吹寄「上条当麻が見た世界」 (94)

なんとなく短編書きたくなった
ちょい鬱風に書く予定だから苦手な人は注意してくれ
カプ要素は無しです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395426807

私が在籍している学校は、学園都市にある学校の中でも中の下とされている。
これは、偏差値が低いというわけではない。学園都市では、入学できる学校は主に能力で決まる。
その為、中の下だとしても不良が多いなどといった類の問題は無く、むしろ私の学校は不良も登校拒否も少ない方である。
それは、上記の理由の他にも、教師の方々が皆素晴らしいから、などといったこともあるのかもしれない。

しかし、そんな中にも、当然碌でも無い奴らは居るものだ。
私のクラスに居る3人組――いわゆるデルタフォースと言われる奴らだ。
まずは青髪ピアス。その名の通り髪を青く染めて、耳にはピアスをつけている。おまけに事ある毎に女の子をナンパしているどうしようもない変態だ。
こんな奴がこのクラスの委員長をやっていて果たして大丈夫なのか。

何より、こいつがこんなだから私のあだ名がいいんちょになっているのが腹だたしい!

次に、土御門元春。こいつも髪を金髪に染めて、学校にサングラスをかけて来ている。
青髪と一緒に居るとはっきり言ってチンピラにしか見えない。
しかも相当のロリコンかつシスコンで、こいつの話は風紀を著しく乱す。そろそろ風紀委員に通報した方がいいのかもしれない。

最後に…上条当麻。
はっきり言って、この男が一番の問題児だ。
まず学校に全然来ない!
学生のくせに何をやっているんだろうか?まあ、いつも怪我をしている辺り、碌でもないことばかりしているのだろう。
そして、学校に来たら来たで女の子たちにちょっかいをかける!
胸を揉ませろと言われた時は本気で張り倒した。
何より、「不幸」という口癖が気に入らない。

悲劇のヒーローにでもなったつもりなんだろうか?世の中にはあの男よりも不幸な人なんて幾らでも居るというのに。

今日は珍しく、上条も学校に来ているようだ。

「やっぱり茶髪ロングのお姉さんが一番やで!」

「にゃー、わかってないぜよ。一番はやっぱり黒髪ショートの」

「どうせ義妹みたいな女の子ーとか言い出すんやろ?お前の魂胆は見え見えなんじゃボケ!」

「いやー、僻みってのは醜いもんだぜい。で、カミやんはいつもの年上の管理人さん、かにゃー?」

「……最近、金髪少女も悪くないかなーってな…」

「…カミやん……。」

「なんやカミやん、元気ないなー?もしかして、留年でも決まったんかいな?いやー、そらあんだけ休んだら留年にも…ゴフッ!?」

「ちょっと黙るぜよ」


…相変わらず、馬鹿な会話だ。
しかし、上条の様子がどこかおかしい。
一体、何があったのだろうか?
…まあ、上条のことだ、どうせ下らないことでまた不幸だと思っているのだろう。

「…上条くん。」

「…ああ、姫神か。どうした?」

彼女は姫神秋沙。ここに転入する以前から上条と知り合いだったそうだ。

「上条くん。なんか元気ないね」

「そうか?」

「うん。何かあったの?」

「いや…何でもないよ。休んでる間の分を埋める為の課題を遅くまでやってたからさちょっと疲れてるだけだ…まだ課題残ってるし」

ふーん、やっぱり自業自得だったわけね。

「そっか。…ねえ。上条くん」

「ん?」

「辛い時は。辛いってちゃんと言ってね。いつでも力になるから」

「はは…ありがとな。その時は頼りにさせてもらうよ」

彼女は、おそらく上条に好意を抱いているんだろう。
あいつのどこがいいのか私には全く理解できないが、とりあえず課題を手伝ってもらわなかった事に関しては褒めておこう。






授業中。


新学期が始まり、上条は前の方の席、私はその真後ろの席となっていた。
そのため、上条の動きは嫌でも目に入ってくる。

上条当麻は、せっかくの小萌先生の授業中にも関わらず、どこか上の空だった。
小萌先生もそれに気付き、上条に注意をするが、上条はそれに全く気付いていない。
だんだん小萌先生の目に涙が浮かんできた。

こいつときたら…!

