女「久しぶりだね」(95)
生きるっていうのは本当に大変なことだ。
とてもエネルギーを使う。
人は生物の本能として生きたいと感じるらしいが
人体を構成する物質の物理的な本能としては、死にたいと思っているらしい。
生きるっていうのはエネルギーを使うから。
無駄な放出だから。
どっかのお偉い人が言ったらしい。雑学かなんかの本で読んだはずだ。
つまり、人が生きたがりか死にたがりかっていうのは、その個人を支配しているのが、生物なのか物質なのかってことなんだろう。
心で生きているのか、体で生きているのか
俺は体で生きているんだろう。
自分の心はなかった。
常に影響を受けるだけ。
波間で漂うビニールのように。
影響を受けた自分と受けていない自分。
どっちも自分ではないような気がした。
もしかしたら心はすでに死んでいたのかも。
いつも何かの本を読んでいないと落ち着かなかった。
なんでもよかった。なにかで俺の心がよみがえるかもしれない。
そう考えていたんだろう。
狂ったように読んでいた。
内容を覚えているものなんかほとんどない。
ドラッグのようなもので、読んでいるときだけ、生きているようなふわふわした感覚になる。やめられないんだ。
気持ちよくって。
登場人物の誰かとシンクロでもしているのかな。
俺はたまたま官能小説を読んでいた。
ヒロインの女は、とても蠱惑的だった。
めったに表に出てこない俺の性欲を、よみがえらせた。
教室でなんか読むんじゃなかった。
俺の前の席に座っている女のことを好きになってしまう。
誰でもいいんだけど。
彼女と彼女の違いがわからなくなっている。
本はドラッグだ。
続きは今夜か明日に投下します
よろしくお願いします
彼女が入ってくると、すぐに席を立った。
彼女はまっすぐに俺のほうを向いていた。
とても驚いた顔をしていた。
「そんなに私と話したかった?」
彼女は意地悪にそう聞いた。
「もちろん。とても楽しいから。」
俺が素直に答えると彼女は、長い横髪で顔を隠した。
少し経ってから、
「うれしいけど、そういうのは誰もいないところで言ってね。」
そう俺にしか聞こえないように言った。
彼女と出会ってから、俺は変わったんだろう。
一番変わったことは、本を読む時間だろうか。
暇さえあればどこだろうといつだろうと読んでいた本。
今ではお風呂から出た後の30分くらいしか読んでいない。
次に変わったといえば、クラスの人たちと話をするようになったこと。
いままでも、授業のことなど話しかけてくれてはいた。
内容なんてなくって、ちょっとしたことばかりだったけど。
俺が返事をすることで、会話になった。
とにかく俺は変わっていった。
クラスの奴らの俺を見る目も変わったんじゃないかな。
元をよく覚えていないから想像だけど。
俺が前に告白した子を覚えているだろうか。
あの痴女のことだよ。
俺が心の中でそう呼んでいただけで、実際には全然そんなことはなかったけど。
痴女はやっぱり優しかったようだ。
俺が告白したことを誰にも話していないようだった。
痴女は俺の前の席だったから、よく話をした。
「変わったよね、最近」
ことあるごとに痴女は俺にそう言った。
言われるたびに俺は誇らしかった。
自分がほめられているから。
もしくは、俺を変えてくれた人をほめられているように感じたからかも。
「前に告白してきたじゃない?
私本当に意外だったんだ。
興味なさそうだったから。恋愛にも、私にも。」
実際に俺は興味なんてなかった。
俺は篭絡された男を演じていただけなんだから。
答えに困っているのに気づいたんだろう。
痴女は、「やっぱりね」そう言って笑った。
「でも今なら、OKしちゃうかもな。
今のキミ、かっこいいもん」
そういった。
たぶん昼ごろに更新できると思います
レスうれしいです。ありがとうございます
それから、痴女と俺は学校の間ずっと一緒にいるようになった。
俺は今まで呼んできた本を思い出せるようになっていた。
最近頭の中に靄がかかっていないからだろう。
とにかく調子が良かった。
痴女は俺にお勧めの本を聞いてきた。
本の感想なども言ってくれた。
俺は、俺の世界を周りの人が知ってくれることがうれしかった。
痴女は俺にいろいろ楽しいことを教えてくれた。
地元の子で、学校の周りで楽しいところをいろいろと紹介してくれた。
カラオケに行ったことがないと俺が言うと、驚き、
「じゃあ今日行こう」
そう誘ってくれた。
行ってから気付いたけど、俺には歌える歌がなかった。
俺が痴女に流行りの曲やお勧めの曲を教えてくれるよう頼むと
「え~とこの曲なんかは結構お勧めかな~」
などど、喜んで教えてくれた。
ipodなるものを買った。
耳栓よりもいいものかもしれない。
俺は歌なんて歌ったことがなかった。
学校ではずっと口パクだった。
歌詞を覚えていなかったから。
だから痴女が「じゃあもう一回カラオケにいこ?」
とても見事な歌を披露できた。
痴女は、申し訳なさそうに笑っていた。
俺も一緒に笑った。
その後も痴女と何回かカラオケに行った。
歌は歌えばうまくなると気付いた。
たぶん人並みになるまではだろうけど。
俺は上達したんだろう。
うたっているときに彼女は笑わなくなった。
その代わりじっと見られていて恥ずかしかった。
洋服なんかも選んでもらった。
今までは書店か図書館にしか行かなかったから、父親のお古を着ていた。
初めて痴女と休日に遊んだときに、怒られた。
痴女の見立てはよかったんだろう。
俺はまたしても人並み程度のものを得た。
歌声に続き容姿。
今まで2着程度しかもっていなかった服が、10倍くらい増えた。
大量に持っていた本はうっぱらって、スペースを確保した。
もう本に依存することはないだろうと確信していたから。
学校でどうも、俺と痴女が付き合っているという噂が流れているようだ。
最近よく話すようになった友達から「付き合っているのか」と何度か聞かれた。
付き合ってはいなかったので、俺は否定した。
俺は、痴女にそのことを話していると、痴女は迷っているようだった。
痴女は決意したように俺を見つめた。
「最近キミは変わったよね。
髪もしっかり整えて学校に来るようになった。
授業もしっかりと受けているし。
人当たりも良くなった。
だからかな最近もててるんだよ、知ってた?
