あずさ「哀愁交差点」 (51)

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【事務所】

小鳥「…………」カタカタ

小鳥「…………ふぅ」


春香「ほら雪歩! 今だよ、今!」

雪歩「で、でも……音無さん忙しそう……」

真「大丈夫、ぜったい喜んでくれるって!」

雪歩「お仕事の邪魔に……」

真美「いやいや、どうせまたソリティアしてるよ」

伊織「この前律子に見つかって叱られてたから、流石にそれはないと思うわよ」


春香「じゃあ雪歩、後ろからソーっと近づいて様子を見たらいいんじゃない?」

雪歩「えっ」

春香「それで大丈夫そうだったら、渡してみたら?」

伊織「まぁ忙しいって言っても、ちょっとぐらいなら平気だと思うけど」

雪歩「そっか……」

雪歩「…………よ、よし」

雪歩(春香ちゃんに言われたとおり……後ろからソーっと……)

雪歩「こ、小鳥さん!」

小鳥「わっ! びっくりしたぁ……えと、どうしたの?」

雪歩「ど、どど、ど、どうぞ! 疲れたときには甘いもの、ですぅ!」

小鳥「クッキー? あ、これって……」

春香「はい! 昨日みんなで作ったんです」

伊織「って言っても、私達はちょっと手伝っただけで……」

真「雪歩がほとんど一人で作ったんですよ! ねー雪歩!」

雪歩「ねー」

伊織「真美はもっぱら試食してたみたいだけど?」

真美「いやぁ、大地の味がしたときは、真美の舌がオカシクなったのかと思ったよー」

春香「七味を入れようとしたときは、舌じゃなくて頭がオカシクなったのかと……」

真美「はるるん、あれはジョークですぜ」

真「ジョークじゃなかったら恐怖だよ」

小鳥「ありがとう、雪歩ちゃん」

雪歩「は、はい! えへへ」

小鳥「えっと……もう少ししてから頂いてもいいかしら?」

雪歩「はい」

真美「ぴよちゃんってば、またソリティアで忙しいの?」

小鳥「ち、違いますぅ」

伊織「じゃあ今画面に映ってるコレはなによ?」

小鳥「あコレ? これは……アレよ、フリーセル」

伊織「……律子にいいつけてやろうかしら」

小鳥「後生ですからぁ!」

伊織「にひひっ、冗談よ」

真美「息抜きはほどほどにねー」

春香「ゲームは一日一時間ですよ」

小鳥「……はい」

春香「小鳥さん、今日はもう誰も来ないんですか?」

小鳥「えっどうして?」

雪歩「あ、あの……みんなの分もクッキー作ってきたので……」

小鳥「あそっか」


小鳥「えーっと、プロデューサーさんはまだみたい」

春香「そうですか……」

小鳥「あら? 残念そうねぇ」ニヤニヤ

春香「そ、それは小鳥さんだって同じじゃないですかぁ」

小鳥「えぇ、プロデューサーさんが居なくて残念だわー」

春香「あーなんかズルイ!」

小鳥「ふふっ」

春香「っていうか私のことはどうでもよくて! 大事なのはクッキーですからっ」

真「そういうことにしとこうかな」

伊織「そうね」

春香「ちょっとぉー!」

伊織「プロデューサーって今日律子と一緒なんですって?」

小鳥「そうよ」

春香「二人で行動って、珍しいですね」

小鳥「うん、竜宮と春香ちゃん達とで何か企画をやりたいらしくって……」

小鳥「いくつか案を考えたから、それを売り込みに行ったみたい」

真「事務所内コラボって感じですか?」

小鳥「そうね」

