・・・・・」

八雲「・・・・・・何か食べよう」



八雲「・・・・・・ご飯が炊けてる」

八雲「鮭と、焼きたらこまである・・・・・・」

八雲(こっちの世界の姉さんは、料理が上手いのね)




八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲「・・・・・・・・・・・・あ」

八雲(・・・・・・気づいたら・・・・・・)

八雲(おにぎり、握ってた・・・・・・・・・・・・)

八雲(しかも2人分・・・・・・・・・・・・)

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲(・・・・・・そういえば、ここが違う世界だとしても)

八雲(私と拳児さんが付き合っていないという世界ではないかもしれない)

八雲(確かめなきゃ・・・・・・・・・・・・)



八雲(・・・・・・・・・・・・取りあえず出てきてしまったけど)

八雲(拳児さん、どこにいるんだろう?)

八雲(!! そうだ、携帯の連絡先・・・・・・)

八雲(何で気づかなかったのかしら) ゴソゴソ

八雲(・・・・・・拳児さん)

八雲(・・・・・・お願い出て・・・・・・!)



ピッ 


『おかけになった番号は、現在使われておりません・・・・・・』



八雲「!!」

八雲「そ、そんな・・・・・・・・・・・・」





八雲「・・・・・・」トボトボ

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲(どうしよう・・・・・・)

八雲(どうしたら・・・・・・・・・・・・)

八雲「・・・・・・あれ、ここって・・・・・・」

八雲(昨日私が寝巻きのまま走って来ちゃった所・・・・・・)


・・・・・・ザサァ・・・・・・ ザァ・・・・・・・・・・・・


八雲(海が見える公園なのね・・・・・・)

八雲(・・・・・・あれ?)

八雲(あそこにいるの・・・・・・)


八雲「!!」



八雲「け、拳児さん!!」



播磨「・・・・・・・・・・・・?」


ザワッ なにかしらあの子

いきなり大声出して ヒソヒソ・・・



八雲(・・・・・・・・・・・・こっちを見た!)

八雲「拳児さん、あの・・・・・・・・・・・・!」

播磨「・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・」プイッ

八雲「!?」


八雲(え・・・・・・・・・・・・)

八雲(う、嘘・・・・・・!?)

八雲(知らない・・・・・・?)

八雲(分からない・・・・・・?)

八雲(私たち)

八雲(付き合って・・・・・・・・・・・・ない?)



沢近「またここにいたの、ヒゲ」

八雲「!!」


播磨「・・・・・・うっせ、何か用かよお嬢」

沢近「用があるから来てるんでしょ」

八雲(や、やだ・・・・・・どこかに隠れないと・・・・・・)

八雲(とりあえず、あの茂みに・・・・・・)


・・・・・・

播磨「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・ねぇヒゲ・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・ちょっと・・・・・・」

播磨「人前ではヒゲって呼ぶんじゃねー」

沢近「・・・・・・拳一・・・・・・ったく、コレでいい?」

播磨「・・・・・・」


八雲(拳一!?)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・拳児さん・・・・・・・・・・・・じゃない・・・・・・)

八雲(私の知ってる・・・・・・・・・・・・)

八雲(人じゃ・・・・・・・・・・・・ない・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・)





翌日、月曜日、朝


天満「・・・・・・八雲、今日も休むの?」

八雲「・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・」

天満「・・・・・・病院、ちゃんと行きなさいよ」

八雲「・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・」


ガチャッ バタン・・・・・・


八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・拳児さん・・・・・・)

八雲(・・・・今日も昨日の場所にいるかな・・・・・・)



タタタタ・・・


八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・)


播磨「・・・・・・・・・・・・」


八雲(・・・・・・・・・・・・いた・・・・・・)


・・・・・・ザサァ・・・・・・ ザァ・・・・・・・・・・・・


八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・なんて声をかけたらいいか、分からない・・・・・・)

八雲(・・・・・・そもそも、声をかけていいのか・・・・・・)

八雲(・・・・・・あそこのベンチに座ってよう・・・・・・)


・・・・・・ザサァ・・・・・・ ザァ・・・・・・・・・・・・



八雲(・・・・・・ずっと1人でいる・・・・・・)

八雲(・・・・・・今日は沢近先輩、来ないのかな)

八雲(・・・・・・拳児さんを1人にして・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・ひどい・・・・・・・・・・・・)

八雲(拳児さん、かわいそう・・・・・・)