そう思い注意をしようと上条の肩に手をかけようとした、その時

キィィィィィィーン……


耳元で甲高い音が鳴り響いた。

耳鳴り?にしてはおかしい。
どうやら周りの人にも聞こえているようだ。

ふと、私は上条と、その隣に座る土御門の方を見た。
何故かは分からないが、私はこの2人が何かを知っているような気がした。
大覇星祭の時、他の人とは違った動きをしていたこの2人なら。








すると突然、土御門は体中から血を流して倒れた。

「な―――」
突然倒れたクラスメートに驚き、悲鳴すら上げられなかった。

何が起きたのか、全く理解出来なかった。


「土御門!!」

「心、配ない、防御する為に、魔術を使っただけだ。
この術式、だけは、受けるわけにはいかない、からnゲホッ!ゲホッ!」

魔術?一体何の話をして…

「もういい喋るな!じっとしてろ!待ってろ、すぐ保健室に…!」

「そんな、ことよりカミやんは姫神秋沙を守ってやれ…!あいつには、自身を守る術がない。この術式の標的になったら…つぶれるぞ…」

「―っ!…わかった。」

それだけ言って、上条は姫神さんの方へ行き――

「上条くん。これ……」

「ああ。だから、じっとしててくれ」ポン

姫神さんの頭に右手を乗せた。

こんな時に何を…!
そう思った矢先、クラスのみんなから光のようなものが出てきて、黒板の所に集中していた。
慌てて見れば、どうやら自分や上条からも出ていたらしく、それらも例に洩れず黒板のもとへ集まっていく。





光が出ていなかったのは土御門と、上条の右手を頭に乗せている姫神さんだけだった。

どうやら、上条と土御門、それと姫神さんはこれが何かを知っているようだ。


集まった光が徐々に四角くなり、やがて黒板をつかったスクリーンのような形を取った。そして……






『はー疲れた。ん?なんやこの子?』


そのスクリーンに、カエルの着ぐるみを着て、小さな女の子に話しかけている青髪の姿が映し出された。

「……は?」

「ちょ、なんやコレ!?なんでボク映ってんの!?」

「…青髪ちゃん?本当に手を出したら犯罪なのですよー?」

「ああっ!そんな視線もいい…ってイヤイヤちゃいますって!これはたまたま…」


そうこうしていると、今度は別の映像が映し出される。

「おい、今度は○○の…」

「ゲッ、俺かよ…」

「あ、これ××ちゃんとプール行った時の…」

「…おい、△△?いつ彼女なんて出来たんだ?」

「い、いやあ…それは…」


ふん、何よ。


「何かと思えば、みんなの記憶を映し出してるだけじゃない」


そう思っていたら、ついに私の映像が映し出された。


どうせ大した内容じゃないでしょ?そう思って毅然としていたが、

そこには……


通販カタログと睨めっこをしている私が居た。

「えっ…ってちょっとおおお!?」


「うわ…委員長ああいうの好きなんだ…」

「ちょっと意外…」

「まさかあの胸の秘訣は通販…!?」

「せ、先生的には通販に手を出すのはまだ早すぎると思うんですよー…?」

なんでよりによってこの場面なのよ!というか…

「そこ!通販と胸は関係ない!!」

好き放題言ってくれるわねホント…!

というかなんで私だけこんな恥ずかしい思いしなきゃなんないの!?

あいつの真似みたいなのがシャクだけど、これ絶対不幸って言っていいと思うわ!

見れば、小萌先生も無難に終わり、映ってないのはただ一人…上条当麻だけになっていた。

「上条くん…!私は大丈夫だから。自分の方を…!」

「ダメだ!姫神にまた辛い思いはさせられない!!」


何故、土御門と姫神さんからはあの光が出なかったのかは分からないけど、それはいいとして


さて、上条当麻。貴様の言う不幸とやらがどの程度か見せてもらうわよ!!








そして、上条当麻の姿が映し出される。

あかん、眠いな
ちと休眠します

スクリーンを右手で消せばいいんじゃね?とか思いましたはい

>>24
その辺りの理由は後ほど

さて、再開します



はじめに映ったのは…上条と、上条にガラス片を突き立てている私。

「っ…!」

「―――え?」


なんだ、これは。


「やめろ!見るな、吹寄!!」


『何が、助けてやる、よ』


「駄目だ…見たら…」


『上条当麻。貴様が、あんな事をしなければ、誰も死なずに済んだんじゃない!!』


意味が、わからない。
どうして私が、上条を?