真美「ムッチャ楽しそう! ねぇねぇ何やるの?」

小鳥「さぁ……私も知らないの」

伊織「まぁでも、その案が通るかどうか分かんないでしょ」

春香「うーん……律子さんも一緒なら大丈夫じゃないかな?」

真「ふふっ、それってプロデューサーだけじゃ頼りないってこと?」

春香「いや別にそーいう意味じゃなくてっ!」

真美「おやおや、随分と慌ててますなぁ~はるるん」

春香「……ウルサイ」

小鳥「あっ、そうそう! もうすぐしたら響ちゃんが帰ってくると思うわ」

真美「ひびきんは今日なにしてんの?」

小鳥「今日はご当地キャラを集めたイベントがあって、その沖縄ブースに呼ばれたの」

真美「おーすんごいジャン!」

小鳥「え、えぇ……」

真美「あれ?」

伊織「小鳥、何よその反応」

小鳥「うん……実は病欠で来れなくなった、中の人の代役なの」

春香「中の人?」

真「ってことは、ぬーぬ…………着ぐるみ?」

小鳥「スーツアクターって言えばいいのかしら?」

伊織「……それで、響はなんて?」

小鳥「『自分、体力には自信あるんだー!』って、喜び勇んで出かけていったわ」

春香「あはは、響ちゃんらしいですね」

小鳥「それから……あら?」

伊織「どうしたの?」

小鳥「あずささんがもう帰ってないとオカシイのに……まだね」

真「まさか……また迷子になっちゃったのかな」

雪歩「ま、迷子!?」

小鳥「一応簡単ではあるけど、手描きの地図を持たせてあるから……」

真美「ぴよちゃ~ん、あずさお姉ちゃんのJPYを侮っちゃいけないよ~」

小鳥「JPY?」

真美「あれ……違ったっけ? あの宇宙から誰かが見てるやつ!」

伊織「その説明は意味わかんないけど、GPSのこと?」

真美「そうそれそれ!」

雪歩「だ、大丈夫かな……」

真「心配だね」

春香「小鳥さん、電話してみたらどうですか?」

小鳥「そ、そうね……やってみる」

――

小鳥「……ダメ、繋がんないわ」

春香「探してきましょうか?」

真「ボクも!」

小鳥「うーん……もう少しだけ待ってみましょう」

小鳥「それでも帰って来ないようなら、お願いしてもいいかしら?」

伊織「そうね……下手に動くと、ミイラ取りがミイラになっちゃうわ」

真美「なにそれ?」

春香「二の舞ってこと」

真美「……ナニソレ?」

真「あずささんを迎えに行ったボクたちまで、連絡がつかなくなるってことだよ」

真美「つまり、ミイラ取りが二の舞を演じるってことだね!」

伊織「……アンタ絶対意味わかってるでしょ」

真美「うぅん、テキトーに言ってみただけ」

【某イベント会場】

響「おつかれさまでしたー!」

響「……よし! プロデューサーに電話だっ!」


prrrrr  prrrrr  prrr――


P『もしm――』

響「ハニー!? 電話出るのが遅いって思うぞ」

P『あぁ響、終わったか?』

響「うがぁー! どーして自分だって分かったんだー!?」

P『知ってるか? 携帯の画面には相手の名前が出るんだよ』

響「……ぁ」

P『それに、声はそこそこ似てたけど……美希は「思うぞ」なんて言わないと、思うぞ』

響「そっか」

P『そんなことより、イベント参加おつかれさん』

響「うん!」

P『一人で移動させてゴメンな』

響「気にしなくていいぞっ! プロデューサーは忙しいし」

響「それに、一人で移動してるのは自分だけじゃないぞ」

