織莉子「魔法少女の」キリカ「パンツ狩り」(493)

どうして、こうなったのだろう。

マミ「何か、言うことがあるんじゃないの?」
キリカ「……すみません」

わたしは、何も間違ったことはしてないはずなのに。

さやか「それだけ?もっと他になんかあるよねぇ?」

織莉子「謝るくらいしか出来ません……」

辺りは、荒れ果てた見滝原の町並み。

杏子「なんでゆまも一緒になってやってたんだよ?」

ゆま「ごめんなさいキョーコ……でも、織莉子お姉ちゃんが……」

わたしとキリカ、それに千歳ゆまは、五人の少女に囲まれていた。

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ほむら「……まぁ、過ぎたことはもういいわ。謝るのもいいけれど、それより先にやるべきことがあるでしょう?」

織莉子「は、はい。全て承知しています」

暁美さんの言葉に気圧され、わたしはひとつの鞄を差しだした。

まどか「も、もう二度としないでね?」

織莉子「深く反省していますので、どうか、お慈悲を……」

鹿目さんが、恥ずかしそうにしながらその鞄の中身をぶちまけた。
中から出て来たのは……―――色とりどりの、下着だった。

事の始まりは、今よりひと月程前に遡る。

織莉子「………鹿目まどか………」

わたしの魔法少女としての能力、『未来予知』。
それを終えたわたしは、静かに目を開けた。
最悪の魔女となる可能性を秘めた少女の名を呟く。

キリカ「どうかしたかい、織莉子?ずいぶんと怖い顔をしているけれど」

わたしの一番の理解者、呉キリカがすっかり冷めきった紅茶を口に含みながら、わたしに問いをぶつけて来る。

織莉子「キリカ……いえ、なんでもないわ」

キリカ「それならいいんだけど……それで?この街の崩壊を食い止める手立ては、思いついたかい?」

織莉子「………ええ、そうね」

わたしの戦いに、この子を巻き込んでもいいものだろうか。少しだけ、悩む。

キリカ「わたしに、遠慮していないかい、織莉子?」

織莉子「え?」

キリカ「もしそうだとしたら、そんな事は考えないでいい。わたしには、キミさえいてくれればいいんだから」

織莉子「キリカ……」

キリカ「聞かせてよ、織莉子。わたしは、何をしたらいい?」

キリカ……あなたはそう言うけれど、それはわたしも同じ。
わたしも、あなたさえいてくれればそれでいい。
そうだ、わたしの世界。それを守る為には。

織莉子「……パンツ狩り、ね」

―――手段なんて、選んでられる場合ではない。

キリカ「え?」

織莉子「聞きとれなかったかしら?」

キリカの素っ頓狂な声に疑問を持ち、確認を取る。

キリカ「いや、聞きとれたとは思うんだけれどね」

織莉子「なら、問題はないでしょう?」

もう一口、紅茶を口に含む。
ああ、甘い。

キリカ「ええっと……確認しても、いいかな?」

織莉子「何かしら?」

キリカ「わたしの聞き間違いじゃなければ……『パンツ狩り』、と言う風に聞きとれたのだけど」

織莉子「ええ、そうよ」

紅茶のカップをテーブルに置き、茶菓子のひとつを口へ運ぶ。

キリカ「いや、すまない織莉子。わたしはキミの事を全部理解していたつもりだけど、さすがにそれは意味がわからないよ」

織莉子「パンツ狩りの意味が?」

キリカ「そっちじゃなくて……いや、ある意味それで合ってると言えば合ってるんだけどね」

織莉子「パンツ狩りはパンツ狩りよ、キリカ。わたしが言う子のパンツを、狩ってきて欲しいの」

キリカ「一体、それに何の意味が?」

織莉子「あら、気になる?」

キリカ「ああ、そりゃあね。まぁ、でも、織莉子が意味があると言うのなら、わたしはそれに従うけれど」

織莉子「意味ならあるわ。非常に、深い深い意味が」

キリカ「それは、わたしには聞かせてくれないのかい?」

織莉子「ごめんなさい。これは、わたしひとりが理解していなければならないことなの」

キリカ「……ふむ、なるほど。わかったよ。全て終わった時、聞かせてくれよ?」

織莉子「ありがとう、キリカ。それじゃ、まずは……」

キリカに、作戦概要を話し始める。
最終的な目標は、ひとつだ。
佐倉杏子、巴マミ、美樹さやか、暁美ほむら、そして鹿目まどかのパンツを狩ってくること。

その為には、どうしても必要な協力者がいる。

織莉子「まずは、千歳ゆまと協力関係を築きたい」

キリカ「千歳ゆま?誰だい、それは?」

織莉子「今あげた人物のウチ、一人と関係の深い人物。その子と協力関係を築ければ、最終目標にグッと近づくことが出来るわ」

キリカ「なるほどね。その子は今、どこにいるんだい?」

織莉子「ちょっと待ってね」

再び眼を閉じ、千歳ゆまの行動を予知する。

織莉子「………風見野の、町外れ。そこで、彼女は一人で行動を取る機会があるわ。そうね、ちょうど一週間後、といったところかしら?」

キリカ「ふむ、了解だ。なら、それまでは暇、と言うことだね」

織莉子「いえ、そうでもないわよ?」

キリカの背後に、視線を送る。
一体の魔女が、姿を現した。

キリカ「……なんだコイツは。わたしと織莉子の楽しい楽しいお茶の時間を邪魔するなんて、無粋な奴だね」

織莉子「新しい紅茶を淹れましょうか。お砂糖は何個?」

キリカ「んー、そうだね。たまには大人っぽく、二個で飲んでみようかな」

キリカは魔法少女に変身し、その魔女目掛けて跳躍する。

織莉子「ジャムはいらないのかしら?」

キリカ「わたしは子供じゃないからね。砂糖二個だけで十分飲めるのさ!」

織莉子「そう、わかったわ」

二人分の紅茶をカップに注ぎ、椅子に座る。
キリカはそんなわたしの様子を見ながら、魔女を鉤爪で切り裂いていた。

キリカ「よっし、それじゃ!魔法少女のパンツ狩り、その祝砲と行こうか!」

最後に両断した上半身を空高く放り投げ、その体を破砕した。

織莉子「……景気のいい祝砲ね。これなら、うまく行きそうな気がするわ」

ここまで
カオス且つキャラ崩壊ありになる予定なので、一応閲覧注意でお願いします

それから一週間後。

ゆま「キョーコに言われたものは、えっと……」

織莉子の命を受けて行動していたキリカは、千歳ゆまの動向を探っていた。

キリカ(………)

今まで佐倉杏子と行動していたゆまが、路地裏で杏子と分かれた。
その機を見計らったキリカが、ゆまに接触を試みる。

キリカ「やあ、千歳ゆま」

ゆま「ん? お姉ちゃん、誰?」

キリカ「わたしの名前は呉キリカ。キミや、キミと行動を共にしていた佐倉杏子と同じ、魔法少女だよ」

ゆま「ま、魔法少女?」

魔法少女と言う単語を聞いたゆまが、二、三歩後ずさる。

キリカ「警戒しなくってもいい。わたしは、キミに協力を求めに来たんだ」

ゆま「ゆまに、協力を?」

キリカ「ああ。とりあえず、わたしに着いてきてくれるとありがたいんだけど」

ゆま「で、でも、キョーコに言われたものを持ってかないと……」

キリカ「それは、これのことかな?」

言いながら、キリカはひとつの買い物袋を差し出す。
その中には、お菓子やら惣菜やらカップめんやらの食べ物が入っていた。

ゆま「あ、すごい!なんでゆまが買いに行こうと思ってたものを?」

キリカ「話は、織莉子の家でしたいんだ。時間はそれほど取らせない。いいかい?」

ゆま「うーん……キョーコが心配するんじゃないかなぁ……」

キリカ「大丈夫、普通に買いものをするだけの時間で帰られるようにするから」

ゆま「それなら……」

キリカ「交渉成立だね。それじゃ、行こうか」

キリカはゆまを連れだって、織莉子の家へと足を向ける。

織莉子「お帰り、キリカ。それに、いらっしゃい、千歳ゆま?」

庭先で、二人の少女の来訪を歓迎する。

キリカ「言われた通り、ゆまを連れて来たよ、織莉子」

織莉子「ありがとう、キリカ」

ゆま「お姉ちゃんも、魔法少女なの?」

織莉子「ええ、そうよ。ゆまちゃんも、座って。おいしい紅茶を淹れてあげるから」

ゆまちゃんを椅子へ促し、わたしも椅子に座る。

織莉子「お砂糖は何個がいいかしら?」

ゆま「んーとね、三個!」

キリカ「ふっ……織莉子、わたしは今日も二個で頼むよ」

織莉子「あら、頑張るわねキリカ。前は二個ですごく渋い顔をしていたけれど、大丈夫なの?」

キリカ「お、織莉子!それは言わない約束だろう!?」

ゆま「?」

二人の少女の様子を眺めながら、紅茶の用意をする。
ゆまちゃんにあげる紅茶には、砂糖を三個。
キリカにあげる紅茶には、砂糖を二個。
わたしが飲む紅茶には、砂糖を一個。
それぞれの紅茶を配り終えたところで、話を始める。

織莉子「まずは、自己紹介ね。わたしの名前は美国織莉子。織莉子、で構わないわ」

ゆま「織莉子お姉ちゃんに、キリカお姉ちゃんだね。ゆまは、千歳ゆま!」

織莉子「実はね、ゆまちゃん。わたしたちに、力を貸して欲しいの」

ゆま「力を?」

織莉子「ええ。この世界を……守る為に」

ゆま「せ、世界?」

いきなりそんな壮大な話をしても、信じてはもらえないだろうか。

ゆま「うーん……よくわかんないけど、キョーコがいたらダメなの?」

織莉子「佐倉杏子は、わたしたちのターゲットの一人なの」

ゆま「たっ、たーげっと!?え、じゃあ織莉子お姉ちゃんとキリカお姉ちゃんはキョーコの敵なの!?」

キリカ「おっと、勘違いしてもらっては困るよ。何も取って食おうとか、そういう話じゃない」

織莉子「ええ、戦うだとか、そういう物騒な話ではないわ」

ゆま「……何が何だかよくわかんないよ」

織莉子「お願い出来ない?」

ゆま「めーわくをかけないんなら……うん、いいよ」

織莉子「迷惑を……」

キリカ「掛けない……」

ゆま「?」

織莉子「と、当然よ!ええ、それはもう!少しだけ……ほんのちょっとだけ、迷惑を掛けることにならないこともないけれど……」

キリカ(織莉子、それは言わない方がいい)

織莉子(そ、そうね……)

織莉子「それじゃ、ゆまちゃん。力を貸して欲しくなったら、またこちらから接触するわ」

ゆま「うん、わかった!」

キリカ「時間を取らせたね、ゆま。ほら、約束通り、これを佐倉杏子に持って行ってやりな」

キリカが、食料品が入った袋をゆまちゃんに渡す。
ゆまちゃんはそれを受け取ると、

ゆま「ありがとう、キリカお姉ちゃん!それじゃ、またね!」

元気に走り去っていった。

織莉子「さて、と……キリカ、いいかしら?」

キリカ「うん?」

織莉子「今から、病院に向かって欲しいの」

キリカ「病院に?と、言うことは……」

織莉子「ええ……」

Target1 巴マミ

これで準備期間終了
次の投下から本格的にパンツ狩りが始まります

キリカ「さて、巴マミはどこにいるかな……っと」

病院の前まで来ると、キリカのソウルジェムが反応を示した。
この辺りに、魔女がいることを示す反応。

キリカ「……なるほど、わかりやすいね」

病院の駐車場の出入り口付近、そこに結界を張っているようだ。
魔法少女姿に変身し、その鉤爪で結界への入り口を切り開く。

キリカ「ふむふむ、この様子だとまだ魔女は孵化していないようだね」

独り言をつぶやきながら、中枢を目指して歩いて行く。
と、その途中。

ほむら「く、呉キリカ!?」

キリカ「ん?」

誰かに名前を呼ばれたキリカは、辺りを見回す。
声の主は、キリカの頭上にいた。

キリカ「キミは、えーと……暁美ほむら、だっけ」

ほむら「くっ……何をしに来たの!?」

キリカ「何を?ふふ、聞きたいのかい?」

キリカはあくまでいじわる程度の意味合いで、笑って見せる。
その顔を見たほむらが、忌々しそうに顔をしかめた。

キリカ「まぁ、今日のターゲットはキミじゃない。先を急がせてもらうよ」

ほむら「ま、待ちなさいっ!!」

ほむらの言葉に耳を貸さず、キリカは更に奥へと向かう。

キリカ(あ、でもあの状態だったなら暁美のパンツを狩るの、簡単だったんじゃないかな……)

足を止め、振り返る。

キリカ(……まぁ、いいか。織莉子は暁美については何も言っていなかったし)

再び前に向き直ると、複数の使い魔がキリカの前に姿を現していた。

キリカ「おっと、そうこうしているウチに魔女が孵化してしまったようだね。わたしも急がないと」

地を蹴り、使い魔をすれ違いざまに鉤爪で切り刻みながら奥へと向かう。

キリカ(ここが、中枢だね)

辺りに視線を巡らす。
今回のターゲット、巴マミがマスケット銃を構えている。
そこから少しだけ離れた場所。そこに、美樹さやかと鹿目まどかがいるのもキリカは確認した。

キリカ(織莉子の指示では、確か……)

この魔女を相手に、マミは窮地に陥る。

キリカ(そこが狙い目、だったっけ)

マミと魔女の戦いを見守る。

マミ「これで終わりよ!!」

マミが魔女をリボンで拘束し、召喚した大砲を撃ち放つ。

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

撃ち放った大砲は、魔女の体を撃ち抜いた。

さやか「いやったぁぁ!!」

すると、その魔女の体がぐにゃりと歪み、口から大きな体が出て来た。

マミ「………えっ?」

キリカ(今だっ!!)

時間遅延の魔法を行使し、マミに急接近する。

まどか「あ、あの人誰っ!?」
キリカ(手早く……ずり下ろすっ!!)

気取られないように背後に接すると、スカートをたくしあげてパンツをずり下ろした。

マミ「きゃあああああっ!!?」

魔女の急接近に呆然としていたマミが、急にしゃがみ込む。

マミ「な、何!?何が起こったの!?」
さやか「マミさんっ!後ろ、後ろに誰かいます!!」

しゃがみ込んだことで、魔女の噛みつき攻撃を回避していた。

キリカ「巴マミのパンツ、ゲットぉぉ!!」

キリカは手を掲げる。
その手には、黒いレースのパンツが握られていた。

マミ「だ、誰あなたは!?って、そ、それ……」

キリカ「わたしの目的は果たした!退散を決め込むよ!!」

魔女とマミ、その他色々なことをほっぽり出して、キリカは逃げだした。

マミ「ま、待ってええええっ!!」

スカートを押さえながら立ち上がり、キリカに向けて手を伸ばす。

さやか「な、何がどうなってるの……?」

まどか「わ、わかんないよ……急に、あの黒い人が現れたかと思うと、マミさんのパンツを……」

まどかとさやかは、呆然としていた。

シャルロッテ「グアアアアア!!」

マミ「っ、あなたに構っている暇はないのよ!!」

―――――
―――


キリカ「案外簡単だったね!」

結界の外を目指しながら、キリカは高らかに笑う。
織莉子の指示はやはり完璧だ、と感動していた。

ほむら「! く、呉キリカ!マミはどうしたの!?」

キリカ「ああ、暁美。そういやキミがいたんだったね。モノのついでだ、解放してあげるよ」

走りながら跳躍し、ほむらの体を拘束していたリボンを切り刻む。

ほむらよりも先に着地すると、なおも出口へ向けて走り続ける。

ほむら「………なんなのよ、一体……?」

ほむらは、その後ろ姿を呆然と見送っていた。

ほむら「そ、そうだ!呉キリカの事よりも、巴マミを……!?」

結界の奥を目指そうとしたところで、結界が崩壊を始めていた。

~~~

マミ「うぅっ……」

さやか「ま、マミさん、大丈夫ですか?」

マミ「スースーするわ……一体なんなのよ……」

魔女を倒したマミは、魔法少女の姿から制服姿へと戻る。
スカートの裾を押さえ、涙目になっている。

まどか「で、でも、あの人、マミさんの窮地を救ったようにも見えたんですけど……」

さやか「まさかぁ!?だって、マミさんのパンツ持ってったんだよ!?」

マミ「い、言わないで美樹さんっ!!」

ほむら「……無事、だったのね、巴マミ」

マミ「あ、暁美さん……そうだ!あなたを拘束している時に、誰かが通りがからなかった!?」

ほむら「ええ……呉キリカが、通りかかったわ」

さやか「呉キリカ?」

まどか「だ、誰?」

ほむら「………わたしの敵、だと思ったのだけれど……」

マミ「なんでも良いわよっ!何が目的なのよ、あの人は!」

ほむら「何かされたの?」

マミ「魔女と戦っている時に、後ろからわたしのパンツを……っ!」

ほむら(パンツ?)

マミ「な、なんでもないわっ!」

ほむら(……何が目的なのかしら……呉キリカ)

Target1 巴マミ 完了

ここまで

提案した奴だけど本当にあの企画をやるとは思わなかったwwwwwww
がんばれwwwwwマジがんばれwwwww

~~~

キリカ「ただいま、織莉子!」

元気よく玄関のドアを開け、キリカが帰って来た。
この様子から察するに、最初の目的は達成できたようだ。

織莉子「お帰りなさい、キリカ。どうだった?」

キリカ「ああ、ばっちりだ!」

嬉しそうに、手に握られていたものを見せて来る。

織莉子「さすがね、キリカ。首尾はどうだったの?」

キリカ「織莉子の言うとおり、魔女にやられそうになったところで乱入、さくっと狩ってこれた」

織莉子「巴マミは?生きているの?」

キリカ「うん?ああ、わたしが後ろから狩った時に、しゃがみ込んだことで攻撃を回避したようだね」

織莉子「そう……思惑通り、ね」

キリカ「? まぁ、いいや。それで、次のターゲットは?」

織莉子「ええ」

キリカの言葉に返事をして、再び眼を瞑る。

織莉子「………次の決行は今日より二日後。今度はゆまちゃんの協力が必要ね、これは」

キリカ「二日後っていうことは、明日一日は猶予があるんだよね?なら、明日ゆまと接触すれば大丈夫かな」

織莉子「そうね、そうしましょう」

~~~

翌日。杏子と行動を共にしているゆまに接触するべく、キリカは風見野へとやってきていた。

キリカ(んー……と。こっちかな)

魔力の発する場所を探しながら、歩きまわる。
20分ほど歩いたところで、二つの魔力反応を見つけることが出来た。

場所は廃教会前。その建物に中に、二人はいるようだった。

キリカ(佐倉と接触するわけにはいかない……テレパシーでゆまだけに話しかけてみよう)

キリカ〈聞こえるかい、ゆま?聞こえるなら―――〉

~~~

ゆま「……っ?」

杏子「ん?どうかしたか、ゆま?」

ゆま「う、ううん、なんでもない」

ゆま(声……?この声は、キリカお姉ちゃんかな?)

キリカ〈返事は出来なくてもいい。一人で、建物の外に出てきて欲しいんだ〉

ゆま(建物の外……?)