周りからの視線が突き刺さる。
…違う!


「違う!私はこんな事してない!!上条当麻を刺したりなんか…!!」


すると、今度は私ではなく、青髪が映る。


「…ボク?」


『よくもまあ…ホンマにこないな所まで顔を出せたもんやな。いや、真剣に感心してる。途中で囲まれなかったのが不思議でならん。今のカミやんだったら、冗談抜きに広場で磔にされたってみんな拍手喝采するだけだろうに』


あのいつもふざけた感じの青髪が、こんなに悪意に満ちた表情をするとは。


「なんやこれ…ボクこんな事言った事無いで!?」


そして、上条と青髪の殴り合い…ただし、青髪は明らかに上条を殺そうとしていた。

「なんや…一体何なんやこれは!!」

やがて、上条は青髪に背を向け、走り去った。

『そないに絶望したかったら勝手にしたらええ…』


『どうせアンタの居場所なんてどこにもあらへんけどなあ!ボクらだって何もかもなくしたんや。その元凶に一人だけ救なんて残っていてたまるか!!』


青髪から、怨嗟の声が放たれる。


一体なんなのだ、この光景は。
私達の知らない、この世界は。

「――上条!何よこれ!?これは貴様の妄想?だとしたら相当質の悪い――」

「やめろ、吹寄」

問いただそうとした私を止めたのは、土御門だった。
出血は、どうやら止まっているらしい。


「これは、妄想や夢の類を映し出す事は無い。…精神能力による幻覚もな。
あくまでも、自身が体験した、現実に起こった「事実」のみを映し出す。
相手から情報を引き出す為の、そういう魔術だ。」


「さっきから魔術魔術って、一体何を…」


「それの説明は面倒だから、後にしてくれ…で、カミやんは何故かこの術式を知っているようだが…」


「…一度、な。だから、このスクリーンを壊しても意味が無いことは分かってる」

「…そうか。だが、それだと術者を倒さないと…」

「…多分、『あいつ』が動いてくれてる筈だ。俺は、それを待つしかないな」

「…あいつ?」

「ああ、名前は――」

『よそ見をしている場合なのか?』


「っ!!!」

その声に、上条達は弾かれるようにスクリーンに向き直った。
スクリーンに映るのは、金髪に眼帯をした少女。

「オティ…ヌス…」

上条の声は、明らかに震えていた。
この少女は一体…?

次の瞬間。


ずぶり。


上条の真後ろから、何者かが刃物を突き立てた。

見た目は子供そのもの。しかし、それは私達の…


『……小萌……先、生……』


『上条ちゃん……』


私達の担任が、両手を血に染めていた。

「そんな…私が、上条ちゃんを……?」

小萌先生が膝から崩れ落ちる。無理もない、自分の生徒を、自らの手で殺めようとしているのだから。


『上条当麻』は、完全に床の上へ倒れこんでしまった。


そして、『小萌先生』は大振りの包丁を、ゆっくりと振り上げ…


『結局、誰がお前の事をきちんと見ていたんだろうな?』


そんな声が聞こえたと同時に、画面がブラックアウトした。



その後も、上条の映像は続いた。
それは、どれもこれも悲惨なものばかりであった。
映像から見るに、どうやらこの少女は、上条を精神的に殺そうとしているらしい。

何故、上条なのか…それは解らなかったが、もしかするとこれが、上条の言う「不幸」なのかもしれない。
しかし、これは不幸というより最早…



『悔しいに決まってる。そんなの悔しいに決まってるだろ!!』





「地獄」では、ないか?


それから、上条は少女と対峙していた。

あんな目に逢って、何故まだ立ち向かえるのか、理解できない。
異常とさえ、思ってしまう。



上条当麻は、その少女に何度も何度も殺されていた。
本当にこれは現実なのか?
現に上条は何度も殺されているというのに。




やがて、永遠に続くのではないかと思われた戦いにも、終わりが見えた。
結局、上条は最後までその少女に勝てなかった。

ここに来て、なんとなく理解が出来た。
上条は…不思議な右手を持っているようだ。
そして、それを少女に渡し…動かなくなった。



『知って、欲しかったのか』


始めの頃の、上条を殺そうとした少女の姿は無く


『……「理解者」が欲しかったのか、私は』


上条の亡骸を抱えて、泣いている少女が、そこには居た。




『本当に……ひどい一撃だな。ちくしょう』


「かみ、じょう…くん…」

姫神さんは、泣いていた。

「ごめ、なさ……私の…せいで……」

「いいんだ。俺は大丈夫、だから泣くな」


これだけ酷い目に逢って、まだ人を気遣う余裕があるのか。


「上条…私は…」


『不幸不幸と思っているからダメなのよ!』

私が今まで言ってきた事は……!











