QB「上条恭介、僕と契約して魔法少女になってよ!」恭介「」(766)

恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

規制食らって面倒くさいから
こっちになげることにした

QB「いきなり何をするんだい?」

恭介「あたりまえだろ」フンス!

QB「ボクにはわからないよ」

恭介「ならば説明してあげよう。いいか、目の前にいきなり見たこともない生物が現れたんだ。
   誰でも警戒するのはおかしくないだろう?」

かまわん
碌なSSじゃないから

QB「それは判るよ。でもいきなり殴る理由の説明になっていないんじゃないかい?」

                     U M A
恭介「見たことも無い生物、つまり未確認生物だ。
   そのUMAはどんな性質を持っているだろうか?
   判るわけ無い。なにしろ未確認なんだからな。
   凶暴でいきなり襲ってこないとどうして言えよう?」

QB「だから殴ったのかい? それは性急過ぎる結論だと思うよ。
   それにボクはキミ達人類が警戒を解くような容姿をしているだろう?
   これはボクは一切危害を加えるつもりはないということを、
   判りやすく表現しているつもりなんだけどな」

恭介「それについては反論もあるが、その前にまあ聞け。
    君は知っているがどうか判らないが、
    この地球上では人間以外の生物はそんな風に喋らない」

QB「それは認めるよ。実際はそうでも無いんだけど、
   キミの生きているこの時代の人類の共通認識としては正しいだろう」

恭介「今の君のオカルト的発言は聞かなかったことにするよ。それより本題だ。
   どんな性質か判らない未確認生物が目の前に現れただけでも危険を感じるというのに、
   キミは流暢に言葉を喋る、しかも日本語だ。
   そして対等の立場で交渉しようとまでしている。
   これで殴らない方がどうかしている。そうだろう?」

QB「いや、その理屈はおかしい。
   一方的に蹂躙しようというわけじゃないんだ。話が出来るなら、
   互いに知的生命体として理性的に交渉すべきじゃないかな?」

恭介「そこだよ。さっきから聞いていると、どうもキミは上から目線な言い方をする。
    にもかかわらずさっき君は『人類が警戒を解くような容姿』を選択したようなこと言ったね?」

QB「それがおかしなことかい?
   対話を円満にするために相手の警戒心を解こうとすることは、
   正当な努力だと思うんだけどな」

恭介「生物学的にか科学力的にかあるいはその他の何かなのかは判らないが、
    君達は君達が我々人類よりも『上位の存在』であると考えているだろう?」

QB「もしかしたら君は気を悪くするかもしれないけれど、それはその通りだよ」

恭介「まあ、気を悪くしたりはしないさ。そのくらいは想定内のことだからね。
    そしてそんな君は下位の存在である我々人類の前に、
    わざわざ『警戒を解くような容姿』を選択してここに来た」

QB「それになにか問題があるのかい?」

恭介「おおありだよ」




↓ここで大蟻のAA(ンナモンネーヨwww

恭介「もし『対等』に交渉するつもりだったら『それ相応の容姿』で現れれば良いはずだ。
   対話というのは相互理解が基本だからね。
   さっき君は『容姿を選択』と僕が言ったのを否定しなかったね。
   つまり、上位存在として相応の容姿で現れることも可能だったってことだ。

恭介「だが君はそれをしないで、わざわざ『警戒を解くような容姿』、
    言い方を変えよう。『可愛らしい姿』を選択した。
    それは君が『上位の存在』だということを隠蔽したかったからに他ならない。
    それは『対等に交渉』しようとしている者のすることではないよ」

恭介「僕はこう思ってしまうね。
    『君は何らかの“人類に知られたくない目的”を持って僕と交渉しに来たんじゃないか?』とね」

   ̄| / ̄ 
  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
 _(ノ_)つ
(__ノ/
 UU  

それっぽいのあった

QB「……人類に君のような論理性を有する固体が存在したことは驚きだよ。
   君の言ったことは否定するほど間違ってはいない。
   だけど補足させてもらうよ。
   『この容姿』を選択したのは本当に君達に必要以上に警戒されないためであって他意はない。
   ボクたちの交渉相手は思春期の少女たちが殆んどなんだ。
   だから変に上位存在を誇示するような姿は適切でないと考えている」

恭介「まあ、そのあたりは良いよ。今までのは君の言質をとらえた遊びみたいなものだ」

QB「それな無いと思うよ」

恭介「本質はそこじゃない。君は最初になんと言った?」

QB「それじゃあ、もう一回言わせて貰うよ。
   上条恭介。ボクと契約して魔法少女になってよ!」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「本質はそこだ!」

QB「ひどいな、また殴るなんて。壁まで吹っ飛んでしまったじゃないか」

恭介「君は今何と言った? 『ボクと契約して』? 『魔法少女になってよ』?」

QB「そのとおりだよ!」
   
恭介「」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「……さっき君は交渉相手は思春期の少女たちって言ってなかったか?」

QB「いや、それにはまだ話があるんだ」

恭介「それを男の僕に魔法少女になってなんて」バキィ!

QB「」

恭介「殴る以外の選択肢はないだろう?」バキィ!

QB「きゅっぷい」

恭介「」フンス


QB「そろそろいいかな? 話をしても」

恭介「君は懲りないんだね。まあ話だけなら聞いてあげるよ。
    入院生活はなかなか退屈だからね」




~~ 魔法少女システムの説明中略 ~~




恭介「……つまり何でも一つ願いを叶えてくれる代わりに魔法少女になって魔女と戦って欲しいと?」

QB「その通りだよ」

恭介「その願い事が叶う規模は、当人の魔法的素質に左右されると」

QB「そうさ」

QB「そして君にはその素質がある、それもとびきりのだ。
   男の君にどうしてそれだけの素質が備わったのははまだ解明されていないんだけど、
   これは女の子だけに任せざるを得なかった魔女退治を、
   男の子にも任せられるかもしれないという貴重なデータなんだ」

恭介「つまり実験的な意味も有るってことかい?」

QB「そうだよ。なってくれるかい?」

恭介「聞いていいか? 何故、魔法『少女』なんだ?」

QB「まだ検証段階で、男の子用に調整したシステムが無いんだよ。
   キミがそのフロンティアになるってことさ。
   これはキミにとって名誉なことだと思うよ」

恭介「ことさらメリットだけを強調する営業マンは信用できないって叔父さんがいってたな」

QB「なんのことだい?」

恭介「まだ、『君達』の目的を聞いていない」

QB「目的? それはもう言ったじゃないか。魔法少女になって魔女と戦ってくれることだよ」

恭介「それは目的の一部だろ? もしくは現象の一面しか表現していないのか?」

QB「どうしてそう思うんだい?」

恭介「願い事をかなえる代わりに、魔女と戦う運命、これはまあ報酬と代償って事で良いだろう。
    だが、君達のメリットについて君は一言も話していない。
    人類に仇をなす魔女の退治が『上位存在』の君達にとってどんなメリットになるのか、
    僕には想像がつかないんだが、そこの説明をしてくれないかな?」

恭介「君達が願いを叶えて女の子を魔法少女にするというシステムを運用している理由だよ。
    『人類のため』なんていう偽善的な理由じゃ納得いかないからね。
    君の話を聞いていると君達にそんな精神が宿っているなんて到底思えない。
    それに僕が『君は“人類に知られたくない目的”を持って僕と交渉しに来た』と言ったのを、
    君は肯定したじゃないか」

QB「まいったな。君には何回も驚かされる
   確かに、ボクらには目的がある。
   だけど、それはキミが『偽善的』と表現した理由にも合致すると考えているんだけどね。
   ただ、それを明かすことが、どういうわけか契約の成立を阻害する要因になることがあるから、
   あまり明かしたことはないんだ」

恭介「それは契約時の説明責任の放棄じゃないのか?」

QB「そんなことはないよ。願い事を叶えるというメリットと、
   生命を魔女との戦いという運命に委ねるという代償は十分に説明している」

恭介「君達は人類に対して『上位存在』を自認してる訳だが、
    価値観の相違を考えたことはないのかい?
    君は『どういうわけか契約の成立を阻害する要因になることがある』と言ったろう?
    つまり君達が『説明は必要ない』と考えている内容に、
    人類にとっては『理不尽』と思えるような事柄が含まれているってことじゃないのか?」

QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬を他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

恭介「それは違うよ。説明してなければ誤謬の生じる余地はない。
    理解を阻害して不完全にしているのは『必要ない』として説明を怠った君の方だ」

QB「わかったよ。そこまで言われちゃ説明しない訳にはいかないね。
   それに男であるキミが選ばれたこととも関係する」

恭介「だったら聞かせてくれ」

間違えた

×QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬を他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

○QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬からくる不利益を
     他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

QB「ちょっと長い話になると思うから、ポイントを絞って説明するよ。
   判らなかったらその部分を補足するから質問してくれると助かる」

恭介「わかった」

QB「キミはエントロピーという言葉を知っているかい?」

恭介「いきなり質問かい。知ってるよ。
    熱力学の言葉だよね。簡単にいうと『乱雑さ』とか『でたらめさ』の尺度のことだ」
 
QB「それなら話が早いな。ボク達が利用するエネルギーというものは、
   その形を変換する毎にロスが生じるってことをいいたかったんだ。
   そのロスというのはエントロピーの増大という形で、
   どんどん利用不能な形になってこの宇宙に拡散していってしまう」

恭介「熱力学第二の法則から導き出される、
    宇宙が常に『熱的死』に向かっていくという理論だね」

QB「そうさ、宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ」

恭介「『宇宙』の? それが君達の『目的』とやらと関係があるっていうのかい?」

QB「おおありだよ」

   ̄| / ̄  ̄| / ̄
  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
 _(ノ_)つ  _(ノ_)つ
(__ノ / (__ノ /
 UU    UU

QB「ボク達の目的はね、宇宙の寿命を延ばすことなんだ」

恭介「つまりエントロピーの増大を防ぐもしくは逆転させるとかそういうことかい?」

QB「その通り、キミは理解が早くて助かるよ。
   そこでボクらは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを捜し求めた。
   そうして見つけたのが魔法少女の魔力なんだ」

QB「ボク達の文明は、知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した
   ところが当のボク達が『感情』というものを持ち合わせていなかった。
   そこで、この宇宙の様々な一族を調査して、キミ達人類を見出したんだ」

恭介「ちょっとまってくれ。『感情』といったね。君たちは感情を持っていないと」

QB「そうだよ。ボク達はキミ達人類のように怒ったり喜んだり哀しんだり、そういうものは有していないんだ」

恭介「なるほどね。純粋な論理性こそが最高といったところかな?」

QB「まあ近いね。キミ達の言語で正確に表現するのは難しいんだけど、訂正するほど間違ってはいないよ」

QB「人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、
   その個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する。
   キミ達の魂は、エントロピーを凌駕するエネルギー源足りうるんだよ」

QB「とりわけ、最も効率がいいのは第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ。
   願い事によって魔法少女になった魂が相転移する時、膨大なエネルギーを発生する。
   それを回収するのがボク達の役割なんだ」

恭介「聞いていいかい?」

QB「なんだい?」

恭介「純粋に科学的好奇心なんだけど、感情をエネルギーに変換する方法っていうのは、
    何か目に見える機械のようなものがあるのかい?」

QB「あるよ。キミ達のいう機械というものとは違うけど、
   契約によって魔法少女が手にするソウルジェム。これがそうさ。
   魔法少女の魂は契約によってソウルジェムという高効率なエネルギー変換装置に変えられるんだ。
   これによってその魂はより効率よく感情から変換されたエネルギーを使うことができるようになる。
   これが魔法さ。
   それは手に取って触ることも出来るから、キミの問いの答えになってると思うんだけど」

恭介「ふうん。ソウルジェムは魂の変換されたものなのか。
    『魂が相転移』という言い方が引っかかったんだけど、それで納得したよ。
    じゃあもう一つ。
    その希望から絶望への相転移で魔法少女はどうなる?」

QB「魔法少女のソウルジェムは相転移によってグリフシードとボク達が呼んでいるものに変化する」

恭介「魔法少女の魂は?」

QB「グリフシードは魔女の卵さ。その時魔法少女は魔女に生まれ変わるんだ。
   けれど、ここで回収された膨大なエネルギーは、
   この宇宙に住まう我々の同胞たちの活動に利用されるんだ」

QB「つまり、魔法少女はその命をただ地球上で人間として寿命を全うするより、
   遥かに有意義に活用することが出来るといえるね。
   どうだい素晴らしいだろう?」

恭介「……なるほど。話してくれてありがとう。だいたい判ったよ」ニッコリ

QB「キミの理解の役に立てて光栄だよ。
   じゃあ、早速だけど、ボクと契約して魔法少女になってよ!」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「ぎゅっぶい」

恭介「」フンス

QB「わけがわからないよ。キミは今の話を納得してくれたんじゃなかったのかい?」

恭介「まあ、ボクもキミにしたがって感情的にならずに話をしようじゃないか」

QB「というか殴ったよね? 今、二回壁に叩きつけたよね?」

恭介「さて、キミの『感情をエネルギーに』のあたりの話をもう一度掘り下げてみたいんだけどいいかな?」

QB「まあ、良いけど。替わりがあるとはいえこの身体をあまり痛めつけて欲しくないなあ」

恭介「君たちが『感情』と呼んでいるのは『君たちの技術でエネルギーに変換可能な精神的活動』と
    定義して構わないかな?」

QB「……構わないよ、その通りだ」

恭介「『希望』というのは、喜びとか充実感とかそういった『感情』を呼び起こさせるものという理解でいいかい?」

QB「そうだね、さっきの説明ではそこは簡単に表現したけど」

恭介「同様に『絶望』は哀しみとか苦しみという『感情』を生起させる、だね?」

QB「そうだよ」

恭介「第二次性徴期の少女が最も効率が良い理由ってのは判ってるのかい?」

QB「それは統計的なものだ。メカニズムまでは解明されていないよ。それでも利用するには十分だしね」

恭介「なるほど。感情自体の研究はなされていないってことか」

QB「エネルギーに変換するところは研究しているよ。
   でも感情と人類の行動との関係についての詳細は研究しても間接的にしか役に立たないから、
   エネルギー回収の指針になる程度までしかしてないね」

恭介「そうか。でもどうかな?
    統計的なものだけでは既知の現象しか対象にできないんじゃないか?
    感情の究明が進めば、もっと巨大なエネルギーを発生させる方法が、
    発見される可能性だってあるんじゃないかい?」

QB「それは興味深い。
   それを発見できればボク達は少女たちに魔法少女になって貰うために、
   一人一人交渉していく必要が無くなるかもしれないね。
   だが、ボク達が感情というものを持っていないこともあって、
   そういう研究は今までしてこなかったんだよ」

恭介「まあ、それは君たちの科学が僕には未知数だからなんとも言えないんだけど、
    とりあえず、第二次性徴期の少女が最も効率が良い理由ってのは判るよ」

QB「それは本当かい?
   実は様々な感情が発生するメカニズムはボク達には良く判っていないんだ。
   感情ってものは本当に頻繁にイレギュラーを発生する。
   『条理を覆す』って言い方をしているけど、ボク達はそれでいつも苦労させられているんだ」

恭介「その前に聞きたいんだけど、感情によって発生するエネルギーの回収効率ってどのくらいなんだ?
    魔法少女もそのエネルギーを使うんだろ?」

QB「普通、魔法少女が相転移を起こすまでに消費する魔法力は、
   相転移の際放出するエネルギーに比べたら大したことは無いよ。
   まあ過去に、相転移のエネルギーまで魔法力を消費しつくした魔法少女が居なかったことも無いが、
   それは本当に稀なケースだ」

誰特の極みだな
だらだらと流し続けてたがこれ終わらんわ

つかれた。もう休ませてくれ

恭介「なるほどね。じゃあ話を戻そう。
    『希望』っていうのは現実に合致しない願望だったよね?」

QB「もちろんだ。条理に見合わない願い事を叶えるのが魔法少女の力だからね」

恭介「『願い』が叶う、もしくはその力を与えられれば『魂』はそれに向かう。『執着』するって言っても良い。
    そこで生じた『感情』が君たちの発明した仕組み、ソウルジェムの中でエネルギーに変換される。
    それでいいかな?」

QB「その通りだよ」

恭介「そして、そのエネルギーはソウルジェム内で『魂』の『願い』を強化または維持するように働く。
    願いを叶える力になるわけだ。そうだよね?」

QB「そうだね」

恭介「それによって、『魂』はまた『感情』を発生させる。
    まあ具体的に例を挙げれば、
    まず、“願いを叶える力があること”を“喜ぶ”。
    次に“願いを叶えた”あるいは“叶えつつある”ことに喜んだり充実感を感じたり、
    これも感情だよね。総じていえば『希望』ってやつかな?」

恭介「そしてその感情はまたエネルギーに変換される。
    このようにソウルジェム内でエネルギーが循環し、維持され、その一部は溢れ出す。
    ここで溢れ出したエネルギーが魔法少女の行使する魔法力ってわけだ。
    ここまではいいかな?」

QB「それはソウルジェムの原理そのものだ。
   ボク達の科学の精鋭が発明した仕組みをどうして君はいい当てられる?
   君は本当に人類なのかい?」

恭介「君は人類の英知を舐めているよ。これは僕の生み出した知識じゃない。
    それにこのくらいは君の説明から誰だって簡単に推理できるはずだよ。
    君たちは人類を“都合の良いエネルギー発生装置”くらいにしか見ていないから、
    見逃していたんじゃないか?」

QB「人類の生み出した科学にそれが含まれているというのかい?」

恭介「まあそこの論議は長くなりそうだから後にしよう。
    次は相転移だね」

※※ここは上条恭介が中二病的妄想でQBに屁理屈をこねるスレッドです※※

恭介「『希望』を持ち続けた『魂』が少しづつ『希望を持つこと』に飽きてくる。
    これは心理学でも言われていることだけど、
    人間は何もせずに一定の感情を持ちつづけることは出来ないんだ。それには努力が要る。
    感情というものは常に変化していくものだからね」

恭介「ソウルジェムの魂が持つ『希望』は仕組みによって恒常的に維持されているが故に変化しない。
    それは魂がそれを『よいもの』だと思っているうちは『希望』が維持されつづけるだろうが、
    変化しないからやがて『魂』がそれに慣れてしまう。
    慣れてしまうと同じはずの『よさ』を感じなくなってしまう」

恭介「ここで『願いつづけること』に対して『このままでいいのか?』と疑問をもってしまう。
    そうなると『願い』を持ち続けることまでが、
    つまりソウルジェムのシステムに身を置き続けること自体が『苦痛』に変わりだす。
    『願いを叶える力が無くなった』と錯覚してしまうんだな。ここで一気に相転移が起きる。
    『願い』→『感情』→エネルギーのサイクルが回らなくなってしまうからだ」

恭介「『願い』が苦痛をもたらす。
    つまりそれは魔法少女が『最初の願い』に裏切られるってことだ。
    これは『魂』がそう感じるわけだからその『絶望』は深い。
    そして『絶望』した魂は今度は呪いを吐き始める。
    こんどは生起したネガティブな感情がエネルギーに変換されて、それが漏れ出していくんだ」

恭介「ここのポイントは『願い』→『感情』→エネルギーのサイクルが、
    通常、願いから希望を持ちその感情が生起してそれが叶うにしろ諦めるにしろ、
    いずれ消えていくその『健全なサイクル』を超えて維持し続けてしまうところにある。
    それによって感情のエネルギーは過剰に蓄えられていき、
    その裏で魂は飽き、錯覚し、絶望に落ちるプロセスを進めていく」

恭介「そして魂が完全に絶望に落ち、『願い』を放棄した瞬間、
    過剰に蓄えられていたエネルギーは全て放出され、
    絶望に堕ちた魂だけが取り残される。これがグリフシードってわけだ。
    相転移によるエネルギー回収へのシナリオがしっかり組み込まれているんだな」

恭介「これが僕が予想した相転移のメカニズムだけど、あってるかな?」

QB「いやいや、非常に興味深いよ。
   感情の機微まで考慮した相転移の理論化なんて前代未聞だ。
   ボク達の研究ではそれを法則として捕らえているんだ。
   条理に反する願いを叶えればその反作用が必ず起きるとね。
   実際これは現象にも合致する定式が考案されている」

QB「でも、どうやらその考察は間違いでは無さそうだ。
   ボク達も長年人類を見てきたからね。ソウルジェムになった『魂』が、
   そういうプロセスを辿るといわれて違和感は感じないよ。
   ただ、それが少女の希望から絶望の相転移が効率が良い理由に繋がるのかい?」

恭介「もちろんだ。『希望』っていうのは現実に合致しない願望、そう言ったよね」

QB「ああ、ボク達は『条理に見合わない願い事を叶える』というが」

>>50
つまり、

魔法少女は一つの願いとともに、最初に抱いた希望にすがって戦い続けるしかない。

それが実はQB達の発明したソウルジェムっていうシステムのせいだったってことだ!

恭介「感情っていうのは相対的なんだよ」

QB「それは判るよ。ボク達はそれをエネルギーに換算して定量的に計る事が出来る」

恭介「そうじゃない。それはエネルギー的側面だろう?
    僕が言いたいのは、願望と現実の相対だよ。君の言葉を使うなら条理と非条理か」

QB「どういうことだい?」

恭介「まず、『希望』の維持される時間は願い事の質によって変わってくる。これは良いよね?」

QB「当然その通りだよ。希望が絶望に相転移するまでの時間には個人差があって、
   それは願い事とそれを叶えたいという想いの強さによって決まる」

恭介「君のいう『第二次性徴期の少女』の持つ願望というのは現実との乖離が大きいんだ。
    ここでポイントとなるのは、その彼女が現実との乖離を認識していないってこと。
    つまり非常識な願望を持っていながら、それがいつか叶うと本気で信じてるってことだ。
    まあ君は知っているか判らないけれど中二病とか邪気眼とか特別な名前が付いているものもあるよね」

QB「つまりキミは少女の願い事は人類の中でもひときわ不条理だからって言いたいのかい?」

恭介「そう。一つは願望を本気で叶えたいと思っていればいるほど、
   そして、もう一つは、その願望が現実から遠ければ遠いほど、
   その感情は強くそして長く維持される。
   それが『第二次性徴期の少女』において顕著だってこと。
   長く維持されるって事は、相転移までに蓄えるエネルギーもそれだけ多くなる。
   でも君は今これを言われて納得したんじゃないかな」

QB「そうだね。それらのパラメータを魔力定数と呼ばれる数値に変換する公式は、
   存在しているが、そういう解釈は今まで無かったよ」

恭介「だったら、ターゲットを第二次性徴期の少女に限ることは無くなるんじゃないかな?
    まあ条件に合いやすいのが彼女達だっていうことは否定しないが、
    逆に条件さえ満たせばそれにこだわる必要はない」

QB「逆に言われてしまったね。まさにそれだよ。例外的に男の君が選ばれた理由じゃないか。
   結論に至る過程は違うが、ターゲットを広げる可能性ってことだよね。
   だからそろそろ、僕と契約して魔法少女になってくれないかな?」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「判ってない。まだ判ってないな」

QB「何回目だい? こんどは壁と拳骨に挟まれて顔が潰れかかったじゃないか」

恭介「君たちのシステムの欠陥を指摘したい」

QB「それは是非ともご指南願いたい。
   ボク達だって今の魔法少女のシステムが完全だなんて思っていない。
   ただ現状でベストな方法を取っているに過ぎないからね」

恭介「君たちのシステムでは相転移で魔女に変化した魂は破棄するしかないんだろ?」

QB「その通りだ。一旦ソウルジェムがグリフシードに変化して魔女として誕生してしまったら、
   もう元には戻せないからね」

恭介「効率悪いと思わないのか?
    普通に生きていれば希望か絶望に至ってもまた希望に転じることもある。
    人間持つ感情が一種類で一回きりなんてことはありえない。
    なのに、折角稀な資質をもった人間を見つけても、
    一回システムに投入して『使って』しまえばそれきりだ」

QB「それはそういうものだからね。効率の良い悪いはキミの言葉じゃないけど相対的だよ。
   もっと効率の良い方法が発明されれば、今の方法は効率が悪いと言われると思うよ」

恭介「僕はソウルジェムに問題があると思う。
    ああ転化するからグリフシードも含まれてると思ってくれ」

QB「キミの意見を聞こうじゃないか」

恭介「君は『一人の人間が生み出す感情エネルギーは、
   その個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する』と言ったよね。
   じゃあそのシステムは『一人の人間が一生の間に生み出す感情エネルギー総量』の内の、
   何割くらいを回収できるんだ?」

QB「全部は無理だね。利用できない分も含めて『総量』というならそれはほんの一部分だ。
   だから感情エネルギーが最も集中する十代前半という年齢の子を選ぶんだけどね」

恭介「それでも思春期と呼ばれる時期に少女が発する感情の一部分、
   『一回の機会』のみを利用するにすぎないだろう?
   希望が絶望に変化して、また立ち直って新たな希望を生み出す可能性があるとしても、
   そういうものだとして切り捨ててしまうのかい?」

QB「それは『そういうもの』だとしか言えないよ。
   そしてそれだけでも十分すぎる結果が得られるんだ」

恭介「感情から生成するエネルギーを『願い』に回して、サイクルを維持するソウルジェム。
    この仕組みはエネルギーシステムとしては効率的かもしれないが、
    人の心を収める場所としては最悪だよ」

恭介「だってそうだろう?
    人の持った願望を機械的に強制的に維持し続けようとするんだ。
    それでは感情もその時もったものに固定化してしまうだろう。
    固定化して強制的に増幅し、エネルギーに変換してしまう。
    君たちが感情というものを『利用可能なエネルギー』としてしか見ていないがゆえの誤りだ」

恭介「人間の感情というものはそうじゃない、
    喜び、怒り、笑い、哀しみ、常に変化していくものだ、
    感情というのはその変化の中で輝くものなんだよ」

恭介「それを固定化するって事は、輝きを失わせ、可能性を潰し、
    君達に言わせれば『折角』生じるはずだった未来の強い感情の発露の機会をも、
    失わせてしまう。
    その機会というものを、エネルギーを搾り出した残り滓、『魔女』として廃棄してしまっている。
    そういうことだろ?」

QB「いや、ボク達には感情ってものが無いからそこまで感情というものは理解できないよ。
   君のいう『感情が輝く』という現象がボク達の目的にどれだけ有用なのかは未知数だね」

恭介「もう一つ、君たちの重大な勘違いを指摘しよう」

QB「なんだい?」

もう休む

恭介「願いを叶え最後は絶望に堕ちるのを『法則』と捉えているってことだけど、
    それはつまり、『絶望』は願いを叶えた魔法少女の責任って言いたいのか?」

QB「その通りだ。契約した魔法少女はそのときよく『裏切られた』という言葉を吐くが、
   ボク達に言わせればそれはナンセンスだ。
   条理にそぐわない願い事を叶えれば、必ず何らかの歪みが生じる。
   そこから厄災が巻き起こるのは当然の摂理だ。
   願いから始まって呪いで終わるのが裏切りだというのなら、
   始めから願い事なんてしなければいいんだ」

恭介「君たちに落ち度はないというんだね?」

QB「もちろんさ」

恭介「だが、願いからくる希望を固定化して一直線に絶望に向かわせているのは、
    君たちが発明したシステムだ」

QB「けれども、システムがなくとも、遅かれ早かれ希望は絶望に変化するよ」

恭介「そこでエネルギーを回収して宇宙の為に役立ててるんだから、
    感謝こそされても恨まれる筋合いは無いっていうのが、君の主張だったね?」

QB「その通りだよ。どこかおかしな点があったかい?」

恭介「おおありだよ」

   ̄| / ̄  ̄| / ̄  ̄| / ̄
  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
 _(ノ_)つ  _(ノ_)つ  _(ノ_)つ
(__ノ / (__ノ / (__ノ /
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恭介「君は魔法はエントロピーに縛られないエネルギーと言ったじゃないか。
    魔法少女は条理を覆す存在だと。
    なのに、今、君は『条理』を持ち出して魔法少女の願いが最終的に呪いで終わるのは、
    『当然の摂理』だと言った。
    だとすると、魔法少女が条理を覆した分は何処へ行ってしまったんだろうね?」

QB「それは……」

恭介「初めて口ごもったね?
    これこそが君達の最大の落ち度であり勘違いだ。
    魔法少女が覆した条理は君達がエネルギーとして搾取しているんだ。

    そして、その条理の負債を魔法少女達に『絶望』として押し付けている」

QB「いや、ボク達はちゃんと魔法少女の願いを叶えているじゃないか。
  それは、人類の科学では決してなしえないことだ」

恭介「だが、君たちは『条理を覆す』という恩恵を残らず搾取しているんじゃないか?
    それは本来『感情を持つ人類』のものの筈だ。
    なにか反論は出来るかい?」

QB「それは種族としての優位性を理由にさせてもらうよ。
   キミ達人類はボク達の介入が無ければそれを利用するどころか、
   その存在に気付くことすらできなかったんだ」

QB「『願いの成就』と条理に見合った『厄災』を残すことで君達の文明が、
   破綻しないようにバランスを取っているともいえよう。
   まだ宇宙にも進出していない未熟な段階にある君達人類には、
   条理をくつがえすエネルギーは過ぎた代物だ」

QB「原子力という原始的なエネルギーですら満足に扱えず、
   地球環境に危機的な状況を生じさせている君達がこれを手にしてしまったら、
   地球がどうなってしまうか容易に想像がつくだろう?」

恭介「それは詭弁だ。傲慢な態度と言ってもよい。
    論点をすり替えないで欲しな。
    さっき君も認めたとおり、
    君たちのシステムは人類のもつ『感情』というもののほんの一部しか利用できないんだろ?」

QB「その通りさ。それでも大きな恩恵があるとも言ったよ」

恭介「にもかかわらず、その『ほんの一部』を利用するが為に、
    それに対して発生する『負債』を魔法少女に負わせて、その魂を絶望に貶め、廃棄してしまう。
    さらに魔女という厄災を人類に押し付けている。
    これは立派な『犯罪汚行為』だと思わないかい?」

QB「その言い方は心外だな。
   ボク達は宇宙の為にやってきたんだ。
   そしてこれは、キミ達人類もいずれ宇宙に進出するであろうから、
   長い眼で見れば、キミ達にも利益にもなることなんだよ」

恭介「人類の為というなら、まず厄災を押し付けるのをやめろ。
    君たちが受けた恩恵の分は君たちは負うべきだ。
    最低でも受けたメリットの割合に従って折半すべきだ。そうじゃないか?」

QB「いや、まだ君と論じていないが、それに当たることはやってきている。
   魔法少女が魔女を倒すという行為だよ。
   願い事を叶えた魔法少女は魔女と戦う運命を課せられるといったよね。
   これは魔女という厄災から人類を守る行為だ。
   感情エネルギーを回収したボク達の責務として行わせているんだ」

恭介「その理屈で人類が納得するとでも思っているのかい?
    結局、全てを魔法少女に押し付けているってことじゃないか」

QB「いや、一度放出された魔女の呪いは、魔女を魔法少女が倒すことで、
   最終的にグリフシードに収まる程度に集約されるんだけど、
   それを回収して浄化するのはボク達の役割なんだ。
   キミのいう『負債』をボク達がまったく負担してないっていうのは間違いだよ」

恭介「そうだったのか。それは失礼した。
    だがつまりそれは、君たちだけでは『負債』を負いきれないということだよね。
    負担の割合はどう見ても魔法少女に偏っているじゃないか」

QB「それが妥当かどうか問えるのは魔法少女になる決心をした人間だけだよ」

恭介「だが、君はその辺の説明責任を果たしているとはいえなかったよね?
    特に、『魔女になる』という未来の『大きな負債』を知らずして、
    どうして魔法少女になることの妥当性を計る事が出来るんだ?」

QB「それを言ったら、魔法少女になれるという事は人類にあっては、いや、
   それはボク達にだっておいそれと実行できないような、
   『条理を捻じ曲げる願い』を叶えるという大変大きなチャンスを得たってことだよ。
   その『不条理』がボク達に牙を剥かないという保証はどこにもない。
   ボク達だって、計り知れない大きなリスクを負っているんだ」