ゆま「ごめん、キョーコ。ゆま、ちょっと外の空気吸って来る」

杏子「あ、あぁ」

外へ出て行くゆまを、杏子は複雑そうな顔で見送る。

杏子(気ぃ遣わせちまったかな……)

~~~

ゆま「えーと……」

キリカ「来てくれたね、ゆま」

ゆま「あっ、キリカお姉ちゃん!どうしたの?」

キリカ「ああ、実は……」

キリカは、ゆまに協力して欲しいと言うことを簡潔に説明した。

ゆま「見滝原……隣町、だよね?」

キリカ「ああ。わたしと織莉子は、その街を拠点にしてるんだ。出来れば、ゆまと佐倉にも見滝原に来て欲しいんだけど……」

ゆま「んー……キョーコに相談してみる」

キリカ「助かるよ」

ゆま「とりあえずは、明日ゆまだけキリカお姉ちゃんについて行けばいいのかな?」

キリカ「そうだね、そんな感じで。ああ、後、テレパシーのやり方も教えておくよ」

ゆま「てれぱしー!すごい!魔法少女ってそんなことも出来るんだ!」

―――――
―――


キリカ「それじゃ、明日、織莉子の家まで来てくれよ、ゆま」

ゆま「うん!またね、キリカお姉ちゃん!」

ゆまは元気よく手を振りながら、教会の中へと戻って行った。
それを見送り、キリカも帰路に着く。

その頃、織莉子は織莉子で別行動を取っていた。
上条恭介の入院している病院の近く。その路地裏で、魔法少女姿に変身する。

織莉子「そして、これを、と……」

自身の武器である水晶をひとつ取り出し、その上に『ある物』を乗せる。
その水晶を操り、恭介の病室へと送り出す。

恭介「ふわぁぁ……日中は本当に暇だな……ん?」

読書を中断して外を眺めていた恭介は、自身の病室へ向けて飛んでくる水晶をその視界に捉えた。

恭介「なっ、なんだ!?」

織莉子の操る水晶は、開いている窓から恭介の病室へ侵入。

恭介「う、うわ、うわああぁぁっ!!?」

恭介の叫びなど意にも解さず空中を漂う、「彼から見れば」異様な物体。
それは、上に乗っかっている『ある物』を落とすと、Uターンで外へと戻って行く。

恭介「…………な、なんなんだ、あれは……。夢、かな……はは、日々のリハビリで僕も疲れてるんだな、きっと」

無意識のウチに水晶が落とした『ある物』を引き出しにしまうと、恭介は横になり目を瞑った。
きっとこれは悪い夢に違いない、と自身に言い聞かせながら。

織莉子「お疲れ様」

戻って来た水晶を手に取り、それを魔力へと還元する。

織莉子(これで明日のお膳立ては完了、ね)



そして、夜。
織莉子とキリカは、明日の作戦を立てていた。

キリカ「それで、織莉子。次の決行場所はどこだい?」

織莉子「次も、病院ね。今回は、病院の建物の中。部屋番号は……―――」

キリカ「ん、了解だ」

Target2 美樹さやか

おまけ1:シャルロッテ戦後の巴マミ

マミ「うぅっ……」

まどか「ま、マミさん、元気出して……」

さやか「あっ、そ、そうだ!ホラ、マミさん!マミさんって、リボン出せるじゃないですか!
     それでグルグル巻きにしちゃえば、とりあえずは家まで凌げるんじゃないんですか?」

マミ「! さすがよ、美樹さん!その発想は無かったわ!」

まどか(マミさんかなり天パッてるみたい……)

マミがリボンを出している途中、ほむらはさやかに話しかける。

ほむら「美樹さん、巴マミに一体何があったの?」

さやか「え?あ、あぁ……さっき現れた、その、キリカ?って人に、パンツを持ってかれて……」

ほむら「えっ?ど、どういうこと?」

さやか「あ、あたしもよくわかんないんだけど……どうやらそれが目的だったみたいでさ……」

ほむら(本当に何が目的なの……?バックに美国織莉子がいるのはまず間違いないでしょうけど……)

さやか「っつーか気安く話しかけないでよ。あんた、マミさんが戦ってる時にどこで何をしてたのさ?」

まどか「さ、さやかちゃん……ほむらちゃんは、マミさんに拘束されてただけなんだよ」

さやか「! ………」

ほむら「言い訳をするつもりはないわ」

さやか「いや、あの……なんか、ゴメン」

ほむら(普段からそれくらい素直ならいいのに……)

マミ「お待たせ、みんな!とりあえず、応急処置は完了よ!」

まどか「あ、マミs」

さやか「」

マミ「? どうかした?」

まどか「い、いえ……なんでも……あ、あはは……」

さやか(見てられない……)

ほむら「スカートの裾からリボンの端が見え隠れしているわよ、巴マミ」

まどか・さやか(ほむらちゃん(転校生)、直球!?)

マミ「うぐっ…仕方ないじゃない……家まで帰れば、換えの下着があるわ。それまでもてばいいのっ!」

マミの家―――

マミ「ただいまー……」

QB「おや、おかえりマミ。どうやら、無事魔女を倒せたようだね」

マミ「無事……ね。そうね、一応無事と言えば無事ね」

QB「?」

マミ(窮屈で仕方ないわ……早く換えの下着を、っと)

寝室へ向かい、寝巻きに着替えるのと同時に下着も着用する。

QB「何かあったのかい?」

マミ「……ねぇ、キュゥべえ。この街に、わたし以外の魔法少女なんているの?」

QB「ああ、つい最近ね、二人ほど契約したよ」

マミ「ど、どうして教えてくれないのよっ!」

QB「他人に口外しないでくれってその人たちに言われていてね。そんなことを聞いて来ると言うことは、はち合わせたのかい?」

マミ「わたしが魔女と戦っている時に……背後から、こう、ガバっと……と言うか、ズリッ、と言うか……」

QB「何を言いたいのかわからないよ……」

マミ「とっ、とにかく!その二人、名前を教えてちょうだい!後輩の前で散々恥を掻かせてくれたお礼をしなきゃならないの!」

QB「ああ、彼女達の名前は―――」

おまけ1:シャルロッテ戦後の巴マミ 終わり

ここまで

翌日、夕方。
美国の家に、一人の訪問者があった。

キリカ「いらっしゃい、ゆま」

織莉子「待っていたわ」

ゆま「うん!それで、きょーりょくしてほしいことって、なに?」

織莉子「キリカについていってくれればいいわ。詳しい指示は、キリカに伝えてあるから」

キリカ「そういうことだ、ゆま。行こうか」

ゆま「うん、いこー!」

織莉子「今回は裏でわたしも動くから、よろしくね、キリカ」

キリカ「了解。気をつけてね、織莉子」

キリカとゆまが並んで出て行くのを見送った後、織莉子も行動を開始する。

織莉子(町外れの……廃工場だったわね)

病院の中へと入ったキリカとゆまは、とある一室へと向かう。

『上条恭介』

そう書かれた病室の前に立ちつくす二人。

キリカ「個室とか……どれだけのおぼっちゃんなんだ?」

ゆま「ここで、なにかするの?」

キリカ「ああ。いいか、ゆま。わたしの言うことをちゃんと守ってくれよ……」

病室の中では、さやかと恭介が話をしていた。

さやか「ね、ねぇ、恭介。何、聴いてるの?」

恭介「……亜麻色の髪の乙女」

さやか「ああ、ドビュッシー?いい曲だよねぇ……」

さやかは必至に恭介に語りかける。
恭介はそんなさやかの言葉を聞き流し、常々疑問に思っていた事を口にする。

恭介「さやかはさ。僕をいじめているのかい?」

さやか「……えっ……?」

恭介「なんで今でも僕に音楽なんて聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「いや、だって、恭介、音楽好きだし……」

恭介「っ……もう聴きたくなんてないんだよ!!自分で弾けもしない音楽なんて!!」

叫びながら、左手をCDのケース目掛けて振り下ろす。

キリカ「おっとっ!」

さやか・恭介「!?」

その左手がケースに直撃する前に、キリカによって止められていた。

恭介「だ、誰だキミはっ!?」

さやか「あっ、あんた昨日の!」

キリカ「ゆま!やっちゃってくれ!」

ゆま「え、ええと、ホントにいいの?」

キリカの言葉に、動揺を見せるゆま。

キリカ「どの道わたしが止めていなければ、これは砕けていたんだ。構うことはない、全力でやれ!」

ゆま「う、うん!えいっ!!」

キリカの言葉を受け、その手に握っていたハンマーでCDケースを盛大に叩き割った。

恭介「なっ、なんなんだ一体キミ達は!?」

キリカ「ゆま!キミはもう行っていていいよ!後はわたしの仕事だ!」

ゆま「わ、わかった!ごめんなさい、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

さやかと恭介に謝罪の言葉を残し、ゆまは病室から出て行く。

キリカ「ふぅ……さて」

ゆまが無事出て行くのを見送ったキリカは、握っていた恭介の左手を解放した。

キリカ「ダメだよ、少年。手は大事にしなきゃあ」

恭介「大事になんてっ……する意味はもうないんだっ……!!」

さやか「恭介っ……」

キリカ「ああ、いや、シリアスとかそういうのいらないから」

ベッドを挟んだ向かい側にいるさやかの方へと歩いて行く。
さやかは恭介に背を見せる形で、キリカと向かい合う。

さやか「な、なんだよっ?」

キリカ「キミ、まだ契約はしていないんだね?」

さやか「あんたには関係ないだろ!?放って……」

キリカ「てやっ!!」

さやかが最後まで言い終える前に、素早くしゃがみ込んでさやかのパンツをずり下ろした。

さやか「うああああああっ!!?な、何すんのさあああああっっ!!??」

反射的に、キリカの顔面を蹴り飛ばそうとする。
が、その右足は虚しくも空を切るだけだった。
さやかのパンツを回収し終えると同時、素早く距離を取ったのだった。






恭介「 っ っ ! ! ! ! 」





キリカ「これにてミッションコンプリート!後は二人でよろしくやりな!」

またも高らかに笑い声を上げ、左手にはさやかが履いていた飾り気のない白いパンツを握って病室から逃げて行く。

さやか「ちょっ、ちょっ!!待ってよおおおおおっ!!」

スカートの下は何も着用していない状態となった為、走って追うことすら出来なかった。

さやか「あ、あぁぁ……」

呆然とキリカを見送ることしか出来なかったさやかは、その場に立ちつくす。
恭介は恭介で、とある一部分から目を背け続けていた。

さやか「何なのよぉ……」

恭介「さ、さやか?」

さやか「……っ!!」

背後から声を掛けられたさやかは、恐る恐る恭介の方へ向き直る。

さやか「あ、あはははっ……」

さやかは、顔を真っ赤にして苦笑いをするしかなかった。
それに対し恭介は、非常に言いずらそうに口を開いた。

恭介「え、ええっと……す、スカート」

さやか「え?」

恭介「………っ」

さやかからは恭介の顔を真正面に捉えることは出来なかったが、恭介の顔もさやかと同じく真っ赤だった。
そこから、先が言えない。

さやか「………?」

疑問に思ったさやかは、自身の腰に手を当てる。
と、気付いた。

さやか「……??」

背中側のスカートの裾が、上着に入りこんでいた。
つまりは、めくり上がっている状態。
そして、スカートの下は……今は、ノーパンなのである。
ここでさやかが思いだすのは、先程の位置関係。






さやか「…………! ! ! ! ! ! ! ! 」




つい先ほどまで、さやかは恭介に背を見せていた。
そう、背中側のスカートがめくり上がり、パンツを履いていない状態で。

恭介「あ、あはは……」

さやか「み、み、み………見た、の……?」

恭介「……………………………ゴメン」

さやか「う……うわ……うわ…………うわあああああああああああああああああっっっっっ!!!?!?!?!?」

パニックを起こすさやかに、何も言うことが出来ない恭介。
この一室は、しばしの間混沌と化すことになるのだった。

―――――
―――


キリカ「ありがとう、ゆま!助かったよ!」

ゆま「う、うん!キリカお姉ちゃん、その手に何を持ってるの?」

走りながら、キリカとゆまは話をしていた。

キリカ「ああ、これかい?今回の戦利品さっ!」

ゆま「……?」

Target2 美樹さやか 完了

ここまで

~~~

その頃織莉子は、見滝原の町外れ、廃工場へとやってきていた。

織莉子(魔女の口づけで人が集まっているようね……)

廃工場の中へと足を踏み入れる。
そこに、目当ての人物がいた。

まどか「仁美ちゃん、正気に戻ってよぉっ!」

仁美「うふふふ、何も恐れることはないですわよ鹿目さん」

織莉子(………)

物陰に隠れ、成り行きを見守る。
まどかは人ごみの中心に据えられていたバケツを窓から放り投げると、物置きへと逃げ込んだ。

ガチャリ、と音が響く。内側からカギを掛けたようだった。

織莉子(……さて)

群がる人から少し距離を置いて、織莉子は魔女結界の居場所を探し始める。

まどか「ど、どうしよ、どうしよ、どうしよ!?そっ、そうだ、マミさん……は、ダメかな、えと、それじゃ……」

携帯を片手にオロオロとしていたところで、魔女が姿を現した。
まどかは、その結界に飲み込まれる。

織莉子(見つけた……待っていて、鹿目まどか……わたしも、今行く)

結界の入り口を見つけ出した織莉子も、結界内へ入り込む。

結界の中を、まどかはふわふわと漂っていた。
複数の使い魔が、その周りを飛びまわる。
織莉子は、自身が召喚した水晶の上に乗り、自由自在に結界の中を飛び回ることが出来ていた。

まどか「いやああああああ、だ、誰か助けてええええええっっ!!」

まどかのその言葉を聞き、織莉子は複数の水晶を撃ちだした。
撃ち放った水晶は、まどかの周りを飛び回っていた使い魔を次々と葬って行く。

まどか「え、えっ!?」

織莉子「大丈夫、今助けますよ、鹿目まどか」

まどかを庇うようにして、織莉子は前に出る。

織莉子「……『魔晶乱舞』」

あくまで冷静に、織莉子は使い魔に相対する。
二つの水晶は、織莉子の手と動きを連動させて使い魔に攻撃を放つ。

やがて、遥か頭上から魔女が姿を現した。

織莉子「悪いけれど、無駄に戦闘を長引かせるつもりはないわ」

両手を左右に大きく広げると、勢いよく両の手を合わせる。
その動きと連動していた二つの水晶が、魔女を挟撃する。

エリー「アハハ……ガガガ……」

織莉子「……」

胸の前で握った手を、今度は頭上に掲げる。
二つの水晶は魔女の体から浮遊して行くと、重なり合い、ひと際大きな水晶に姿を変えた。

織莉子(ええと、確か……)

織莉子「こ、コホンっ!」

何かを思い出しながら、ひとつ咳払い。

織莉子「……こ、これでトドメだああぁぁぁ!!」

恥ずかしそうにそう叫ぶと同時に、握った両手を下に振り下ろした。
大きな水晶は、その振り下ろした両手と同時に魔女の頭上から急降下する。
水晶は魔女の体にぶつかり、その勢いを衰えさせずに地へと落ちて行く。
地面に接したところで、織莉子は握った両手を離した。
大きな水晶が、魔女の体もろとも爆ぜた。

―――――
―――


まどか「え、ええと……あ、ありがとうございますっ!」

織莉子「気にする事はないわ。わたしは、シナリオ通りに動いただけ」

まどか「し、シナリオ通りって……」

織莉子(……ここで、鹿目まどかのパンツを……いえ、まだ時期ではない)

鋭い目つきで、まどかのスカートを射抜く。

まどか「っ……」

まどかは二、三歩後ずさり、スカートの裾を握る。

まどか「こ、この街にマミさんやほむらちゃん以外にも、魔法少女さん、いたんですね」

織莉子「わたしはつい最近契約したばかりだけれどね」

まどか「そう、なんですか?」

織莉子「ええ。……っ!いけない、ここに長居するわけにはいかないわ」

まどか「えっ?」

織莉子「それでは鹿目まどか、ごきげんよう」

織莉子は再び自身の召喚した水晶の上に乗り、窓から夜の空へと飛んで行った。

ほむら「まどかっ!!大丈夫だった!?」

マミ「魔女はどうしたの、鹿目さん!?」

織莉子が窓から出て行ったのと入れ替えに、ほむらとマミが廃工場へやって来た。

まどか「ほむらちゃん、マミさん!ええと、よくわかんないんだけど、わたしの知らない魔法少女が来て、魔女をやっつけちゃって……」

ほむら「……まさか、白い魔法少女?」

まどか「う、うん。ほむらちゃんの知ってる人?」

ほむら「やはり、美国織莉子……」

マミ「っ! 美国織莉子?」

ほむら「知っているの、マミ?」

マミ「キュゥべえから聞いたわ。最近この街で契約した二人の魔法少女。美国織莉子に、呉キリカ」

ほむら「………」

マミ「も、もしかして、鹿目さん……その美国さんに、パンツを持ってかれたりとかは……?」

ほむら「!?」

まどか「い、いえっ!そんなことは、されませんでしたけど……」

ほむら「………何か、目的とかは口走っていなかった?」

まどか「うーん……特には……あ、でも、シナリオ通りとかなんとかは言ってた、かな」

マミ「……随分と、謎の行動を取るのね」

ほむら「マミ、万が一ということがある。わたしの事を完全に信用出来なくても、構わない。
     その二人が何かをしでかそうとした時、わたし一人では手に負えないかもしれない。共闘……出来ない?」

マミ「そうね……わたしも、一対二じゃちょっと不安ね。暁美さん……信用、させてもらうわ」

ほむら「!」

マミはほむらに、握手を求める。
ほむらはそれに答えた。

まどか「よかった……二人とも、仲良くやってね?喧嘩しちゃダメだよ?」

ほむら「ええ、わかっているわ……」

マミ「今後わたし達に害を及ぼそうとした場合は、放っておけないわね」

既に一度出し抜かれているマミの言葉には、それ相応の重みが圧し掛かっていた。

おまけ2:狩られ後のさやかと恭介

さやか「あ、あぅあぅあぅ……」

恭介「………」

二人はかなり気まずかった。
何しろ不可抗力なのだから。

恭介「き、今日の事は、忘れよう。ね、さやか?」

さやか「………」

恭介の提案に、少しだけ頷く。
完全に元気を失っていた。

恭介「あ、あー……そう言えば……」

ふと、恭介は昨日の珍妙な出来事を思い出していた。

恭介(いや、でもあれは、夢だったんじゃ……?)