『あなたがオティヌスね!東京の街をこんなにメチャクチャにして、みんなを困らせて!!もうこれ以上は好き勝手にさせないんだから!!』

「なっ…」


終わったかと思った映像は、まだ続いていた。
いつの間にか、いつぞやのシスターさんや、その他大勢の人々が一緒に居る。


さっきまでのはどうなったのだろうか…?そう思い上条の方を見たら…



「――――――っ」


先程と違って、明らかに怒っていた。
左手を握りしめ過ぎたからなのか、出血が目立つ。

飯あんど床屋ー

飯は代わりに食っといてやる
だから続きを

>>43
まじか、ならピザ20枚くらい注文しとくから住所はよ

そういえば、先日東京の方で大騒ぎがあったと聞く。
まさか、この少女が原因だったのだろうか?



そこから先は、あれほどの猛威を振るっていた少女が、まるで嘘であったかのように、一方的に打ちのめされていた。


確かに、この少女は相当な事をしたのだろう。しかし、事情を知らない人々にとって



その光景は、ただの華奢な女の子が、圧倒的な暴力で無残に薙ぎ払われているようにしか見えなかった。

「――っ!!」

上条の顔が、見たこともないくらい強張っている。


『……分かっていたな』

『何をだ』


そうだ。上条はこの時、どんな気持ちでこの光景を見ていたのだろうか?


『お前はこうなる事を分かっていた!!お前は何もかもから勝利をもぎ取って、自分好みに世界を作り替えることだって出来たのに、どういう訳かそいつを俺に譲った。
自分の理想を捨てて俺を助ければ、その代わりにお前が世界中から啄まれる事を理解していた!!それを内緒にしたまま俺を助けたんだ!!』


あいつは確かに馬鹿で不真面目かもしれない。でも

『……早く行け』

『……だったら』


あいつは誰よりも


『だったら、俺がお前を助けてやる。世界の全てと戦ってでも!!』


誰かが傷つくことを許さない奴だから。

『とうま!?』

『アンタ…!何して…!?』


この男は馬鹿なのだろう。


『…お前達にオティヌスを殺させやしない』

『…正気か?』

『まさか、洗脳されてるんじゃ…』

『…お前達が知らない事を、俺は知った。でもそれを説明できるだけのものを俺は持っていない。
だから、お前達はそのままでいい!
こちら側は俺一人だけでいい』


確かにこの少女を見過ごすわけにはいかない。
だからといって、全てを敵に回すなんてこと、普通はできない。


『とうま!どうしちゃったの!?』



『来いよ!納得出来ねえんだろ!?

なら俺が纏めて相手してやる!!』



「…ねえ上条?貴様は…」

「辛かったさ」

「っ…」

「でも、あいつらにオティヌスを殺させたくなかったから。あいつらの求めた正義が、そんな形で終わるなんて許せなかったんだ」

「ああ
、許せなかった…なのに…!!」


上条の左手から血が滴り落ちる。




仲間との戦い。
上条当麻は全力であった。しかし、彼女達からすれば、突然の上条の裏切りに戸惑い、それどころではなかった。


レッサーの鋼の手袋を砕き、バードウェイの大アルカナを掻い潜る。
御坂美琴は、初めて上条当麻に攻撃された。
インデックスは、上条当麻相手では何も出来ず、ただ、立ち尽くすのみ。

今の彼女達に上条当麻を傷つけられるわけがない。


『行くぞ、オティヌス』

『とうま…とうまああああああ!!』


インデックスの悲痛な叫びが響く。
彼女は、あと何回「上条当麻」を奪われればいいのだろうか?