QB「互いのリスクを単純には計れないよ」 

恭介「ふん……。
    このへんの話はどうやら君たちとでは平行線のようだな。
    君たちのシステムの話に戻そうか」

QB「そうだね。ボクもそっちの方が有益に思えるよ」

恭介「やはり、ソウルジェムのシステムの最大の問題点は、
    一度、『魂』と共に入力した『感情』を強制的に維持してしまうことだと思う。
    これがあるが故に、
    一人の魔法少女で、ただ一つの『感情』しか利用できないという制約をも生み出してしまっている」

恭介「これは君にぜひ聞きたいんだが、素直に『願いを叶える』ということのみを行った場合、
    願いと共にある『希望』がエネルギーに変換されてその全てが『願い』に使われるんじゃないか?」

QB「その通りだね。でもそれだとエネルギーの回収というボク達の目的は果たせない」

恭介「でも、それだけなら『絶望』も『呪い』も発生しない?」

QB「いや、発生はするよ。ただしそれは、
   当人や当人の周りで辻褄あわせのように発生することになる」

恭介「それは、願いが叶った事に対する、本人や周りの反応であって、
    『希望』のエネルギーがそっくり引っくり返って『絶望』や『呪い』に転ずるようなものじゃないよね?
    つまり、この条件においては、今のシステムのような『条理を捻じ曲げた対価』は発生しない?」

QB「まあそうだけど、それだけではボク達にとって無意味だよ」

恭介「そこで『願い』をシステムに放り込んで『希望』を過剰に回転させ、エネルギーを搾り出すわけだ」

QB「その言い換えが何を意味するのか判らないけどその通りだね」

恭介「この過剰な回転はいわば『不条理』なことだろう?」

QB「感情という現象を『条理』に加えるならばそうなるが、
   ボク達はそう見ていない。感情エネルギーの結果こそが不条理なんだ」

恭介「そこが決定的なミスだよ。君たちの欺瞞といっても良い」

恭介「僕たち人類は有史の過去から感情というものと共にあった。
   感情というのは人類にあって当たり前の現象なんだ」

恭介「それに対して不自然な形で過剰に『感情エネルギー』を搾り出すという
    不条理を起こしているのは君たちの方だろ?
    実際その過剰分だけ『負の感情』、すなわち『呪い』が発生しているんじゃないか?」

QB「確かにその通りだが、過剰といっても、
   最初の願いから生じた『希望』と等量以上の感情エネルギーは取り出せないんだよ。
   つまりそこから生じる呪いも、最初の願いの分と見合っただけの量が生じるんだ」

恭介「それってつまり、
    君たちが余計なことをして呪いを発生させているって事じゃないか?
    それを魔法少女に押し付ける合理的理由をぜひ話してもらいたいものだね」

QB「いやしかし、それをボク達が回収する訳にはいかないよ。
   それは回収したエネルギーと同量のエントロピーの増大を我々が負うことを意味する。
   エネルギー回収が成立しなくなってしまう」

恭介「その発言が地球上での君たちの行為をなんら正当化するものではないことは、
    理解できてるかい?
    しかも問いの答えになってないよね?」

QB「……」

恭介「君は、『条理にそぐわない願い事を叶えれば、
    そこから厄災が巻き起こるのは当然の摂理だ』だなんて言ってたが、
    それを当てはめるべきは君たちの方じゃなかったのかい?」

QB「だけど、
   君のいう『有史の過去』からボク達は幾多の少女たちの願いを叶えてきた。
   中には人類の文明の発展に大きく寄与した魔法少女もいたんだ。
   ボク達は人類とうまく共存できていると思うよ」

恭介「つまり今のシステムで誤りは無いと?」

QB「改善の余地があることは認めよう。
   だけど今のシステムが考えうる最高のものだったんだよ。
   そして実際、長い間運用して成果も出してる」

恭介「期間は関係ないね。成果? どんな成果だい?
    先ほど君は人類の原子力利用を引き合いに出していたが、
    問題があるとはいえ、それは人類全体を見ればエネルギーを利用したツケを、
    人類自らが引き受けているという点で、君たちよりマシじゃないのか?
    君たちは利用するだけ利用してそのツケさえも払えず人類に押し付けているじゃないか」

恭介「つまり君達は『感情をエネルギーに変換する方法を発明した』などと
    したり顔で言っていたが、
    その実その対象もろくに理解しないで、
    『よく判らないが使えそうだから使っている』程度のものだってことだ」

恭介「その結果、君たちから見れば文明科学などある部分が未熟とはいえ、
    宇宙に住まう同胞であるはずの人類に多大な迷惑さえかけてしまっている」

恭介「『上位存在』が聞いて呆れるよ。
    そんなお粗末なシステムを掲げて、『宇宙の為』だの『長い眼で見れば人類にも利益になる』とか、
    よく言えたもんだね。
    人類がこんな連中から搾取を受けていたなんて悲しすぎて僕は涙も出ないよ」

QB「いや、その点については君の言葉には返す言葉も無い。
   確かにボク達は人類の感情というものを完全には理解してない。
   だが何回も言うように、
   その一部を利用するだけで宇宙にとって計り知れない恩恵があることも間違いないんだ」

恭介「君達は僕たち人類は家畜のように思っているのかもしれない」

QB「そうでもない。ちゃんと知的生命体として交渉の上で同意を得ているわけだから、
   地球上の家畜より待遇ははるかにいい筈だよ」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「きゅぷい」

恭介「いやすまない。だが本気で言ってるとしたら君たちは、もはや知的生命体などではなく、
    『ただエネルギーを貪るだけの装置』のようなもののような気がしてきたよ」

恭介「君は家畜より待遇が良いなんていっているが、本当だろうか?
    人類の飼育する家畜はその多くが殺されるために育てられているわけだが、
    その身体はなるべく無駄にしないようにするのが普通だ。
    それは自分たちの為に死んでいく命への最低限の礼儀として。
    もちろん都合で処分してしまうこともあるだろう。
    だがそういう事はなるべく無いように努力するものだ」

恭介「君たちはそういう努力をしているのか?
    この不完全で『感情を持つ人類』に対して失礼極まりないシステムを何の改良も無く、
    馬鹿の一つ覚えのように使い続けてきたんじゃないだろうな?
    もしそれで『地球上の家畜より待遇ははるかにいい』なんてほざくなら、
    僕は君を殴り続けなければならないだろう。
    泣くまでだ」

QB「いや、ボク達は泣くことは出来ないからそれは勘弁して欲しいんだけど、
   キミの言わんとしていることは理解したつもりだ。
   君の話は『感情を持った知的生命体からの提言』として受け止めたいと思う。
   ここまで理路整然とボク達のシステムについて指摘してくれたのは、
   人類の中でもキミが初めてだよ」

QB「ソウルジェムのシステムが不完全であることも認めよう。
   今日君が指摘してくれた点も含め感情の研究をより進めて、
   システムを見直していくことを約束するよ」

QB「ただ、君のいう『多大な迷惑』の改善には時間がかかると思う。
   おそらく結果が出る頃には『君』という個体の寿命は、
   とっくに終わってしまっていることだろう」

恭介「それまでは今のまま運用し続けざるを得ないのかい?」

QB「この宇宙でのボク達の活動は一つのシステムとして動いているんだ。
   この地球でのエネルギーの回収もそれに組み込まれている。
   いきなり止めることは不可能だ。
   無理に止めれば、それこそ宇宙規模の災害が発生しかねないんだ」

恭介「そうか。いや、某電力会社の推進文句のようにも聞こえるが、
    君は『積極的な嘘』は言わないみたいだから信じることにするよ」

QB「そうしてもらえると助かるよ」

恭介「ただし、改善努力をしているという証は僕が生きているうちに示して欲しいな。
    それは可能かい?」

QB「考えてみるよ。成果が上がったらまず君のところに持ってこよう」

恭介「頼んだよ」

※この上条は知り合いが魔法少女に関わってることをまだ知りません。

恭介「ところで感情は相対的だといったが、それは僕と君の間でも成立するんだ」

QB「どういうことだい?」

恭介「君は結構長い間人類と付き合ってきたと思うけど、
    その君が会った一人一人の人間の君に向けられた感情に対して、
    君に中にもそれに呼応した精神活動が生起していた筈だ」

QB「確かにそれは有るね。
   だけどボクの意識は君が見ているこの個体に収まっているようなものじゃなく、
   もっと広範囲の集合的な意識なんだ。
   だから、そこで生起した精神的活動なんて全体から見たら微々たるものなんだよ。
   もし君がその精神的活動を『感情』を呼ぼうとしているのだったら、
   それは違うと思うな」

恭介「いやそれは感情だよ。たとえ集合的意識で薄められていたとしても、
    人間から向けられた感情に呼応して君が生起させたのは間違いなく感情のはずだ」

恭介「実際、僕はこの話の途中で何回か君に感情をぶつけてみた。
    君は明らかに感情的な反応をしていたよ。自覚がなかったのかい?
    君たちには感情が無いんじゃない。それはあり方が違うだけだ」

QB「そうか。そういう考え方もできるのか。
   今までは取るに足らないノイズとしてそういうものは捨てていたんだが、
   そういった微小な精神的活動を『感情』として捕らえるのは新しい視点だね。
   実に興味深いよ」

恭介「それは是非とも研究してみてくれたまえ」

QB「いや、何回も繰り返して申し訳ないが、とても有意義な話が聞けたよ。
   ボク達は人類に対する考えかたを改めた方がいいのかもしれない」

恭介「もういいのかい?」

QB「今日のところはね。
   君はボク達が求めていたのとは別の意味で類い稀な素質をもった人間のようだ。
   契約して魔法少女にしてしまうのが実に惜しいよ。
   君には人間の寿命限界まで生きてもらって是非ともボク達に知識をもたらしてほしいな」

恭介「それは光栄だね。是非ともそうさせてもらうよ」

QB「ボク達はそのための労力を惜しまないよ。何かあったら言ってくれ」

恭介「ああ、そのときは宜しくたのむ」

恭介「……」

恭介「……」

恭介「帰ったか」

恭介「あの未確認生物のぬいぐるみがどういう仕組みで動いているかにも
    興味があったんだけど聞けなかったな。
    でも『中の人』とは気が合いそうだ。
    いい暇つぶしになったし、入院中暇でノートに書き溜めてた妄想が役に立って良かったよ」



その後、
上条恭介の命に関わるということで、QBの指導のもと町の内外から多数の魔法少女たちが集まり、
見滝原町へのワルプルギスの夜の出現が効率的に回避されたり、
この後も提供し続けられた上条恭介の中二病的妄想を真に受けたQBによって、
魔法少女システムが良い具合に歪んだりしたが、
それはまた別のお話。


あとは、変身すると男の娘な上条君でキャハハウフフするなり、
振っといたネタで続きを考えるなり、
論理の破綻を指摘してギロンするなり好きにして良し。

頃合を見計らってHTML化依頼する

以下、廃棄物の投棄

恭介「驚いたな。本当だったんだ」

QB「そうだよ。その証拠に、新開発のエネルギー変換デバイスを持ってきたんだから」

恭介「しかも生きているうちにって言ったのに昨日の今日とは恐れ入ったよ」

QB「時間の尺度が君たちとは違うからね」

恭介「それで、君たちの実験に付き合えと?」

QB「そうだよ。これは人間の魂をソウルジェムに変換することなく感情をエネルギーに変える装置なんだ。
   これはエネルギーの回収が目的ではないから、呪いも発生しない。
   ただ、ソウルジェムと違い発生した魔力の行使が間接的になるから使いこなすのに訓練が必要だ」

恭介「形状がソウルジェムってのは?」

QB「キミは本物は見たことがないよね。これは試作品だから、装置はソウルジェムの流用なんだよ。
   だから魔力に感応して魔女の痕跡を追うことも出来る」

恭介「ちょっと嫌なことを思いついちゃったんだけど、
    この装置に誰かの魂が使われてるなんてことは無いよね?」

QB「それは無いよ。呪いは発生しないって言ったじゃないか。
   形状がソウルジェムなだけだよ」



携帯型のラムダドライバじゃないか。

『QB「上条恭介、僕と契約して魔法少女になってよ!」恭介「」』

               ~ 奇跡も、魔法も、おおありだよ!~

   ̄| / ̄  ̄| / ̄   ̄| / ̄   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
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(アイキャッチ)

廃棄物が溜まってしまったので、適当に投下


QB「キミにしてもらうのは、感情-エネルギー変換のデータ集めだ。
   つまりそのデバイスを使って魔法を使いまくってくれればそれで良い」

恭介「簡単に言うけど、魔法を使うったってどうしたら良いんだい?」

QB「まずは変身かな?」

恭介「それは楽しそうだね」

QB「変身といっても衣装を変える程度だけどね」

恭介「装甲とか戦闘服みたいな感じかな?」

QB「そうだね、いい感じだ。イメージできるかい? その『楽しそう』っていう『感情』が大事だよ。
   概念のスケルトンのようなものが実装されているから、いきなりでも出来るはずだよ」

恭介「僕はキミを殴らなければいけない」ドゴッ!

QB「そげぶ」

QB「いや、その拳は僕に向けないで欲しいんだが」

恭介「これが感情のエネルギーってヤツか」(怒のオーラ

QB「なにか気に入らないことでもあったのかい?」

恭介「おおありだよ!」

補足
>>105-106の間で変身してる

   ̄| / ̄  ̄| / ̄   ̄| / ̄   ̄| / ̄   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/   (゚Д゚)/  (゚Д゚)/   (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
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QB「魔法装束への変身にも成功したし、魔力も上手く扱えている。
   怪我で不自由な手足もこの状態なら自由に動くだろ?
   どこに不満な要素があるっていうんだい?」

恭介「その装束だよ!」

QB「魔法装束のことかい? ボクも色々な魔法少女を見てきたが、
   そのどれと比べても決して見劣りしない、立派な魔法装束じゃないか」

恭介「いやいやいや、なんでヒラヒラのワンピースなんだよ」

QB「バイオリン奏者のイメージかな?」

恭介「僕は男だ」

QB「どうしてキミ達人類は己の性別に拘るのかい? わけがわからないよ。
   それにキミの年齢なら、第二次性徴の差異くらい魔力でカバーしてしまうから、
   違和感は全くないよ」

恭介「おおありだよ!」

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <お、大蟻……なのか?
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

QB「そうかな?」

恭介「こんな胸が開いた衣装で、僕に何をさせようっていうんだ」

QB「とりあえず、魔法を使ってみる場としては魔女退治かな?」

恭介「なんとかならないのか?」

QB「見た目の性別の事だったら、
   前にも言った通り元々第二次性徴期の女の子に最適化されてるから難しいね。
   協力をやめるかい?」

恭介「……いや、昨日の話が本当だとすれば、一大事だ。
    一刻も早くシステムを改善してもらわなければならないよ」

恭介「もしも僕の同級生の誰かが魔法少女になってしまったら、
    キミを殴るくらいでは済まない事態だからね」

QB「同級生ってことなら、
   よくここに来る美樹さやかとその友人の鹿目まどかに魔法少女になってもらおうと思っているんだ。
   今、一通り説明までして……」

恭介「ふん!」ドゴッ!

QB「そげぶ」

恭介「それは中止してくれないか。
    僕は幾らでも実験に協力しよう。
    なんならこのデバイスで発生させたエネルギーを君に献上してもいい」

QB「いや、それもいずれやる予定の実験なんだけど。
   彼女たちの勧誘は中止できないな。
   ボクにもエネルギー回収のノルマがあってね。実験だけやってるわけには行かないんだ」

恭介「じゃあ、魔法少女のシステムについて僕から彼女たちに全部話す。構わないよね」

QB「まあ、契約しにくくなるだろうけど、それでキミが納得してくれるなら仕方ないかな」

~~

恭介「考えてみたら僕は入院してるから、見舞いに来てくれるさやかにしか会えないじゃないか。
    まあいい。まずさやかに話して、それから鹿目さんを呼んでもらおう」

恭介「と、思ってたんだが」

QB「早速魔女退治に行ってみようか」

恭介「さやかが来る前に魔女退治に行くことになってしまった」

QB「さあ変身だ!」

恭介「まだ変身しないと歩けないからね」

恭介(魔法少女)「屈辱だよ」ヒラヒラ

QB「ボクにはその感情は判らないな。でもその感情のエネルギーはキミの容姿に作用しているみたいだね」

恭介(魔法少女)「なんですと」

QB「ああ、それは『恥ずかしい』という感情だね。恥じらいというのは女性らしさの要素じゃないか」

恭介(魔法少女)「しまった。ますます恥ずかしくなってきたぞ」

QB「おお、ソウルジェム内で起きるエネルギーの回転と同じ効果が!
   容姿がますます少女っぽくなったよ」

恭介(魔法少女)「こうやって魔力が維持されるのか。実に嬉しくないね」

~~

恭介(少女)「さて、その魔女はどこにいるんだい?」

QB「ちょうどこの町の魔法少女がこれから魔女退治に行くところだから」

恭介(少女)「ちょっとまて。もしかしてその魔法少女に協力しろとかいうんじゃないだろうな?」

QB「それでもいいけど、いずれにしろキミ一人で魔女と対峙させるなんて危険なことはしないよ」

恭介(少女)「危険とは?」

QB「魔法少女は魂をソウルジェムという高効率に魔力を使える身体に変換しているから、
   どんなに肉体を損傷しても、死ぬことはない。
   一方のキミは変身してるとはいえ、普通の人間を魔法でコーティングしているに過ぎないから、
   例えば心臓や頭を貫かれただけでも簡単に死んでしまう。
   そんな脆弱なキミを魔女退治なんて危険なことに一人で行かせるわけないじゃないか」

QB「キミのやることは、魔法少女の魔女退治についていって、色々ちょっかいをだすことだ。
   別に有効な攻撃を加える必要はないよ。エネルギー効率の実験だからね」

恭介(少女)「それって情けないじゃないか」

QB「情けないというのは僕には理解できないんだが、気に入らないところがあるってことかい?」

恭介(少女)「感情を起こさなきゃならないんだろ? そんな居ても居なくてもいいような役回りじゃ、
        モチベーションが激減だよ」

QB「それは困ったな。何かモチベーションが上がるようなことを考えなくては」

~~

ほむら「あなた、何者?」

恭介(少女)「えっと、君は?」

ほむら(こんな魔法少女どの時間軸にも現れたことがないわ)

恭介(少女)(どうしよう。この子も魔法少女だよね?)

ほむら「……」

恭介(少女)(それにしても綺麗な子だな)

ほむら「ここで何をしているの?」

恭介(少女)「いや君こそ、あの金髪の魔法少女に隠れて何やっているんだい?」

ほむら「……」

恭介(少女)(だんまりか。まさか僕みたいにピンチになるのを待ってるわけじゃないだろうね)

少し前のこと。

恭介(少女)『いい事を思いついたよ』

QB『なんだい? モチベーションが上がりそうなことかい?』

恭介(少女)『ああそうだ。僕は魔法少女に比べると魔法の応用が利く代わりにそんなに強くないんだろ?
        だからピンチになったら颯爽と現れて救うってポジションはどうかなって』

QB『なるほど。それなら魔女に真正面から対峙するリスクは避けられそうだね。
   あくまで横から攻撃するわけだから』

恭介(少女)『そんな卑怯者みたいな言い方はしないでくれ。 
        いつもピンチになると現れる『謎の魔法少女』なんだよ』

QB『ということは正体は秘密なんだね』

恭介(少女)『それは初めからそのつもりだったよ(恥ずかしいし)』

QB『じゃあ、キミはこの辺に隠れいてよ。
   ボクはデータ収集で走り回らなりゃいけないからね。
   終わったらまた合流しよう』

という会話があった。

恭介「結局出番はなかったね」

QB「残念だよ。君にはもっと色々な感情の変換を実験してもらいたかったのに」

恭介「まあ、まだ機会はあるだろう。
   それにしても、あんな恐ろしいところで毎回魔法少女は戦っているのか」

QB「驚いたかい?」

恭介「本当にあんな非日常の世界があったとは……」

QB「まだ疑っていたのかい?」

恭介「いや、今日ので完全に確信したよ」

恭介「それにしても、さやかと鹿目さんが、何で一緒に居たんだ?
    魔法少女じゃないのに危ないじゃないか」

QB「あれは、魔女狩り体験コースさ」

恭介「体験コース? 君たちの仕業かい?」

QB「あれはマミの提案さ」

恭介「なんだって」

~~

恭介(少女)「巴マミ。話がある」

マミ「あら、見ない顔ね」

恭介(少女)「君は一般人を魔女狩りに連れて行っているだろう?」

マミ「どこで見てたのかしら?」

恭介(少女)「あんな危険なことはもう止めるんだ」

マミ「あの子たちはQBに選ばれたのよ。
   魔法少女の何たるかをよく知ってから契約すべきだと思うからああして、
   魔女狩りを見学させてあげてるの」

恭介(少女)「契約の前に魔法少女の何たるかをよく知ってもらうことは諸手を挙げて賛成したい。
        でも、魔女狩りに付いて行った位で魔法少女の真実を知ることは出来ないよ」

マミ「あら、あなたは何か知っているというの?」

恭介(少女)「知りたいか? 魔法少女と魔女の真実を」

ほむら「待ちなさい」

恭介(少女)「君は」

ほむら「いいから来なさい」グイッ

マミ「ちょっと、一体なんなの」

ほむら「私もあの二人を魔女狩りに連れて行くことには反対するわ。
    あなたに言いたいのはそれだけよ」

マミ「」

~~
(※ほむらは変身してます)

恭介(少女)「で、僕に何か話があるんだろ?」

ほむら「あなたはどこまで知っているの?」

恭介(少女)「魔法少女と魔女の話かい?」

ほむら「そうよ」

恭介(少女)「魔法少女がエネルギー搾取の生贄にされているってことくらいだが」

ほむら「!!」

恭介(少女)「そんな反応をするって事は、君も結構詳しく知っているってことだね?」

ほむら「その話を巴マミにしないで」

恭介(少女)「なぜだい?」

ほむら「彼女は弱い。恐らく真実に耐えられない」

恭介(少女)「彼女のことを良く知っているんだ?」

ほむら「ええ知ってるわ。それよりあなたはいつその真実を知ったの?
     インキュベーターは魔法少女になる人間にそこまでの真実は絶対話さないはず」

恭介(少女)「あいつはインキュベーターっていうのか。初めて知ったな。
        インキュベーター、孵卵器だっけ? なるほどいいネーミングだ」

ほむら「あなた、何者?」

恭介(少女)「最初の問いに答えるよ。知ったのは最近。
        初めてそのインキュベーターに会ったとき聞いた」

ほむら「まさか」

恭介(少女)「いや暇つぶしに色々聞きまくったら教えてくれたよ」

ほむら「じゃあ、あなたはインキュベーターの企みまで全てを知った上で魔法少女になったというの?」

恭介(少女)「それは秘密にしておくよ。あと出来れば僕を魔法少女って呼ばないで欲しいな」

ほむら「どういうこと?」

恭介(少女)「そう呼ばれると、僕はあの白い生物に八つ当たりしたくなるんだ」

ほむら「意味がわからないわ」

恭介(少女)「君は、魔法少女になってどれくらいだ?」

ほむら(なぜ手を握るの?)

恭介(少女)(これがソウルジェム? 彼女の感情にあわせて輝きが波打っているみたいだ)

ほむら「もう忘れたわ。忘れるほど長い間よ……」

恭介(少女)「そんなに長い間、君は一つの願いのために戦い続けて来たのかい?」

ほむら「……そうよ」

恭介(少女)「……」

ほむら(哀れみ? いや悲しみ?)

恭介(少女)(やっぱり僕が寿命を全うした更にずっと後までなんて待てないよ。
        こんな子が沢山いるなんて)

ほむら「痛いわ」

恭介(少女)「あ、ごめん」

ほむら「あなたは」

恭介(少女)「え?」

ほむら「あなたが今してるその眼をした子を私は知っている」

恭介(少女)「なんのことだい?」

ほむら「その子は、他人の絶望を救いたいといって命を投げ出したわ」

恭介(少女)「!」

ほむら「あなたもそうなの? 絶望の運命を知りながら、
     他人のために命を投げ捨ててしまった人間なの?
     あなたを失って悲しむ人は誰もいなかったの?」

恭介(少女)「……」

ほむら「ごめんなさい。もしそうだとしても、
     言っても仕方のないことだったわね」

恭介(少女)「そんな子を見てきたんだ?」

ほむら「ええ」

恭介(少女)「何人も?」

ほむら「数え切れないほどよ」

恭介(少女)「そうか……」

ねる

病院

さやか「じゃあね、恭介、またあした来るから」

恭介「うん。待ってるよ」

恭介「……」

QB「いいのかい」

恭介「なにがだい?」

QB「彼女に魔法少女の真実を全て話すんだろ?」

恭介「まあね。でもいきなり話しても彼女を混乱させるだけだ」

QB「そうなのかい?」

恭介「君たちと違っていきなり論理的に考えられる人間ばかりじゃないのさ。
    話す時期ってものがある。
    さやかは半端に知識がある上に、実体験もしてるからなおさら時期を考えないと」

QB「僕には良くわからないな」

恭介「それにさやかの場合、僕からじゃなくて『謎の魔法少女』から聞いたほうが良いだろうからね」

やべえ。廃棄物が高速増殖してる

~~

恭介「ところで君は何匹いるんだい?」

QB「今この町には実験担当のボクと、勧誘担当で今鹿目まどかに同行しているのがいるよ」

恭介「その姿はインターフェースで本体はこの前言ってた集合意識ってことで良いんだよね?」

QB「そうさ。インキュベータっていうのはその全体の名前なんだ」

~~

恭介「QB君、なんかデバイスが反応してるんだけど」

QB「不味いな。魔女の反応だ」

恭介「ここで? 病院に魔女か。不味いな」

QB「巴マミがもうすぐ駆けつけるよ」

~~

恭介(少女)「というわけで結界に潜入する。さっきあの黒髪の子が入っていったから最後尾だね」

QB「油断しちゃ駄目だよ。君は魔女狩り向きの体をしていないんだから」

恭介(少女)「身体の心配をしてくれるなんて優しいじゃないか」

QB「この実験にもコストがかかってるんだ。無駄にしたくないんだよ」

ほむら「」拘束中

恭介(少女)「ええと、そういうプレイ?」

ほむら「……」

恭介(少女)(うわあ、汚物を見る眼だよ)

恭介(少女)「助けた方が良いのかな?」

QB「そうした方がベストだろうね。君一人で結界の中を進むのは危険すぎる」

ほむら「なんでお前がここにいる」

恭介(少女)「なんかややこしくなりそうだけどとりあえず、このリボンを切れば……」(刃的な何か

QB「やっぱり無理みたいだね」

恭介(少女)「それっぽいの出せたと思ったんだけどな。傷も付けられないのか」

QB「ベテランのマミの魔法じゃしょうがないよ。それに君の魔法は魔法少女的にはゴミ以下だからね」

恭介(少女)「手厳しいな君は」

ほむら「……あなたは全て知っている筈じゃなかったの?」

恭介(少女)「それがなにか?」

ほむら「なのにどうしてそいつと仲良くしている?
     あなたはそいつの企みに加担しているの?」

恭介(少女)「誤解しないで欲しいんだが、僕は僕の信念に従っているつもりだ。
        QB達のやり方に賛成してるわけではない」

ほむら「じゃあ、なんで一緒に行動しているの?」

恭介(少女)「彼らのやり方に建設的に異議を申し立てた結果だよ。
        それにまだQB達には聞きたいことが山ほどあるんだ」

ほむら「……異議を申し立てた? ということは、
     あなたは魔法少女の運命を何とかしたいと思っているのね」

恭介(少女)「その通りだよ」

ほむら「……なら、あなたでも良いわ。巴マミを助けて」

恭介(少女)「もともとそのつもりだよ。でも彼女は強いから出番がないんだけどね」

ほむら「今回のは違うの。巴マミの命が危ないの」

恭介(少女)「そんな強い魔女なのか?」

ほむら「彼女は油断する。その瞬間を助けるだけでも良いから。早く行って!」

恭介(少女)「判ったよ」

QB「どうやら君の活躍するチャンスのようだね」

恭介(少女)「冗談じゃない。巴さんより強い魔女じゃ僕なんかが太刀打ちなんて出来ないよ」

ほむら「本体を探して潰して! そうすれば勝てるから!」

恭介(少女)「本体?」

~~

マミ「ティロ・フィナーレ!」

シャル「……」ンアー

マミ「え?」

恭介(少女)「マジカル・くない!」ビシビシ!

シャル「キャー」

QB「これはまたマニアックな武器を。でも眼を狙ったのは正解だったようだね」

恭介(少女)「油断するな」(お姫様抱っこで飛行中

マミ「あ……」

恭介(少女)「僕は攻撃力が無い。だから君が倒すんだ」

マミ「は、はい」

恭介(少女)「いけるね?」(着地

マミ「も、勿論よ!」

恭介(少女)「何回でも再生するから今度は油断しないで」

マミ「判ったわ!」

恭介(少女)(よし、決まった!)

QB(うん。いい感じだ。データ採りも順調だよ)

恭介(少女)「凄いな、さっきの必殺技級の攻撃を連続してるよ」(シャル本体に向かってジャンプ中)

QB「マミはベテランだからね」

恭介(少女)「ところであれが彼女が言ってた本体らしいんだけど」

QB「なるほど。やられると存在のコアを一旦こっちに退避して再びあの身体を生成しているんだね」

恭介(少女)「という事は本体というより無限再生のからくりといったところか!」ドゴッ!

シャル(本体)「ギャフー」

  フィジカルエンチャント
QB「拳の物理強化で殴りつけるとは」

恭介(少女)「やっぱり僕にはこれが一番手っ取り早いよ」

~~

マミ「あ、あの、助けてくれて……その、ありがとう」

恭介(少女)「礼には及ばないよ。じゃあ僕はこれで」

マミ「あっ! あの、お名前を……」

恭介(少女)「いや名のる程のもんじゃないっすから(まずっ、考えて無かった)」

さやか「ちょっと待って! あんた……」

恭介(少女)(もっとまずっ!)

さやか「」ジー

恭介(少女)「」サッ(視線をよける

さやか「どこかで見たような……」

恭介(少女)「いや、気のせいでしょ」

さやか「そうかな?」

恭介(少女)「じゃ、僕は急ぐからこれでっ!」シュタッ

さやか「あー、屋上へ飛んでっちゃったか……」

マミ「誰なのかしら?」

まどか(上条君??)