疑問に思いながら、無意識のウチにしまった『ある物』が入っている引き出しを開ける。
その中には、やはり『ある物』が入ったままだった。

恭介(やっぱり、夢じゃなかったのかな……)

それを取り出し、さやかに差し出す。

恭介「さやか、これ……」

さやか「……?」

俯いていた顔をあげ、差し出された物を見る。

恭介の手には、女性物の新品の下着が握られていた。
水色ベースに、白い水玉模様のパンツ。

さやか「…………………………………………………何これ」

ひとしきり沈黙した後、ようやく絞り出せた言葉がそれだった。

恭介「い、いや、違うよっ?これはその……」

言い訳をするかのように、恭介は必至にさやかに言い聞かせる。
昨日の昼間に起こった、わけのわからない出来事。

さやか「恭介………」

恭介「な、なんだよその目はっ!?僕は何も嘘は言ってないぞっ!?」

さやか(……まぁ、でも、確かに恭介がそう都合よく女物の下着を持ってるとも考えにくいよね……と言うか、考えたくないよ……)

恭介「とにかく、下着をつけないまま帰るわけにもいかないだろ?だから、それ、履いて行きなよ」

さやか「そ、それじゃ、その……」

恭介「ぼっ、僕は外を眺めてるからっ!」

グリンッ、と音がするのではというほどの勢いで首をひねり、窓から外を眺める恭介。
それを確認したさやかは、恥ずかしそうにしながらゆっくりとそのパンツを着用した。

さやか「あ、ありがと、恭介。もういいよ」

恭介「あ、あぁ、うん……」

一度視線を逸らすと、まともにさやかの顔を見れそうに無い。
その為、許可が取れたにも関わらず恭介は変わらず外を眺めつづけていた。

さやか「あ、あたし、今日はもう帰るね」

恭介「き、気を付けてね……」

さやか「うん……ゴメン、ね、恭介。もう、CD、持ってこないから」

恭介「………」

おまけ2:狩られ後のさやかと恭介 終わり

織莉子「え?上条くんの部屋に送り届けたパンツ?」

織莉子「わたしなりにさやかさんに合いそうなものを選んだだけです」

織莉子「他意はありませんよ、ふふふ……」

ここまで

織莉子「ただいま……っと」

キリカ「織莉子!今日は織莉子の方が遅かったんだね」

家の中へ入ると、心配そうな顔をしたキリカが迎えてくれた。

織莉子「キリカ。ええ、ちょっと、ね。そちらの進捗はどうだったの?」

キリカ「ふふん、問題ないよ。美樹さやかも完了だ」

キリカと互いの進捗を話し合いながら、居間へとやってくる。

織莉子「二人の様子はどうだった?ちゃんと、引っ掻きまわしてきた?」

キリカ「そりゃあもう。あれだけ混乱させておけば、さやかが契約することもないんじゃないかな」

織莉子「いい感じね。ゆまちゃんと佐倉杏子の方は?」

キリカ「ああ、別れ際にゆまに聞いたよ。最初は佐倉も渋ったようだけど、見滝原に来てくれるってさ」

織莉子「順調、ね」

キリカ「二人のパンツは洗って干してある。次のターゲットは、誰になるんだい?」

織莉子「そんなに焦らないで。今、紅茶を淹れるわ」

台所へ向かい、紅茶とお茶菓子の用意をする。

織莉子「お砂糖は何個?」

キリカ「ふっ……ひとつで十分だ」

織莉子「あら、ホントにいいの?無理をする必要はないのよ?」

キリカ「わたしは日々大人の階段を登っているんだ、ひとつで十分っ!」

キリカの背伸びしたような言動に苦笑しながら、二人分の紅茶を淹れる。
居間の椅子に座り、二人きりのお茶会を始めた。

織莉子「ふぅ……」

キリカ「っ……お、おいしいよ、織莉子」

織莉子「おいしいならもっと嬉しそうな顔をして欲しいわね?」

キリカ「はっ……ははっ……香りがたまらないねっ……」

明らかに無理をしているのがわかる。
まぁ、キリカがそれでいいと言ったのだ。わたしの方から無理して砂糖を勧めるのは失礼に当たるだろう。

キリカ「ところで、織莉子はどこに行ってたんだい?」

織莉子「ああ、そう言えば話はしていなかったかしら?廃工場に、魔女を倒しに行っていたのよ」

キリカ「ま、魔女をっ!?だ、大丈夫!?どこか怪我はしてない!?」

織莉子「ふふ、ありがとうキリカ。大丈夫よ、あっさりと片付いたから」

キリカ「なんでわたしに黙ってそんな危険なことを……」

織莉子「キリカには、狩りの方に集中して欲しかったから。心配しなくても、わたしも無理はしないわ」

キリカ「むぅ……」

不満げな顔をするキリカを嗜め、茶菓子をひとつ口に放り込む。

キリカ「……まぁ、織莉子がそれでいいと言うのならわたしも何も言わないけれど……」

織莉子「心配症ね、キリカは」

キリカ「織莉子の事を心配するのは当然の事じゃないか!」

織莉子「わたしは幸せ者ね」

キリカの気持ちに感謝しながら、わたしは眼を瞑る。
恐らく、次のターゲットは……。

織莉子「………千歳ゆまは、佐倉杏子と行動を共にしているのよね?」

キリカ「ああ、わたしたちに協力してもらう時以外はそうしているんじゃないかな」

織莉子「千歳ゆまを側に置いて、佐倉杏子をターゲットにするのは危険ね……」

頭の中で、作戦を練る。
狩りの実行は変わらずキリカにお願いするつもりだから、わたしが二人を引き剥がさないと。

織莉子「キリカ。次の作戦は、少々複雑になるわ。それに恐らく、三つ巴の戦いになる。少なからず危険かもしれないけれど……」

キリカ「なに、どれだけ危険だろうとやり遂げて見せるさ。織莉子は、わたしなら出来ると踏んで作戦を練ってくれるんだろう?ならわたしは、その期待に答えないと」

織莉子「キリカ……わかったわ。少しでも危険が無くなるよう、作戦を練る。次の作戦決行は、今日より三日後。場所は、商店街の路地裏ね………」

Target3 佐倉杏子

短いけどここまで

それから三日後。
巴マミは、使い魔を追って路地裏へと足を運んでいた。

マミ「これで……っ!」

手に持ったマスケット銃を、その使い魔に照準を合わせて引き金を引く。
その攻撃は、どこからか伸びて来た槍に阻止されていた。

マミ「っ! この槍は……っ!?」

杏子「よぅ、マミ。久しぶりじゃん?」

マミ「佐倉さん……っ!」

ゆま「………」

マミと使い魔の間に割って入るようにして、杏子とゆまが地面に降り立つ。

マミ「見滝原に、何の用かしら?」

杏子に向き直り、敵意をむき出しにしてマミは言い放つ。

杏子「未だに使い魔まで狩ってるなんて、御苦労なこったな」

マミ「………っ?」

杏子「大体さぁ、―――」

マミの様子などお構いなしに、杏子は話し続ける。
その肝心のマミは、杏子の後ろ、ゆまの方に視線を移していた。
いや、正しくはゆまではない。ゆまの近くに浮遊している、奇妙な物体にだ。

ゆま「………?」

ゆまはゆまで、その浮遊している物体―――織莉子の武器である水晶―――を不思議そうに眺めていた。
その水晶には、一枚のメモ紙が貼られていた。

『ゆまちゃん、この水晶に捕まって頂戴。声は出さず、佐倉杏子に気付かれないように  織莉子』

ゆま「……」

そのメモに書かれている通り、ゆまは水晶に捕まる。
と、水晶が浮上を始める。ゆまの体を連れて。
杏子と相対しているマミも、その一部始終を見ていた。
唯一、話を続けている杏子だけが気付いていない状態だった。

杏子「―――……おい、マミ。人の話、聞いてんのか?」

マミ「いえ、あの……」

杏子「ンだよ?今更怖気づいたっての?」

マミ「佐倉さん、後ろ……」

杏子「?」

マミの言葉を聞き、杏子は後ろを振り返る。
そこにいたはずの少女、千歳ゆまが忽然と姿を消していた。

杏子「あ、あれ?ゆま?どこに行ったんだ?」

マミ「ええと、佐倉さんが話をしている時に……」

キリカ「おっと、そこまでにしてもらおうか!」

マミの言葉を遮り、キリカが水晶と入れ違いに地へ降り立つ。

杏子「っ!誰だ、てめぇ!?」

マミ「あっ、あの時の!?」

キリカ「双方、とりあえず落ち着いてもらおうか!」

それぞれの武器を構えて一触即発状態だった二人を、手で制する。

杏子「あぁ?いきなり現れてなんだよお前は?」

マミ「っ……」

キリカ「佐倉は初対面だったっけね。でも、巴の方は、わたしの事を知っているだろう?」

マミ「……ええ。わたしの、敵ね」

杏子「ンだよ、随分とこの街にゃ魔法少女が多いんだな?」

キリカ「巴の方は、今日は用は無い。わたしが用があるのは、佐倉、キミの方だ」

杏子「へぇ?あたしとやろうっての?」

マミ「待ちなさい、佐倉さん。この人……呉さんは、わたしの敵よ」

杏子「……ずいぶんと敵意をむき出しにしてんな。なんかあったのか?」

マミ「わ、忘れもしないわ……あの日、わ、わた、わたしのパンツを……っ!」

マミの声が、怒りと恥ずかしさで震える。

杏子(パンツ?)

キリカ(ふむ、なるほどね。巴の時は意表を突いてだったし、美樹はそもそも魔法少女じゃなかったから容易かった。
     けれど、佐倉の場合は違う。この混戦に乗じて、狩ろうって魂胆か)

マミ「とにかく!あの時のお礼をしてあげるわっ!そして、目的を洗いざらい吐いてもらおうじゃないの!」

両手を広げて、無数のマスケット銃を召喚するマミ。

杏子「はっ!なんかよくわかんねぇけど、マミもあんたもあたしの敵だ!」

槍を構え、今にも突進を仕掛けようとしている杏子。

キリカ「わたしの目的は佐倉だけど、向かって来るのならキミも相手するよ、巴!」

両手に鉤爪を出現させ、二人に向けるキリカ。
三つ巴の戦いが、始まりを告げていた。

~~~

ゆま「お、織莉子お姉ちゃん?ゆまに、何か用?」

織莉子「ええ、わたしとキリカの目的を話しておこうと思って」

地上で三つ巴の戦いが勃発している中、ビルの屋上では織莉子とゆまが話をしていた。

ゆま「目的……」

織莉子「ええ、そう。今わたしたちがしていること……それを、理解しておいてもらわないと」

ゆま「なにをやってるの?」

織莉子「え、えぇ……驚かず、呆れずに、聞いてね?」

ゆま「?」

織莉子「実はね……全員で五人をターゲットにしているのだけど……その中に、あなたが行動を共にしている佐倉杏子も含まれているの」

ゆま「それは、最初に会った時にも言ってたよね?」

織莉子「そうね。そして、そのターゲットに何をしているか、という話なのだけれど……」

織莉子はひとつコホンと咳払いをする。

織莉子「……ぱ、パンツ狩り……を、ね」

ゆま「ぱんつがり?」

織莉子「そ、そう!そうなのよ、ええ!」

ゆま「それが、何かの目的に繋がるの?」

織莉子「それは……」

二人の会話が、そこで途切れる。

「ぎゃあああああっ!!なにすんだてめぇぇぇぇっ!!?」

ビルの下、キリカとマミと杏子が戦っている場所から、ひとつの悲鳴が響いてきていた。

ゆま「こ、この声!キョーコ!?」

織莉子(キリカ………仕事が早いのは流石だけれど、タイミングが悪いわ……)

悲鳴が響いてから数刻の間を置いて、キリカがビルの屋上へと登ってくる。

キリカ「織莉子、佐倉杏子のパンツ、狩って来たよ!」

着地と同時、得意げに手に握った黄色と白の縞々模様のパンツを見せて来る。

織莉子「え、えぇ……」

ゆま「そ、それ……?」

キリカ「?」

キリカの登場から更に少しの間を置いて、杏子とマミも屋上へ上がってくる。

杏子「てめぇ!!あたしのパンツを返せっ!!」

キリカ「おっと、ここまで追って来るとは予想外だった。織莉子、どうする?」

織莉子「と、とりあえず逃げましょうっ!」

織莉子はちらりとゆまの方を一瞥する。

ゆま「? ……?」

どうしたらいいのかわからず、ゆまはオロオロとしていた。
マミはと言うと、何故か申し訳なさそうにしている。

杏子「なんだ!?おい、そこの白いの!お前もそいつの仲間か!?」

織莉子「急ぎましょう、キリカ!」

キリカ「ああ!それじゃあね、杏子!せいぜいノーパンで家まで帰るんだね!」

織莉子はキリカを連れて、その場から逃げだす。
キリカは杏子とマミを一瞥し、高笑いをする。

杏子「くそっ!待てこの野郎っ!!」

マミ「ダメよ、佐倉さん!スカートなんだから、派手に動いたら、その、見えちゃうわ!」

杏子「な、なんなんだよあいつら!?変態か!?」

ゆま「キョーコ、どうしたの?」

杏子「……あたしのパンツ、持ってかれた」

マミ「………」

ゆま「そ、それじゃあやっぱりキリカお姉ちゃんが持ってたのは……」

織莉子〈ゆまちゃん、わたし達のことは他言無用よ?〉

ゆまが説明しようとしたところで、織莉子のテレパシーがゆまの頭に響いた。

ゆま「……!」

杏子「あん?なんだ、ゆま?あいつら、知ってんのか?」

ゆま「え、ええっとね……」

織莉子〈わたしに連れ去られた、と言っておきなさい〉

ゆま「し、白い人に連れ去られただけだよ!」

杏子「……ホントになんなんだ……」

マミ「ごめんなさいね、佐倉さん……結果的に、わたしが手助けをしたような形になってしまって……」

杏子「いや、もういい……」

マミ「わたしも、あの人にパンツを持ってかれたのよ……」

杏子「ああ、さっき言いかけたのはその事か…」

マミと杏子は、互いに顔を突き合わせる。

杏子「………あいつら、放置しとくわけにはいかねぇな?」

マミ「そうね」

杏子は無言で、マミに手を差し出す。

杏子「あいつらの目的の把握と、今日のお礼をするまで……あたしらは一時休戦と行こうか」

マミ「!」

杏子「勘違いすんなよ?この件が片付いたら、あたしはまた風見野に帰るだけだからな」

マミ「佐倉さん……ええ、それでいいわ。あの人たち……互いに名前を呼び合っていたわね。
   キリカさんに、織莉子さん……あの二人を懲らしめるまで、共闘と行きましょう」

マミは差し出された杏子の手を取り、握手をする。

ゆま「え、ええと……」

杏子「ゆま、お前も一応用心しとけよ。お前も狙われるかもしれねぇんだからな」

ゆま「う、うん」

ゆまは、複雑そうな顔をするしかなかった。

~~~

一部始終を、離れた灯台からほむらが眺めていた。

ほむら(………美国織莉子、呉キリカ……それに、千歳ゆまもどうやら彼女達に協力しているようね)

渋い顔をしながら、ほむらは思考を巡らせる。

ほむら(何を考えているのか……巴マミの時には、魔女との戦いに飛びこんで……結果を見れば、マミは無事だった。

     それに、美樹さやか……彼女から聞いた事を鵜呑みにするのなら、病院にも呉キリカは姿を現した。
     そして、自棄を起こした上条恭介の行動を止めて……結果を見れば、さやかの契約は阻止されている)

しかし、それだけでは彼女達の行動の全てに説明がつかない。
わざわざパンツを狩る必要があるのか?それがほむらには理解出来ないでいた。

ほむら(これで……巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子が彼女達の手にかかった。あと、考えられるターゲットは……)

恐らく、自分とまどかの二人だろう。

ほむら(……考えたくないわね。でも、恐らくはわたしとまどかも狙って来る……用心しておかなければ)

特に。わたしのパンツだけは、狩られるわけにはいかない。
用心深く彼女達の動向を探ろう、とほむらは心に決めたのだった。

ここまで

佐倉杏子の狩りを終えたわたしたちは、追跡を振り切って家へと帰ってきていた。

キリカ「うんうん、順調だね!」

織莉子「そう、ね」

わたしの頭に思い描いていた通りに、事が進んでいる。

キリカ「さて、織莉子。これで残るターゲットは二人だよね?」

織莉子「えぇ……」

鹿目まどかと、暁美ほむら。
この二人は、容易にはいかないだろう。

キリカ「次は、どちらになるんだい?」

織莉子「そう焦ることもないわ。落ち着いて、ゆっくりと行きましょう」

言いながら、わたしは眼を瞑る。

織莉子「………」

キリカ「どうだい?何が視える?」

織莉子「……町外れの、廃ビル。そこが、次の決行場所ね。今日より一週間後」

キリカ「ふむ、ずいぶんと期間が空くね?」

織莉子「巴マミと、佐倉杏子……どうやら、この二人は協力関係になっているみたい。そこに、暁美ほむら……彼女も合流している光景が視えたわ」

キリカ「……と言うことは、次のターゲットは暁美ほむら、かな」

織莉子「そうなるわね。一週間後、そこに現れる魔女を倒した後、暁美ほむらはこの二人と分かれて家へ向かう。そこを襲撃することにしましょうか」

キリカ「さすがに三対二は分が悪いからね、その方がいいと思うよ」

織莉子「この一週間の間、キリカには魔法の修練に励んでもらうことになるわ」

キリカ「うん?どういうことだい?」

織莉子「キリカの固有魔法……それは、暁美ほむらの魔法に唯一対抗出来る可能性を秘めている」

キリカ「……暁美も、時間操作の魔法を操る、ということ?」

織莉子「ええ、それも完全なる時間停止。それを行使された場合、今のわたしたちでは手も足も出なくなる」

キリカ「なるほどね……」

織莉子「拡大解釈……ということになるけれど。頑張って、キリカ」

キリカ「了解だ。で、具体的にはわたしはどういう魔法を身につければいいのかな?」

織莉子「よく、覚えてちょうだい。これは、難しい狩りになるわ……―――」

Target4 暁美ほむら

ここまで
もしかしたら夜にもう一度投下しに来るかも

杏子「勘違いすんなよ?この件が片付いたら、あたしはまた風見野に帰るだけだからな」

マミ「佐倉さん……ええ、それでいいわ。あの人たち……互いに名前を呼び合っていたわね。
   キリカさんに、織莉子さん……あの二人を懲らしめるまで、共闘と行きましょう」

マミは差し出された杏子の手を取り、握手をする。

ゆま「え、ええと……」

杏子「ゆま、お前も一応用心しとけよ。お前も狙われるかもしれねぇんだからな」

ゆま「う、うん」

ゆまは、複雑そうな顔をするしかなかった。

Target3 佐倉杏子 完了

一週間の時が流れた。
廃ビルの中。そこで、影の魔女に相対する四人の魔法少女がいた。
その様子を、隣の工事中の建物の上から眺めるキリカと織莉子。

キリカ「ふぅん……結構強力な魔女っぽいけど、さすがに四人の魔法少女に囲まれたらひとたまりも無いみたいだね」

織莉子「四人のうち三人はベテランだもの、当然と言えば当然ね」

やがて、結界が崩れ始める。

杏子「っと……これでこの街で手に入れたグリーフシードゲットはちょうど四つか」

ほむら「そうね。みんなにひとつずつ、これでみんな文句はないでしょう?」

マミ「ええ。……最近、あの二人の活動は行われていないみたいね……」

ゆま「そ、そうみたいだね」

ほむら「……」

ほむら(次はわたしかまどかがターゲットになるかと思っていたのだけれど……杞憂だったのかしら)

