はっきりは覚えていない。

気がついたら真っ白な天井の下だったから。

そのあとベットの縁で眠っていたお父さんを起こしたら、泣きながら強く抱きしめてくれたっけ。

あのときは何も感じなかったけど、いまでは分かるよ？

ずっと付き添ってくれてたんだよね？

ありがとう、お父さん。

私のような娘に、そこまでしてくれて……

咲「読書…は飽きちゃったし、外…久しぶりに出たいな」

もう何ヵ月も屋外には出ていない……いや、出られていないと言うべきかな。

詳しくは知らないけど、脊椎を損失した私の両脚は、二度と動くことはないらしい。

思えばいつも手に入らないものを、私は望んでいた気がする。

あのときは「私のせいで壊われた家族」を。

いまは「自分のせいで叶わない自由」を。

咲「…駄目だな、私」

いつも一人だと深みに嵌まっちゃうんだ、と言っても一人でいることの方が多いんだけどね。

お見舞いに来る人は、お父さんしかいないし……

そう、私にはお父さんがいる。

心配してくれてる、必要としてくれてる、たった一人の家族が。

今日もそう言い聞かせて、独りぼっちの病室で眠りにつく。

短いがここまで続きは深夜

続きはいった通り深夜になりますが、ここで安価
どっちパートが見たいですか？
>>25までに多かった方を書きます

1、園城寺怜パート
2、福路美穂子パート

※その他は無効票です

（二択で偶数の投票数指定は…）
1で

同数だったので>>25の怜にさせていただきます
ちなみに2だった場合は、照の言葉を伝えた美穂子が負い目を感じて咲の病室に通い妻になる、でした

では深夜に

遅くなってしまい申し訳ありません、寝てしまったので大した量ではありませんが書き溜めを少し投下します

代わり映えのしなかった、ある日の夕方だった。

咲「早く退院したいな…、お洗濯ものとか溜まってるよね…」

ｶﾞﾗｶﾞﾗ

看護師「…どうかしら、調子は？」

咲「……いつも通りです」

看護師「…そう、でも今日からはいつも通りにはいかないわよ？」ｸｽ

咲「えっ」

看護師「さ、入ってきていいわよ？」




怜「園城寺怜や、仲良したってなー？」

咲「……」

……訂正、代わり映えのある、私にとって忘れられない日々の始まりだった。

怜「あー、準決勝、別ブロックで出とったやろー？」

怜「いくつなん？…年下やん、咲ちゃんって呼んでええー？」

馴れ馴れしく話しかけてくる、この人……園城寺さんは戦っていた、準決勝でおね……千里山で先鋒をしていたらしい。

何でも長野は空気が綺麗だから、療養がてら暫く入院するそうで…


病院の人やお父さん以外と話すのは、まだ少し緊張するよ……

怜「なんや園城寺さんって？他人行儀やなー、怜でええよ怜で」

怜「ん、咲ちゃんも読書するんか？やっぱり入院生活が長いと、本が書かせへんわなー」

関西人だから？凄く気さくな園じ……怜さんは、暇さえあれば相手を求めてきた。

そんなこともあって、随分と打ち解けてきた私たち。

だからかもしれない、出会って数日の怜さんを、もっと知りたくなったのは。

咲「怜さんは長いんですか？病院生活…」

怜「へっ？…せやな、ウチ体が弱いんよ、対局中にも倒れたことあるんやで？」

咲「そ、そんなに悪いんですか？」

怜「んー、近頃は調子ええで？咲ちゃんといるからやろか？」ﾌﾌ

優しい言葉に暖かい笑顔、私が欲していたものが、そこにあったんだ。

咲「…ならいいですけど、安静にしてないと駄目ですよ？」

怜「ふふっ、なんか咲ちゃんが看護師さんみたいやな？」



それが砂上の楼閣とも知らずに……