P『そうだな』

響「まぁ自分完璧だしぃ」

P『助かるよ、ありがとう響』

響「なっ……ちょ……」

P『……どうした?』

響「急にお礼なんて言われたら……て、照れるじゃないか」

P『顔がニヤけてるぞ』

響「でっへへへぇ~」

P『電話だから見えないだろってツッコミが欲しかったんだけどな……』

響「えっなに?」

P『なんでもない』

響「そか……それじゃプロデューサー! 自分、すぐに帰るねっ!」

P『そうそう、今律子と一緒で事務所に居ないからさ、適当に時間潰したら家に帰っていいよ』

響「えっ!? プロデューサー居ないの?」

P『あぁ、多分響の方が早いと思う』

響「なぁんだ……それならゆっくり帰ろっ」

P『何故そうなる?』

響「別にぃ~」

P『ゆっくりだろうとすぐだろうと、気をつけて帰るんだぞ』

響「うん!」

P『もし何かあったら、俺でも小鳥さんでもいいから電話してくれ』

響「はーい」

P『それじゃーな』

響「またやーたい」


響「…………」

響「『ありがとう響』だって」

響「へへっ……帰ろ」

響「ふんふ~ん♪」

響「海やからぁ~ ドンド~ン スゥリィ~~スゥ~リィ~~♪」

響「イーヤサッサ…………ってアレ?」

響(あの交差点で信号待ってるの……あずささん?)

あずさ「…………」

響「やっぱりあずささんだっ!」


あずさ「はぁぁ」

響「う~ん?」

響(信号待ちしてるって感じじゃないぞ……なんだろ?)

響(もしかして……迷子?)

あずさ「…………」キョロキョロ

響(アッチコッチ見てる……多分道に迷ったんだ!)

響「……よしっ!」

あずさ「…………はぁ」


あずさ(どうしてなのかしら?)

あずさ(いつもいつも、道に迷って)

あずさ「…………」キョロキョロ

あずさ「……」キョロ

あずさ(いくら周りを見渡したって、どうにもならないわね)

あずさ(右も左も、前も後ろも……分からないもの)

あずさ(この地図だって、自分がどこに居るか分からないのなら意味が無いわ)

あずさ(せっかく音無さんが描いてくださったのに、そのご好意まで無駄に……)


あずさ「…………」

あずさ(……ここは、どこなの?)

あずさ(私はどうやってここまで来たの? どうやって事務所に戻ればいいの?)


あずさ「はぁぁ」

響「あずささーん!」

あずさ「あ、響ちゃん…………よかったぁ」

響「何がよかったの?」

あずさ「う、うぅん」


あずさ「響ちゃん、今日お仕事は?」

響「もう終わったぞ! 今事務所に戻ってる途中!」

あずさ「そう……」

響「あずささんは?」

あずさ「私も事務所に……戻ろうとして…………それで……」

響「道に迷ったの?」

あずさ「……えぇ」

響「それなら会えてよかったね!」

あずさ「そ、そうね」

響「えへへ」

あずさ「…………」

あずさ「ここは『スクランブル交差点』って場所らしいんだけど……響ちゃんわかる?」

響「う、うん……事務所までは帰れるから安心して」

あずさ「そう……響ちゃんすごいわね」

響「そ、そうかな?」

あずさ「えぇ、とっても」

あずさ(それに比べて私なんて……)

響「…………」


響(あずささん、なんだか元気が無い)

響(もしかして……迷子になったから?)

響(でもあずささんって、いつもそんなこと気にしないし……)