播磨「・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・あ・・・・・・」

八雲(帰っちゃった・・・・・・)

八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・私も帰ろう・・・・・・)




それからも私は学校を休み、何度もこの公園に来た

拳児さんはいつもこの公園にいて、同じ場所で海を見ていた

たまに沢近先輩が来て、何か話すでもなく、傍に居ることもあった


私はいつも同じベンチに座って

いつも拳児さんを見ていた・・・・・・




・・・・・・ザサァ・・・・・・ ザァ・・・・・・・・・・・・


ポツ・・・ポツ・・・


八雲(あ・・・・・・雨・・・・・・)

八雲(・・・・・・拳児さん・・・・・・)


播磨「・・・・・・・・・・・・」


八雲(海が好きなんですね)

八雲(それとも1人が好きなんですか・・・・・・?)





八雲(・・・・・・いつも・・・・・・)

八雲(いつも沢近先輩とここに来るんですか・・・・・・?)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(私も・・・・・・)

八雲(私もいつもここへ来てること・・・・・・)

八雲(きっと知らないんですよね・・・・・・)

八雲(いつも・・・・・・)

八雲(いつも、拳児さんのとなりにいること・・・・・・・・・・・・)

八雲(知らないんですよね・・・・・・)



八雲「・・・・・・・・・・・・」




播磨「・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・帰るか・・・・・・・・・・・・」


ザ ブ ン !!


播磨「!?」


わー 女の子が海に飛び込んだー!

キャー だ、だれか助けなきゃー ワーワー





バチャバチャバチャ

ゴプゴプ・・・ バチャバチャ・・・



八雲(・・・・・・・・・・・・どうして?)

八雲(ねえ・・・・・・)

八雲(どうして助けてくれないんですか?)

八雲(助けてくれるはずですよね・・・・・・・・・・・・)

八雲(早く・・・・・・・・・・・・)

八雲(ねえ)

八雲(早く・・・・・・)

八雲(拳児さん・・・・・・・・・・・・)


八雲(・・・・・・・・・・・・)



・・・・・・




・・・・・・






「俺、泳げねんだわ」







播磨「ワリィ」

播磨「一緒に沈んじまったな」





「・・・・・・・・・・・・いいんですよ、播磨さん・・・・・・・・・・・・」





・・・・・・



・・・・・・





バチャッ!! ドサッ!!


八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・アレ・・・・・・?)



ワーワー おお! 若いお兄さんが助けたぞ! ワー


播磨「あ、あのよお嬢さん・・・・・・その・・・・・・」

播磨「アンタ、若いんだから そんなその・・・・・・」

播磨「人生をあきらめるっつーのは、まだその・・・・・・」

播磨「早すぎると・・・・・・・・・・・・思うんだ・・・・・・」

播磨「はは は」


バタッ


ワー お兄さんが倒れたー! 

きゅ、救急車ーー!! ワーワー



ピーポーピーポーピーポー・・・





看護婦「足の骨にひびが入ってるんですって」

看護婦「飛び込むときに鉄柵に足をぶつけたらしいのよね」

看護婦「それにしても」

看護婦「よくあんな体格のいい彼を助けられましたね」

八雲(あれ・・・?わ、私が助けたことになってる・・・?)

八雲「あ、あの、違うんです・・・」

看護婦「重かったでしょ?水からあげるときだって」

看護婦「見かけによらず、力があるのねえ」

看護婦「それも冷たい水の中に飛び込んで・・・・・・」

八雲「あ、あの・・・・・・その・・・・・・」

看護婦「まぁ、少し休んでいきなさいね」



八雲(・・・・・・そんな・・・・・・)

八雲(拳児さんは、入院してしまうし・・・・・・)

八雲(・・・・・・こんなつもりじゃ・・・・・・)

八雲(こんなつもりで、私・・・・・・・・・・・・)


看護婦「コートの中に学生証が入ってたから、連絡しておいたわよ」

看護婦「妹さんが迎えに来てくれるって」


八雲(わ、私・・・・・入院させる気なんて・・・・・)

八雲(怪我をさせる気なんて・・・・・)

八雲(私はただ・・・・・)

八雲(私はただ・・・・・)

八雲(もう一度、拳児さんと、もう一度知り合うきっかけが・・・・・欲しくて・・・・・)

八雲(だって)

八雲(この世界じゃ私と拳児さんは他人)

八雲(姉さんとも知り合いでもない)

八雲(しかも、沢近先輩とはよく会ってるし)

八雲(だから、どうしたらいいか分からなくて・・・・・)

八雲(私がまた話しかけても・・・・・)

八雲(私なんか・・・・・・・・・・)

八雲(そう思ったら勝手に体が動いて・・・・・・・・・・)

八雲(海に飛び込んでいたの・・・・・)


キイッ

八雲「!!」

看護婦「あ、ご家族の方ですね。こちらへどうぞ」

沢近「・・・・・・」

八雲(沢近先輩・・・・・・!!)







沢近「・・・アラ?あなたこの間の・・・」

看護婦「あら、お知り合いですか?この方が助けてくれたんですよ、海に飛び込んで」

八雲「あ、いえ、ち、違うんです・・・・・・」

沢近「・・・・・・ありがとう」

八雲「あ・・・・・・いえ・・・・・・あの・・・・・・」

看護婦「あなた妹さん?」

沢近「いえ・・・・・・一緒に暮らしてるんです」



八雲「・・・・・・・・・・・・え?」



沢近「一緒に暮らしてるんです」





ザァ・・・ザァ・・・・



八雲「ど、どうも、ありがとうございました・・・・・・」

看護婦「あら、もういいの?気をつけて帰りなさい」

八雲「は、はい・・・・・・」


ザア・・・ザア・・・


八雲「・・・・・・雨・・・・・・寒いな・・・・・・」

八雲「・・・・・・あ・・・・・・」

八雲「沢近先輩・・・・・・・・・・・・」


八雲(・・・・・・さっきの会話・・・・・・・・・・・・)




・・・・・・



"自[ピーーー]るような原因は思い当たりませんか?"


"さあ・・・・・・"
"自分の趣味が上手く行かない事気にしてたくらいで"
"他には何も・・・・・・"


"あら、会って行かないの?"



"顔見てもしょうがないから"

"コレ、あのヒゲに渡しておいてください。また来ます"




・・・・・・



八雲(・・・・・・一緒に・・・・・・)

八雲(・・・・・・暮らしてる・・・・・・)

八雲(・・・・・・あ、私・・・・・・無意識に後つけてきちゃった・・・・・・)


キイッ バタン・・・・・・


八雲(ここが、拳児さんと、先輩の住んでる所・・・・・・)






"あの子"


"妊娠してるわね"







八雲(・・・・・・・・・・・・)



八雲(・・・・・・・・・・・・)

"飛び込むような原因は思い当たりませんか?"


"さあ・・・・・・"
"自分の趣味が上手く行かない事気にしてたくらいで"
"他には何も・・・・・・"


"あら、会って行かないの?"



"顔見てもしょうがないから"

"コレ、あのヒゲに渡しておいてください。また来ます"




・・・・・・



八雲(・・・・・・一緒に・・・・・・)

八雲(・・・・・・暮らしてる・・・・・・)

八雲(・・・・・・あ、私・・・・・・無意識に後つけてきちゃった・・・・・・)


キイッ バタン・・・・・・


八雲(ここが、拳児さんと、先輩の住んでる所・・・・・・)






"あの子"


"妊娠してるわね"







八雲(・・・・・・・・・・・・)



八雲(・・・・・・・・・・・・)



ザァ・・・・・・

ザァ・・・・・・



拳児さん・・・・・・


八雲・・・・・・


助けに、来てくれたんですね・・・・・・


八雲のためなら、海の底まで泳いでいってやらぁ!


ザァ・・・・・・

ザァ・・・・・・




・・・・・・


・・・・・・







八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲「夢・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」グスッ

八雲「う・・・・・・ううっ・・・・・・・・・・・・うう・・・・・・・・・・・・」




翌日、昼間


八雲(昨日の今日ってことで、休みもらったし・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・拳児さんに、お見舞いに行こうかな・・・・・・)

八雲(理由がなんであれ、怪我させてしまったのは本当だし・・・・・・)

八雲(それに・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・拳児さんに、会えるし・・・・・・・・・・・・)




タッタッタッタ・・・



総合病院 播磨の病室前

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・来ちゃった・・・・・・)

八雲(・・・・・・お花なんてもらって、拳児さん、喜ぶかな・・・・・・・・・・・・)

八雲(あくまで初対面、怪我させて、ごめんなさいって・・・・・・)

八雲(そう・・・・・・それだけ・・・・・・)

八雲(それを言うだけだから・・・・・・)

