ほむら「手段は択ばないわ」(494)
諸注意
このSSは、まどかマギカ本編の11話からの分岐になります。
ワルプルギスの夜に追い詰められたほむらが、もう一度時間遡行をしていたら?というIFストーリーです。
では、お楽しみください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366515270
プロローグ
立ちはだかる、舞台装置の魔女。通称、ワルプルギスの夜。
ほむらは幾度と無く挑み、その度に叩きのめされ、逃げる様に時間を遡り続けた。
――君のおかげで、最強の魔女が出来上がったんだ。
その結果は、親友を苦しめる最悪の状況を作り出してしまっていた。
何度も見てきた、退院日の病院の天井。
(また、ダメだった……。それどころか、私の願いがまどかを苦しめていたなんて……)
ほむらの頬に、一滴の雫が流れ落ちた。
(……ダメだ!! これ以上弱気になったら、無駄な魔女が増えてしまう!!)
手の甲で拭い、奮い立たせるように自分に言い聞かせる。
(これ以上時間を繰り返せば、まどかの因果が増える一方……。もう時間を戻す訳には行かないのに……どうすれば良いの?)
自問自答しても、活路は見えてこない。大きく溜息を吐き出し、自分のソウルジェムに目を向ける。紫の宝石は、かすかに濁りを溜めていた。
(……私の願いが原因。……私の願い?)
そのキーワードが、頭の片隅に引っ掛かった。
――鹿目さんを守れる自分になりたい!!
契約の願いを思い出す。
何度も繰り返した時間の中で、幾つ物真実を目に焼き付けてきた。
(もし、この理屈だとすれば……)
希望の光、道標の先が見えた気がした。
(可能性は低いけど……賭けるしかない!! もう、これ以上は繰り返せないから……)
ほむらの眼つきは鋭く研ぎ澄まされ、表情は凛と張りつめた。
暁美ほむらは知りたい。あの戦いの結末を……。
1.接触
退院したその日。新たな住居に身を移したほむらは、荷物を解くよりも先に起こした行動。
≪……キュウべえ。聞こえるかしら?≫
それは、殺し足りない位に憎らしい、契約請負人にコンタクトを取る事だった。
≪君は魔法少女の様だけど……僕と契約した記録は残っていないよ?≫
感度は良好。返信はすぐにキャッチ出来た。
≪それを今から説明するわ。すぐに来てもらえるかしら?≫
≪……解った。今から向かうよ≫
一分と経たない内に現れた契約請負人、インキュベーター。
ほむらは、鋭い目付きでキュウべえを見下ろす。
「ここでは初めまして、ね。キュウべえ。私の名前は、暁美ほむらよ」
「……暁美ほむら。その名前の少女と契約した記憶は無いね。しかし、君はソウルジェムを持っている……。君は何者なんだい?」
キュウべえは、少し首を傾けてほむらをジッと見つめる。
「私は、時間遡行者よ。違う時間軸のインキュベーターと契約したから、この時間軸の貴方が知らないのも無理はないわ」
「……そういう理屈なら、合点は行くね。しかし、君の様子を見ていると、時間遡行をしたのは一度や二度じゃ無い様だね」
「そうよ。今から一か月後に現れる、ワルプルギスの夜を倒す為に、この一か月を繰り返しているわ」
ほむらの口調は、淡々としていた。
「……ワルプルギスの夜。歴史に名を残す最悪の魔女だね。確かに、並の魔法少女が集まった位では、あの魔女を倒す事は不可能さ。
でも、この街には、巴マミと言うベテランの魔法少女も居る。何よりも、途轍もない才能を持った、魔法少女の候補も発見したんだ」
「鹿目まどか……でしょ?」
キュウべえよりも先に、ほむらはその名前を口に出した。キュウべえは、思わず言葉を止めてしまった。
「……知っていたのかい?」
「ええ。彼女の才能は、確かにずば抜けているわ。彼女が魔法少女になれば、ワルプルギスの夜を倒す事は造作も無いでしょうね……。
ただ、その後には、それ以上に最悪の魔女が生まれてしまう……」
「……全てお見通しって事か」
「私はソウルジェムの全貌も、貴方達の目的も知っているわ。
私の目的は、鹿目まどかを契約させないで、ワルプルギスの夜を倒す。その為に、この一か月を何度もやり直しているのよ……契約してからずっとね。
しかも、それが原因で、鹿目まどかに莫大な因果が集中してしまった……。彼女の素質が破格なのは、私が原因だったのよ」
キュウべえは、ほむらをマジマジと見つめる。
「なるほどね。彼女の因果は、理論上ありえない数値を出しているの。しかし、君の能力が原因だとすれば、全て説明が付くよ」
「……お蔭様で、貴方を殺しても、足りない位憎んでいるわ」
ほむらは、溜息交じりにそう告げた。
「……妙な事を言うね。
だったら、何故僕をこの場に呼び出したんだい? それに、わざわざ君の知っている情報まで提供してくれる。
ありがたい話だけど、どう考えても企んでいるとしか思えないよ」
「交換条件よ。少なくとも、貴方に有益な情報を与えたんだから、私に協力してくれても良いんじゃないかしら?」
「仮に、鹿目まどかと契約するなと言う条件は受け付けないよ。僕達も、宇宙の寿命がかかってるんだ」
「そこまで、高望みはしないわ。
要望は二つよ。一つは、ワルプルギスの弱点を教える。もう一つは、ワルプルギスの夜が過ぎるまでは、彼女と契約しない」
「……厳しい要求だね」
「そうかしら? ワルプルギスの夜までの限定なら、決して悪い条件ではない筈よ。
それに……ワルプルギスには、私一人で挑むわ」
ほむらの一言に、キュウべえは反応を見せた。
「……正気かい?」
「当然よ。私一人で戦うなら、貴方も教える事位してくれるでしょ?」
ほむらの口元は、小さな笑みを作っていた。
「はっきり言って、まともじゃ無いよ。君はワルプルギスの夜と、何度も戦ってきたんだろう? だったら、それがどれ程無謀な事か理解出来ている筈だ……」
「そんな事は解っているわ。
でも、後戻りが出来ない以上、ここで刺し違えてもあの魔女を倒すしか道は無いのよ」
「……末恐ろしいね。
君の様な魔法少女は、敵に回すと非常に恐ろしいタイプだよ……」
「どういう意味かしら?」
「目的達成の為なら、どんな手段も択ばないという事さ」
「ええ。その通りよ」
キュウべえは意を決した様に呟いた。無表情だという事に変わり無いのだが、ほむらは確かにそう感じた。
「君には、興味が沸いたよ。協力とは言わないけれど、手は組ませてもらうよ」
「……ふふ。頼りにしているわ……インキュベーター」
ほむらは含み笑いを見せた。もっとも、その視線は、冷たいままなのだが。
「僕は、ここで消えさせて貰うよ。ワルプルギスの事はまた後日に話す事にするよ」
そう言うと、キュウべえはほむらの前から消えていった。
(……まず第一段階ね)
ほむらは、ホッと胸を撫で下ろした。
転校日。
「暁美ほむらです。よろしくお願いします」
何時ものループと変わらない、淡々とした挨拶。しかし、クールビューティーな容姿が手伝って、クラス中の話題はほむらで持ちきりとなる。
休み時間になると、ほむらの周囲はクラスメイトでごった返すのだった。
「ねーねー。暁美さんって、東京から来たんでしょ? どんな学校だったの?」
「ミッション系の学校だったわ。病気で余り、通学してなかったけれど……」
「髪の毛綺麗だよねー。シャンプー何使ってるの?」
「そんな良い物は使って無いわ。ホームセンターで売ってる物よ」
多数の質問に、淡々と答える。
ただ、今までのループとは大きく違う点がある。それは、鹿目まどかに対し自分から接触する必要が無いのである。
と言っても、ここで言葉を交わす事は、もはや運命なのかもしれない。
「あの、暁美さん?」
「……?」
ほむらに声をかけてきたのは、鹿目まどか。幾つ物ループで、守ろうとしてきた、大切な親友。しかし、まどかにその事実を知る由は、まだ無いのだが。
「私、鹿目まどかって言います。保健委員やってて、早乙女先生から保健室を案内してあげてって言われてて」
まどかは、屈託のない笑みを見せて、ほむらにそう言った。
「……そうだったわね。案内をお願いしたいわ。皆ごめんなさいね」
ほむらはそう断りを入れて、席を立った。
(好都合ね……)
内心では、ほくそ笑んでいたに違いない。
先導するまどかの背中を見ていると、ほむらの自然と険しくなってしまう。
(今回で確実に終わらせなければ……。貴女を呪縛から解かなきゃいけない……)
そう思い込んでいると、不意にまどかの方から言葉がかかってきた。
「……暁美さん。やっぱり、気分が悪いの?」
まどかは、余りにも険しい表情を見かねて、ほむらを体調を心配していた。
「大丈夫よ。それと……私の事はほむらで良いわ」
「……そっか。じゃ、私の事はまどかで良いよ」
まどかは、そう言いながらニコッと笑みを見せた。
「ええ。よろしくね、まどか」
ほむらも、笑みを見せてそう返答した。
「でもさ、ほむらってカッコイイ名前だよね」
「そうかしら? ちょっと変な名前だから、あんまり気に入って無いわ」
「私は、カッコイイと思うよ。燃え上がれーって感じでさ」
言葉を幾つか交しながら歩いていると、保健室は目前だった。
「ここが保健室だよ」
「ありがとう。助かったわ」
ほむらに言われると、まどかは照れた仕草を見せる。
「ねえ、まどか。一つだけ聞いても良いかしら?」
「どうしたの?」
ほむらが少し間を置くと、まどかは周囲の空気が張りつめた事を感じた。
「……貴女は、家族や友達の事。大切だと思ってる?」
「……えっ?」
「どうなの?」
一呼吸して、まどかは凛とした顔付きで答えた。
「勿論、大切だと思ってるよ。家族も、友達も、皆大好きな人達だから」
「……そう。ならば、一つだけ忠告させて。