~~シーン変わってある日の病院~~

QB「ソウルジェムを停止する方法がないかって?」

恭介「そう。エネルギーサイクルを一時停止して魔女化を遅らせるとか、
    相転移して呪いの感情を負のエネルギーに変換しだす前に、
    魂をそのシステムから切り離したり出来ないかな?」

QB「一時停止は無理じゃないかな。君が提唱した理論が正しければ、
   止めた瞬間相転移が起こるだろう。
   相転移前に魂を切り離す方法は今のところソウルジェムの破壊しか思いつかないよ」

恭介「サイクルを止めること自体は可能なんだ?」

QB「そうだよ。変換を止めるだけだからね」

恭介「ソウルジェム化した魂を元に戻す方法は?」

QB「無いね」

恭介「無いというのは移動手段がないってことかい?」

QB「そうではない。一度ソウルジェムになってしまうと、
   魂だけ引き剥がすことが出来なくなるってことだよ。
   『出来ない』っていうのは、安全に行えないってことだ。
   蓄えられたエネルギーが暴走してそれは悲惨なことになるだろう」

恭介「拠り所としている感情エネルギーから無理矢理引き離そうとするからかい?」

QB「君の理論で行くとそうなるね。
   それからさっき言ったようにソウルジェムを破壊すれば確かに魂は分離する。
   この場合システム自体が消えてしまうので感情エネルギー、すなわち魔力による暴走は無いが、
   人間の魂はそのショックに絶えられない。
   それを身体に戻したとしても廃人になるか、魂が生を放棄して死んでしまうだろうね」

恭介「なるほど。でも、それなら魔女化だけは防げるんじゃないか?」

QB「つまり相転移の瞬間にシステムを破壊して遊離した魂を体に戻すってことかい?
   可能かもしれないが、エネルギー回収と両立させるとなると技術的に難題だね」

恭介「要は魂が希望を手放せばエネルギーが回収できるわけだろ?
    その後も感情のエネルギー化が継続するから
    魔女なんていう不条理な存在が生まれるのであって、
    それは副作用みたいなものだから必須ではないはずだ」

※マイナスの感情は生じるけれどそれを必ずしも魔女にする必要は無いのでは? ということ※

QB「検証する必要があるね。実際の魔法少女で」

恭介「人体実験か?」

QB「君たちはそういうのを嫌がるよね。でも魔法少女はいずれ必ず魔女になるんだ」

恭介「判ってるよ。君たちがどういう存在か判ったうえで協力しているんだ。
    そのくらいを背負う覚悟はできてるさ」

QB「そうか。なら今、丁度条件に合う魔法少女がいるんだけど……」

~~

とある別の町。

恭介はその魔法少女に全てを説明した。

魔法少女A「そう。私は魔女になるの……」

彼女のソウルジェムは会った時から既に濁りきって、僅かな輝きしか残ってなかった。

QB「君の願いは継続するタイプの望みじゃなかったからね。この結末は約束されていた」

魔法少女A「そっちのあなたが言ったとおりなら、
        私がこれに命を捧げることは未来の魔法少女のためになるのよね?」

恭介(少女)「確約は出来ない。無駄死にになる可能性の方が高い」

魔法少女A「正直なんだね。そこは『大丈夫』とか『絶対役に立つ』とか言うものでしょ」

恭介(少女)「僕は君に命の提供を要求しているんだ。嘘はつきたくない」

魔法少女A「あなたは優しいのね。いいよ。というか選択肢なんて無いじゃない」

恭介(少女)「グリフシードを用意できれば、延命も可能だ」

魔法少女A「もう無理よ。ソウルジェムが濁るのが早すぎてとても追いつかないわ」

恭介(少女)「そうか……」

QB「そろそろ始まるよ」

魔法少女Aが苦しみだす。

魔法少女A「くうっ…………っ……」

恭介は彼女のソウルジェムを破壊する準備をする。

魔法少女A「……いやだ……うっく……死にたく……な……」

魔法少女A「たす……け…………」

恭介(少女)「――」

魔法少女A「――」

QB「放出エネルギーをモニターしてるからタイミングは僕に従って。
   遅れると君の方が危ないよ」

恭介(少女)「判ってる」

たった一つの願いの為に戦った少女の壮絶な最期に、
『彼女の命を無駄にしないためにも』とか奇麗事も全部吹き飛んだ。

タイミングは放出されるエネルギーがピークを超えて反転する直前。
外見的には、ソウルジェムが自発的に崩壊しだして、グリフシードが形成される直前。

そこに恭介が渾身の魔法の打撃を撃ち込み、同時にQBが干渉する。

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <え? 突然、地の文が!?
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

魔法少女A「」

恭介(少女)「上手くいったのか?」

QB「実験は成功だ。貴重なデータが取れたよ」

恭介(少女)「彼女は?」

QB「もはや二度と目を覚ますことはないだろうね」

恭介(少女)「……」

QB「でも、魔女の発生を防いでエネルギーを回収する手法が確認できた。
   彼女の魂は相転移を起こしてエネルギーを放出したにもかかわらず、
   魔女にならなかったんだ。
   これも君の理論があればこそだ。
   エネルギー回収効率が低下する問題があるし回収形態も改める必要があるだろう。
   だが難題とはいっても出口が見えたんだ。実験としては十分な成果だよ」

恭介(少女)(あとは魂が耐えられないショックを受けるのを何とかできれば……)

