中川「ちょっと　先輩！

　　　起きてくださいよ　先輩ったら！」

両津「ぐごーぐごー……」

中川「困ったなあ……洋子ちゃんが待ってるのに！」

犬　「ワン！」

中川「え？　鍋に熱湯を沸かしてきたから

　　　これを頭からぶっかけて起こせって？」

　　　そりゃ名案だ！　じゃさっそく」

ﾊﾞｼｬ!

両津「う　ぎ　ゃ　あーーっ★」

両津「な　何のつもりだ　てめえらっ！

　　　ぶち殺してやるっ！」ｽﾁｬｯ!

ｽﾞｷﾞｭｰﾝ!

中川「うわあ～っ！

　　　待ってくださいよ先輩！

　　　僕らはただ純粋に先輩を起こそうと……！」

両津「うるせえっ！　問答無用！」

犬　「ワン！」

両津「なに？　洋子ちゃんが学校帰りに

　　　わしに会いに来ただと？

　　　バカ野郎！　それを早く言え！」

　
中川「起こしてきたよ……いたたた」

両津「いや～お待たせ洋子ちゃん！」

洋子「なんだか　ずいぶんと騒がしかったけど……

　　　いったい　なにやってたの？」

両津「なあに！目覚めの運動を　かる～くね！」

洋子「ふ～ん……」

両津「で　わしに用件って？」
　

　
洋子「はい！　これあげるっ！」

両津「ほう……なになに……？」

中川「何だいその紙束は？」

洋子「銭湯の半額券よ！

　　　うちの近所に銭湯があるんだけど……知ってる？」

両津「銭湯ねぇ……そんなのあったか？」

洋子「うん。　けっこう古い銭湯だけどね！

　　　おばあちゃんが　そこの券をいっぱい貰って……」

両津「ほう」
　

　
両津「で、それをわしに？」

洋子「そうよ！　おばあちゃんがね

　　　いつも　色々とお世話になってるから

　　　派出所の人たちにあげたらどうかって！」

両津「それなら別にわしを呼ばんでも

　　　中川に渡せばよかったんじゃあ……」

洋子「だって中川さんは

　　　銭湯って感じじゃないもの」

両津「そ　それでわしに……」

中川「ププッ……」
　

　
洋子「さて！　おばあちゃんが待ってるから

　　　もう私　帰らないと！」

両津「そうか！　また気軽に寄っていけよ！」

洋子「うん！　それじゃあね両さん！」

ﾋﾟｼｬｯ!

両津「……この野郎！　さっきわしを笑いやがったな！」

中川「ひぎゃっ！　すいません先輩……いたいいたい！」

両津「う～む……しかし参ったな！

　　　一人でこんな枚数とても使い切れんぞ！」
　

　
中川「それなら　誰かに配るとか……

　　　あっ！　フータローにあげたらどうです？

　　　きっと大喜びすると思いますよ！」

両津「無料券じゃなくて半額券だからな！

　　　あいつに渡したって　意味ないだろ」

中川「あっ　そうですね……」

両津「う～む……よし！」

中川「？」
　

　
両津「とりあえずおまえに　半分やるよ！」

中川「ええっ！？　いりませんよ　僕は！」

両津「そんなこと言わずに　なっ？」

中川「結構ですったら！」

両津「ちぇっ！　やっぱ駄目か」

中川「とにかく……一度行ってみたらどうです？」

両津「うむ……それもそうだな

　　　面倒だが　行ってみるかな！」
　

～～勤務後～～

両津「ええと　この銭湯か！

　　　洋子ちゃんの言ってたのって！

　　　なるほど確かに古いな……」

番台「いらっしゃい」

両津「ああ　ちょいとオヤジ！

　　　この券って使えるよな？」

番台「はい！　どうぞ！

　　　男湯の出入り口はあちらです」

両津「そうか！　分かった！」

ｻﾞﾌﾞｰﾝ!

両津「あ～　じつにいい湯だ！」

ｶﾞﾗﾘ!

番台「湯加減はいかがですか？」

両津「とても良い！　しかし……

　　　客が全然いないんだな　この銭湯は！」

番台「そうなんですよ……

　　　何とか客を呼び込もうと　半額券を作って

　　　町内に配ってみたりしたんですがね……」

両津「それでもこれなのかよ！？」

番台「そうなんです……」

ｻﾞﾌﾞｰﾝ!

両津「あ～　じつにいい湯だ！」

ｶﾞﾗﾘ!

番台「湯加減はいかがですか？」

両津「とても良い！　しかし……

　　　客が全然いないんだな　この銭湯は！」

番台「そうなんですよ……

　　　何とか客を呼び込もうと　半額券を作って

　　　町内に配ってみたりしたんですがね……」

両津「それでもこれなのかよ！？」

番台「そうなんです……」

両津「今日は一体何人ぐらい来たんだ？」

番台「ええと　確か……

　　　お客さんを入れて　男女15人ですね」

両津「そんなんで　経営していけるのか！？」

番台「むろん大赤字ですよ……

　　　お湯代だけで　利益はすっ飛んで行っちまってね

　　　もう　廃業しようかと思っているんです」

両津「ふーん、大変なんだな……」

～～翌日～～

両津「という感じだった」

寺井「へえ！」

戸塚「自宅に風呂があるって家も　最近は多いしな！

　　　それも　時代の流れなのかもしれねえな」

両津「そう考えると淋しいもんだな」

ｶﾞﾗﾘ!

大原「おはよう……おや？

　　　みんな揃って何の話をしとるんだ？」

大原「ほう　なるほどな……

　　　そういえば　銭湯には

　　　わしもずいぶん　行ってないな」

戸塚「それじゃあ　たまにはどうです？

　　　仕事が終わったら　みんなで銭湯ってのは」

大原「うむ！　たまには裸の付き合いってのもいいかもな！

　　　なあ両津？」

両津「ええっ！？　そんな！？

　　　私は二日連続で行きたくありませんよ！」

大原「まあ　そう言うな両津！」