もしこの先、何が起ころうとも“自分を変えよう”だなんて、決して思ってはいけないわ。そうで無ければ……貴女の大切な物を、全て失う事になるわ」
「ほむら……ちゃん……?」
「変な事を言って、混乱させてしまったかしら? でも……私の忠告を忘れないで」
そう伝えて、ほむらは保健室の扉を潜って行った。
(……何の話なんだろう)
取り残されたまどかは、呆然と立ち尽くすしか無かった。
その日の放課後。
ショッピングモールのファストフード店で、談笑するまどかとさやか、そして仁美。内容が、転校生の事に偏るのは、致し方なしと言えよう。
「あっはっはっは……。ちょっと、それってマジなの!?」
大爆笑で、目に涙を浮かべながらさやかはそう言った。
「さやかさん……笑いすぎですわ」
呆れながら、仁美はそう呟いた。
「うぅ~……言うんじゃ無かった」
まどかは、顔を赤くしながらポツリと言った。
「いやー悪い悪い。
でもさ、才色兼備でミステリアスな転校生。だけど、実はサイコな電波さん。もしくは重度の厨二病……そりゃ笑っちゃうよ」
さやかに反省の色は無かった。
「所でまどかさんは、あの暁美さんとはお知り合いなのですか?」
仁美はさやかを一旦置いて、まどかに話題を振った。
「ううん。今日、保健室を案内しただけだよ。あ……でも」
「……でも?」
まどかの思い出した様な一言に、さやかと仁美は注目した。
「夢の中で会ったような……」
その言葉を聞いて、さやかと仁美は盛大に噴き出してしまうのだった。
同時刻。同じショッピングモール内の改装中エリアにほむらはキュウべえと居た。
「……確かに、魔女の反応が有るね。君が過去をやり直しているのは、本当なんだね」
キュウべえは、感心しきりだった。
「……信じていなかったのね」
ほむらの返答は淡白な物だった。
「正直、半信半疑だったよ。だけど、確信できた。
実際、予知能力の魔法を使う魔法少女でも、魔女の現れる場所や日付まで正確に当てる事は不可能だ。過去を見てきたからこそ、出来る芸当だね」
「そんな事はどうでも良い事よ……」
溜息を吐き出しながら、ほむらはそっぽを向く。丸で、魔女と戦う意志が見られない。
「……魔女を倒さないのかい?」
「今倒す必要は無いわ。むしろ、この魔女を倒しに来る魔法少女に用が有るのよ」
「巴マミの事だね」
キュウべえの言葉に、ほむらの首は縦に動く。
お互いが無言のまま、数分経過。キュウべえはピクリと反応を見せた。
「その当ては外れた様だよ。あの魔女の結界に、鹿目まどかと美樹さやかが捕えられたみたいだ……」
「……何ですって?」
ほむらは目を見開く。
「……魔女に捕えられるのは、何も口づけを受けた人間だけじゃないさ。
魔法少女の素質を持つ人間も、結界に捕えられるのさ」
キュウべえは得意気に言う。
「そんな事、初めて聞いたわよ……」
ほむらは、キュウべえを鋭く睨みつける。
「それは聞かれなかったからね。
魔女は魔法少女の末路。かつての姿を重ね合わせて、取り入れようとしているんじゃないかな?」
「……ちっ。御託は良いのよ!!」
ほむらは焦った様に駆け出し、キュウべえはポツンと取り残されていた。
まどかとさやかの目前に広がるのは、異空間と形容できる光景だった。
綿毛のバケモノに取り囲まれて、動く事もままならない。
「……何よこれ」
さやかは背筋から、冷たい汗が流れている。
「解んないよ……こんなの夢だよね!?」
まどかは、体の芯から震えている事を感じていた。
このままここに居れば、間違いなく死ぬ。本能が、そう察知していた。本物の恐怖に理性を支配され、叫び声さえ出せなかった。
(……誰か……助けて!!)
声にならない叫びを、まどかは叫んだ。
カツン、と床を踏みつける音が、耳に飛び込む。
「危ない所だったわね……」
そう聞こえた時、黄色いリボンが二人の周囲を包み込んだ。思わず辺りをキョロキョロと見渡すと、見滝原中学の制服を着た女性が、すぐ近くに立っていた。
「……ど、どちらさまでしょうか?」
「貴女達、見滝原中学の生徒ね」
女性は、二人に向けてにっこりとほほ笑みを見せた。
「でも、その前に……ちょっと一仕事片付けてもいいかしら!!」
力強く、それでいて優しい声だった。女性が可憐なポージングを決めると共に、きらびやかな光を放つ。
その中から再び姿を現すと、制服姿から変身を遂げていた。
「使い魔共、すぐに終わらせて上げるわ!!」
女性はスカートの中から、大量のマスケット銃を一斉に召喚。
大きく息を吸い込んで、集中力と魔翌力を高める。
「ティロ・ボレー!!」
打ち上げ花火の如く、マスケット銃からの一斉砲撃で、無数の使い魔を蹴散らしていく。
派手な発砲にも関わらず、魔弾は的確に的を撃ち抜いていた。
「……逃がしたわ」
そう呟いた少女は、顔を少し苦々しくしていた。
同時に、取り囲んでいた空間が、改装中の殺風景な物に戻っていた。
「……」
まどかとさやかは、呆然と少女を眺めるしか、リアクションが取れない。
「……自己紹介が遅れたわね」
少女は変身を解いて、元の制服姿に戻っていた。
「私の名前は、巴マミ。貴女達と同じ、見滝原中学の三年生よ」
そう名乗った少女は、ニコッとほほ笑んだ。
「せ、先輩だったんですね。私は、二年の美樹さやかって言います」
「わ、私も二年の鹿目まどかです。助けてくれてありがとうございます」
あたふたと自己紹介する二人を見て、マミは少しだけ吹き出してしまった。
「そんなに、畏まらなくても平気よ。二人とも、怪我は無いかしら?」
「は、はい!!」
さやかは背筋を張りながら、大きな返事を返す。
「私も、大丈夫です……」
ちょっと、しり込みながら、まどかも答える。
「フフ……そんなに緊張しなくても良いのよ」
マミは温和な笑顔で、二人を見つめていた。
コツ、コツ、と床を鳴らす足音。三人は、思わず足音の主に目を向ける。
「見事な戦いね。流石はベテランの魔法少女、と言った所かしらね……」
不敵な笑みを見せながら、ほむらはそう声をかけた。
「……て、転校生!?」
「ほむらちゃん……!?」
思わず声を裏返し、まどかとさやかは驚きを隠せなかった。
「あら? 見かけない子ね……」
マミは内心では警戒しているのか、視線は僅かに鋭くなる。
「……そうね。最近、見滝原に引っ越してきたばかりなのよ」
その一言で、マミはより警戒を高め、再び魔法少女に変身した。
「そう。……だったら、今回の獲物は貴女に譲ってあげるわ」
マミはそう言って、ほむらを牽制する。
「どういう意味かしらね……」
ほむらは微笑を浮かべたままだ。
「呑み込みが悪いのね……見逃してあげるって言ってるのよ」
マミの言葉は、尻上がりに強い物に変わって行く。更に、左手にマスケット銃を召喚して、ほむらに銃口を向けた。
いきなりの険悪な雰囲気に、まどかとさやかは呆然と見る事しか出来ない。
「……貴女、思ったより間抜けね」
ニヤッとしながら、ほむらはそう言った。この一言が、マミの神経を思いっきり逆撫でした。
一瞬の間に、右手からリボンを召喚し、ほむらに向けてリボンを投げつけた。
――シュン。
しかし、投げつけたリボンは何も捉えておらず、絡まったまま地面にポトリと落ちていた。
「……え!?」
マミは我が目を疑った。
「……嘘?」
「どういう事……?」
さやかは呆気にとられるしか無く、まどかには理解出来る時間も与えられなかった。
「……どう? 驚いたかしら?」
得意げに声をかけるほむらは、一瞬の間にマミの後ろに回り込んでおり、頭に拳銃を突きつけている。
「……喧嘩売る時は、少しは相手を見た方が良いわよ? 相手に武器を向ける行為は、自分も殺される覚悟があるって事になるわ。脅す為に使うのは、馬鹿のやる事よ。
私がその気なら、貴女の脳みそに鉛弾をプレゼントしてたでしょうね……」
口元をニヤリとさせるほむらだが、その眼は全く笑っていない。
「……くっ」
意図も容易く手玉に取られ、マミの内心は屈辱を味わされていた。
「……貴女、目的は一体何なの? 縄張りなの? それともグリーフシードなの?」
矢次口調のマミ。明らかに焦っている様だ。
「そうね……貴女の命」
「……!?」
「なーんてね」
そう言って、ほむらは拳銃を下ろした。
「……まどか、美樹さやか、そして巴マミ。また明日学校で会いましょう。では、ごきげんよう」
次の瞬間、ほむらの姿は再び消え失せた。
「な……何なんだよアイツ……」
ほむらの行動と言動に、苛立ちを隠せないさやか。
「ほむらちゃん……?」
不安に駆られ、表情を曇らせるまどか。
(……怯えてた。銃を突き付けられた瞬間……私は確かに怯えてた)
マミの右手は、握り拳を作りながら、小さく震えていた。
本日は、ここまでです。ボチボチと投下していきます。
気が向いたので、もう一話分投下します。
2.憂鬱
翌日。まどかとさやかは、何時もの様に登校していた。
「凄い話だよね。何か、マミさんって、正義の味方って感じがしてカッコイイよね」
明るく話すさやか。
「うん。でも……ほむらちゃんも魔法少女なのに……」
まどかがそう言うと、さやかはあからさまに嫌そうな表情を見せた。
「あんな奴、私が同じ魔法少女だったら、コテンパンにしちゃうのに」
「だけど……あんな行動するなんて、何か有るんじゃないかな~って思うんだけど……」
強気な発言をするさやかを、なだめる様にまどかはそう言った。
昨日まどかは、さやかと共にマミから、魔法少女の事、そして魔女の事。一通り聞く事となった。その際、マミの仲介でキュウべえとも顔を合わせた。
その為、登校中の話題は魔法少女の事ばかりだった。偶々、日直で登校時間の合わなかった仁美が居なかった事も、理由の一つだろう。
学校に二人が到着すると、昇降口で不審な動きをするほむらを見かけてしまった。
(……転校生? アイツ、何してるんだ?)