~~シーン変わってまた病院~~

恭介「はあ……」

QB「なんだい、ため息なんかついて」

恭介「いや、今日医者に言われてしまったんだよ」

QB「そういやキミは怪我の治療中だったね」

恭介「そうだよ。ここをどこだと思っていたんだい?」

QB「それで医者はなんっていったんだい?」

恭介「バイオリンは諦めろってさ」

QB「そうか、キミはバイオリンを弾くんだったね」

恭介「弾いていた、だよ。『奇跡』か『魔法』でもない限り僕の指は動かないんだってさ」

QB「でも、今キミには奇跡も魔法もあるじゃないか」

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <お……
~~~~

アイキャッチ自重します

恭介「だからだよ。ちょっと複雑なのさ。魔法を使えば、怪我をする前どころか、
    人間の限界を超えた演奏だって不可能じゃない」

QB「それが感情エネルギーの条理を超えた力さ。今キミはそれを手にしている。
   このデバイスは実験への協力と引き換えに君という一個体に対して一生涯貸与されるからね」

恭介「うん。願いを叶えた当事者の気持ちがわかったよ。
    願いを叶えた後、自ら願いを呪いに変えていってしまう理由もね」

QB「キミの理論に修正を加えるのかい?」

恭介「いや。キミと論じたところは変わらないよ。
    ただ当事者の気持ちでよく理解できたってだけだ」

QB「それで、どうするんだい? キミはその腕でバイオリンを弾くのかい?」

恭介「誰かの為に必要になったら弾くことにするよ。そうしなければいけない、
    いやその時が必ず来る気がするんだ」

QB「ボクには判らないけど、それはもうキミの力だからキミの好きにしたらいいよ」

恭介「そうするよ。ところでそろそろさやかが来るから隠れてくれるかな?」

QB「そうだった。彼女にはまだ秘密だったね」

~~前の方略~~

さやか「奇跡も、魔法もあるんだよ!」

恭介「いや、間に合ってるから」

さやか「え?」

さやか「どういうことなの?」

恭介「今は詳しく話せないけど、近いうちに必ず話してあげるから」

さやか「……」

恭介「だから、僕の腕なんかの為にさやかの命を使わないでくれ」

さやか「え!? 恭介? 命って……?」

恭介「僕はもう大丈夫だから。さやかは今まで通りのさやかで居てほしい」

さやか「う、うん」

恭介「約束して」

さやか「するよ。約束する。だから恭介も早く元気になって」

恭介「僕は元気だよ。何言ってるんだ」

さやか「そっか。そうだよね。よかったよ。うん」

~~

さやかの部屋

さやか「ひっく……ぐすっ……嘘だよ」

さやか「何もなかったような顔して、笑ってたけど、恭介辛そうだった」

さやか「なにか背負い込んでる顔だった」

さやか「なのに、あたしを心配させまいとして無理して笑って……」

さやか「こんな時なのに、あたし、恭介の負担にしかなれないなんて」

さやか「恭介、知ってるのかな? 魔法少女のこと」

さやか「もし知ってたとしても、ううん。知ってるのなら尚更あたしは……」


  『奇跡も、魔法も、あるんだよ』


QB「」

さやか「恭介、ごめんね。あたし約束破るよ……」

~~ハコの魔女編~~

QB「さて、今日も感情エネルギー変換のデータ収集だよ」

恭介「やれやれ」

~~

マミを追跡中の恭介とまどかが、路地裏でばったり。
ちなみに魔女狩り体験コースはシャル戦以降中止してる。

まどか「上条君?」

恭介(少女)「鹿目さん……」

まどか「え? やっぱり上条君なの?」

恭介(少女)「い、いや、人違いよ」(女のフリ!

まどか「うそ。今わたしのこと『鹿目さん』って」

恭介(少女)「そ、そうだったかしら?」

まどか「魔法少女、なんだよね?」

恭介(少女)「いや、その前に誤解を解いて欲しいんだけど」

まどか「誤解じゃないよ。やっぱり上条君だよ」

恭介(少女)(なんってこった)

恭介(少女)「いや、あのね、上条恭介とは親戚で、だから君のことも知ってたんだよ」

まどか「……」ジー

恭介(少女)「それに彼は入院中だよ? こんな所に居るわけ無いじゃないか」

まどか「……」ジー

恭介(少女)「鹿目さん?」

まどか「わかった。そういうことにしてあげる」

恭介(少女)「そういうことって、あのね……」

まどか「大丈夫。クラスのみんなには内緒だよね?」

恭介(少女)「ああもう」

まどか「でもさやかちゃんには話したほうが良いと思うよ。
     あ、でも逆に心配するか」

恭介(少女)「さやかにはいずれ近いうちに話すよ。君にも言っておかなきゃならないことがあるし」

まどか「やっぱり上条君だ」

恭介(少女)「しまった」

まどか「あはは」

まどか「それでわたしにもお話って、やっぱり魔法少女のこと?」

恭介「君は素なんだね。男の僕がこんなことになってても」

まどか「え? ママが他人の趣味にとやかく言うのはいけないことだっていってたから。
     それに似合ってるから良いと思うよ」

恭介(少女)「いや、別に趣味で無いし、似合ってても嬉しくないよ」

まどか「そうかな。可愛いと思うけどな」

恭介(少女)「可愛いって……」

恭介(少女)「それで、君は魔法少女になるのを保留中だったと思うんだけど」

まどか「うん。マミさんがまたあんなことがあったら後輩を守れないから、
     気楽な決心じゃ契約させられないって」

恭介(少女)「それは良かった。近いうちに詳しい話をするからそれまでは、
        決心しても契約は待って欲しいんだ」

まどか「今は話せないことなの?」

恭介(少女)「ちょっと込み入った話なんだ。『勉強会』のような感じになると思うから」

まどか「判ったよ」

恭介(少女)「QBも頼んだよ」

QB「いやボクから約束は出来ないよ。
  まどかがボク達に契約を望んだとき、
  それが魔法少女になるに値する願い事であれば契約は成立してしまう」

恭介(少女)「そうか。じゃあ鹿目さんに気をつけてもらうしかないか」

まどか「うん、気をつける」

QB「そうしてくれ」

まどか「あれ? なんかQBが違うような」

QB「僕は君と同行していたのとは違う個体だよ」

まどか「QBって、沢山いたんだ」

QB「記憶は共有してるから、あまり差異はないんだけどね」

要所要所で思い切りはしょってるのに一向に終わる気配が見えない
どうなってやがるんだ


ってことで
ねる

QB「どうやら魔女が現れたようだね」

まどか「え!?」

恭介(少女)「君は帰ったほうが良い」

まどか「う、うん」

~~

恭介(少女)「志筑さんが魔女に操られて……」

まどか「上条君、どうしよう」

魔女の接吻をつけた仁美を追いかけたまどかが魔女の現場に来てしまった。

恭介(少女)「ていうか僕たちが既にピンチ?」

操られ集団「」ガンガンガン

まどか「きゃー」

恭介(少女)「大丈夫だ。簡単には破られないよ」

QB「魔女が来たよ」

恭介(少女)「え」
まどか「え」

~~

蒼いの「はっ!」ズシャ!

恭介(少女)「」アゼン

蒼いの「とうっ!」ビシ!

まどか「」

蒼いの「これでトドメよ!」ドカーン!

~~

蒼いの「やー。ごめんごめん、でも初めてにしちゃ良くやったよねあたし」

恭介(少女)「さやかーーーっ」バキィ!

さやか「ぷげらっ」(吹っ飛ばされる

まどか「さやかちゃん!?」

さやか「」

恭介(少女)(約束するっていったのに!)

恭介(少女)「QB、どういうことだ!」

QB「どうって、見ての通りさ」

さやか「ちょっ、いきなり何すんのよっ!」

恭介(少女)「僕は聞いてない!」

QB「ボクは聞かれなかったよ」

恭介(少女)「契約してしまう前に話をすると言っておいたじゃないか」

QB「さっき言ったとおりだよ。
   魔法少女になるに値する願い事を持って僕に契約を望めば成立してしまうって。
   それを君が妨げることは出来ないよ」

恭介(少女)「……そうだったね。君たちはそういう存在だった」

さやか「ちょっと、何の話してるの!」

恭介(少女)「まいったな。これは僕のミスだ……」

恭介(少女)「まいったな。これは僕のミスだ……」

まどか「かみじょむぐっ」

恭介(少女)「美樹さやか」(まどかの口を押さえながら

さやか「なによ」

恭介(少女)「申し訳ない。無理にでも君に話をする機会を設けておくべきだった」

さやか「何の話?」

恭介(少女)「だが、過ぎてしまったことは仕方がない。
        出来る限り早く解決策を見つけるから君もどうか頑張って欲しい」

さやか「よく判らないんだけど、いい加減まどかを離してあげてよ」

まどか「むー、むーっ!」

恭介(少女)「ああ、ごめんごめん」

まどか「ぷはっ。ひどいよ」

恭介(少女)(なるべく早く。出来れば関係者全員に……)

さやか「まどか! 帰るよ!」

まどか「う、うん。えっと……」

恭介(少女)「あとで連絡する!」

まどか「判ったよ」

~~病室~~

QB「そうか。退院なんだ」

恭介「そうだよ。リハビリもしてたからね。もう杖を使えば登校できるし」

QB「魔法を使えば、肉体も直せるんだけどな」

恭介「いや、いきなり治るのは不自然だろ。
    それに出来ないことにチャレンジして出来るようになっていくのが僕は好きなんだ。
    そんなチートなことしても詰まらないよ」

QB「ボクにはわからないな。
   望みとそれを叶える力があるんなら叶えれば良いじゃないか」

恭介「それは腕のことは悩んだよ。今までの努力が全て無駄になってしまったんだからさ。
    君にこのデバイスを貰ってから、何回も腕を直そうかと思ったさ」

QB「どうしてそれをしなかったんだい?」

恭介「でもやっぱり、これは違うって思うんだよね。
    もちろん、ちょうど怪我する前の状態にすることも出来るんだけど、
    この力を使えばそれ以上のことが出来てしまうって時点で、
    もう興味が失せてしまったんだ」

恭介「弾きたかったら変身すれば良い。練習する必要さえ無いなんて、
    もう同じ場所で競うことはできないよ。
    それよりも今は全力で取り組まなければならない課題があるんだ」

~~通学路~~

QB「魔法は使わないんだね。その気になれば歩行の補助だって行うことも出来るのに」

恭介「君に会うまでにしてきたリハビリを無駄にしたくないんだ。
    せっかく結果が出てきたのに勿体無いじゃないか」

QB「ボクには理解できないよ」

恭介「ここまできたらもう意地だよ。足は絶対魔法を使わないで回復してやる」

QB「でもそれが、今の君を形成しているのかもしれないね。向上心ってやつかな。
   わざわざ低いセットポイントを設定してそこから、っていうのが
   ボクには無駄に思えて仕方が無いんだが、向上心自体は尊いものだと思うよ」

恭介「それはともかく、そろそろ君は隠れた方がいい」

QB「そうだね。この町の魔法少女とその関係者はみんな君の中学校に通っているからね」

恭介「え? 巴さんも、あの黒髪の子もかい?」

QB「そうだよ。黒髪の子は暁美ほむら。ボク達はイレギュラーとも呼んでいるけど、
   彼女は君と同じクラスだ。君が入院中に転校してきたんだよ」

恭介「そ、それは驚きだねえ……(まずいかも)」

~~教室~~

まどか「行かなくていいの?」

さやか「あとで良いよ。あの中に入っていくのはちょっと」

仁美「……」

~~

恭介(さてと。先に鹿目さんに話をつけないと)


さやか「あ、恭介……」

恭介「学校で会うのは久しぶりだね」

さやか「そ、それよりいつ退院したのよ。先にあたしに言いなさいよね」

恭介「ごめんごめん。ちょっと驚かせようと思ってさ」

さやか「でもよかった。退院おめでとう」

恭介「うん。ありがとう。ところで」

まどか「え?」

恭介「鹿目さん。ちょっといいかな?」

まどか「う、うん」

さやか「な、なに?」

恭介「ちょっと内緒話」

さやか「内緒って!?」

仁美「!!」

~~

廊下は筒抜けなので移動して屋上。

まどか「大丈夫、あのことは内緒だよ」

恭介「しっ! 見られてるから小さい声で」

まどか「あ、さやかちゃんとひとみちゃんが扉のところに」

恭介「……この前は君に契約するなら待って欲しいと言ったけど、
    実は僕は君には魔法少女になって欲しくないと思っている。
    いや本当は誰であれ魔法少女になってはいけないと思っているんだけど、
    それを止めるのは無理だからせめて知り合いだけでも阻止したかったんだ」

まどか「でもさやかちゃんが……」

恭介「うん。あれは僕のミスだ」


ほむら(話が聞こえないわ)

まどか「お話ってそのことなんだよね? 魔法少女になっちゃいけないっていう」

恭介「そうだよ。その話をさやかにもしなきゃいけないんだけど、
    さやかには辛い話になってしまう」

まどか「……」

恭介「だから君にさやかをお願いしたいんだ。
    難しいことじゃない。話を聞いたあとで良いからさやかのそばに居てあげて欲しい」

まどか「それは上条君がした方がいいと思うよ」

恭介「僕にはやらなければいけない事があるから、
    ずっとそばに居てあげる事が出来ないんだよ。お願いできるかな?」

まどか「……話は聞かせてくれるんだよね?」

恭介「今夜にも。関係者を集めたいんだけど」

まどか「さやかちゃんとわたしと、あとほむらちゃんもかな?」

恭介「そうだね。あと巴マミさんって子もこの学校だって聞いたんだけど」

まどか「上条君、マミさんは先輩だよ」

恭介「そうだったんだ、じゃあ巴先輩も……いや不味いか」

まどか「?」

恭介「巴先輩の件は先に暁美さんと相談しておくか……」

まどか「ほむらちゃん?」

恭介「彼女は僕が知っていることを既に色々知っているみたいなんだ」

まどか「呼んでこようか?」

恭介「いや、もう時間もないし。あとで話しておくよ。放課後までに決めておくから。
   時間だけ空けておくようにさやかにも言っておいてくれるかな?」

まどか「あれ、でも今日放課後は上条君、退院祝いにみんなでカラオケ行くんじゃないの?」

恭介「聞こえてたのかい? 
    あいつら見舞いにろくに来なかったくせに自分らで楽しみたいだけなんだよ。
    僕は途中で抜けるから大丈夫だよ」

まどか「わかった。マミさんには決まってから連絡するんだね?」

恭介「うん。あ、大事なこと忘れるところだった」

まどか「大事なこと?」

恭介「話をするのは僕じゃなくて、『あの魔法少女』だから、僕の名前は出さないで」

まどか「えー? 教えちゃおうよ」

恭介「いや、信憑性を増すためにも魔法少女の立場から言った方が」

まどか「じゃなくて、上条君が魔法少女だって」

恭介「いや勘弁して。君だけは僕があの魔法少女だって知ってるから君に頼んでいるんだよ」

さやか「なんなのよ恭介のやつ。まどかと内緒話って」

仁美「気になりますわね。告白って雰囲気ではありませんでしたが」

正体を隠すため、ほむらの呼び出しはQBに手紙を届けてもらうというめんどくさい方法をとった。


ほむら「それで、話ってなにかしら?」

恭介(少女)「今日、この学校の魔法少女に関わっている人間を集めて、
        魔法少女と魔女の真実について勉強会を開こうと思っている」

ほむら「あなたこの学校の生徒なの?」

恭介(少女)「一応ね」

ほむら(こんなイレギュラー初めてだわ。この時間軸はいったい……)

恭介(少女)「それで、君を呼んだのは巴マミの話なんだ。彼女は真実に耐えられないって言ったよね?」

ほむら「そうよ。町を守る正義の存在でありつづけることを拠り所として今まで戦ってきた彼女に、
     魔法少女の真実は重すぎるわ」

恭介(少女)「真実を知れば、絶望に落ちてしまう?」

ほむら「まず話をしても信用しないわ。色々理由をつけて。無意識のうちに拒絶するのだと思う。
     でも証拠を突きつけて彼女が確信すれば彼女は錯乱する。
     彼女は力の強い魔法少女だからそれで暴れられたらどうしようもないわ」

恭介(少女)「ずいぶん詳しいんだね。まるで一回試したことがあるみたいな言い方だ」

ほむら「そうね。ここではまだ試して無いわ」

恭介(少女)「『ここでは』? 『まだ』?
        それだとまるで、一回、『別の場所』で『同じ巴マミ』に試したことがあるように聞こえるんだけど」

ほむら「あなたは鋭いわ。その通りよ。
     魔法処女の願いは条理を覆すものだって知っているわよね。
     私の願いはそれを可能にするものなの」

恭介(少女)「驚いた。本当に何でもありなんだな。
        君が言ってた『長い時間』っていうのはそういうことだったのか」

ほむら「……」髪バサッ

ほむら(やりにくい相手だわ)

ほむら「巴マミの話じゃなかったの?」

恭介(少女)「そうだった。なら、君の『経験』を踏まえてどうしたらいいと思う?」

ほむら「それはあなたが『どうしたいのか』によるわ」

恭介(少女)「僕は真実を伝えたい」

ほむら「それは絶望を突きつけるのと同義でも?」

恭介(少女)「もはや同義じゃない。建設的に異議を申し立てていると言ったじゃないか。
       あいつらと共同でそのための研究をしているんだ」

ほむら「信じられないわ。人類の常識が全く通用しない連中を相手に共同だなんて」

恭介(少女)「互いの目的を探って最良の妥協点を探ること位は出来るさ。
        曲がりなりにも連中は『悪意はない』と言っているんだ。
        無自覚になしている人類に対する大迷惑にさえ眼をつぶれば、彼らは誠実だよ」

ほむら「あなたはそれが出来るの?」

恭介(少女)「やってる最中なんだ」

ほむら「私には出来そうにないわ。それに眼をつぶるなんて到底無理。
     やつらのやって来たことを考えれば……」

恭介(少女)「そうだよね。当事者の魔法少女はそう思うのが当然だ。
        でもそれを『裏切り』といわれようとも、
        誰かがやらなければ何も変わらないんだ」

ほむら「それがあなたの信念なのね?」
     
恭介(少女)「そうだよ」

ほむら「……」

恭介(少女)「信用してもらえないみたいだね」

ほむら「いいえ。あなたがその信念に従って行動しているってことは信用するわ」

恭介(少女)「結果を信じられないのかい?」

ほむら「……」髪バサッ

恭介(少女)「……全員一緒ってのは無理だな。とりあえず巴先輩は抜きで話すしかないか」

ほむら「私に用はそれだけかしら?」

恭介(少女)「君も話を聞いて欲しい。知った経緯が違うから話をあわせれば、
        新たな発見があるかもしれない」

ほむら「いいわよ。堂々と話が聞けるのならむしろありがたいわ」

恭介(少女)「ってことは、こっそり聞くつもりだったのかい?」

ほむら「……」髪バサッ

ほむら「それで、いつどこへ行けばいいのかしら?」

恭介(少女)「時間は放課後。場所はまだ決めてない。
        とはいっても丁度いい場所が思いつかないんだけどね」

ほむら「それなら私の部屋はどう?」

恭介(少女)「いいのかい?」

ほむら「構わないわ。あそこなら邪魔は入らないから」

ほむらが行ってから変身を解き、教室に帰ってきた。

恭介(さてと)

ほむら(え? まさか……)

恭介(うわっ。暁美さん椅子に座る途中の体勢で固まって僕をガン見してるよ)

ほむら(いやいやいや。彼は男の子。気のせいね)

恭介(いや、魔法で顔つきも変わるからよく見れば違うって思うよね……ってか鹿目さんはなんで判ったんだ?)

というわけで、ほむホーム

さやか「どうなってるのよ。QBも今日は魔女退治はマミさんに任せて話を聞きに行ってくれって言ってたわ」

まどか「そうなんだ」

ほむら(インキュベーターが認識してるのにそれを許すなんて。
     あいつが共同してるというのは本当だったんだわ)

さやか「で、話を聞かせてくれるっていう主役はまだ来てないわけ?」

まどか「あ、カラオケ途中で抜けてくるって言ってたから……」

さやか「ええ!? それって恭介の退院祝いのやつよね?」

まどか「あわわ、ち、違うのそうじゃなくてえーっと」

さやか「違わないじゃない。そいつうちのクラスだったの?」

まどか(どどど、どうしよう……)

ほむら(だれかしら? 一緒に行った女子は確か……)

さやか「口止めされてるのね? 誰なの?」

まどか「さやかちゃん、勘弁して」

~~

恭介が玄関の呼び鈴を鳴らした。

恭介(少女)「おまたせ」

ほむら「変身したまま来たのね」

恭介(少女)「こっちも色々都合があってね」

~~

恭介(少女)「君たちはエントロピーって言葉は知ってるかい?」

ほむら「そこから話をするの?」

恭介(少女)「話すのは全部だからね」

ほむら「身近なところからでも良いんじゃないの?」

恭介(少女)「いや、先に彼らの目的から話した方が理解が早いと思ってね」

ほむら「そう。判ったわ」

恭介(少女)「じゃあ続けさせてもらうと、エントロピーの増大則っていって、
        エネルギーを利用すればするほど、宇宙の利用できるエネルギーは減っていく一方なんだ」

さやか「宇宙ですか。いきなり大きく出たよ」

恭介(少女)「端的に、エネルギーを利用すればエネルギー資源は減る一方だってことは判るよね」

さやか「それは判る」

まどか「うん」

恭介(少女)「石油を燃やせば熱と二酸化炭素と水に変わって熱は拡散していってもはや再利用できなくなる」

恭介(少女)「水力発電はダムに水を貯めてそれを利用してるけど、
        それって太陽のエネルギーで海の水が蒸発して雲を作り雨が降るわけだよね。
        億年単位だけど太陽もいつか燃え尽きる」

恭介(少女)「こういう形であらゆるエネルギー資源はいつかは枯渇する。これを宇宙の熱的死という。
        つまり宇宙の寿命ってわけだ。
        その寿命を延ばしたくて、エントロピーの法則に従わないエネルギー源を捜し求めたのが
        QBすなわちインキュベーターなんだ」

さやか「なんと壮大な」

恭介(少女)「とQBが言ってた。ここまではいいかな?」

さやか「いいよいいよ、早く続けて?」

まどか「なんか、さやかちゃん食いついちゃってるよ」

恭介(少女)「そして捜し求めてようやく見つけたのが魔法少女の魔力だったんだそうだ」

さやか「え? そこでいきなり魔法少女の登場!?」

恭介(少女)「彼らの文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換する技術を発明したんだ」

まどか「感情?」

恭介(少女)「そう、感情を変換したエネルギーが魔力ってわけだ」

さやか「おおう、なんかSF的設定が!」

恭介(少女)「ところが当の彼らは利用できるほどの感情を持ち合わせていなかった。
        これは僕の予想なんだけど、
        彼らは僕たち人類と違って個という概念が無く、集合的意識体の存在らしいんだけど、
        そんな彼らは感情というものを生起させる機会に恵まれずに進化した結果、
        優れた論理性を持ち合わせた代わりに感情というものは退化させてしまったんじゃないかな」

さやか「なんか恭介が好きそうな話だよね。あんたさ、恭介と気が合うかもね」

まどか「あ、あはは……」

恭介(少女)「そ、そうかい。続けるよ」
        
さやか「うんうん」

恭介(少女)「そんなわけで、感情が無い彼らは、宇宙の色々な種族を調査して、
        僕たち人類を見出した。
        彼らはこれだけの数の個体がそれぞれ別な感情を有して共存していることに驚いたそうだ。
        彼らにとって感情というものは、
        論理性に不具合を発生させる精神疾患の一種と捕らえていたからだ」

恭介(少女)「彼らの計算によると、人間一人が生み出す感情のエネルギーは、
        その人が生まれて成長し生涯を終えるまでに要したエネルギーを凌駕するそうだよ」

さやか「人類すげー」

恭介(少女)「彼ら曰く、僕たち人類の魂は、エントロピーを凌駕するエネルギー源足りうるんだそうだ」

さやか「って、エネルギー源? 資源扱いなの?」

恭介(少女)「そう。とりわけ、最も効率がいいのは第二次性徴期の少女の感情の相転移だそうだ」

ほむら(核心を避けたわね)

さやか「それってあたしたち魔法少女ってことよね」

恭介(少女)「その通り。魔法少女は彼らにとってエネルギー資源なんだ」

さやか「よくわかんないんだけど、つまり魔法少女って魔力をQB達に吸い取れられてるわけ?」

恭介(少女)「いや、吸い取るなんって生易しいものでなく、
        もっと巧妙で人類にとっては残酷な方法なんだけど、その前に、
        エネルギーを取られてる事に対してはどう?」

さやか「どうって、最初に願いを叶えて貰ってるから、その対価に宇宙の資源だよね?
     自分の魔力を宇宙に提供するのはまあ仕方ないかな?
     それだったら最初に言って欲しかったてのはあるけどさ」

恭介(少女)「『仕方ない』か。
        ところで感情をエネルギーに変える装置があるんだけど、
        それが何かわかるかい?」

さやか「え? えっと感情のエネルギーは魔力だから、魔力を発生させる装置だよね?」

恭介(少女)「そうだね」

さやか「魔力の源……って、これよね? ソウルジェム」

恭介(少女)「正解。ソウルジェムの仕組みが魂の発する感情を、
        直接的にエネルギー、すなわち魔力に変換する」

恭介(少女)「感情エネルギーの回収はさっき言った感情の相転移を利用する。
        もっというと『希望』という感情が魔法少女の魔力の源になっているわけだが、
        その『希望』が転換した瞬間、ソウルジェムから膨大なエネルギーが放出されるんだ」

さやか「ちょっと待って、転換するってどういうこと?」

恭介(少女)「転換って変わることだろ? 言葉の通りだよ。
        『希望』が『希望』で無いものに転換するんだ。判るだろ?」

さやか「それって……」

恭介(少女)「希望を諦めた瞬間だよ。その時、希望は絶望に変わるんだ」

さやか「絶望……」

恭介(少女)「そう。絶望だ」

さやか「でも、それでエネルギー回収するってことは……?」

恭介(少女)「つまり魔法少女は彼らからすれば、絶望させることが最初から予定に入っているんだ」

ほむら(ここからどう持っていく?)

さやか「絶望するための魔法少女……」

恭介(少女)「ここで極論に走らないで欲しいんだけど、
        今日はQBが参加してないから彼らの代わりに弁明させてもらうと、
        魔法少女になる人間は普通なら決してなし得ない願い事を叶えるという、
        大きなチャンスを与えられているんだ。
        説明不足とはいえ、そこに大きな代償が伴うことも教えられている。
        ここは忘れないで欲しい」

さやか「それってどうなっちゃうの? 希望を諦めたら魔法少女はどうなるのよ?」

恭介(少女)「ソウルジェムが呪いを吸って濁ることは知ってるよね」

さやか「う、うん」

恭介(少女)「それは魔法少女自身が絶望しても濁ることは?」

さやか「そうでしょうね。納得できるわ」

恭介(少女)「それが濁りきった時が相転移の瞬間さ」

ほむら(結局ストレートにもっていくのね……)

さやか「QBは? QBが騙してたっていうの?」

恭介(少女)「ここに彼を呼んで証言してもらってもいい。
        でも暁美さんが冷静で居られなくなりそうだから、今日は遠慮してもらったんだけどね」

ほむら「……」

恭介(少女)「でもインキュベーターは騙したなんて思っていないよ。
        感情を理解できない彼らは、合理的選択をしたと思っている。
        彼らはそういう存在なんだ」

さやか「じゃあ、あたしが馬鹿だったの?
     知らないで契約しちゃったあたしの自業自得なの?」

恭介(少女)「そこを何とかしたいと思って彼らと交渉しているのが僕なんだ」

さやか「え」
まどか「え」

ほむら(上手いわね。ここでその話を出せば悲観した美樹さやかはこの話題に食いつく)

恭介(少女)「彼らに人類の感情論は通用しない。
        あくまで冷静に論理的に説得するしかないんだ。
        そして、彼らも納得するような改善案を提案して、それを研究し、実現する。
        そこまで出来たら良いんだけど。まだ始めたばかりなのさ」

さやか「ええと、何とかなりそうなの?」

恭介(少女)「魔女にならないで死ぬ方法だけはなんとか見つけた」

ほむら「そんなの簡単よ。死ぬだけならソウルジェムを砕けば良い」

さやか「ええーっ!? ちょ、ちょっと待ってよ。それだけで死んじゃうの?」

ほむら「死ぬわ」

さやか「それってやばいんじゃない? 魔法少女超やばいよ」

ほむら「当然よ。魔法少女の魂はソウルジェムにあるんだから」

さやか「……まじ?」

ほむら「本当よ」

恭介(少女)「そう。それは真実だ」

さやか「じゃあ、この身体はなに? 魂が宿ってないっていうの?」

ほむら「魔法少女の身体は外付けのハードウェアよ。ソウルジェムに宿った魂が遠隔操作している」

さやか「……」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「この女が何を研究してるか知らないけれど、
     一度ソウルジェムになってしまった魂は二度と元に戻れないの。
     最期はソウルジェムを砕いて死ぬか、濁りきって魔女になるか二つの道しかないのよ」

恭介(少女)「そこは訂正しなくてはいけない。ソウルジェムの破壊の瞬間、
        魂を身体に戻すことは出来る」

ほむら「そんなの聞いたことが無いわ」

恭介(少女)「そりゃそうだ。現状では出来ても無意味だからね。
        ソウルジェムが砕かれる衝撃に人間の魂は耐えられない。
        狂ってしまうか、そのまま生を放棄して死んでしまうかしかない」

恭介(少女)「でも僕はこの間、QBの協力の下その『実証実験』をしてきたばかりなんだ。
        結果はともかく、魂を身体に戻すだけなら可能なことを確認した。
        『元に戻す』も可能性はゼロじゃないんだ」

さやか「」ギリッ

まどか「さやかちゃん?」

さやか「あんた」

さやか「『実証実験』ってなによ?」

ほむら(食いつくのそこ?)

恭介(少女)「医学でいうところの臨床試験だね」

さやか「殺したの?」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「もう一度聞くわ。その魔法少女を殺したの?」

恭介(少女)「ああ、彼女は結局死んだ。実験直後までは生きていたけどね」

さやか「どうしてそんなこともなげに言うのよ! 人間を実験動物みたいに!」

恭介(少女)「彼女は条件に合って丁度良かったんだよ。
        彼女の願い事の性質で、もうソウルジェムの浄化が追いつかない状態だったし」

さやか「どうせ魔女になるなら殺してもいいっていうの?」

恭介(少女)「そうだね。未来の魔法少女のために役立ったんだ魔女になるよりずっと良かったよ」

さやか「」(変身した

まどか「さやかちゃん! やめて!」

さやか「聞かせて。その子は死にたがってたの?」

恭介(少女)「そういえば希望に縋り付いていたね?」

さやか「き、希望を諦めていなかったんでしょ?」

恭介(少女)「さあ、もう挫折する寸前だったんじゃないかな?
        だから殺してあげたんだけど。
        魔女なんかになられたら後始末が大変だからね」ニヘラ

さやか「あんた、許さないっ!」

ほむら「そこまでよ」

さやか「転校生! そこどいて!」

ほむら「ほむちょっぷ」ビシッ!

さやか「」

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「あなたのM趣味を咎めるつもりはないけれど、まどかの前では控えてくれないかしら?」

恭介(少女)「M趣味って……」

ほむら「大方、その実験の罪悪感からなんでしょうけど、
     わざわざ悪役を演じて余計なものまで背負い込むのは感心できないわ」

恭介(少女)「……すまない」

ほむら「それより実験の成果を聞かせて。直後まで生きていたってどういう事?
     ソウルジェムを砕けば即死の筈。魔女化しても身体は死体になるわ。
     そのどちらでもなかったっていうの?」

恭介(少女)「その通りだよ。相転移の瞬間僕が彼女のソウルジェムを砕いて、
        QBがその魂を身体に戻したんだ」

恭介(少女)「その結果、魔女は生まれることなく、彼女はしばらく息をしていた」

ほむら「……まだ実験は続けるの?」

恭介(少女)「実証してみたいことがまだいくつかあるんだ。条件が合う子がいればまたやるよ」

ほむら「そう……」

さやか「う……ん……?」

ほむら「誤解、解きなさい?」

恭介(少女)「え、いや……わざわざ怒らせるような言いかたしてごめん」

さやか「ううん。こっちもごめん、いっぺんに色んなこと聞いたから、混乱してた……」

ほむら「彼女は魔法少女殺しの汚名を受けてでも研究を続けるそうよ」

恭介(少女)「そんな格好いいものじゃないよ。ただの自己満足なんだ」

さやか「ねえ、あたしが……」

さやか「あたしのソウルジェムが濁りきって魔女になりそうになったら、
     あんたはあたしを実験に使うの?」

恭介(少女)「使うかもしれない。
        でも出来ることならその時までに研究が成果を出して欲しいと思ってる」

さやか「あたしには何か出来ることある? 死ぬ以外で協力できることってある?」

恭介(少女)「まだ判らない。でもあると思うよ。ソウルジェムの可能性を探っているんだ。
        現役の魔法少女の協力は正直ありがたい」

さやか「じゃあ、協力させて! いや、あんたが嫌だって言っても協力するから!」
     
ほむら(見事だわ。全部話してしまったのに絶望どころか希望に満ちてる。
     これならもしかしたら……)

離脱!

>>211-212の間に以下が抜けてました。
結構重要なくだりで凡ミスorz
--------------------------------------

恭介(少女)「エネルギーを根こそぎ持っていかれて、そこには絶望に囚われた魂と呪いしか残らない」

さやか「」ゴクリ

恭介(少女)「絶望と呪いを吐き出す存在とはなにか? 君もよく知っている筈だよ」

さやか「うそ……」

恭介(少女)「嘘じゃない。魔法少女の敵が何故魔女だけなのか疑問に思ったことはないのかい?」

さやか「うそよ! そんなはずがない!」

まどか「さやかちゃん」(手を握る

ほむら「美樹さやかがおかしい」

ほむら「巴マミが健在だから、まどかが私に『さやかちゃんを助けてあげて』と言いに来ないのは判る」

ほむら「百歩譲って上条恭介が志筑仁美を振ったらしいってことで安定してるのも、まあ良しとする」

ほむら「この際、噂で上条恭介が振った女の中に何故か私が含まれているのも眼をつぶるとして」

杏子「てめえ、新人の癖になんでそんな馬鹿みたいにパワーあるんだよ!」

ほむら(佐倉杏子が美樹さやかに押されてる!?)

さやか「何言ってるの? ケンカ吹っかけてきたのあんたの方でしょ?」

ほむら(そもそも、美樹さやかは何の願い事をして魔法少女になったの?
     上条恭介の腕は治ってなかったわ)

さやか「あたし、弱いものいじめは好きじゃないんだけど」

杏子「るせえ! 馬鹿にしやがって」

さやか「じゃあ、こうしようか。あたしが勝ったらあんたあたしの下僕ね」

杏子「はん! いいぜ。逆にアタシが勝ったらおめぇがアタシの奴隷だ!」

さやか「いいよ。じゃ一応気を付けるけど、あんた、死なないでね?」

杏子「そりゃこっちの台詞だ。手加減しないぜ?」

ほむら「ちょっ、やめなさい!」

元々廃棄物だから経緯とかよくすっ飛びます
気が向いたら補完する

ほむら(ということで時間停止してみたけど。紙一重でやりあってて介入する余地が無いわ。
     私に出来るのは気絶させるくらいだけど、下手に手を出すと攻撃に当たって両方死にかねない)

ほむら(むしろ美樹さやかがパワーで勝ってる分、佐倉杏子は戦い慣れで補ってて、
     結局互角だから、放っておいても、どっちかが死ぬ心配は無さそう)


杏子「おまえなかなかやるな」

さやか「あんたもね」


ほむら「はぁ……」

まどか「ほ、ほむらちゃん……?」

ほむら「終わったみたいね」

杏子「おまえ、戦い方は気に入ったよ」

さやか「そうね。使い魔を放置するようなやり方は絶対許せないけど、
     あんたも話の判らないようなヤツじゃないと思うわ」

杏子「そんなんじゃねーよ」

さやか「とりあえず休戦しない?」

杏子「おう。引き分けな」


ほむら(まさか、体育会系のノリで収まるなんて。こんなこと今まで無かったわ)


杏子「アタシはやり方を変える気は無いけどね」

さやか「いいよ。だったら使い魔はあたしが倒すだけだから」

杏子「いつか白黒つけてやるからな」

さやか「望むところよ」

まどかの契約が危ういからとさやかを潰してまどかを追い詰めようと企んだQBが杏子をけしかけたのか
杏子が気まぐれでこの町に来てさやかとぶつかったのか
このあたりはどうでもいいので飛ばした
恭介は間接的にしか関わってないし


マミ「みんなが相手してくれない……」

~~

恭介(少女)「検証したいことがある」

QB「なんだい?」

恭介(少女)「グリフシードに汚れを吸わせすぎると魔女が孵化してしまうんだったよね」

QB「そうだね」

恭介(少女)「その孵化した魔女を魔法少女が倒して、そしてグリフシードを落としたとする」

恭介(少女)「グリフシードだけを見たらその中の汚れは減ってるよね」

QB「そうだね」

>>242続き
すっ飛び加減が
脳内補完不可能なくらい意味不明だったら言ってくれ
善処する

恭介(少女)「その戦いで生じた魔法少女のソウルジェムの汚れの量は、減ったグリフシード内の汚れの量と同じなのかい?」

QB「それじゃあ魔法少女は生きていけないよ。その魔法少女の精神状態にもよるが、
   前者の方が後者より断然少ないね。それは優れた魔法少女ほどその倍率が大きいんだ」

恭介(少女)「ということは、優れた魔法少女が魔女を倒すことで、
        『この世界に発生した汚れ』を減らせるってことだよね」

QB「それは言い換えに過ぎないよ。
   絶望や呪いを吐き出す魔女からこの世界を守るというのはのはそういうことだ」

恭介(少女)「過ぎなくないよ。それってつまり魔法少女の努力で、
        ソウルジェムの汚れを浄化できるってことじゃないか」

QB「意味が良く判らないんだけど」

恭介(少女)「ソウルジェムの汚れは魔女を倒してグリフシードを得て、それに吸収させるしかない。
        というのはシステム的制約であって、本質ではない」

恭介(少女)「『具現化した汚れを叩き壊す』というのが、
        魔法少女における『汚れ』つまり『絶望』や『呪い』を消滅させる法則ってことだろ?」

QB「言葉の遊び以上の意味を感じないんだけど、それに何か具体的な有用性があるのかい?」


恭介(少女)「おおありだよ」

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <久々の、大蟻だよ!
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

恭介(少女)「過酷な魔女との戦いを強要しなくとも、汚れを魔法少女と戦える形にさえ出来れば、
        ソウルジェムの汚れを浄化できるってことじゃないか」

QB「それはつまり、汚れの溜まったグリフシードを僕に任せずに孵化させて、
   その魔女をまた魔法少女が倒すってことかい?」

恭介(少女)「いや、それだと魔女を探すという不確定要素を排除できるが、
        結局戦う相手は魔女になってしまうよ」

QB「じゃあ、どういうことだい?」

恭介(少女)「うーん、具体的草案は無いんだけど、ソウルジェムに溜まった汚れの行き先が、
        グリフシードしかないというのを何とかできないのかなって思ってね。
        具現化して外に出すとか……」

さやか「それなら出来そうだわ」

恭介(少女)「え」
QB「え」

恭介(少女)「いつからそこに?」

さやか「いや、あんたたちこそ、こんなビルの屋上で何やってんのよ」

恭介(少女)「僕らの研究のディスカッションだよ」

さやか「わざわざ外で?」

QB「彼女には感情エネルギー変換の実験もしてもらってるからね。
   この実験は魔法少女と魔女の戦闘現場が最適なんだよ。
   だからこうして町に出て戦闘が発生するのを待ってたのさ」

恭介(少女)「その待ち時間の有効利用ってわけ」

さやか「ふうん。それより今の話」

恭介(少女)「そうだったね。ソウルジェムの汚れを具現化する?」

さやか「そうそれ」

恭介(少女)「出来るのかい?」

さやか「なんか感覚的に出来そうな気がするわ。
     ほら、魔法少女は希望が魔力の元って言ってたじゃない。
     同じように魔女の力は絶望が元。感情は反対でも似たようなものなんでしょ?」

恭介(少女)「そうだね。同じシステムが元になってるから」

さやか「でさあ、魔女って使い魔を出すじゃない」

恭介(少女)「さやかも出せるってことかい?」

さやか「……」

恭介(少女)「どうした?」

さやか「名前」

恭介(少女)「あ、ごめん。いきなり呼び捨ては悪かった」

さやか「じゃなくて、あんたの名前聞いてないわ」

恭介(少女)「え」

(0.00.00 計測スタート)

0.00.02 恭介(少女)(まずっ。まだ考えてない)

0.00.20 QB(しょうがないな。ボクの出番だね)テレパシー

0.00.50 恭介(少女)(えっ、何とか出来るのかい?)テレパシー

0.01.16 QB(ボクを誰だと思ってるんだい?
      有史以前から人類を見守ってきたボク達の知識を持ってすれば、
      日本人の女の子の名前を考えるなんて造作もないことだよ)

0.03.36 恭介(少女)(いや、そこまで自信もたれると逆に心配なんだけど、
      とりあえず男の僕が連想されにくくて、唐突でもない名前はないか?)

0.05.28 QB(恭介の恭(きょう)の字をとって恭(ゆき)なんてどうだい?
      女の子の名前では割とあるみたいだよ)

0.06.46 恭介(少女)(それだ!)

(ここまで0.07秒)

恭介(少女)「済まなかった。僕は恭(ゆき)。『恭』と書いて『ゆき』と読むんだ」

さやか「へえ、あんたの衣装がグレーっていうか銀色ベースなのって、
     もしかして恭(ゆき)=雪っていう連想?」

恭介(少女)「いや、そうなのかな?」
        ユキ
さやか「で、恭って呼んでもいいの?」

恭介(少女)「そうしてくれ」

恭介(少女)「それで、さやかはソウルジェムの汚れを使い魔的なものに具現化出来るってことかい?」

さやか「ここで出していいの?」

恭介(少女)「え」

さやか「恭って弱いんでしょ?」

QB「最弱クラスの使い魔でも勝てないだろうね」

さやか「それって魔法少女としてどうなのよ?」

恭介(少女)「それはともかく、さやかが汚れを使い魔として出して、
        それをさやか自身が倒したらソウルジェムの汚れは少なくなるのかを確認したいんだけど」

さやか「うーん。じゃ使い魔召喚!」

~~

……大変な騒ぎでした。

さやか「いきなり人型で出てきたし」

QB「最初、真っ黒い影だったよね」

恭介(少女)「しかもさやかに襲い掛かってきたね」

さやか「さらに攻撃したら逆に強くなるし」

QB「憎しみをぶつけたからだね。元々さやかのソウルジェムに付いた汚れだから、
   さやかが呪いに属する感情を生じさせると強くなる。当然の理だよ」

恭介(少女)「気付くのが遅かったらやばかった」

さやか「あたしも焦ったわ。だんだん実体が濃くなって、まさか互角にまで成長するなんて」

QB「最終的にはまさにダーク・さやかって感じだったね」

さやか「途中で騒ぎに気付いたマミさんが駆けつけてくれたんだけど、一撃で伸されちゃったわ」

マミ「」(まだ伸びてる)

さやか「防御も殆んど効かなくなって、もはやどうにもならなくなった時、
     恭が機転を利かせてくれなかったら、本気で魔女を生み出しちゃうところだったわ」

QB「危ないところだったね。
   マミを一撃で昏倒させ、今のさやかと互角以上の力を持った魔女なんてこの町で
   勝てる魔法少女がいないよ」

恭介(少女)「でも、あの使い魔は泣いてたからね。痛めつけちゃ駄目だって思ったんだ。
        必要なのは癒しだって」

さやか「そこで、まさか恭がバイオリンを弾くなんて」

QB「マジカル・バイオリンだね」

さやか「浄化されて消えていったね」

恭介(少女)「いつか他人の為に弾くって誓ってたからね。こんな形で役立ってよかったよ」

さやか「とにかく、もうこりごりだわ」

恭介(少女)「残念だけどちょっとこのやり方は没だね」

さやか「確かに出した時はソウルジェムの汚れが減ったけど、魔力使ったから結局元に戻ったわ」

QB「技術の進歩に失敗は付き物だよ」

さやか「じゃあ、あたしは帰るわ。マミさん送らないと」

マミ「」(さやかに担がれてる

恭介(少女)「じゃあ僕らも帰ろうか」

QB「魔女狩り隊がこれじゃ今夜は実験にならないね」

~~

恭介「さて、大変だったけど、成果もあった」

恭介「今回の検証で汚れもソウルジェムに付いた状態では、
        人の感情の形を取っていることが判ったんだ」

QB「それが大きな成果なのかい?」

恭介「君には判らないだろうが、
    『人の感情』ってことは戦闘でなく、『心の問題』として解決が可能ってことだよ」

QB「それが君のバイオリンかい?」

恭介「あれは相手がさやかの汚れだったから効果があったんだ。
    さやかは僕のバイオリンが好きだったからね」

恭介「表向き僕はバイオリンが弾けなくなっているから、
    そのことを気に病んた感情が今回の使い魔、
    いや魔女の手下じゃないから単純に『魔』と呼ぼうか。
    その魔の中心になっていたんだ」

QB「という事は、相手によって対応は変わるってことかい?
   単純には計れないんだね。本当に厄介だな感情ってやつは」

恭介「これは君たちが『魔女』として切り捨てていた領域だよ。
    これで君たちのテクノロジーが不完全なことが判っただろ?
    使い方を誤ると、とんでもない化け物を生み出してしまう、
    その『化け物』を真に制御する技術が欠けているんだ」

                      リソース
QB「確かにその通りだ。でも僕らは『感情』が無かったが為にその生成要因まで解析は出来なかった。
   そこは魔女という現象を見てそれに対抗しうる魔法少女の力を、
   ぶつけるしか無かったんだよ」

杏子の回想編入れたくなったので今夜は以上

まどかとQB(例の勉強会の直後)

まどか「話、全部聞いたよ」

QB「もう契約はしてくれないのかい?」

まどか「全然違うじゃない。QBはわたしたちのこと使い捨ての電池みたいにしか考えてなかったの?」

QB「キミ達にはどんな願いでも一つだけ叶えられるという大きなチャンスが与えられえるんだ。
   その対価、と考えてくれればいいよ。
   もっとも宇宙の未来の為に命を使うことが出来るんだ。
   このちっぽけな星で無為に浪費するより、ずっと価値のあることだよ。
   むしろ名誉なことじゃないか」

まどか「希望の為に戦い続けて、最後は必ず絶望して魔女になっちゃうなんて酷すぎるよ」

QB「そこが理解できないところなんだ。人間はどうしてそこまで個の感情にこだわるんだい?
   一時の感情の為に大局を見誤り、損失を招く。どう見ても感情なんて精神疾患の一種じゃないか。
   そんなものいつまでも抱えているより、
   エネルギーとして差し出してしまった方がずっと宇宙の利益になるっていうのに」

まどか「そういう考え方だったら、やっぱりQBはわたしたちの敵なんだね」

QB「最近、ちょっとだけキミ達人類との付き合い方が判ってきたよ。
  キミ達が『私達』っていうカテゴリで物を言うとき対象は『人類』ではなく、
  その個体が認識している仮想的な集合をさしているってことに気付いたんだ」

まどか「なんのこと? 判らないよ」

QB「個々の個体で感情も、考え方も、理解力も全然違う。
   いままで魔法少女の条件に合う個体のみを対象にしてきたから判らなかったんだけど、
   『感情』というものについてボク達と論理的に話が出来る個体も存在していたってことだよ」

まどか「上条君のことを言っているの?」

QB「キミたち魔法少女に条件の合う人間というのは、
   条件を考えたら当然なのかもしれないけど、
   人類の中でも感情に囚われすぎている個体が多くてね。
   彼のような人間に出会えたのは幸運だったのかもしれない」

まどか「私は上条君みたいにはなれないよ。
     あなたたちのやっていることは悪いことにしか思えない。
     だから契約はしない」

QB「残念だよ。でももし宇宙の為に命を投げ出してもいいって思えたらいつでも声をかけてよね。
   待ってるよ」

まどか「わたしは、みんなのことも諦めない。上条君みたいに割り切れないけど、
     でも魔法少女になってしまったみんなの為にわたしも出来ることをする」キリッ

三レスだけでした

見滝原町のとある喫茶店

マミ「最近、この町で私以外の魔法少女たちが何かやってるみたいなの」

マミ「美樹さんも関わってるみたいなのに何も教えてくれないのよ」

マミ「その美樹さんも、最初は一緒に魔女狩りに来てくれてたのだけど、
   最近はもう実力も十分で別行動の方が多いの」

マミ「成長が早くて頼もしい後輩なのは嬉しいんだけどなんか寂しいわ」

マミ「暁美さんや私を助けてくれたあの名前を知らない魔法少女とも仲良くしてるみたいだし、
   私どうしたらいいのか……」

杏子「……」

杏子(どうしてこうなった)

~~杏子回想はいります~~

QB「キミは何しに来たんだい?」

杏子「マミのとこが面白いことになってるって噂に聞いてね」

杏子「今の狩場も飽きてきたし。ちょっと遊んでやろうかと思ってさ」

QB「まあ止めないけど、お手柔らかにね
   あ、あと、この町にはマミのほかに今三人魔法少女が居るんだけど、
   その中で銀色の衣装の魔法少女にだけは手を出さないで欲しいんだ」

杏子「なんだい。てめぇのお気に入りかい?」

QB「いや、彼女は特別でね。魔法少女の競争からは外れた存在なんだ」

杏子「まあ、あっちから突っかかってこなけりゃ、別に手出ししねえよ。
    にしても、一気に三人も増えてんのかよ。この町はどうなってやがるんだ?」

QB「とりあえず、最近普通に魔法少女になった子がマミと一緒に魔女狩りしてるはずだから、
   その子にコンタクトしてみたらどうだい?」

見滝原町が一望できる展望台

杏子「あいつが新人か」

QB「ついこのあいだ魔法少女になってめきめき力をつけてる期待の新人さ」

杏子「ふうん」

QB「どうやらもうマミと離れてソロで狩りをしてるみたいだね」

杏子「生意気だな。ちょっと行って魔法少女の作法ってやつを教えてやるよ。
    まあ、それで潰しちまうかもしれないけど、
    四人も居るんだから一人くらいかまわないよね」

QB「キミの思い通りに行くとは限らないよ。
   この町にはさっきの三人のうち最後の一人、とびきりのイレギュラーがいるからね」

杏子「どういうやつなんだ、そいつは」

QB「ボクも良く判らない」

杏子「はぁ? そいつもあんたと契約して魔法少女になったんだろ?」

QB「そうともいえる。そうじゃないともいえる。イレギュラーって言ったじゃないか。
   彼女がどう動くかボクにも予想できないんだ」

3レス更新

とある路地裏、杏子とさやか遭遇中


杏子「……だからさ、人間2、3人食ったら魔女になるじゃん。そうすればグリフシード落とすだろ?」

さやか「え? 何……言ってるの?」

杏子「弱肉強食って知ってる? 学校で習ったよね?
    弱い人間を魔女が食う。その魔女を魔法少女が食う。強さの順を考えたら当然だよね?」

さやか「あんた、それ本気で言ってるの? 魔女って人を襲うんだよ?」

杏子「あれ? もしかしてあんた魔法少女を正義の味方かなんかと勘違いしてる?
    時々居るんだよね。こんな勘違いちゃんが」

さやか「……」

杏子「魔法てのはね、自分の為に使うもんさ。
    それを人間を守るために使い魔まで狩っちゃうなんて、あんた頭おかしいんじゃねえの?」

さやか「あんた……」

杏子「てめぇみたいな中途半端なやつが魔法少女やってるとイラつくんだよね」

さやか「許さない!」シャキン!

杏子「ふん。遊んでやるぜ」(槍を目の前に立てる

さやか「」ブン(刀振る

杏子「」ドゴーン(すぐ横を衝撃が通過

杏子「……」ポカーン(壁に穴開いてる

杏子「……ってめ!」

さやか「ふん!」(踏み込んで一閃!

杏子「このっ!」(受け止める

杏子「」ドーン(だが、ふっとばされる

杏子(こいつフォームはめちゃくちゃなのに無駄にパワーだけはありやがる)

杏子「ならこうだ!」(フェイントで一回攻撃を外し、直後にサイドから

さやか「うわっ」(刀の返しが間に合わない

杏子「げっ!?」(柄の先で弾かれてしまう

さやか「このっ!」ビュン!(適当に振っただけ

杏子「」ドカーン(壁に叩きつけられる

杏子「……て、てめェ、」

~~ここで回想をぶった切ってまどか・ほむらサイド~~
(勉強会後、まどかとQBが決別後で使い魔実験より前?)


まどか「あ! ほむらちゃん!(どうしてこんな夜中に家の前に居たのか判らないけど)」

ほむら「どうしたの?(QBがまた来てたから警戒していたら見つかってしまったわ)」

まどか「さやかちゃんが、他の魔法少女とケンカしてるんだって!」

ほむら(相手は佐倉杏子? QBはそれを言いに来たのね)

ほむら「巴マミは何してるの?」

まどか「判らないよ。最近別々に魔女退治してるってさやかちゃんが言ってたから……」

ほむら「ケンカの場所は判る?」

まどか「うん。町外れの……」

ケンカの現場

ほむら「これはどういうこと?」

まどか「ほむらちゃん?」

杏子「てめえ、新人の癖になんでそんな馬鹿みたいにパワーあるんだよ!」ボロボロ

ほむら(佐倉杏子が美樹さやかに押されてる!?)

さやか「何言ってるの? ケンカ吹っかけてきたのあんたの方でしょ?」(割と余裕

さやか「あたし、弱いものいじめは好きじゃないんだけど」

杏子「るせえ! 馬鹿にしやがって」

まどか「ねえ、やめて! 魔法少女同士なのになんでケンカなんてするの?」

杏子「このっ」シャキーン

さやか「ふん!」ドカーン

ほむら(手が出せないわ。パワーでは美樹さやかが圧倒的。
     でも技術が未熟な分、手数で佐倉杏子に押されてる。
     結果二人はほぼ互角。介入する余地が無い)

ほむら(というか佐倉杏子のあの多節棍を使っためちゃめちゃな攻撃を、
     パワーだけで凌ぐって、美樹さやかもどれだけデタラメなの?)

まどか「ほむらちゃん、なんで二人を止めないの?」 

ほむら「よく見て。まだ大丈夫よ(というか介入出来ないわ。手を出すとしたら命がけよ……)」

その後さやかが二刀使いだしたり、
これ以上戦いに慣れられるとヤバイと杏子が焦ったりした末、

杏子「はぁ、はぁ、おめぇ、なかなかやるな」

さやか「はぁ、はぁ、、あんたもね」

~~>>238-244みたいな感じに引き分けで杏子が帰った後


さやか「あ、まどか。……と転校生?」

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「あなた、どうしてそんなに……」