なんか鯖重すぎね?
だから少ないけど投下しゅーりょー
また後で

さて

仕上げるか

しかし、どんなに足掻いても覆せない事はある。

世界を相手取るには…上条当麻は小さすぎた。












『随分手間をかけさせてくれたね?上条当麻』


『かみ…じょ…』


『オティ、ヌス…うわぁあああああああああああああああ!!!』


金髪の男が何をしたのかは解らない。しかし、それは確かに上条達の逃避行を終わらせた。


『な、ぜ…?』


『ふむ、それは妖精化についての問いかな?愚問だね。

自分が用意した術式の対処法くらい用意するのは当然だろう?』


『オッレルス!てめええぇぇぇ!!』


『何をそんなに怒っているんだい?オティヌスは敵じゃないか』


『オティヌスにはもうそんな気はない!!』


『そうなのかい?それは知らなかったよ。








それで?』



『それでって…!!』


『今がどうかは知らないが、そんな事は関係のないことさ。僕は彼女を殺す。それだけさ』


『てめぇ…!!『いいんだ、上条』』


『おや、まだ生きていたのかい?』


『オティヌス!!』


『全て、私が蒔いた種だ。こうなって当然だった。むしろ、お前が今、こうして私の側に居てくれるのが奇跡だと思っている』


『お前、何言って…!』


『聞いてくれ。私はもう、長くない』


確かに、その傷は明らかに致命傷だ。


『何言ってんだ!まだ医者に見せれば…そうだ!冥土帰しなら…!!』


『何をいってるんだい?そんな事させるわけないじゃないか』


『うるせえ!てめえは黙ってろ!!!』

『そもそも君は何を言ってるんだい?オティヌスを止めに来たと思えば、突然オティヌスの味方をしだすなんて、明らかに異常だ』


『それは…!』


『まあ、そんな事はどうでもいいさ。ただ、君が私の邪魔をするのなら…君ごと殺すだけだからね』


『っ…!!』



オッレルスと呼ばれる男が決定的な「何か」を放とうとする。
それは、間違いなく上条の命を刈り取るだろう。


『残念だよ、上条当麻』


『ちくしょう…ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』





ドッ!!



その絶望的な一撃は、






『そのくらいにしとけよ』







突然現れたもう一人の金髪の男によって止められた。

『トール…!?』


『…君も邪魔をするのかい?』



『もう充分だろ。これ以上のやり取りからは何も得やしないぜ?』


『…君は彼女のやり方を許せなかったんじゃなかったのかい?』


『確かに、オティヌスのやらかした事は許せねえ。無抵抗の奴らを攻撃するなんて、今でも腹が立つ。だから…

今、お前らが無抵抗のオティヌスを殺そうとするのを、俺は許せねえ』

信じられない。

この状況で、トールと呼ばれる男は上条達の味方をするというの?


『…やっぱり、上条ちゃんは上条ちゃんか


それでこそ、俺の好敵手だ』



『トール…』



『…ふむ、ここで君と戦うのは得策じゃないね。フィアンマが動ければ話は別だったが…』



『ならさっさと消えろ。ぶっ飛ばすぞ』


『そうさせてもらおう。どの道、彼女は助からないだろうし』



そう言って、オッレルスという男は消えた。



『オティヌス!しっかりしろ!オティヌス!!』


『…悪い、上条ちゃん。間に合わなかった』


『大丈夫だ!まだ間に合う筈だ!!待ってろ、すぐに運ぶ!』


『…その、必要はない。自分の体だ、もう助からないのは私が一番分かっている…』


『喋るな!じっとしてろ!!』


『聞いてくれ、上条当麻。私は、お前に感謝している…』


『やめろ…』


『最後の最後で…私は、欲しかったものを手にすることが出来た…』


『やめろって言ってんだろ!!死なせねえ、絶対に死なせねえからな!!』



『…お前とは…できれば、もっと優しい世界で、出会いたかったよ…』


『っ…!!』












『…ありがとう、上条当麻』







そして、オティヌスと呼ばれる少女は…静かに目を閉じ―――


その目が再び開かれることは無かった。







『………おい』


『なんだよ?寝るなよ。起きろよ』


『起きろって……!!』


『おい!ふざけんなよ!!なあ!!!』


『よせよ、上条ちゃん。…もう』


『トール!!魔術で何とかしてくれよ!!お前だって魔神になれたかも知れないんだろ!?』


『…無理だ。治すも何も…全てがズタズタで、何をどうすればいいかすらわかんねえ』




『そん、な…


ちくしょう…






ちっくしょおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』


バキン!!