さやかは、ほむらの姿を目で追った。
「さやかちゃん? どうしたの?」
「まどか……あれ見てよ」
さやかが指差した先は、下駄箱に何かを入れるほむらの姿だった。
「……何してたんだろう? まさか、ラブレター?」
「そんな訳無いじゃん。アイツ、もしかして嫌がらせとかしてるんじゃない? ほら、性格悪そうだし……」
こそこそと話をしていると、ほむらは下駄箱から立ち去って行った。
「まどか……後付けて見ようよ」
「でも……」
「良いから、行くよ!!」
さやかに押し切られて、まどかに選択権は無かった。二人はほむらの後を追う事になった。
ほむらの向かった先は、学校の屋上だった。フェンスにもたれかかって、誰かを待っている様である。
物陰から、ほむらの姿をうかがうさやかとまどか。
「……誰を待ってるんだろう?」
「もしかして、本当にラブレターだったとか?」
こそこそと話していると、ほむらの元にその呼び出した人物が現れた。
「……一体、何のつもりなの?」
呼び出された張本人、巴マミは明らかに不機嫌そうに表情を曇らせていた。
「あら? 私からのラブレターは気に入らなかったかしら?」
「そういう事を言ってるんじゃないの。貴女みたいな怪しい魔法少女に呼び出されたら、誰だって警戒するわよ」
マミの視線は、睨む様に尖っている。
「テレパシーの方が早いけど、キュウべえに聞きとられるのよ。それに、手紙の方が粋だと思わない?」
「ふざけないで。意味も無い用事なら、私は教室に戻るわよ」
ほむらは、フッと息を小さく吐いた。同時に、表情もキリッと引き締まった。
「呼び出したのは、昨日の事の釈明ですよ。
私は、別に先輩の縄張りを荒らそうとか、グリーフシードを奪おうとか。そんな事は考えてません」
「……そんな言葉、本気で信用できると思ってるの?」
「別に信用しなくても良いですよ。
仮に私が本気で縄張りを奪うつもりなら、魔女退治で消耗しきった後に、徹底的に痛めつけて二度と刃向わない様にする。それ位の事は平気でしますよ。
そんな人間が、わざわざ一対一の話し合いをする訳がないじゃ無いですか」
自信満々にほむらはそう告げた。
「最低の魔法少女ね……」
この考えには、マミはドン引きしていた。
(……最悪)
(そんなの酷過ぎるよ……)
隠れて盗み聞いている二人も、正直引いていた。
「話を戻します。同じ街に複数の魔法少女が居る事が、どういう事か……。先輩だって、理解出来ますよね?」
「そうね……。普通だったら、縄張り争いやグリーフシードの奪い合いになる。下手に話が拗れてしまうと、魔女退治どころか、魔法少女同士の争いに発展してしまう……」
「そういう事ですよ。
それを未然に防ぐって意味でも、舐められない様にするしかない。その為にも、あれ位の行動を起こさなきゃ、収まりがつかないんですよ。
この縄張りを共有させて貰う以上、最低限の礼儀と筋は通します。だから、この見滝原での活動を認めて貰いたいという訳です」
ほむらの言葉を聞いて、マミは少し考えを素振りを見せた。
「……一つだけ聞かせて。貴女は、誰かと仲間になる気は有るの?」
「有りませんね。
ただ、利害の一意が有れば、当然ながら協力しますよ」
「……そう」
「解って貰えますか?
お互いの均衡を保つ為ですよ。仲間になった振りをして、後から裏切る様な魔法少女は腐る程存在します。
それ位だったら、最初から適度な距離感と緊張感を持っていた方が、良い方法だと思いますけれど……」
「……」
「納得いきませんか……先輩?」
「……引っ越してきて、今更活動するな何て事言えないわ」
マミは、少し渋っていたが、結局折れてしまった。
「……感謝しますよ」
「でも、正直な事を言わせて貰うわ。私は、貴女の事が一切信用出来ない。
もし、万が一縄張りを奪う様な素振りを見せれば……その時は一切容赦しない。それだけは肝に銘じて起きなさい」
「活動を認めて貰えれば、私はそれでいいですよ……」
そう言って、ほむらは屋上から立ち去ろうとした。
「……あ、そうそう。まどか。それと、美樹さやか」
(……バレてた)
隠れているさやかとまどかは、ドキリとしてしまう。
だが、ほむらは構う事無く言葉を続けるのだった。
「盗み聞きとは、悪趣味ね。これは、貴女達が立ち入って良い話では無いのよ?」
ほむらの言葉が、グサッと突き刺さった。
「……アンタ何様のつもりなんだよ」
眉間にしわを寄せながら、さやかはいきり立っていた。
「さやかちゃん……やめようよ」
「まどかは黙ってて!!」
まどかの制止も頭に入らず、さやかはほむらに突っかかる。
「マミさんは、この街を守ろうとする立派な魔法少女じゃない!! なのに、いきなり現れたアンタみたいな魔法少女が偉そうに……」
「黙りなさい」
さやかの言葉を遮るように、ほむらはそう言った。静かでも力強い台詞。そして、刀の如く研ぎ澄まされた視線に、さやかはたじろいでしまう。
「一応言っておくけれど、私は巴マミの考えを否定する気は無い。ただ、私自身が賛同していないだけよ。どう言う考え方で活動するかは、人それぞれ……そうでしょ?」
「だけど……」
「けど、何かしら? 自分の考えと合わないってだけで、その人間の意見を簡単に否定するものではないわ」
「……」
さやかは、反論の言葉を見つけられなかった。
「今、確信できたわ。
美樹さやか……貴女は魔法少女になってはいけない。貴女は、魔法少女になる上で、一番重要な物が欠けてるわ」
「……何だって?」
「冷静さが無さすぎるわ。そんな簡単に熱くなる様では、魔女の餌になるか、余計な死体が増えるだけよ。
如何なる時も、頭を冷やせなければ、戦い続ける事など不可能。無謀と勇気を履き違えてはいけないのよ」
「……そんなの……やってみなきゃ解らないじゃん!!」
「解るのよ……。巴マミに聞いてみればどうかしらね」
そう言いきって、ほむらは屋上から立ち去って行った。
「くそ!! 何なんだよ!!」
さやかは、当り散らす様に叫んだ。
「……美樹さん。落ち着きなさい」
マミは、さやかにそう促した。
「……マミさん。さっき、転校生が言ってた事って……」
助けを求める様に、さやかの視線はマミを捉えていた。
「正直、言い方は最低で酷いものだわ。ただ……概ね内容は間違ってはいない」
「そんな……」
「確かに、酷な意見かもしれないわ。だけど、魔法少女ってそんな簡単に勤まる物でも無いのよ……」
マミは、諭すようにそう告げた。
「マミさんは……あんな奴に好き勝手言われて、何も思わないんですか?」
「……滅茶苦茶頭に来てるわね。もし、仲間になりたいって言われても、あの子だけは願い下げよ……」
「……」
「でも……あの子の考えを聞いて、少し思う事も有ったのも事実なのよ」
「思う事……ですか?」
「ええ。
願いが叶うってだけで、誰かに契約を勧めてはいけない……それだけは解った。いえ、気付かされたって方が正しいわね……。
当たり前の事を、すっかり忘れてたのよ……魔女と戦う事は、常に死と隣り合わせ……」
「マミさん……」
「魔女がどれ程、恐ろしい物か……。ベテランの癖に、それを忘れてる何て魔法少女失格ね……」
「そんな事有りません!!」
ここまで黙り込んでいたまどかは、声を荒げた。
「……マミさんの考えは、とても立派だと思います。
それに、ほむらちゃんは言ったじゃ無いですか……マミさんの考えは否定しないって」
「鹿目さん……」
「きっと、ほむらちゃんにはほむらちゃんなりの考えが有るんですよ……」
「……そうかなぁ」
まどかの言葉に、さやかは何処か納得の出来ない様子だった。
「私とさやかちゃんは、魔法少女じゃないけれど……マミさんの事を応援する事は出来ます。
それだけじゃ、頼りないかもしれないけど……私達に出来る範囲なら、マミさんに協力したいんです」
まどかは、力強く言った。
「まどかに良い所持ってかれたかなぁ……。
確かに、マミさんは命の恩人です。だけど、あたし達はそういうの抜きで、マミさんの事をもっと知りたいんです」
さやかも、そう言ってまどかの意見に追従した。
「鹿目さん……美樹さん……。ありがとうね」
マミは、感謝の言葉を述べた。そして、その瞳はかすかに光る物を浮かべていた。
その日の夕方。
昨日取り逃がした魔女を、マミは追っていた。
使い魔の魔力の痕跡から、じっくりと足取りを追う。華やかなイメージとは対照的に、実に地味な作業と言える。
(……近いわね)
魔女の行先は見えた。標的の近くまで来ている事を確信した。
ソウルジェムの点滅が、次第に速度は増していく。路地を曲がり、目前に見えたのは廃墟となった雑居ビルだ。
(……あれは!?)
ビルの屋上に、人影が見えた。しかも、フェンスから飛び出している。
そのまま、フラリと人影は屋上から飛び降りた。
(いけない!!)
咄嗟に変身を完了させて、落下する体をリボンで包み込む。落下速度は次第に遅くなり、体はゆっくりと地面に据えられた。
飛び降りたのは、女性だった。今は気絶している様で、目を覚ます気配は無い。介抱していると、首筋に奇妙な痣が付いていた。
(……これは、魔女の口づけね)
魔女は、このビルに潜んでいると、マミは確信した。しかし、このまま女性をほおって置くのも、少々気が引ける思いもあった。
「私がその人を見ておくから、貴女が魔女を倒しに行けば良いんじゃないかしら?」
その言葉を聞き、マミは思わず振り返る。
「……何のつもりかしらね、暁美ほむらさん?」
きつめの口調で、マミはそう告げる。
「魔女の痕跡を追ってきたら、偶々出くわしただけよ。魔女を追うのは、魔法少女の習性みたいな物でしょ」
「どうかしらね……。言ったでしょ? 貴女は信用できないって……」
「流石に見ず知らずの一般人にまで、手はかけないわ」
「……その言葉の通りなら、私には手をかけても良いと言う訳ね?」
マミは相当に警戒をしている様だ。
「……ならば、こうしましょう。貴女がその女性を介抱している間に、私が魔女を倒してくる。
それなら、私も貴女に狙われないで済む。それに、全ての魔女がグリーフシードを落とすとは限らない。そうでしょ?」
ほむらは、間髪入れず別の提案を出した。
「……したたかね。この魔女は、貴女に任せるわ……」
マミは渋々ながら、ほむらの提案を受け入れた。
「恩に切りますよ、先輩」
不敵に微笑しながら、ほむらは魔女の結界へと向かった。
(……仕方ないわね)
マミはフッと溜息を吐き出した。
意識の戻らない女性を介抱していると、反応を嗅ぎ付けたのか、キュウべえも現れた。
「やぁ。どうやら、暁美ほむらに横取りされたようだね」
「……キュウべえ」
マミはキュウべえを見つめた。
「君がこうも簡単に手玉に取られるなんて、思ってもみなかったよ」
キュウべえの言葉に、マミはムッとした顔付きになる。
「手玉に取られてないわ。今回は、この人を介抱する必要があったんだし……」
「そういう事さ」
「……どういう事よ?」
「暁美ほむらの実力からすれば、強引に横取りする事も可能だ。
しかし、不可抗力を上手く利用して、奪う事無く魔女を仕留める様に仕向けている。彼女は、恐ろしく頭の切れる魔法少女だね」
「…………」
「冷徹でいて狡猾。そして、強い。ある意味、最も敵に回してはいけないタイプさ」
「……キュウべえは、随分とあの子の事を買ってるのね」
「君の実力を否定する訳じゃ無いよ。ただ、暁美ほむらが異常なのさ……」
「その様ね……」
マミの表情は、実に憂鬱そうだ。
暫く時間が経過すると、女性はゆっくりと眼を覚ました。
「……こ、ここは? あなたは一体……?」
女性は周囲を見回しながら、キョトンとしていた。
「……たまたま通りかかったら、ここであなたが倒れていたんですよ。お怪我は有りませんか?」
マミは、女性を不安にさせない様に、ニコッと微笑んで見せた。
「は、はい……。特には何とも……」
そう言って立ち上がろうとするが、女性の体は酷く震えており、真っ直ぐには立っていられなかった。
「大丈夫ですか!?」
「何とか……大丈夫そうです」
気丈に振る舞っているが、女性は一人で帰る事は不可能だろう。
「……家まで送りますよ」
相手の体を支えながら、マミはそう言った。
「はい……すいません」
顔を青白くさせ、女性は弱弱しくなっていた。
≪これって、口付けの影響かしら……? それとも、落ちる時の光景が、本能的におぼえているのかしら……?≫
マミはテレパシーでキュウべえに聞いた。
≪どちらかと言えば、前者だね。魔女の口付けは、精神面に大きく影響を及ぼすよ≫
≪そう……≫
このまま、暁美ほむらが魔女に負けるとは考えにくい。そう判断したマミは、一つ提案を挙げた。
≪ねぇキュウべえ。……暁美ほむらの様子を見ててくれないかしら。私は、この人を家まで送ってくるから≫
≪僕は一向に構わないよ。そういう事なら、後でまた落ち合おう≫
≪よろしくね≫
女性を気遣うマミは、タクシー会社に電話をかけるのだった。
女性を自宅まで送り届けると、辺りはすっかりと暗くなっていた。雲一つ無く、月明りと街灯で見通しは悪く無い中、マミは帰路に付いている。
(……暁美ほむら。彼女は、何を狙っているのかしら)
マミの中に、ほむらに対する疑念が渦巻いていた。
(……協力を求める訳でも無く、縄張りを奪う訳でも無い。それでいて、あんな行動を取る魔法少女は、初めてだわ……。
キュウべえの言ってた通り、強い上に頭が恐ろしく切れる……。狙いが解らない以上、こっちから手を打つ事も出来ないなんてね……)
幾つかの推測を思い浮かべるが、決定的な策は見つけられない。
「……はぁ」
思わず、大きなため息を吐き出していた。
(……考えてても仕方ないわね。コンビニでケーキでも買って帰ろ……)
進路を変えて、公園を横切るように歩いていると、一番会いたくなかった人物がベンチに座って待ち構えて居た。
「ここで待っていれば、貴女に会えるってキュウべえが言ってたわ」
ほむらに声をかけられて、マミは心底嫌そうに表情を歪める。
「……待ち伏せのつもりかしら。とうとう、本性を現したのね?」
マミは苛立っている様で、口調もきついものだ。
「随分と嫌われたものね……。ま、無理も無いけれど」
「今度は何のつもり? 言ったわよね……素振りを見せたら容赦しないって」
「私は、貴女に話したい事が有るから待っていたのよ。今朝は、部外者が居たから、話さなかったけれど……」
「……信用出来ないわね」
マミは極めて警戒しているが、ほむらはお構いなしに口を動かし始めた。
「……鹿目まどか。彼女だけは、魔法少女として契約させてはいけないわ」
「あら……貴女も気が付いて居たのね。彼女の素質を……」
「そうよ。正確には、知っていたと言う方が正しいかもしれないわね」
「自分より優れた才能が有る。だからこそ、鹿目さんに契約されると、商売敵が増えてしまう……。貴女みたいな魔法少女なら、確かに契約されると困るかもしれないわね。
自分よりも強くなりそうな芽は、早めに積んでおく。丸で、いじめられっこの発想ね」
「……」
「確かに、鹿目さんが契約するかどうかは、私が口を出す所では無いわ。
ただ、彼女は貴女の様に非道で残虐な考えは持ち合わせていない。もし、魔法少女になったとすれば……きっとこの街を護る為に戦ってくれるでしょうね」
マミは、ここぞとばかりに捲し立てる。今まで好き勝手言われたお返しとばかりに。
「一つ聞くわ。貴女は、鹿目まどかや美樹さやかに契約して欲しいのかしら?」
「……それを貴女に言う必要は無いわ」
ほむらはフッと息を吐いてから、言葉を吐き出す。
「私の様な卑劣な考えの持ち主が現れれば、他の魔法少女を殺しかねない。経験の浅い、契約仕立ての魔法少女ならば尚更危険。
そう考えて、貴女はあえて契約を考える様に伝えたのでしょう?」
「……何が言いたいの?」
「仲間を手に入れられるチャンスを潰されて、尚更私が気に入らない。違ったかしら?」
「……違う。それは違うわ!!」
マミは、思わず声を荒げた。
「……だけどね。私は何があろうと、新たな魔法少女を増やす事には反対なのよ」
「鹿目さんや美樹さんの様な、立派な考えを持つ子が魔法少女になれば、縄張りを争う事は減ると思うわ……。魔女を倒す事も楽になるでしょうし……」
ほむらとマミの意見は平行線だった。ここまでは。
「……私が断固として、契約に反対する理由は、縄張り争いうんぬんじゃないわ。
ソウルジェムの本当の秘密も……グリーフシードの正体も……インキュベーターの目的も知ってるからよ!!」
「……!?」
ほむらは力強く言い切った。
とりあえず、ここまでです。
改行は……ごめん。今更、やるのがめんどくさすぎて……。
祝日なのに、仕事だった。
続きを投下します。後り、二話。
10.日常
ワルプルギスの夜が襲来するまで、後二日。本日は日曜日である。
決戦に向け、各自の思いは如何なる物なのか……。
御崎家。
筆が進まない海香は、ストレス解消に昼食を作っていた。
「……何かこう、サクッとアイディアは出ないのかしら」
包丁で食材を切り刻む海香の頭部には、見えない角が生えていた。
「そう言われてもねぇ……。
そもそも決戦前だから、そんなに切羽詰って小説書かなくても良いんじゃない?」
カオルは、自分の席に座りながら、そう言った。
「それは出来ないわ。私の、小説家としてのプライドが許さないの」
海香は、そう言い切った。
「……さいですか。
でもさ。一つ思ったんだけど、あのほむらって子を主人公にしたら、面白い小説書けそうじゃない?」
カオルはニヤニヤとしながら、海香をおちょくる。
「嫌よ。私が書きたいのは、恋愛とか青春なの。
あの子が主役じゃ、仁義無き戦いになってしまうわ」
海香は、即刻否定した。
そんな中、かずみはまだ部屋に居た。
ベッドに寝たまま、天井を見上げていた。
(……解んない)
払拭できない疑問を、考え続けていた。
(あの子……。
上手く逃げるって言ったけれど……本当に逃げられるの? 一度は上手く逃げられても、もう一度逃げられる保証は無い。
そもそもあの子は、そんなに分の悪い賭けをする様にも思えない……)
かずみは、柄にもなく、難しい顔のままだ。
(……目的の為なら、手段を択ばない。そういうタイプは……)
かつて戦い、そして散って行った魔法少女達の姿が、かずみの脳裏をかすめていった。
「かずみー。ご飯出来たよー」
「うん。今行くよー」
カオルに呼ばれ、かずみはベッドから起き上がった。
市民病院の屋上に、さやかと仁美。そして、恭介は居た。
「今日も良い天気だね」
晴れ渡った空を仰ぎ、さやかは笑顔を見せた。
「そうですね。上条君が無事に退院したら、何処かにお出かけしましょう」
微笑みを見せながら、仁美はそう提案を出した。
「うん。
その為にも、リハビリを頑張らないとね。僕の右手は、治らないけれど……また歩く事は出来るから」
恭介の顔は、憑き物が落ちた様に、すっきりとしていた。
――数日前。
ほむらに諭された翌日。
さやかは、覚悟を決めて、恭介へのお見舞いへ向かった。
病室の前に立ち、跳ね上がりそうな心拍数を、抑えようとする。
(落ち着かなきゃ……。私が落ち着かなきゃ……)
大きく深呼吸。そして、意を決して扉を開いた。
「……よっ。看護婦さんかと思った?」
「……さやか?」
予想通り、恭介の面持ちは暗い。
しかし、何時に無く真剣な表情を見せるさやかに、恭介は少し面を食らっていた。
「ねぇ……恭介。
少しだけ、話せない? どうしても、話しがしたいの」
「……僕は構わないけど」
恭介は俯いて、さやかから視線を逸らす。正直、気まずいと思っているのだろう。
「恭介。
恭介に取って、バイオリンを弾く事は、恭介の全てだったんだよね?