響「う~ん……」

あずさ「響ちゃん?」

響「へ? あ、うん……帰ろっ」

響「……っとその前に、ぴよこに電話するね!」

prrrrr  prrrrr  prrr――


小鳥『もしm――』

響「小鳥嬢……できれば早急に電話をお取り願いたいのですが……」

小鳥『響ちゃん、もう終わったの?』

響「うがぁー! どーして自分だって分かったんだー!?」

小鳥『だって声が響ちゃんそのままなんですもの』

響「そ、そか……」


小鳥『もうこっちに帰ってるのかしら?』

響「うん! あずささんも一緒だぞ!」

小鳥『えっホント!?』

響「ホントだぞっ! さっきたまたま会ったから」

小鳥『は~よかったぁ』

響「えっ?」

小鳥『いや、うん……なんでも』

小鳥『それじゃ、気をつけて帰ってきてね』

響「うん!」

小鳥『もし何かあったら、私でもプロデューサーさんでもいいから電話してください』

響「ふふっ、それプロデューサーも言ってた」

小鳥『あらそう? ってことは……何かあったの!?』

響「うぅん、一応電話しただけ」

小鳥『そっか』

響「じゃ、またあとでねっ!」

小鳥「はーい」


響「……よし、と」

あずさ「……私も電話すれば良かったのね」

響「え?」

あずさ「うぅん」

響「???」

――

響「でね、ドンドンっていうのはロンドンが訛った言葉で……」

あずさ「…………そう」

響「海やからっていうのが……」

あずさ「…………」

響「…………あずささん?」

あずさ「そうだったの」

響「まだ何も言ってないぞ」

あずさ「ぁ……ゴメンナサイね」


響「あずささん、さっきからずっと変な感じ」

響「もう二回も赤信号に気付かないで歩いていこうとしたし」

あずさ「響ちゃんが引き止めてくれて、助かったわ」

響「そうだけど……あずささんだって気をつけて……」

あずさ「……はぁ」

響「ぁぅ……」

響「…………」

響(あずささん、やっぱりいつもと違う………どうしたんだろ?)

響(ひょっとして……)