まどか「仲直り、したの?」

さやか「全然。あいつまた来るだろうね」

まどか「ケンカしないでよ。怖かったよ」

さやか「心配かけてごめんね。でも大丈夫だよ。あたしはあたしの正義を貫く。そのための力を得たんだから」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「それにあいつ、まどかの方に攻撃が行かないように気を遣ってた。
     言ってることは酷いけど、そんな悪いやつに思えないんだ」

ほむら(そこまで余裕が。この美樹さやかはいったい……)

ほむら「この際だから聞いておくわ。美樹さやか」

さやか「なに? 転校生」

ほむら「あなたは何の願い事で魔法少女になったの? そんなに強くなるなんて」

さやか「それは内緒」

まどか「でも上条君のことなんでしょ?」

さやか「ちょっ、言わないでよ!」

ほむら「上条恭介の腕は治ってなかったわ」

さやか「ふふん。あなたには判らないわ。
     恭介の魅力はバイオリンの腕だけじゃない。それは本質を表現した一部でしかないのよ!」キリッ

まどか「さやかちゃん、なんか格好良い……」

さやか「うんうん! もっとほめて!」

ほむら「……(なんか、聞く気が失せたわ)」

~~杏子の回想に戻ります~~

とあるゲーセン

ほむら「佐倉杏子」

杏子「あん? あんた確かイレギュラーの」

ほむら「話がある」

杏子「なんだい。ここじゃ話せないことか?」

ほむら「ここでいいわ」

杏子「なんだよ」

ほむら「一週間後、ワルプルギスの夜がこの町にやってくる」

杏子「ワルプル……本当かよ?」

ほむら「ええ。確実に」

杏子「何で判る?」

ほむら「秘密よ」

杏子「それであたしにどうしろってんだ?」

ほむら「戦力が足りないの。共闘して欲しい」

杏子「あたしにメリットは?」

ほむら「私がいま保有しているグリフシードを全部差し出しても良い」

杏子「そりゃ信用出来ないね。それじゃあんたはどうやって戦う気だい?」

ほむら「私はあなたみたいに燃費は悪くないのよ。これから調達する分で十分」

杏子「ふうん。マミとか、あのさやかという新人は? 一緒に戦わないのかい?」

ほむら「もちろん声をかけるわ。でもあなたに一番最初に声をかけたの」

杏子「そりゃ光栄だね」

訂正

×あのさやかという新人は?

○あのさやかとかいう新人は?

ほむら「受けてくれるかしら?」

杏子「やなこった。秘密秘密で全然手の内を明かさないんじゃ、
    あんたのことどうやって信用すればいいのさ。
    精々マミとあの新人とで仲良くやってればいいんじゃね」

ほむら「そう。それは残念だわ。だったらさっさと避難することをお勧めするわ」

杏子「いわれなくたって、出て行くさ(ただし一週間後にな!)」

~~時期的にさやかの使い魔実験後のタイミング~~

見滝原の街中で

マミ「杏子ちゃん!」

杏子「げ、巴マミ」

マミ「杏子ちゃん! 久しぶりね!」

杏子「つうか、そのしばらく合ってなかった友達に会ったようなリアクションはなんなんだよ?」

マミ「その言葉通りじゃない。会えて嬉しいわ」

杏子「いつあたしがてめぇの友達になったんだ? 
   おまえ、昔あたしを思い切り痛めつけてくれたの忘れたのか?」

マミ「すぐ治してあげたじゃない」

杏子「治せば良いってもんじゃねえだろ! やられたら痛いつうの」

マミ「だって杏子ちゃんがおいたするから」

杏子「その呼び方やめろ気持ち悪い」

マミ「そうだ、お茶しましょ。私、杏子ちゃんとお話がしたいわ」

杏子「その呼び方やめろってば。話なんてねえよ。
    なんでおまえと仲良く茶しなきゃなんねえんだよ」

マミ「ねえねえ、何でもお奢るから、ね?」

杏子「なに?」ピク

マミ「本当に何でも良いわよ?」

杏子「食い物頼んでもいいのか?」

マミ「もちろんよ」

杏子「よし判った。店はどこだ?」

~~ようやく回想おわり~~

杏子(で、今に至る、と)

マミ「曲がりなりにもいままで一人でこの町を守ってきた魔法少女なのよ?
   先輩にもう少し敬意を表してもいいんじゃないかなって。
   なのに、みんな私に隠れてこそこそと……」

杏子(結局、誰かに愚痴りたかっただけじゃねえか)

杏子(ま、タダ飯食えたからしゃあないか)

~~

ほむら「……相席、いいかしら?」

杏子「なんだイレギュラーじゃないか」

ほむら「私は暁美ほむらよ。引き受けてくれなかったから自己紹介しそびれたわ」

杏子「なんだい? 手の内を見せてくれる気になったのかい?」

ほむら「あら、きっぱり断ったのではなくて? まだ望みはあるのかしら?」

マミ「暁美さん、いったい何のお話?」

ほむら「失礼するわ」

杏子「おい。なんであたしの隣に座る?」

ほむら「私は巴マミに用があるのよ」

杏子「あたしはあんたの味方になった覚えなんて無いんだけどな」

ほむら「用が済むまでよ」

~~

杏子「……」ムスッ

マミ「この町にワルプルギスの夜が?」

ほむら「ええ。だから共闘して欲しいの」

マミ「今ひとつ信用できないんだけど、あなたが嘘をつくメリットは無さそうね」

杏子「わかんねえぞ。来るのが本当だとしても、
    それ利用して他の魔法少女の全滅を狙ってるのかもしれないぜ?」

ほむら「そんな甘い相手じゃないわ。負けるということは町を失うってことよ」

杏子「あんた戦ったことあんのかよ?」

ほむら「そうね。何回もこの眼で見たわ」

マミ「判ったわ。なによりあなたがこの町を守りたいと思っているのが嬉しいわ。
   一緒に頑張りましょ?」

ほむら「ありがとう」

杏子「ふん、甘ちゃんだねえ。そんな簡単にコイツのこと信用して良いのか?」

マミ「あら、だってまだ時間はあるじゃない。仲良くできるチャンスなんだから私は歓迎だわ。
   暁美さんのほうから歩み寄ってくれるなんて断る理由が見つからない。
   それより杏子ちゃん」

杏子「その呼び方止めろって言ってんだろ」

マミ「あなたは断ったんですって?」

杏子「そうだよ。あたしはこいつ信用できねえし」

マミ「だったら受ける受けないは別にして、一週間、一緒に居てみない?」

杏子「あたしに、あんたらと仲良しろっていうのか?」

マミ「そうよ」

杏子「お断りだね。そもそも魔法少女が仲良くつるむなんてありえねぇ」

マミ「毎日ごちそうしても良いのよ?」

杏子「てめえ。食いもんで釣ろうってのか?」

マミ「そうだわ夜はお茶会でケーキをご馳走するわよ」

杏子「ケ、ケーキ?」ゴキュリ

ほむら「そういえば、今も美樹さやかとそういうことしてるらしいわね」

マミ「あら、知ってたの? 暁美さん、今日からはあなたもよ」

杏子「うっ……」

杏子編おわり


QB「大分ショックだったようだね」

恭介「まあね」

QB「やめるかい?」

恭介「いや。ここで立ち止まるわけには行かないよ」

QB「キミに論理性の不具合が生じるほど感情的になられては困るからね」

恭介「大丈夫だよ。覚悟はしていたんだから。
    ちょっと慣れない物を見てしまったってだけで」

~~回想~~

QB「また条件にあう魔法少女が居たよ」

恭介「ああ、ソウルジェムの破壊と魂の移動を自動化したんだっけ」

QB「この前の実験成果を形にしたんだよ。
   キミが協力してくれるお陰で開発サイクルの回転が速くて助かるよ」

恭介「僕が居るくらいで?」

QB「ボク達は情報を得て妥当性を論じるのは得意だけど、
   有効な実験方法を考案するのが難しいんだよ。
   キミの提案はどういうわけか、いやキミが感情を持った人類だからかな?
   非常に的を射た実験で、毎回有益な情報が得られている」

恭介「それで今回は?」

QB「ソウルジェムに装着するリング状の補助デバイスを用意した。
   これは相転移を精密に検出して最適なタイミングでソウルジェムを破壊すると同時に、
   魂を身体の中に移動する」

恭介「君が行うのと移動方法の違いは?」

QB「大きな差はないね。ただいくつかのやり方の中から、
   人間の魂に対してなるべく安全な方法を選択した。キミの目的がそうだったからね」

恭介「それはありがとう。僕との付き合い方が判ってきたようだね」

QB「キミがボク達の利益との共存を考えてくれているのと同じだよ」

~~

だが、結果は悲惨なものだった。

前回同様、対象の魔法少女にはソウルジェムの真実と実験の目的を説明した。

魔法少女B「なに言ってんの? 絶望に染まりきったら魔女?」

恭介(少女)「真実だ。確認するといい」

魔法少女B「QB、本当?」

QB「本当だよ。人類は成熟する前の女性を少女と呼ぶじゃないか。
   だからやがて魔女になる君たちを魔法少女と呼ぶのさ。
   いいネーミングだと思わないかい?」

魔法少女B「ざけんな」

恭介(少女)「QBこの場面でその言い方は完全に悪者だよ」

QB「そうかな? そもそも善悪の概念なんて相対的だから、
  ボク達には意味が無いんだけどね」

魔法少女B「おい。お前、……魔女にさせない実験って」

恭介(少女)「君が同意しなければ、僕は君をこのまま放置して去るよ」

魔法少女B「そうなったらアタシは、魔女に?」

恭介(少女)「君が生きる希望を回復すればまだ魔女にならないかもしれない」

魔法少女B「はっ、それは無理だ。アタシの希望はもうとっくに……」

恭介(少女)「まずいな」

QB「相転移しかけてる」

魔法少女B「勝手にしな。それで失敗で魔女になったら殺してくれ。
        ……恨みっこ無しだ」

QB「それは無理だ。君は魔女になれば全てを呪う存在になるだろう」

恭介(少女)「同意したとみなす。QB、やってくれ」

QB「わかったよ」

魔法少女Bのソウルジェムにリングが掛かる。
リングの直径はソウルジェムの小径の倍くらい。
空中に浮かんでソウルジェムを取り巻いてる。

魔法少女B「そうだよね。……恨まないなんて、……無理。アタシは結局裏切られた……」

彼女は泣きながら事切れた。

相転移が始まり、
ここまでは前回と同じだった。

リングは相転移後のジェムの破壊まで手際よく行った。
だが魂が肉体に戻されたと思われる瞬間から、悪夢が始まった。

彼女の身体は電気ショックでも受けたかのように仰け反り、
およそこの世のものと思えないような苦悶の形相で顔を強張らせたのだ。

そして何回も跳ねるように身体を仰け反らせたかと思うと、
口から鮮血を噴出させあっという間に彼女は“もう一度”事切れた。

しばらく言葉も出なかった。

恭介(少女)「……これは、どういうことだ?」

QB「魂の抱えた絶望と呪いが人間の器に収まりきれなかった、ということだろうね」

恭介(少女)「前はこうはならなかったじゃないか」

QB「前回は精度が甘かったからね。汚れの大半がソウルジェムと共に砕かれていたし。
   その分回収されるエネルギーも少なかったんだけどね」

恭介(少女)(理論的には判っていた筈だった。
        やはり両立しないのか?
        エネルギー回収と魔法少女を最後に絶望させないってことは)

ねるんだ

夜。
マミの部屋に魔法少女たちが集合していた。

さやか「え? 共闘?」

杏子「おう。ワルプルギスの夜が来るまでだけだけどな」

さやか「へぇー。魔法は自分のために使うんじゃなかったの?」

杏子「別に。いいモン食えるし、報酬くれるっていうからな。自分の利益で動いただけさ」

さやか「うん。まあそういうことにしておいてあげるよ」

杏子「気持ちわりいな。なにニヤニヤしてやがる」

さやか「べーつに」

ほむら「それで、みんなはワルプルギスの夜についてどのくらい知っているの?」

杏子「噂ぐらいかな。超ド級の魔女だってことくらいだ」

マミ「私もよ。災害級だってことくらいで実際に見たことはないわ」

ほむら「『級』じゃなくて災害そのものなのよ。一般の人間には自然災害に見えるの」

さやか「へえー。そんな魔女がいたんだ」

マミ「魔法少女をやっていれば一度はその名前を耳にするわ」

ほむら「あれは結界の奥に身を隠す必要も無いの。
     一度具現化すればそれだけで何千人何万人規模の大きな被害をもたらすわ」

杏子「で、そんなやべえ魔女相手に、どう戦おうってんだ?」

誤爆じゃないよ
レスタイ直すの忘れたorz

ほむら「これが私が用意する火力よ。もう準備に入ってるわ」バサッ

マミ「これは……」

杏子「おいおい、軍隊かよ?」

ほむら「具現化してから、倒立したヤツが反転するまでが勝負なの」

さやか「反転したらどうなるの?」

ほむら「もう手が付けられないわ。
     もの凄い速さで広範囲をあっという間に破壊尽くしてその後何処かへ行ってしまう。
     攻撃してる暇なんてないわ」

マミ「それで、この兵器の火力はどのくらい効くのかしら? 共闘を申し込んできたという事は、
   これじゃ倒しきれないってことよね」

ほむら「判らない。これだけの火力をぶつけたことは無いのよ。
     倒しきれればそれに越したことはないのだけれど」

杏子「おまえさ、ワルプルギスの夜と戦ったことあるって言ってたよな?」

ほむら「……」

杏子「噂は幾らでも聞いたことあるけどさ。
    具体的にどこに現れたなんて話聞いたことねえぜ」

ほむら「それがなに?」

杏子「お前何者なんだ? なんでそんなヤツがこの町に現れるって判るんだ?
    しかもこの配置図には出現ポイントまで書いてあるじゃねえか」

さやか「もしかして転校生ってさ、ワルプルギスの夜を追っかけてるハンターなの?
     今度こそ倒す、って出現箇所を予測して何回もチャレンジしてるとか?」

杏子「そうなのか?」

マミ「そうだったの!?」キラキラ←そういう設定好き

ほむら「そう思ってくれてもいいわ」

マミ「それで、これは一人で戦うための配置に見えるのだけど、
   私たちはどう戦うのが良いのかしら?」

ほむら「大きな魔法は使える?」

マミ「大きな? どのくらい?」

ほむら「最低でもビルを一撃で全壊する位ね」

杏子「え」
マミ「え」
さやか「え」

杏子「……最低でそれかよ」

ほむら「無理なら使い魔を始末する役割をお願いするわ」

マミ「やったことはない、というより大きな魔法は結界の中でしか使わないから判らないわ」

さやか「うん。あたしも」

ほむら「あと、使い魔といってもアイツの使い魔は一体一体が魔女クラスの力持ってるわ」

杏子「おいおい。それって本当に4人で勝てるのかよ?」

ほむら「逃げてもいいのよ」

杏子「だれが」

マミ「でも、本当に厳しそうね」

ほむら「無理なら手伝わなくてもいいわ。私一人でやるから」

マミ「そんなこといわないで。まだ時間があるんだから、作戦を考えましょ」

杏子「でもどうすんだよ。単純なパワーゲームじゃ下手すると負けるぜ」

マミ「そうね。暁美さんの仕掛けプラス私達の追撃で倒せれば良いんだけれど、
   もし倒せなかったら……」

杏子「……」

ほむら「……」

さやか「……あのさ」

ほむら「なにかしら?」

さやか「思ったんだけどさ、この面子って、作戦立てるのに向いてなくない?」

マミ「そうなのかしら?」

さやか「あたしは考えるより身体動かすタイプだし。杏子もどっちかっていうとそうだよね?」

杏子「否定はしねえな。ってかいきなり呼び捨てかよ」

さやか「いや、今更『佐倉さん』って呼ぶのもなんか気持ち悪いっていうか」

杏子「まあ、いいけどよ」

さやか「それで、マミさんは……ええと」

ほむら「敵を倒すより戦い方に拘るタイプね。
     なまじ実力がある分戦略立てるのは苦手そうだわ」

さやか「そうそんな感じ。で転校生、あんたは作戦立ててるみたいだけど、
     自分用のだけしか考えないでしょ?」

マミ「仕方が無いわ。今まで一人で戦ってきた魔法少女が集まれば最初はこんなものよ。
   でも互いの長所を生かせば連携できると思うの」

さやか「でも今回の相手って、話からすると長所を生かすとかそういうレベルじゃないでしょ?
     なんていうか根本的に力が違うっていうか」

ほむら「それであなたはどうしたらいいと思うの?」

さやか「根本的に勝つためには作戦を考えないといけないような」

マミ「美樹さんにはそんな作戦があるのかしら?」

さやか「いや思いつかないから、ここは頭脳をスカウトしたらどうかなって」

マミ「頭脳? 当てはあるの?」

さやか「恭(ゆき)よ」

マミ・ほむら・杏子「誰?」

さやか「いや、あの銀色の衣装の魔法少女よ。あいつ考えるのは得意そうじゃない」

マミ「ああ。あの子」

ほむら「そういえばそうね。戦力外だから声をかけなかったのだけど」

杏子「まあいんじゃね。あたしは会った事ないけど」

マミ「連絡は付くの?」

さやか「いつも魔女狩りしてると出没するから、
     魔女探ししてる時間に街中を探せばいると思うけど、
     その前に、まどかが知ってるみたいだから、明日学校で聞いてみるよ」

マミ「そう。お願いね。
   じゃあ、今日のところはこれで解散ね」

ここまで

学校にて。
廊下でまどかが恭介を呼び止めた。

まどか「上条君」

恭介「なんだい?」

まどか「今日、上条君の家行っても良いかな?」

恭介「いや、何で?」

まどか「ちょっと相談したいことがあるの」

ほむら(なんですと?)
さやか(なんですと?)
仁美(なんですと?)

恭介(相談ってもしかして、魔法少女方面?)小声

まどか(う、うん)小声

恭介(僕じゃないといけない相談?)

まどか(うん。たぶん)

恭介(まずいよ。君の友達が見てる)

まどか(え? どうしよう)

恭介(とりあえずこうしよう……)

~~略~~

まどか(……わかったよ)

放課後。

まどか「わたし、今日は行くとこあるから」

さやか「そうなんだ。じゃ途中まで一緒に帰ろう」

まどか「え?」

仁美「そうですわ。私もご一緒しますわ」

まどか「仁美ちゃんまで!?」


まどか「仁美ちゃん、こっちじゃないよね?」

仁美「私、今日はこちらに用事がありますの」

上条家前。

まどか「えーと」

さやか「あれ、奇遇だね。まどかも恭介に用があったんだ」

まどか「さやかちゃん……。仁美ちゃんまで」

仁美「本当に奇遇ですわ」

ほむら「……」

まどか(なんかいつのまにか、ほむらちゃんまでいるし)

恭介「やあ、待ってたよ」

さやか「え」
仁美「え」
ほむら「……?」

恭介「なんか女の子が家に来ると母さんが喜ぶんだよね」

さやか(このおもてなしはいったい?)
仁美(これが上条君の部屋……)
ほむら(まどかを追ってたら中に招待されてしまった)
まどか「……」

そして小一時間ほど部屋で他愛の無いお喋りをした後、
まどかが『そろそろ帰らいと』というので……。

恭介「じゃ、また明日。学校でね?」

さやか「うん。お菓子ご馳走様!」

仁美「お邪魔いたしました」ペコリ(丁寧にお辞儀)

ほむら「……」(軽く頭を下げる)

まどか「ばいばい」

そして、約三十分後。


恭介「時間は大丈夫?」

まどか「うん。ママにはお友達のところへ行くって言ってあるから」

恭介「それで相談って?」

まどか「上条君って、魔法少女のこと詳しいんだよね?」

恭介「うん。まあ色々調べてるからね」

まどか「この前の話で、どうして上条君が『魔法少女になっちゃいけない』って言うのかは判ったの」

恭介「それは理解してもらえてよかったよ」

まどか「わたしに何か出来ること無いのかな?」

まどか「みんな大変なことになっちゃってるんだよね?
     上条君それを何とかしたくて頑張ってるんだよね?」

恭介「君は無理に関わることはないよ。いや普通の人の君は関わるべきじゃない」

まどか「上条君もほむらちゃんと同じ事いうんだね」

恭介「真実を知ったら誰でもそういうさ」

まどか「わたし、さやかちゃんがお手伝いするって言った時、
     わたしだけ仲間はずれなんだなって思っちゃった。
     お友達の為に何も出来ないんだなって」

恭介「それでいいんだよ。普通に生きてたら魔法少女なんて知ることは無いからね」

まどか「でも、誰にも知られないまま命がけで戦って、
     最期は魔女になって同じ魔法少女に倒されるしか無いなんて。
     なりたくなかったら死ぬしかないなんて酷すぎるよ」

まどか「わたしあのあとQBに言われたの。わたしはものすごい素質を持ってるって。
     わたしなら、魔法少女の運命でもひっくり返すことも出来るだろうって」

恭介「QB、そうなのかい?」

QB「その通りだ。どんな経緯でごく普通の生涯を与えられたまどかが、
   そんな才能を持つに至ったのか、まったくもって不思議でならないんだけど、
   まどかがとてつもない才能を有していることだけは確かだよ」

まどか「上条君のやっていることが成果を出すのは何百年も先だろうって、
     でも、わたしならいっぺんにひっくり返すことも可能だって言われて」

恭介「もしかして、契約しようとしたのかい?」

まどか「うん。そうしたら」

QB「またしても暁美ほむらに邪魔されたのさ」

まどか「よくわかんないんだけど、ほむらちゃんそのあと泣いちゃって……」

恭介「君たちはそうまでして鹿目さんと契約したいのか」

QB「そりゃそうさ。まどかから得られると考えられるエネルギーの量は
   今までこの星で回収した全てのエネルギー量を凌駕する程なんだ。
   契約できればこの星でのノルマを一気に達成して更にお釣りがくるよ。
   そんな彼女を最優先にしない選択肢なんてないね」

恭介「ということは今後も勧誘は続けるのかい?」

QB「勿論だ。先日暁美ほむらに勧誘担当の身体を破壊されてしまったんだけど、
   そのために早速新しいのを用意したくらいだからね」

恭介「そうか。それは不味いな……」

まどか「上条君?」

恭介「QB、このデバイスは僕以外にも使えるのかい?」

QB「君が使っているのをかい?
   出来ないことは無いが難しいと思うよ。
   既に君のエネルギーを通す回路が出来上がっているからね」

恭介「じゃあ、鹿目さんにも感情エネルギー変換の被験者になってもらうことは?」

QB「まどかをかい? ボクは現時点ではこの実験の被験者は君だけで十分と考えているんだが。
   まどかのような才能を投入するには時期が早すぎる、
   いや、まどか程の才能をただの実験に投入してしまうのは勿体無いよ」

恭介「言っただろう?
   今のシステムは一人の人間の沢山ある感情の唯一つしか利用出来ずに使い捨ててしまうって。
   僕は僕の友達をそんなことにして欲しくないんだ。
   才能があるってことならなおさらだ」

まどか「……えっと、何の話?」

恭介「実は僕は魔法少女じゃないんだ」

まどか「え?」

恭介「魔法少女がするQBとの契約を僕はしていない」

まどか「でも変身して魔法を……」

恭介「僕はソウルジェムとは違う、感情を魔力に変換するデバイスを使って色んな実験をしているんだ。
    僕が変身できるのはそれのお陰さ。
    性別が変わってしまうのはこれの副作用なんだけどね」

まどか「契約してないの? じゃあ上条君は魔女にならないの?」

恭介「魔法少女じゃないからね。それでだ」

まどか「?」

恭介「放っておくと君は契約してしまいそうだから、君にも実験に協力してもらおうと思うんだ」

まどか「え? それって?」

QB「そういうことか。キミが何を意図してたのか判ったよ」

恭介「説明が必要かい?」

QB「いや。でもこれは特別だよ」

まどかの前になにか輝くものが。

QB「さあ受け取って。これがキミの変換デバイスだ」

まどか「これが……?」(そっと両手で受け取る

QB「君にはソウルジェムを使わないエネルギー回収の実験をしてもらうつもりだ。
   君の魔力係数なら実験といっても実際に利用可能なエネルギーが得られそうだからね。
   キミには再利用可能なエネルギー源の開発に一役買ってもらうよ」

ほむら「ま、まどかぁぁぁっ!!」ガタガタ

まどか「え」
恭介「え」

中断

ほむら「それは何!?」

恭介「暁美さん、いったい……なにかかなり焦ってたみたいだけど、鹿目さんは契約してないよ」

ほむら「え、ええ、そうだったわね。話は全部聞かせてもらったわ」髪バサッ

まどか「ほむらちゃん。どこから入ってきたの?」

ほむら「いえ、ちょっと(時間を止めて不法進入しました)」

恭介「大丈夫?」

ほむら「ええ。ただ絵的に心臓に悪くてつい……」ドキドキ

恭介「まあ、とりあえずお茶を用意してくるよ。君の分」

ほむら「いえ、おかまいなく」

~~お茶タイム後~~


ほむら「まどかを巻き込まないで」

恭介「それはもはや無理だ。鹿目さんはもう巻き込まれてしまっている。
    当事者から遠ざけようとして知識を与えないのはかえって危険だよ」

ほむら「……」グッ

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……上条恭介」

恭介「なんだい?」

ほむら「……あなたがあの恭(ゆき)とかいう魔法少女の正体だったのね」

恭介「全部聞かれてしまったようだね」

まどか「恭ちゃんっていうんだ?」

恭介「いや名前は成り行きで……」

ほむら「……まどかは知っていたのね」

まどか「あ、うん。っていうか何でみんな判らなかったの?」

ほむら「魔法少女は女の子がなるものっていう先入観があったせいだわ。
     まさか上条君が魔法少女なんて……」ジロ

恭介「いや、その汚物を見るような眼は止めてくれないか。
    僕も好きであの姿になったわけじゃないんだ。
    それに正確には魔法少女じゃないし」

ほむら(そんなに目つき悪かったかしら)ガーン

ほむら「それってどういうものなの?」

恭介「エネルギー回収を目的としない、単純な感情エネルギー変換機。
    僕らにとっては願いを叶える夢のアイテムさ」

まどか「これが?」

恭介「ソウルジェムのように魂から直接感情を吸い上げるのと違って、
    間接的になるから使うのにコツがいるんだけど、鹿目さんはあとでやってみようね」

まどか「うん」

ほむら「副作用はないの?」

恭介「今のところはね。それも検証中なんだ。
    でも僕の発揮できる魔法の力は少なくてあまり進んで無いんだよ」

QB「上条恭介は、一般的な魔法少女レベルの素質だから、
   このデバイスだと最弱以下の魔力しか発揮できないんだよ」

ほむら「男のあなたに魔法少女の素質?」

恭介「あんまり嬉しくないんだけど
    お陰で君たち魔法少女を助けることが出来るかもしれないんだから、
    これには感謝しないとね」

QB「でもまどかは違う。潜在的な魔法力が桁違いだからね。
   慣れれば普通の魔法少女くらいの力は楽に出せるはずだよ」

まどか「そうなの?」

ほむら「それじゃ、まどかがこれを使った場合の副作用は未知数ってことじゃない」

まどか「それでも良いよ。みんなの為に何かできるんなら。
     わたしが使ってみて、これに悪いところが無いか調べるってことだよね?」

ほむら「まどか、あなたは……」

恭介「まだ見落としが無いか心配はあるけど、
    僕の理解する範囲では、魔女化することに匹敵する程のリスクはないと思う」

QB「ああ、言い忘れてたけど、まどかのデバイスは、恭介のと違って、
   エネルギーを回収するための仕掛けが組み込まれているから」

恭介「なんだって? そういうことは早く言ってくれ」

ほむら「やはり変わってないわね。インキュベーター」

QB「ソウルジェムとは違うよ。発生した余剰の魔力をプールしておいて、
   必要に応じて放出できるようにしてあるだけさ」

QB「キミに悪評だった感情を固定化するような仕組みではなく、
   あくまで本人の意思でエネルギーを放出したり自分の魔法に使ったり出来るんだ」

恭介「うーん。とりあえずよさそうだけど」

QB「これでもこの前のキミの話をよく検討しながら開発を進めているんだよ」

ほむら「何かありそうだったら直ちに中止して」

恭介「それは僕が約束するよ」

まどか「ほむらちゃん心配しすぎだよ。でも、心配してくれてありがとうね」

ほむら「まどか……」

~~

ほむら「ところで、恭(ゆき)に話があるのだけど」

恭介「上条恭介じゃなくて恭なのかい?」
     カミジョウユキ
ほむら「 上条 恭なの?」

恭介「いやどうでもいいんだけど、話はそれかい?」

ほむら「いいえ。話があるからこの後、恭として巴マミの家に来てくれないかしら?」

まどか「あれ? さやかちゃんが言ってたのって、もしかしてそれかな?」

ほむら「そうよ。恭に今夜の相談に参加して欲しいの」

まどか「それって、わたしも行っちゃ駄目かな?」

ほむら「まどかは来ないで」

恭介「鹿目さんを放っておくとQBがまたどんな勧誘をするか心配なんだけど」

ほむら「それはそうなのだけど、かえって勧誘の口実にされそうだから」

まどか「それってつまり、わたしが心配するようなことなんだよね?
     また何か危ないことなの?」

恭介「ほら。遅かれ早かれこうなるよ」

ほむら「くっ……(迂闊。まどかが鋭いわ)」

恭介「それに、QBはもう知っていんじゃないか?」

QB「大体把握してるよ。ワルプルギスの夜が来るって話だろ?
   暁美ほむら、ボクにはキミが何故それを予測できるのかが疑問なんだけど」

ほむら「おまえに説明する義理は無いわ」

恭介「なんだい? ワルプルギスの夜って?」

QB「魔法少女の間では伝説になっている超ド級の魔女さ。
   昔は一度現れると国を滅ぼすと言われていた。今は一国一国の規模が大きいから、
   日本で言ったら滅ぼすのは都市一個分位かな」

恭介「へえ」

まどか「それがこの町に来るの?」

QB「何時何処に現れるのか予測できないと言われている。
   暁美ほむらは何故か知っているようだけどね」

ほむら「来るわ。確実によ」

恭介「それが本当なら撃退しないとやばいじゃないか」

QB「ただ、あの魔女は出現範囲を破壊し終わるとまた何処かへ消えてしまうからね。
   ボクは恭介にはその間、遠くへ避難していることをお勧めするよ」

恭介「そういうわけにも行かないだろう?」

QB「どうしてだい? ボクはキミという個体が生き残ってくれればそれでいい。
   そのためには一番合理的選択だと思うんだけど」

恭介「まあ君たちにとってはそうだろう。
   でもこの上条恭介という存在は、僕の家族や友人、親戚や学校の先生、
   バイオリンで世話になった先生方や病院の先生やスタッフ、
   その他の僕と縁のあった大勢の人たち、
   結局この町全体があってこそなんだ。
   僕だけ逃げるわけにはいかないよ」

QB「まあ、キミが避難しないというんなら、ボク達にそれを止めることは出来ないんだけど、
   それでキミという得がたい個体を失うのは本当に残念だよ」

恭介「ということは、現存する魔法少女達でワルプルギスの夜を倒すことが不可能と考えているのかい?」

QB「勿論だ。さやかとマミと暁美ほむら、キミも戦うのかい? それに佐倉杏子も加えて4人だね?
   さらにキミとまどかがデバイスを使って参戦したところで倒すどころか、
   出現後の被害を減らすことすら出来ないだろう」

ほむら「……」

QB「暁美ほむら。それはキミがどんな戦闘力を用意したとしてもだよ。
   恐らくワルプルギスの夜にキミは傷一つつけることが出来ない。
   ああもちろん鹿目まどかが契約した場合は別だよ。
   魔法少女になった彼女なら、一人でもワルプルギスの夜くらい楽々倒せるだろう」

ほむら「黙れ」

まどか「ほ、本当なの?」

ほむら「駄目よ。まどかコイツのいうことなんか聞かないで」

恭介「僕からも言わせてもらうよ鹿目さん。
    それはつまり鹿目さんが最終的に魔女になった時、
    ワルプルギスの夜を越えた魔女になるってことだろう?
    それは駄目だよ。下手すると人類が行き止まりだ」

ほむら「下手しなくてもまどかが魔女になれば数日で地球は滅亡するわ」

まどか「……」

恭介「別に鹿目さんを責めているわけじゃないよ。契約しなければいいんだ」

まどか「う、うん」

なんか書き込みがえらい重い
すこし間をおいてみる

~~

恭介「さて話を戻そう。つまり現存勢力では歯が立たないってことか」

QB「力関係だけを言えばね。だから避難するのが唯一の選択肢だよ」

恭介「暁美さん。それが来るのはいつだ?」

ほむら「一週間、いえ、もう六日後よ」

恭介「そんなに早いのか」

ほむら「何をするつもり」

恭介「もちろん撃退だ」

QB「君は暁美ほむらの言うことを信用するのかい?」

恭介「ああ。信用する根拠もある」

QB「そうか。君も彼女の魔法が何なのか予想が付いてるんだね」

ほむら「……」

恭介「暁美さん。今晩から早速動く。方針が決まったら改めて召集するよ」

ほむら「今晩は来てくれないの?」

まどか「ほむらちゃん、なんか大人のお誘いみたいだよ」

ほむら「なっ!/// まどか意味判っていってるの!?」

まどか「え? よく判らないけど、夜に男を誘うのは大人になってからにしなってママが……」

ほむら「あなたのお母さんは、まどかに何を教えてるのよ……」

恭介「ええと、いいかな?」

ほむら「ごめんなさい。いいわよ」

恭介「君はワルプルギスの夜について判っていることをまとめておいて欲しい。
    形状とか大きさとか移動速度、攻撃手段。判ってることはなんでも。
    まずは情報が必要だよ」

ほむら「残りの三人には?」

恭介「他の魔法少女で手伝ってくれそうな子に心当たりが無いか。
   もし居るならアプローチしておいて欲しい」

ほむら「判ったわ。佐倉杏子と巴マミはわりと古株みたいだからあるかもしれないわね」

まどか「わたしは?」

恭介「とりあえず、デバイスを使う練習だね。なにも出来ないとキミの契約の抑止力にならないから」

ほむら「契約は駄目よ」

まどか「判ってるよ。ほむらちゃん心配しすぎ」

ほむら「あなたの場合、どれだけ念を押しても、押しすぎはないもの」

まどか「ひどいな。そんなわたし、信用無いかな」

ほむら「……」ガッ(無言でまどかの肩を掴んで見つめてる。泣きそう。

まどか「わ、判ったから。ほむらちゃん泣かないで……」

恭介「それだけQB達の勧誘が巧みなんだよ」

QB「そこは当面デバイスの実験を優先するよ。まどかの方から契約を望まない限りだけどね」

恭介「信用していいのかな?」

QB「勿論だ。キミは常に論理的なだけでなく、いつでもボク達の利益との共存を考えてくれている。
   その態度には答えないとね」

恭介「わかった。信用するよ。じゃあ今日はこれで解散だね」

恭介「デバイスの練習は明日やろうね」

まどか「う、うん……」

区切りがいいので
ここまで

だらだらと会話ばっかりだったな

街中のとある見晴らしのいい場所で。
こうして恭(ゆき)になった恭介とQBが外でミーティングするのは日課になっている。

恭介(少女)「さて。話を急がなければならなくなってしまった」

QB「エネルギー変換のデータ収集はやるのかい?」

恭介(少女)「もちろん彼女達が出てくればやるよ」

QB「キミはさっき彼女達の所へは行かないようなことを言ってなかったっけ?」

恭介(少女)「鹿目さんが居たからね。彼女に自然に帰ってもらうためにああ言ったんだよ。
        正直彼女にガチの戦闘には参加して欲しくないんだ」

QB「彼女なら身体の脆弱さを補って余りある魔力を発揮すると思うよ」

恭介(少女)「それが目的じゃないからね」

QB「まあ、ボクとしてはエネルギー回収の実験が出来ればいいんだけど」

恭介(少女)「それよりリングの改良案だ」

QB「何か思いついたのかい?」

恭介(少女)「このまえさやかがソウルジェムの汚れを具現化したのは覚えているかい?」

QB「もちろんだ。大変な騒ぎだったね」

恭介(少女)「あんな怪物が現れるのは困るんだけど、あんな感じに分離して
        魂が汚れを持っていかないようにできないかな?」

QB「魂と汚れの分離は難しいんじゃないかな」

恭介(少女)「難しい? 不可能じゃないんだ?」

QB「キミが『汚れ』といっているものは正確には絶望とそれが生み出した呪いだろ?」

恭介(少女)「そうだね」

QB「その『絶望』の部分はどうしようもないよ。魂自身が手放さない限り肉体に付いて行ってしまう。
   ただ、『呪い』の分離なら可能だと思うよ」

恭介(少女)「まずはそれだけでも良いよ。実現出来るかい?」

QB「呪いをプールしておく場所を作って破壊のタイミングをずらせば出来るかもしれない。
   これはやってみないことには判らないけどね」

恭介(少女)「そうか、その準備は出来るかい?」

QB「少し時間をくれないかい」

恭介(少女)「判った。あとそれから……」

~~

さやか「あー、いたいた」

恭介(少女)「やあ、さやか。魔女退治中かい?」

さやか「うん。それで、あの話……」

恭介(少女)「ワルプルギスの夜が来るという話だろ?
        今日聞いてさっき暁美さんに指示を頼んでおいたけど聞いてるかい?」

さやか「うん。人材の方はマミさんと杏子が心当たりを当たってみるって。
     でもあたしはなったばっかりだから他に魔法少女の知り合いなんていないし」

恭介(少女)「まあ仕方が無いよ」

さやか「ねえ恭、あたしに手伝えること無い?」

恭介(少女)「今のところは従来どおりグリフシードの確保かな?」

さやか「あたしは現状維持か」

恭介(少女)「必要なことだからね。
        それより、魔女が元は魔法少女だったって知ってからも魔女狩りはしてるようだけど、
        その辺はどう考えてるんだい?」

さやか「仕方が無いかな。元がどうあれ、
     今は人間に悪いことしているんだから誰かが止めなきゃいけないでしょ」

恭介(少女)「割り切れてるんだ」

さやか「割り切ってるというか、よく判ってないだけかも」

恭介(少女)「無理してるんじゃなければ良いよ」

さやか「無理といえば、あの実験はまだやってるの?」

恭介(少女)「あの実験?」

さやか「魔法少女を魔女にしない研究の」

恭介(少女)「ああ、勿論だ」

さやか「……あれから、またやったのね?」

恭介(少女)「判るんだ?」

さやか「そんな顔されたら嫌でもわかるわよ」

恭介(少女)「そうか。僕もまだまだ修行が足りないな」

さやか「ねえ、あたし手伝うって言ったよ?」

恭介(少女)「これは僕一人で良いよ」

さやか「一人で背負い込まないでよ。いつか魔法少女の恨みを買うかもしれないじゃない」

恭介(少女)「そうだね。QBによるともう噂になってるみたいだよ。
        魔法少女の最期を看取りにくる死神のような魔法少女が居るって」

さやか「あんた普通の魔法少女に襲われたら絶対勝てないでしょ?
     あたしボディーガードやるよ」

恭介(少女)「いや、こんな弱い魔力でも物理強化なら十分だし、
        逃げることに特化すれば意外とどうにかなるものだよ」

さやか「そうじゃなくて、あたしは恭(ゆき)が心配なの! あたしに恭を守らせてよ」

恭介(少女)「嫌なものを見るかもしれないよ」

さやか「そんなの承知の上よ」

恭介(少女)「僕の所業は君の正義に反するかもしれない」

さやか「構わないわ。今決めた。例え誰が敵になっても、あたしはあんたの味方になる」

恭介(少女)「……わかったよ。ありがとう」


翌日、学校

朝、まどか、さやかがマミに出くわして談話中


マミ「変換デバイス?」

まどか「うん。契約しなくても魔法が使える装置なんだって」

さやか「既にそんなものまでが。恭(ゆき)の研究はどこまで進んでいるというの……」

マミ「それじゃ鹿目さんは今魔法が使えるの?」

まどか「それが、貰ってからいろいろ試したんだけどまだ全然なの」

さやか「それって本当に使えるの?」

まどか「使えるよ。恭ちゃんはこれ使って変身してるんだから」

マミ「え」
さやか「え」

マミ「本当なの?」

さやか「あいつ、魔法少女じゃなかったんだ」

マミ「というより、これは新たなカテゴリーの魔法少女の登場ね」ワクワク

まどか「新たな魔法少女?」

マミ「それはそうと、『感情エネルギー変換デバイス』ってなんだか格好悪いわね」

まどか「え?」

マミ「そうね。E.E.T.Dとか? ちょっとしっくり来ないわね。
   形状がソウルジェムそっくりだから……」

さやか「マミさん?」

マミ「そうだわ“エモーショナル・ジェム(EG)”これで行きましょう」

さやか「いや、行きましょうって……」

マミは自分の教室へ


さやか「ところでまどか」

まどか「なに?」

さやか「恭(ゆき)ってさ……」

まどか「えっ」

さやか「……恭介なの?」

まどか「え、えーっと。どうして?」

さやか「いや、今日恭介みたらさ、昨日の恭と同じ表情(かお)してたからさ」

まどか「そうなんだ」

さやか「で、どうなの?」

まどか「わたしは、さやかちゃんが今まで判らなかったのが不思議なんだけど」

さやか「え? いや、何回も会ってるうちに『もしや』とは思ってたんだけどね……。
     じゃあ、まどかは最初から判ってたの?」

まどか「うん」

さやか「何で黙ってたのよ?」

まどか「だって、上条君、なんか秘密にしたいみたいだったから」

さやか「恭介がそう言ったの?」

まどか「うん。あとで聞いたらそう言ってたよ」

さやか「そうなんだ……」

まどか「さやかちゃん?」

さやか「じゃあさ、あたしが正体知ってる事、恭介には黙っといて」

まどか「え? いいけど……」

ここまで

休み時間(視点は、ほむほむ気味)


ほむら「上条恭介。話があるわ」

恭介「え? うん」

場所を変えて

ほむら「資料、まとめたわ」

恭介「持ってきてくれたんだ」

ほむら「早い方がいいと思って」

恭介「助かるよ」

ほむら「それで、あなたを当てにしていいのかしら?」

恭介「というのは?」

ほむら「私は一人でも戦うつもりだった。
     あなたに協力したが為に私の準備が無駄になるのは避けたいの」

恭介「信用できないかい? QBも協力すると言っている」

ほむら「そこが一番信用できないわ」

恭介「今、彼らは僕という個体の生命維持を優先事項にしている。
    僕がこの町から避難しない限り、QB達はワルプルギスの夜の撃退に協力するよ」

ほむら「あいつがあなたに拘っているのが判らないわ」

恭介「そこは、僕も判らないところだけど、
    彼らが人類に、なしてきたことを考えれば、
    この状況を利用させてもらったって悪くは無いだろ」

ほむら「そうね……」

恭介「資料ありがとう。なるべく早く作戦を立てるよ。今夜また話をしよう」

ほむら「ええ、期待してるわ」

恭介は教室に戻った。


まどか「あれ? ほむらちゃん」

ほむら「……まどか」

まどか「何してるの?」

ほむら「風に当たりに来ただけよ。あなたはどうしたの?」

まどか「え? えーっと練習?」

ほむら「練習って?」

まどか「これだよ」

~~

ほむら「誰なの? EG(エモーショナル・ジェム)なんて名前付けたのは」

まどか「マミさんだよ。QBも気に入ったって」

ほむら「それで起動しないの?」

まどか「うん。頑張ってみたんだけど全然」

ほむら「上条君はなんて?」

まどか「感情が足りないんじゃないかって」

ほむら「感情……」

QB「セールストークを使えばいいのかな?」

ほむら「インキュベータ……」

QB「おっと。キミの目的は鹿目まどかを契約させないことだったはずだよね。
   それは現在果たされてると思うんだが」

ほむら「……あなたの多弁は不愉快だわ」

まどか「せーるす、なに?」

QB「願い事を言ってもらうためにボクが色々話を聞き出すことをそう言うらしいよ。
   変換するに値する感情を引き出すにはそれが良いと思ってね」

ほむら「一理あるわね。でも契約する流れにしたら殺すわよ」

QB「心得てるさ。ボクは実験担当だからね」

まどか「ええと?」

QB「キミは魔法少女の運命を何とかしたいと思っているんだろ?」

ほむら「」ピク

まどか「う、うん」

QB「願いから始まり呪いで終わる、誰にも知られずに孤独に戦い続ける存在。
   そんな魔法少女の希望と絶望に縛られた運命を思い浮かべてごらん」

まどか「……」

QB「キミはどうしたい?
   キミの周りに居る魔法少女たちは例外なくその運命を辿るんだ」

まどか「ほむらちゃん。さやかちゃん、マミさん、あの赤い子もだよね……。
     みんな叶えたい願いがあって魔法少女になったんだよね?
     なのに絶望するしか無いなんて……あんまりだよ」

QB「その思いをEGに向けるんだ。EGはそれに答えてくれるよ」

ほむら(あの名称、本当に気に入ったんだ)

QB「キミの想いはそれを可能にする。
   それを実現する力になるんだ。さあ、まどかは何をしたい?」

まどか「わたしはみんなを救いたい。みんなを救える自分になりたい」

ほむら「ま、まどか……(大丈夫なの?)」

QB「そこで想うんだ。希望するだけじゃ駄目だよ。それを『する』と強く想って!」

まどか(わたしはみんなを助ける、わたしはみんなを救う!)ピカー

ほむら「!!」

QB「来たよ。感情のエネルギーだ。
   『それ』を実現する自分の姿を思い浮かべて。キミは変身できる」

まどか「あっ……!」

(変身シーン省略)

ほむら「まどか……」

まどか「できたよ! わたし魔法少女!」

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <なんとアッサリ……
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

QB「流石だよ。鹿目まどか。たった今発生した感情エネルギーは、
   変身のためのエネルギーを遥かに上回っている」

QB「すぐに使う予定が無いのならそのエネルギーは回収させてもらうよ。
   ソウルジェムと違って貯めておく場所が不安定だから放っておくと危険だ」

まどか「どうすればいいの?」

QB「変身を解いて、普段の自分に戻ったと想えば、エネルギーが解放されるはずだよ。
   あとはキミがエネルギー回収を許可してくれれば良い」

まどか「許可?」

QB「口でその意味の言葉を言えばいいんだ」

まどか「えーっと、変身を解いて、」(変身解ける

ほむら(……もの凄い圧力。これが感情エネルギー?)

まどか「『回収を許可します』……出来たのかな?」

QB「エネルギー回収は成功だ。凄いな。
   これは一般的な魔法少女一人分のエネルギー量に近い」

まどか「良く判んないけど、もしかして今わたし、
     これから魔法少女にされちゃうかもしれない女の子を一人救えたってこと?」

QB「まあ、そういう交換条件はないんだけど、あながち間違った考え方ではないよ。
   この地球でのエネルギー回収ノルマは決まっているからね」

ほむら「まどか。身体に異常は無い?」

まどか「うん。なんともないよ」

ほむら「そう。よかったわ」

まどか「うわ、授業始まってるよ」

ほむら(お陰で人に見られずに済んだわ)

ここまで

補足・考察

   ̄| / ̄   理論通りなら、これでまどかはリスク無しに何回でも
  (゚Д゚)/   相転移級のエネルギーを放出できることになってしまう
 _(ノ_)つ    EGの説明にある通りそれを自分の魔法にも使える
(__ノ /    ほぼ無尽蔵の魔力源
 UU      この点だけを見ればなんたるチート。
         こうなる理由は本編側の設定にある

本編側でデウス・エクス・マキナ(*)として用意されていたものを切り崩してしまった
>>1のせいと言えなくも無い

(*)伏線を張ってその登場を視聴者に期待させていた点で
  違うという論もあるが論議は他でやって

以上。

>そのうち慣れて来て煽り耐性つきそうだけど

まどか「煽り乙・・・送信っと」

Q B「まどかも大分慣れてきたね。次は自分でスレ立てしてみようか」

こうですね

放課後

学校の談話室

さやか「それで、話ってなに?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「!」

仁美「私ね、前から、さやかさんやまどかさんに秘密にしてきたことがあるんです」

さやか「え?」

仁美「ずっとまえから私、上条恭介君のことをお慕してましたの」

さやか「そうなんだ……」

さやか「あはは、まどかにしても、恭介のやつ最近もててるなぁ……」

>学校の談話室
違うな。ファーストフード?
よくわからないけど、それ的な所ってことで。

やっぱファーストフード的なところだった
他に客どころか店員もいないから思い違いしてた
シャフトめ

仁美「さやかさんは上条君とは幼馴染でしたよね」

さやか「うんまあ、腐れ縁というかなんというか」

仁美「本当にそれだけ?」

さやか「え?」

仁美「私、決めたんですの。もう自分に嘘はつかない、って。
    あなたはどうですか? 
    さやかさん、あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「何の話?」

仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。
    だから抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」

仁美「上条君のことを見つめていた時間は私よりさやかさんの方が上ですわ。
    もちろんまどかさんよりも。
    だから、あなたには誰よりも先を越す権利があるべきです」

さやか「仁美……」

仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します。丸一日だけお待ちしますわ。
    さやかさんは後悔なさらないよう決めてください。
    上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」

さやか「ちょ、ちょっとまって!」

仁美「なにかありまして?」

さやか「仁美が告白するのに、あたしを気にする必要はないから。
     それで恭介が付き合うというのならあたしは祝福する。
     あたしも仁美のこと大好きだし」

仁美「え、えっと? それで良いのですか?
    あなたが御自分の気持ちに嘘はついていませんか?」

さやか「嘘も何も。恭介が仁美を選ぶのならあたしは何もいう事は無いよ」

仁美「??」

仁美「ごめんなさい。私が思い違いをしていたのかしら。
    もしかしてさやかさんには他にお慕している方がいらっしゃるのでしょうか?」

さやか「いや、そういうのは特にいないんだけど」

仁美「ええと、では、さやかさんにとって上条君は『ただの幼馴染』で、
    それ以外は他の殿方と同じということですか?」

さやか「それは違う。恭介は特別」

仁美「……それでは、どうして私ならいいと思われるのですか?」

さやか「いや別に仁美じゃなくても、例えばまどかでも別に」

仁美「まどかさん……。最近上条君はよくまどかさんとお二人でお話されてますよね
     それを見てさやかさんはなんとも思われないのですか?」

さやか「え? いやあれはなんか微笑ましいよね。兄妹みたいで。
     流石に『一人で家に行く』って聞いた時は心配になったけど。主にまどかの方が」

仁美「理解できませんわ」

さやか「ごめん。あたしも仁美の判るように説明できないや」

仁美「なにか理解のヒントのようなものはありませんか?」

さやか「ヒント? うーん……」

仁美「……」

さやか「ええと、あたしはね……恭介の『力』なのよ」

仁美「??」

さやか「えーとほら。魔法使いに使役する妖精みたいな立場?」

仁美「ふざけないでください。さやかさんは私に真面目にお話しする気がありませんのですわね?」

さやか「真面目に話してるつもりなんだけどな……」

仁美「でないと私、告白も出来ませんわ」

さやか「もしかして、恭介に対するあたしの気持ちを言えばいいの?」

仁美「そう、それですわ!」

さやか「それなら、あたしは恭介の力になりたいと思っている。
     それは今恭介が背負い込んでいることに対しても、
     それ以外のあらゆる一切の面でも」

仁美「それは……」

さやか「恋愛もだよ。恭介がそれを望むのならあたしは全力で支援する。それだけの話なの」

さやか「ほら、恭介って怪我してバイオリン弾けなくなっちゃったじゃない。
     それであたしも悩んだんだ。どうしたら恭介を慰められるんだろうって。
     でもさ、会ってみたらバイオリンどころじゃないもっと大きな悩み抱えてるみたいで、
     どうしたら良いか判らなくなっちゃってさ」

さやか「ずいぶん悩んだけど結局、いくらあたしが悩んでもしょうがないんだって、
     そういうのって本人が解決するしかないって判っちゃって」

さやか「あたしが出来ることは、恭介がやりたい事を絶対否定しないで全力で支援することだって。
     それに気付いたら軽くなったっていうか。もう他はどうでも良くなっちゃって……」

仁美「……そうでしたか。よく判りましたわ」

さやか「いまので判ったの?」

仁美「どうやら戦う前から私の負けでしたようですわ」

さやか「え?」

仁美「でも告白はしてきます。私の恋をちゃんと終わらせなくてはなりませんから」

さやか「ちょっと、ちょっと。どうして終わっちゃうの?」

仁美「私のはただの恋愛。さやかさんのそれは『愛』ですわ」

さやか「あ、愛!?」

仁美「こうして口にするのは恥ずかしいのですけれど、
    私は上条君と恋愛をしたい。そう思ってます。我侭もいうでしょうし、きっと嫉妬もします。
    それでもそんな私を受け入れて欲しい。そう思いますわ。でもそれは言ってしまえば私のエゴ。
    さやかさんの『無償の愛』には到底及びませんわ」

さやか「むしょおって……どうしてそうなっちゃうの?
     あたしだって、恭介に、その、『好き』なんていわれたら嬉しいし、
     抱きしめて欲しいなんて、、思ったこともあー、あるわよ。
     でも、それとこれは別なのよ。仁美が諦める理由にはならないわ」

仁美「別と思えることが既に『余裕』なのですわ。
    さやかさんのそれは崇高すぎて私が対抗することさえ恐れ多い。
    見方を変えれば強力な武器。とても勝てる気がしませんわ」

さやか「あたしはべつに仁美と勝負する気なんて無いし、えーっと、
     じゃなくて、とりあえずそんな後ろ向きにならずにちゃんと告白してきなよ」

仁美「さやかさんは良いのですか? そういう気持ちもあると仰いましたよね?」

さやか「うん。あるけどそれより大事なことが今はあるから」

仁美「では、もし上条君がさやかさんと離れることを望んだらどうしますの?」

さやか「え?」

仁美「やりたいことを否定なさらないんですよね?」

さやか「仁美、意地悪だよ。そうしたら、あたし泣いちゃうかも……。
     でも本当に恭介がそれを望むんだったら、
     私にもそれが恭介のためになるって思えたら……」

仁美「……もういいですわ。信じてるのですわね」

さやか「え?」

仁美「上条君がそんなことは言わないって」

さやか「そうかも」

仁美「ふぅ……」

さやか「仁美、そのため息はなに?」

仁美「やはり私の決心は遅すぎたようですわ」

さやか「えーっと?」

仁美「さやかさん、判ってらっしゃるんでしょ?」

さやか「なにが?」

仁美「とぼけないでください。私の告白の結果です」キッ

さやか「あー……」

さやか「……うん。ごめん。
     あたし恭介がいま恋愛どころじゃないって知ってる。
     でも、別に結果判ってるからあんなこと言ったんじゃないんだよ?」

仁美「良いですわ。私に言われて初めて気付いたみたいですし」

さやか「本当ごめん。あたしって嫌なヤツだ」

仁美「ふふ。反省なさってください。でも告白はしてきますわ。
    さやかさんの言ったこと、確認してきませんと」

さやか「う、うん。頑張って、ってあたしがいったら嫌味だよね……」

仁美「もう、怒る気力も失せましたわ」