「はぁ…!はぁ…!…クソが…!!」

気づけば、上条がスクリーンを殴っていた。
どれだけ力を込めていたのだろうか、後ろの黒板にまでヒビが入っている。

「上条…!」


「相変わらず胸糞悪い魔術だ…!」


殴られたスクリーンは、跡形もなく消えていた。しかし、



『また…守れなかった!!ちくしょう!ちくしょおぉぉぉぉ!!!』



『落ち着け上条ちゃん!とりあえず、ここから脱出するのが先だ!!』


「っ…!」


すぐに、違う所にスクリーンが現れた。

バキン!

『折角元の世界に戻れたのに!!』


バキン!!


『こんな事なら…』


バキン!!!


『「幸せな世界」で俺が死んでおけばよかった…!!』


何度壊しても、スクリーンはで続ける。


「くそおぉぉぉぉ!!!」


「待てカミやん!姫神が…!」


気付けば、姫神から今にも光が出そうになり…

「っ~~!!クソッ!!!」


上条は、諦めて姫神のもとへ戻った。


バキッ!!

スクリーンを見ると、トールと呼ばれる男が上条を殴っていた。


『てめえ…もういっぺん言ってみろ!』


『何、すんだよ…』


グイッ
上条の胸ぐらを掴み上げる。

『話を聞く限り、オティヌスが世界を一度壊したのは理解した。事実、完璧な魔神ならそんくらい可能だろうよ。
だが、オティヌスは世界を元に戻した、お前に譲ったんだ。
自分がどうなるか分かってたくせに、な。
てめえは、そのオティヌスの気持ちを無駄にするってのか!?』



『っ――――!!』



『…嘆いてる暇があるなら、お前が今、やるべき事をやれ。』



『―――ああ、すまなかった』

『…で、どうするんだ?』


『…グレムリンを、潰す』


『ほう?』


『奴らをどうにかしないと…いつ、オティヌスの体を悪用されかねないからな。
…もう、静かに休ませてやりたいんだ』


『なるほどねえ…ちなみに、俺がグレムリンだったってこと覚えてるか?』


『なんだ?邪魔するってんなら…』


『冗談だ、協力してやるよ。
…俺も、これ以上胸糞悪いもん見せられたらたまんないからな』

『…その前に、オティヌスを眠らせてやろう。もう誰も傷つけず、誰にも傷つかれずに済む、静かで幸せな所に…』



『オーケー、それならいい所があるぜ。場所は――――





プツン




「えっ?」



映像は、そこで止まっていた。

そして








「悪い悪い、ちょっと手間取った。間に合ったか?」


映像の中に居た金髪の男――トールが窓から顔を出していた。




「ギリギリだ。ったく…危うくバレるところだったぞ」


「だから悪かったって。だけど、とりあえず奴らの根城は掴めたぜ?」



「そうか。――よし、行こう」


「はいよ。にしても…今回も随分と荒れたなー上条ちゃん」


トールと呼ばれる男が、上条の両手を見て笑う。



「うるせえ、さっさと行くぞ」


「ハイハイ」



!このままでは、上条達が行ってしまう…!!




「待って、上条!」

上条の背中が止まる。



ねえ、上条?


「…どうした、吹寄?」


こんな冷たい世界が…






「…これが、上条が見てきた世界、なの…?」

すると、上条はこちらを振り向き、ふっ、と笑い――――












「こんなもの、全部幻想だよ」

























そして、上条当麻は学園都市を去った。


時々、「世界の平和とは何だろう?」と考える。

少し前までは周りに力説していた事が、今では解らなくなってしまった。


世界が平和ならみんなが幸せ?
それならば、あの男はあんなに傷付きはしなかっただろう。


しかし、あの男が幸せで、他の人も幸せになる――――そんな事、可能なのだろうか?





しかし、これだけは自信を持って言える。










上条当麻は、バッドエンドで終わらせるつもりはない、と。

以上で終わりです
よくわかんなかったかもしれませんが、もし、オティヌスが死んだらどうなるか?と考えた際、上条さんはインデックス達の所へは戻らないかもしれないと思いました

幸せな世界を壊した罪とオティヌスの死を背負い込んで生きていくかもしれない、そう思って書きました

吹寄視点を選んだ理由は、上条さんのクラスの中で、青髪に次いで魔術から縁遠かったから
青髪視点だと…ねえ?

さて、html化してきます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom