垣根「最新型冷蔵庫だ」 (412)


・禁書ss

・初春「最新型冷蔵庫……?」の続編

・垣根×初春

・キャラ崩壊(垣根が常に冷蔵庫状態)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1394288523

前スレ

初春「最新型冷蔵庫……?」
初春「最新型冷蔵庫……?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1381589499/)

あらすじ

一方通行との戦いにより、冷蔵庫に生まれ変わった垣根帝督と、垣根に関する記憶を失ってしまった初春飾利

色々あって一台と一人の同棲(?)が始まった





拙い文章ですので、ご意見頂けたら嬉しいです

また、このスレでは前スレと比べるとシリアスな展開となります



放課後

とあるクレープ店

佐天「うーん、どの組み合わせがいいかなあ……多過ぎて選べないや」

カブトムシ「何だ、昆虫ゼリートッピングのクレープは無えのか」

佐天「……うん、それは流石にないでしょ」

カブトムシ「じゃあ樹液ソースでも……」

佐天「一緒だって、それ」

カブトムシ「んだよ、新しいクレープ店がオープンしたっつうからやって来たってのにサービスが足りねえなこの店は」

佐天「苺おでんクレープならあるけどねー。ていとくん、食べる?」

カブトムシ「……学園都市って、いつの間に苺おでんに征服されたんだ……?」

ジャア、バナナアジデモ……
ウリキレダッテ
フザケンナ

初春「……佐天さんとていとくんはいつまで選んでいるんでしょうか」

初春「もう一人で食べちゃいましょうかね」

初春「……いや、でも……」

???「……」カツコツ

初春「やっぱり……」

???「……」カツコツ

初春「……うーん」

???「……」

初春「……むむむ」

???「あら、美味しそうなクレープね」

初春「ひゃいっ?!」

???「……ごめんなさい、驚かせてしまったかしら」

初春「え……あ、いえ、こちらこそ大きな声を出してしまってごめんなさい」

???「……ふふ、謝るのは此方よ」

初春(綺麗な人……)

初春(一見、私と同じくらいの歳に見えるけど……すごく大人っぽい気も……)

初春(でも、何であんなに派手なドレスを着てるんでしょうか?)

ドレスの少女「あっちの、クレープ店の前にいる……髪の長い子は、お友達かしら」

初春「え、ええ」

ドレスの少女「……そう」

初春「……」

ドレスの少女「……」

初春「……あの、あなたは誰で」

ドレスの少女「あの子の肩のあたりに、何か白いモノがあるわね」

初春「……!」

ドレスの少女「アクセサリーではないわね……動いているから」

初春「……」

ドレスの少女「……」

初春「あなたは、何を」

ドレスの少女『カブトムシ』……よね?」

初春「え……」

初春「……あれは」

ドレスの少女「……」

初春「カブトムシ、ですね」

ドレスの少女「……」

初春「….…」

ドレスの少女「そう……あれは、『カブトムシ』」

初春「……はい」

ドレスの少女「珍しいわね、あんな真っ白な体なんて」

初春「そう……ですね」

ドレスの少女「こんな寒い時期に動いているのも不思議だわ」

初春「……」

ドレスの少女「もしかして、普段は暖かい所にいるのかしら」

初春「……」

ドレスの少女「そうね、例えば……電化製品の、近く」

初春「……!」





ドレスの少女「『冷蔵庫』……の近くはどう?」



初春「あのっ、私……ちょっと用事が……すみませんが、行かないと」ガタッ

ドレスの少女「そう、残念ね」

初春「それでは……」

ドレスの少女「ちょっと待って……最後に、私を見てもらってもいいかしら」

初春「……?」

ドレスの少女「……私は、誰?」

初春「ええっと、少し服装が派手な大人びた友だーーー」

初春「……え?」

ドレスの少女「……貴女の友達、ね」

初春「……私は……知ら……な……い」

ドレスの少女「ねえ、『初春飾利』さん」

初春「何で、私の名を」

ドレスの少女「友達だから、知っているに決まっているじゃない」

初春「違う、あなたは」

ドレスの少女「……黙って、私の話を聞いてもらってもいい?」

ドレスの少女「大丈夫、あの髪の長いお友達……佐天涙子さんがクレープを選び終わるまで、それくらいの時間しかかからないから」









佐天「うわ、随分時間かかっちゃった」

カブトムシ「あんだけ迷っといて結局一番人気のクレープを選ぶんだから世話ねえよな」

佐天「ていとくんだって普通のチョコクレープじゃん」

カブトムシ「うっせえな、似てるだろ、チョコと樹液」

佐天「はいはい……初春ー!ごめーん、待たせちゃっ……て……」

佐天「……」

カブトムシ「……」

佐天「……いない?」

カブトムシ「あいつ、確かこのベンチに座ってたんだが……」

佐天「どこにいっちゃったんだろ……?」

投下終了

投下

とある廃ビル




ガチャリ

ドレスの少女「さて……この辺りでいいかしら」

初春「……」

ドレスの少女「それにしても……案外、あっさりとついて来てくれたわね」

初春「……抵抗しても意味がないでしょうから。どうせ個人情報まで掴んでいるんでしょう」

ドレスの少女「……そう、ね」

ドレスの少女「でも安心して、今は本当に危害を加えるつもりは無いから」

初春「……」

ドレスの少女「さて……手短に済ませたいところなんだけど、その前に貴女はどこまで知ってる?」

初春「?」

ドレスの少女「……」

初春「……どこまで……とは?」

ドレスの少女「……『10月9日』」

初春「!」

ドレスの少女「その日が、全てのはじまり」

ドレスの少女「覚えてるかしら?」

初春「……私が……記憶喪失になった日」

ドレスの少女「……」

初春「……」

ドレスの少女「……それだけ?」

初春「えっ……」

ドレスの少女「他に、何かあったはずでしょう……記憶喪失になる以外に」

初春「……他に?」

ドレスの少女「……」

ドレスの少女「思い出して御覧なさい」

初春「……」

初春「……あの日は……いつも通りの一日で……」

ドレスの少女「……」

初春「でも、アホ毛ちゃんに会って……」

ドレスの少女「……」

初春「……気が付いたら、病院のベッドの上に……」

ドレスの少女「……その間」

初春「?」

ドレスの少女「その間が、一番重要なのよ」

初春「……そこの記憶が無いんですよ」

ドレスの少女「それでも!……聞いたりしたでしょう、誰かに」

初春「……いえ、私に何があったかは誰も知りませんでした」

ドレスの少女「……『誰も』?」

初春「事件に巻き込まれた、とかそんな感じのことは聞かされましたけど」

ドレスの少女「……そう」

初春「……」

ドレスの少女「……ふふっ」

初春「何ですか、急に笑って……」

ドレスの少女「いえね、ごめんなさい。……少し呆れちゃったのよ」

ドレスの少女「貴女ホントに『何も』知らないの、ね」

初春「っ……」

ドレスの少女「……可哀そうな子」

初春「そんなことよりっ……早く、本題に入って下さい」

ドレスの少女「……」

初春「私の記憶喪失は今は関係無いじゃないですか」

ドレスの少女「……」

ドレスの少女「いいえ、関係はあるわ。貴女は会ってしまったから」

初春「?……会ったって、誰に……」

ドレスの少女「それすらわからない貴女に言う必要はないわ。……では、用件を話しましょう」




ドレスの少女「……冷蔵庫 TEI-TOK-N-kknを私に譲渡しなさい」


初春「…………どういうことですか」

ドレスの少女「……貴女の家にある『冷蔵庫』を下さいってこと。それだけよ」

ドレスの少女「駄目かしら」

初春「駄目に決まってるじゃないですか!」

ドレスの少女「……どうして駄目なの?」

初春「どうしてって……家に冷蔵庫が無かったらあなたも困るでしょう」

ドレスの少女「『冷蔵庫』ねえ……それなら、これはどう?」ゴソゴソ

初春「?」



札束「」バサリ


初春「!」

ドレスの少女「秋口に買ったなら、この学園都市ではもう型落ちでしょ?ここにあるお金をあげるから『最新型冷蔵庫』を買えばいいわ」

ドレスの少女「そうね、ついでに貴女の家の家電製品を一気に新調すすのはどう?」

初春「…………」

ドレスの少女「損得で考えれば、貴女はかなり得しているわよ」

初春「……」

ドレスの少女「どう?」

初春「……でください」

ドレスの少女「……え?」

初春「……ふざけないでくださいっ!」

ドレスの少女「!」

初春「ていとくんは!……お金とか、得とか、そんなもので考えられる存在じゃありません!」

ドレスの少女「……そう」

初春「……」

ドレスの少女「……貴女の『冷蔵庫』に対する気持ちは、分かったわ」

初春「なら……」

ドレスの少女「一つ、聞いていいかしら」

初春「何ですか……」



ドレスの少女「貴女にとって『冷蔵庫』は何かしら?」

初春「!」

初春「それは、どういう……」

ドレスの少女「あ、ちょっと言葉が足りなかったわね」

ドレスの少女「『冷蔵庫』が、貴女にとってどんな存在か……ってことよ」

初春「私にとって……」

ドレスの少女「友達?恋人?……それとも……」



初春「ていとくんは……私の家族です」

家族?



初春「ていとくんが、ただの電気製品だとは分かっています。分かっていて……それでも」

血縁で無い限り、男女間では友達、恋人の期間を経ずには形成し得ない心の距離




初春「それでも、ていとくんは一緒に過ごしてきた、家族なんです」

しかし、彼と彼女、初春飾利の間でその感情は確かに根付いている



初春「だから……ていとくんがいない生活なんて、考えられません……」

たとえ、それが偽りの絆でも








ドレスの少女「……家族……ね」

初春「……」

ドレスの少女「……」

ドレスの少女「ごめんなさい、初春さん」

初春「え……」

ドレスの少女「まず、誘拐みたいな真似をしたことをお詫びします」

ドレスの少女「それと、急に『冷蔵庫をください』と不躾なお願いをしたことも」

ドレスの少女「貴女は何故私がこんなことをしているかも、『冷蔵庫』がどんな意味を持っているか分からない……それだけで、甘く見ていたようね」

ドレスの少女「何より、『冷蔵庫』を保護してくれたことに感謝するわ」

初春「そ、そんな……」

ドレスの少女「それと、もう一つお詫びしなくちゃいけないことがあるの」

初春「……何でしょう?」



ドレスの少女「貴女の心を知ってしまったからには……実力行使をしてでも貴女から『冷蔵庫』を奪わなければならない」

初春「……え?」

ドレスの少女「貴女は『冷蔵庫』と近づき過ぎてしまった……」

ドレスの少女「明日の朝、貴女の部屋を尋ねるわ。その時、素直になれないようなら覚悟しなさい」

初春「そ……そんな……」

ドレスの少女「時間をあげたのは、貴女に敬意を払って。理解して貰えると嬉しいのだけれど」

初春「こんなことって……!」

ドレスの少女「……忠告しておくわ」

ドレスの少女「貴女は、あの『冷蔵庫』といてはいけない。このまま『冷蔵庫』と関わり続ければ……貴女は、必ず後悔することになる」

ドレスの少女「諦めて頂戴。もう彼は、ただの『冷蔵庫』では済まされないのだから」

途中で落ちた

テスト










ーーーーーーーーーーーーーーーー




…………る



……は……る



……初春



初春!



ーーーーーーーーーーーーーーーー

佐天「初春っ!もー、こんな所にいたの?随分探したんだよ!」

垣根「お前、何処に行ってたんだよ!勝手にふらつくんじゃ……」

初春「…………」

垣根「……?」

佐天「……どしたの、初春。何かあった?」

初春「…………て」

垣根「て?」

初春「ていとくんっ!」ガバッ

垣根「ぐあっ!きゅ、急に抱き締めるな!」

初春「ていとくん……」ギュウゥゥゥ

垣根「……お、おう」

佐天「……何だか私お邪魔虫なようで」

佐天「私、先に帰ろっか?」

初春「……ありがとう、佐天さん。今日は、ちょっと……」

佐天「ん、おっけ。まあ、落ち着いたらまた話聞かせてねー!」タタタッ

垣根「……」

初春「……」



初春「……」

垣根「ど、どうした?」

初春「……」

垣根「……」

初春「…………ていとくん」

垣根「ん……」

初春「……聞きたいことがあるんです」

垣根「……ああ」

初春「……ふぅ」

垣根「……どうした」

初春「……深呼吸です」

垣根「何だそりゃ」

初春「……」

垣根「……」

初春「ていとくん」

垣根「……」

初春「……ていとくんは、私の側にいてくれますか……?」

垣根「……いるさ。お前が望む限り、いつまでもな」

初春「ありがとうございます、ていとくん……」

垣根「……ったく、そんな当たり前のこと聞くなよ。ハラハラして損したぜ」

初春「……」

垣根「それにしても……お前、本当今日はどうしたんだ?」

初春「……」

垣根「何か、あったんだよな?」

初春「……」

垣根「……」

初春「ていとくんは……ていとくん」

垣根「?」

初春「ていとくん、もう一つ……聞きたいことがありました」

初春「ずっと、聞きたかったんです」

垣根「…………言ってみろ」

初春「……」

垣根「……」

初春「ていとくん……」

垣根「……」

初春「……ていとくんは……」










何故、私の名前を呼んでくれないのですかーーー




不思議な白色に包まれたカブトムシの瞳に僅かな黒が蠢いたのをその時確かに見た

ああ、黒だ

私はあの日もこの黒を見たのだ

その昏い瞳の持ち主が誰だったかは思い出せないけれど




そうだ

家に帰って、冷蔵庫のていとくんの目も見てみよう

何かしら思い出せるかもしれない

と、あまり関係ないことを考えた所でふと気付いた




『冷蔵庫』に眼は存在しないということを


投下終了

テスト

投下します

*注意
地の文が混じり、読みにくい
前回との雰囲気の差が激しい
少々大人向け?