八雲(あ・・・・・・)

八雲(・・・・・・少しドアが空いてる・・・・・・)

八雲(拳児さん、寝てる・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・拳児さん・・・・・・)


播磨「・・・・・・」

播磨「!!」バッ

八雲「!!(こ、こっちを向いた!)」サッ


播磨「お嬢!?」

八雲「・・・・・・えっ・・・・・・?」


播磨「お嬢だろ!?」

八雲(あ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・)

播磨「・・・・・・・・・愛理なんだろ!?なぁ!!」

八雲「!!」

ダッ!! タタタタタ・・・・・・


播磨「・・・・・・チッ、行っちまいやがった・・・・・・」

播磨「・・・・・・」


愛理

えり

え り・・・・・・



タッタッタッタ・・・・・・

八雲「!!」

沢近「・・・・・・あなた・・・・・・」

八雲(沢近先輩・・・・・・)

八雲(いえ、・・・・・・愛理さん・・・・・・)

沢近「・・・・・・」

沢近「ねえ、本当に・・・・・・」

八雲「?」

沢近「本当に、あのバカ、自分で海に飛び込んだの?」

八雲「!!」






沢近「アタシ、信じられなくて」

沢近「アイツそんな度胸のあるやつじゃないわ」

沢近「信じられない・・・・・・あんな」

沢近「あんな、バカでアホでマヌケな・・・・・・」

沢近「・・・・・・」

沢近「・・・・・・あんなヤツが、自分から飛び込むなんて」

沢近「きっと、うっかり足を滑らせたとか、そんなもんよ」

沢近「そうよ、いつもバカなんだから・・・・・・ありえないわよ」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲「わ、私」

八雲「私、見ました」

八雲「飛び込むところ」

沢近「・・・・・・」

八雲「意を決したように海に飛び込むところ・・・・・・」

八雲「わ、私は・・・・・・見たんです・・・・・・」

沢近「・・・・・・」

沢近「・・・・・・どっちにしろ弱虫な男ね」

八雲「・・・・・・」


八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(ひどい)

八雲(ひどい・・・・・・愛理さん・・・・・・そんないい方)

八雲(ひどい・・・・・・)

八雲(・・・・・・ずるい・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・貴女は、貴女は・・・・・・・・・・・・)

八雲(拳児さんと一緒に暮らせて)

八雲(毎日あの人の顔を見る事が出来て)

八雲(きっと、お喋りしたり、笑ったり・・・・・・・・・・・・)

八雲(この世界の私の知らない拳児さんを・・・・・・)

八雲(沢山、沢山、きっと知ってるくせに・・・・・・)

八雲(私なんかより・・・・・・)

八雲(沢山、たくさん・・・・・・・・・・・・)


八雲「・・・・・・・・・・・・」ジワッ

沢近「!? ちょ、ちょっと、どうして泣くの?」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

沢近「ねえ、どうして泣いてるの!?」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・」


ダッ!! タタタタ・・・・・・


沢近「あ、ちょっと!」

沢近「・・・・・・」

沢近「・・・・・・変な子ね・・・・・・」




同日、病院

看護婦「もう死のうなんて考えないのよ!」

播磨「・・・・・・ハァ・・・・・・」

看護婦「何よその気の抜けた返事!あなたまだ若いんだから、これからじゃない!」

播磨「・・・・・・ハァ・・・・・・」

看護婦「分かった?」

播磨「・・・・・・ウス・・・・・・・・・・・・」


播磨「・・・(・・・・・・・・・どーにも解せねえ・・・・・・)」





看護婦「拳一君、また花束来てたわよ!」

播磨「えっ?」

看護婦「ホラホラ、彼女からのプレゼントでしょ!!元気出して、希望持って!ね!」

播磨「は、はぁ・・・・・・」

播磨(入院してから毎日届いてるが、お嬢、アイツ花束ってガラだったか・・・・・・?)

播磨「・・・・・・あれ、今日はメッセージカードが添えてある・・・・・・」


『けんいちさんへ』


播磨「・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・けんいち、さん・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・プ・・・・・・」

播磨「ブワーーーーハッハッハ!!いつもヒゲとかバカとかアホとかしか言わねーくせに・・・・・・」クックック

播磨「なんだコレ!?かしこまっちゃってよ・・・・・・」

播磨「プ・・・・・・・・・・・・ククク・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・電話でからかってやろ・・・・・・」




ズル・・・・・・ズル・・・・・・・・・・・・

播磨(ク、クソッ・・・・・・片足使えねーし、松葉杖だし・・・・・・)

播磨(歩きにくいったらありゃしねー・・・・・・!!)