マミ「……っ?」

不意に、マミがビルの窓から空へ視線を移す。

杏子「どうかしたか、マミ?」

マミ「いえ……気のせいだったみたい」

マミの視線の先。工事中の建物の上には、誰もいなかった。

マミ「それじゃあ、帰りましょうか」

ほむら「わたしは家に帰る前に寄るところがある。三人は気にせずに先に帰ってちょうだい」

杏子「? ああ、そうさせてもらうよ。ゆま、行くぞ」

ゆま「うん」

マミ「………」

三人はほむらをその場に置いて、それぞれ帰って行く。

ほむら「さて……家に帰る前に、まどかの様子を見に行きましょう。もしかしたら、わたしの知らないところで美国織莉子達の襲撃を受けているかも……」

三人を見送ったほむらは、まどかの家に向けて足を延ばす。

その道中。

キリカ「相変わらず、織莉子の未来予知は的確だね」

織莉子「……」

ほむら「……現れた、わね」

キリカと織莉子の姿を確認したほむらは、すぐさま魔法少女姿に変身した。

キリカ「へえ、そうやって身構えると言うことは、わたしたちのやっていることに気付いたってことかな?」

ほむら「そうね。あなたたちが、この街の魔法少女、或いは魔法少女候補を襲撃していることは既に承知済みよ」

織莉子「なら、わたしたちの次の狙いもわかっているわね?」

ほむら「こうしてわたしの目の前に現れた以上は、ね」

キリカ「ふふ、キミのパンツも、狩らせてもらうよ!」

ほむら「っ……」

ほむらはバックステップで距離を取りながら、時間停止の魔法を発動させる。

織莉子〈今よ、キリカ!!〉

キリカ〈ああ、わかってるよ!〉

ほむらの時間停止の魔法が発動する直前。織莉子は、キリカにテレパシーで話しかける。
それに答えたキリカが、この一週間の間に練習していた魔法を発動させた。

と。

キリカ「………どう?織莉子、上手く行ってる?」

織莉子「……ええ、完璧よ、キリカ」

ほむら「っ!!?」

時間停止の魔法を使っているはずなのに、二人の声が響いた。
その声に敏感に反応を示したほむらは、再び距離を取る。

ほむら「ど、どういうこと!?」

何が起こっているのか状況を掴めないほむらが、自身の盾を確認する。
時間停止の魔法は、発動したままのはずだった。

キリカ「いや、案外うまく行くもんだね」

織莉子「正直、分の悪い賭けだったけれど……上手く行ったようで、安心したわ」

ほむら「ど、どうして動けるの!?確かに、時間停止の魔法は発動しているはずなのに……っ!!」

織莉子「あなたに話すつもりは無い。さあ、行くわよキリカ」

キリカ「ああ!」

二人は、ほむらに飛びかかる。

ほむら「くっ!なぜ、どうして!?」

動揺を隠せないほむらは、二人から距離を取りつつ拳銃を取り出した。

織莉子「キリカ、少し右に!」

キリカ「!」

ほむらが撃ち放った拳銃の直線上から、二人は退避する。

ほむら「………っ!!」

キリカ「ほら、油断している暇は無いよ!」

地面に着地し、態勢を低くして尚もほむらへと向かうキリカ。

ほむら「くそっ!」

盾の中から手榴弾を取り出し、ピンを引き抜くとキリカへ向けて放り投げる。
それは、ほむらの手から一定距離離れたところで空中で停止する。

キリカ「無駄だよ!時間停止の魔法を解除しないと、手榴弾は爆発しないし、拳銃の弾だって飛びはしない!」

右手の鉤爪を、ほむらに向けて突き出す。

ほむら「っ……」

間一髪それを回避し、尚も後退を続ける。

織莉子「いつまで、時間停止の魔法を発動し続けるのかしら?あなたの魔力が尽きてしまうわよ?」

ほむら「……あなたたちには、この魔法は意味を成さないようね」

冷静さを取り戻したほむらは、魔法を解除する。
と同時に、撃ち放った拳銃の弾が地面をえぐる。
放り投げた手榴弾も、爆発した。

キリカ「ふふ……さあ、どうする?」

言いながら、キリカも発動させていた魔法を止める。

織莉子「……」

ほむら(分が……悪い……いえ、でも……)

ほむら「あなたたちの目的は、一体なんなの?」

キリカ「おや?今度は対話を試みるつもりかい?」

ほむら「……」

織莉子「悪いけれど、全て終わるまで話すつもりは無いわ。あなたは黙って、わたしたちにパンツを狩られればいい」

ほむら「な、何故パンツ狩りなんてわけのわからない事を……っ!?」

キリカ「わからなくってもいいんだよ、キミは!」

キリカはキリカで、今度は使いなれた時間遅延の魔法を発動させてほむらに駆け寄る。

ほむら「く、くそっ!?」

時間停止の魔法が意味を成さないと知ったほむらは、魔法の発動を一瞬躊躇った。
その間に、キリカはほむらの背後に回り込んでほむらを羽交い締めにする。

ほむら「や、やめなさい!!離せ、離して!!」

キリカ「無駄な抵抗、だね。大人しくしていれば、痛い目には合わせないから」

織莉子「そういうこと、です。ふふふ……」

織莉子は不敵に笑いながら、羽交い締めにされたほむらにゆっくりと近づいて行く。

織莉子「あなたの魔法少女姿には悩まされたわ。タイツを履いているから、スカートをたくしあげてパンツをずり下ろす、ということが出来ないんですもの」

ほむらの眼前まで来ると、しゃがみ込む。

ほむら「いや、やめて……そ、それだけは……っ!!」

足をジタバタとさせるが、キリカはその足の動きを自身の足で封じる。

織莉子「抵抗は無意味よ……ふふふ」

ゆっくりとスカートの中に手を入れ、まずはタイツを脱がし始める。

ほむら「こっ、こんなことをしてタダで済むと思っているの!?」

キリカ「さて、ね。だが、わたしは織莉子に従うだけだ。キミがなんと言おうと、織莉子がやめると言わない限りはやめないよ」

両手を拘束し、両足を拘束しながらキリカはほむらの耳元で囁く。

織莉子「うふふ……タイツは降ろし終わったわよ?」

ほむら「い、や……やめっ……!!」

織莉子「さて、あなたのパンツはどんなものかしらね……」

焦らすように、スカートをゆっくりとたくしあげる。

織莉子「あら、随分とかわいらしいパンツを履いているのね。意外だったわ」

ほむら「う、うぅぅっ……!」

ほむらはついに涙ぐむ。
スカートの中から出て来たものは、白地に小さな赤いリボンが中心についたシンプルなものだった。

織莉子「年相応、と言ったところね。あなた、妙に大人びたところがあるからもっと色気のあるパンツを履いていると思ったのだけど」

ほむら「や、やめっ……」

ほむらの制止の言葉など意にも介さず、織莉子はパンツに手を掛けた。
それをゆっくり、ゆっくりと脱がせていく。

ほむら「いやああああああ、やめてよおおおおおおっ!!」

織莉子「作戦、終了ね」

パンツを完全に取り去ると、脱がせたタイツを再び履かせる。
それを確認したキリカは、羽交い締めにしていたほむらを解放した。

キリカ「おや、取り返そうとしないのかい?」

ほむら「う、ううぅ……っ!」

ほむらはその場に力無くへたりこむ。

織莉子「さあ、キリカ。帰りましょうか?これで、残すターゲットは後一人よ」

キリカ「そうだね、織莉子。もう少しで、織莉子の大願が成就するんだね!」

へたりこんだほむらをその場に残し、二人は歩き始める。
穏やかに談笑をしながら。

Target4 暁美ほむら 完了

ほむら「………」

その場でしばし呆然としていたほむらだったが、やがてゆっくりと立ちあがる。

ほむら「……許さない。美国織莉子、呉キリカ……!!!」

怒り心頭と言ったほむらの呟きが、夜の闇へと吸い込まれる。

ほむら「わ、わた、わたしのパンツを……よくも……っ!!!」

拳をギュッと握りしめ、固い決意を新たにする。

ほむら「………とりあえず、まどかの家へ寄るのは諦めましょう……ノーパンであまり外をうろつきたくないわ……」

トボトボと、家へ足を向けた。

おまけ3:織莉子とキリカの魔法談義

キリカ「いや、二人がかりなら楽勝だったね、織莉子!」

織莉子「ええ、そうね。それも、キリカの魔法のおかげよ」

キリカ「それにしても、織莉子の発想力は流石だね。わたしの魔力で、織莉子とわたしの体を包み込むなんて。わたしにはとても思いつかないよ」

織莉子「だって、キリカの魔法は時間遅延の魔法でしょう?それは拡大解釈すれば、周囲の時間から自身の時間を切り取る、と言うことになるじゃない。
     だから、あなたの魔力で体を包み込めば、暁美ほむらの時間停止の魔法からも切り離せるんじゃないか、と思っただけよ」

キリカ「いやぁ、理屈ではそうなんだろうけどさ。あれ?でも、そしたら織莉子の魔法を拡大解釈したらどういう風になるんだろう?」

織莉子「それは、わたしも少しだけ考えているわ。未来を視ると言うことは、ありえる世界を視る、ということにも繋がる。
     つまりどういうことかと言うと……並行世界を視ることも、もしかしたら出来るのかもしれないわね」

キリカ「並行世界?なんだい、それは?」

織莉子「この世は常に、分岐の可能性を持っている、という考え方の事よ。例えば、美樹さやかは今は契約していないわよね?」

キリカ「ああ、そうだね。わたしが契約に踏み切ろうとしていたところに乱入したから、と織莉子は言っていたけれど」

織莉子「そう。もしその時、キリカが乱入していなければ、恐らくその日に美樹さやかは契約していた。
     わたしの未来予知でも、その世界を垣間見ることが出来ていたのよ」

キリカ「なるほどね……それじゃあ、巴マミは?」

織莉子「彼女はもっと悪い。キリカが行っていなければ、美樹さやかと鹿目まどかの目の前で彼女は絶命していた。
     それを助けてあげたのだから、パンツの一枚や二枚で騒がないで欲しいわよね?」

キリカ「ああ、同感だね。命に比べりゃ、パンツの一枚や二枚、どうってことないだろうに」

織莉子「ちょっと話がずれたわね。並行世界とは、そういうありえた世界、と言うことね」

キリカ「ふむ……そういった世界を、織莉子の魔法で視通すことが出来るようになる、と?」

織莉子「修練すれば出来ないことはないでしょうけど……今は、それは置いておきましょう。とにかく、わたしたちの目標を達成させなければ」

おまけ3:織莉子とキリカの魔法談義 終わり

ほむら「わたしのパンツの事だけれど……」

ほむら「みんな忘れてるみたいだけれど、わたしだって普通の中学生だったのよ?」

ほむら「そんな、大人っぽいパンツなんて履いているわけないじゃないの……」

マミ「そっ、そうよね、あ、あははは……」

さやか(マミさん……)

ここまで
まぁ何が言いたいのかって言うと、めがほむ時代からのパンツを履いてるから恥ずかしかったのですね

翌日(ほむループから二十日目)。
ほむらは、自身の家にまどか、さやか、マミ、杏子、ゆまを呼び出していた。

ほむら「来てくれたわね、みんな。知っているとは思うけど、わたしたちのパンツを狩って回っている人たちがいる」

さやか「魔法少女のほむらやマミさん、杏子はわかるけどさ……なんであたしまで狩られたのさ?」

ほむら「あなたにも、魔法少女の素質があるからでしょうね。現在、巴マミ、美樹さやか、巴マミ、そしてわたしがやられている」

まどか「ほ、ほむらちゃんもやられたの!?」

ほむら「ええ……この屈辱は、絶対に晴らすっ……!!」

マミ「暁美さんも、わたしたちの仲間ね。あの二人を、とっちめましょう!!」

杏子「ああ、このまま放っておくわけにはいかねぇ……ぜってぇとっ捕まえてやる」

ほむら「それで、千歳ゆま」

ゆま「っ……!」

ほむら「あなた、彼女達に協力しているわね?」

ゆま「そ、それはええっと……」

杏子「おい、ほむら?ゆまを疑ってんのか?」

ほむら「疑うもなにも、わたしは実際にこの目で見たわ。千歳ゆまが、美国織莉子と親しげに話をしているところを。
     あれは、そう、あなたが狩られた日だったはずよ」

杏子「あん?あたしが?」

ゆま「そ、それは違うよ!?ゆま、なにも聞かされてないもん……」

杏子「……ゆま。お前、あいつらと面識あんのか?」

ゆま「う、うん……わたしたちに、協力して欲しい、とは言われてるんだけど……具体的に、なにをしているのかは、教えてもらってない」

杏子「……つまり、ゆまは利用されてるだけってことか?」

ほむら「その可能性もあるけれど……ゆま。あなたは、杏子の相方なのでしょう?なら、もう彼女達に協力するのはやめなさい。彼女達は、わたしたちの敵よ」

ゆま「う、うーん……」

マミ「あ、暁美さん……あまりゆまちゃんを責めちゃ可哀想よ」

ほむら「っ……わたしのパンツを狩った者に協力しているのだけは、許さない。絶対に……っ!!」

さやか(ねぇ、まどか……なんでほむら、あんなに怒ってるんだろう?)

まどか(わ、わかんない……)

ほむら「ああ、それともうひとつ……これは、魔法少女のみんなに話しておきたいことなのだけれど……」

杏子・マミ・ゆま「?」

ほむら「今日より十日後、この街にワルプルギスの夜が訪れる」

マミ「!」

杏子「ワルプルギスの夜だと!?」

ゆま「な、なにそれ?」

―――ワルプルギスの夜について説明中―――

ほむら「………。彼女達の動向も気になるけれど、ワルプルギスの夜のことも頭に入れておいて」

マミ「ええ、了解よ」

杏子「ちっ、色々考えなきゃなんねぇことが多くって嫌になるな……」

ほむら「当面は、まどかの護衛をしなければならないわ」

まどか「わ、わたしのっ?」

ほむら「ええ。魔法少女の素質を持っているさやかも狙われた、魔法少女であるわたし、マミ、杏子は既に被害を受けている。なら当然、次に狙われるのはあなたよ、まどか」

まどか「し、下着を狩られるのは嫌、かな……」

マミ「鹿目さんまでわたしたちと同じ思いをする必要は無いわ。護衛は必要ね」

杏子「なぁ、ゆまは狙われる心配無いのか?」

ゆま「……」

ほむら「言ったでしょう?ゆまは彼女達に協力している可能性がある、と」

杏子「……まぁ、なんでもいいけどさ。なら、えっと、まどか、だったか?」

まどか「う、うん。鹿目まどか、です」

杏子「お前自身も身の回りには気を配っとけよ?」

さやか「まどかにはあたしがついてるから大丈夫……って言いたいけど、あたし魔法少女じゃないしなぁ……」

ほむら「いえ、それだけでもありがたいわ。万が一わたしたちが側にいないときに現れた場合、さやかは誰でもいい、テレパシーで呼びだしてちょうだい。
     他のみんなは少なからず彼女達に恨みを持っているから、すぐさま駆けつけるわ」

ゆま(なんだかすごい大事になってるよぅ織莉子お姉ちゃん……)

~~~

ほむら達が対織莉子、ワルプルギスへの作戦会議を行っている時。
織莉子とキリカは相対的に、和やかな雰囲気でお茶会を開いていた。

織莉子「はい、今日はちょっと贅沢なハーブティーよ」

キリカ「ありがとう、織莉子」

キリカは織莉子から紅茶のカップを受け取ると、砂糖を三つとジャムをスプーンに三杯、放りこんだ。

織莉子「あら?前はひとつで飲んでいたのに」

キリカ「ああ、もういいのさ。わたしはやっぱり甘いのが好きだから」

織莉子「ふふ、そう。まぁ、あなたが一番おいしくいただける飲み方で飲むのが一番だと思うわ」

キリカ「うん、おいしい!」

キリカの満面の笑みを、穏やかに見つめる織莉子。

キリカ「それで、織莉子」

織莉子「なに、キリカ?」

キリカ「最後の標的……鹿目まどかのパンツ狩り、実行はいつになるんだい?」

織莉子「……彼女の狩りが、一番大変になると思うわ」

キリカ「まぁ、そうだろうね。他のみんなも、わたしたちの事は警戒しているだろうし」

織莉子「だから、彼女の狩りは、タイミングが重要となる」

キリカ「……ふむ」

織莉子「もしタイミングを見誤った場合……わたしもあなたも、全てを失うことになりかねない。それほどまでに、危険よ」

キリカ「面白い。やってやろうじゃないか」

織莉子「頼もしいわ、キリカ」

キリカ「全ては……」

織莉子「全ては……」

織莉子・キリカ「あなたの為に」

Final Target 鹿目まどか

ここまで
明日か、明後日には完結かと思われます
もう少しだけお付き合いください

最後の標的を定めてから、十日後。
ガタガタと鳴る窓を、椅子に座りながら眺め続ける。

織莉子「………ワルプルギスの夜……」

キリカ「来たんだね、ついに」

織莉子「そうみたいね……キリカ」

キリカ「わかっている。これで最後なんだ。絶対に、成し遂げないとね」

見滝原全域に、避難勧告が出されている。
恐らく、一般人である鹿目まどかと美樹さやかは避難所へ行っているはずだ。

織莉子(……そして、仲間を心配した鹿目まどかは……)

そこで思考を中断し、椅子から立ち上がる。
テーブルの上に置いてあるカップに残された紅茶を全て飲み干すと、キリカも立ちあがった。

キリカ「行こう、織莉子」

織莉子「えぇ……」

わたしの、いえ、わたし達の世界を、守る為に。

~~~

見滝原を大きく分断している川のほとり。
そこに、四人の魔法少女がいた。

マミ「とうとう……鹿目さんが襲撃される前に、ワルプルギスの夜が来たわね」

杏子「それならそれで構わないさ。さくっとあいつをぶちのめして、織莉子って奴の居所を掴んでやる」

ゆま「織莉子お姉ちゃん……キリカお姉ちゃん……」

ほむら「とにかく今は、目の前の敵を倒すことに集中しましょう!!」

遠い空の向こう。
大きな影がひとつに、その周りには複数の使い魔達。
パレードでも開いているのかと思えるほどの仰々しさで、ゆっくりと近づいて来る。

ほむら「来るわよ、みんなっ!!」

四人の魔法少女は跳躍する。

織莉子「………頑張って、みなさん」

キリカ「………」

その様子を、ビルの影から見守る二人。
目的はひとつ、だった。

ワルプルギスの夜と、四人の魔法少女の戦いはまさに激戦と称すのが正しいと言える有様だった。
杏子が巨大化させた槍が、辺りに転がっている。
ゆまが破壊したビルの残骸が、街のあちらこちらに散らばっている。
マミが放った砲撃が、ワルプルギスの夜の体に砂埃を被せる。
ほむらが使い捨てた無数の大砲、ピストルが、そこらじゅうに散らばっている。