もしも、私の命と引き換えに、右手が治るとしたら……どうする?」
「さやか……ふざけているの?」
「答えて……恭介。
自分の望んだものが、他人を踏みにじってでも手に入るとしたら……そこまでしても、手に入れたい?」
さやかは、真っ直ぐに恭介を見つめ続ける。
「……そんな事、僕には解らないよ!!」
恭介は、怒鳴る様に声を張り上げた。
「僕だって、自分がどうしたいのか、解らないんだ!!
バイオリンを弾く事が、僕の全てだったんだ……。今まで弾けた曲も、弾こうとしてた曲も……全て失ってるんだよ!?
そんな僕に、どうしてそんな質問をするんだよ!!」
バシン、と乾いた音が、病室に響いた。
さやかは、恭介の横っ面を引っ叩いたのだ。
「……!?」
恭介は、呆然とさやかを見つめる。
「恭介……どうして解らないの?」
さやかは、瞳に涙を溜めていた。
「……どうして、バイオリンを弾く事に拘るの?
それが、恭介に取って掛け替えの無い物だったのは解ってる……。
だけど……無くした物を忘れられなくて、ずっとその場にしゃがみ込んでいるだけじゃない!!
後ろばかり見て、前さえも見えなくなって……。気が付いたら、周りの事も見えなくなってて……。
結局見えて居るのは、事故に合ったその事実だけ……。
イジけたまま、バイオリンも握ろうともしないで……無くした事のせいに全てしてるだけじゃない!!
どうして、進もうとしないの!! 右手がバイオリンを弾けなくても、動かす事は出来るじゃない!!
この、意気地なし!!」
泣きながら、さやかは叫んだ。そして、病室から飛び出して行った。
「…………」
恭介は、俯いて何も出来ないで居た。
「か、上条君!? さやかさんと何かあったんですか!?」
入れ違いで、病室に入ってきたのは、仁美だった。
フルーツの盛り合わせを、棚の上に置き、慌ただしく恭介の元に駆け寄った。
「……し、志筑さん?」
「い、今さやかさんとすれ違ったんですの……。だけど、慌てて走って、何処かに行ってしまってて……」
仁美は、動揺しすぎて、パニック状態に陥っていた。
「志筑さん……お願いがあります……。
さやかを……さやかを追いかけてください!!」
「は……はい!!」
凄まじい剣幕で言われ、仁美はさやかを追う様にして、病室から慌てて退室した。
一人だけ残った病室で、恭介は右手を壁に打ち付けた。
「……僕は……世界一の愚か者だ」
悔しさを噛み締める様に、嘆いてしまった。
仁美は、病院中を駆け回った。そして、さやかの姿を見つけたのは、結局屋上だった。
「……さ、さやかさん。ここに居たんですね」
壁にもたれて、力無くうなだれるさやかに、仁美はゆっくりと歩み寄った。
「仁美……。
あたしじゃ、やっぱり無理だったよ」
「え……?」
「恭介の奴さ……事故以来右手がダメになってたんだ。
バイオリンが弾けなくなって、アイツ落ち込んでて励ましてたけど、どうにもならなくてさ。
思い切って、立ち直らせようとしてみたけど……あたしは恭介を怒らせただけだった……」
さやかは、ポロポロと涙をこぼしていた。
「あたしって……ホントバカ……。本当にバカだよ……」
「そんな事有りません!!」
仁美は、はっきりと告げた。
「さやかさんは、自分に向き合って……勇気を出した結果ですのよ?
今、上条君の病室に行った時……凄い顔で、さやかさんを探してくれとお願いされました」
「……え?」
「まだ、事情は掴めてませんけれど……上条君はさやかさんを必要としてると思います」
「……」
「それに……私では、上条君にそんな事は絶対に言えませんの。
幼馴染だからこそ……はっきりと物を言えるんだと、私は思います」
仁美は、さやかを真っ直ぐに見つめた。
「……仁美って、お人好しだよね。
こんな状況で恋のライバルを励ますなんてさ……」
さやかは、笑みを作りながら、手の甲で涙をぬぐった。
「抜け駆けも、横取りもしたくないと、私は言いましたわよ?」
「ハハ……。何処かの誰かに、仁美の爪垢を煎じて飲ませてやりたいわ」
そう言って、さやかは笑みを取り戻していた。
「……そうですか。
それと、上条君に告白するのは、延期になりますね。フェアでは無いんですもの」
そう言いながら、仁美も笑顔を取り戻していた。
――現在。
さやかは、澄み渡った青空を見上げたまま。
「さやか? どうかしたの?」
恭介は、そう声をかけた。
「ううん。何でも無いさ」
さやかはそう答えた後、フッと溜息を吐き出した。
「フフ。可笑しなさやかさんですね」
仁美は、温和な表情で見つめていた。
(……ほむらが言ってたみたいに、私達が契約するしか無くなった状態になったら……。
絶対にまどかには、契約させられない。
あたしが契約して……恭介や仁美を護るんだ。例え、ゾンビでもバケモノでも構わない。
あたしの願いで、ワルプルギスの夜を消し去るんだ……)
さやかは、万に一つの可能性になった時。
その身を捧げる覚悟を決めていた。
杏子とゆまは、マミのマンションに訪ねてきた。
「よっ。遊びに来たぜ」
「マミお姉ちゃん、こんちわー」
インターホンを押さず、ドアを開ける杏子。
「あら? 随分と早かったわね」
そして、マミは微笑みを見せながら出迎えた。
「まぁね。魔女が居ないなら、アタシら暇だしさ」
杏子はさっさと上がり込もうと、ブーツのチャックを下ろした。
「平和がいちばんだよ!!」
ゆまは、エッヘンとばかりに、そう言った。
「ふふ。本当にそうね。さ、上がって待ってて。もうすぐケーキが焼けるから」
「よっしゃ!!」
「やったー♪」
杏子とゆまは、遠慮なしとばかりにリビングに向かい、マミはキッチンに向かった。
テーブルを囲み、魔法少女三人でお茶会を楽しむ。
「本当に、この平和が続けば良いのにね……」
そんな中、マミはポツリと呟いた。
「でもよ。魔女が出なきゃ、アタシら生きられねぇんだ。あんまり平和すぎるのも、考え物さ」
ニヤニヤしながら、杏子はそう言った。
「それもそうだけどね。
本当に、ワルプルギスの夜が来るのかしら?」
「そりゃ、アイツしか解らん話だ。
だけどさ……。アイツに、その話を持ちかけられた時にさ。アタシは、昔にマミと話してた事を思い出したんだ……」
杏子は、少しもの思いにふける様な表情を見せる。
「キョーコ?」
ゆまは、口元にクリームを付けたまま、杏子を見た。
「ねぇ、ゆまちゃん。
私達、昔は一緒に戦ってたのよ」
マミは、ゆまに視線を向けた。そのまま、ティッシュで口元を拭いた。
「そうだったんだ」
ゆまは、表情を躍らせる。
「ああ……随分前だけどな」
ふぅ、と息を吐き出して、杏子は再び口を動かす。
「ほむらの奴に協力を求められた時だ。マミの事を聞いた時は、正直信じられなかった。
正義の味方なんて物を本気でやってる魔法少女が、あそこまで滅茶苦茶な魔法少女に協力する。何かの間違いかと思った。
でも、ソウルジェムの事を全て聞いて、納得がいったよ。しかも、魔女に生まれ変わった時の約束までしてる何て、思いもしなかったわ……」
噛み締める様に、杏子は独白する。
「そうね……。その話を聞いた時、私は死にたいと思った。だけど、自分の命を自分で終わらせる。それが、本当に怖かったの。
後で、イカサマだった事を聞いたけど、あの時の暁美さんは……間違いなく本気の眼をしてた。
もし、知らなければ、ある意味幸せだったかも知れないけれど……生き抜く事は出来ないでしょうね」
マミは瞳を閉じて、そう答えた。
「やらしさも汚らしさも、剥き出しにしてる。