播磨「・・・・・・ッハァ・・・・・・」ドサッ

播磨「どうにか公衆電話にたどりついたぜ・・・・・・・・・・・・」

播磨「さ、てと・・・・・・」


チャリン ピピピ ポパ・・・・・・


プルルルルル・・・・・・ プルルルルル・・・・・・

プルルルルル・・・・・・ プルルルルル・・・・・・

プルルルルル・・・・・・ プルルルルル・・・・・・


播磨「で、出ねえ・・・・・・な・・・・・・」





八雲(・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・)


八雲(やっぱり、一度もお見舞いに来ない・・・・・・・・・・・・)

プルルルルル・・・・・・ プルルルルル・・・・・・

プルルルルル・・・・・・ プルルルルル・・・・・・



"・・・・・・どっちにしろ弱虫な男ね "



八雲(・・・・・・まさか)

八雲(・・・・・・まさか!!)

八雲(拳児さんを見捨てちゃったの!?)

八雲(・・・・・・)

八雲(あの人の家に行って確かめてみよう・・・・・・)


沢近、播磨のアパート

ピンポーンピンポーン

ピンポーンピンポーン ピンポーンピンポーン



しーん・・・・・・



八雲(・・・・・・出て行っちゃったの・・・・・・?)

八雲(あの人・・・・・・)

八雲(そ、その方が・・・・・・いいよね・・・・・・きっと)

八雲(そう、だって・・・・・・)

八雲(いつもそう、あの人は)

八雲(拳児さんにひどいことばかりして、ひどいことばかりして)

八雲(全然、拳児さんの気持ちを、分かってなかった)

八雲(あんな、あんな冷たい人・・・・・・)



"愛理なんだろ!?"



八雲(!!)



"愛理なんだろ!?"



八雲(・・・・・・)




八雲(・・・・・・あの人の名前は、ちゃんと呼ぶんですね・・・・・・)

八雲(・・・・・・あの人の事は、待ってるんですね・・・・・・)

八雲(・・・・・・どうして・・・・・・?)

八雲(私とは、全然違うじゃないですか・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・ずるい・・・・・・)



八雲「・・・・・・帰ろう・・・・・・」



八雲(・・・・・・)

八雲(この世界の私は、拳児さんと知り合うこともなくて)

八雲(何もせずに過ごしている間に)

八雲(2人は知り合って・・・・・・)

八雲(一緒に、暮らしてたんだ・・・・・・)


数日後


八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(今日も学校さぼっちゃった・・・・・・)

八雲(・・・・・・また、この公園に来ちゃった・・・・・・)

八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・拳児さん・・・・・・)

八雲(・・・・・・好き・・・・・・)

八雲(・・・・・・大好き)

八雲(・・・・・・だから)

八雲(あの人に電話が通じないからって)

八雲(悲しそうな顔しないで・・・・・・)



八雲(・・・・・・海に、飛び込まなければよかった・・・・・・)

八雲(・・・・・・私は・・・・・・)

八雲(あの時、拳児さんに告白する勇気も)

八雲(きっと・・・・・・拳児さんのために・・・・・・)

八雲(・・・・・・[ピーーー]る勇気も・・・・・・ある・・・・・・)

八雲(・・・・・・でも・・・・・・)

八雲(それなのに・・・・・・)

八雲(もう一度、自分の気持ちをうちあける勇気が・・・・・・・・・・・・)

八雲(なかったの・・・・・・)


八雲(・・・・・・海に、飛び込まなければよかった・・・・・・)

八雲(・・・・・・私は・・・・・・)

八雲(あの時、拳児さんに告白する勇気があったのに・・・・・・)

八雲(それなのに・・・・・・)

八雲(もう一度、自分の気持ちをうちあける勇気が・・・・・・・・・・・・)

八雲(なかったの・・・・・・)

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自殺する


次の日、沢近、播磨のアパート


八雲(・・・・・・私、ここでなにやってるんだろう・・・・・・)

八雲(毎日、2人のアパートの部屋の前に来て・・・・・・)

八雲(・・・・・・きっともう帰って来ないのに・・・・・・)

八雲(・・・・・・あの人は・・・・・・)