やがて、ワルプルギスの夜の様子が一変する。

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハ………アハハハハハハハハハハハ……」

マミ「な、何……っ?」

ゆま「今まで逆さまだったわるぷるぎすのよるが……」

杏子「回転……してる……?」

ほむら「気をつけて、みんな!!ここからが正念場よ!!」

ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」

回転を終えたワルプルギスの夜は、より一層大きな笑い声を放つ。
その両手から、巨大な炎を噴出させた。

ゆま「えぇぇぇいい!!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

その炎を、ひとつはゆまが衝撃波で、もうひとつはマミの高火力魔法で相殺させる。

織莉子「さすが……やはり、強いわね」

キリカ「………」

戦いが始まってから数十分後。

織莉子「……!」

キリカ「織莉子?」

織莉子「来たわ……鹿目まどか」

避難所へと続く道の向こう。
そこから戦いの舞台へ、走りながら近づいて来る二つの影。
美樹さやかと、鹿目まどかだ。

まどか「みんなぁぁぁ!!」

ほむら「まっ、まどかっ!!?」

ワルプルギスの夜の攻撃を受けて地上へ叩き落とされたほむらが、来訪者の存在に狼狽する。

まどか「だ、大丈夫!?」

さやか「すごい傷だよ、ほむらっ!?あ、あのでっかいのがワルプルギスの夜!?」

ほむら「どっ、どうして来たの、二人とも!?ここは危険よ、すぐに避難所に……っ!!」

まどか「ごめん、ほむらちゃん……わたし……」

織莉子「行くわよ、キリカっ!!」

キリカ「ああ!!」

三人がワルプルギスの夜と激闘を繰り広げ、ほむらがまどかと話をしている隙を突いて、織莉子とキリカは動き出した。

ほむら「ま、まど……っ!!?」

織莉子「鹿目まどか、射程圏内に捉えたり!!」

キリカ「速やかに狩りへ移行するっ!!」

織莉子とキリカは左右に展開する。

QB「きゅぷっ!?」

挟み撃ちにするついでに、キリカはまどかの近くにいたキュゥべえをさくっと切り裂いた。

まどか「あ、あぁ!!きゅ、キュゥべえ!?」

織莉子「キュゥべえに気を取られている場合ではないわ、鹿目まどか!!」

まどかへ向けて駆ける織莉子の前に、傷を負ったほむらが立ちはだかる。

ほむら「この忙しい時に……っ!!」

織莉子「っ、暁美ほむら……その傷で、まだ動けるのね……!!」

キリカ「くっ、美樹さやか!わたしの邪魔をするな!!わたしはキミを殺すつもりは無いんだ!!」

さやか「まどかに手は出させるかぁぁ!!」

織莉子はほむらの、キリカはさやかの妨害を受け、まどかに近づく事が叶わない。

まどか「え、あ、えっと……その、ほむらちゃん?」

ほむら「話は後よ、まどか!!ワルプルギスの夜だけでも厄介なのに、更に美国織莉子と呉キリカまで来るなんて……冗談じゃないわ!!」

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!!!アハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

杏子「おい、マミ!!あいつらだ!!織莉子とキリカ!!そ、それに、なんでかわかんねぇけどまどかとさやかまでいやがる!!」

ゆま「な、何が起こってるの!?」

マミ「っ……あっちの方は暁美さんがなんとかしてくれるわ!!わたしたちはとにかくワルプルギスの夜を!!」



QB「わけがわからないよ……僕は一体どうすればいいんだ?」

何故だか三つ巴の戦いが勃発しているところを、離れた場所からキュゥべえが眺めていた。

QB「これじゃ、僕がまどかの側に行くことが出来ないじゃないか」

契約の好機だったのに、とキュゥべえは呟く。

ワルプルギスの夜と対峙する三人の魔法少女が、少しずつワルプルギスの夜を押し始める。

ワルプルギスの夜「キャハ……ハハハハハ……」

杏子「これでも食らえ!!」

杏子が再三召喚した槍を巨大化させ、それをワルプルギスの夜に向けて力強く放り投げた。
それは、ワルプルギスの夜の体に突き刺さる。

ワルプルギスの夜「アハハ!!?」

マミ「ティロ・フィナーレッ!!!」

着弾のタイミングを狙って、マミが巨大な大砲を撃ち放った。
巨大な槍が、更に深く突き刺さる。

ゆま「これで……どぉだぁぁ!!」

トドメと言わんばかりに、ゆまが振りかぶったハンマーを槍に叩きこんだ。
巨大な槍が、ワルプルギスの夜の体を貫いた。

ワルプルギスの夜「ア……ハハハハハ……」

織莉子「っ!!まずいわ、キリカ!!ワルプルギスの夜が力尽きる!!」

キリカ「えっ!?それは別にいいんじゃ!?」

織莉子「ダメよ!!ワルプルギスの夜が力尽きたら、鹿目まどかのパンツを狩る理由が無くなってしまう!!」

キリカ「っ!!なるほど、それは問題だ!!」

ほむら「!」(ワルプルギスの夜が倒れたら、まどかは助かる!?)

それを聞いたほむらが、時間停止の魔法を使う。

織莉子「   」

キリカ「   」

ここで使われると思っていなかった織莉子とキリカは、魔法の発動をしていなかった。

ほむら「っ……杏子!!」

空中に跳んでいる杏子の手を取ると同時、魔力を杏子に流し込む。

杏子「―――……あ、あれ?ほむら?」

ほむら「ごめんなさい、詳しい話をしている暇は無いの!!ワルプルギスの夜にトドメを!!あなたの巨大な槍で、今度は縦に貫くのよ!!!」

杏子「え、ちょっ、おいっ!?」

杏子の手を握ったまま、二人は跳躍する。

ほむら「お願い、杏子!!」

杏子「な、何が何だかわかんねぇが、わかった!!」

ほむらに言われるまま、新たに槍を召喚、巨大化させる。
それを、ワルプルギスの頭上から縦に貫くように放り投げる。

地面に着地すると、ほむらは時間停止の魔法を解除した。
解除と同時、放り投げた巨大な槍が、ワルプルギスの夜の頭に刺さった。

織莉子「っ!?あ、暁美ほむらは!?」

キリカ「あっ、あそこに!!」

ほむら「今度はゆま!!」

ゆまの手を握ると、再び時間停止の魔法を発動させた。

ゆま「ほ、ほむらお姉ちゃん!?」

ほむら「ワルプルギスの夜の頭に刺さった槍を打ち付けるのよ!」

ゆま「え、え!?」

ほむら「早く!!」

ゆま「わ、わかった!」

織莉子「させないわ、暁美ほむら!!」

ほむら「み、美国織莉子!?」

織莉子「キリカ!わたしが暁美ほむらを抑える!その隙に、あなたは鹿目まどかの……っ!?」

さやか「ぐぬぬ……まどかのとこには行かせるかぁ……っ!!」

キリカ「くっ、すまない織莉子!!手を掴まれているせいか、美樹さやかも時間停止から逃れられているみたいなんだ!!」

織莉子「なんと言うこと……!!」

ほむら「やりなさい、千歳ゆま!!」

ゆま「えええええええええええええいいいいいいいい!!!!」

ワルプルギスの頭上に跳んだほむらとゆま。
片手はほむらと手をつないだまま、もう片方の手で巨大な槍を何度も打ち付ける。

織莉子「あ、あぁぁぁ……!!」

着地すると、ほむらは時間停止の魔法を解除した。

ワルプルギスの夜「アハハハハッッッ!!!!!???」

ワルプルギスの体に、十字に槍が差しこまれた形となる。

ほむら「トドメよ、マミ!!」

マミ「な、何が起こったの!?急に、ワルプルギスの夜の体に……!!」

ほむら「ええい、状況説明なんてしなくていいの!!さっさとティロなんとかを撃てばいいのよ!!!」

マミ「っ……どうせなら、もっと火力の高い攻撃で!!」

なんとなく空気を察したマミは、普段使用している物よりも更に一回り大きな大砲を召喚した。

マミ「ボンバルダメントッ!!!」

ワルプルギスの夜の体の中心に照準を合わせ、それを撃ち放った。

ワルプルギスの夜「キャ……ハハハハ……アハハハハハハ………アーッハッハッハッハッハ………―――」

その攻撃で、とうとうワルプルギスの夜は力尽きたようだった。
断末魔の笑い声を上げながら、少しずつその体が崩れ落ちて行く。

織莉子「な……なんという………こと………」

キリカ「織莉子の戦略が………負ける、なんて……」

その光景を見させられた織莉子とキリカは、膝から地面へくずおれる。

ほむら「やった……ついに、やり遂げた……」

まどか「あ、あの……?」

織莉子の持っていた鞄が、トサリと地面に落ちる。

キリカ「お……織莉子……」

織莉子「わたしたちの……負けよ、キリカ……」

ゆま「織莉子お姉ちゃん、キリカお姉ちゃん!!」

ゆまが、意気消沈した二人に駆け寄る。
激戦を制した四人の魔法少女と二人の少女は、その三人を囲うようにして集まってくる。

ほむら「……さて。美国織莉子、呉キリカ、千歳ゆま。どういうことか、一から説明してくれるかしら?」

織莉子「………えぇ」

杏子「やっぱり、ゆまもこいつらに協力してたんだな?」

ゆま「う、うん……」

織莉子「ええと、まずは……なぜわたしが、こんなことをしようと思ったのかからね……」

全てが終わった今、隠すことは何もない。
織莉子はポツリポツリと話し始める。

織莉子「最初は……わたしが生きる意味を知る為だった。その祈りで契約したわたしは、未来予知の魔法を使えるようになったの」

織莉子「そうして手に入れた未来予知で、わたしは、この街の未来を視た」

織莉子「……強大な魔女が、この街を破壊し尽くす光景だった」

織莉子「そして、それを更に深く探るウチ……その魔女が、鹿目まどかが契約することによって出現するということを知ったの」

まどか「え?わたし?」

ほむら〈ちょっと、美国織莉子。魔法少女の真実は伏せておきなさいよ?わたし以外の魔法少女は皆知らないのだから〉

織莉子〈……わかったわ〉

織莉子「なぜ鹿目まどかが契約することでその魔女が現れるのかはわからない。でも、鹿目まどかが契約さえしなかったら、その魔女はこの街に現れることはない」

織莉子「最初に考えたのはここまで。そして次に、鹿目まどかの契約を止める為に、どうしたらいいのかを考えた」

織莉子「………そう。わたしは、何も悪くない。悪くないはずなのよ」

杏子「どういうことだよ?」

織莉子「大体、あなたたちは年の割にシリアスになりすぎるのよ!!」

マミ「ぎ、逆切れ!?」

織莉子「そんな、シリアスな雰囲気で話を進められたらそりゃ鹿目まどかだって契約を決意するわ!!現に今だってそう!!」

まどか「え、えっと……」

織莉子「あなたがここに来たのは、魔法少女の契約をする為だったのでしょう!?」

まどか「う、うん……」

織莉子「あなたに契約されたら、わたし達も困るのよ!!この街を、わたし達の世界を、わたしとキリカの世界を守る為には、あなたに契約されたら困るの!!」

キリカ「落ち着け、織莉子。大丈夫だって、わたしはいつでもキミの側にいるから」

織莉子「キリカぁ……!」

織莉子とキリカは、ギュッとお互いの手を握り合う。

ほむら「そんな茶番はいらないわ。パンツ狩りに至るまでの経緯をさっさと話しなさい」

織莉子「は、はい」

ほむらの睨みで委縮した織莉子は、再び話を始める。

織莉子「とまぁ、あなた達が妙にシリアスに走りたがるから、その……わたし達がバカな行動を取ってやれば、なんとか出来るのでないかな、と。そう思ったんです、はい」

杏子「………」

マミ「………」

さやか「そ、そんなくだらない理由で……あたしたちは、パンツを狩られたって言うの……?」

キリカ「そういうこと、になるね」

ほむ杏さやマミ「………っ……はぁ……」

みんなの口からは、怒りを通り越してため息しか出てこなかった。

Final Target 鹿目まどか 失敗

一旦ここまで
日付が変わる前には最後の投下に来ます

どうして、こうなったのだろう。

マミ「何か、言うことがあるんじゃないの?」

キリカ「……すみません」

わたしは、何も間違ったことはしてないはずなのに。

さやか「それだけ?もっと他になんかあるよねぇ?」

織莉子「謝るくらいしか出来ません……」

辺りは、荒れ果てた見滝原の町並み。

杏子「なんでゆまも一緒になってやってたんだよ?」

ゆま「ごめんなさいキョーコ……でも、織莉子お姉ちゃんが……」

わたしとキリカ、それに千歳ゆまは、五人の少女に囲まれていた。

ほむら「……まぁ、過ぎたことはもういいわ。謝るのもいいけれど、それより先にやるべきことがあるでしょう?」

織莉子「は、はい。全て承知しています」

暁美さんの言葉に気圧され、わたしはひとつの鞄を差しだした。

まどか「も、もう二度としないでね?」

織莉子「深く反省していますので、どうか、お慈悲を……」

鹿目さんが、恥ずかしそうにしながらその鞄の中身をぶちまけた。
中から出て来たのは……―――色とりどりの、下着だった。

ほむら「もうなにもかもどうでもよくなったわ……」

暁美さんが、白地に小さな赤いリボンがついたパンツを拾い上げる。

マミ「えぇ……まぁ確かに恥ずかしい眼には合わせられたけれど、結果として誰ひとり欠けることなくワルプルギスの夜を倒せたんだものね」

巴さんが、黒いレースのパンツを拾い上げる。

杏子「考え方の問題、か」

佐倉が、黄色と白の縞々模様のパンツを拾い上げる。

さやか「あたし、完全にとばっちりな気がするんだけどさ……」

美樹さんが、飾り気のない白いパンツを拾い上げた。

織莉子「こ、これで許していただける……の、でしょうか……?」

ほむら「それとこれとは話が別よ」

織莉子「つ、償いは致しますので……あ、あの、鹿目まどか……さん?」

まどか「な、何かな……?」

織莉子「あなたが契約したい気持ちは、よく、よぉくわかっているつもりです。
     ですが、わたしとキリカ、それに暁美さんの気持ちを汲んで、その、魔法少女の契約は、見送っていただけないでしょうか……?」

まどか「………う、うん。わたしも、あのワルプルギスの夜以上の魔女が現れるのは嫌だし……わたしが契約さえしなければ、いいんだよね?」

織莉子「!! そ、そうです!!」

まどか「うん、わかった。人を不幸にしてまで、魔法少女になろうとは思わないから」

織莉子「あっ、ありがとう!!ありがとう、まどかさん!!」

感極まったわたしは、まどかさんの両手を握る。

まどか「な、なんだか大げさだよ……織莉子さん」

織莉子「これだけでっ……わたしが頑張った意味があるというもの!!」

キリカ「まぁ、結果オーライ、ってところかな?」

ほむ杏さやマミ「丸く納めようとするな!!」


終わり

おまけ4・彼女達のその後

マミ「さあ、準備が出来たわ」

八人分の紅茶とケーキをお盆に乗せたマミが、台所からやってくる。

杏子「おっ、今日もうまそうだな!」

さやか「マミさんのケーキは絶品だからねぇ~」

ゆま「おいしそう!」

織莉子「わたしとしては、マミさんの淹れる紅茶の方が楽しみね」

マミ「うふふ、今度織莉子さんの淹れた紅茶も飲ませてね?」

キリカ「あ、すまない巴。砂糖を三つほど入れてくれないかな?」

マミ「え?構わないけれど……それだと紅茶の風味が落ちちゃうわよ?」

織莉子「キリカは甘いものが大好きだから……入れてあげて、マミさん」

マミ「まぁ、キリカさんがそれでいいのなら……」

まどか「うん、おいしい!」

八人の少女は、マミの家でお茶会を開いていた。

織莉子「それにしても、こんなことで許してくれるの?」

紅茶を飲みながら、織莉子はみんなに問いかける。

ほむら「いいのよ、これで」

マミ「ええ。仲間が増えてくれて、わたしも嬉しいわ」

狩られた四人の総意。
それは、今後は共に見滝原、風見野の街を守る為に魔女と戦うこと、というモノだった。

キリカ「ずいぶんと情状酌量をしてくれたね」

杏子「ま、実際にやった行為はともかくとして、あたしたちみんな無事と言やあ無事だし。こんなもんじゃねぇの?」

ゆま「あの後、キョーコはゆまにしっかりと説教した癖に……」

杏子「あたしに黙ってこいつらとつるんでたお前が悪い!」

ゆま「ごめんなさい……」

織莉子「そんなにゆまちゃんを怒らないであげて、杏子さん」

杏子「うっせぇ!ほむらとマミがこれでいいって言うから、あたしも妥協してやってんだ!その辺忘れんな!」

キリカ「ほらほら、そんなにカッカカッカしてたら血圧上がるよ。佐倉の紅茶にも砂糖が足りないんじゃないのかい?」

杏子「あたしはこれでいいんだよ!おい、入れんな!?」

杏子の制止を受け、キリカは手を引っ込める。

キリカ「まったく、過ぎたことをいつまでも……」

マミ「あなたが言えた事じゃないでしょう、キリカさん?」

キリカ「まぁ、わたしたちもこう見えてちゃんと反省はしてるよ」

まどか「でもよかった。魔法少女同士で戦うとか、そういうことにならなくって」

織莉子「わたしは元々敵対するつもりは……全くなかった、というわけではないけれど……」

言いながら、織莉子はまどかの顔を見る。
少しだけ、視線が鋭かった。

まどか「な、何?織莉子さん?」

織莉子「未だに、心残りと言えば心残りなのよね。あなたのパンツだけ狩れなかったこと……」

ほむら「ちょっと、織莉子?」

織莉子「ふふ、安心していいわ。もう二度とあんなことはしないから」

まどか「はぁ……」

さやか「だいじょーぶだって、まどか!あたしがついてるんだから!」

キリカ「キミと鹿目は随分と仲がいいんだね?」

さやか「そりゃーもう!なんたって、まどかはあたしの嫁になるんだから!」

まどか「あはは、それ毎日のように聞いてるよさやかちゃん」

キリカ「……ふむ。織莉子」

織莉子「なにかしら?」

キリカ「果たしてわたしと織莉子だと、どっちが嫁になるんだろうね?」

まどほむ杏さやマミ「!?」

織莉子「どっちでも構わないわよ、キリカ?わたしが嫁でも、あなたが嫁でも」

キリカ「まぁ、それはさほど重要なことでもないか」

織莉子「そう。わたしとキリカは、これからもずっと一緒なのだから」

まどほむ杏さやマミ(この二人、ガチだったのか……)

ゆま「ケーキおいしー♪」

おまけ4・彼女達のその後 終わり

QB「ちょ、ちょっと!結局鹿目まどかとも美樹さやかとも契約出来てないじゃないか!!」

QB「わけがわからないよおおおぉぉぉぉ!!!」



織莉子「魔法少女の」キリカ「パンツ狩り」  END

これで本編終了
こんなくだらない話に付き合ってくれてありがとうww
後日、【Extra Target 美国織莉子&呉キリカ】を執筆しに来る……と思います

番外編

魔法少女のパンツ狩りからひと月が経った。
織莉子とキリカを除いた少女六人は、ほむらの家に集まっていた。

マミ「………」

杏子「………」

ゆま「………」

さやか「………」

まどか「………」

ほむら「今日集まってもらった理由……わかるかしら?」

マミ「ええ。あれしかないでしょうね」

杏子「ああ、あたしも思い当たるのはひとつだけだ」

さやか「まぁ、ちょっとやりすぎではあるよねぇ……」

まどか「あ、あはは……」

ゆま「………」

番外編

魔法少女のパンツ狩りからひと月が経った。
織莉子とキリカを除いた少女六人は、ほむらの家に集まっていた。

マミ「………」

杏子「………」

ゆま「………」

さやか「………」

まどか「………」

ほむら「今日集まってもらった理由……わかるかしら?」

マミ「ええ。あれしかないでしょうね」

杏子「ああ、あたしも思い当たるのはひとつだけだ」

さやか「まぁ、ちょっとやりすぎではあるよねぇ……」

まどか「あ、あはは……」

ゆま「………」

ほむら「とりあえず、各自の被害状況を報告して欲しいの。まずはマミ、あなたから」

マミ「ええ……あれは確か、ワルプルギスの夜を倒してから一週間後のことだったかしら……―――」

―――――
―――


マミ「見滝原を守ることが出来てよかったわね、キュゥべえ」

QB「えっ、あ、あぁ……しかし、キミ達には驚かされたよ」

マミ「そう?」

QB「数人がかりとは言え、歴史に語り継がれている弩級の魔女を倒してしまうなんてね」

マミ「何かを守りたい気持ちというのは、時には未知数の力を引き出すものなのよ?」

QB「鹿目まどかも美樹さやかも、契約に踏み切ってくれそうにないし……僕としては少し困った事態だよ」

マミ「この街に、魔法少女はこれ以上いらないわよ、キュゥべえ?佐倉さんだって風見野と見滝原を行き来しているけれど、基本的には風見野をテリトリーにしているみたいだし」