響「ねぇ……あずささん」

あずさ「なにかしら?」

響「自分と一緒じゃ……楽しく…ない?」

あずさ「えっ?」

響「だから……その…………早く帰りたいのかなぁって」

あずさ「あっ……ち、違うのよ響ちゃん!」

あずさ「私そんなつもりじゃなくて……」

響「でも……」

あずさ「響ちゃん、顔を上げて?」

響「……うん」

あずさ「本当にごめんなさい」

響「自分も……ごめんなさい」

響「それじゃ、どうして元気がないの?」

あずさ「うん……私、なんだか自分が情けないなぁって思っちゃったの」

響「情けない?」

あずさ「えぇ」

響「どうして?」

あずさ「すぐにこうやって道に迷っちゃって、一人じゃ事務所にも帰れないでしょう?」

あずさ「いつもみんなに迷惑をかけてしまう」

響「そんな……」

あずさ「今日だって、響ちゃんに会えなかったらどうなってたか……」

響「う、うん」

あずさ「迷わないようにって、気を付けてるつもりなのに……どうしてかしらね」

響「…………」

あずさ「これじゃいつまで経っても、周りに迷惑を……」

あずさ「こんな年にもなって、情けないわ」

響「そ、そんなこと……ないぞ」

響「自分は……人に迷惑をかけるのは、悪いことじゃないと思う」

あずさ「えっ」

響「だって、自分は今日あずささんに迷惑かけてもらって……嬉しかったもん」

あずさ「そんなのオカシイわ…迷惑をかけたのに、それが嬉しいだなんて……」

響「いや、そもそも迷惑だなんて思ってないぞ」

あずさ「でも……」

響「あずささんはそうやって『迷惑をかけて』って落ち込んでるけど」

響「その分自分達だってあずささんに迷惑かけてるし、助けてもらってる」

あずさ「そ、そんな……」

響「いつもやさしくしてくれるし、ときどきハム蔵にも食べ物をくれるでしょ?」

あずさ「…………」

響「だけど助けられてばかりで、なかなかお返しが出来ないから……」

響「だから、今日それが出来たことが嬉しいんだー」

あずさ「響ちゃん……」

響「……まだこのくらいじゃ全然返せてないけど」

響「おばぁがよく言ってた」

響「人は誰かを助けてるし、誰かに助けられてる」

あずさ「…………」

響「だから自分が助けてもらったとき、素直に感謝できるように……」

響「困ってる人が居たら助けてあげなさいって」

あずさ「……そう」

響「あずささんは、おばぁが言ってたことがちゃんと出来てるぞっ」

響「だから……だからそんなに落ち込まないで………」

あずさ「でも、やっぱり私は迷惑ばかりかけてるわ」

響「それは自分だって、他のみんなだって同じ!」

あずさ「う~ん……」

響「誰かに助けてもらったとか、迷惑をかけたって思うから落ち込んじゃうんだぞ」

響「だからそうじゃなくて、うんと……えと…………アレ」

あずさ「???」

響「ほらあの……アレだぞ! かけっこの時に使う棒………だぞ」

あずさ「……バトン、かしら?」

響「そうバトン! バトンを貰ったと思えばいいんだ!」

あずさ「…………」

響「誰かに助けてもらったときは、その人にバトンを貰ったってことさー」

あずさ「えっと……」

響「例えば……春香!」

あずさ「春香ちゃん?」

響「あずささんが、春香に助けてもらったとするでしょ?」

あずさ「えぇ」

響「それは春香に、優しさのバトンを貰ったってこと」

あずさ「優しさの……バトン?」

響「本当はその場合は、春香にお返ししないといけないんだけど……」

響「そんなすぐには出来ないでしょ?」

あずさ「……えぇ」

響「だからあずささんは、その分誰か別の人を助ければいい」

響「それはその人にバトンを渡したってこと!」

あずさ「うん」

響「でまた、その人が次の人にバトンを渡して……」

あずさ「…………」

響「そうやって765プロのみーんなで、リレーすれば良いんだぞ!」

あずさ「……そうね」

響「そうすれば、助けられたほうは『悪いなぁ』って思わなくていいし」

あずさ「助けたほうも、恩返しが出来て嬉しくなれるのね」

響「うん!」


響「みんながみんなを助けてるし、みんながみんなに助けられてる」

響「だから全然、気にしなくていいぞっ」

あずさ「…………」

響「じ、自分頭悪いから上手く説明できないけど……とにかく自分はそう思うぞ!」