八雲(拳児さんを、見捨てたのに・・・・・・)



中村「お嬢さん、ここで誰かをお待ちですかな?」

八雲「?」


中村「ここの部屋に住んでいる女の子は、帰ってきておりますか?」

八雲「い、いいえ・・・・・・」

中村「そうですか・・・・・・では、どこへ行かれたかは・・・・・・」

八雲「いいえ・・・・・・」

中村「そうですか・・・・・・あ、いやこれは失礼、私とした事が名前も名乗らずに・・・・・・」

中村「私、愛理お嬢様の屋敷の執事の、中村と申します」

中村「もし、愛理お嬢様がお帰りになられたり、行方が分かられたら、こちらに連絡をいただけませんか?」

中村「お嬢様は、家を出てしばらくになります・・・・・・やっとここを見つけたのですが・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」


>>58
ありがとうございます


翌日、病院

看護婦「拳一君、また花束よ!ほんっと健気な彼女ね~!」



『けんいちさんへ お見舞いにいかなくて ごめんなさい』



播磨「・・・・・・」


八雲(・・・・・・私・・・・・・)

八雲(いつもいつも、花束だけ渡して・・・・・・)

八雲(・・・・・・拳児さんの病室の周りをうろうろして・・・・・・)

八雲(・・・・・・本当に・・・・・・どうしたいんだろう・・・・・・)

八雲(・・・・・・どうしたい・・・・・・?)

八雲(・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・顔を見たい・・・・・・)

八雲(・・・・・・声を聞きたい・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・会いたい・・・・・・・・・・・・)

八雲(顔を見たい)

八雲(声を聞きたい)

八雲(会いたい・・・・・・)

八雲(・・・・・・)

八雲(今日はもう、帰ろう・・・・・・)


ゴツン・・・ ゴツン・・・ ゴツン・・・


八雲(松葉杖の音・・・?)


八雲「・・・・・・あ・・・・・・!!」

ゴツン ゴツン ゴツン

八雲(け、拳児さん・・・・・・!!)

八雲(ど、どうしよう・・・・・・こっちに来る・・・・・・!)

八雲(あ、あ・・・・・・)

八雲(お、思い切って・・・・・・・・・・・・)

八雲(そうだ、思い切って、声を・・・・・・)

八雲(声をかけてみよう・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・勇気を出して・・・・・・)


八雲「あ、あの・・・・・・・・・・・・!!」


ゴツン ゴツン ゴツン


八雲「・・・・・・!?」

八雲「あの、あの・・・・・・」


ゴツン・・・ ゴツン・・・ ゴツン・・・





八雲(覚えてない・・・・・・!?)




八雲(覚えてないんだ、私のこと)

八雲(覚えて・・・・・・・・・・・・ない・・・・・・)










妹さん!! 

播磨さん・・・


わ、ワリィ!また漫画手伝ってくんねーか?

はい、播磨さんのお役に立てるのなら・・・・・・


本当、いつも妹さんには助けられてばっかりだな!

いえ、私でよければ、いつでもお傍にいさせてください・・・


美味い!妹さんのおにぎりは本当に美味いな!

そ、そんな・・・・・・あ、ありがとうございます・・・



好きです、播磨さん・・・・・・


お、俺も妹さんの事が、大好きだ!




















八雲(・・・・・・・・・・・・)





看護婦「こら拳一君!また勝手に出歩いて!!治るものも治らないわよ!!」

看護婦「何度言ったらわかるの、いいかげんにしてちょうだい!」

播磨「い、イヤそのよぉ・・・用事があって・・・・・・」

看護婦「彼女が会いに来なくて気になるのは分かるけど、電話だったら私がかけてあげるから」

播磨「電話じゃなくて・・・」

播磨「・・・」

播磨「あ」

八雲「!!」

播磨「お嬢さん、この辺で女の子見かけなかったか?」

八雲「え、えっ」

播磨「背はアンタと同じくらいで、髪は金髪でよ・・・」

播磨「ちょ、ちょっと、いや、かなり可愛い顔した・・・・・・」

播磨「い、いや、やっぱかなりキツそうな顔したよ・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・み、見ました」

播磨「ほ、ホントか!?」


播磨「ソイツ、どっちに行ったか分かるか!?」

八雲「・・・・・・」

八雲「あ、あっちの住宅街の方へ・・・・・・歩いて行きました・・・・・・」

播磨「よっしゃーーー!!お嬢のヤツ、やっぱ家に帰ってたんじゃねーか!!」

播磨「・・・・・・・・・・・・ったくよぉ・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・俺も早く謝んねーとな・・・・・・・・・・・・」