「もしかしたら、呼び方なんてどうでいいことかもしれません」

「でも、最近ていとくんが私のことを『お前』って言っているのを聞くと……」

「ていとくんが……まるで……」

……

「…………」

……何だよ

「……ごめんなさい」

何で、お前が謝ってんだよ

「……」

……

「……ていとくん、私はここにいますよ」

「私は、『初春飾利』です」

「……ていとくんが私の側にいてくれる限り」

「ずっと、一緒ですよ」




何も言えなかった

そう、俺はこいつに何も言えやしない


「…………」

……

「……大丈夫、ですよね?」

……

「今から……ていとくんに話したいことがあります」

あいつは何も言えない俺を、ただただ強く抱きしめてくれた

そして、ドレスの女……恐らくは心理定規と、出会ったことを語り始めた

ようやく、こいつの様子が妙だった理由が分かった

……って、ああ、またか

今は『こいつ』って……呼んでたんだな

おいおい、心の声まで徹底してんな




……何で?


何でだろうか

何で俺は、あいつの名を呼ばない?

罪の意識?

……違う





じゃあ、何でかって?






……俺が知るかよ、そんなこと



ーーーーーーーーーーーーーーーー





垣根「」ブゥーン

垣根「」カチッ

垣根「」……ガコン

垣根「」……

垣根「」……ブゥーン



ーーーーーーーーーーーーーーーー

『いや、お前だって無理矢理こじ開けられたら何か変になるだろ』

『何でお前はそんな格好してるんだよ?!』

『……お前性格悪くね?』


ああ、最初の頃も既に『お前』呼びだったっな

『いいぜ、お前がゴキブリとは友達になれないと思っているのならーーーそのふざけた常識をぶち殺す!』

『お前の信念は誰にも負けない。例えLevel5にだって……絶対に負けない、それをしっかり覚えとけ!』

『あれ?ここは……風呂じゃねえのか?お前も服を着てるし……』


ははっ、あの頃の俺もアホな事やってたなあ

『いいこと思いついた。お前、はみ出てきた未元物質をツノの形にしろ』


……ん?

『何ィ?今度は歩脚ゥ?お前、俺を造形師と間違えてるんじゃねえのか?!』


ちょっ、一旦ストッ……

『お前のことが好きだったんだよ!』


おい、誰だ勝手に妙な記憶捏造してんのは?!


ーーーーーーーーーーーーーーーー

カブトムシ(……頭の中で喚かないで下さい)

垣根(カブトムシ!?……よくも妙な記憶を作ってくれたな、おい)

カブトムシ(作ったのではありません)

垣根(……どういうことだ)

カブトムシ(精神において、私と貴方は表裏一体……そして、私はゴキブリさんの体を基盤としています)

垣根(……?)

カブトムシ(心当たりがありませんか?)

垣根(あるわけねえだろ)

カブトムシ(……そうですか)

垣根(……って、あれ?……今更だが、何でお前意識があるんだ?)

カブトムシ(おや、気付いていなかったのですか?とっくに彼女の部屋に着いていますよ。ちなみに、彼女は夕飯作りの真っ最中です)

初春「……」トントン

垣根(いつの間に……)

カブトムシ(実は私もお食事中でして……やっぱり昆虫ゼリーは最高ですね)

カブトムシ「」ペロペロ

垣根(……)

カブトムシ(それより、私と話していて良いんですか?)

垣根(え?)

カブトムシ(話は電磁波を通して伝わっています)

垣根(……)

カブトムシ(今は、自分の中で話を完結させる時ではありません。彼女はきっと待っています)

垣根(だが、俺は……)

カブトムシ(……ウジウジしてる暇はありませんよ。では、さようなら)

ブチッ

垣根(あっ?……クソッ、あいつ自分で電磁波をシャットアウトしやがった!)

垣根(カブトムシも能力が成長してんのか?)

垣根(……何かムカつくな)




カブトムシ(どうか、貴方が悔いなき選択をすることをーーー)





垣根(……)

垣根(…………)

垣根(ハァ……)

垣根(悪いな、カブトムシ)

垣根(俺には、お前の望む選択なんか出来やしねえんだよ)

垣根(心理定規が接触してきた……これは、暗部に戻る確実なパイプだ)

垣根(丁度良い機会だったんだ。これ以上こんな所にいたら、あいつのことが……)

垣根(……)

垣根(……)

垣根(……)

垣根(……あいつの平和ボケが移っちまうからな……ん?)

ガチャ

初春「あー……この卵、賞味期限近いですね……明日食べないと」

垣根(くっ……)

バタン

垣根(きゅ、急に開けるんじゃねえよクソッ)

初春「次は、ご飯……」

垣根(……)

垣根(……ん?)

垣根「……おい」

初春「っ……て、ていとくん……何ですか?」

垣根「……米の量が、随分多いようだが」

初春「……」

垣根「目測だが、いつもの夕飯の2倍はあるんじゃねえか……珍しく量を間違えたか?」

初春「……」

初春「間違いではありません」

垣根「?」

初春「……今日は、徹夜ですから」

垣根「……徹夜……?」

初春「はい。ていとくんの解析を最後までしておきたいんです」

垣根「……!」

垣根「……解析、か」

初春「いけませんか?」

垣根「…………」

垣根「あのなぁ」

垣根「はっきり言っておくとだな」

垣根「俺は、明日の朝この部屋からカブトムシと共に消える。これはもう、変えられないことだ」

垣根「お前は、俺に聞きたいことが幾らでもあるだろう。だが、俺には答えられない。いや……答えたくない、の方が近いか」

垣根「その上、俺はお前に隠してきたこと、騙してきたことが山程ある」

垣根「薄々気付いていると思うが、俺はただの『冷蔵庫』じゃない」

垣根「……もう、いいんだ」

垣根「ここ最近、妙な文字列に阻まれてばかりで、解析もマトモに進んじゃいねえだろ」

垣根「俺のことは忘れて今日は寝ろ」

垣根「朝起きたら知らねえ間に台所の隅に知らねえ冷蔵庫が置かれてる。それだけだ。お前は、もう、いい」

初春「………………………………へえ」

垣根「……何だよ」

初春「冷蔵庫が御主人様に命令するんですね」

垣根「随分前の話を持ってきたな……わかった、捨てるんなら捨て……」

初春「捨てませんよ」

垣根「……あ?」

初春「そっちがはっきり言うなら、こっちもはっきり言わせてもらいますけど」

初春「私、ていとくんとなら本当に一生一緒にいてもいいな、って思っていたんです」

垣根「……え」




初春「朝起きるときも、ご飯を作るときも、食べるときも、通学するときも、買い物するときも、散歩するときも、遊ぶときも、お風呂に入るときも、寝るときも」

初春「ていとくんが、隣にいました」

初春「私は、本当に楽しかった」

初春「だから……私が高校生になっても、大学生になっても、社会人になっても、結婚しても、子供が産まれても、おばあちゃんになっても、」

初春「……死ぬときも」

初春「ていとくんが、隣にいると良いなって」

垣根「……だが、明朝俺はこの部屋から消える」

初春「そう、ていとくんはいなくなる」

垣根「……」

初春「…………だから」

垣根「……」

初春「…………」

垣根「?」

初春「…………」グスッ

垣根「……!」

初春「ご……っめんなさ……私……!」ポロポロ

垣根「……何で……お前が泣くんだよ……?」

初春「…………っ」グスッ

垣根「……おい」

初春「う……私……私は……」

垣根「と、とりあえず泣き止んでからにしてくれ!……それまで、待ってやるから」

初春「……っみません」ポロポロ


泣いている

涙を、流している




何故、俺の為に泣く?

何故、俺の為に涙を流す?



ああ……そういや、あの能天気女との約束、破っちまった

『こんなかわいい初春を泣かせたら、承知しないからね!』


何なんだよ……本当に




……いや、違ったな

初めて会った時……こいつに、酷い怪我を負わせた時も、泣いてたか






俺は今、二回目の涙を見ているんだ








垣根「……落ち着いたか?」

初春「……はい」

垣根「……そうか」

初春「……」

垣根「……で、何を言いたかったんだ」

初春「……」

初春「……ていとくんはいなくなります」

垣根「……ああ」

初春「……だから、せめて」

初春「……ていとくんの『奥』にある何かを解析して知りたい」

初春「それが、重要なことでも、そうでなくても」

初春「私の心に、ていとくんの欠片を残しておきたい」

初春「……いけませんか?」

垣根「…………」

垣根「」ウィーンカチャンブゥーン

初春「?」

垣根「……ちょっと、台所に来い」

初春「……はい」




初春「……」

垣根「ここだ」

初春「えっと……?」

垣根「チルド室だ。丁度今、食品が入ってない。……手を、入れて見てくれ」

初春「……?」ガチャ

初春「あっ……!」

垣根「どうだ」

初春「あったかい……!ていとくんの中、すごくあったかいです……」

垣根「……」

初春「……ああ……」

垣根「……何であったかいの、とか聞かねえのか」

初春「…………ふふっ」

垣根「……そうか」

初春「…………」

垣根「…………『もういい』ってのは取り消す。明日の朝まで、好きにしろ」

初春「…………ありがとうございます、ていとくん」

垣根「……」

初春「……」

垣根「……」

初春「……」

垣根「……」

初春「……」

垣根「……おい、もうそろそろチルド室から手を抜け」

初春「……や」

垣根「……これ、結構キツイんだが」

初春「もうちょっとだけ……ていとくんの温もりを感じていたいから」

垣根「……」

初春「……」

垣根「……」

初春「……ていとくん」

垣根「……」

初春「……今から言うことは、多分、ていとくんが困ることなので、独り言として聞いて下さい」

垣根「……ああ」

初春「……ていとくんの心が、どれだけ私から離れても」

初春「ていとくんの体が、どれだけ私から離れても」

初春「今だけは、ていとくんと繋がっています」

初春「今だけは、ていとくんの熱を感じていられます」

初春「ていとくんは、今、この瞬間を忘れてしまうかもしれません」

初春「それでも……私は、ていとくんのことが」












大好き、です












心の中で、どろどろしたものがぐちゃり、ぐちゃりと音を立てて混ざっていく

それはまるで、賞味期限四ヶ月過ぎの夏越し牛乳パックの中身のように

数年間野菜室の中に置き忘れられた干からびたキュウリの隣に佇む半ば液状になった人参のように

今までずっと感じてきたこの気持ちは

今も強く俺の心を占めるこの気持ちは

一体何なんだ

俺は、その答えを知らない

ああ、この気持ちは何なんだ!

この苦しく、張り裂けそうな心は!

誰か……

誰か、教えてくれ

この気持ちは……

投下終了

驟蛾俣驕輔>

文字化け

数日で戻るはずだったのですが……
長い間待たせてしまって、申し訳ありませんでした
短いですが、投下します



どうも、お久しぶりです

カブトムシの方の垣根帝督です

……ええ、本当に久しぶりですね

目の前で起きている事に理解が追いつかなくて、少々硬直していました

まさか冷蔵庫の扉からピンクのハートが飛び出すとは……

正直、困惑しています

彼女、意外と積極的だったんですね……

まあ、いつまでも私が見ているのも野暮ですし……しばらく席を外しましょう

久々の一人での外出です

しかし、この部屋にある窓も扉も閉まっていますね

……どうしましょうか

ふむ……

……では、あそこならどうでしょう

……よいしょっと

ああ、ありました

ここの換気扇、金属部分の接続が甘くて穴が結構大きいですね

……これなら、凹凸がある今の私の体でも抜けられそうです

昔の体なら台所の壁の隙間から抜けられたのですが……

まあ、過去のことを語っても意味はありませんね

角を折らないように……慎重に

…………

…………

……ふう、無事に出られました










…………ん?