~~~~

仁美「上条恭介さん。私は以前からあなたのことをお慕いしておりました」

恭介「えっと……ごめん。今はそういうこと考えられなくて」

仁美「他に大切な方がいらっしゃるということですか?」

恭介「いやそういうんじゃなくて……」

仁美「では、恋愛以外にもっと大事なことがあるということでしょうか?」

恭介「そうなんだ。志筑さんが嫌いなわけじゃなくて。
    今は誰を好きとかそういうこと考えられないんだ。
    先送りとかそういうこともできない。
    未来に志筑さんの気持ちに答えることが出来るなんて約束も出来ない。
    だからごめん」

仁美「いいえ。ちゃんと答えてくださってありがとうございます」


こうして仁美は上条恭介に振られた。

とりあえず。ここまで。

仁美ちゃん振られる編は判り難いから飛ばそうと思ってたんだけど
折角書いたから投下してみた

魔法少女達のミーティング

恭介(少女)「他の魔法少女の協力は得られそうかい?」

マミ「QBに聞いて、近くの町の魔法少女には一通り声をかけてみたのだけれど、
   みんな、メリットが無いと動いてくれそうになかったわ」

恭介(少女)「佐倉さんは?」

杏子「あたしのツテってもそんなに無いんだけど、自分勝手なヤツばっかでね。
   マミと一緒だよ。
   何の得にもならないのに危険な魔女にわざわざ挑むかってさ」

恭介(少女)「収穫はゼロか」

マミ「やっぱり、このメンバーだけで頑張るしかないのかしら?」

ほむら「もともと当てにしてなかったわ」

恭介(少女)「いや、協力の見返りになるものが用意できそうなんだ」

杏子「なんだい? グリフシードを大量に用意できるのか?」

恭介(少女)「近いかな? ソウルジェムに装着して、魔法の容量を増す装置なんだ」

杏子「そんなものがあるのか!?」

恭介(少女)「いまQB達と共同研究しているものの副産物でね。
        ソウルジェムの汚れを一部吸い取って貯めておけるんだ。
        結果的に、魔法が使えるキャパシティが増える」

マミ「魔法少女の魔力のキャパシティは最初の願いで決まってしまうから、
   それを後から増やせるなんて、
   力の弱い魔法少女には計り知れない価値があるわね」

杏子「強くても欲しいだろ? つうか、あたしは欲しい」

恭介(少女)「もう少し実証試験が必要なんだ。あと少しで最終形に出来るんだけど」

杏子「あたしにもくれるんだよな?」

恭介(少女)「勿論だよ。戦力はいくらあっても足りない状況だからね」

マミ「じゃあ、それを見返りにもう一度声をかければいいのかしら?」

恭介(少女)「そうだね。それで今のうちから協力してくれる魔法少女が居たら、
        作戦も進めやすくなる」

マミ「立てるんじゃなくて進める? もう出来てるの?」

恭介(少女)「その話もしなければいけないね」

~~

恭介(少女)「これが計画の概要だよ」(地図のようなものを開く

ほむら「これは?」

恭介(少女)「全長二十キロメートル。巨大なパチンコさ」

さやか「ゴムで弾を飛ばすやつね」

杏子「はぁ?」

マミ「こんなものをいったいどうやって?」

ほむら「不可能よ」

恭介(少女)「だが、ここまでやらないと勝機はない」

杏子「ほむらの武装もイカれてると思ったけど、こいつは正真正銘、狂ってんぞ?」

ほむら「こんな巨大なものをどうやって建造するつもり?」

恭介(少女)「そりゃ魔法を使うしか無いだろう? そのための人材集めなんだ」

マミ「確かに魔法少女の中には物質練成の魔法をつかう子もいるわ。でも弾はどうする気?
   わざわざ投擲機を作るんだから一発限りってことはないわよね?」

マミ「それに、そもそもこれで飛ばせる弾をいくつも作れるくらいなら、
   その魔法を直接魔女にぶつけた方が効率が良いと思うのだけど」

杏子「そりゃそうだ」

恭介(少女)「いや、弾はこれだ」

さやか「これね」(図面もう一枚広げる

ほむら「え」
杏子「え」
マミ「え」




恭介(少女)「『ワルプルギスの夜』だよ」


ほむら「……」
マミ「」
杏子「……コイツぁ正気じゃねえ」(にやけてる

恭介(少女)「これでこの巨大な魔女を郊外に投げ飛ばすんだ。
        暁美さんの武器弾薬は魔女の誘導に使わせてもらう予定だ」

マミ「飛ばすだけでいいの?」

恭介(少女)「残念ながらここまでの物を作るだけの魔法を全て攻撃に使っても
        ワルプルギスの夜を倒し切るのは難しいそうだ」

恭介(少女)「だから、ワルプルギスの夜の性質を利用する」

マミ「性質?」

恭介(少女)「暁美さんの情報によると、
        ワルプルギスの夜が『終幕』に入ると高速で移動して周りを破壊し始める。
        その範囲は『終幕』が始まった瞬間に、
        魔女が居た場所の周囲数十キロメートルに対して機械的に行われるそうだ」

恭介(少女)「それが終われば魔女はどこかに去って、
       次は何十年先か何百年先になるか判らないが、それまでは現れないそうだ」

恭介(少女)「つまりそれまでに魔女を山間部や海上などに移動してしまえば、
        町の被害は避けることが出来る」

恭介(少女)「作戦は非常にシンプルだが、
        その規模ゆえにいろいろやらなければならないことが出てくる」

恭介(少女)「装置の建築はもちろんだが、
        魔女を確実に誘導する為のチームが必要だろうし、
        それまでに魔女やその使い魔の攻撃から装置を守る役も必要だ。
        あと使い魔たちから町を守る役割も必要。
        これだけ規模が大きくなれば救護班も必要かもしれない」

恭介(少女)「これをあと五日もない期間にやらなければならない。
        大変な計画だが僕の見積もりでは実現可能と踏んでいるんだ。
        君たちには中心になって働いてもらうことになるけど、
        やってくれるかな?」

マミ「やらなければ町が無くなってしまうのよね」

杏子「おもしれぇよ。とっとと人材集めな。なんでもやってやるよ!」

ほむら「私は……」

恭介(少女)「いや、向き不向きがあるだろうから、
        得意なところで率先して動いてくれればそれで良いよ。
        全体的な調整は僕とさやかが引き受けるから」

恭介(少女)「人材は例の『見返り』が完成したらQB達が話を通してくれるそうだから、
        早ければ明日にでも集まり始めると思う」

恭介(少女)「最初に君たちにお願いしたのは、先行して
        リーダー格で動いてくれる人が欲しかったからなんだ。
        時間が無いからね」

杏子「じゃあまずは人集めだな。もう一回行ってくるわ」

マミ「そうね私もそうするわ」

ここまで

ワルプル射出装置の名称が決まらねえ

やっぱワルプルギスの夜を飛ばして夜を払うんだから
夜明けの神とか太陽神あたりの名前とかどうだろう?曙の女神である「アウロラ(Aur?ra)」とか
(どこぞのサイトだと「オーロラ」と書いてあったりするけど)
日本の太陽神?だったら「天照大神」だけど

 ~~

恭介(少女)「さて」

さやか「恭(ゆき)は今日も可愛いなー」

恭介(少女)「嬉しくないよ」

さやか「いやいやご謙遜を。まどかに続いてあたしの嫁にしたいくらいよ」

恭介(少女)「冗談はそのくらいにして、今日の実験にさやかが必要なわけを説明するよ」

さやか「つれないわね。それで?」

QB「ボクから説明するよ。前回の実験で相転移の時のソウルジェムの破壊を精密に行うと、
   魂を肉体に戻した時、魂と一緒に絶望と呪いが肉体に入り込んで、
   肉体を破壊してしまうことが判ったんだ」

恭介(少女)「QB達にとってはいずれにしても死ぬんだから同じだという見解なんだけど、
        せっかく肉体に戻っても、絶望と呪いで苦悶しながらもう一回断末魔を迎えるなんて、
        人として見過ごせないだろ?」

さやか「そうね……(それで、恭はあんな顔してたのね)」

恭介(少女)「今回は魂が持っていく絶望と呪いのうちの呪いの部分を、
        補助装置を使ってそっちに引き受けてもらおうという実験なんだ」

さやか「その補助装置ってもしかして、
     このあいだ言ってたソウルジェムのキャパシティを増やす装置だったりする?」

恭介(少女)「そうだよ。良く判ったね」

さやか「うん。なんか呪いを引き受ける装置って聞いたら、なんとなくそうかなって」

恭介(少女)「基本的に汚れをプールしておく装置だから平時はその働きをする。
        『副産物』っていうのはそういう意味なんだ」

さやか「それであたしが必要なわけは?」

恭介(少女)「装置が引き受けた呪いがどうなるか判らない。
        基本のアイデアはちょっと前にさやかがやってくれた
        ソウルジェムの汚れの分離・具現化だから」

さやか「ああ、化け物が現れるかもしれないってこと?」

恭介(少女)「そう。QBの話では現れる筈だって」

QB「そうだよ。今回は現れた呪いの具現化のデータを取るのさ。
   それを処理する仕組みを考えるためにね」

さやか「この前みたいな騒ぎはごめんなんだけど」

QB「ある程度の対策はしてるから、あんなに酷くはならないよ」

さやか「そう? それならいいんだけど」

魔法少女C編、<経過略>になってたが、
今書く
今日は間に合わんかも知れんから
待たなくて良い

 ~~

魔法少女C「あなたたちが噂の死神?」

死の直前に、魔法少女の真実を伝えられる彼女の心境は如何なるものであろうか。
まだ数例しかなく、いずれも説明事態は比較的冷静に受け止めてくれたが、
これは偶々で、説明したことで絶望を促進してしまう恐れもあった。
だが、『きっちり説明した上で同意を得てから実験を行う』と決めていた。

彼女はまだ頑張れば生き残れそうにも見えたが、
QBによるともう後戻りできない段階にあるということだった。

魔法少女の運命とその対策の実験の献体になって欲しいことをQBと共に伝えた。

魔法少女C「魔法少女が魔女にね……。そういわれてすっきりしたわ。
       魔女がソウルジェムを浄化する物を落とすのってずっと違和感だったから」

『後戻りできない』と言われつつも、以前の例と比べ、
相転移が起きるまでにはかなり時間があった。

その間、恭介は聞かれるままに恭介の理論を説明した。

魔法少女C「なるほど、希望を持ち続けられなくなると絶望して終わるのね。
       いいわよ。抗ってやる。
       私は希望が潰えても絶望してあげない」

QB「それは無理だよ。前例が無い」

魔法少女C「前例が無いことと無理はイコールじゃないわ。
        私は抗うって決めたの。見てなさい」

恭介(少女)「……」

恭介は何もいえなかった。精神的に抗ってどうなるのか、
それが可能なのかどうか。何一つ確証が無かったからだ。

彼女の気質からか抗った結果なのか、相転移は比較的ゆっくり進行した。
しかしゆっくり進行するという事はそれだけ彼女は長く苦しむということだ。

~~

彼女のソウルジェムに装着された改良型のリングは、
前回同様、適切なタイミングでソウルジェムを破壊した。

そして、ソウルジェムにあった『呪い』が、そのリングの改良部分に吸収されて、
タイミングをずらしてリングごと破壊された。

ここまでは予定通りだったが、その次、魂が無事に肉体に戻ったのか確認したかったのだが、
それはすぐには出来なかった。

さやか「幽霊?」

リングの破壊後、そこから白っぽくて背の高い幽霊のような化け物が現れたからだ。

恭介(少女)「あの子が!」

その化け物は魔法少女Cを覆うような形で具現化していた。

さやかはすぐに攻撃を加えた。

さやか「くっ!」ズシャ!!

さやか「もう一撃!」ドカーン!

化け物は消滅して、そこには何か黒い小さな塊が落ちていた。

さやか「これ何?」

QB「呪いが集約されたものだね。グリフシードと似たようなものだ。
   これなら僕が浄化を引き受けられるよ」

魔法少女Cは前回のように激しく苦悶することなく、少しだけ生きていた。

化け物が消滅した後、駆け寄った恭介に『抗ったでしょ』とでも言いたげに目を合わせ、
直後にふっと気が抜けるように目を閉じ、そのまま息を引き取ってしまったのだ。


QB「これで、補助デバイスを形にできるよ。
   化け物の生成は前もって仕掛けを施しておけば何とかなりそうだ」

恭介(少女)「……そうか」

さやか「……」

以上

マミが声をかけた魔法少女の一人、魔法少女E。
彼女は魔法少女として一時期全国を放浪した経験があり、
“人材発掘係”として抜擢された。

魔法少女E「高さ五百メートルの建造物三つを実質あと三日で?」

恭介(少女)「そうだよ」

魔法少女E「とんでもない無茶振りするねえ」

マミ「でもそれが出来なければこの町を守れないのよ」

魔法少女E「物質練成系の魔法少女か……。ちょっと心当たりを当たってみるわ」

恭介(少女)「その子に出来そうなのかい?」

魔法少女E「一度会っただけだけど、最新技術に目がない子で、
       自作の『スーパーセラミックの武器』とかを他の魔法少女に売りつけてるのを見たわ」

マミ「魔法少女相手に商売を?」

魔法少女E「何人かでやってたと思う。私が会ったときは彼女も合わせて四人だったかな?」

恭介(少女)「来てくれそうかな?」

魔法少女E「とにかく行って話をしてみるわ」

という感じで
アルファベット名の魔法少女が沢山出てきます
キャラは基本的に元ネタなしだけど
たまに別作品から引っ張ってる
気に障ったらごめん

~~

彼女らは『急を要する』というこちらの要求に答えて、
長距離に関わらず最速で見滝原に来てくれた。

魔法少女H「Hよ。一応この子たちのリーダーやってます」

魔法少女M「どうも。初めましてMです」(関西なまり

魔法少女N「……Nです」

魔法少女Y「Yだじぇ」

魔法少女S「えっと、Sです」

五人だった。

恭介(少女)「で、話は聞いていると思うんだけど、
        建造チームとして働いてくれるってことでいいのかな?」

魔法少女H「ええ、そのつもりよ。一応魔法少女用の道具屋さんみたいなことしてるし。
        魔法を使った物作りはエキスパートだからね」

魔法少女H「私達はあなた達の『町を守る』という趣旨にも賛同してるわ」

恭介(少女)「ありがとう。それで、出来そうなのかい?」

魔法少女H「Y、どう?」

魔法少女Y「カーボンナノチューブの骨材にスーパーセラミック。魔力さえあれば出来ると思うんだじぇ」

魔法少女H「ああ、このYが、物質練成魔法の使い手よ」

魔法少女M「高さ五百メートルの建造物を四キロ離れて二つ。
       それを底辺に二十キロ離れた二等辺三角形の頂点にトリガ用建造物がもう一つ。
       その間を弾力のある帯で結んで巨大なパチンコを形成」(イントネーションが西の方

魔法少女M「要は巨大なカタパルトやね」

魔法少女N「どう考えても魔力が足りないと思うんですけど。
       建造にも、実際の稼動にも」

恭介(少女)「どのくらい足りない?」

魔法少女N「概算ですけど、期日までに建造するにはS(魔法少女S)クラスの魔法少女が
        最低二十人は居ないと」

魔法少女H「ちなみにSは私たちの中では最強よ」

魔法少女N「必要なのは他人に魔力を預けられるタイプの魔法少女です。
       つまりあまり特化した魔法の持ち主では駄目です」

恭介(少女)「わかった。それは何とかしよう。他に足りないものは?」

魔法少女H「あと、一般人に見えないように偽装すると思うんだけど、
       そのための魔力も必要でしょ?」

魔法少女N「あ、そうか。もしくは異空間で建設して完成後、定位置に出現させる?」

恭介(少女)「異空間なんて出来るのかい?」

魔法少女N「私達が大きな道具や家を作る時はいつもそうですよ。
        今回は現実空間ってことだったから……」

異空間作れるならワルプル異空間に追いこみゃよくね?