それが、暁美ほむらの強さかもしれねーわ。ただ、あそこまでは出来ねーし、やりたくねー」
杏子は、笑いながら断言した。
「それは、同感ね……」
マミも笑みを見せていた。
「ねーねー、二人とも。
ゆまはほむらお姉ちゃんみたいになれるかな?」
「それは、絶対に止めなさい!!」
ゆまの言葉に、二人は同時に突っ込んだ。
美国邸。
「うーん、織莉子の作ったホットケーキは、世界一だよ」
キリカは、そう言いながら、特性ホットケーキを頬張る。皿から溢れそうな程のシロップをかけたホットケーキに、味もへったくれも無いのだが。
「おかわりはまだまだ有るのよ。幾らでも、焼いてあげるわ」
満面の笑みを見せながら、織莉子はそう言った。
その言葉を聞くと、キリカは持っていたフォークを、テーブルの上に置いた。
「どうしたの?」
「私は織莉子に出会えなきゃ、もっと下らない人生を送っていただろうね。
何もかも詰まらなくて、そこに有るのは退屈だけ。エネルギーの発散の仕方さえ解らない、いじけた子供のままだっただろう。
改めて言わせて貰いたいんだ……ありがとう」
キリカは、深く頭を下げた。
「キリカ……頭を上げて。お礼を言うのは私よ」
織莉子の表情は、キリッと引き締まった。
「私は、キリカが居なければ、とっくに壊れてたでしょう。
私が私である。その意味を、知る事が出来たのだから……。
私の夢を叶える為には……隣に貴女の存在が必要なの」
「……もちろんだよ。一緒に行こう」
織莉子の問いに、キリカは力強く答えた。
まどかの自宅。
部屋で、パパの特性のココアを飲みながら寛いでいた。
「本当に……私は世界を滅ぼせる力が有るのかな?」
自問自答するが、一人でその答えが出てくる訳が無い。むしろ、そんなお伽話を、真に受けろと言う方が無理である。
(だけど……ほむらちゃんやマミさんは、私を護ってくれた。
そして、魔法少女にならない様に、手を打ってくれたんだ……)
残り少なくなったココアを、全て飲み干す。
(皆、きっと街を護ってくれるよ……)
そう信じていた。
ただ……まどかは、ほむらと出会う前に、一度見たあの夢の光景が、頭から離れなかった。
ほむらのアパート。
ほむらが黙々と武器の整備をしている間、キュウべえは無言で見続けていた。
「……ずっと見てる割に、喋らないのね。気味が悪いわ」
耐えかねて、ほむらはポツリと呟く。
「過去に、ワルプルギスの夜に対して、複数回挑んだ魔法少女は居ない。
君は、あらゆる情報を握り、あらゆる戦術を繰り出そうとしている。
そこで聞きたい。
ワルプルギスの夜に勝てると思ってるのかい?」
「……負けるつもりで戦う馬鹿は居ないわ」
キュウべえに向け、ほむらははっきりと言いのけた。それ以上、会話が進む事は無かった。
そして、二日後の明朝。
見滝原市全域に、避難勧告が発令された。
今回はここまで。
次話で、最終回になります。
九時前後に、投下を開始するので、しばしお待ちください。
皆様。
お付き合いいただき、ありがとうございます。
ラストです。
11.決戦
「見滝原市全域に、避難勧告が発令されました。
住民の方は、速やかに避難所に移動の方をお願いします」
アナウンスが、町中に響く。
暴風が吹き、黒く分厚い雲が、空を覆う。
嵐来たるその日は、世界の命運を握っている事を、知る人は一握りだけ。
避難所に退避しているまどかは、窓の外の荒れた天候を見続けていた。
「……まどか。やっぱりここに居たんだ」
「さやかちゃん……」
後ろから声をかけてきたのは、さやか。表情には不安がにじみ出ていた。
魔法少女以外で、この嵐の原因を知っているのは、この二人だけである。
「皆……戦ってるのかな?」
まどかは、振り絞るような声だった。
「解んない……。
だけど……マミさんもほむらも居る。理由は色々だけど、魔法少女達で力を合わせてるんだ。
あたし達が信じなきゃ……」
気丈に振る舞って、さやかはそう言った。
「そうだよ……そうだよね……」
まどかも、力の無い笑みを作って、そう答えた。
魔法少女達が控える、ビルの屋上。
誰も声を出す事が出来ない。緊張感が張りつめ、胃から中身が飛び出しそうな気分だった。
冷たい暴風に耐えながら、有る一点を見続ける。
離れてても解る程強大で、酷く歪んだ禍々しい魔力。
一か所から、溢れんばかりに滲み出ている。
マミは、震えた声で、一言だけ放った。
「あれが……ワルプルギスの夜……」
立ちはだかる魔法少女は、暁美ほむらただ一人。
世界の終焉を、何度も見てきた。免れない崩壊と、変えられない運命に、逆らい続けてきた。
「ここが私の戦場よ……」
空間の歪みから、魔女が姿を現していく。
――5
心臓が高鳴る。
――4
体中が震えだす。
――3
汗腺から汗が噴き出てくる。
――2
己の全てを使い。
――1
暁美ほむらは挑む。
――開演
「キャハッハッハッハ……キャーッハッハッハ……」
【舞台装置】魔女 ???(通称:ワルプルギスの夜) その性質は【無力】
笑い声を上げながら、宙を舞う巨大な魔女。ワルプルギスの夜が、ついに姿を現した。
――カチン。
同時に、ほむらは盾に魔力を込めて、時間を止めた。
(……どんな攻撃力の有る武器を使っても、本体を撃ち抜けなきゃ話にならない!!)
取り出したその兵器は。
――カチン。
再び時が動き出す。
「キャハハ……?」
ワルプルギスの体と本体である歯車を接続する軸には、ガッチリと二本の太いワイヤーが絡みついていた。
「……大型兵器ならぬ、大型重機よ!!」
二台の大型クレーン車を使い、軸からガッチリと拘束。
400トンもの重荷を落ち上げるクレーン車二台で、地上から全力で引っ張る。これでは、ワルプルギスの夜とは言え簡単には動けない。
「ここからよ!!」
更に、バズーカー砲にロケットランチャー。現代兵器を次々に取り出し、ワルプルギスの本体に向けて構える。
ドカン、と爆炎を上げ、砲弾やミサイルが次々と命中。本体の歯車を、的確に攻撃していく。
しかし、動けないワルプルギスも、使い魔を次々と生み出す。
そして、ほむらに向かい一斉に襲い掛かる。
「うぐっ……!!」
魔法少女の影は、弓矢でほむらの腹部を貫く。
更に、別の影は、ほむらを背中から叩き斬った。予想外の位置からの斬撃で、ほむらは弾き飛ばされた。
「……まだよ。まだまだ……!!」
痛みを食いしばり、立ち上がる。
再びミサイル砲を担いだ。そして、ワルプルギスの本体を狙い、トリガーを引く。
ドン、と歯車から爆炎が立ち上った。
(使い魔に構ってられないわ……。
アイツを……ワルプルギスの夜だけを狙い撃つ!!)
使い魔の攻撃を無数に受けながらも、ほむらは攻撃の手を緩めない。
丸で、弓矢を受けながらも、死して立ちはだかった弁慶の様に。
ビルから、激戦を見下ろす魔法少女達。
自然と作っていた握り拳は、小さく小刻みに震える。
「神風特攻だなんて、レベルじゃないわ……。
あんなバケモノ相手に、一人で挑む何て無謀よ……」
海香は、戦慄の余り背筋が凍りつく。
「見てらんねぇよ……。いくら何でも、あんなやり方じゃ体がもたねぇぞ!!」
杏子は、今すぐにでも向かいたい衝動を抑えきれない。
「……どうして。どうして、あんなにして戦うの!!
私達も居るのに……」
かずみは、半泣きで叫ぶ。痛々しいまでの玉砕戦法は、見ている心を絞め付けた。
「ちくしょぉ……。
構うもんか!! 行こうよ!! これじゃ、作戦だって通用するか解らないだろ!!」
カオルは、腹が立っていた。この状況下で動かない自分に。
「ゆまも行くよ!!