QB「ダメ元で、もう一度二人を勧誘しに行ってみようかな」

マミ「わたしは引きとめはしないけれど……」

マミがそこまで言ったところで、窓が勢いよく開け放たれた。

キリカ「全く、懲りないねキュゥべえ」

織莉子「鹿目まどかだけは契約させないと、何度も言っているのに……」

マミ「キリカさんに織莉子さん!?」

QB「やれやれ、またキミ達か。最近、僕がこう呟く度に姿を現すね」

織莉子「あなたがわたしに与えた力、忘れたわけではないでしょう?」

キリカ「未来予知とは本当に便利な魔法だね」

言いながら、二人は土足でマミの部屋へ入り込む。

マミ「ちょっ、ちょっと!せめてベランダで靴を脱いでからあがって!」

織莉子「ああ、ごめんなさいマミさん」

マミの注意を受け、二人は靴を脱いでそれを綺麗に並べる。

キリカ「さて……キュゥべえ、覚悟は出来ているかい?」

QB「いい加減にして欲しいね。僕の仕事は新しい魔法少女を……!」

言葉を途中で遮り、キュゥべえはその場から跳躍する。
その直後、キュゥべえの立っていた絨毯が少しえぐれた。

マミ「あっ、暴れないで!!」

織莉子「マミさん、これは正義の為なのです。多少の被害は、眼を瞑っていただかないと!!」

QB「わけがわからっ……!!」

キリカ「捕まえた、っと」

織莉子の放つ魔力弾を飛び跳ねながら回避していたキュゥべえが、キリカに捕まった。

織莉子「それでは、お騒がせしましたマミさん。キリカ、帰りましょう」

キリカ「はい、巴」

マミ「え、ええっと……」

戸惑いながらも、マミはキリカから差し出された紙を受け取る。
受け渡すと、キリカと織莉子は入って来た窓から外へと出て行った。

マミ「………なんなのかしら……」

呟きながら、渡された紙を確認した。

『おりキリのキュゥべえ狩り 祝!!20匹目!!』

紙には、それだけ書かれていた。

マミ「………」

次にマミは、部屋を見渡した。
織莉子の放った無数の魔力弾により、壁や絨毯にいくつかの傷がついていた。

マミ「キュゥべえを捕まえる為に、こんなことを……」

これからもキュゥべえがわたしの家に来る度にこれが繰り返されるのだろうか。
そう考えたら、少しだけ身の毛がよだつマミだった。


―――
―――――

マミ「………」

さやか「ちょっと、やりすぎ、だね……」

マミ「このひと月の間に、絨毯を3回買い換えたわ……」

杏子「悲惨だな……」

ほむら「次はさやか。あなたはどんな被害を?」

さやか「う、うん。あれは、恭介がやっと退院出来るってお医者様に言われた日だったから、今から二週間前、かな……―――」

―――――
―――


さやか「恭介、退院出来るって本当!?」

恭介「うん。ようやく、支え無しで歩けるようになったから」

さやか「よかったぁ……」

恭介「でも、この手はもう、治らないんだって……」

さやか「恭介……」

恭介「正直、ヴァイオリンを弾けないって思い知らされた時は、死にたいとすら思ったけど……」

さやか「そっ、そんなこと!!」

恭介「あはは、落ち着いてさやか。今は、もうそんなこと考えてないからさ」

さやか「………あの、さ。恭介」

恭介「ん、なに、さやか?」

さやか「っ……」

さやかの心の中では、とある決心が固まっていた。

さやか「あ、あたし、実は、その……」

恭介「……」

さやか「ずっと……恭介の、事が……す」

そこまで言ったところで、病室のドアが勢いよく開け放たれた。

キリカ「そこまでだ、美樹さやか!!」

織莉子「ストップ、ストップよさやかさん!!」

さやか「お、織莉子さんにキリカ!?」

織莉子とキリカは、無遠慮に病室に入り込む。

恭介「き、キミは……っ!?」

キリカ「やあ。あの時以来だね、少年」

さやか「な、何の用っ?」

織莉子「………キリカ」

キリカ「わかっているよ、織莉子」

織莉子に促され、キリカは手に持った鞄の中からいくつかの物を取りだした。
複数のクラッカー。
手作りと思われる小さな応援旗。
同じく手作りと思われる、小型のくす玉。
組み立て式の吊るし台。
ひと通りの準備を終えると、キリカは織莉子に応援旗をひとつ、渡した。

織莉子「行くわよ、キリカ……」

キリカ「ああ」

織莉子「せーのっ!」

織莉子「フレーッ!!フレーッ!!美樹さやか!!」

キリカ「勇気を振り絞るんだ、美樹さやか!!」

バサッバサッと小気味のいい音を立てて、二人は小型の応援旗を振りかざす。

さやか「え、あ、あの……?」

織莉子「わたし達のことは気になさらず!!さあ、今こそ!!」

キリカ「自身の気持ちを打ち明けるんだ、美樹さやかっ!!」

病院に似つかわしくない騒がしさで、二人はさやかを応援し続ける。

恭介「あ、あの……?」

さやか「………っ……ご、ゴメン恭介!あ、あたし、今日はもう帰るね!」

その場の空気に耐えられず、さやかは逃げだした。
恭介からは見えなかったが、さやかの顔は真っ赤だった。

キリカ「………」

織莉子「………」

恭介「え……えっと……?」

織莉子「おかしいわね……」

キリカ「ふむ、わたし達の介入のせいで未来が変わったのかな?」

織莉子「そうかもしれないわね。わたしたちも、撤収しましょうか?」

キリカ「そうだね、織莉子」

二人は用意したものを手早く片付けると、

織莉子「お騒がせしました、上条恭介さん」

キリカ「まぁ、その、なんだ。力強く生きるんだぞ、少年」

病室を後にした。

恭介「………一体、なんだったんだろう……僕も、さやかに話したいことがあったんだけど……まぁ、学校に復帰してからでもいいか」


―――
―――――

さやか「………」

杏子「……散々だな」

さやか「うぅ……せっかく勇気を振り絞ったのに……」

まどか「で、でも、まだ大丈夫!だって、さやかちゃんと上条くんは幼馴染なんだからっ!」

さやか「ありがとう、まどかぁぁ……」

ほむら「………杏子。あなたは?」

杏子「ん、あぁ。あたしはな……―――」

―――――
―――


杏子「んーっと、これとこれとこれと……」

ゆま「キョーコ!これ、食べたい!」

杏子「あん?いいぜ、カゴに入れろよ」

ゆま「ありがとー、キョーコ!」

杏子とゆまの二人は、スーパーで買い物をしていた。

杏子「うしっ、こんなもんだな」

ひと通りの物を揃えた二人は、レジへと向かう。

その途中。

織莉子「杏子さん……」

キリカ「………」

杏子「ん?なんだ、織莉子にキリカか。なんか用か?」

織莉子「悪いことは言いません。わたしも一緒に頭を下げますから、謝りに行きましょう」

杏子「は?」

キリカ「わたしたちの目が黒いウチは、悪事はさせない。さあ、行くぞ」

問答無用と言った体で、キリカは杏子の腕を取る。

杏子「おっ、おい!?なんなんだ、一体!?」

ゆま「キョーコ!織莉子お姉ちゃん、キリカお姉ちゃん!?」

サービスカウンターまで来ると、織莉子は深く頭を下げた。

織莉子「申し訳ありませんっ!!この子が、万引きをしようとしているなんて……っ!!」

杏子「おいっ!?何の話だ!?」

織莉子「さあ、杏子さん。あなたも頭を下げて!」

杏子「だから万引きって……っ!?」

織莉子「ここに、この商品のお金は用意してあります。ですので、警察沙汰だけは、勘弁してあげてください!!」

カウンターの台に、5000円札を一枚置く。

織莉子「さあ、ここからはあなたたちの問題です。キリカ、行きましょう」

キリカ「ああ。いや、いい事をした後は気持ちがいいね!」

杏子「ちょ、待っ……!!」

去って行く織莉子とキリカを追おうとした杏子は、店長に手を掴まれた。


―――
―――――

杏子「………」

まどか「あの……一応聞くけど、杏子ちゃん、万引きするつもりだったの?」

杏子「んなわけねぇだろ!!そりゃ、まぁ、一時期はそういうことをしてたこともあるにはあるけどよ……流石に今は、バイトで金は稼いでんだよ」

さやか「うわぁ……それは、何と言うか……ご愁傷様」

杏子「おかげでその後はその店長にこってり絞られたよ……」

ゆま「キョーコ、何もわるいことしてないのに……」

ほむら「まどか……あなたは?」

まどか「わたしは、一週間前だったかな……―――」

―――――
―――


まどか「え、エイミーっ!?」

まどかが一人、夕方の街を歩いている時のこと。
黒い猫が、道の脇でうずくまっていた。

まどか「そんな、エイミー……っ!!」

まどかが抱き上げても、ぐったりとしていて元気が無い。
そんなまどかの様子を、遠目に見ながら通行人は通りすぎていく。

QB「どうかしたかい、まどか?」

まどか「きゅ、キュゥべえ……っ!?」

QB「その猫を助けたいのなら、僕が―――」

キュゥべえの言葉が、途中で途切れる。体が、爆ぜていた。

まどか「っ!?」

織莉子「間にあった……わね」

キリカ「全く、本当に懲りないね」

ゆま「まどかお姉ちゃん、大丈夫?」

まどか「織莉子さん……キリカさん……ゆまちゃん……」

織莉子「念を押すようだけれど、契約はしたらダメよ、まどかさん?」

キリカ「さぁ、ゆま。出番だよ」

ゆま「うんっ!」

周囲の目からは極力触れないように、織莉子とキリカはゆまの壁になるように立ちはだかる。

ゆま「だいじょーぶだよ、猫さん。すぐに治るから……」

ソウルジェムをエイミーに近づけると、淡い光を放つ。
それと同時に、エイミーの体の傷が癒えていく。

まどか「す、すごい……」

わずかな時間で、エイミーの傷は完治した。

キリカ「終わったかい、ゆま?」

ゆま「うん!終わったよ!」

織莉子「御苦労さま。それじゃ、行きましょうか」

しゃがみ込んでいたゆまが立ちあがると、三人は歩きだす。

織莉子「ああ、そうだ。まどかさん?」

まどか「はっ、はい!」

織莉子「わたし達に心配をかけないでください……あまり心配を掛け過ぎると………」

そこまで言うと、織莉子の視線はまどかの下半身―――スカートへ移った。

まどか「っ……」

織莉子「ふふ……なんて、ね……」

最後に微笑を洩らし、三人は立ち去った。

まどか「うぅ……感謝の気持ちはあるけど、やっぱり織莉子さんのあの目は苦手だなぁ……」

エイミー「にゃあ」

まどか「あ、エイミー!よかった、元気になったんだ!」


―――
―――――

さやか「あれ、まどかの話は別になんともなくない?」

マミ「そうね……ただ、弱っていた猫を助けてあげた、というだけの話のように思えたけれど……」

ほむら「まどかを怯えさせるとは……許せないわね」

さやか「あ、そういう基準なんだ……」

杏子「っつーかゆま、あたしの知らないところで相変わらずあいつらとつるんでんのか」

ゆま「どうしても力を貸してほしいって言うから、その……」

杏子「……まぁ、今回はまどかを助けてやったみたいだからいいけどよ。あんまりあの二人だけとつるむのはやめといた方がいいぜ?」

ゆま「覚えておく……」

マミ「それで、暁美さん?あなたはどうなの?」

ほむら「わたしは、三日前ね……―――」

―――――
―――


ほむら「……あの二人の介入ですっかり感動が薄れてしまったけれど……思えば、ようやくまどかとの約束を果たすことが出来たのよね」

ほむらは一人、家の中で感慨に耽っていた。

ほむら「でも、代わりにわたしの時間停止の魔法は……」

魔法少女に変身し、腕の盾を確認する。
意識を集中させても、時は止まらなかった。

ほむら「………まぁ、あのひと月を越えるのがが、わたしの長い長い旅路の目的だったのだし。今となっては、使えなくっても問題ないわね」

再び私服姿へと戻る。

と、家のインターホンが鳴らされた。

ほむら「? 誰かしら、こんな夜更けに……?」

疑問に思いながら、ドアを開ける。

織莉子「こんばんは、ほむらさん?」

キリカ「……」

ほむら「織莉子……キリカ……」

正直、この二人に対しては複雑な気持ちだった。

織莉子「家にあがらせてもらってもいいかしら?」

ほむら「……ええ、いいわよ」

二人を、家の中に上げる。
少し前までは魔法によって広く、幻想的な空間に仕立て上げていた部屋だったが、今はそれも全て解除し、普通の部屋となっていた。

ほむら「……それで、何の用?」

織莉子「ずいぶんと冷たいわね、ほむらさん。せっかくこうして、親睦を深めようと思って来たのに」

ほむら「え?」

キリカ「ほむらとはなんだか壁があるような気がしてね。たまにはこういうのもいいだろう?」

ほむら「え?」

織莉子「お菓子を持って来たのよ。あと、紅茶のセットも。少し、台所を借りてもいいかしら?」

ほむら「え、えぇ、いいけれど……」

ほむらの戸惑いを意にも介さず、織莉子とキリカは台所へと向かう。
10分程の間を置いて、二人は戻って来た。その手には、三つの紅茶のカップとお茶菓子があった。

織莉子「準備完了ね」

キリカ「はい、ほむらの紅茶」

ほむら「あ、ありがとう……」

織莉子「それじゃ、始めましょうか?」

相変わらずほむらの様子などお構いなしと言った様子で、二人は茶会を始める。

キリカ「うん、やっぱり織莉子の淹れる紅茶は最高だ」

織莉子「ありがとう、キリカ。ほむらさんも、遠慮せずにどうぞ?」

ほむら「え、えぇ、いただくわ」

何がしたいのかを把握出来ないまま、紅茶に口をつける。

ほむら「………おいしい」

織莉子「ありがとう」

ほむらの言葉に、笑顔で礼を言う織莉子。

織莉子「……それで、本題なのだけれど」

ほむら「?」

和やかな雰囲気で茶会を初めてから少し経った後。
織莉子の表情が、真面目な物となる。

織莉子「未来予知の魔法を持っているわたしならともかく、何故あなたがわたし達の事を知っているのか……それを、識ることが出来たの」

ほむら「!」

織莉子「別の世界のわたし……と言えばいいのかしら?ずいぶんと、あなたに迷惑を掛けたみたいで……」

ほむら「あの世界を……視た、のね?」

織莉子「……ええ。あなたたちと敵対して、わたしの一番大切なものまで失って、それでも盲目的なまでに目的を果たそうとした世界……」

キリカ「織莉子……」

織莉子「今、ここにいるわたしとは無縁だ、ってあなたは言うかもしれないけれど……わたしはそう思うことが出来なかった」

ほむら「………」

織莉子「でも、わたしは間違ったことはしていない、とも思っている。だから、謝るつもりも無いのだけれど……」

ほむら「……わたしも、そうね。あんなことがあったから……あなたたちに対しては、複雑な気持ちだと言うのが正直なところよ」

織莉子「でしょうね……だから、こうして一緒に過ごすことで、お互いに理解を深めよう、と思って来たの」

ほむら「そういうこと、だったのね」

織莉子「全てを水に流そう、とまでは言わないわ。あなたも、わたしも、信念を持って行動していたのでしょうから。でも、これからはわたしたちは仲間なのだし……ね?」

ほむら「ええ、そうね。わたしも、その方がありがたいわ。もし、また何らかの理由でまどかが契約しそうになった場合には……あなたたちに頼ることも、出来そうだし」

キリカ「差し当たっては、わたしからキミに伝授する魔法がある」

ほむら「? 何、かしら?」

織莉子「あなたの時間停止の魔法……それを、復活させたいとは思わない?」

ほむら「! そんなことが、出来るの?」

キリカ「わたしがキミの時間停止の魔法に対抗する魔法を使ったのは、知っているね?」

ほむら「あれは、あなたの魔法だったのね……」

キリカ「ああ。織莉子のアドバイスで、わたしは自身の魔法を強化する事が出来た。ええと……なんだったっけ、織莉子?」

織莉子「魔法の拡大解釈よ、キリカ」

キリカ「ああ、そうそうそれだ。キミの時間停止の魔法だって、拡大解釈すればいいと、そういうわけだ」

ほむら「……生半可なことではないと思うわよ?」

キリカ「何、問題ないよ。キミの時間停止とは、言うなれば砂時計の操作だ。その砂の流れをせき止める『時間停止』に、砂時計をひっくり返す『時間遡行』の二つ。
     ひっくり返すことで、『時間遡行』……つまり、時を操る魔法が発動するのなら、同じく時を操る魔法を行使するわたしがその時を遡る力を抑え込んでやればいい、と」

織莉子「百点満点よ、キリカ」

キリカ「必死に覚えたからね」

ほむら「……可能、なの?」

キリカ「やってみなければわからないけれど……試す価値は、あるんじゃないのかな?」

ほむら「そう、ね……」

考えてみれば、とほむらは思う。
時を操る魔法を行使する魔法少女は、非常に稀な存在なのかもしれない。
現に数多の魔法少女を生み出してきたキュゥべえも、最後の最後までほむらの正体を見極める事が出来なかったのだ。

キリカ「それじゃ、始めようか」

ほむら「ええ」

キリカとほむらは、魔法少女姿へ変身する。

キリカ「この盾を、回せばいいのかな?」

ほむら「そうよ。そうすることで、ひと月という時間を遡る魔法が発動する。……確認するけれど、本当に大丈夫なのよね?」

織莉子「心配症ね、ほむらさんは」

ほむら「それはそうに決まっているでしょう……ようやく、わたしの目的を果たすことが出来たんですもの。これで失敗して、時間遡行の魔法が発動した、なんてことになったら……」