恭介(少女)「その方針の決定は確保できる魔力次第ってことかな?」

魔法少女N「そうですね。やりかたはいくつか考えられますので」

魔法少女N「あとSは、なにか思いつく?」

魔法少女S「こんな感じですよね」(魔法で地図の上にミニチュアを生成する

恭介(少女)「そうそう。んー、でもここがちょっと。帯はもっと太いイメージなんだけど」

魔法少女S「え? じゃあ支点の建物の強度が足りないんじゃないですか?」

恭介(少女)「うん、僕は専門家じゃないのでその辺の設計の詰めはお願いしたいんだけど」

魔法少女H「そのあたりは話聞きながら進めましょ。必要な性能とか」

恭介(少女)「そうだね」

恭介(少女)「ところで建材はゼロから?」

魔法少女M「いや、それは無理。土とか木とかから変成するんや」

恭介(少女)「なら二つの支点は郊外だから現地調達できるかな?」

魔法少女M「まあ、大丈夫やろ」

恭介(少女)「問題はトリガのところか。運搬係も必要かな」

魔法少女S「あの、バンドの構造ですけど」

恭介(少女)「うん?」

魔法少女S「ここをこうしたら……」

流石に“エキスパート”を名乗るだけのことはあって、
いきなり建造に必要な話になだれ込んでいった。

>>520
静止した物体を隠す用途にしか使えない代物というイメージ
異空間というより結界かな

恭介(少女)「それで、一番重要なことなんだけど、間に合いそうかい?」

魔法少女H「間に合わすわよ。私たちの意地にかけても」

恭介(少女)「その言葉が聞きたかった。一緒に頑張ろう」

魔法少女H「ええ」

~~

QBの呼びかけにより、
全国から魔法少女達が続々と集まっていく一方で、
報酬として与えられる補助デバイスが実は魔法少女を死に追いやる
『死神の鎌』であるという、当たらずしも遠からずな噂も流れだしていた。

実際、集まってきた魔法少女達には秘密だがあのデバイスは、
魔法少女のソウルジェムが濁り切った時、
彼女を魔女にせず最期を迎えさせるための装置だった。

結局、呪いを化け物にせずグリフシードのような性質を持つ小さな塊に還元することには
成功したものの、魔法少女が最期に抱える絶望はどうしようもなかった。

相転移を迎え、それまで彼女の生きる理由だった『魔法少女の希望』を失った魂は、
補助デバイスによって肉体に戻された後、
現在までのところ例外なく全員自ら命を手放してしまっていた。

それでも、準備期間中に魔法少女に魔女になられては作戦自体に支障が出かねないので、
この補助装置はその真の目的は伏せられたまま、協力する魔法少女達に与えられることになる。

ここまでで一旦切ります

やっぱ、もうちょっと投下します

~~

結局、建設用に必要な魔力は条件に合う魔力の持ち主が二十名も集まらなかった。
そこで取られた方策だが。

まどか「わたし、役に立てるの?」

ほむら「私は反対したいところなのだけれど……」

恭介(少女)「残念ながらもう選択肢が無い。上手く行けば工期も短縮できるかもしれないんだ」

さやか「まどかから話は聞いていたけど、実際この目で見るのは初めてだから楽しみだわ」

まどか「えーと、変身するだけでいいの?」

QB「まどかは魔力係数が桁違いに大きいから、それだけで膨大な魔力が発生するんだよ。
   正直、そのエネルギーはボクが回収したい所なんだけど、
   この計画が失敗するとボク達も大きな損失をこうむるからね」

~~
まどか「えーと、鹿目まどかです。初めまして」

魔法少女H「私がリーダのHよ」
魔法少女M「Mや。よろしくな」
魔法少女N「Nです」
魔法少女Y「Yだじぇ~」
魔法少女S「Sです」

魔法少女H「それで、この子一人で二十名分の魔力が出せるって本当なの?」

ほむら「私が説明するわ。一回見てるから。『そこにあるだけ』で圧力を生むくらいの魔力よ。
     危うく吹き飛ばされるところだったわ」

魔法少女H「いや、ちょっと待って。それってもし本当なら二十名どころの騒ぎじゃないでしょ?」

ほむら「判るの?」

魔法少女N「ありえません。『そういう性質』の魔法ならともかく、魔法そのものの作用でなく、
       余波だけで人一人吹き飛ばす程なんて」

魔法少女M「物作る時にな、魔力をSに出してもらうんやけど、
        全力で出しても余波はちょっと髪がなびく程度やね」

恭介(少女)「魔力を発生する構造が違うからね。
        普通魔法少女がソウルジェムに蓄えてる魔力を一気に全部開放するようなものだし」

魔法少女S「そんなことが出来るんですか?」

恭介(少女)「普通の魔法少女には不可能だよ。
        それで魔法少女生命を終わらせていいというなら話は別だけど」

魔法少女Y「能書きはいいんだじぇ。早くやってみせるんだじょ」

恭介(少女)「そうだね。じゃあ鹿目さん変身して見せられるかな?」

まどか「うん。やってみる」

まどか変身→変身を解いてエネルギー放出

魔法少女H「ちょっ」
魔法少女M「!?」
魔法少女N「なにこれ!?」
魔法少女Y「じょ~」
魔法少女S「うそっ……」

まどか「えっと、誰に預けたらいいのかな?」ゴゴゴゴ

魔法少女H「無理っ! 無理よっ!!」

魔法少女Y「やばいんだじょ~」

まどか「じゃあ、QBお願い」

QB「了解した」

結局、凄すぎて対応できず、その場のエネルギーはQBが回収した。

咲……いやなんでもない

>>534
いや脳内イメージはそれなので

まどか「えーっと?」

魔法少女S「」ズーン

魔法少女N「ああっ、Sさんが自信喪失してる」

魔法少女H「っていうか、Sって自負はあったんだ?」

魔法少女M「ほいほい、じゃあ、まどかちゃんの魔力使う為の準備始めるよ」

魔法少女Y「了解なんだじぇ~」

恭介(少女)「大丈夫かい?」

魔法少女H「ええ。心配には及ばないわ」

恭介(少女)「多すぎて扱いきれないなら、やり方を考えるけど」

魔法少女H「このままで平気よ。エキスパートを舐めないでちょうだい」

恭介(少女)「そうか、それで感触は?」

魔法少女H「これなら魔力確保が遅れた分補っておつりが来るわね」

恭介(少女)「それは良かった。じゃあ後は任せられるかな?」

魔法少女H「とりあえずは。何かあったらまた呼ぶわ」

恭介(少女)「じゃあ、よろしく。鹿目さんもいいかな?」

まどか「うん」

ここまでです

さやかは恭のボディーガードとして恭と一緒に現場を飛び回り、
杏子は使い魔遊撃隊のリーダーとして、
皆の連携やそれぞれのスキルを見るために、
攻撃メンバーを引き連れて近所の魔女狩りに出陣していた。

もちろんソリが合わなくていざこざを起こす魔法少女もいたりはしたがそこは、
調停役を買って出たほむらが駆けつけそれらを抑えこんでいた。

巴マミはベテランゆえ本番は一部隊のリーダーを務める予定だが、
建築中は救護や生活担当で性格の合う魔法少女を数人巻き込んで、
住居の調達や食事の世話などに奔走していた。

またレスタイ間違えたorz

~~
郊外の建築現場にある事務所兼休憩所。
とはいっても、何処から見ても畑や休耕地に囲まれた掘っ立て小屋にしか見えないのだが。

まどか「あ、さやかちゃん」

さやか「頑張ってる?」

まどか「恭ちゃんといなくていいの?」

さやか「いや、恭は攻撃隊のチーム分けで会議中。
     あたしはこっちの支援に呼ばれたんだけど、まどかは休憩?」

まどか「うん。魔力が多すぎるんだって。一回出すとしばらくやることが無いの」

さやか「凄まじいわね。まあとにかく現場に行きたいんだけど……」

まどか「?」

さやか「現場ってどこ行っちゃったの?
     昨日までは外で色々やってた気がするんだけど」

まどか「ああ。あっち」

と、まどかは奥のドアを指差す。

さやか「って?」

まどか「なんか魔力が余ってるから大きな空間が作れたんだって」

さやか「空間? もしかして結界みたいなもの?」

まどか「そう。そこのドアが入り口になってるから」

さやか「そ、そう。じゃあ行って来るわ」

まどか「いってらっしゃい」

~~

さやかがドアを開けるとそこは、蒼天の空高く――

さやか「なんじゃこりゃー」

魔法少女S「さやかさん、お待ちしてました」

さやか「あ、Sさん……」

魔法少女S「ここに来るのは初めてでしたっけ?」

さやか「う、うん。なにこれ」

魔法少女S「まどかさんの魔力すごいですよ。
       高さ五百メートルの装置が丸ごと入っちゃう空間が作れたんですから」

そこは絵に描いたような快晴の空に、広大な地平。
そしてそこに白くそびえたつ建設中の塔。間近に一つ。
離れてもう一つ。そしてはるか遠く二十キロ先にもう一つ。

さやか「うそ……」

無駄に広大に見えるが、
実際空間があるのはまだ三つの建造物分で他の風景は仮想空間なんだそうだ。

さやか「それで、なんであたし? まどかじゃ駄目なの?」

魔法少女S「まどかさんだと小回りが効かないんです。
        どうしても魔力の強い人が二人で作業しないと上手く行かないところがありまして、
        私とバランスの取れる魔力の人ってさやかさんだけなんです」

さやか「あたしで出来るのかな?」

魔法少女S「作業自体はそんな難しいものじゃありませんから」

ここまで
月曜なんで

魔法少女Cと友達だった魔法少女F。
彼女は恭介がCを殺したと誤解していた。

ほむら「説明したはずよ」

魔法少女F「納得できるかよ!」

ほむら「でも事実だわ。QBにも聞いたのでしょう?」

魔法少女F「ああ聞いたよ。エネルギー回収だの相転移だの。
       そんなことどうでも良い。Cは死んだんだ」

ほむら「つまり八つ当たりなのね」

魔法少女F「くっ……」

ほむら「協力する気が無いなら帰りなさい。
     こんな所であなたに魔女になられたら、
     戦力が無駄になるわ」

魔法少女F「ふん。帰ってやるよ。じゃあな!」

だが、魔法少女Fは恭を襲った。

さやかが建設チームの方へ支援に行ってる時、恭が一人になる時を狙って、
仲間を何人か引き連れた魔法少女Fが恭を取り囲んだのだ。

魔法少女F「おまえ『死神』なんだってな?」

魔法少女G「弱った魔法少女を実験台にして殺しまくってるそうじゃない」

魔法少女I「そもそもソウルジェムが濁りきったら魔女になるなんて
       あなたの都合でついた嘘じゃないの?」

魔法少女J「……」

作戦の為に集まってくれた魔法少女達の一部には
例のリングの詳細な説明と共にそこまでの真実を話していた。

恭介(少女)「真実だよ」

魔法少女I「てきとう言わないでよね! 証拠も無いくせに」

恭介(少女)「証拠を見せるという事は、魔法少女の最期を見届けるということだ」

魔法少女J「……ならば見届けたらいい」

魔法少女F「!」
魔法少女G「!」
魔法少女I「!」

恭介(少女)「それは!?」

魔法少女Jの見せたソウルジェムは濁りきっていた。
しかも報酬のリングは付けていない。

魔法少女J「」。ピキッ

魔法少女Jは魔女になった。

誰も彼女のことを知らなかった。
彼女は仲間もなく、一人でさ迷うように見滝原にやってきていたのだ。

どういうつもりで魔法少女Fと共に恭を襲いに来たのか、
今となっては知る術も無い。

魔法少女F「嘘だろ!?」
魔法少女G「グリフシードになったわ……」
魔法少女I「そんな……」

恭介(少女)「くっ、結界に巻き込まれた……」

決定的瞬間を目撃した後、四人は相転移の暴風に吹き飛ばされ、
出来たばかりの結界の中で散り散りにされてしまった。

恭介は魔女本体の近くにいた。

仁美「上条君!」

恭介(少女)「志筑さん!? どうして君が?」

仁美「上条君と一緒にさやかさんや、暁美さん、まどかさんまでもが
    私の知らない世界に行ってしまう。
    それが、どうしても我慢ならなかったのですわ」

志筑仁美は少し前から、魔法少女達に紛れてこの建築現場に潜入していたのだ。
彼女は恭介をひそかに追いかけていて、彼が恭(ゆき)であることも結構前から知っていた。
そんな彼女が恭介のピンチに現れたのはもちろん偶然ではない。

恭介(少女)「一体どうやって……」

仁美「無作法を承知で、まどかさんのこれを拝借させていただきました」

志筑仁美の額に変形したEGが輝いていた。
そう、志筑仁美は魔法少女?に変身していたのだ。

志筑仁美は見事に魔女を倒した。

だが、彼女は結界が消えた後に気を失って倒れていた。

外傷はなかったが、何かあってはいけないので、
恭介は彼女を病院へ運んだ。
(急いで建設空間の外に運んだ後、救急車を呼んだ)

そして、彼女が目を覚ました時、彼女は『その記憶』を失っていた。

仁美「あら、同じクラスの上条君じゃありませんか」

恭介「志筑さん……」

仁美「私、どうしてここに居るのか思い出せませんの。
    上条君は何かご存知ありませんか?」

失ったのは、上条恭介への恋心とそれに関連する記憶だった。

すまん、>>561の前にこれ
-----------------------

仁美「これで、さやかさんと同じところに来れましたわ。今助けて差し上げますから」

恭介(少女)「やめるんだ! 君には無理だ!」

EGによる変身では仁美に魔法少女の才能があったとしても、
恭介程度の力しか発揮できない筈だった。

仁美「いいえ。ここまで来た以上、引き下がれませんわ。
    それに、私なりにこのシステムは勉強させていただきましたの。
    私の恋は上条君の命を守るために役立てますわ」

恭介(少女)「志筑さん!」

仁美「あれが魔女ですのね」シャキーン!

恭介(少女)「!!」

大きな薙刀のような武器を出し、仁美は魔女に向かって飛び出していった。

恭介(少女)(何でそんなに力が出せるんだ?)

志筑仁美は見事に魔女を倒した。

だが、彼女は結界が消えた後に気を失って倒れていた。

外傷はなかったが、何かあってはいけないので、
恭介は彼女を病院へ運んだ。
(急いで建設空間の外に運んだ後、救急車を呼んだ)

そして、彼女が目を覚ました時、彼女は『その記憶』を失っていた。

仁美「あら、同じクラスの上条君じゃありませんか」

恭介「志筑さん……」

仁美「私、どうしてここに居るのか思い出せませんの。
    上条君は何かご存知ありませんか?」

失ったのは、上条恭介への恋心とそれに関連する記憶だった。

QB「感情をエネルギーに変えてそれを使ったんだから、
   無くなって当然じゃないか。
   それの何処に問題があるんだい?」

つまり、副作用も何も、魔力を生じさせるシステム自体が『そういうもの』だったということだ。

それが『一時的』だろうが『大切な』であろうが関係なく『感情』をエネルギーに変える。
それがこのシステムだ。

SGは『一つの感情』に特化して、それを機械的に維持し続けるので、
魔法少女であり続ける限りその感情が消えることは無い。
だが、EGは感情を限定しない代わりに維持もしないので、感情を使い切ってしまうのだ。

恭介のように小出しにしていればおそらく問題は無い。
何度でも生じる一時的な小さな感情しか利用して無いからだ。
だが、『想いの全てを込めて』みたいなことをするとこのような事態になるらしい。

どうやら志筑仁美はこうなることが判っていたようだった。

志筑仁美の顛末を聞いた鹿目まどかは責任を感じていた。

まどか「わたしが仁美ちゃんに渡しちゃったから……」

恭介「いや、君は奪われた訳だからそんなに責任を感じちゃいけないよ」

まどか「でも、あんなことになっちゃうなんて……」

恭介「志筑さんは密かに僕たちがやっていることの情報を集めていたみたいなんだ。
    EGについても彼女は半ば判っててあんなことをしたみたいだし……」

自己責任といってしまえばそれまでだが、慕われ、命を助けられた恭介としては、
内心複雑であった。

恭介「とにかく、君も使い方には気をつけてくれ」

まどか「うん。判ったよ」

この事件で、魔法少女は最期に魔女に生まれ変わるという真実が、
見滝原に集結した魔法少女の間に『噂』という形で広まっていった。

ここまで

痛恨の投下ミス
ごめんね緑の人!

郊外の建設現場で。

さやか「マミさんが?」

杏子「なんか、錯乱して暴れてるってんで、あたしらが呼ばれたんだけど」

ほむら「……誰か話したのね」

これは予想された事態だった。

恭介(少女)「現場側の休憩用の小屋に立て篭もってるんだけど、
        狙い撃ちされるから誰も近づけないんだ」

さやか「えっと被害は?」(現場手伝いで恭と別行動してた)

恭介(少女)「数人負傷したみたいだけど軽傷だ。人的被害はそれだけだよ」

ほむら「いいわ。私が行く」

恭介(少女)「大丈夫かい?」

ほむら「ええ。彼女のことは良く知っているから」

杏子「あのマミだぞ。やばくないか?」

ほむら「心配には及ばないわ。
     じゃあ、美樹さんと佐倉さんは周りの人払いをお願い。
     狙撃されるかもしれないから見物してる人にも注意しておいて」

さやか「え」

杏子「おい」

さやか「『さん』付けで呼ばれたわ。今までフルネームで呼び捨てだったのに」

杏子「あんなヤツだったか?」

ほむら(心境の変化? いいえただの気まぐれね)

ほむらは死角になる物陰に沿ってマミの立て篭もる小屋に近づいていた。

途中でもう八割方形になっている建造物を見上げた。
真っ青な仮想空間の空に真っ白な巨大建造物。もの凄い風景だ。

ほむら(それにしても、こんな規模でワルプルギスの夜に対抗するのは初めて)

ほむら(大勢の魔法少女が集結している)

ほむら(私と同じ『ワルプルギスの夜を倒す』という目的に向かって)

ほむら(今までは一人だ戦ってきたけれど、今は違う)

ほむら(目標を共にする仲間が居ることが、こんなにも充実した気分になれるなんて)

ほむら(まどかは当面契約する心配は無いのだし)

ほむら(いままでこんなことは無かった)

ほむら(この作戦はきっと上手くいくわ)

ほむら(もう、何もこ……)

マミ「みんな死ぬしかないじゃない!!」

ほむら(巴マミ……。まずはこっちか)

決意を込めてほむらは盾の収納空間から小さなものを幾つか取り出した。

とりあえず、ここまで

少ないですが

近づけば確実に命を狙ってくる。
下手に刺激すれば衝動的に自殺しかねない。

そんなマミに対して、ほむらは時間を止めてから小屋に侵入した。

工事現場の飯場とはいっても利用するのは少女達であり、
小屋の中は、フロア一面に絨毯が敷いてあり、生活班の見立てのよるカラフルなクッションやら、
小洒落れた小さなテーブルなども置いてあって、
食事以外に、横になるも良し、座り込んで雑談するも良しと、小奇麗な多目的スペースになっていた。

そんな空間の中にあって巴マミは一人でクッションを抱えて座り込み、
ぶつぶつと何か呟いていた。

ほむらは、彼女の背後に接近し、
時を動かしてから背中から覆いかぶさるようにして、

ほむら「巴先輩」

そう言って抱きしめた。

マミ「ふぇ? だ、だれ!?」

ほむら「私です。暁美ほむらです」

マミ「暁美……さん?」

赤い縁の眼鏡。二つの三つ編みを縛る紫のリボン。
それを見て巴マミが当惑している。

ほむら「……これは初めてあなたに会った時の姿です」

マミ「え?」

ほむら「あの時、あなたは私に優しくしてくれた。戦い方を教えてくれたわ」

マミ「そんなこと知らない……」

ほむら「ええ。あれは私とあなたの今とは違う可能性の一つだから」

マミ「何を、言っているの?」

ほむら「判らなくてもいい。でも私はあなたに感謝しているのよ」

ほむら「例え今のあなたがそうでないとしても。
     沢山のあなたが私に仇なしたとしても、あなたが巴マミであることには変わり無い。
     私はあなたを信じたいの」

マミ「暁美さん?」

ほむら「あなたは乗り越えられるって、真実を受け止められるって……」

マミ「あなた、泣いて……」

ほむら「私を諦めさせないで。もう大丈夫よって笑ってよ」

ほむら「こんな巴先輩はもう見たくないの……」

ほむら「……お願いだから『やっぱりあの時の巴先輩だ』って思わせて」

いつしか涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。

マミの手がほむらの顔に触れた。

ほむら「うっく……」

マミ「……暁美さん」

マミの願いは「たすけて」だから魔女化を含めた自分に対する危害に対する耐性が高くなっているのだろ。体が抜け殻だと知っていればシャルロットにマミられても死ぬ事はなかったのじゃないかな。マミって死んだのはショックかSGを噛み砕かれたからと妄想している。
高い攻撃翌力も危機回避(外敵の排除)と考えれば説明が付くと思う。

ほむら「……恭(ゆき)が……魔女にならない方法を見つけました」

マミ「え?」

ほむら「少なくとも、ソウルジェムが濁りきるまえに自殺する必要は無いんです」

マミ「どういうことなの?」

ほむら「……そのリング」

マミ「え? このソウルジェムに付けてる?」

ほむら「浄化し切れなくなって魔女になりそうになった時、それがソウルジェムを砕いてくれます」

マミ「……これって、そんな物だったの?」

ほむら「恭はその時、魔法少女を人間に戻したいみたいですけど、まだ上手く行かなくて」

マミ「人間に戻す!? そんなことが出来るの?」

ほむら「……魂を肉体に戻すとすぐに死んでしまう。でも、もうそこまでは出来ているって」

マミ「……」

ほむら「……」(抱きついたまま

マミ「……それを教えに来てくれたの?」

ほむら「」コクリ

マミ「そうやって、魔法少女の運命と戦っていたのね……なのに私は……」

ほむらはマミから離れ、眼鏡を取り、三つ編みを解いた。

ほむら「」髪バサッ

ほむら「……もう、大丈夫そうね」

マミ「え」

ほむら「手間をかけさせないで。あなたはコアメンバーなんだからしっかりしてもらわないと」

マミ「……あの、……ごめんなさい」

ほむら「時間が無いのよ。早く復帰して」

マミ「あと、ありがとう」

ほむら「感謝されるようなことはしてないわ」

マミ「ううん。私の為に泣いてくれた」

ほむら「ただの演技よ」

マミ「」(抱きしめっ

ほむら「何をするの」(マミの胸に顔をうずめてる

マミ「そんな泣き顔で説得力が無いわ」

マミ「『違う可能性』というのはあなたの魔法なのかしら?」

ほむら「……」

マミ「私はもう大丈夫よ。
   あなたの知っている私にはなれないかもしれないけれど」

巴マミの手がほむらの頭を撫でる。

マミ「あなたを泣き止ませる位にはなれるかしら?」

ほむら「……うん……もう少しで……」

ここまで

乙です。

マミは豆腐メンタルとか言われているけど、本当に豆腐だったら即魔女化しているな。
アレは一時的な錯乱だったけど、高い戦闘技能で一時的な錯乱が洒落じゃ済まなかっただけ?
無意識に一番手強い杏子を奇襲で潰し、基本的に銃、爆弾で戦うので攻撃が読み難く魔女化したとは言えさやかを殺った思い切りがあり持久戦に持ち込まれたら厄介なほむほむを拘束、危険度が低いまどかは後回しと効率的な作戦を選択していたのか。どれだけ経験豊富なんだよマミさん・・・

おまけ
-------------------------------------------
顛末を言えば、巴マミを煽った人物がいたそうだ。
彼女にとって過酷な真実とはいえ、近しい人が目の前で魔女なったとか、
それを判ってて殺さなければならなかったとかではない。

たとえそれを真実と確信したとしても、又聞きの噂から徐々にであれば、
立場を忘れるほど錯乱することもなかっただろう。

そのマミを煽った彼女もまた真実にショックを受けていた。

そして同胞殺しの罪悪感から自虐的になり、
更に罪悪感に絶え切れず、自分を責める代わりに噂を執拗に否定していた巴マミを、
『あなたも同胞殺しだ』と責めたてたのだった。

だから、
『同胞殺し』が事実とはいえ、もはや自ら魔女になることはないと伝え、
立場を思い出させることが出来れば、巴マミは安定するだろうと、
ほむらは踏んでいたのだ。

勢い余って少々恥ずかしいことになってしまったが、
あれは心の奥底でいつか巴マミに伝えたいと思っていたことでもあった。

以上

ワルプルギスの夜が現れる日がやってきた。
既に見滝原の天空には大きな天災の予兆が現れて、住民達の避難所への退避が始まっていた。

準備は万全。

出現一時間前には、魔力の分布からワルプルギスの夜の出現ポイントを特定し、
先鋒で攻撃を仕掛ける暁美ほむらは既にスタンバイしていた。

事前にいくつもの出現パターンに対応した武器の配置を検討してあり、
彼女はどのパターンでも瞬時に展開できた。


そして、今回の主役、
いつでもその鉄槌を魔女に叩きつけられる状態に調整された
  ア ル バ ・ ソ ー ル
『闇を払う鉄槌の神』と名付けられた巨大な装置は
現実世界からは不可視の状態でその出番を待っている。

    ゼピュロス
その西側の塔には佐倉杏子が率いる遊撃隊が控え、
エ ウ ロ ス
東側の塔には巴マミが率いる隊が待機していた。
そして暁美ほむらの位置から比較的近い所、巨大な鉄槌のトリガー部には
美樹さやかを中心として数人のパワータイプの魔法少女が
魔女の誘導補助兼使い魔撃退部隊として待機している。

ちなみにその巨大すぎる装置やその各部位に一々大仰な名前を付けたのは巴マミである。

そんな様子をある場所から眺める二つの目があった。

QB「正直キミ達がここまでやるとは思わなかったよ。
   今回の魔力の応用による機械の製造はまだまだ原始的だけど、
   ボク達の科学に通じるものがある」

QB「ボクは上条恭介の生命保全を優先事項にしてはいたが、
   ワルプルギスの夜を撃退すると聞いて、キミという個体は諦めていたんだ」

QB「だがこの作戦は良い結果を残すだろう」


やがて巨大な魔女がその姿を現し、
今回集まった沢山の魔法少女達の見守る中で暁美ほむらの激しい攻撃が始まった。

彼女だけでそれを倒さんばかりの猛攻は、『夜』を巨大な鉄槌の元に誘う為だけにあった。

やがて暁美ほむらの攻撃の最後を飾る凶悪な数の指向性地雷が爆炎を上げた。

と同時に、『夜』と呼ばれた大魔女の、大きさだけならその規模をはるかに上回る
『夜』に対抗するためだけに作られたその装置の馬鹿げた全容が、初めて現実世界に晒された。

『全面戦争』、そう形容して良いだろう。
暁美ほむらの攻撃終了と同時に、『夜』から湧き出した使い魔達や、
ワルプルギスの夜自身と、今回、作戦に集った魔法少女達との攻防は、
それほど激しいものだった。


QB「この短期間でここまでの準備が出来たのは、
   暁美ほむらというイレギュラーによる予知と鹿目まどかという非凡な才能の存在が不可欠だった。
   それにボクのアドバイスとデバイスの提供もあったわけだけど、それを差し引いてもだ、」

QB「ボク達と違って個々が違った感情を持ち、
   論理性においては未熟といわざるを得ない人類であるキミ達が
   魔法少女達の魔力を応用してここまでのことが出来たというこの事実に
   ボク達は驚嘆せざるをえないよ」

QB「人類にとってはまだしばらく、願いを叶え、魔法少女になってもらうという関係が続くだろう。
   だが、そんなボク達と人類の関係は確実に変化する」

     ソールハンマー
それを『神の鉄槌』と呼ぶのはもしかしたら恐れ多いのかも知れない。


QB「それがいつになるかは判らないが、近い将来、もちろんそれはボク達の時間尺度でだが、
   人類はボク達の助け無しにこのエネルギーを利用できるようになるだろう。
   その時は逆にボク達がキミ達人類から色々教わるようになるかもしれないね」

QB「今回の君たちの働きを見てて、そんな予感がするんだ」

QB「そんな日が来ることがボクは楽しみでならないよ。
   ああ、これが『感情』というものなんだね……」


現実世界で災害級の被害をもたらすその巨大は魔女を退ける為の一撃が、
今回の作戦の総指揮者である上条恭介、いや魔法少女恭(ゆき)と呼んだほうが良いだろう。
彼女(彼)の命によって発動された――。


その顛末を見届けるQBの顔には、どこか満足げな表情が浮かんでいた。


<<まさかのQBエンド>>



なにこの打ち切りEND




と、思うだろうけど元々廃棄物だったのがよくぞここまで育ったものだと

杏子「ちくしょう! あいつ横になって地面に張り付きやがった!」

さやか「ああ、町が!」

ワルプルギスの夜はその身体を九十度回転し、その巨大な『歯車』は轟音を響かせながら、
まるで玩具の箱庭を壊すように住宅地を数キロも削っていた。

恭介(少女)「勢いが削がれてる! 押し切れないか!」

魔法少女H『今やってる! S!』

魔法少女S『手一杯です! 今から魔力足してももう……』

魔法少女M『アカン、止まってまう!』



<<廃棄物別ルート ~終わらねえ戯曲~>>

終わらねえ…

全てを戯曲に変える魔女。
『ワルプルギスの夜』は、この時のために集合した多数の魔法少女達の努力をあざ笑うかのように
いとも簡単に『鉄槌の神』に抗って見せた。

彼女のしたことは非常に単純である。ただ『横』になって『歯車』を地面にめり込ませたのだ。
あとは装置のバネに抗うように『回転』するだけ。

もちろん、魔女の抵抗を予測していなかったわけではない。
だが、空中に浮いているのが基本と思われたこの魔女が、
このようなある意味『なりふり構わぬ抵抗』をするとは予想だにしていなかった。