ーーーーーーーーーーーーーーーー

ドレスの少女「……」

カブトムシ「……」

ドレスの少女「……」

カブトムシ「あの……」

ドレスの少女「何」

カブトムシ「いえ……聞きたいことは色々とあるのですが……まず、何故貴女が……心理定規さんがこの部屋の扉の前に?」

心理定規「……あなたには関係無いわ。帝督になら話したかもしれないけれどね」

カブトムシ「そう言われてしまうと手も足も出ませんが……それにしても、既にこちらの事情を理解しているようですね」

心理定規「……あなた、私を舐めてない?……帝督のパートナーをずっと務めてきたんだもの、それ位当たり前でしょう」

カブトムシ「それもそうですね……苦労をかけました」

心理定規「あなたが言うことじゃないでしょ……」

心理定規「ところで、私なんかと話していていいの?……あのバカ冷蔵庫が探してるかもしれないわよ」

カブトムシ「いえ……今は部屋にいる気分ではないので。それに、先程も言いましたように、貴女に聞きたいことがあるのです」

心理定規「……」

カブトムシ「……『垣根帝督』には言いませんから」

心理定規「……別に、質問を聞いてもいいけど、私が答えるとは限らないわよ」

カブトムシ「……有難うございます」

カブトムシ「それでは……そうですね、何から聞きましょうか」

心理定規「ちょっと待ちなさい、話の前に場所を移すわ」

カブトムシ「?」

心理定規「……扉の前で話してたら、中に聞こえるかもしれないし」

心理定規「それに、目撃されたら私がカブトムシを見ながら独り言を言ってる怪しい女に見えるじゃない」

カブトムシ「……貴女もそんなこと気にするんですね」

心理定規「……あなた、私を何だと思ってるの?」





カブトムシ「この公園のベンチなら、まあ多少怪しくても警備員に通報まではされないでしょう」

心理定規「その言葉も釈然としないけれど、それ以前に何で私の頭の上にいるのかしら……」

カブトムシ「外出時の癖のようなものなので。このままでは駄目ですか?」

心理定規「……あなた、やっぱり帝督に似てるわ……デリカシーが欠けてる所とか」

カブトムシ「そんなに似てますか?」

心理定規「……そっくり」

カブトムシ「……」

心理定規「で、何を聞きたいのよ」

カブトムシ「……その前に、私が考えていた『垣根帝督』が死んでからの貴女の行動の予想を聞いてもらってもいいでしょうか?……質問にも関係してくるので」

心理定規「……?……まあ、いいわよ」

カブトムシ「では……まず、あの日に起こった第一位と第二位の戦闘後、貴女は恐らく必死で『垣根帝督』を探してくれていたのだと思います」

心理定規「……」

カブトムシ「………貴女が初めて彼女に目をつけたのは、彼女の部屋で不自然な爆発が起こった日……で、間違いはないでしょうか」

心理定規「……そうね、低Levelの一般生徒の部屋で起きた爆発だったから、一応チェックはしていたわ」

カブトムシ「その時点では頭の隅に留めておくぐらいの重要度でしたが……貴女も様々な手を打っても空振りに終わるので、駄目で元々という感じで彼女を洗ってみたのだと思います」

カブトムシ「そして見つかったのが……」

心理定規「……『カブトムシ』だったって訳ね。すごいじゃない、ここまではほとんど合ってるわ」

カブトムシ「……私が分からないのは、ここから先なんです」

心理定規「……ふーん?」

カブトムシ「銀行強盗の騒ぎは、勿論貴女が裏で糸を引いていたのだと思いますが……貴女があそこで彼女を殺すにしても、『カブトムシ』……『垣根帝督』を奪うにしても、あの事件は目的を達成するのには難し過ぎると思っています」

カブトムシ「そして、さらに不可解なのが……銀行強盗の事件で広まったカブトムシの噂は、鋭い者ならば普通じゃないと感づかせるはずです。それが第二位の成れの果てかは分からなくても、学園都市の新兵器のようなものだと認識する可能性は十分あります」

カブトムシ「にも関わらず、『垣根帝督』と彼女の元には何の脅威も訪れなかった……」

心理定規「……」

カブトムシ「貴女が、その脅威を潰していたのではありませんか?」

心理定規「そう……だと答えたら、どうするのかしら」

カブトムシ「……私からすると、貴女の目的がさらに分からなくなるだけです」

カブトムシ「……最後に最も意味が分からない行動が……今貴女がやっていること」

心理定規「…………」

カブトムシ「……纏めてしまえば……貴女は、回りくどい動きをしている……ということです」

カブトムシ「貴女には彼女には無い力があり、彼女から『垣根帝督』を……奪う……いえ、取り戻すことは容易なはずです」

心理定規「……」

カブトムシ「貴女は、何故こんなことをしているのですか……」

心理定規「……それが、質問?」

カブトムシ「……そうです」

心理定規「……」

心理定規「……あなた、私と帝督が初めて会った時のこと、覚えてる?」

カブトムシ「?……まあ、知識の記憶としては掠れ気味ですが覚えていますよ」

心理定規「……そう」

心理定規「……あなた、本当に帝督にそっくり」

カブトムシ「先程も言っていたような……」

心理定規「……でも、ある意味では全然似てないわ」

カブトムシ「……まあ、私は『垣根帝督』の良心ですから……」

心理定規「?……ああ、そうかもしれないわね。物凄く歪んでいるけれど」

カブトムシ「……何を言いたいのですか」

心理定規「さて……そろそろ、バカ冷蔵庫もあなたを探し始めるんじゃない?……もう、あの部屋に戻りなさい」

カブトムシ「誤魔化さないでください!まだ質問の答えさえ聞いていませんよ!」

心理定規「質問には、答えない。それが今の私の『答え』……最初に言ったでしょ?答えるとは限らないって」

カブトムシ「それは……!……確かに、そうですが……」

心理定規「……さ、私の頭から離れて……いえ、飛んでいって頂戴。ちゃんと重いこと自覚してるんでしょうね?」

カブトムシ「……っ」

心理定規「……」

カブトムシ「……話を聞いて下さって、有難うございました。……また、すぐに会うことになると思いますが……」

心理定規「……さよなら」

カブトムシ「ええ……」ブーン

ブーン

ブーン……

……

……




心理定規「……」

心理定規「……全く、私も、帝督も……」

心理定規「……口調は違ったけど、少しだけ、昔に戻ったみたいで……結構、楽しかったわよ?……ありがと、もう一人の帝督……」




その夜、冷蔵庫の扉は開かれる

たとえ冷蔵庫の扉の中に、残酷な悪魔がいようとも

たとえ冷蔵庫の扉の奥に、慈悲深き神がいようとも

いつだって現実は……ただただ冷たい冷蔵庫


投下終了します
全然話が進んでなくてすいません……

今度はいつ戻るかわかりませんが、なるべく一ヶ月以内に戻るつもりです

一応生きてます

本当にすみません。続ける意思はあるのですが……

このままグダグダやってると確実にエタるので、骨組み部分を抜き出して無理やり進めます

と言っても、削った部分は冷蔵庫やカブトムシが悩んでるだけなので、それほど進行に影響は無いかと

では投下します

トリップが変?

テスト

戻らへん

トリップの変換が変わった……?

うーん?

htmlの人はこちらの端末が確認できるのでしょうか?それなら向こうは乗っ取りじゃないと分かるのかな

本人証明が出来ないのは辛い所ですが、とりあえず投下しておきます

天使は、私の目の前に現れた

その冷蔵庫の上に光の環が存在しなくても

背後のコンプレッサから伸びる6枚の羽は、紛れもなく……あの時見た天使そのものだったのだ





カブトムシ「ッ……!!」

初春「……」

カブトムシ「何故……何故、貴方が動いて……!?」

初春「……」

カブトムシ「くっ……貴女は早く逃げて下さい!」

初春「……でも」

カブトムシ「……」

初春「ていとくんが……」

カブトムシ「アレは……確かに、『垣根帝督』かもしれませんが……」

初春「……」

カブトムシ「……化け物、なんですよ。これ以上は、貴女が踏み入れていい領域じゃありません」

初春「……!」

カブトムシ「分かってくれましたか。……ここは、私が抑えます。だから、早くここから……」

初春「ていとくん……」

カブトムシ「な……」

初春「ていとくん……行かないで下さい!」タタタッ

カブトムシ「そんな……正気ですか!?」

初春「ていとくん……!」






初春「ていとくん……ですよね?」

冷蔵庫「……」

初春「……?」

冷蔵庫「……ゥウ゛ウ゛ウ」

初春「ていとくん……?」

冷蔵庫「……殺aamd一dl通」

初春「ていとくーーー」




グシャッ






ピッピッピッ……

冥土返し「……うん?だから、その現場にいたという人の話を聞きたいんだけどね?」

心理定規「……」

冥土返し「……さっきから、何を隠しているんだい?」

心理定規「隠している……って訳じゃないわ。ただ、言い出しにくいの」

冥土返し「……言い出しにくい……か」

心理定規「……」

冥土返し「この……『初春飾利』さんは、どんな精密検査をしても身体の何処にも異常は見受けられなかったんだよ?」

心理定規「……だから、それは……」

冥土返し「……患者を治すためには……もう少し、情報が必要なんだね?」

心理定規「……あぁ……もう、頭が痛いわね」

冥土返し「……この子は、前にもこの病院に入院していたことがあるんだよね?」

心理定規「……」

冥土返し「その時、少しばかり彼女が巻き込まれた事件について調べたけど……」

心理定規「……何か、知ったの?」

冥土返し「いいや?一介の医者に過ぎない僕は、そんなに怖い話に頭を突っ込みたいわけじゃない」

心理定規「それって……」

冥土返し「……少し、『第一位の彼』と『彼女達』の関係に似ていると思っただけだよ?」

心理定規「……もう、ある程度知ってはいるのね」

冥土返し「……」

心理定規「……なら、関係者の一人……いえ、当時虫の一匹に会わせましょう」

冥土返し「?」

心理定規「この虫は……」ゴソゴソ

カブトムシ「……」

冥土返し「……!」

心理定規「……見てきたの。垣根帝督と初春飾利の全てを」

冥土返し「……これは……少々、驚いてしまったね?」

心理定規「…………ねえ、本当に大丈夫?」

カブトムシ「……ええ」

冥土返し「……」

カブトムシ「……話しましょう。あの夜に起こったことを」




……彼女は言いました


『ていとくんの電源を切る』


……と


冷蔵庫の背後から伸びるプラグをコンセントから抜く、と


たしかに、彼女は言ったのです


それが、冷蔵庫の扉を開くことになるとは知らずに……






初春「……」

垣根「……そうか」

初春「……」

垣根「……そんじゃ、やるんなら……一息にやってくれ」

初春「……何で、何も聞かないんですか」

垣根「……ふん。お前には、何か考えがあるんだろ?」

初春「……これはとてもリスキーな方法で……ていとくんにも危険が及ぶ可能性があります」

垣根「……」

初春「……嫌なら、やめても……」

垣根「……なんつーかな」

初春「?」

垣根「お前が……さっき、色々言っていただろ?」

初春「……は、はい//」

垣根「俺な……あの言葉、聞いちゃいけねーんだよホントは」

初春「え……?」

垣根「頭ん中がグチャグチャで……正直、今のお前の考えはわかんねぇ」

初春「……」

垣根「……でもな」

垣根「……上手く言えねえけど、お前になら任せても良いなって、そう思ってるんだよ」

初春「ていとくん……」

垣根「……だから……早く、やってくれ」

初春「……でも……」

垣根「上手くいく自信がねぇとか、もう考えるな。俺は、お前に任せた。お前は、全力を尽くす。それでいい……もう、いいんだよ」

初春「……分かりました」




初春「……」

垣根「?」

初春「……ていとくん。もし、全てが終わった後に私達が会うことがあったら……どうします?」

垣根「何だそりゃ」

初春「……私としては、何かご褒美が欲しいです」

垣根「……?」

初春「……だって、ていとくんはこれからグッスリ眠るだけでしょう?私は不眠不休で徹夜なんですから」

垣根「……おいおい」

垣根「しかし、そうだな……全てが終わった後……か」



……俺とこいつは、明日の朝以降は再会することはない

たとえ、俺のことを知ったとしても……

……『垣根帝督』を知った時、こいつは俺の前には居ない

俺の、隣には……絶対に、居ることはできない

そうだ、それなら……

垣根「……名前で呼んでやるよ」

初春「……!」

垣根「いい報酬だろ?」

初春「……約束ですよ?」

垣根「あぁ……約束、だ」

初春「はい……約束です」

垣根「……」

初春「……」

垣根「……」

初春「……お休みなさい」

垣根「……ああ……お休み」






ブツン

投下終了

11月18日以降にスレが生きてれば一応の証明にはなるのでしょうか……

支援レス有難うございます
今後は一ヶ月に一回は投下していくつもりです

前スレの800後半位にも今のトリップになっているので、何かの不調かとは思いますが

こちらの構成力の不足によりかなり唐突で意味不明な話になっております

投下します



冷蔵庫「……」

冷蔵庫「……」

冷蔵庫「…………」



初春「……」

垣根「」

初春「……カブトムシさん」

カブトムシ「……」ゴソゴソ

初春「……」

カブトムシ「……?」

初春「動いている……ていとくんが、止まっていても。だから……」

カブトムシ「……」

初春「……やっぱり、ていとくんは……冷蔵庫だけじゃない……?」

カブトムシ「……!」

初春「……ていとくん、少しの間苦しい思いをするかもしれませんが……」

垣根「」

初春「……私は、諦めたくないんです」

カブトムシ「……」

初春「……行きましょう、カブトムシさん」

カブトムシ「!」





心理定規「……電源を切る……突拍子もない話ね」

カブトムシ「……彼女は……『冷蔵庫』のプラグをコンセントから抜いた際に、私が動いていたことで一つの確信を得たようです」

冥土返し「ええと、僕はその辺りの話は詳しく聞いてないんだけど……一体、どういうことなのかな?」

カブトムシ「……私は第二位から生み出されたことになっているしがないゴキ……カブトムシです」

冥土返し「……?」

カブトムシ「そう、私はあるモノをベースに彼から生み出された……『冷蔵庫』の影響を、最も強く受けるモノだったのです……」

冥土返し「な、なるほど……?」

心理定規「というか、説明が難し過ぎるわよ。かいつまんで言うと……」

冥土返し「……ふむ、中々メルヘンチックなお話だね」

心理定規「それはあの馬鹿冷蔵庫の趣味として片付けて頂戴」

カブトムシ「……」

心理定規「それで……はっきり言いなさい。結局、彼女は何を確信したのよ?」

カブトムシ「……」

カブトムシ「私は、体の大半がこの世の物ではない物質……未元物質で構成されています」

冥土返し「……」

カブトムシ「この体を構成する物質を完全に制御することは、私の能力を超えています。未元物質の制御の根底には、垣根帝督本体の……『冷蔵庫』の影響下に居る必要があるのです」