あのままじゃ……お姉ちゃんは死んじゃうもん!! ゆまが行って、お姉ちゃんを治さなきゃ!!」
もはや、我慢は出来なかった。約束違反と言えど、ほむらの元へ向かう。
そうするつもりだった。
しかし、行こうとする先に、鉤爪からの斬撃が飛び交った。床に何本かの傷跡が走る。
「生憎だけど、ここは行くべきじゃないね」
キリカは、淡々とした様子で言った。
「戦術を編み出したのは彼女。
この状況は、彼女が作り出した事ですよ。手助けする必要がありますか?」
織莉子は、うっすらと笑みを見せながらそう告げた。
「てめぇ……。
信用する気は無かったが、裏切るつもりか?」
杏子は、槍を構えだして、織莉子とキリカを睨みつけた。
「私達は、ワルプルギスを倒し、その後に鹿目まどかを殺す事が目的。ただ、その為に手を組んだだけ。
彼女が生きようと死のうと、知った事では有りません。
むしろ、彼女が居なければ……私達の計画は、確実に遂行できるのですよ?」
織莉子は、当然とばかりに言い張る。
「織莉子と私の狙いは、その一点さ。
本人も言ってたじゃないか。仲良くしろとは言って無い、とね」
そして、キリカも追従した。
この土壇場での裏切りに等しい行為は、織莉子とキリカが逆転を狙った故の物。
元々、組んでいた訳では無いが為の、悪い部分を露呈してしまったのだ。
――シュン。
複数の黄色いリボンが、瞬時に飛び交った。
仲間の魔法少女達を、次々と拘束していく。
「…………」
一言も話さず、マミは全員を睨みつけた。
「何だよ……。何で、アタシ達まで捕まえるんだよ!!」
不服とばかりに、杏子は捲し立てた。
しかし、マミは無言のまま、屋上の鉄柵にまで歩み寄った。
――ゴン!!
太い鉄柵を、マミは思いっきり蹴りつけた。
グニャリと、飴細工の様に曲がった鉄柵を見て、一同はゴクリと息を飲む。
「……貴女達は、黙って見てる事もできないの?」
マミは、今まで誰にも見せた事の無い、怒りの表情で全員を睨みつけながら、冷たい声で静かにそう言った。
この中で、一番怒っていたのはマミだった。
温厚な人間が怒ると後が怖いと言われるが、マミはまさにそうだった。では、何に対して怒っているか?
ベテランの癖に、何もしていない自分に。
自らの計画の為に、他の人間を切り捨てようとする仲間に。
約束も、ろくに守れない仲間に。
そして、身勝手な事ばかりして、単身で挑む仲間に。
何もかもに、怒り狂っていた。
(……暁美さん)
ただ、見守る事だけ。それが、今出来る、たった一つの選択肢だった。
残りの武器も少ない。
身体能力の強化に全ての魔力を注ぎ込んで、使い魔の攻撃を耐え凌ぐ。時間停止を使っていないとは言え、魔力の消費は極めて早い。
しかし、使い魔の数は増える一方。
(……もう少し……もう少しの辛抱よ!!)
大型の武器はもう無い。
ライフルで、歯車を撃ちまくる。的確に撃ち抜くが、先程の武器に比べても威力は数段落ちる。
食い止めるクレーン車も煙を上げ始め、エンジンはオーバーヒートしている。
魔力を回復させる時間も無い。
ほむらは、解っていた。もう、自分の限界が近い事を。
(そろそろ……本気を見せなさいよ……)
それでも、一心不乱にワルプルギスを攻撃し続ける。
「ねぇ……ワルプルギス!!」
キレた様に、ほむらは叫んだ。
その時だった。
ブツン、とクレーン車のワイヤーがぶった切れた。勢い余って、クレーン車が横転し、建物の群れに突っ込んだ。
そして……。
「…………」
ワルプルギスの夜は、笑いを止めた。
ゆっくりと、姿を反転させていく。
歯車を地面に落とし、正立の姿をついに見せたのだ。
力無き魔法少女を、全力で仕留める為に、本気を出す。
ほむらを見下ろす様に、ワルプルギスが立つ。
「本体にあれだけ撃ち込まれれば、そりゃ怒るわよね……」
しかし、ほむらの眼に、諦めの色は無い。
(ここからが正念場よ……)
手に持っていた機関銃を、盾の中に片付けた。
使い魔の動きは、格段に活発になる。
ほむらに狙いを定め、何十体の魔法少女の影が迫りくる。
(……ここからよ!!)
怪我を追って、動きの悪い体を、強引に動かす。
応急処置を施す魔力も残っていない。そんな悠長な真似をすれば、使い魔の餌食になるだけ。
(……予想より引き延ばせた。後は、上手く誘い込むだけよ!!)
ほむらは、撤退する予定のライン。科学薬品の工場に向けて、駆け出した。
影魔法少女達は、ほむらに再三攻撃を仕掛ける。
「くっ……!!」
命中や致命傷は避けながら、ほむらは全力疾走。
ジグザグに走り回り、狙いを定めさせない。
ドン、とワルプルギスの放った光線が、アスファルトに大穴を空けた。
(今の状態であれを受けたら、一溜りも無いわ……)
冷や汗をかきながらも、ほむらは回避し続ける。
そして、塀を飛び越えて、工場の敷地内に侵入。
影魔法少女達も、次々と飛び越えてくる。
(……あそこよ!!)
ほむらの眼に写ったのは、薬品を貯蔵する、野外に接地した巨大なタンク。
看板には「危険物第1類」と示されている。
「……これで、一発逆転よ」
ほむらは、小さく呟いた。
ドカン、と建物を破壊しながら、ワルプルギスの夜も、ほむらを追いかけてきた。
あれだけ大量に居た影魔法少女の姿は、全て消えていた。
ワルプルギスの夜は、直々に暁美ほむらに止めを刺すつもりだ。
(……とっておきは、最後の最後に使う物)
ほむらが、盾から出したのは、ダイナマイト。
(……私が初めて魔女を仕留めたのも、自作のパイプ爆弾だった……)
しかも後ろに控えるのは、可燃性の化学薬品のタンク。
(……これも、何かの因果なのかしらね……)
どれ程の大爆発が起きるか等、語るまでも無い。
(砂時計も落ち切った……。戻れないし……止められない……)
そして、ワルプルギスの夜は、目の前に壁の如く立ちはだかっていた。
(でも……思い残す事は何も無い……)
溜めこんだ魔力を、ワルプルギスは放出しようとしている。
(幸せになってね……まどか……)
同時に、ダイナマイトの信管にも、電気が走った。
(……ざまあみろ……インキュベーター!!)
――ドオォォォォォン……。
薬品工場から、途轍もない火柱が立ち上った。
爆発、炎上。工場の敷地全てが、真っ赤に燃え上がる。
待機していた者は、衝撃波を受けて、姿勢を乱す。
今までの突風では無い。爆発の熱風が、体中を撫でた。
本気の自爆特攻。
ワルプルギスの夜は、どでかい火柱に包まれた。
「あ……暁美さん」
マミは、呆然と上がった火柱を見つめていた。
「うそ……だよ……ね」
ゆまはポロポロと、涙を溢れさせた。
「ば……バカ野郎……。上手く逃げるんじゃねーのかよ!!
あんな爆発の中で、たった五秒じゃ一溜りもないじゃねーかよぉ!!」
杏子は、感情をむき出しにして叫んだ。
「そこまで……そこまでしなくてもいいじゃんよ!!
何で……何でなの……?」
かずみは、地面にへたりこみ、火柱を直視出来ない。
「あんなの……技でも何でもないよ……。犬死するつもりは無いって言ってたのは……自分だろ……」
カオルは、首を横に振る。
「彼女は……最初からこのつもりだったのね……。死ぬつもりで……それで居て、仕留められなかった時に、私達に託す……。
馬鹿よ……。手段を択ばないにしても……自分まで犠牲にしてたら……何にもならないじゃない!!」
海香は、この現実を受け止めきれない。
「……」
キリカは、一言も喋らない。ただ、立ち上る煙を、目で追いかけるだけ。
(……何故なの?)
織莉子は、大量の冷や汗を、背筋に感じていた。
(……さっきまで見えて居た世界の終焉が見えない……!?
未来が……変わってる!?
厄災が降り注がない……何故なの!?
暁美ほむらは……何をしたと言うの!?
鹿目まどかから……最悪の魔女が生まれない!?)