あずさ「うん、ありがとう響ちゃん」

あずさ「響ちゃん」

響「なーに?」

あずさ「響ちゃんのお陰で私、元気になれたわ」

響「そ、そっか……良かった」

あずさ「響ちゃんに貰ったバトン、どうしようかしらね」

響「自分は今元気モリモリだぞっ! だから別の人に優しくしてあげて」

あずさ「……うん、わかったわ」

響「それじゃ、そろそろ帰……」

響「」


あずさ「響ちゃん? どうしたの?」

響「…………どうしよ」

あずさ「えっ?」

響「話に夢中になりすぎて、どこだかわかんなくなった」

あずさ「…………ぇ」

――――
――

P「ふぅ」

律子「手応えは……まぁまぁってとこね」

P「うん、悪くはなかったんじゃないかな」

律子「事務所に戻ったら案を練り直しましょう」

P「そうしましょう」


ガチャ


律子「ただいまー」

P「同じくー」

小鳥「お二人とも、おかえりなさい」

P「お疲れ様です、小鳥さん」

春香「おっかえりなさーい!」

P「おう春香、たっだいまー!」

真「プロデューサーさん、律子、おかえりなさい」

真美「兄ちゃん&りっちゃん、おかえりんぐー」

伊織「早かったじゃない」

律子「まぁね」

P「いやぁ今日も熱烈な歓迎をありがとう」

雪歩「あ、あのぅ……」

真美「ねぇねぇ、今日は何して遊んでたの? ゲーセン?」

真「真美、流石にゲーセンは無いんじゃない?」

P「そ、そうだよ……コインゲームとかしてないし……」

律子「プ、プリクラなんか……撮ってないわよ」

真美「ぇ……ホントに行ったの?」

P・律子「冗談」

春香「ゲームは一日一時間ですよ」

伊織「……春香、それ好きね」

春香「ふふっ」

雪歩「ぷ、ぷろ……くっき……」

P「あれ? そういえば響はもう帰りました?」

小鳥「あっ、響ちゃんはあずささんと一緒に帰ってきますよ」

P「へ?」

小鳥「あずささんと連絡が取れなくて心配してたんですけど」

小鳥「たまたま響ちゃんが見つけてくれたみたいで……」

P「あぁ……あずささん、迷子になっちゃったか」

小鳥「やっぱり誰かが付いてあげるべきでしたね」

律子「……私の責任です」

P「いや、律子だけじゃないさ」

伊織「いいじゃない、もう帰ってきてるんだし」

律子「うぅん、何か起こってからでは遅いわ」

春香「今回は大丈夫だったってことで、次から気を付けましょう!」

真「そうそう! ボクたちだって予定が無いときとか、代わりに付いてあげることもできますし」

真美「そーだよそーだよ!」

雪歩「ぷ、ぷ、ぷろ……あの……」

P「みんなありがとな」

伊織「大げさね」

雪歩「ぷ……ぷ………」

雪歩「…………ぅぅ」

真美「…………」


真美「ゆきぴょんゆきぴょん」ボソボソ

雪歩「えっ……な、なーに?」ボソボソ

真美「クッキーでしょ?」ボソボソ

雪歩「…………」

真美「ダイジョーブ、真美に任せて」ボソボソ

雪歩「ぁ……うん」

真美「真美が話を振るから、その後だよっ」ボソボソ

雪歩「うん……ありがとう」ボソボソ

真美「ソ、ソーダ!」

小鳥「ソーダ? 真美ちゃん、ジュースが飲みたいの?」

真美「いやいやいやいや」

小鳥「あらそう」

真美「そんなことより……兄ちゃん達さ、お腹空いてない?」

P「う~んまぁ、空いてるっちゃ空いてるけど?」

律子「どうして?」

真美「うん、ちょっと……ねーゆきぴょん?」

雪歩「は、はい! えと、クッキーを……」

律子「クッキー? あっ、昨日作ったのね」

雪歩「はい!」

P「俺達の分も作ってくれたのか?」

雪歩「はい!」

真美「ジョーズに焼けたんだよねー」

雪歩「はい! あっちが……うん!」

真美「多分二人ともビックリドッキリするよっ!」

春香「雪歩が一人で作ったんですから」

P「そうか、それは楽しみだ」

雪歩「えへへ」

春香「私コーヒー入れてきますねー」

小鳥「あっ! 春香ちゃん、私が行くわ」

伊織「アンタはいいから、パソコンの画面をどうにかしなさい」ボソボソ

小鳥「はぇ?」

伊織「フリーセルだっけ? 律子にバレるわよ」ボソボソ

小鳥「おっと!」カチッ

律子「小鳥さん、どうしたんですか?」

小鳥「いーえいーえ!」

律子「そうですか」

小鳥「ふぅ~」

律子(……気付いてたけどね)