織莉子「大丈夫、わたしたちを信じて、ほむらさん?」

キリカ「それじゃ、行くよ。それっ!!」

ほむらの了承を得ず、キリカは勢いよく盾を回転させた。

ほむら「っ……」

あまりの不安感に、ほむらはギュッと目を瞑る。
しばしの間、部屋の中が静寂に包まれる。

ほむら「…………っ……」

恐る恐る、と言った風にほむらは眼を開く。
そこは………―――見慣れた、病院の一室だった。

ほむら「そ……そん……な……」

キリカ「なんてね!」

ほむら「!?」

織莉子「ふふ、驚いたほむらさん、とっても新鮮ね」

ほむら「え、え!?」

何が起こっているのか把握出来ないウチに、ほむらの視界は病院の一室からほむらの部屋へと変わった。

織莉子「ちょっとだけ、イジワルさせてもらいました」

気が付くと、ほむらの目の前では織莉子が手をかざしていた。

キリカ「その様子だと、織莉子の新しい魔法もうまく行ったみたいだね?」

織莉子「ええ。わたしの未来予知の魔法を、他人に視せる魔法……」

ほむら「………シャレになっていないわよ、それ」

織莉子「ごめんなさい。からかいたくなるような顔をしていたから、つい」

クスクスと、織莉子とキリカは笑う。

キリカ「さて、冗談はここまでだ。暁美、これでキミは再び時間停止の魔法を使うことが出来るようになっているはずだけれど、どうかな?」

ほむら「………」

無言で、腕の砂時計を確認する。

ほむら「……………砂が……」

時計の砂は、全てが上部へと移っていた。

キリカ「大成功!!」

織莉子「いえい!」

キリカと織莉子は、嬉しそうにハイタッチをしていた。

ほむら「ありがとう……まさか、こんな方法でまた時間停止の魔法を使えるようになるなんて……」

織莉子「いいの、気にしないで。これが、わたしたちなりの償いなのだから」

キリカ「さて!それじゃ、お茶会の続きと行こうか!」

その後、三人によるお茶会は明け方まで続いたのだった。


―――
―――――

ほむら「………」

さやか「いや、それ完全になんかいいはなしだなーみたいな感じにしか聞こえなかったんだけど?」

ほむら「夜更かしは乙女の最大の敵なのよ……」

さやか「えええぇぇ……」

ほむら「とにかく!あの二人、ずいぶんとやりたい放題やっているわ!!」

杏子「流石に、目に余るよな」

マミ「ええ、そうね。少し、お仕置きが必要かもしれないわ」

ほむら「そこで、わたしから提案があるの」

マミ「いいわ、聞かせて?」

ほむら「わたしたちが受けた屈辱を、彼女達にも味あわせてあげよう、ということよ」

杏子「……へぇ、面白そうじゃん。いいぜ、あたしは乗った!」

さやか「まぁ、あたしもあの二人には迷惑掛けられたし……それくらいなら、いい、かな?」

マミ「わたしも賛成よ」

まどか「あ、あの……手荒なことは、しないであげてね?」

ゆま「ゆまは、どうしたらいいのかな……」

杏子「気がのらねぇってんなら、ゆまは大人しくしとけ。あたしたち四人で、十分だ」

ほむら「そうね。ゆまは、大人しくしておいた方がいいわ」

ゆま「わ、わかった」

まどか「それじゃ、ゆまちゃんはわたしと一緒に、待ってよっか?」

ゆま「うん!」

まどかとゆまは、まどかの家へと帰って行く。

ほむら「………さて。それじゃ、わたしが考えた作戦概要を聞いて……―――」

Extra Target 美国織莉子&呉キリカ

ここまでー

338のさやかの
>さやか「いや、それ完全になんかいいはなしだなーみたいな感じにしか聞こえなかったんだけど?」
って、いかにもさやからしい認識不足ですなあ

ほむらの精神状態を考えたら、病室の幻だけで、かなりジェムが濁りそうなもんだけど。
それを思えば、
>ほむら「夜更かしは乙女の最大の敵なのよ……」
というのは単なるはぐらかしで、本当はあのからかいの内容に腹が立ってるんだよな?

おりきり被害が深刻じゃなかったのはまどか一人だけだよな?

織莉子の家の二階。
そこでは、キリカが一人何やら難しい顔で作業をしていた。

キリカ「うーん……思ってたより、難しいもんなんだね……」

呟きながらも、作業を続ける。
と、部屋のドアがノックされた。

織莉子「キリカ?何をしているの?」

キリカ「お、織莉子っ!?」

織莉子が来たとわかると、手に持っていたあるものを咄嗟に隠す。

織莉子「? どうかしたの?」

キリカ「い、いや、なんでもないよ。どうかしたかい、織莉子?」

織莉子「一緒に買い物に行こうと思っていたのだけれど……」

キリカ「買いもの?」

織莉子「ええ」

キリカ「ごめん、織莉子。わたし、今ちょっと手が離せないんだ。先に行っててくれないかな?後で追うから」

織莉子「そう?キリカがそう言うのなら構わないけれど……」

キリカの様子がおかしいと思いつつ、織莉子は部屋を後にする。


キリカ「ふぅ……危なかった」

階段を下りる足音を確認したキリカは、再び作業を開始した。

~~~

織莉子「さてと、今日は何を作ろうかしら……っ?」

キリカを家に残し、織莉子は一人スーパーへ向かう。
その道中。

ほむら「あら、一人?珍しいわね、あなたが一人で行動しているなんて?」

さやか「久しぶり、織莉子さん」

織莉子の目の前に、ほむらとさやかが立ちはだかる。

織莉子「ほむらさんに、さやかさん?どうかしたかしら?」

ほむら「いえ、ちょっとね……最近のあなたたちの行動が目に余ると思って」

織莉子「……?」

さやか「ま、少しはあたしたちが受けた屈辱を味わってもらうかな、っていう話ですよ、織莉子さん」

ほむらとさやかは、ジリジリと織莉子ににじり寄る。
なんだか嫌な予感を覚えた織莉子は、それに気圧されるように後ずさりする。

ほむら「さて、覚悟を決めてもらおうかしら、織莉子?」

さやか「じっとしてれば、酷い目には合いませんから……ふふ……」

織莉子「ま……まさ、か……?」

さやか「覚悟ぉぉ~!!」

さやかが、織莉子に跳びかかる。

織莉子「くぅっ!?」

後退しながら微かに視た未来予知のおかげで、それを回避することが出来た。

ほむら「キリカが側にいないから、時間停止に対抗する術がないでしょう?」

さやかが跳びかかると当時に魔法少女姿へ変身したほむらは、得意そうに腕の盾を見せつける。

織莉子「そ、そんな……な、なぜこれだけ日が経ってからこんなことを!」

ほむら「むしろ日が経ったのが原因なのよ」

織莉子「っ!!」

織莉子が、不自然な方向に身を捻る。
それとほぼ同時。織莉子の背後に、ほむらが瞬間移動したかのようにさやかの目に映る。

さやか「おお、そういや時間停止の魔法が復活したって言ってたね」

織莉子「くっ……き、今日だけは見逃して!お願い!!」

ほむら「へぇ?どうやら都合が悪いみたいね?」

さやか「これは、ますます逃がすわけにはいかなくなりましたなぁ~♪」

織莉子「い、いやあああ!!キリカ、キリカあああああ!!」

キリカの名を叫びながら、二人に背を見せ逃げ始める織莉子。

ほむら「追うわよ、さやか!」

さやか「合点っ!!」

当然のように、二人は織莉子の織莉子の後を追うのだった。

~~~

織莉子がキリカの名を叫んだのと同時刻。

キリカ「よしっ、終わったぁ……」

作業が終わったキリカは、

キリカ「さて、織莉子を追いかけよう」

すぐさま織莉子の後を追う為、家を後にする。

キリカ「スーパーに着く前に織莉子に追いつけるかな……」

ドアに鍵を掛け、公道へ出たところで、

マミ「あら、こんにちはキリカさん」

杏子「一人か?めずらしーじゃん」

マミと杏子が、キリカの前へ姿を現した。

キリカ「巴と佐倉か。わたしに何か用かい?わたしは今、忙しいんだけど」

飄々とした態度で、キリカは言い放つ。

マミ「ええ、大事な用があるの」

杏子「ま、すぐ済むからさぁ?大人しくしてくれれば、な」

二人はほむらとさやかよろしく、ジリジリとキリカににじり寄る。
対するキリカは、二人の思惑がわからないと言った様子だった。

マミ「……レガーレ!」

キリカ「っ!?」

突然のマミの行動に、わずかに狼狽するキリカ。
地面からマミの拘束リボンが現れ、キリカの動きを封じた。

キリカ「……何のマネだい、これは?」

杏子「ま、ワルプルギスの夜以降のあんたらの行動を省みてみろってことだ」

キリカ「……?」

マミ「あなたたちがしてきた数々の行為……忘れたとは言わせないわよ?」

キリカ「いや、何の話だい?」

キョトンとした顔で、何でも無いかのように答えた。

マミ「……自覚が無い、ということかしら?」

杏子「それはそれでタチが悪いな……」

キリカ「なんだかよくわからないけれど……要するにキミ達は、わたしに危害を加えようとしている、ということでいいのかな?」

杏子「だから、危害は加えないっての」

マミ「そう。少しだけ、わたしたちが味わった屈辱をあなた達にも味わってもらおうかな、というだけのことよ」

キリカ「屈辱……いや、あなた達、だって?」

マミの言葉、その一フレーズに敏感に反応する。

マミ「ええ。今頃は織莉子さんも、暁美さんと美樹さんの襲撃を受けているんじゃないのかしら?」

キリカ「そうか、それを教えてくれてありがとう」

素早く魔法少女姿に変身し、拘束リボンを切り裂いた。

キリカ「すまないが急用が出来た。織莉子のところへ急がないと」

杏子「そうはさせねぇ!」

キリカが鉤爪を二人の方へ向けて宣言するとほぼ同時に、杏子は鎖の壁を作り上げる。

マミ「狩られる側の気持ち……あなたにも味わわせてあげるわ」

キリカ「悪いけれど、織莉子の安否が掛かっているんだ。手加減はしないよ!」

マミ「佐倉さん、行くわよ!」

杏子「へっ、マミとこうしてコンビで戦うのも久しぶりだな!」

マミと杏子、キリカは、割と本格的な戦いを始めていた。

~~~

織莉子とほむら、さやかによる鬼ごっこは、物の数分でカタがついた。

織莉子「ご、ごめんなさいっ!ゆ、許してっ!!」

さやかに羽交い締めにされた織莉子は、ほむらに懇願する。

ほむら「わたし、あなた達に狙われた時に似たようなことを言ったわよね?」

さやか「あたしの時はキリカが問答無用だったよ?」

織莉子「でっ、でも!それに関する謝罪は既に済ませたはずでしょう!?」

ほむら「まぁ、それはそうね」

織莉子「だったらっ……!」

ほむら「その後、あなたたちが取った行動を思い返してみなさい?」

織莉子「わ、わたし達が取った行動?」

ほむらの言葉を聞き、自身の行動を思い出す織莉子。

織莉子(ええと、確か……)

織莉子が思考を巡らしている間に、ほむらは織莉子の目の前まで歩み寄る。

ほむら「あなたのスカート、長いのね?」

織莉子「ちょ、ちょっと待って!今、あなたに言われた通りに思い出しているのだから……っ!」

ほむら「問答無用よ」

織莉子の長いスカートを掴むと、それをたくしあげた。

織莉子「い、いや……」


ほむら「……? ……!? ………っっ!!?」

織莉子の着用しているパンツを見て、明らかな動揺を見せるほむら。

さやか「ほむら?どうかしたの?」

ほむら「……………いえ、なんでもないわ」

そのまま何もせずに、ほむらはスカートから手を離した。

織莉子「うぅ……っ!」

ほむら「さやか、織莉子を離してあげなさい」

さやか「え、でも……」

ほむら「いいの、もういいのよ……」

様子のおかしいほむらに疑問を覚えながらも、さやかは羽交い締めにしていた織莉子を解放した。

織莉子「うう、見られた……最初は、キリカに見てもらおうと思っていたのに……っ!」

さやか「……?」

ほむら「ごめんなさい、織莉子……ちょっと、あなた達のことを見くびっていたわ」

しゃがみ込んでいる織莉子の肩を、励ますようにポンと叩く。

ほむら「行きましょう、さやか」

さやか「え、うん……?」

織莉子をその場に残し、ほむらとさやかは立ち去って行く。

織莉子「キリカ……ごめんなさい……」

~~~

キリカ「……どうやら、わたしの負けのようだね」

三人の戦いは、巡り巡って路地裏へと流れ込んでいた。
キリカの体は、大の字を描くようにしてマミのリボンと杏子の多節棍に拘束されていた。

杏子「ちっとばかし手間取ったが、まぁ二対一ならこんなモンか」

マミ「さて、それじゃ本懐を遂げましょうか?」

杏子「あたしはこの槍の端っこ、離せねぇから。マミ、やってくれ」

マミ「ええ、了解よ」

いつもの優しさなどどこへやら、マミは邪気溢れる笑顔でゆっくりとキリカへ近づく。

キリカ「何をするつもりだい?」

マミ「あなたがわたし達にやったことと同じことよ?」

言いながら、キリカの側でしゃがみ込む。

キリカ「同じ事……ま、まさかっ!?」

普段滅多に動揺しないキリカが、珍しく動揺を見せる。

マミ「そう。あなた達の言葉を借りるなら『パンツ狩り』ね」

キリカ「た、タイミングが最悪すぎる……っ!!」

抵抗など無意味なのだが、それでも身をよじるキリカ。

杏子「へぇ?よっぽど都合が悪いのか?マミ、遠慮はいらないぜ。ひと思いにさくっと行っちまいな」

マミ「ええ、そのつもりよ」

キリカのミニスカートを、ゆっくりとたくしあげる。

キリカ「くそっ、屈辱だ……っ!」



マミ「……? ……!? ………っっ!!?」

キリカの着用しているパンツを見て、明らかにマミは動揺を見せた。

杏子「マミ?どうかしたか?」

マミ「……………いえ、なんでもないわ」

そのまま何もせずに、マミはキリカのスカートから手を離した。
それと同時、キリカの両腕を拘束していたリボンも解除する。

キリカ「く……」

マミ「佐倉さん、キリカさんを解放してあげて」

杏子「おい、ホントにどうしたんだよ?」

マミ「いいの、もういいのよ……」

様子のおかしいマミに疑問を覚えながらも、なんとなく尋常でない雰囲気に気圧された杏子はキリカを解放した。

キリカ「見られた……最初は、織莉子に見てもらおうと思っていたのに………」

杏子「……?」

マミ「ごめんなさい、キリカさん……ちょっと、あなた達のことを見くびっていたわ」

愕然としているキリカの肩を、励ますようにポンと叩く。

マミ「行きましょう、佐倉さん」

杏子「お、おう……?」

キリカをその場に残し、マミと杏子は立ち去って行く。

キリカ「織莉子……織莉子のところへ……」

ふらふらと立ち上がり、やはりふらふらとした足取りで織莉子を探し始める。

Extra Target 美国織莉子&呉キリカ とある事情により実行せず

ここまでー

織莉子「うぅ……家に帰ろう……」

ほむらとさやかが立ち去ってから数分後、織莉子は力無く立ち上がる。
そして、家へ向けて足を進め始めた。

キリカ「あ……織莉子……」

家の前で、ちょうどキリカとはち合わせる。

織莉子「……キリカ……?」

キリカ「どうしたんだい、織莉子……?元気、無いみたいだけれど……」

織莉子「そういうあなたこそ……」

織莉子・キリカ「はぁ……」

二人はため息をつきながら、家の中へ入る。

キリカ「……織莉子のところに、ほむらとさやかが行ったみたいだけど……大丈夫だった?」

織莉子「……それを知っているということは、あなたのところにも現れたのね……」

キリカ「ああ……」

織莉子「………狩られたの……?」

キリカ「いや……織莉子は……?」

織莉子「……わたしも、狩られはしなかったけれど……」

織莉子・キリカ「最初は、キリカ(織莉子)に見てもらいたかったから……」

その言葉が、重なり合う。

織莉子「え?」

キリカ「……今、織莉子は何て言った?」

織莉子「き、キリカから言って欲しいわ」

キリカ「……最初は、織莉子に見てもらいたくって……」

織莉子「わ、わたしも……そう、なのだけれど……」

二人、不思議そうな顔を見合わせる。

キリカ「わ、わたしに見てもらいたい?」

織莉子「キリカこそ!」

キリカ「………」

織莉子「………」

二人の間に、妙な沈黙が流れる。

織莉子「じ、実は、その……」

観念したかのように、織莉子が先に話し始める。

―――――
―――


同日、数時間前―――

織莉子「ふんふ~ん……」

織莉子は家で一人、縫い物をしていた。
買って来たばかりの、新しい下着。
それに、自身で刺繍を施している最中だった。

織莉子「ん~……っと。よし、完成っ!」

刺繍が終わった下着を、広げて眺める。
その下着には、両手に鉤爪と、片目には眼帯を付けた一人の少女が形作られていた。

織莉子「うん、うん……完璧な再現だわ。我ながら、うっとりしちゃうくらい……」

満足行くまで眺めた後、それを着用する。

織莉子「さて、と……キリカは二階にいるのかしら?」

階段を上がり、二階へ向かう。

織莉子「キリカ?何をしているの?」

ノックと同時に、部屋の中にいるであろうキリカに声を掛ける。

キリカ「お、織莉子っ!?」

ドアを開けると、キリカが何やら動揺している様子だった。

織莉子「? どうかしたの?」

キリカ「い、いや、なんでもないよ。どうかしたかい、織莉子?」

織莉子「一緒に買い物に行こうと思っていたのだけれど……」

キリカ「買いもの?」

織莉子「ええ」

キリカ「ごめん、織莉子。わたし、今ちょっと手が離せないんだ。先に行っててくれないかな?後で追うから」

織莉子「そう?キリカがそう言うのなら構わないけれど……」

それだけ言い残し、織莉子は部屋を後にした。


―――
―――――

織莉子「……と、言うわけで、今履いてるパンツは、その……」

語尾がしぼみ、聞き取りづらくなる。

キリカ「………はは、なんだ」

織莉子「き、キリカ……?」

キリカ「いや、どうやら考えることは同じみたいだね」

織莉子「どういうこと?」

キリカ「うん、実はわたしもね……―――」

―――――
―――


キリカ「ふぅ……危なかった」

織莉子が階段を降りたのを確認したキリカは、作業を再開する。
その手には、新品の下着が握られていた。

キリカ「うーん……難しいな、刺繍っていうのは……いたっ!」

左手を反射的に針から離し、指先を確認する。
血がにじんでいた。

キリカ「うぅ……いっそ、織莉子に頼む?いや、でもなぁ……」

ひとしきり思考を巡らしたところで、再び刺繍を始める。

キリカ「これはわたしへの試練だ……わたしの、織莉子への愛が試されているに違いない……っ!」

黙々と、作業に没頭する。

作業を続けること数十分。

キリカ「よしっ!!完成した!!」

絆創膏だらけの手で、刺繍が完了した下着を広げる。
それには、ショールの付いた帽子を被った少女が形作られていた。その少女の周辺には、いくつかの水晶があしらわれている。