それでね、私焦ってるの。
私も、好きだから。」
その日から、俺たちは付き合い始めた。
明日、2度更新を予定しています
俺って最低なことをしていたんだなって思った。
恋愛小説とかで浮気をする男たちの心理がわかったような気がする。
何とかして痴女も俺のもとに置こうと考えている、そんな考え早く捨ててしまいたい。
高校も終わりが近づいている。
教室であった痴女は何事もなかったようにふるまっていた。
俺にも話しかけてくれた。
付き合う前のころのように。
これでいいんだ。
俺はbestじゃなきゃ満足できないから。
さあ、どうやって彼女に告白しよう。
もう勉強会はなくなってしまった。
次に会うのはいつだろう。
なんか、昔の受験の発表って大学の中に掲示された紙から自分の番号を探すものだったらしいけど、
今はネットで見る。
今日は発表日だった。
午前11時に公開されるという。
俺は合格していた。
彼女も当然。番号は暗記している。
電話がかかってきた。
「やったね。これで春からは一緒の大学だよ?
勉強頑張ったもんね。」
「全部君のおかげだよ。本当にありがとう。
打ち上げとかやろうよ。喫茶店とかでさ。
今から会えない?」
「もちろんいいよ。私から誘おうと思ってたくらい。
12時に駅前でいい?」
「俺、君のこと好きだよ。」
あってすぐに告白した。
ムードとかを考えようとも思っていたけど、俺らしくないっていう感じがした。
というのはいいわけで、我慢が出来なかっただけなんだけど。
彼女は顔を真っ赤にしていた。
俺は、けっこう大きな声で告白したから、立ち止まって経過を見ている人もいる。
ここは駅前だ。人がいっぱいいた。
「やるねーあの兄ちゃん。」そんな声が聞こえていた。
しばらくすると、彼女の返事を待っているのか、いつのまにかギャラリーもしーんとしていた。
彼女は、チラチラと俺を見ていた。
それから周りの人に気付いたようだった。
彼女は俺を少し怒ったように見つめはじめた。
俺は、返事を待っている、そんな顔で見つめ返した。
彼女はあきらめたように下を向き、黙って俺に抱きついた。
歓声が聞こえた。ギャラリーの人が拍手やら声援を送ってくれていた。
「好きだよ。」俺がそういうと彼女は、
「うれしいけど、そういうのは誰もいないところで言ってね。」
そう言って、俺にキスをした。
必死に陸を目指すビンをじっと見つめる少女がいた。
長く黒い髪が美しい、知的な女の子。
ビンは陸にたどりついた。
すぐにビンは彼女に拾われ、蓋を開けられる。
中に入っているのは手紙だろう。
気持ち、心の塊。
長い長い時間、たった一人の少女に見つけてもらうために、漂ってきた心。
彼女はいつから俺のことが好きだったんだろうか。
俺は彼女に聞いてみた。
「中3の秋くらいからかなぁ。図書委員が一緒だったでしょ?
あの時君が優しかったから、ころっと。」
そう言って彼女は笑った。
「俺あの頃は不愛想だっただろうし、優しくなんてなかったと思うけど。
ずっと本を読んでたはずで、君のことすら忘れていた位なのに。」
「あなたはいろいろなものを見ていたよ。根がまじめなんでしょ。
仕事はしっかりとしていたし、困っている人にも丁寧に接していた。
私にもね。覚えてないってことだから、無自覚なんだろうけど。
優しいってさ、自分が判断することじゃないでしょ?
「俺はやさしい、やさしくない」っていうのは違うと思う。
私が優しいって思ったんだから、あなたはやさしいの。」
恥ずかしそうに、パタパタ仰ぎながら言った。
もうあたたかい。春がやってきた。
「すきだよ、ずっと」
手を重ねながら彼女に言った。
彼女は俺の方に頭を乗せたまま、言った。
「これからも、二人きりの時には、たくさん言ってね。」
終わりです
レス本当にありがとうございました
新しいスレを明日にでも建てると思いますので、見かけた際にはよろしくお願いします
もし嫌だったらいいんだがこれまでの作品とか教えてほしい
>>89
聞いていただけてとてもうれしいです
楽しんでいただけたら幸いです
女「そんなのずるいよ」
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幼馴染「叶わぬ夢」
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男「俺たちの」幼馴染「告白!!」
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