雪歩「あの……ちょっと待ってくださいね」

雪歩「鞄の中に……」ガサゴソ

雪歩「………………ぁ」


春香「はーい、インスタントなコーヒーお待た……せ?」

雪歩「ぁ……ぅ…………ぅぅ」

春香「ゆ、雪歩? どうしたの?」

雪歩「……割れてる」

真美「えっ」

雪歩「クッキーが……割れてる」

真「ぜ、全部?」

雪歩「…………」コクッ

伊織「ちょっと見せ……ぁぁ」

伊織「…………粉々ね」

雪歩「う、うぅ…………ふえぇぇぇぇん」

春香「あぁ雪歩……泣かないで」

真「ど、どうしよう……」

春香「そうだ! 小鳥さん、さっきのクッキーまだ…………」

小鳥「たべちゃった」

春香「そうですか……」

小鳥「ゴメンナサイ」

伊織「いや、小鳥は悪くないわよ」


雪歩「ひっく…………ぐすっ」

P「ゆ、雪歩! クッキーぐらい、気にしなくて……ぁ」

P「いやあのっ……“ぐらい”って別に変な意味じゃなくてっ」

春香「プロデューサーさん……」

P「くそぅ……俺のバカ」

律子「雪歩、その……気持ちだけでも十分頂いたから、クッキーなんて……ぁ」

律子「いやちがっ……“なんて”って別に変な意味じゃなくてっ」

伊織「律子……」

律子「あぁ……私のアホ」

伊織「えっと……二人とも、もう仕事に戻っていいわよ」

律子「そ、そうよね……」

P「俺達余計なことばかり……」

伊織「いやいや、これも変な意味じゃないのよ!」

律子「でも……」

伊織「律子いつも言ってるじゃない」

伊織「プロデューサーは二人しか居ないんだから、誰かに付きっきりってわけにはいかない」

伊織「だから、自分達で出来ることは自分達でやれるようにって」

律子「確かにそんなこと言ったわね」

伊織「今日だって二人が居ないから、響もあずさも一人で行動したわ」

伊織「あずさが迷子になっちゃったけど、それでもなんとかなってる」

伊織「だから私達に任せて頂戴」

P「…………」

伊織「このくらい……っていうと雪歩に失礼だけど」

伊織「落ち込んだ仲間を励ますぐらい、私達にも出来るわ」

律子「そっか………分かったわ」

伊織「ありがと」

P「礼を言わないといけないのは俺達の方だよ」

伊織「よし、そうと決まれば……私も雪歩を励ましてくるわ」

律子「頼んだわよ」

伊織「任せて」


律子「さて……プロデューサー、企画を練り直しましょう」

P「…………」

律子「プロデューサー?」

P「…………うん」

律子「……あの子達なら大丈夫ですよ」

P「いや、そうじゃなくて……伊織、頼もしいなぁと思ってさ」

律子「そうですね……でも、伊織だけじゃない」

P「うん、そうだな」

――――
――

響「ふぃぃ……やっと帰り着いたー」

あずさ「ありがとう響ちゃん」

響「礼なんて……自分、道分かるって言っておきながら全然だったし……」

あずさ「あら? その分響ちゃんとたくさんお話が出来て、嬉しかったわ!」

響「ホント?」

あずさ「えぇホントよ」

響「へへっ……自分も嬉しかったし、楽しかったぞっ!」

あずさ「事務所に着いちゃうのがちょっぴり残念ね」

響「でも……多分、みんな心配してる」

あずさ「そうね、入りましょうか」

響「うん!」


ガチャ

響「ハイサーイ!」

あずさ「ただいま戻りましたー」

雪歩「うぅ……ひっく…………ぐすっ」

響「」

あずさ「」


真「雪歩、もう泣かなくていいから……ね?」

雪歩「だって…………だって…………」

あずさ「あらあら」

響「ゆ、雪歩! どうしたんだ!?」

雪歩「…………すんっ」

響「おなか? おなかがゴロゴロするのか!?」

雪歩「クッキーが……みんなのクッキーが……」

あずさ「クッキー?」

春香「はい、実は……」

――

あずさ「そうだったの……」

春香「昨日みんなで……っていうか、雪歩がほとんど一人で作ったんです」

響「雪歩、すごいじゃないか!」

雪歩「でも、もう割れちゃった……」

響「あっいや……そのぅ…………だ、大丈夫だぞっ!」

響「自分、割れたクッキー大好き……だし」

雪歩「粉々だもん」

響「そ、そう! 粉々クッキーがいちばん大好……物………ぅぅ」

響「うわぁぁ~ん! ゆきほぉ元気出してくれぇ~~!!」

雪歩「……グスン」

響「あぅぅ……」

あずさ「響ちゃん、私に任せて」

響「あずささん……」

あずさ「雪歩ちゃん、いいかしら?」

雪歩「…………」コクッ

あずさ「雪歩ちゃんがクッキーを作ってくれたのは、みんなに食べて欲しかったからでしょう?」

雪歩「……は、はい」