キリカ「うん、素晴らしい!わたしの織莉子への愛が溢れかえっているね!」

何度か満足げに頷き、それを着用する。

キリカ「よしっ、終わったぁ……さて、織莉子を追いかけよう」

そうつぶやき、キリカは家を後にする。


―――
―――――

キリカ「………」

織莉子「……ぷっ」

キリカ「……ふふっ」

二人は顔を見合わせると、

織莉子「あはははっ…」

キリカ「はははっ…」

自然と、笑いがこみ上げて来ていた。

織莉子「まさか、キリカがわたしと同じことを考えてるなんて……」

キリカ「やっぱり、わたしと織莉子は運命共同体、だね」

織莉子「それで、キリカ。わたしに見せる為に、頑張って刺繍を施したのでしょう?」

キリカ「ん、うん、そうだよ?」

織莉子「なら、見せてくれるかしら?」

キリカ「そういう織莉子だって」

織莉子「仕方ないわね……それじゃ、ベッドへ行きましょうか?」

キリカ「ああ、そうだね。まだ、日は高いけれど……」

仲良く手を繋ぐと、二人はベッドへ向かう。

キリカ「見てもいい……?」

織莉子「は、恥ずかしいわキリカ……」

キリカ「大丈夫、わたしも後でちゃんと見せるから……」

織莉子「そ、それじゃ、その……」

キリカ「……これは、わたし?」

織莉子「そ、そうよ……あなたの、魔法少女姿をイメージしてみたの。どう、かしら?」

キリカ「すごい、さすが織莉子だ。瓜二つじゃないか」

織莉子「ありがとう……それじゃ、キリカのも見せて……?」

キリカ「うん……」

織莉子「……!わ、わたし……?」

キリカ「そうだよ……この複数の水晶を作るのに、苦労したんだ……」

織莉子「すごい、すごいわキリカ。ひと目見てわたしってわかるくらいに特徴を掴んでるじゃない……」

キリカ「織莉子……」

織莉子「キリカ……」

キリカ「織莉子おおおおおおっ!!」

織莉子「キリカああああああっ!!」




その日、二人の夜はとても熱かったそうな。


番外編 終わり

おまけ5・四人の戦後報告

ほむら・マミ「はぁ……」

まどかとゆまも揃って、六人は再びほむらの家へ集まっていた。

まどか「ねぇ、さやかちゃん……ほむらちゃんとマミさん、どうしたの?さっきからずっとあの調子だけど……」

さやか「さぁ、わかんない……ほむらは、織莉子さんのパンツを見てからずっとあんな調子なんだよね」

杏子「マミの奴もだぜ……何があったのか聞いても教えてくんねぇし……」

ゆま「ほむらお姉ちゃん、マミお姉ちゃん、何があったの?」

ほむら「ごめんなさい……ちょっと、予想外な出来ごとがあったものだから……」

マミ「暁美さんの様子だと、織莉子さんの方も同じような感じだったみたいね……」

杏子「ん、話す気になったか?」

ほむら「……………これは、あの二人のプライベートに関わる問題なのよ。だから、気安く話をするのも躊躇われると言うか何と言うか……」

マミ「あの二人、ガチだったのよねぇ……」

ほむら・マミ「はぁ……」

さやか「何があったのさ……」

ほむら「……いえ、実は……」

~~~

さやか「おぉう……」

杏子「……まぁ、なんつーか、その……」

さやか・杏子「ご愁傷様……」

まどか「あ、あははは……」

マミ「あの二人の想いはホンモノよ……」

ほむら「色々な意味で、ね……」

ゆま「え?なにが?つまり、織莉子お姉ちゃんとキリカお姉ちゃんは仲がいいってことじゃないの?」

杏子「ゆま……お前は真っ当に育てよな……」

ゆま「?」

おまけ5・四人の戦後報告 終わり

これでホントに投下終了
ネタを提供してくれた>>51さん、どうもありがとうございました
色々展開が酷かったような気がするけど、ギャグってことで多めに見てくださいww
それではサヨウナラ、またどこかのSSスレで会ったらよろしく

―――織莉子とキリカのパンツ狩られ騒動から更にひと月が経過した。

織莉子の家に、珍しく魔法少女が全員揃い踏みしていた。

ほむら「……それで、話ってなにかしら?」

織莉子の淹れた紅茶をひと口飲んで、ほむらがそう切り出す。

織莉子「ええ……実は……」

ひと通りの準備を終え、織莉子も腰を落ち着ける。

杏子「織莉子があたしたちに協力して欲しいだなんて、珍しいじゃねぇか。なんかあったのか?」

キリカ「佐倉、物を口に入れながら喋るのは関心しないね」

杏子「むぐっ…」

ごくり、と喉を鳴らし、再度杏子は話し始める。

杏子「あんたら、あんまり人には頼らない節があると思ってたけど」

織莉子「………次の目的は、わたしたちだけでは恐らく無理なのよ」

マミ「穏やかな話では、なさそうね?」

織莉子「魔法少女狩り……」

ほむら「っ!!」

織莉子のその言葉に、ほむらが敏感に反応する。

織莉子「ほむらさんはこの言葉、聞き覚えがあるわね?でも、あなたが思い描いているのとは少々違うものよ」

ほむら「……詳しく話してちょうだい」

織莉子「あすなろ市……どうやら、そこで少々物騒な事件が起こっているみたいなの」

マミ「! あすなろ市……」

杏子「なんだ、マミは知ってんのか?」

マミ「ええ。前に、学校の遠足で行ったことがあるところよ」

ゆま「そのあすなろ市で……その、魔法少女狩り?が行われてるの?」

織莉子「わたしの未来予知の魔法で視たものだから、今現在起こっているのか、それともこれからそのような事件が起こるのかは定かではないのだけれど……」

ほむら「………そこへ行って、どうするつもりなの?」

キリカ「まぁ、例のごとくって奴さ」

キリカのそのひと言で、ほむら、マミ、杏子は顔をしかめる。
嫌な予感が、ひしひしと伝わってきたようだった。

織莉子「シリアスに事を進められたら、ロクなことにはならないのよ?」

杏子「おい……」

マミ「まさか……」

ほむら「………」

キリカ「パンツ狩り出張部隊ってところだね」

ほむら・杏子・マミ「やっぱり!!」

三人が、息ぴったりに叫ぶ。

マミ「何故パンツ狩りに拘るの!?」

織莉子「いけないかしら?」

杏子「もっとフツーにやりゃいいだろが!!」

キリカ「場を引っ掻きまわすにはそれが一番いいのさ」

ほむら「まさか、わたしたちにその協力をしろと言うのではないでしょうね!?」

織莉子・キリカ「ご明察!!」

二人は息ぴったりにサムズアップする。

織莉子「あすなろ市には、どうやら大量の魔法少女がいるみたいなの」

キリカ「わたしたち二人では返り撃ちに合いそうなのさ」

織莉子とキリカの言葉を受けて、四人は相談を始める。

杏子「おい、どうするよ?」

マミ「……パンツ狩り云々はともかく、魔法少女狩りというのは見過ごせないわね」

ほむら「そうね……わたしも、マミに同じくよ」

ゆま「ゆまは、お姉ちゃん達に合わせる」

杏子「はぁ……ったく、お節介な奴らばっかり揃いやがって……」

それほど迷うことも無く、

杏子「わーったよ、仕方ねぇな!あたしら全員、行くだけ行ってやる!」

四人は織莉子とキリカに協力することを決めたのだった。

織莉子「ありがとう。では、わたし達のチーム名を決めましょうか」

マミ「チーム名?」

キリカ「どうやら、あすなろ市にいる魔法少女達は『プレイアデス聖団』なるチーム名があるらしい」

織莉子「それに対抗する形で、わたし達にも欲しいと思わない?」

杏子「いや、いらねぇと思うんだけど……」

マミ「必要ね!」

杏子「えっ」

織莉子「賛成の人は挙手を」

織莉子の一声で手を上げるのは、織莉子、キリカ、マミ、それと……―――ゆまだ。

杏子「ゆま!?お前もか!!」

ゆま「チーム名って、あった方がカッコいいよ!」

ほむら「もう好きにしなさい……」

ほむらと杏子は、頭を抱えていた。
なるようになれ、と二人の心の声が重なり合っていた。

織莉子「実は、もう仮称は決めてあるのよね」

杏子「……嫌な予感しかしねぇけど、一応聞いといてやる」

キリカ「その名も、『ショーツハンターズ』!!カッコいいだろう!?」

ほむら「………」

杏子「………」

マミ「名は体を現す、ね。わかりやすくていいわ」

ゆま「しょーつはんたーず……うん、語呂はいいね!」

杏子(意味を理解してなけりゃ、確かに語感はいいけどよ……)

ほむら(直訳で『下着狩り隊』……)

ほむら・杏子(ロクな名前じゃない……)

織莉子「では、我らショーツハンターズの行動開始は夏休みに合わせます」

キリカ「ちょうど明日には終業式だろう?明後日に、あすなろ市へ向かうことにしよう」

織莉子「明後日の朝、わたしの家へもう一度集まってちょうだい。いいわね?」

マミ「ええ、了解よ」

ゆま「りょーかい、だよ!」

杏子「ああ……」

ほむら「わかったわ……」

若干ノリノリのマミに、とても楽しそうな様子のゆまに、ため息交じりのほむらと杏子。
かくして、あすなろ市への出張が決まったのだった。

というわけでかずみ勢のパンツ狩りが始まります。
更新頻度はかなり落ちると思われますが、気長にお待ちください

二日後。

キリカ「よくぞ集まってくれた、ショーツハンターズの諸君!!」

キリカが織莉子の家の前で腕を組み、四人の来訪者を歓迎していた。
キリカの後ろでは、織莉子がとても真面目な顔で佇んでいる。

キリカ「……おや、そこに見えるは鹿目と美樹かい?」

ほむら達の更に後方。
そこに、まどかとさやかがいた。

まどか「えっと、ほむらちゃんに教えてもらったの。みんな、あすなろ市ってところに行くって」

さやか「あたしたちは、そのお見送りに来たんだよ、キリカ」

キリカ「そうかそうか。わたしたちのお見送りに来てくれるとは、嬉しい限りだね」

QB「僕もいるよ、呉キリカ」

織莉子「あなたはいらないわ」

キリカ「織莉子に同じく」

QB「なんでさ」

織莉子「キュゥべえはともかく、出発前にあなたたちと会えてよかったわ。さやかさん。わたしたちの留守中、まどかさんの事をよろしくお願いね」

さやか「え?」

キリカ「鹿目の契約を阻止する人々がいなくなってしまうんだ。キミが鹿目の側にいてくれれば、わたしたちは安心出来る」

ほむら「それはわたしからもお願いしたいわ、さやか」

まどか「あ、あはは……わたし、信用されてないのかな」

ほむら「そんなことは無いわ。わたしはまどかの事、信じている」

織莉子「あなたの事を信用していないというわけではないけれど……用心しておくに越したことはないもの」

さやか「うぅむ……織莉子さんとキリカとほむらの期待に答えないと!」

キリカ「ああ、それと美樹」

他の人には聞かれないよう、さやかに耳打ちをするキリカ。

さやか「ん、なに、キリカ?」

キリカ「この前は邪魔をしてすまなかったね。わたしたちが留守の間ならば、邪魔も入らないだろう?」

さやか「え、あ……」

キリカの言わんとしていることに気付いたさやかが、顔を赤くする。

キリカ「あの少年と、よろしくしたいんだろう?頑張れ、美樹。わたしたちも、応援しているから」

織莉子「ふふ、ファイトですよ、さやかさん」

さやか「あ、ありがと……うん、頑張るよ、あたし」

二人の激励を受けて、さやかは再び上条恭介にアタックしようと決めたのだった。
次は、邪魔も入らない保障もある。それが何より大きかった。

キリカ「さて!それじゃ、あすなろ市へ向けて出発するとしようか!」

キリカ、織莉子を先頭にして、

ゆま「出発しんこー!」

ゆまがノリノリに、

マミ「ええ、行きましょう!」

目的をしっかりと把握しているのか怪しいマミに、

杏子「無茶だけはしてくれるなよ…」

不安しかないと言いたげな杏子に、

ほむら「あすなろ市……そこで一体何が……」

ぶつぶつと何かを呟くほむらに、

QB「ええと、なぜ僕まで連行されているんだい?」

紐でぐるぐる巻きにされてズルズルと引きずられているキュゥべえが続いて行く。

まどか「行ってらっしゃい、みんな!」

さやか「はぁ……これで少しは平和になってくれるといいんだけどねぇ」

まどか「あはは……」

まどかとさやかの二人は、そんな六人+αを見送った。

まどか「それじゃさやかちゃん、帰ろう?」

さやか「あ、ゴメンまどか。先に帰っててくれる?」

まどか「え?」

さやか「あたし、ちょっと、行くところがあるから、その……」

まどか「……あ、そっか。上条くんのところ、だね」

さやか「っ……」

まどかの問いに、さやかは無言で頷く。

まどか「退院が近いんだっけ?」

さやか「夏休み中に、退院出来るみたい。だから、その前に、その……」

まどか「うん、わかった。頑張ってね、さやかちゃん!」

さやか「あ、ありがと、まどか」

そうまどかにお礼を残し、さやかは病院へと向かう。

まどか(さやかの恋路がどうなったのかについては……今はまだ、語る時じゃないんだって)

まどか(うまく行くといいな、さやかちゃん)

ショーツハンターズ、汽車であすなろ市へ―――

ここまで

投下開始前にひと言
>>1はかずマギは単行本組です
なので、作中設定で矛盾があった場合には、生温かい目でスルーか優しく指摘してくれると喜びます

いざあすなろ市へ辿りついた一向ではあったが。

織莉子「……」

キリカ「……」

ほむら「……」

マミ「……」

杏子「……」

ゆま「……」

全員、ひたすらに無言であった。
それと言うのも―――

――――――

海香「通りすがりの女子中学生」

カオル「海香とカオルでっす!よろしく!」

――――――

石島「もう時間がないわ!」

立花「かずみ、逃げろ!!」

――――――

??「バカな…本物だったはず…」

――――――

魔女?「お……お ま え は」

かずみ「お?お?」

かずみ「なにこれなにこれ!かーーわい~~~!」

――――――

カオル「かずみーー!!」

かずみ「聞いて。わたし、魔法が使えるみたい」

――――――

海香「さあ存分にお買いあれ!!」

――――――

織莉子「介入するタイミングが中々ないわね……」

未来予知の魔法を持つ織莉子が作戦を立てるという彼女らの性質上、織莉子が介入するタイミングが無いと言ってしまえばそれまでになるのだ。

ほむら「……ものすごーく平和な空気しか感じないのだけれど」

マミ「ええ、そうね……彼女達、十分にこの街を守れていると思うわ」

杏子「ふわぁぁ……たいくつだなぁオイ。魔女はあいつらが狩っちまうしよぉ……」

ゆま「キョーコ、ゆま眠い……」

当初の連帯感などどこへやら、ショーツハンターズはすっかり平和ボケしてしまっていた。

キリカ「仕方ない、彼女らの動向はわたしと織莉子が探るとしよう。キミ達は、織莉子の別命あるまでホテルに待機、ということでどうだい?」

杏子「それが一番かもしんねぇな……」

織莉子「シリアスな空気になりそうになった場合、すぐに声を掛けるわ。それまでは、ゆっくり休んで英気を養ってちょうだい」

マミ「それでいいのかしら……」

ほむら「来た意味を見失いそうね……」

杏子とゆまは眠たげに、マミとほむらはどことなく不満げな様子を見せつつも、拠点と決めたホテルへと向かう。

織莉子「それじゃ、キリカ。わたし達は今しばらく彼女達の様子を見守る事としましょうか」

キリカ「うん、了解」

その日の夕方。

織莉子「……―――!」

キリカ「織莉子?」

織莉子「どうやら……来たようね、わたし達の出番が」

街角にある喫茶店で休んでいた織莉子は、そう言いながら席を立つ。

キリカ「ついにか。ほむら達にも声を掛けるかい?」

織莉子「いえ、まずはわたし達だけで事足りそうよ」

キリカ「ふむ……それで、最初のターゲットは?」

織莉子「ええ………」

Ver Asunaro Target1 飛鳥ユウリ

いきなりクライマックスな気もしないでもないですが、今日はここまで

織莉子「………いた」

建物の影に隠れた織莉子とキリカが、ターゲットの姿を確認する。

キリカ「あの赤いのが、飛鳥ユウリ?」

織莉子「ええ……いえ、正確な名は杏里あいりというはずよ」

キリカ「偽名、ってことか。複雑な事情を抱えているということかな?」

織莉子「わたしも、全貌を知っているわけではないけれどね。とにかく、行きましょう」

決意と共に、二人はプレイアデスの面々と飛鳥ユウリ―――杏里あいりの元へ駆け始める。

~~~

ユウリ「このユウリ様のことが気になるご様子で!」

建物の天井に逆さに立ちながら、一人の魔法少女は声を張り上げる。

みらい「ユウ…リ?」

その名乗りを聞いたみらいが、そうつぶやく。

織莉子「行くわよ、キリカ!」

キリカ「合点、織莉子!!」

ユウリ「覚えてないのオ?」

狂気に満ちた声を放ちながら、その手に持った銃「リベンジャー」をまずはみらいの頭向けて撃ち放つ。

キリカ「っと!」

ユウリ「っ!?」

サキ「だ、誰!?」

ユウリに次ぐ突然の乱入者の存在に、プレイアデスの面々とユウリは動揺する。

織莉子「そこまでよ、あいりさん!」

キリカ「キミの相手は、わたし達がしようじゃないか!」

無数の水晶玉を浮かべた織莉子と両の手合わせて10本の鉤爪を構えたキリカが、ユウリに宣戦布告する。

里美「ほ、ホントに誰!?」

海香「また新しい魔法少女…!?」

織莉子「プレイアデスの皆さんは下がっていて……あの子、あいりの相手はわたしとキリカがします」

キリカ「キミ達じゃ役不足だ」

ニコ「……」

混乱に乗じて反撃の準備をしているニコを、

ユウリ「はんっ!しゃらくさい!!」

ユウリが狙撃する。

織莉子「させない、と言っているわ」

その攻撃を、織莉子の水晶が阻害する。

ユウリ「ちっ……なんなんだよあんたたちは。アタシの邪魔をしようっての?」

キリカ「いや、邪魔をするつもりはない」

ユウリ「!?」

キリカは、織莉子やプレイアデス聖団に気を取られているユウリの隙をついて背後に回り込んでいた。

キリカ「らぁ!!」

思い切りスカートをめくりあげると、すぐさま対象をずり下ろした。

ユウリ「……は?」

キリカ「ただし、これでまだ自身の目的の為に動けるなら別だけどね!」

ユウリは、空高く掲げられているキリカの左手に視線を移す。
そこには、白色無地のパンツがひらひらと風になびいていた。

ユウリ「………」

織莉子「ナイスよ、キリカ!!」

キリカ「さぁ、どう?ノーパンであんたはまだ行動を続けられるのかい?」

得意げにニヤニヤと笑いながら、キリカはユウリに問いかける。

ユウリ「アホくさ……」

それだけ吐き捨てると、ユウリはキリカの事など意にも介さずにかずみの近くへと跳んで行った。

キリカ「………え?」

織莉子「ど、どういう事……?」

ユウリ「さぁ、かずみ!ついてきてもらうよ!!」

かずみ「きゃっ!は、離しなさいよっ!!」

サキ「かずみっ!!お前、かずみを離せ!!」

ユウリ「うっさいよ偽善者気どりが!!」

ユウリに食ってかかろうとしたサキを始めとするプレイアデスの面々に向け、銃を放つ。

サキ「ぐぁっ!!?」

その攻撃は、プレイアデスの全員の行動を不能にまで追いこんでいた。

ユウリ「ハハハハハハハ、無様だねプレイアデス!」

最後と言わんばかりに、ユウリはひとつの矢をその場に射った。

ユウリ「じゃあね、プレイアデス!!それに、女のパンツにご執心な変態二人!!行くよコル!」

そう言うと、ユウリは自身の使い魔である牛と共に空を駆けて行った。

織莉子「なん……」

キリカ「だと………?」

パンツさえ狩ればなんとかなると思っていた二人は、ユウリの性格を読み切れていなかった。
あっさりと目的を果たしこの場を去るユウリを、二人はただただ見送るだけだった。

Ver Asunaro Target1 飛鳥ユウリ 試合に勝って勝負に負けた的な感じ

すんませんホントに短いですけどここまで
違うんだパンツを狩られても動揺しないユウリ様カッケーをしたかっただけなんだ……

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