播磨「ワリ、看護婦さん、アパートに電話かけてくれねぇか?」

看護婦「ハイハイ、分かったから部屋に戻りなさい」


頼んだぜ!絶対だからな!!
ハイハイ、分かりました、大丈夫よ・・・・・・

・・・・・・




八雲「・・・・・・・・・・・・」




同日、夕方、沢近、播磨のアパート


沢近「・・・・・・・・・・・・アラ?」

八雲「・・・・・・・・・・・・」

八雲「・・・・・・やっと帰ってきたんですね・・・・・・」

沢近「あ、ああ・・・そういえばアタシ、まだあなたにお礼をしてなかったわね・・・」

沢近「どうぞ、入って」


ガチャッ


八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・播磨さんのカチューシャ・・・)

八雲(・・・・・・播磨さんの好きな上着・・・)

八雲(あ・・・・・・)

八雲(・・・・・・編み掛けの・・・・・・・・・ベビー服・・・・・・)

八雲(・・・・・・)


八雲「あ、あの・・・この間、あなたを探してた人が、いましたけど・・・・・・」

沢近「ああ、中村ね・・・」

沢近「アタシも彼も家出してるから・・・探してるのよ」

沢近「私達、結婚を反対されたのよ」

八雲「・・・・・・」

沢近「でもアイツ・・・俺が幸せにしてやる!とか言って・・・私を家から連れ出したの」

沢近「アイツっていつもそう・・・土壇場でいっつも、カッコイイとこ見せてくれるの」

沢近「いつか、無理やりお見合いさせられそうになった時もそう」

沢近「あの時はアイツだって気づかなかったけど・・・でも、アタシのことを守ってくれた・・・」

八雲「・・・・・・」


沢近「でもね・・・・・・アタシ達、ついいつも喧嘩しちゃって・・・」

沢近「大体、アタシの方が素直じゃなくて、こじれちゃって・・・」

沢近「そしたら、赤ちゃんできたって言ったら・・・・・・」

八雲「・・・・・・!!」

沢近「アイツ・・・・・・うろたえちゃって・・・・・・」

沢近「あんなアイツ・・・見た事なかった・・・・・・」

沢近「・・・・・・」

沢近「・・・・・・バッカみたい・・・・・・何が結婚しよう・・・よね」

八雲「・・・・・・」

沢近「だから、あんたなんか死んじゃえって、言ったのよ・・・」

八雲「・・・・・・」

沢近「そしたらアイツ・・・・・・」

沢近「海に飛び込めば簡単だって・・・・・・」

沢近「あそこの海は深いから、すぐ溺れて死ぬから、って・・・・・・」

沢近「・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」



八雲(拳児さん・・・・・・)

八雲(そんなに危ない海なのに・・・・・・)

八雲(助けてくれたんですね・・・・・・)


八雲「あ、あの・・・」

沢近「ん?」

八雲「お見舞いには、行ったんですか?」

沢近「・・・行ってないわよ」

沢近「行ったってしょうがないもの。怪我が早く治るわけじゃないし・・・」

沢近「・・・・・・それに・・・・・・」

沢近「それに、いまさらどんな顔して、拳一に会ったらいいのよ・・・・・・」

八雲「・・・・・・・・・・・・」



ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン



八雲「!!」

沢近「・・・多分アイツね・・・」

八雲「・・・・・・」

八雲「あ、あの・・・出ないんですか・・・?」

沢近「・・・・・・いいのよ」

八雲「・・・・・・」


八雲(拳児さんからの電話・・・・・・)

八雲(拳児さんから、愛理さんへの、電話・・・・・・)


"・・・・・・俺も早く謝んねーとな・・・・・・・・・・・・ "




八雲(・・・・・・あんなに)

八雲(あんなに、話したがってたのに・・・・・・・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・)