その予知は、確実に未来を示していた。
(あの子が……暁美ほむらが出し抜こうとしてたのは……私達じゃない……)
困惑の余り、体中が震える。
暁美ほむらの本当の狙いに気が付いた時、織莉子は体中の震えを、抑える事が出来なかった。
(キュウべえだ……)
青ざめた顔で立ち尽くすしか、織莉子は出来なかった。
そして、契約請負人がその姿を見せた。
「ワルプルギスの夜は、完全に消滅したよ。
このゲームは、暁美ほむらの一人勝ちの様だね」
キュウべえは淡々と言ってのけた。
「ゲームですって……?」
マミの静かな声には、怒りが滲んでいた。
「元々、鹿目まどかの契約を賭けて、僕と暁美ほむらは話を通していたんだ。
だが、彼女一人で、ワルプルギスの夜を倒したんだ。僕は鹿目まどかと契約する事は、未来永劫無いだろうね」
キュウべえは理屈っぽい答えを述べた。
ズバン、と地面を槍が抉った。
キュウべえは、辛うじて避けていたが、杏子はキュウべえを睨みつけたまま。
「今すぐに消えろ……。何体出てきても、潰し続けるぞ……」
杏子は、即座に斬りかかれる姿勢で、キュウべえに槍を向けた。
「ヤレヤレ……。無造作に潰すのは、コストの無駄だからね……。
エネルギーの回収は、まだまだ先送りになりそうだから、節約に越したことは無い。君達とは、暫く会わない方が良さそうだ……」
吐き捨てる様に言い、キュウべえはその姿を消していた。
昼前には避難指示が解除され、市民達は自分達の家に帰宅する事が出来た。
ただし、大爆発を起こした薬品工場の消化作業は、夜を徹し行われる事となった。
美国邸。
ソファーに座り、織莉子は呆然と天井を見上げていた。
「キリカ……。
未来は変わったのよ……」
力の抜けた声で、織莉子はそう言った。
「……どういう事だい?」
キリカは、無表情のまま聞き返した。
「暁美ほむらは……最初から解ってたのですよ。
どういう手を使ったのかは解りませんが、降り注ぐ厄災を回避出来る手段を見つけていた……」
「……」
「私達では、敵わない訳だわ……。
全て、彼女の掌の上で、私達も……キュウべえさえも踊らされていただけ……」
織莉子の言葉を聞き、キリカは静かに言葉を出す。
「……織莉子。
君はこれから、どうするんだい?」
「解らないわ。
ただ、鹿目まどかを殺す必要も無いのなら……見滝原に留まる理由も無い」
「そうかい……」
キリカは、それ以上の事を聞かなかった。
美国織莉子と呉キリカの両名は、その日を境にして、見滝原市からこつ然と姿を消してしまう。
そして、その後の消息は、一切不明である。
マミに呼ばれ、まどかとさやかは、マンションを訪ねてきた。
しかし、暗い表情のマミを見て、まどかとさやかは感じる物が有った。
「……マミさん。ほむらちゃんは……?」
まどかは、決死の覚悟で聞いた。
だが、マミの首は横に動いた。
「う……嘘ですよね……。
ほむらは……殺しても死なない筈ですよ……。あんなにずる賢くて、しぶとくて……。
そんな奴が……死ぬ筈無いですよ!!」
さやかは、涙交じりの声を張り上げた。
「暁美さんは……命懸けで……魔女と戦ったの。
自らの命を絶ってまで……魔女を倒したのよ……。彼女は口先だけじゃなかった……。
目的達成の為に……手段を択ばなかったのよ。自分自身の命と引き換えにしても……」
マミはそう語った。
自然と涙が込み上げてきた。拭っても拭っても、涙を抑える事が出来なかった。
「マミさん…………。
ほむらちゃんが……私達を護ってくれたんですよね!!」
泣きながらまどかは言った。
そして、マミの首は縦に動いた。
「マミさん……マミさーん!!」
まどかはマミに抱き着いた。涙が枯れる位の勢いで。声枯らす位の大声で。まどかは泣き続けた。
さやかも、すすり泣いていた。抑えようとしても、抑えられない感情を爆発させるしかなかった。
三人とも、どれ位の時間を泣いていたのか、解らない。
日が傾いて、西の空がオレンジ色に染まり出していた。
まどかは、真っ赤な目で真っ直ぐにマミを見つめた。
「ほむらちゃんは……私の最高の友達です……胸を張って言えます。
だから……私はほむらちゃんの分まで、生きようと思います!!」
固い決意を、まどかは伝えた。
それから数日もすると、魔法少女達は元の縄張りへと戻って行った。
しかし、今回の出来事を切っ掛けにし、見滝原市、風見野町、あすなろ市。
この三つの街を縄張りとする魔法少女達は、同盟を作る事となり、その名を轟かせる事となる。
エピローグ
ある日の深夜。
一人の魔法少女が、鉄塔の上から街を見下ろしていた。
「全く……。
僕がまんまと、一杯食わされる羽目になるとはね。
後にも先にも、僕を出し抜いたのは君だけだよ……」
彼女の少し後ろで、キュウべえはぼやいた。
「……言ったでしょ?
利用できるものは、何でも使う。情報もその一つなのよ……」
少女は。
暁美ほむらは、ニヤリとしながらそう言った。
服の右袖は、風に煽られパタパタと揺れ、右目蓋は傷ついて閉じたまま。
痛々しい傷を負いながらも、残った左目で街を見つめ、左腕で髪の毛をかき上げた。
「二つ想定していなかった事が、僕には有る。
一つは、君がワルプルギスの本体を、確実に攻撃出来る技量を持っていると思わなかった」
キュウべえの言葉に、ほむらは何も反応しない。
「もう一つは、君が最後まで、本当の狙いを隠し抜いてた事だ。
何かを隠している事は解っていた。だけど、何を隠していたかが、僕には読めなかった」
ほむらは、無言で髪の毛をかき上げた。
キュウべえは、なおも言葉を続ける。
「君の魔法と、鹿目まどかの因果がリンクしている事は、君が教えてくれた。
しかし、君の時間停止と時間遡行の魔法は、一か月だけの限定的な物だとは、教えてくれなかった。
まさか、魔法の効果が切れると同時に、絡みついた因果の糸も解けるなんて、想像もつかなかったよ。
そんな重要な事を隠す何て、君も人が悪いよね」
キュウべえは、ぼやく様にそう言った。
「聞かれなかったから、答えなかっただけよ」
しかしほむらは、当たり前の如くそう返した。
「更にそこまで考えた上で、自らの行動と言動で撹乱し、その事実に目を生かせない様にしつつ、大きく時間を稼ぐ。
恐らく、自分がワルプルギスを倒せなかったとしても。
鹿目まどかの因果だけは、消える様にしていたんだろう。
しかし、万が一にもだ。
鹿目まどかの因果が消えなかったら、君はどうするつもりだったんだい?」
キュウべえは、ほむらに聞きただす。
「教えないわ。
自分の手口を教える程、馬鹿じゃないのよ」
ほむらは、その一点張りだった。
「全く。本当に、君は蛇の様さ。
狡猾な手段で相手をハメる。嘘の中に真実を混ぜて、信憑性を高める。
味方にも、全ては教えないで、肝心な所はボヤケさせる。まどかの素質の高さは、彼女達には永遠の謎だろう。
時間遡行の事実を隠して、無駄なプレッシャーを与えない。
その挙句、死んだ様に思わせておいて、実はしぶとく生きているだなんてね。
これ程、切れ者の魔法少女は、他に居ないよ」
「……これでも、ギリギリまで考えて出した選択よ。
あの爆発の時だって、炎の中に巻き込まれ、逃げきれるタイミングはギリギリだった。
工場を飛び出してから、何とか回復はしたけれど、魔力はグリーフシードを丸々四つも使い切った。それでも、右目と右腕はどうしようも無かったのよ。
実際、生きてるだけでも儲け物よ」
「しかしだ……。
生きているければ、まどか達に会う事も出来る。それなのに、会う気は無いのかい?」
「無いわ。
私は、あの時死んでいるの。二度と表側で生きていく事は出来ない。
この先厄介な出来事に巻き込まれても、今回の様に上手く出来る保証は無いわ。それだったら、私は死んでいる事にした方が、絶対に良いのよ。
私の為にも、彼女達の為にもね」
「やれやれ。君の行動は、本当に解らないね」
キュウべえは、そう言いながら、空を見上げた。
「貴方には絶対に解らない事よ」
ほむらは、ふぅと溜息を吐いた。
「だったら、君はこれから、どうするつもりなんだい?」
「これからの私は、裏の世界を生きていくわ。
別に、捻くれて流されるがままに、裏の世界に行く訳じゃ無い。
一つの道標に辿り着いた時。そこから、また新しい道を歩いていく事は出来るの。
それがどんな道であれ、私の意志でその道を生きて行くわ。
だから、陰ながら、まどか達の幸せを祈らせて貰う。
私に出来る事は、それ位かしらね」
ほむらは、はっきりと断言した。
「……生き続ける事が、可能だと思ってるのかい?」
キュウべえに聞かれ、ほむらははっきりとした口調で言った。
「当然よ。
この先、何か有るか解らない。だけど、何が何でも生き抜くわ。
その為だったら……」
ほむらは、力強くそう言った。
――手段は択ばないわ
ほむら「手段は択ばないわ」 FIN
これにて、完結です。
過去に書いたまどマギSSで、良くも悪くもここまで反響の大きい話は無かったです。
色々と、賛否両論とか、言い分も有るでしょうが、自分の中ではベストを尽くしました。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
質問が有れば、それなりには答えるつもりです。
乙
本編では時間停止使えなくなった後に
まどか契約だったような…
質問としては>>450のQBの疑問の答えが知りたいかな
>>456
皆の前に、ひょっこり現れるかも、って感じですかね。
おもしろかった
過去作教えて
>>462
そんなに多くないよ。
保健委員 まどか☆マギカ(ギャグ)
ほむら「修学旅行で名古屋に来たわ」(オリジナル魔女スレとの合作)
オリジナル魔女スレのSSを二つ
魔法少女の大喜利、一と二(そのまんま)
ちなみに、このSSが最長になりますね。
面白かった。
名古屋のやつ、地元民として見逃せませんな。次回作とか予定あったら教えてくれると嬉しいなって
とにかく乙。本当に乙。
>>471
予定は未定っす。
ただ、今回の話にかなりアイディアを突っ込んだから、良い話が書ける気がしないなぁ……
471です。たびたびすまん
検索したら
『まどか「ほむらちゃん、名古屋いこ?」ほむら「ええ」』
だけ出てきたけどこれじゃないよね?
>>473
後日談でもいいんですぜ
>>475
それは、別人です。
では、皆様。明日も仕事なので、早い内に寝ます。
お疲れ様でした。お付き合いいただいて、ありがとうございました。
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