あずさ「それを私達が貰って嬉しくなるのは、雪歩ちゃんのそういう気持ちとか……」

あずさ「作るときに雪歩ちゃんが感じた楽しさとか、出来たときの嬉しさが中に詰まってるからなの」

あずさ「確かにクッキーは割れちゃったけど、雪歩ちゃんの気持ちも一緒に割れちゃった?」

雪歩「…………」フルフル

あずさ「そうでしょう? だから私達はその心を貰って、とっても嬉しいわ」

響「そ、そうだぞ雪歩! 自分だって嬉しいぞっ!」

響「それに……ほら! まだ大きな欠片がある!」

響「モグモグ……お、美味シーサー! なんちゃってなんちゃってぇ!」

あずさ「…………」

雪歩「…………」

響「じ、自分……黙ってる」

あずさ「元気出た?」

雪歩「はい……えと……ありがとうございました」

あずさ「うぅん、いいのよ」

雪歩「響ちゃんも、ありがとう」

響「そんな……自分何にも役に立ってないし…………」

雪歩「そんなことないよ」

響「でも、雪歩が泣き止んでくれてよかった」

雪歩「……うん」


雪歩「それから、みんな……ゴメンナサイ」

春香「どうして謝るの?」

真「そうだよ、別に謝られるようなこと……」

雪歩「せっかくみんなで作ったクッキー、私の所為で……」

真美「あーダメダメ! またそうやって暗黒面に堕ちちゃダメだよ~」

雪歩「みんなに食べて欲しかったのに……」

伊織「はいそこで伊織ちゃんの登場よ」

真美「デコだけに凸然だね」

伊織「なぁんですってぇ!?」

真美「ほらほら、ゆきぴょんが怖がってるよー」

伊織「おっと…………コホン」

伊織「クッキーでもそれ以外でもいいから、ウチでまた作れば良いじゃない」

雪歩「えっ」

伊織「今度はあずさと響も一緒に」

響「えっ? 自分達もいいの?」

伊織「もちろん」

雪歩「で、でも……」

伊織「律子? プロデューサー? 良いわよね?」

P「あぁ、楽しんでおいで」

律子「怪我だけはしないように気を付けるのよ」

小鳥「…………」

春香「でも二日連続だし、お家の人に迷惑だったり……」

伊織「みんなが嫌なら……べ、別に来なくてもいいけど?」

真「そんなことないよ」

真美「いーじゃんいーじゃん! せっかくいおりんが良いって言ってるんだし」

雪歩「そうだね……伊織ちゃん、ありがとう」

伊織「えっあっ……ど、どういたしまして」

伊織(面と向かって言われると……照れるわね)


春香「それじゃ、また材料揃えないといけないね」

真美「先生ー! バナナは材料に入りますかー?」

伊織「材料ってアンタ……昨日バナナ普通に食べてたじゃないの」

真美「いやぁちょっとお腹空いちゃって……」

真「失敗したとき用って言ってた市販クッキーも食べてたよね」

真美「あれは味の研究ダヨ~」

小鳥「…………」

小鳥「わ、私も……」ボソッ

P「……行きたいですか?」

小鳥「へ?」

P「いいですよ、行ってきて」

小鳥「い、いや……私が若いみんなに混じるのもなんか変ですよねぇ~」

伊織「うぅん、実は今日両親が居ないから、小鳥が居てくれたら助かるわ」

小鳥「で、でもやっぱり……」

P「行きたいんじゃないんですか?」

小鳥「そりゃー行きたいですけどぉ……仕事もまだまだ残ってるしぃ~」

P「残りは俺がやっときますから」

小鳥「……ホント?」

P「えぇ」

小鳥「ホントにホント?」

P「しつこいですよ」

小鳥「……ぃやったぁ~!」

P「まぁアレですよ、そのかわりと言っちゃーなんですけどもね」

P「今度二人で食事でも……」

律子「もう誰も居ませんよ」

P「えぇっ!? はっや!!」


律子「…………」

P「…………」

P「なんかシーンとしちゃったな」

律子「そうですね」

P「…………」

律子「…………」

P「……飯でも行く?」

律子「小鳥さんがダメだからしょーがなくって感じが引っ掛かりますね」

P「いや、何もそういうわけじゃないぞ! もちろん俺が奢るし」

律子「う~ん」

律子「いいですよ、仕事が終わったら行きましょう」

P「そうこなくっちゃ」

律子「ついでに企画をまとめましょ!」

P「おっけー」


P「ってことで、小鳥さんの仕事手伝ってくれ」

律子「……初めからそれが目的ね?」

P「認めよう」

律子「ふふっ、正直でよろしい」

P「やーりぃ」

律子「その代り、何か高いもの食べさせてくださいね」

P「げぇ」

律子「お寿司か、お肉か、おフランスか……」

P「……お財布と相談させてくれ」

END

お粗末さまでした

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