カブトムシ「ですが、私は、『垣根帝督』が稼働していない状態で動いていた……」

カブトムシ「……彼女は、『垣根帝督』と『冷蔵庫』を別々のものだと確信したのだと思います」

冥土返し「別々……か」

心理定規「帝督が、冷蔵庫じゃない……?」

カブトムシ「…………」

カブトムシ「突然ですが……第二位『未元物質』が最高の能力を有したのは、いつだと思いますか?」

心理定規「何、いきなり?……まあ最高の状態……最高の強さ……なら、あの第一位と戦った日じゃない?……負けてたけど」

冥土返し「……となると、10月の……8……いや、9辺りだったかな?」

カブトムシ「その日『垣根帝督』は第一位と戦い……一度死にました」

カブトムシ「……『垣根帝督』は進化していながら、死んだのです」

冥土返し「能力が『成長』したのではなく……能力が『進化』したと、そこまでの変化が彼に起きたんだね?」

カブトムシ「はい」

心理定規「……それでも、第一位には完璧に負けてるのよね」

カブトムシ「……それは、もう掘り返さなないで下さい」

カブトムシ「とにかく、戦いの中で大きく変わっていく……と、ベタな展開ですが、第二位の『未元物質』はその時確かに……今までとは比べようも無く、最高の状態でした」

カブトムシ「そう、今現在とも比べようも無いほど……」

心理定規「え……?」

カブトムシ「……はっきり判断は出来ませんが……恐らく、『冷蔵庫』には10月9日時点での『未元物質』と『垣根帝督』が、別々に分けられて入れられていました」

冥土返し「ちょっと意味が分からないのだけどね?」

カブトムシ「……これは、『垣根帝督』が起きてから聞いた方が良いと思います」

カブトムシ「少し複雑なので……よく分からないのが現状、ということで」

カブトムシ「ついでに、『垣根帝督』は……」

冥土返し「……いや、復活の兆しはまだ無いね」

カブトムシ「そうですか。……では、彼女のその後を話しましょう」

心理定規「……」






初春「変、ですね……」カタカタカタカタ

カブトムシ「……」

初春「……時間はかかるけれど……あの、謎の文字が一切出て来ない……」カタカタカタカタ

初春「まるで、普通の学園都市のセキュリティみた……」カタカタカタカタ

ウヴヴヴゥゥゥ

初春「……?」

カブトムシ「……!!」

初春「今の音……」

カブトムシ「……」

初春「……気のせい……じゃないんでしょうね。何かが、ていとくんの中で起こって……?」

初春「……あ」

初春「もう、明け方……」

カブトムシ「……」ゴソゴソ

初春「……ええ、急ぎましょう!」カタカタカタカタ





カブトムシ「……電源が、繋がっていない……そんな『冷蔵庫』に対しても、彼女のパソコンとの接続が可能となっていました」

冥土返し「では、『冷蔵庫』は外部と繋がっていたのかな?」

カブトムシ「……そうだったらまだマシだったのですが……」

カブトムシ「……『冷蔵庫』は、超高性能な並列コンピューターであり……演算には、外部からエネルギーを一切必要としませんでした」

冥土返し「それは……現実にはあり得ない素晴らしいコンピューターだね?」

心理定規「……ちょっと、それって……まるで……」

カブトムシ「……『未元物質』は、学園都市に回収された後に随分と弄ばれたようです」

カブトムシ「結論から言えば……不眠不休の格闘の末に、彼女は『冷蔵庫』の最深部に辿り着いて……」

カブトムシ「そしてついに……見てしまいました」





初春「……これ……って……」






………………


Tree diagram
Ver.DarkMatter


………………

カブトムシ「とっくに、人間じゃなくなっていたんですよ。それは分かっているつもりでしたが」

カブトムシ「……元々、私達は化け物みたいなものでしたし……」

カブトムシ「……機械の化け物」

カブトムシ「似合っていますか?学園都市のLevel5に……学園都市の、第二位に」

気が付くと……私はそこにいた



『失礼、お嬢さん』

『はあ。どちら様ですか?』



声をかけてきたのは、ホストのような男だった



『俺の名前は……垣根帝督』



彼は、よく通る声で私に言った




=>『垣根帝督』に関するファイル




『垣根帝督』の能力名コードを入力して下さい(10文字)

『こういう子が何処に行ったか知らないかな?……最終信号って呼ばれているんだけど』



そう言って、彼は女の子の写真を私に見せた

その子を私は知っている

笑顔が可愛くて、アホ毛が印象的な活発な女の子

けれど、私は嘘をついた





DarkMatter

パスワードが違います



『いいえ……残念ですけど、見てませんね』

『そうか』



子供を探すという彼の目が……余りにも暗い黒で染まっていたから



『どうしても見つからなかったら、警備員の詰所に届け出を出しといた方が良いと思いますけど』

『そうだね。その前にもう少し自分で探してみる。ありがとう』



そう言って、彼は私の前から立ち去ろうとした




Darkmatter

パスワードが違います



『ああ、そうだ。お嬢さんに言い忘れていたことがあるんだけど』



安心した私の耳に、去ったはずの彼の声が響く



『』



そして私は




darkmatter

そして、私は……






…………カチッ

投下終了

……ちょっと縮め過ぎたかもしれない
説明が意味不明な部分が有ったらすみません……

今更の話ですが

垣根帝督に関しては、色々と解釈の仕方があるかと思われますが、このssではかなり頭のおかしい捉え方をしておりますので、原作からはかけ離れていることを改めてご承知下さい

又、今回も数人新しい原作のキャラクターが出てきますがこちらも『ぼくのかんがえたさいきょうのれいぞうこ』のために原作と設定が異なっている可能性があります



まあ、元々垣根が冷蔵庫になるというのが略)

「それで……一体、こんな早朝から何の用なの?……電子音で起こされるのは気持ちの良いものじゃないわよ」

『……仕事の話……ってわけじゃないが、少しお前に聞きたいことがある』

「その話、長くなる?」

『いや、少し質問をするだけだ』

「……ふうん」

「……《残骸》の情報……?」

『ああ、どんな小さなことでもいいんだが』

「だって、あれはバラバラに壊れて……」

『それはお前が扱っていた《残骸》だろう。一方通行がキャリーケースごと全壊させたのは確認している。聞きたいのは、同時期に回収されていた別の《残骸》についてだ』

「…………」

『お前はあの時期、かなり《残骸》に拘っていたらしいから、別の《残骸》の動向も知っているかと思ったんだが』

「……全ての《残骸》の情報を手に入れていたわけではないわよ。あの時期はどこの国もロケットを打ち上げて《残骸》の争奪戦を繰り広げていたから……正確に把握出来たのは、学園都市に入ってきた中でも二つだけ」

『……という事は』

「後は、眉唾もののガセネタだらけ……ってわけ」

『成る程』

「……《残骸》の情報……?」

『ああ、どんな小さなことでもいいんだが』

「だって、あれはバラバラに壊れて……」

『それはお前が扱っていた《残骸》だろう。一方通行がキャリーケースごと全壊させたのは確認している。聞きたいのは、同時期に回収されていた別の《残骸》についてだ』

「…………」

『お前はあの時期、かなり《残骸》に拘っていたらしいから、別の《残骸》の動向も知っているかと思ったんだが』

「……全ての《残骸》の情報を手に入れていたわけではないわよ。あの時期はどこの国もロケットを打ち上げて《残骸》の争奪戦を繰り広げていたから……正確に把握出来たのは、学園都市に入ってきた中でも二つだけ」

『……という事は』

「後は、眉唾もののガセネタだらけ……ってわけ」

『成る程』

『……その正確に把握出来た二つのうち……一つは、一方通行に壊された《残骸》でいいんだな?』

「ええ」

『じゃあ、もう片方は何なんだ?』

「そっちは……あの時私が扱った《残骸》よりずっと小さなものだったの。言ってしまえば、優先度が低かったのよ、私にとって」

『……大きさが重要だったのか?』

「正確に言えば、樹形図の設計者が復元出来るかどうか。……今考えると、それが正しかったのかは分からないけど。心臓部の、ほんのひと欠片の方が、外縁部全てよりも価値が高かった……ってこともあったかもしれないわ」

『……』

『ところで、そっちの《残骸》の正確な大きさは……』

「確か……家電製品に入っているIC制御チップほどの小ささで……」

『……』

「どうしたのよ、急に黙って」

『い、いや……』

『……では、その小さな《残骸》の行方は……』

「ええっと……幼少の頃の第五位を擁していた『才人工房』って所に行ったはずよ。あそこ、既に研究所としては形骸化していたけど……」

『!!……外装代脳の研究をしていた機関か?』

「ああ、今はそっちの方が知名度が高いわね」

『……』

『…………』

「……?」

『朝早く悪かった。じゃあな』

プツン

「ちょっと!……何なのよ、一体?」

「…………何かに役立つのかしら、今のが」

「……それにしても、樹形図の設計者に《残骸》、ねえ。この学園都市の人間も、随分アレに振り回されちゃって……」

「……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




何故だと思う?……白井さん

何故、クローン達は失敗だったのかしら?

オリジナルである第三位……御坂美琴と遺伝子レベルで寸分違わず、全く同じ能力開発を受けていたというのに

これって、脳の構造以外の何かが関係しているってことじゃない?

……それを突き止めれば、人間以外でも能力を扱えるってことにならないかしら?

『何を……言ってますの?』

『《自分だけの現実》が人間以外にも適用されるとでも……?』

学園都市において、能力者は第六感といった特殊な超感覚ではなく……

特殊な《自分だけの現実》という意図的に歪めた演算機能と判断能力を使って現実の観測と分析を行う

その結果に応じて極めてミクロな世界の確率を不自然に変動させ何らかの新たな現象を生み出している……

そう、《現実》をどんなカタチで把握するのか……これが《時間割り》で行われている能力開発の肝になっているわ

与えられた情報の観測と分析

その結果として発現するのが能力なら





ーーー何もわざわざ『人間の脳』を使う必要は無いって思わない?

『な……!?』

現象を観測する事ぐらい人じゃなくても可能でしょう?

そうね、例えば人間の機能を持つ演算装置を使えば……

『バカげてますわ……!』

『貴女まさか、その機械の心臓部に能力を宿すつもりですの?……誰がそんな戯言をっ……』

ええ、この程度では無理でしょうね

でも……樹形図の設計者があれば予測はできる

人間の代わりに超能力を扱える個体は存在するのか……

私は、それを知りたいの

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……あの時の私についてどうこう言うつもりは無い

ただ……あれから私が積んだ経験を元にすれば、こんな風に思うこともある

……予測どころではない、と

人間の代わりに超能力を扱う『物』……それはつまり、科学の結晶

学園都市は……科学は、より夢が無くて、さらに残酷だということを、私はまだ知らなかったのだろう





冷蔵庫「…………」




『10月9日の記憶データバックアッププログラム』

『第五位『食蜂操祈』の外装代脳のデータを元にした、脳容量が約9968倍となった場合の人間としての活動及び能力シミュレーション』

『冷蔵庫よりミサカネットワークへの第一次接続実験レポート』

『生体電気と冷蔵庫回路の……


…………

…………

その画面に表示されていた情報は、どれもこれもあまりにも現実からかけ離れた……笑い話のような、恐ろしい話のような……とにかく、絵空事のように受け止め難いものでした

これが、この冷蔵庫の中に……なんの変哲も無い、ただの冷蔵庫に詰め込まれているのです

そして……これらの中には明らかに『一方通行』に関連付けられたデータが含まれており、『垣根帝督』は、未だに一方通行の為の道具であることを痛感しました……

しかし……彼女はこれをどう捉えるのでしょう……?