八雲「・・・・・・」

八雲「・・・・・・私・・・・・・」

八雲「もっと早く・・・・・・・・・・・・」

八雲「もっと早く、勇気を出せばよかった・・・・・・」

八雲「勇気を出して、もう一度・・・・・・・・・・・・」

八雲「好きだ、って・・・・・・」

八雲「言えばよかった・・・・・・・・・・・・」


沢近「・・・・・・・・・・・・?」


八雲「拳児さんからかかってくる電話を夢にえがいたり・・・・・・」

八雲「でも、そんなこと・・・・・・・・・・・・」


八雲「あの人からの電話なんて・・・・・・・・・・・・」

八雲「かかってくるわけが、ないのに・・・・・・・・・・・・」




ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン


沢近「あ、あなた・・・・・・泣いて・・・・・・」



ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン


沢近「・・・・・・」


ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン

ジリリリリーーーン








ガチャッ


沢近「もしもし」


沢近「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・うん・・・・・・アタシ・・・・・・」

沢近「うん・・・忙しくて・・・バイト始めたから・・・」

沢近「おなか?」

沢近「う、うん・・・・・・・・・・・・大丈夫・・・・・・平気よ」

沢近「・・・・・・・・・・・・え?」

沢近「だって・・・・・・」

沢近「アンタだって、アタシに会いたくなかったでしょう?」

沢近「・・・・・・もう嫌になったんでしょう、こんな生活も・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・アタシのことも・・・・・・」

沢近「・・・・・・」

沢近「嘘よ・・・・・・」

沢近「本当のこと、言ってもいいのよ」

沢近「・・・・・・・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・・・・・・・子ども・・・・・・」

沢近「子ども・・・・・・産んでもいいの・・・・・・・・・・・・?」

沢近「・・・・・・・・・・・・バカ・・・・・・」

沢近「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴメンね・・・・・・・・・・・・」



八雲「・・・・・・・・・・・・」




キィッ パタン


沢近「あ、ちょ、ちょっとあなた・・・・・・」

沢近「あ、ううんなんでもない、こっちの話・・・・・・」

沢近「女の子が来てたんだけどね、黒髪でツリ目の可愛い子」

沢近「うん・・・・・・何も言わずに帰っちゃって・・・・・・」

沢近「え?花?」

沢近「花って何の事?」



・・・・・・・・・・・・






ガチャン


播磨(・・・・・・)

播磨(あの花束は愛理じゃねえ・・・・・・・・・・・・)

播磨(っつーことは誰が・・・・・・・・・・・・)

播磨(・・・・・・)




"け、拳児さん!!"



播磨(!!)


播磨(・・・・・・)






ザア・・・ザア・・・・

ザアアァ・・・・ザザ・・・・・・



八雲(・・・・・・)

八雲(・・・・・・・・・・・・波の音・・・・・・・・・・・・?)






あの夢



"妹さん!!"



あの想い



"播磨さん・・・"



あの想い



"俺は妹さんと過ごす時間なら、状況であっても、とても大切な時間だからな!!"



あの夢



"妹さん!!世界一カワイイぜ!!"



あの想い



"も、もっとその絆を強くする方法、知ってっか?"



あの想い・・・・・・






八雲・・・

拳児さん・・・





きっとあの幸せな夢の中で
私の体はあのまま溶けて白い泡になって

海とひとつになってしまったのね・・・・・・












・・・・・・




・・・・・・も、やくも・・・・・・


・・・・・・あれ・・・・・・?


・・・・・・おい八雲、大丈夫か?・・・・・・


・・・・・・拳児さん・・・・・・・・・・・・?

・・・・・・拳児さんなの・・・・・・・・・・・・?




播磨「オイ八雲!大丈夫か!?」

八雲「・・・・・・・・・・・・けんじ、さん・・・・・・・・・・・・」

播磨「スゲーうなされてたからよ、心配になって・・・・・・ってオイ!?」

播磨「ど、どうしたんだよいきなり抱き付いて!?」

八雲「私・・・・・・すごく、凄く悲しい夢を見ました・・・・・・」

八雲「拳児さん・・・・・・・・・・・・私、私・・・・・・・・・・・・」

播磨「・・・・・・・・・・・・」


ギュッ!!


八雲「!!」

播磨「どんな夢を見たかしらねーが、夢にビビる必要なんざねぇ・・・・・・」

播磨「俺が絶対守ってやっからよ!八雲」

八雲「・・・・・・・・・・・・!!」

八雲「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・!!」













YUME OCHI END


本当はエイプリルフールの明日書くつもりだったがこらえ切れなかった
こんなに長くおにぎりSSを書くつもりはなかった

ストーリーの元になった『わたしが人魚になった日』は、
とてもいい作品なので、機会があったら読んでみて下さい

読んでいただいた皆様 ありがとうございました。

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