拒絶するのでしょうか、恐怖するのでしょうか

それとも……

初春「……」

カブトムシ「……」

初春「……垣根……帝督……」

カブトムシ「……!」

初春「……垣根……」

カブトムシ「……」

初春「……なん、で……?」






彼女は、ひよっとしたらこの時に『垣根帝督』を思い出してしまったかもしれません

ですが……もう、今となっては




冷蔵庫「……」

……ドクン

窓の無いビル

???「……」

???「……ふむ」

???「やはり『未元物質』は鍵とはならない……か」

???「しかし……こちらの想像よりも、『一方通行』への寄与は大きい」

???「もう一度、二つを掛け合わせる可能性も考えねばならないのかもしれんな」

???「『一方通行』の飛躍は、『未元物質』を踏み台としてさらに高いものとなるだろう」

???「……ならば」




冷蔵庫「……」

……ドクン ……ドクン……ドクン




『10月9日以降より現時刻までの記憶データを初期化します』



初春「……え……?」

カブトムシ「……!?」

初春「何で……突然……画面が」

カブトムシ「止めさせて下さい!!」

初春「えぇっ!?な、何でカブトムシさんが喋って……」

カブトムシ「私のことはどうでもいいんです!……それより」

カブトムシ「このままでは、彼が……先程まで、私達といた……貴女と共に過ごした垣根帝督が、消えてしまう……!」

初春「!」

カブトムシ「どうして、こんな突然に……っ」

初春「……」

カブトムシ「消えていく……垣根帝督の電磁波が……あの冷蔵庫の電磁波が……!」

初春「……」

カブトムシ「お願いします……初期化を停止させて……この、冷蔵庫を助けて下さい……!」

初春「…………は……」

カブトムシ「私は、どうなっても良いんです!……貴女を騙し続けた罪で殺されても良い。だから、この、冷蔵庫だけは……!」

初春「…………私……」

カブトムシ「どうか、冷蔵庫を……!!」

冷蔵庫が……消えてしまう

こんなに、呆気なく、ですか……

何故、消されなければならないのですか……?

あ……ああ、冷蔵庫からの電磁波が、消えて……

どんどん、微弱に……






冷蔵庫「……」

ドクン ドクンドクンドクンドクン




『フォーマットが完了しました。10月9日の記憶データをロードしています……』



初春「……あ」

カブトムシ「……え?」




……バサッ




冷蔵庫「……ヴゥuuadァa」

ドクン ……

冷蔵庫が、まるで水が沸騰したことを知らせるヤカンのように部屋中に大きな高音を響かせ….….

……その瞬間、垣根帝督が私の目の前に現れました

その冷蔵庫の背後にあるコンプレッサから伸びる6枚の羽は、紛れもなく……私の記憶の片隅にある垣根帝督の姿そのものだったのです





初春「ていとくん……ですよね?」

冷蔵庫「……」

初春「……?」

冷蔵庫「……ゥウ゛ウ゛ウ」

初春「ていとくん……?」

冷蔵庫「……殺aamd一dl通」







……グシャ……


彼女の頭部に大きくうねる羽が叩き込まれるその寸前に、冷蔵庫が発した言葉と、彼の『未元物質』は……何故、今の冷蔵庫が動いているのかという疑問に一つの答えを与えてくれました

彼は……10月9日のあの時……

一方通行と戦った時の『垣根帝督』……

……いや、それは正確ではありません

彼は……

10月9日以降、彼女と共に過ごさなかった『垣根帝督』なのですね……





カブトムシ「……私から話すことは、もうありません。後は、彼が……『冷蔵庫』が目覚めてから……」

冥土返し「……よく分かったよ。彼と、彼女について……」

心理定規「ああ、もう頭がおかしくなりそう……何でよりによって冷蔵庫になんかなるのよ、あのバカ冷蔵庫は….…」

カブトムシ「……今更何を言っているのですか」

冥土返し「……」

カブトムシ「ふう……漸く、一息つけますね」

心理定規「……まあ、あなたは良く頑張ってくれたわ」

カブトムシ「……」

心理定規「本来なら、パートナーだった私がもっと頑張らなきゃいけなかったのに……」

カブトムシ「……」

冥土返し「二人とも、一休みしてるところ悪いけどね?そろそろ彼が……おっと、来たようだ」

ガチャ

???「……失礼します、冷蔵庫が稼働を再開したと、ミサカは重要な情報を伝……」

冥土返し「ああ、分かった。今行くよ」

心理定規「あら、第三位……じゃなくて、クローンの方?」

御坂妹「……」ジッ

冥土返し「……?」

心理定規「……何?」

御坂妹「……」ギュッ

カブトムシ「って、な、何故私を……?」

御坂妹「……」ナデナデ

カブトムシ「ど、何処を触っているんですか貴女は!」

御坂妹「……ゲコ太ぬいぐるみよりも触り心地が悪いと、ミサカは率直な感想を述べます」

カブトムシ「」

心理定規「だって、元はアレだし……」ボソッ

御坂妹「……そして」



御坂妹「……一方通行と第二位は、再び戦うことになるのですかと、ミサカは唐突に疑問を投げかけます」

投下終了します

相変わらず分かりづらい話ですが、読んで頂けたら幸いです

あとは、冷蔵庫と一方通行が絡むだけなので……漸く終わりが見えてきました

投下

心理定規「ぜぇ……はぁ……何で……この学園都市で階段なんか使わなきゃならないのよ……」

冥土返し「まあ今は患者の起床時間直前だから、エレベーターは看護師や医師達、器具の搬入出で埋まっていてね……やっぱり健常な僕達は、階段を使わなきゃいけないよ」

御坂妹「……あなたを見ていると、あのモヤシを思い出します、とミサカは若干失礼な感想を述べます」

心理定規「分かってるなら何で言うのよ……」

カブトムシ「ほら、次の階が最上階ですよ?……もう少しですから」

心理定規「……はぁ」

心理定規「……ふー……やっと、着いたわね」

カブトムシ「頑張りましたね」

心理定規「それで、あの馬鹿冷蔵庫は……」

御坂妹「この最上階ではなく、さらに上の屋上に冷蔵庫は設置されています、とミサカはさらなる現実を叩きつけます」

心理定規「……はぁ?」

冥土返し「いや、ちょっと自家発電機の都合があってね?」

心理定規「何なのよ、もう……こっちは徹夜だっていうのに……」

冥土返し「まあまあ、あと一階分だからね?」

御坂妹「この階段が最上階への階段だと、ミサカは指し示します」

カブトムシ「……あ……すみません、屋上に行く前に少しいいですか?」

冥土返し「何かな?」

カブトムシ「……第三位の……ええと、……妹さんの貴女が、先程『冷蔵庫が稼働を再開した』と言いましたが……」

御坂妹「……」

カブトムシ「稼働を再開……とは、一体どんな状態だったのですか?」

御坂「自家発電機に冷蔵庫を繋いで暫くしてから、ガコンガコンと音を立てて氷を吐き出し始めたので『冷蔵庫が稼働を再開した』と判断した、とミサカは当時の状況をありのままに話します」

冥土返し「そ、それは……」

心理定規「そのまんま言うしかないわね……本当、どんな仕組みになってるのかしら……あの冷蔵庫」

カブトムシ「……ということは……冷蔵庫とは、直接話してはいなかったのですか」

御坂妹「……そうですね、冷蔵庫は言語といえるものは発していなかった、とミサカは記憶しています」

カブトムシ「……」

心理定規「?」

カブトムシ「……屋上には、妹さんや先生は……行くべきではないかもしれません」

冥土返し「……彼も患者の一人……いや、一台?だから確認をしたいのだけれどね」

御坂妹「何故ですか、とミサカは……」

カブトムシ「……冷蔵庫が……今、どんな状態かは分かりませんが、貴女達を殺す可能性があります

冥土返し「!」

心理定規「……可能性としては、あるかもしれないけど……」

御坂妹「……」

カブトムシ「一度死ぬ直前の垣根帝督は……妹さんを殺すことを『一方通行』の脳細胞を少し削り取る位にしか思っていないでしょうね。それに、一般人の事も……どう思っているか分かりません」

冥土返し「うーん……もし本当なら、屋上に行くのは少し怖いねえ」

御坂妹「……喋る冷蔵庫というのを一度見てみたかったのですが、とミサカは子供のような理由を伝えます」

カブトムシ「……いや、そんな都市伝説を見るノリで言われても困るのですが」

心理定規「……とりあえず、カブトムシと様子を見てくるわ。安全そうだったら戻ってくるから」

御坂妹「わかりました、とミサカは不満たらたらに言い放ちます」

心理定規「……第三位も変な子だけど、あなたも相当に変な子ね……」

冥土返し「……長く、なりそうかな?」

心理定規「……どうでしょうね」

冥土返し「……僕達は、初春さんの治療室に戻っているから……ゆっくり話しておいで」

心理定規「……」

カブトムシ「分かりました」




心理定規「はぁ、そもそも、この病院っていつ暴走するか分からない、ふぅ、危険なLevel5を持ち込まれても問題無いのかしら」

カブトムシ「来る者……いえ、来る物は拒まずというスタンスなのでしょう」

心理定規「問題起きるわよ、いつか絶対」

カブトムシ「今回でなければいいのですが……」

心理定規「……はぁ」

カブトムシ「さ、あと一段です」

心理定規「……ふー……やっと、屋上……よね?」

カブトムシ「エレベーター、エスカレーターに頼る生活は改めた方が良いですよ」

心理定規「飛んでる虫に言われたくないわよ」

カブトムシ「……」

心理定規「……で、いい?……この扉の外に冷蔵庫があるらしいけど」

カブトムシ「ええ、防御の準備は完了しています。少なくとも貴女の頭部が一撃目に飛んでくる未元物質の翼で吹き飛ばされる可能性はありません」

心理定規「全く、不安なこと言ってくれるわね……」

カブトムシ「あの冷蔵庫がそれだけ異常なのですから仕方ありませんよ」

心理定規「はぁ……それじゃあ3、2、1……で開けるわよ」

カブトムシ「……はい」

心理定規「……」スゥー

カブトムシ「……」

心理定規「3……2……」

カブトムシ「……」

心理定規「……1!」

ガチャ!



心理定規「こ……これは……」

カブトムシ「……」





御坂妹『……一方通行と第二位は、再び戦うことになるのですかと、ミサカは唐突に疑問を投げかけます」』

冥土返し『……』

心理定規『……あの冷蔵庫が、前までと変わらないなら……近いうちに必ず、ね』

御坂妹『……困りましたね、またあのモヤシが怪我をして上位個体を泣かすのでしょうか、とミサカは心配をします』

心理定規『あなた、どうやら一方通行の勝利を疑っていないようだけど……』

御坂妹『……?』

御坂妹『一方通行が勝つ確率はかなり高い……とミサカは前回の戦闘データから推察しています』

冥土返し『……』

カブトムシ『そんなにはっきり言わなくても……』

心理定規『……そうね、私も心の底ではそう考えてる。自分の心は騙せないわね……でも』チラッ

初春『……』

心理定規『戦う二人……いえ、一人と一台が、前と全く条件が同じとは……言えないんじゃないかしら?』

御坂妹『?』

心理定規『……さ、そろそろ行きましょう、冷蔵庫の所へ。案内して頂戴』

御坂妹『……』

御坂妹「……あの言葉は何を意味していたのでしょう、とミサカは思索します」

冥土返し「……上に向かう前の話かな」

御坂妹「はい、とミサカは返答します」

冥土返し「……どうなんだろうね?意味の無いハッタリかもしれないし、彼女が自分を鼓舞するために言ったのかもしれない。もしくは、彼女達だけが知っている情報があるのかもしれない」

御坂妹「……結局、分からないということですね、とミサカは結論付けます」

冥土返し「……まあね。……おっと、この部屋だったね?」ガラッ

冥土返し「……」

初春「……」

冥土返し「……変化無し、だね」

御坂妹「……」




冥土返し『……その様子だと、良い心の支えが見つかったようだね?』

初春『……』

冥土帰し『……毎日見ると言っていたあの夢はどうなったんだい?』

初春『あ……そういえば、最近全然見なくなりました』

初春『前は昼寝しただけでも悪夢を見ていたのに、いつの間にか……何ででしょうか?』

冥土帰し『なるほど……精神状態も快方に向かっているようだね……最後になるけど、記憶喪失の方はどうかな?』

初春『私がこの怪我をした時の記憶……ですよね。うーん……まだ全然思い出せませんね……』

冥土帰し『………………そうかい?まあ、君は記憶を焼き切られた訳でもないし、ゆっくりゆっくり治していけばいいね?』

初春『そうですね……』

冥土返し「……心の均衡を保つ物が、心を乱した者そのもの……皮肉なのかな、これは?」

御坂妹「何か言いましたか、とミサカは聞き返します」

冥土返し「うーん……これは、愚痴かもしれないんだけれどね?」

冥土返し「……僕は、君達『妹達』やあの少年……そして、今日この病院に来た二人と一匹。Level5の子供達と、彼らに深く関わった人物は、よく見てきたつもりだよ」

御坂妹「……」

冥土返し「君達は、本当に面白いもの見せてくれるんだ。こんな年寄りには勿体無い程のね?……体、心がどんどん大きくなって、躍動していく様は素晴らしいものだ」

御坂妹「いやあ、照れますね、とミサカはバレバレの照れ隠しをします」

冥土返し「……けれど、そこに大人達の意思と能力が絡むと話は途端に複雑になってしまうね?この学園都市では心の成長が体と能力に追いつかないんだ。そして、能力が大きくなればなるほど歪みは大きくなる」

御坂妹「……確かに、あの冷蔵庫は心が体に追いついていません、とミサカは思います」

冥土返し「彼も極端な一例だね?そして、ここに眠っている彼女は……」

初春「……」

冥土返し「……僕には、分からないんだ。彼女がどんな思いで、どんな考えでいたのか……彼女が飲み込まれた歪みは、僕には手に余る」

御坂妹「しかし、人が人の心を分からない……というのは普通ではないのですか、とミサカは当たり前のことを言います」

冥土返し「人間はそれでも心理学や精神医学を研究してきた。全ての症例を改善させることができる、とまでは言わないけれど、ある程度体系化はしてきたんだ」

御坂妹「……しかし、学園都市ではそうはいかない……という訳ですか、とミサカは先回りをします」

冥土返し「そう、その通りだね?……まず、能力開発が脳にどれだけの物理的なダメージを与えるかは未だにはっきりとは分からない。少年期、青年期の子供達の精神の発達に与える影響もね?」

御坂妹「……」

冥土返し「だから、今の彼女が『能力によって眠っているのか』、『精神的なダメージによって眠っているのか』が分からない」

冥土返し「……こういう時、僕は無力だ……手術だったら幾らでも腕を振るえるのだけれどね?」

御坂妹「……難しい話ですね、とミサカは難しい返答から上手く逃げます」

冥土返し「はは……本当に……難しい話だね?」

冥土返し「……冷蔵庫……『サイシンガタ』冷蔵庫、か……」

御坂妹「?」




冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……この、どうしようもない光景を私はどうしたらいいのでしょうか」

心理定規「……大丈夫なのアレは」

カブトムシ「……お、恐らく」

心理定規「もしかして、プラグを抜いて強制的に終了した上に、プログラムを書き換えられたから不良を起こしてるのかしら……?」

カブトムシ「そんな家電製品みたいな……いえ、家電製品ですね」

心理定規「……襲ってくる様子も無いし……近づいてみる?」

カブトムシ「そんな安易な……」




心理定規「……何で私達、製氷室から氷を溢れさせている羽を生やした冷蔵庫の前にいるのかしら」

カブトムシ「……さあ」

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

心理定規「……うーん」

カブトムシ「……」

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

心理定規「……どうするのこの冷蔵庫」

カブトムシ「……とにかくこの氷を止めないといけませんね」

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

心理定規「このプラグを自家発電機から抜いてみる?」

カブトムシ「それは何が起こるか分からないので最後の手段にしましょう。まずはアナログテレビを直す要領でチョップを打ち込んで……」

冷蔵庫「」ガコンガコン

氷「」ザラザラ




冷蔵庫「……aあ……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ



投下終了

投下

※気持ち悪い系統の不快描写が含まれます

初春飾利が食べていたのは、パフェ……だった。

迷子を捜すと言っていた小さな女の子は、疲れた様子でぐったりとテーブルに突っ伏している。

迷子の件はどうするのだろうと初春は思っていたが、少女は何も話さない。

パフェの五分の一程を食べた時焦れったくなり、初春は自分から聞いてみた。

「あのー……迷子はどうなったんですか。アホ毛のビビッと反応はもうなくなっちゃったんですか?」

「ミサカはアホ毛じゃないもん、ってミサカはミサカは萎れながら答えてみたり」

….…この場合、萎れているのは少女なのだろうか、それとも少女のアホ毛なのだろうか、と初春は思案する。

「うーん、さっきまで確かにこの辺りをウロウロしていると感じたんだけど、何かいつの間にかどっかに行っちゃったみたい、ってミサカはミサカはあまりの徒労っぷりにげんなりしてみるー……」

なんだかなぁ……と、初春が思っていると、少女のアホ毛が再びいきり立ち、少女自身も顔を上げた。

迷子が見つかったのだろうか……いや、どうやら違うようだ。

「ミサカ、アレが欲しい……」

少女が見つめていたのは、オープンカフェの前を通った女学生達が持っていた、チェーン系列の喫茶店のセットに付いてくるキーホルダーだった。

「ね、ミサカもアレが欲しい、ってミサカはミサカはお財布を持っていないので初春のお姉ちゃんの方にキラキラした瞳を向けてみたり!」

少女の正直すぎる発言に、初春は一瞬怯む。

「あー、もう、迷子を捜すんじゃなかったんですか?」

「むむっ!あっちの喫茶店から迷子の反応をミサカは感じーーッ!!」

「真顔で嘘をつかないで下さい。駄目ですよ。大体、私の大型甘味パフェはまだ序章の生クリームゾーンを終えたばかりであって、ここで席を立つなんてことはあり得ないです」

「何でそんなにのんびりしてるのーっ!ってミサカはミサカはテーブルをバンバン叩いて駄々をこねてみたり!!」

少女の駄々に対し初春は一歩も譲る気は無かったが、ここでふと気付いたことがあった。

「……っていうか、タクシーのお釣りを先程いっぱい貰ってませんでしたっけ?」

「ハッ!……言われてみれば、ってミサカはミサカはポケットに突っ込んだサツを握り締めて手近な喫茶店にダッシュしてみたりっ!」

言い終える前に、少女は外に向かって走り出していた。

「ちゃんと戻ってくるんですよー」

初春は呆れた目で少女を追っていた……が、少女は店から出る直前に急に立ち止まり、初春に向けて言った。

「……っと、危ない危ない、忘れるところだったってミサカはミサカは冷や汗をかいてみる」

「……?」

「……初春のお姉ちゃんも、ちゃんと戻ってきてね」

と、よく分からないことを言って少女は店から去った。

初春はその意味を考えてみたが、結局よく分からず、小首を傾げた後、パフェに意識を集中した。





パフェの五分の三を食べ切り、いよいよ大型甘味パフェのアイスクリームゾーンに突入した初春だったが、そこで彼女に声をかける『もの』があった。

「失礼、お嬢さん」

席の横から、突然声が発された。

やたらと小さいスプーンの動きを止めて初春がそちらを見ると、何だか柄の悪そうな少年……ではなく。



冷蔵庫が、設置されていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーー

初春「……は?」

冷蔵庫「俺の名前は垣根帝督。人を捜しているんだけど」

初春(いきなり声をかけてきて、名前も聞いていないのに名乗るって、随分図々しい冷蔵庫ですね……って)

初春(いやいやいやいや、問題はそこじゃありませんよね、何で冷蔵庫がこんな所に……というより、喋って?)

冷蔵庫「こういう子がどこへ行ったか知らないかな。最終信号って呼ばれているんだけど」

初春(何でこんなに普通でいられるのでしょう、この冷蔵庫は……それより、写真って……これは)

生きのいいゴキブリが撮影された写真の束「」バサバサ

初春「……」

初春(いやいやいやいや、もう何から何まで訳が分かりません。何でこの冷蔵庫はこんなことを……。しかも今、冷蔵庫の扉から写真が吹き出てきたように見えましたし……)

初春(それにしても、人がパフェを食べてる際にこんなものを……この冷蔵庫、デリカシーの欠片もありませんね。とりあえず付き合わないようにしないと)

初春「いいえ、残念ですけど、見てないですね」

冷蔵庫「そうか」

初春「どうしても見つけられないなら、『警備員』の詰め所に届け出を出した方が良いと思いますけど」

冷蔵庫「……ははは、そうだな。その前にもう少し俺だけで捜してみるさ。ありがとな」

初春(……?)

冷蔵庫「……ああ、そうだ。お前に言い忘れていた事があるんだが……」

初春(何だか、言葉遣いに違和感が……)







冷蔵庫「お前が食べてるパフェ、カブトムシで出来てるから」





ーーーーーーーーーーーーーーーー

歯垢は、節足に。

唇に付いた生クリームは、薄い白翅に。

バナナは、硬い甲羅に。

アイスクリームは、得体が知れない柔らかいものに。

ミントは、黒いつぶらな目玉に。

喉を今まさに通り過ぎるフレークは……



うっ…………う……

あ…………






げえええと、擬音をつけるならば、正にそのように吐いた。

吐いた、吐いた。とにかく吐いた。甘ったるい匂いが、樹液がたっぷり付いた幹の匂いになるまで、キッチンシンク下の匂いになるまで、私は胃の中のものを吐き出した。

テーブルの上がグチャグチャになった大勢のカブトムシの死体で埋め尽くされた時、私は小さなスプーンがカブトムシの角であること、目の前のテーブルが冷蔵庫であること、そして自分が座っていた冷蔵庫が冷蔵庫だったことに気が付いた。

そのうち、隣にいた筈の冷蔵庫が目の前の冷蔵庫になっていることに気が付いた。

私は、怖くなって冷蔵庫から飛び出した。

冷蔵庫に照らされた冷蔵庫を、全速力で、足を止めずに駆けていく。

道行く冷蔵庫達が、私のことを不審に思い、声をかけてくるが、知ったことではない。

冷蔵庫を、走り抜けていく。自分の部屋の冷蔵庫に向かって。

息切れをして、汗をぽとぽとと冷蔵庫の上に落としながら、私は自分の住んでいる冷蔵庫に辿り着いた。

一段飛ばしで、冷蔵庫を駆け登る。はたから見れば、かなりみっともない行為だったろうが、幸いなことに冷蔵庫を登る間に他の冷蔵庫と会う事は無かった。

そうこうしている内に、自分の部屋の前に到着し、息をつく間もなく冷蔵庫に冷蔵庫を差し込む。

金属音の後に、冷蔵庫の扉が開いた。

冷蔵庫。


冷蔵庫。




冷蔵庫。

私の部屋のいつもの場所に、冷蔵庫はいなかった。

冷蔵庫がいた場所が、キッチンの中でぽつんと浮いているように見えた。

私の、部屋の、いつもの場所に。

冷蔵庫は、いない。

私は、再び嘔吐した。

自分の目の前の現実が、黒焦げになったカブトムシに見えてくる。

冷蔵庫がいないという現実に。

吐き出すものはもう胃に残ってないくせに吐きたいという欲求だけが身体に駆け巡る。

私は、吐いた、吐いた、泣いた、叫んだ。

嘔吐の欲求が収まってくると、今度はいよいよ私は泣き喚く。

感情のままに、理性を押しつぶして。





気がつくと、再びあのオープンカフェのテーブルに座っていた。

周囲からは、何の物音も聞こえない。私だけの世界のように、しん、としていた。

そっと顔を上げてみると。そこには見知った鉄面皮……冷蔵庫が置かれていた。

冷蔵庫に向けて、静かに言う。

ーーーーーーーーーーーーーーー

初春「……あの、重みのせいで椅子が粉々になっているんですけど、いいんですかそれ」

冷蔵庫?「おいおい、第一声がそれかよ」

初春「!」

初春?「返答するとは思わなかった、みたいな顔をしないで下さいよ」

初春「……あなたは……誰でしょうね」

心理定規?「……あら、忘れたの?」

初春「ていとくん……」

佐天?「何だ、覚えてるじゃん、初春」

初春「いや、ていとくんじゃない。あなたは、違う。そうですよね?」

カブトムシ?「……なるほど」

初春「……」

冷蔵庫?「……」

初春「……少し、話をしませんか?」

冷蔵庫?「……いいぜ」

ーーーーーーーーーーーーー

目線を下げてはいけない。

目を逸らしてはいけない。

目の前の現実を見つめて。

対面する冷蔵庫を見つめて。

あの日あの時、この席でていとくんと会った時のように。

そうでなければ、私は本当に戻れなくなる、そんな気がした。

そして、この位置からでは冷蔵庫の扉を開けることが出来ないな、と。

何となく、そう思った。

投下終了

投下

注:後半が読みづらい

「第二位の『回収』?……何だそりゃァ」

『……おや、お前にとっちゃ簡単な仕事だと思ったんだが。怖いのか?』

「……ンな訳ねェだろ。急に苛つく奴を引き出されて少し驚いただけだ」

『詳細は追って連絡する。いつでも連絡が取れるようにしておけ』

「……分かった」

『……こういうのは、俺が言うべきことではないかもしれないけどな。独自に色々と調べてみたんだが……手強いぞ、前よりもずっと……』

「何度戦おうと同じことだろォが」

『いや……今の第二位は次元が違う強さを備えている可能性がある」

「……次元だか何だか知らないけどよ、俺が負けるわけねェだろ」

『……』

「……」

『……そうか……そうだな、じゃあ、切るぞ』

ブツリ

「グチャグチャといらない心配をしやがって」

「……負けねェよ」




「……負けられねェ」



ーーーーーーーーーーーーーーーー

冷蔵庫「……aあ……」ガコンガコン

氷「」ザラ




心理定規「!……氷の勢いが弱まって……」

カブトムシ「……目覚めたのですか」

心理定規「そのようね。でも……」

氷「」ピタリ

冷蔵庫「……久しぶrだn」



カブトムシ「……」

心理定規「……」

心理定規「随分変わったわね」

冷蔵庫「……そりゃ、どuいう意味だ?」

心理定規「そこまで、壊れてしまったのかしら」

冷蔵庫「……な……n?」

カブトムシ「……貴方は」

冷蔵庫「……?……お前……」



『誰』ですか?

『誰』だ?




ーーーその冷蔵庫は、壊れていた


ーーーーーーーーーーーーーーーー

心理定規「……あー、そっちの方は任せるわ。とりあえずまた大きな動きがあったら連絡して。こちらはいつでも繋げるから」

心理定規「……ええ、それじゃ切るわ」プッ

心理定規「……はぁー……」

初春「……」

心理定規「……お肌ツルツルね、この子」

初春「……」

心理定規「……今頃冷蔵庫の夢でも見てるのかもね。『イイ』寝顔してるわよ、あなた……」

初春「……」

心理定規「……」

コンコン

心理定規「……はいはい、今開けるわ」

ガラリ

カブトムシ「……ありがとうございます」

心理定規「窓から入ってくるなんて、虫が板についてきたわね」

カブトムシ「好きでつけてる訳ではないのですが……」

心理定規「で、どうだった?あの冷蔵庫は」

カブトムシ「駄目です。あの後色々と記憶に関して聞いてみたのですが……彼女のこと、私のこと……覚えていませんでした」

カブトムシ「それどころか、スクール時代の記憶もかなり欠落しているようです」

心理定規「……そう」

カブトムシ「亡霊ですね。一度殺されて、冷蔵庫になって、今度はメモリの記憶をグチャグチャに弄られて….…まさに、冷蔵庫の亡霊ですよ、あれは」

心理定規「……第一位については?」

カブトムシ「その辺りは、まだはっきりしてますね。彼の中では第一位を殺すというのは確たる目標となっていました」

カブトムシ「今は冷蔵庫の体に慣れていないようで、暫くしたら一方通行を探しに病院を発つ、と」

心理定規「……冷蔵庫の身で何をバカなことを……他には?」

カブトムシ「その他は特にありませんが。今は疲れたと言って再び氷を作り出しています」

心理定規「……話を纏めると、今の帝督は……」

心理定規「『とにかく一方通行を殺す』でいいわけ?」

カブトムシ「端的に言えばそうですね……」

心理定規「……」

カブトムシ「……」

心理定規「……はぁ……」

心理定規「……私達は、どうするべきなのかしらね」

カブトムシ「……」

心理定規「そうそう、さっき下部組織の残党連中から連絡があったのだけれど……」

カブトムシ「!」

心理定規「既に、第一位に帝督の抹殺命令が下されてるらしいわ。この病院も張られてるみたいだし」

カブトムシ「それは、また……いつ一方通行が突入して来てもおかしくないということですか?」

心理定規「そうね、その可能性はあるわ。ただ、真昼間に来ることはあり得ないと思うけど」

カブトムシ「と言うことは、来るのは夜ですね」

心理定規「……それか、あのバカ冷蔵庫が自分で一方通行を探しに行った場合」

カブトムシ「その場合、飛んで火に入る夏の冷蔵庫ですね……」

心理定規「何にも上手くかかってないわよ」

カブトムシ「自分でも分かってます」

心理定規「はぁ……」

カブトムシ「……」

カブトムシ「……それで、最初に貴女も言っていましたが……私達は、どうするべきなんでしょう」

心理定規「本当にね」

カブトムシ「……今、私と貴女が乗っている冷蔵庫の船って、泥船ですか?」

心理定規「泥船どころじゃないわ。もっと脆いでしょう。昆虫ゼリーで出来てるんじゃない?」

カブトムシ「ははは、それもそうですね。でも、なら何故貴女は船から降りないのですか」

心理定規「それを言うなら、そっちこそ飛んで逃げればいいじゃない」

カブトムシ「それは出来ません」

心理定規「奇遇ね、私も」

カブトムシ「……理由は?」

心理定規「同じでしょ?……それと、ここに寝てる、泥船に乗ったまま沈んでしまった女の子も」

初春「……」

カブトムシ「……本当に、罪作りな冷蔵庫ですね……」

心理定規「……タラシなのよ」

心理定規「……話を戻すけど、私達って垣根帝督に生き残って欲しいのよ」

カブトムシ「あの冷蔵庫のまま一方通行と戦って、という無茶な壁ありますが、まあそうですね」

心理定規「……」

カブトムシ「……」

心理定規「……そこよね、やっぱり」

カブトムシ「え?」

心理定規「私達は、垣根帝督を上手く使って一方通行に勝つしかない」

心理定規「とにかく、今出来ることをしましょう。……あなたは一方通行と戦う前に冷蔵庫と綿密に話を詰めて貰いたいわね。一方通行に冷蔵庫が勝つ方法を」

カブトムシ「……えぇ……」

心理定規「勿論、有効な策が存在するとは思えないけど」

カブトムシ「気が進みませんが、確かに他にすることもないですね……しかし、私が冷蔵庫と一方通行抹殺会議をするとして、貴女はどうするんですか?」

心理定規「私?私は……」




心理定規「……少し、初春さんを測ってみるわ」


ーーーーーーーーーーーーーーーー

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……」

カブトムシ「気が重いですね」

カブトムシ「前にも話し合いましたが……その時は……」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

ーーーーーーーーーーーーーーーー

未元物質は第一位には無効

能力説明は必要不可欠

第一位の電極のバッテリー切れを狙う

冷蔵庫の圧倒的収納性

冷蔵庫の圧倒的頑丈性

冷蔵庫の圧倒的冷蔵性

ーーーーーーーーーーーーーーーー

カブトムシ「本当に垣根帝督って馬鹿ですよ……こんな馬鹿が一台と一匹集まって何になるのでしょうか……」

カブトムシ「何で能力をベラベラ喋るのでしょうね……」

カブトムシ「それに『冷蔵庫であることを活かす』、なんて出来るわけが……」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラ

カブトムシ「……!」

氷「」ピタリ

冷蔵庫「……」

冷蔵庫「……あa、何だっけ、カブトムシ?」

カブトムシ「そうです、そうです」

冷蔵庫「……勝つ方法?……一方通行n……」

カブトムシ「……意外と聞き取れていたのですね。氷を作っている最中は意識が無いかと思っていました」

冷蔵庫「抜かrはねえy」

カブトムシ「……」

カブトムシ「それで……私としては、特に有効な戦術は浮かんでいないのですが、貴方は……?」

冷蔵庫「……必勝法……とまdはいかねえg、勝つ確率g高い戦術gある」

カブトムシ「妙な予感しかしませんが、一応聞きましょうか。それはどんな戦術なのですか?」

冷蔵庫「……水だ」

カブトムシ「は?」

冷蔵庫「水素原子2……酸素原子1……水蒸気……氷が……それが……殺す……一方通行……gggggggむgg……氷……氷……iiiiiice」ガコン

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……もう駄目かもしれません、この冷蔵庫……」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「……これはもう、私が一方通行と戦う手段を考えるしかないようですね……勝ち目は全くありませんが」

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

カブトムシ「ならば、こんな所で冷蔵庫と喋って時間をドブに捨てている訳にはいきません。早速戦う為に未元物質の準備に取り掛からなければ……」ブーン

冷蔵庫「……」ガコンガコン

氷「」ザラザラ

冷蔵庫「……」ガコン

氷「」ザラ

冷蔵庫「……」

氷「」ピタリ

冷蔵庫「……」

冷蔵庫「……」

冷蔵庫「……行ったk」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー

すまねえn、カブトムシ。俺は今、誰一人として信じる訳にはいかねえnだよ

記憶がごちゃ混ぜnなって、昨日が何時だったか、明日が何時だったさe分かrねえ。一方通行を殺すため、信じられるのは自分だけd

記憶にh無いが、お前は、確かに俺が生み出したのかもしrない……だが一方通行には、甘さがあるときっと勝てなi。俺一人でやり遂げる……ハナからそu思っていねえt……

……水……H(2)O……

……それが、未元物質の通用しなi第一位hの、俺が持つ唯一無二の武器

冷蔵庫のメモリに無かろうと、この冷蔵庫の回路の隅々まで、能力の痕跡が残っていr……全てはこn最強の矛である水を作rために

ーーーーーーーーーーーーーーーー

垣根(なん…………だと…………)

垣根(……………白い翼が出ねえ……。これってかなりヤバイんじゃねーの?……もう少し小さい力なら扱えるか?)

垣根(空気に作用して冷蔵庫の内部を冷やす未元物質と、水に作用して製氷機で氷を生成する未現物質を顕現……)

『小さい力を最大限利用する、能力の効率化』

垣根(……………………………)

垣根(……………………暇だな)

垣根(…………未元物質の生成練習でもするか)

垣根(はは、懐かしいな。基本からやるなんて何年ぶりだ?)

垣根(……………さあ、始めるか)

『腐る程時間があった中、毎晩毎晩続けていた基礎練習』

垣根「何ィ?今度は歩脚ゥ?お前、俺を造形師と間違えてるんじゃねえのか?!」

しーましェーん!!

垣根「しょうがねえなあ、いいよいいよ。俺が形を整えてやるからこのまま出しちまえ。全身を未元物質にするのもいいかもしれないしな!」

えーーっ!?

と、こんなわけで僕の初めての未元物質体験は全身サイボーグ化という結果で終わったのでした……

『生体の未元物質化』

垣根「だが、カブトムシをお前のノートパソコンと接続すれば……特殊なネットワークを通じてここにいる俺……冷蔵庫とリンクする」

!!……ということは

垣根「そうだ。お前はカブトムシを持ち歩いているだけでいつでも何処でも解析が可能になる!」

……凄いですね

『冷蔵庫となって初めて扱うことが出来るようになった特殊な電磁波により、ネットワークとして繋がった未元物質』

銃口に氷の塊が……?!くそっ完全に壊れてやがる!

まさか…………あれ?

カブトムシ「ああ、保冷機能があると言っていただろ?」

カブトムシ「その最大の力を一瞬だけ使って……氷の弾丸を精製したんだ」

……えーっと

カブトムシ「あとは、こっちに銃が向いた時に銃口に弾をぶち込む……それだけだ」ドヤァ

『未元物質を応用した、物質の瞬間生成』

私は『貴方』ですよ。『垣根帝督』

『……独立思考する未元物質』




『冷蔵庫としての生活の全ては、未元物質の最大限の利用の為に』

『冷蔵庫としての身体の全ては、未元物質の最大限の活用の為に』


ーーーーーーーーーーーーーーーー

……

今まで開発してきた能力は、血肉のようn冷蔵庫の回路に残っているというのに……どうしt俺のメモリは空っぽなんだろうな。誰かと一緒に能力を育ててきたnは確かなんだが

……まa、もうどうでもいいか

とにかく、今まで俺は冷蔵庫として段階的に未元物質の応用能力を身に付けてきたんd

アレイスターが此処まで考えていたとは思えねえが……この為に俺は冷蔵庫にされtのかもしれなiな

……馬鹿げた話かもしrねえが、冷蔵庫になって、俺は又強くなるこtが出来た

……

俺がたd壊れたみてeに氷を放出していると思ったk、なあ、カブトムシ?

本当に騙されていrのだったら、最後まで騙されtいてくれ。俺は、やっpり一人で一方通行と戦いたいみたいだ

大丈夫さ、一人でも……この戦術なら、一方通行に勝てr可能性がある……例えゴキブリの涙程でmな

……未元物質が効kねえ?

上等だ

だったr、こっちの世界の中で戦ってやるよ

『冷蔵庫であることを生かす』……やってやろuじゃねえか

水を、H(2)Oを使って

水素を、H(2)を使っt

酸素を、O(2)を使って

正々堂々t、卑怯な手を使って

真正面から、罠にはmて

非道な手で、動揺させt

どれだけ生ゴミにまみれよuと

どれだkスクラップにされようと




てめえに勝ってやrよ、一方通行ッ!


ーーーーーーーーーーーーーーーー

冷蔵庫「……」ガコンガコン ガコンガコンガコンガコン

氷「」ザラザラ ザラザラザラザラ



ーーーその冷蔵庫は壊れていたけれど




ーーーだからこそ、その冷蔵庫は燃ゆる


投下終了

しまった
「燃ゆる」って連体形かも

すみません

すみません、糞短いですが投下

……やっぱり、変

彼女の心の距離……

垣根帝督と、初春飾利……

二者の距離は0の筈なのに、何処か彼女はずっとずっと遠くにいるように感じられるわ

これは……つまり

彼女が、初春飾利が……私の定規の上には居ない、ということ……?

……

確かめなければいけないわね

帝督と、第一位が戦う前に……

ーーーーーーーーーーーーーーーー

……

……初春

初春!

初春っ!もー、こんな所にいたの?随分探したんだよ!

……?

……どしたの、初春。何かあった?

……何だか私お邪魔虫なようで

私、先に帰ろっか?

ん、おっけ。まあ、落ち着いたらまた話聞かせてねー!








本当に、これで良かったのだろうか?

今朝、昨日のことを思い出しつつ初春を迎えに行ったら、初春の部屋がある学生寮が警備員によって封鎖されていた

初春と連絡をとろうとしても、全く繋がらず……

私は肩を落として学校に向かった

そして、朝のHRの時間で先生から、初春が『事故に巻き込まれた』という話を聞いた

おかげで、今日の授業は全く頭に残らなかった……

今か今かと終業のチャイムを待って、私は全力疾走で初春が入院しているという病院に向かう

昼休み中に、初春が入院した病院の場所を先生に聞くことが出来た辺り、今の私って普段よりよっぽど冷静だなぁ、とボンヤリ思った

ーーーーーーーーーーーーーーーー

佐天「……ここ、じゃないか……次の病室……あ、ここだ」

佐天「……初春……」

佐天「……失礼します」コンコン

佐天「……」ガラッ

佐天「……ん?」

心理定規「……あら」

初春「……」

心理定規「……佐天、涙子さん……だったかしら」

佐天「え、あっと、はい、佐天です。……あ、あのー……あなたは……初春の……友達?」

心理定規「……私は、唯の……ええっと、精神科医よ」

佐天「あ、あぁ、お医者さん……ですか」

心理定規「……あ、御免なさい。私が病室の椅子を占領していたんじゃ、あなたが座れないわよね」カタン

佐天「いや、私はそんなに長居するつもりは……」

心理定規「遠慮しなくてもいいわよ。彼女も……初春さんも、あなたが側に居るだけで喜んでくれるわ、きっと」

佐天「……」





心理定規「ーーー、という訳。つまり、詳しくは言えないけれど、初春さんは事件に巻き込まれたけれど、幸い外傷は無かった、と」

佐天「は、はぁ……?……なるほど」

心理定規「でも、心因性のショック……心の傷が大きくて、今は彼女は深く眠っている状況……」

初春「……」

佐天「……初春」

佐天「いつ、目覚めるのか……分からないんですか?」

心理定規「いつ……いつ、ね」

初春「……」

佐天「……?」

心理定規「それを話すには……初春さんの心について少し説明をしなければいけないわ」

佐天「う、難しい話はちょっと苦手で……」

心理定規「……分からないことがあったら、何時でも聞いて」

佐天「はい……」

心理定規「佐天さんは……数直線って知ってる?」

佐天「はぁ……あの、数字を直線上に表した……」

心理定規「そう、それ。私は人の心の距離を定規で計って数直線に表す仕事をしているわ」

佐天「心の、距離……?」

心理定規「人と人との関係を分かりやすく図に表して……人間関係の改善のアドバイスをするの」

心理定規「例えば、キャバクラに通い詰めて妻に離縁を迫られているおじさんや、仕事人間で定年退職した直後に妻に離縁を迫られたおじさんの話を『暖かく』聞いて、アドバイスするの」

佐天「な、何だか凄く生々しい話ですね……」

心理定規「……ふふ」

心理定規「話が逸れたけど……今回も初春飾利さんと彼女の周りの人間との関係を、私は計ったのよ」

佐天「……」

心理定規「その結果……とある一人の人『物』と彼女の心の距離に異常な数値が見られたわ」

佐天「ええっ!一体誰なんですか、その人物は……」

中途半端ですが、ここで投下終了します
次回は書き込む端末が変わるので、不具合があるかも

投下

テスト

3度目の正直
テスト

では投下

心理定規がもはやキャラも能力もオリキャラ気味になってますがまぁ垣根が冷蔵庫の時点でry)

心理定規「それは言えないわ」

佐天「そう……ですか」

心理定規「ごめんなさいね」

佐天「じゃ、じゃあ……その異常な数値の値を聞くっていうのは……」

心理定規「それは構わないわ。むしろ、そこが本題なの」

佐天「……?」

心理定規「人『物』Xと初春さんの心の距離は……0よ」

佐天「……0?それって、ラブラブってことですか?」

心理定規「……ラブラブと言われる男女間の情愛関係でも普通は心の距離は0にはならないの。それは、二者の心が全く同一のものだということを表しているから」

佐天「えっ」

心理定規「だから、人と人との心の距離は決して0になることはないのよ」

佐天「え?……それって、初春は……」

心理定規「……けれど人『物』Xと初春さんの心は今現在同化している……」

佐天「……?」

心理定規「そして……人『物』Xと初春さんの心は同化していない」

佐天「え、え?……ちょ、ちょっと意味が分から」

心理定規「同化しているのに、同化していない……明らかな矛盾が発生している……」

心理定規「そこから導かれる真実は、私の観測結果が間違っているということ」

佐天「……」

心理定規「けれども観測過程においてミスは全くない……つまり……」

佐天「あ、あのー……」

心理定規「……人『物』Xと初春さんの心の距離を表すには、一本の定規では足りない……実軸では足りない……x軸では足りない……」

佐天「私、帰っても……」

心理定規「y軸が必要で、虚軸が必要で、もう一本の定規が必要……なのよね。さて、佐天さんは分かってくれたかしら」

佐天「???」

心理定規「冷蔵庫を原点(0,0)に置くならば初春飾利の座標は恐らく(0,y)。すなわち彼女の心は未元物質のy世界に位置している……現実世界の横軸だけでは表せない、未元物質世界の縦軸の何処かに彼女はいるということよ。佐天さん」

佐天「いや、何から何まで訳が分かりませんけど……」

心理定規「分かってくれなくていいのよ、全部私の妄想だもの……」

佐天「も、妄想?」

心理定規「私だって、こんな馬鹿げた仮説なんか作りたくもなかったわ。けれど、彼女を見た医者の診断によると、『体自体には何の異常もない』らしいのよ」

佐天「……確かに、初春の体にはかすり傷の一つもついてませんね」

心理定規「だからこそ、彼女は心が病んでいるとしか思えない……そして、あなたには詳しく言えないけれど彼女が巻き込まれた出来事は、先程までの私の馬鹿げた仮説が立てられてしまう出来事だった」

佐天「……」

心理定規「……さて」

心理定規「さて、とりあえず説明を終えたところであなたに協力してもらいましょう」

佐天「……え?」

心理定規「詳細なデータが必要なの。より長期的に初春飾利と関わっていたあなたの心の距離がね……私だけでは駄目。あなたが居なければ、初春飾利は救えないのよ」

佐天「……私が……」

心理定規「……あなたは……私が色々な嘘をついていることに気づいていると思う。こっちの事情を分かってくれとは言えない……けど」

佐天「……」

心理定規「初春飾利を助けたいという気持ちだけは、信じて欲しいの」

佐天「……」

心理定規「……お願い」

佐天「……」

佐天「……初春の……」

心理定規「?」

佐天「……私が、初春の助けになれるなら……私は……」

心理定規「……」

佐天「…………あなたの言っていることは、何もかも分からないけれど……」

心理定規「……えぇ」

佐天「初春を助けたい、って思いが同じなら……」

心理定規「……」

佐天「……協力、します」

心理定規「!」

佐天「……最後に会ったとき、私、初春に何が起こってるのか、全然分かってなかったと思うんです」

佐天「……長年初春と友達やってて、こんなに初春のことを分かってあげられなかったのって、初めてだった」

佐天「初春がどう思うかは分からないけど……初春と、ちゃんと話したいんです」

佐天「……私に出来ることがあるなら、何でもやります」

佐天「初春を、助けて下さい。お願いします!」

何とも真っ直ぐで、純な心だった

目の前に居ると、私の心がまるで黒みがかかった灰色に見えてしまう

……初春飾利には、佐天涙子には、二人だけに見える硬く塗り固められた心の距離がある

私の定規は、中々に味気ないものだったと久々に思った





心理定規「……決断を有難う。佐天涙子さん」



けれども、ここからは……

この定規が、彼女を見つけ出す指標となる

頼まれるまでもない。私は、絶対に見つけ出す

見つけ出さなければ、気が済まないのだから



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

初春の部屋

警備員A「……と、現場についてはこんな所です」

黄泉川「ふん……?ま、とにかく奇妙な事件ってことは分かったじゃん」

警備員B「本当ですよね、仮にガス爆発などの場合でも、こうも部屋の一部が抉り取られるように欠損する例なんて聞いたことが……」

黄泉川「ふーむ、ふむ……壁と床に着いている、抉り取られる傷……」

黄泉川「巨大な何かが……部屋の中で無造作に暴れ回ったような……」

カサカサ

警備員A「あれ、今何か灰色のゴキブリが……?」

警備員B「ご、ゴキブリ?」

黄泉川「……灰色?」

警備員A「き、気の所為ですかね……?」






???「……事件は現場で起こる訳ですが」

???(ゴキブリ)「……これといった手掛かりは無し……ですかね」

カブトムシ(ゴキブリ)「それにしても原型の色を出すだけで目立ちにくくなるとは……この体も意外な使い方があったものです」

カブトムシ「しかしここまで来て何も手掛かり無しで第一位と戦うというのもなにやら心細いですね……ん?」

カブトムシ「……あの時、未元物質の羽で抉られた壁に……何か残留反応が……」ペロッ

カブトムシ「こ、これは……!?」ペロ

カブトムシ「未元物質……のようでもありますが、何やら不思議と味がマッタリしているような……?」ペロペロ

カブトムシ「……一応、この部屋にある羽によってつけられた傷を隅々まで調べてこの物質を取り込んでおきましょう」ペロペロ

カブトムシ「第一位への戦闘で、何らかの役に立つかもしれませんしね」ペロペロ

カブトムシ「……」ペロペロ

カブトムシ「……」ペロペロ

カブトムシ「……」ペロペロ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


垣根「いや、おかしいだろ」

初春「何がですか」

垣根「ゼリーの数だよ!一個ってどういうことだ!」

垣根「丸々一袋開ければいいだろ」

初春「……はぁ……」

初春「……この昆虫ゼリーを買ったのは誰でしたっけ?」

垣根「ぐっ……」

初春「初日は最初ということで大目に見ましたけど」

初春「……娯楽としてのゼリーが食費を圧迫することを許せる訳ではありませんから」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カブトムシ「……」

カブトムシ「これは……いけない」

カブトムシ「何故、思い出すのでしょう…………立ち止まってはいけないのに」

カブトムシ「……」ペロペロ

カブトムシ「……何故、こんなにも味気ないのでしょうね、未元物質というものは」ペロペロ

カブトムシ「……」ペロペロ

カブトムシ「……」

カブトムシ「……この戦いが終わったら」

カブトムシ「冷蔵庫と、彼女と、彼女の親しい友人と……あと、何だかんだで『垣根帝督』を見てくれていたあの人と一緒に」

カブトムシ「昆虫ゼリーを食べるのを、楽しみとしておきましょう」

カブトムシ「ふふ、これは……尚更生き残らなければいけませんね」

カブトムシ「……そう、生き残ったら」

カブトムシ「……」

カブトムシ「……私は……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ガコンガコン……


カチッ


冷蔵庫「……」



冷蔵庫「……」

バサリ

冷蔵庫「行kか」

投下終了

これでやっと冷蔵庫が戦います

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月11日 (火) 14:40:04   ID: aBEVpUxU

どうでもいいが、カテゴリの一部が艦これになってる

2 :  SS好きの774さん   2014年03月22日 (土) 21:24:51   ID: XDY4BeF6

続き待ってます!

3 :  SS好きの774さん   2014年03月23日 (日) 23:31:22   ID: pP7wH54A

艦これとは何だったのか

4 :  SS好きの774さん   2014年06月11日 (水) 23:00:25   ID: wMCmvUid

なんだか自然消滅しそうな予感…

5 :  SS好きの774さん   2014年06月16日 (月) 17:05:08   ID: 77vYUgtf

えぇっと…1ヶ月以上完全に沈黙してないかここ?
読者による書き込みすら全然されてないし失踪カウントダウンか?

6 :  SS好きの774さん   2014年06月23日 (月) 12:58:10   ID: X8OttFXw

完結扱いになってるな…正確には未完結だが

7 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 19:28:41   ID: p3l-tTwl

むぅー、未だに続きこないな

8 :  SS好きの774さん   2014年07月26日 (土) 13:34:55   ID: qDCi-PqZ

もう1ヶ月経ったな

9 :  SS好きの774さん   2014年11月27日 (木) 18:38:28   ID: xFtDkMnw

なるべく早く続きをお願いします!

10 :  SS好きの774さん   2015年01月13日 (火) 07:51:35   ID: wYeAphG6

更新待ってました(^ω^)

11 :  SS好きの774さん   2015年01月25日 (日) 18:49:26   ID: jp6JyYbl

いや〜、
面白い

12 :  SS好きの774さん   2015年02月12日 (木) 08:00:40   ID: 1RoBkgX5

続きに期待して待ってます。

13 :  SS好きの774さん   2015年03月18日 (水) 19:19:57   ID: 4QkG55qC

りょ

期待して待ってる

14 :  SS好きの774さん   2015年03月19日 (木) 07:17:41   ID: 1dTcV_8t

はやく続き来ないかなぁ

15 :  SS好きの774さん   2015年04月16日 (木) 12:56:28   ID: GHXz1ojQ

続きに期待(≧∇≦)

16 :  SS好きの774さん   2015年05月24日 (日) 10:03:23   ID: LtGy9q7D

おいおい…エタってるじゃねえか

17 :  SS好きの774さん   2015年05月25日 (月) 13:17:39   ID: px8IernX

実に残念だ

18 :  SS好きの774さん   2015年05月27日 (水) 19:07:13   ID: Ro5TBm3V

ss速報の一ヶ月ルールに引っかかってスレが処理されたのか
新スレが立てられればいいが、望み薄かね

19 :  SS好きの774さん   2015年06月26日 (金) 19:21:14   ID: mXoubEH8

途中でやめてしまうのはあまりにも残念過ぎる

20 :  SS好きの774さん   2015年10月26日 (月) 14:07:43   ID: Y0C1UaMV

つづきはよしろよ

21 :  SS好きの774さん   2016年05月20日 (金) 20:38:10   ID: 9Etg3h2n

もったいねえな…これ多分完結したら俺ら泣くぜ

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