強大な射出装置が二十キロメートルに渡って加速し、
郊外の山間部まで彼女を投げ飛ばすはずだった加速度のベクトルを、
『夜』と呼ばれた魔女は、双子の巨大建造物、
西の塔と東の塔の丁度中間を過ぎたあたりで完全に殺し切った。


あまりに予想外の事態に唖然と魔法少女達が見守る中、『夜』は活動を開始した。

それは、与えられた打撃に呼応した猛攻だった。

魔法少女達の攻撃部隊が既に倒した数を更に上回る使い魔達が現われて、
空からは大きな建物の残骸のような物が降り注ぎ、
更に狂喜したように激しく高笑いを響かせて『夜』自身が、西の塔に体当たりした。
既に魔力をかなり消耗した塔の守備隊はなす術もなく逃げ回るのが精一杯だった。

使い魔達の攻撃を受けながらも、装置はなんとか異空間に退避することに成功した。
だが、『夜』に体当たりされた西の塔をはじめ、損傷が激しかった。

恭(ゆき)は装置の再起動の為に奔走していた。

恭介(少女)「稼動できる所まで修復、いけるかい?」

魔法少女M「『西』だけ手加えれば何とか!」

恭介(少女)「鹿目さんが行った方がいいかな?」

魔法少女M「いや、まどかちゃんはバンドの魔力の再充填や。HがSと行ってる筈やから!」

恭介(少女)「わかった。そっちに行かせるよ」

装置の修復を急ぐ一方で、作戦も大急ぎで見直された。

まず、魔女を、ポイントまで誘導する。
方法の案として挙がっているのは全員で魔女を拘束する網を形成して引きずっていくというものである。
というのは、攻撃を加えて弱らせようとしても、加えた攻撃の強さに応じて反撃をして来て、
全然弱まる気配が無くむしろ逆効果だったからだ。

そして、魔女を拘束したまま装置を稼動し、今度は魔女と一緒に魔法少女達も飛ばされながら、
あらゆる手を尽くして魔女が地面にしがみ付くのを防ぐ。

だいたいこんな作戦である。

これらを今現在動ける魔法少女全員で行うのだ。

準備期間に攻撃隊メンバーで遠征までして出来る限りのグリフシード集めは行ってきたが、
攻撃隊のかなりの数の魔法少女が戦闘不能に陥り、手駒はかなり減らされていた。

だが幸いなことに、誘導補助隊の美樹さやかを初めとするパワータイプの魔法少女達は
まだ十分魔力を温存していた。

まだまだ諦める段階ではない。

西の塔にて

魔法少女M「さて、修復するよ」

魔法少女Y「Mっち、魔力源がないじょ」

魔法少女M「あるで。それも新開発や」

魔法少女Y「見当たらないんだじょ?」

魔法少女M「ここや」

魔法少女Y「Mっち?」

魔法少女M「ウチな、まどかちゃん見てて判ったんや。
       ほらQBがエネルギー持っててまういうてたやん」

魔法少女Y「感情エネルギーの回収?」
                             ヤ
魔法少女M「そうそれ。その普通は魔法少女を止めるまで使われへんエネルギーを、
        ソウルジェムから引き出すんや」

魔法少女Y「よく判らないけど、これ直すに足りる魔力なら何でもいいんだじょ」

魔法少女M「じゃ、しっかり準備したってな。
        ウチが魔法少女になってからずっと蓄えてきた魔力なんだから無駄にしたら怒るで」

魔法少女Y「了解なんだじょ。余すとこなく使い切るから安心するんだじょ」

魔法少女M「よしよし」

魔法少女Mの方言が所属不明なのは仕様です

バンドの魔力充填をしてたH、Sとまどか

魔法少女H「……」

まどか「Hさん、どうかしたんですか?」

魔法少女H「いえ、ちょっと」

魔法少女S「今のところ再充填は問題ありませんよ。
       今度は稼動直前まで待機して稼動と同時にオーバーロードさせますから、
       ずっと張り付いていなければなりませんが」

魔法少女H「S、ここ任せていいかな?」

魔法少女S「はい。先輩は何処かへ行かれるんですか?」

魔法少女H「ちょっとMのとこ見てくるわ」

魔法少女S「?」

魔法少女H「まさかと思うけど、ちょっと気になることがあるから」

魔法少女Hの移動中に恭(ゆき)が遭遇。

恭介(少女)「なにかあったのかい?」

魔法少女H「ああ、丁度良かった。聞きたいんだけど、西の塔の修理に誰か魔力補充に行ってる?」

恭介(少女)「いや、Mさんの話では予備の建材と自分の魔力で十分って話だったから」

魔法少女H「やっぱり」(走る去ろうとする

恭介(少女)「あ、ちょっと。なにがあったのか?」

魔法少女H「予備の建材があってもMの魔力で修復なんて出来るわけないわ。あの子何を考えてるの」

恭介(少女)「それで様子を見に?」

魔法少女H「でもMが出来ないことを出来るなんて言う筈がない。そういう子なのよ。
        なにか方法があるからそう言ったんだと思うんだけど、嫌な予感がするの」

恭(ゆき)は魔法少女Hに同行した。

再び西の塔

魔法少女H「どういうこと!? Mの魔力がこんなに強いはずが……。
       まるで、まどかちゃんみたいじゃない!?」

恭(ゆき)「相転移?……こんなことが……」

魔法少女Mは、彼女らの作った魔力伝動装置に魔力を注いでいる最中だった。

変身は解けている。
本人に聞かない事には詳細は不明だが、まどかが行ったことを真似ているようだった。
つまるところ、ソウルジェムに蓄えられていたエネルギーを開放しているのだ。

だが、こんな事をすれば、当然……。

魔法少女H「M! やめっ……」

恭(ゆき)「駄目だ! 今止めるのはまずい!」

やがて魔力の放出が終わり、彼女が掲げていたソウルジェムに異変が起きた。
補助リングが相転移を検出したのだ。

まず、ソウルジェムが砕け、破片が塵となって消えていく。
その砕けると同時進行でリングが小爆発を起こして結構な量の爆煙を上げ、
その煙の中から小さな四角い破片のようなものが落ちる。

この小爆発は呪いが化け物と化するまえに物理的にそれを破壊・拡散する効果を持つ。
そして残った呪いの成分がリングが変形したもの、つまり四角い破片に吸収されるのだ。
この破片はグリフシードのような性質をもつのだが……。

魔法少女Mは小爆発とともに崩れ落ち、床に倒れこんだ。

魔法少女H「M!」

魔法少女Y「Mっち! 聞いてないじょっ!」

恭(ゆき)「君は塔の修復を! 彼女の魔力を無駄にしてはいけない!」

魔法少女Y「ううっ……判ったじょ」

HがMを抱き起こす。

魔法少女H「Mっ! あんたなんでこんな馬鹿なこと……」

魔法少女M「ああ、Hか。ちょっと検証したくてな」

恭(ゆき)「!! 話が出来るのか!?」

魔法少女M「っ、ちょいきついな」

魔法少女H「Mっ、M! 嫌よ! 死なないで!」

魔法少女M「あー……。しんどいけど簡単には死なへんで。
       ウチの願い事はウチの全部やないからな」

恭(ゆき)「それって……!?」

魔法少女M「ちょっい恭ちゃん、QB呼んでくれへん? なんや魂が落ち着きないみたいでな。
        逝ってまいそうなんや」

QB「なかなか興味深いケースだね。君の絶望は君の全てを飲み込まなかったようだ」

魔法少女M「おお、QBおったんか。これ何とかできへん?」

QB「ちょっと待ってくれるかい……」

何をしたのか判らないが、QBが魔法少女Mに近づくと、彼女は眠るように意識を失った。

魔法少女H「Mーーーっ!」

恭介(少女)「……」

恭はMの脈を確認した。

恭介(少女)「……生きてるよ。脈も安定している」

魔法少女H「え? 本当?」

QB「心配要らないよ。彼女は安定した。面白いデータが取れたね」

恭介(少女)「うん、……そうだね」


魔法少女Mは魔法少女でなくなった。恭の知る限り初めてのケースだ。

QB「ただ、エネルギーは回収できなかったし、あまりこんなことはして欲しくないんだけど」

恭介(少女)「彼女がしたことと、彼女が生き残ったことは関係があるのかい?」

QB「確かなことはいえないよ。
   彼女は生きているから、何をしたのか君があとで詳しく聞いてみると良い。
   感情に関することは君が聞いた方がよく分析できるだろうしね。
   ただ、今回のことは彼女の願い事と彼女の精神的特質が大きく関係していることは確かだと思うよ」

だが、彼女は何も覚えてなかった。

これはもう少し後にあった会話であるが、収まりが悪いのでここに紹介しておく。

M「ちょっと待って。えーっとなんや、なんか覚えがあるんやけど」

M「そや! ウチ魔法少女になってん!」

M「その後が……駄目や。覚えてへん」

M「しっかし、なんでウチあんな願い事したんやろね?」

願い事は覚えているが、その願いへの情熱のようなものは綺麗さっぱり忘れていた。
とりあえず、仲間達が経緯を色々説明した。

M「H達がおもろいことしてるんは判った」

M「で、ウチは魔法少女になって、色々活躍して、力使い果たして全部忘れてもたって訳やね?」

恭介「記憶の障害は、彼女の魂を安定させるためにQBが何かしたせいだろうか?」

QB「ボクがしたのは最も安定する精神的位置に魂を微調整したことだけど、その影響かもしれないね」

恭介「生き残った理由は、先程の推測通り、
    魔法少女の願い事以外に強力な『生きたい理由』があったからで良さそうだ」

QB「そうだろうね。ボクは見落としていた、というより必要ないから関心を向けていなかったんだけど、
   魔法少女の願いや力と関係の無い所に、そういう物があったという事だろうね。
   益々もって人類の精神的活動というものは興味深いよ」

恭介「今回、君が行ったその調整を補助リングに組み込む事は可能かい?
    記憶の障害は問題だけど、まずは生き残る可能性を高くして欲しいんだ」

QB「やってみよう。とはいっても、人間の魂のあり方というものは個人差が大きいから、
   伝授するときにボクが個別に調整する必要があるだろうね」

             コトワリ エンカン
マミ「このリング……『理の円環』!」

さて話は巻き戻って決戦の真っ最中である


さやか「歌が聞こえたわ」

杏子「歌ぁ?」

さやか「そう。あの上側の歯車の真ん中あたりで」

恭介(少女)「なんだろう?」

さやか「いや、判らないけど、なんかあの魔女から受ける印象と全然違ってたから」

恭介(少女)「違ってたって?」

さやか「『魔女』って感じじゃなかったのよ。子守唄? じゃないか、なんだろう? 優しい感じ」

恭介(少女)「旋律は覚えているかい?」

さやか「え? えーと……んんんーーんんー……♪ って感じ?」

恭介(少女)「……試してみる価値はあるかな?」

さやか「え? なあに?」

恭介(少女)「これで」

恭は魔法でバイオリンを出した。

さやか「おー」

魔女退治には全く役に立たないのだが、恭は『曲を聞かせる』という魔法を使えた。
この魔法は拡声装置なしに結構広範囲に力強く聞かせることが出来る。

恭介(少女)「これで、ワルプルギスの夜が少しでも静まってくれれば」

今、『夜』は手が付けられない状態だった。
まだ逆さまのままだが、狂ったように踊り、跳ね回っている。
あの巨体が跳ね回るのだから周りは大変なことになっている。

さやか「どうするのよ?」

恭介(少女)「近づいて聞かせるしかないだろ。出来ればその『歌』を直接聞きたいんだけど」

さやか「いいよ。なら、あたしが連れて行くわ」

恭介(少女)「出来るかい?」

さやか「もちろんよ。出来なきゃあたしが魔法少女になった意味が無いわ」


この後、何人かの魔法少女が護衛を申し出てくれたが、
逆に魔女を刺激しかねないので、二人だけで行くことにした。

さやか「じゃ、行って来るね」

マミ「気をつけて」

恭介(少女)「僕はしばらく指示を出せないけど後は頼んだよ」

杏子「おう、指揮は任せろ!」


使い魔たちをやり過ごし、降り注ぐ廃墟のような塊を避けながら、
美樹さやかと恭(ゆき)の二人は激しく動き回る『夜』に近づいていった。

ある程度まで近づいて、恭(ゆき)が、
さやかが先ほど口ずさんだ『魔女のメロディー』を織り交ぜて
即興で『穏やかな曲』を聞かせたところ、『夜』の活動が変化した。

まだまだ、使い魔が暴れまわり魔女本体もあたりかまず攻撃をしてくるのだが、
飛び跳ねなくなり先ほどの狂乱状態よりは幾分マシになった。

さやか「じゃあ、近づくわよ」

恭介(少女)「ああ、護衛は頼んだ」

移動だけなら恭の魔法でもさやかに付いて行ける。
だが、攻撃や防御にかけては無いに等しいのだった。

恭とさやかが接近している間、下手に魔女を刺激無いように
最後の作戦にあたる魔法少女達には魔女に近づかず、
作戦発動予定時刻まで待機しているように言ってあった。

さやかの先導で恭は逆さの魔女の上側、大きな歯車に見える部分に接近した。

逆さの魔女の一番上。
幾つかの大小の歯車があるが外から見えるものの一番の上の歯車の上に、
二人は降り立った。

恭介(少女)「ここは何なんだ?」

さやか「戦闘中にここに来たときもこうだったわ」

そこは台風の目のように穏やかで、
どういうわけか,使い魔も魔女自身の攻撃もやってこない場所だった。

恭介(少女)「歌は?」

さやか「こっちよ」

歯車の円の中心軸付近。

それは恐らく今の地上の誰もが知らない言語で唄われていた。
恭はそこに立ち、魔法で作り出したバイオリンでその歌のメロディーに答えるように演奏を始めた。

鳴り響く、古代の異国の旋律。

それは魂の響きとして、恭の心に、さやかの心にも伝わってきた――。



――かつて、魔法少女の王国が在った。


『楽園』を願いとした魔法少女は契約によって王になった。

彼女の国を支える『魔法戦士』と呼ばれた魔法少女達。
そして戦士たちの世代交代を行う為の秘密の掟。

魔法少女の真実を知りつつも、その法でもって『楽園』を百年維持し続けた。
女王は魔力を供給する一つの装置のようでありつづけた。

そうやって『楽園』を運営し、そこで暮らす人々を楽しませるのが、
彼女の願いであり希望だったのだ。

QBは王国で神として崇められていた。

契約は女王の側近である魔法戦士たちがその願い事を厳選し、
更に女王の許可なくして契約することは出来なかった。

契約して魔法少女になった少女には女王への忠誠が誓わされ、
『魔法戦士』という地位が与えられた。

そして魔法戦士となった少女は秘密の掟に縛られることになる。
これは魔女化の兆候が見られた戦士を隔離し、魔女化を確認後、
秘密裏に討伐、という流れを確実にするための掟だった。

そのための『楽園の暗部』を担う魔法少女=魔法戦士も当然存在していた。

だが、やがて楽園にも綻びが生じる。

女王にも世代交代は訪れる。

魔法少女の全てを知る女王は、自らの魔女化の兆候が現われる前に
王位を継がせるべく、後継者を育てていた。


それは楽園では神と崇められていたQBの謀略があったのかもしれない。


女王が魔女化したらそれを倒せる魔法戦士は存在しない。

だからその前にソウルジェムを破壊し、死を迎えなければならないのだが、
後継者の少女が王位を継承後元女王が暗部に殺害されることを知って、
絶望に落ちつつある女王を匿ってしまった。

女王が魔女化した際に、唯一それを倒せる可能性を持っているのは新女王である。
だか彼女はそれもしなかった。

彼女は優しすぎたのだ。

結局王国は最悪の形で滅んだ。
側近である魔法戦士たちは、生きたまま元女王の魔女に取り込まれて、
使い魔として生まれ変わった。

そして、新女王は元女王の魔女と共にあることを望み、
その部品の一部となって
魔女が生き続ける限り、こうして彼女への想いを歌いつづけるのだ。

                    イニシエ
もはや歴史にも残っていない遥か古の物語――。


恭が演奏を始めてから、魔女とその使い魔たちの活動は目に見えて沈静化していった。

杏子「恭のやつ、やったな」

マミ「今度こそ上手く行くわね」

杏子「上手く行くんじゃねえ。行かすんだよ!」

マミ「そうね。その通りだわ」

作戦開始時刻になり、魔法少女達が魔女を『神の鉄槌』の元に誘導するために飛び出して行った。

再び暴れられたら終わりである。
なので、直接の打撃は与えないように、力をあわせて拘束して引っ張っていくのだ。

全員の魔力で巨大な魔女を囲む網が形成される。

恭の演奏はその間も続けられ、作戦は今度こそ上手く行くかのように見えた。

いつのまにか歌が止まっていた。

さやか「なんか、ヤバそう。離脱するわよ」

恭介(少女)「そうだね。急ごう」

魔法少女達が作った巨大な網の目をくぐって二人は『夜』の『頂上』から離脱した。

魔女は所定の位置に向かって移動しつつあり、作戦はこの時点で順調のように見えた。

(ソールハンマー)
トリガー部分は装置の中でも最も魔力が集中する部位であり、
これは十分予想できたことなのではあるが。

網に捕らわれたまま『ワルプルギスの夜』は再び射出ポイントに誘導することが出来た。
これはなんとか上手くいった。

そして、装置が動作を始めようとした瞬間、再び『夜』が活動を始めたのだ。

だか、とにかく『夜』は所定の位置に来た。拘束もまだ生きている。

魔法少女H「動かすわよ!」

魔法少女Y「了解だじぇ」

装置のトリガを引くのはタイミング的に恭が指示することは出来ないので、
建設・運用チームが任されていた。

魔法少女S「まどかさん!」

まどか「了解だよ!」(オーバーロード分の魔力放出)

『神の鉄槌』は『夜』の加速を始めていた。

その周りでは使い魔たちと魔法少女達の攻防戦が繰り広げられていた。

とにかく、加速し切って『終幕』前に郊外まで投げ飛ばせば我々の勝ちである。
暁美ほむらのデータから魔女が現界できる時間がもうそれほど残っていないことは判っていた。

杏子「ねばれよ! あの馬鹿強いやつは直接相手にしなくていいから、網を維持し続けるんだ!」

使い魔に網が破壊されたら、魔法少女達が死角に回ってそれを修復する。

魔法少女達が修復する速度より、使い魔が『網』を破壊する速度の方が速いのだが、
投げ飛ばしが成功するまで持てば良いのだ。

攻撃に晒されつつも、なんとか持たせていたが、
『鉄槌』が最高速度を出したあたりでとうとう『網』は完全破壊された。

マミ「離脱よ!」

杏子「今度こそぶっ飛んでくれよな!」







 魔女は――。


 射出後、軌道を大きく右に旋回して大きな円軌道を辿り、また帰ってきた。


 下手をすると『夜』にも匹敵する程の強力な使い魔もそのまま伴って。







ここまで

まーだーつーづーくーorz

再充填のための魔力を放出した後、
鹿目まどかは暁美ほむらと一緒に居た。

ほむら「もう、私は何も出来ないわ。時を止める魔法ももう使えない」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「でも、あなたを守るくらいなら出来る。だからここに居させて」

まどか「うん。嬉しいよ」

ほむら「////」

そんなほのぼの空間は長く続かなかった。

恭介(少女)「魔女が来る! 急いで退避しろ!」

『鉄槌』が与えた最高速度のまま、『魔女』はその場に突っ込んできた。

異空間への退避はもはや叶わない。
二回目の射出で空間維持の魔力も使ってしまったからだ。

退避はぎりぎりだった。

目の前でトリガー部の建造物がほぼ全壊し、魔女はそのまま通過していった。

ほむら「そんな……」

まどか「みんなは?」

恭介(少女)「一応無事だ。いま一箇所に集結しているよ」

まどか「恭ちゃんは行かなくていいの?」

恭介(少女)「いや、さやかや佐倉さんに任せてきたよ」

恭介は憔悴していた。

あの『夜』の“隠し玉”に全部持っていかれた、と。


魔法少女達が集結している場所で

さやか「じゃあ、ここいにいる魔法少女はみんな同じ意思ってことでいいのね?」

魔法少女K「オッケーだよ」

魔法少女L「ここまで来て『帰ってもいい』なんて、そりゃないよな」

魔法少女O「そうそう。人命救助とかそういうことじゃないの。これは魔法少女としてのプライドの問題よ」

それぞれの思いの差はあれど、協力して魔女を撃退したいという意思は、皆一緒だった。
ここにはそんな数十人の魔法少女達が集結していた。

殲滅しなくても良いのだ。
誘き寄せるのでも、引きずっていくのでも良いからとにかく、『終幕』の大暴れから町を守ればこちらの勝ち。

これはそういうゲームなのだ。

杏子「判ってると思うけど、個人プレイじゃ死ぬぜ? なるべくまとまった人数で効果的にやらないと」

最悪、数ある避難所だけでも守り通せばぎりぎりで勝ちだ。
だから皆、最後まで諦めるつもりは無かった。

崩壊したトリガーの建物にいた運用チームはまどかとほむらを残して皆、
魔法少女達が集っているところへ行ってしまった。

まどか「ねえ、みんな何をする気なの?」

恭介(少女)「……僕からはもう何も言えなかったよ」

魔法少女の力だけで状況を打開しようとベテランの魔法少女達が中心になって話をしていて、
もはや恭介の出る幕はなかった。

まどか「……特攻する気?」

恭介(少女)「死ぬつもりは無いと言っていた。最後の決戦に臨むと。だけど無理だ。
        行動が機械的といっていたが、やはり魔女だ。
        力が大きいだけでなく、巧妙に対応してくる。それにあの使い魔が強すぎる……」

この土壇場に来て手詰まりなのである。

恭介は理論派の人間だ。
だから実はこういう論理的に考えてどうしようもない状況には弱かった。





まどか「恭ちゃん。大丈夫だよ」

恭介(少女)「え?」

まどか「まだわたしがいるよ」




ほむら「だめよ!」

まどか「だって、何もしないなんて出来ないよ。わたしにはその力があるんだから」

ほむら「まさか契約? それは絶対駄目!」

まどか「契約はしないよ。私にはこれがある」

EGである。

ほむら「でもそれは、あまり大きな力を使うと記憶が!」

まどか「わたしの想いと記憶でみんなを救えるなら怖くないよ」

まどはは変身した。

まどか「ほむらちゃん。ごめんね。すこしここに居て」

ほむら「くっ、……まどか」

ほむらはまどかの魔力からくる圧力のために、まどかに近づけなかった。
いつものエネルギー提供の比じゃない。
強い決心を持って変身したのだ。

まどか「恭ちゃんはパチンコの準備しておいて。こっちの建物は無くても大丈夫だから」

恭介(少女)「トリガー役をやるつもりなのか?」

まどか「うん。はじく前の形にしておいてくれれば、あとはわたしがやるから」

恭介(少女)「出来るのかい?」

まどか「わたしなら出来るよ。ううん。今わたしにしか出来ないことだから」

ほむら「まっ……」

まどか「じゃ、行って来るね!」

ほむら「待って! まどかぁぁっ!」

魔法少女達の攻防は既に始まっていた。

だが、例の強力な使い魔のために魔女に近づくことさえ出来ずにいた。

さやか「あいつの強さ反則だよ」

杏子「くそう」

マミ「攻撃の強さが違いすぎるわ。撃ち合いにすらならないなんて」

魔法少女S「……私が動きを止めます」

杏子「おい、無茶すんな。確かにお前、さやか並にパワーあるけど、それでもアイツは桁違いなんだぞ」

魔法少女S「いえ、ソウルジェムに蓄えた魔力を開放すれば一時的に押さえ込めると思います」

さやか「なっ! ちょっとそれって」

杏子「そんなこと出来るのか?」

さやか「駄目よ。あんた死ぬつもり?」

魔法少女S「もう、そんなこと言ってる段階じゃないです!
        ここで抑えられなければどの道みんな死ぬんですよ!」

魔法少女H「だめよ。それが出来るとしても許可できないわ」

魔法少女S「大丈夫です。M先輩は生きてたじゃないですか」

魔法少女H「Mのあれは特殊なケースでしょ? もう嫌よあんな……」

そこに、あの使い魔の攻撃が襲った。

杏子「退避だぁ!」

防御は不可能なので逃げるしかない。
さやか達の居たグループは今の攻撃で散り散りになってしまった。

魔法少女S「やっぱり私が出ます!」

さやか「あっ! だめよ!」

その時、

まどか『その必要はないよ!』

戦場に鹿目まどかの声が響いた。

ふわりと広がったスカート。白とピンクのドレスの魔法少女。
鹿目まどかは彼女の武器である弓を持って、廃墟と化した装置の僅かに残った骨格の上に立っていた。
強力な魔力が彼女の周りの景色を陽炎だたせている。

さやか「まどか……なの!?」

まどかの魔力は、十キロ近く離れたさやか達にもはっきりと感じられる程だった。

作戦の内容はまどかも繰り返し聞いていた。
そして装置の建造に関わることで装置の構造も動作も理解していた。
さらに繰り返し魔力を放出することで、大きな魔法の使い方も学習してきたのだ。

『必ず出来る』という確信が、まどかの魔法を更に強固なものにしていた。

まどかは自分の魔力を弓に向けた。

コンパクトなサイズだった弓は大きく変形して、まどかの身長を超える程になった。、

そして、魔力の矢を作り出し、一杯に弓を引く。
『魔女』までの距離は十キロ余り。

まどかがその強力な矢を放った時、使い魔もまた攻撃を放った。

二つの光跡はその中間地点で激しくぶつかり合っていた。

マミ「凄いわ。あの攻撃に拮抗しているなんて」
   ナニモン
杏子「何者だよ……」

さやか「うひゃー、ここまでとはね」

杏子「……なあ、あの使い魔、本当に使い魔なのか?」

マミ「え? 魔女ってこと? でも複数の魔女が協調しているのなんて見たことないわ」

杏子「いや、桁違いすぎるだろ? そこら辺の魔女なんて目じゃねえくらい強い使い魔ってなんなんだよ?」

マミ「それだけワルプルギスの夜が特殊な魔女だって事じゃないかしら?」

さやか「あたしもアレはあの魔女の手下の使い魔って感じがしないよ。
     もっとこう違った存在というか……」

マミ「え? なんなの?」

杏子「さやかもそう思うか」

さやか「うん。少なくとも普通に魔女が生み出した使い魔じゃないと思う」

まどか「……あの子は」

一発目の矢を放った後、まどかは魔女とあの使い魔の様子を伺っていた。
使い魔の方もこちらを伺っているようで、まだ動きは無かった。

大魔女『ワルプルギスの夜』はその笑い声を響かせながらゆっくりと町の上空を飛行していた。
その他の使い魔たち戯れるようにただその周辺を飛び回っている。

一見すると小康状態のようでもあるが、これは『一触即発の睨みあい』と変わらないであろう。


ほむら「まどかぁぁぁっ!」

ほむらが、魔力の圧力に根性で逆らって、廃墟を登り、まどかに近づいていた。

まどか「ほむらちゃん!? 無茶しないで」

ほむら「それは私の台詞よ! お願いだから一人で何とかしようなんて思わないで!」

まどか「判ってるよ。大丈夫。ここからみんな見えてるよ」

ほむら「どうする気なの?」

まどか「わたしがあの子を何とかするから」

確かに、先程の一撃を放ったまどかなら、
あの使い魔を引き剥がして『夜』から遠ざけることも可能であろう。

ほむら「でも『ワルプルギスの夜』はどうするの? もう、こちらにどうにか出来る力は……」

恭のバイオリンで沈静化してたから何とか誘導できたのであって、
かなり魔力も消耗してしまった魔法少女達にもう一度同じことが出来るのかといったら
それは難しいといわざるを得ないであろう。

だが、まどかは明るく言った。

まどか「大丈夫だよ。大きい魔女さんも大人しくさせられると思うから」

ほむら「何を根拠にそんな……」

まどか「もう、行かなきゃ。じゃあ、ほむらちゃん、またね!」

ほむら「まどかっ……!」

ほむらを巻き込まないように一旦飛び上がって、そこから加速。

もの凄い圧力を残して、まどかは魔女に向かって飛び出していった。

さやか「まどかが出て来たわ」

マミ「鹿目さん……」

杏子「あいつ、どんだけ魔力余ってんだよ? ここまで感じるぞ?」

魔法少女達は彼女が魔法少女とは別次元の存在と感じていた。

きゃーきゃーと、一部の魔法少女達が歓声を上げている。
彼女らにとって鹿目まどかは正に絶望的状況に現われた救世主だった。

マミ「新しい魔法少女時代の幕開けなのね……」キラキラ

まどか『みんな聞いて!』

全員に聞こえるテレパシーでまどかが声を上げた。

まどか『わたしがあの子を何とかして説得するから、
     みんなはさっきみたいにあの大きな魔女を運んで!』

マミ「説得!? どういうこと? 使い魔を説得なんて」

杏子「やっぱりか」

さやか「今のまどかなら出来るわ。きっと」

マミ「ねえ、何が、やっぱりな……っ」

ドーンと魔力の衝撃波が来た。
あの使い魔とまどかの交戦が始まったのだ。

杏子「始まりやがった。こっちも準備すんぞ!」

さやか「おう!」

マミ「ああもう。後で説明してもらいますからね!」

杏子「そうそう。勝利してからゆっくりとな!」

まどか『わたしはあの魔女を止めたいの』

――――?

まどか『ううん。違うよ。わたしはあなた達に何もしないで帰ってほしいだけ』

――――、――――……。

まどか『どうして? あなたも止めたいんでしょう?』

――。――――――――――……。

まどか『それなら大丈夫。わたしはあなたの願いをかなえてあげられるよ」

――――――――――――?

まどか『うん。そうだよ。わたしを信じて』

――――。

まどか『ありがとう。じゃあ、ここに来て』

――。


シルエットのような彼女に身体が形を変えて、まどかの手のひらの上に集約され、その本体を現した。

まどか「あなたはいままでずっと、あの子と一緒に居たんだね……」


手の上にあるのは、輝く卵形の宝石。


ソウルジェム。


>>697 投下ミス
-------------------

まどかは、その使い魔に突っ込んだ。
とにかく接近しないことには『話』が出来ないから。

使い魔は攻撃してくるが、力でねじ伏せて、まどかはその人型の身体に強引に近づいた。

それは幾つもの色が交じり合った光り輝く塊で、
シルエットから人型と判るが顔や服装が判別できるようなものではなかった。

まどか『ねえ、話を聞いて』

まどかはテレパシーで話しかけた。
言語ではなく、もっと深く意味だけを伝える言葉で。

――!?

『彼女』の言葉が理解できた。これなら話ができる。



まどか『わたしはあの魔女を止めたいの』

――――?

まどか『ううん。違うよ。わたしはあなた達に何もしないで帰ってほしいだけ』

――――、――――……。

まどか『どうして? あなたも止めたいんでしょう?』

――。――――――――――……。

まどか『それなら大丈夫。わたしはあなたの願いをかなえてあげられるよ」

――――――――――――?

まどか『うん。そうだよ。わたしを信じて』

――――。

まどか『ありがとう。じゃあ、ここに来て』

――。


シルエットのような彼女に身体が形を変えて、まどかの手のひらの上に集約され、その本体を現した。

まどか「あなたはいままでずっと、あの子と一緒に居たんだね……」


手の上にあるのは、輝く卵形の宝石。


ソウルジェム。


杏子「あいつ、なにをやったんだ?」

さやか「敵が、消えた?」


激しくぶつかり合って戦っていた筈なのに、いつしかそれは収まり、
そこには、まどかしかいなかった。


まどか「QB、ここに来て!」

QB「なんだい。凄いもったいないエネルギーの使い方をしてるね」

QBは、魔力で空中に浮いているまどかの肩に現われた。

まどか「それは慣れてないからだよ。後で余りは持っていて良いから今は協力して」

QB「僕は何をすればいいのかな?」

まどか「恭ちゃんと研究して作ったあれをこの子に付けてあげて」

そう言ってまどかがQBに見せたものは、手に収まるほどの大きさをした宝石。

QB「驚いたな。それはソウルジェムじゃないか。しかも、もの凄く昔に契約した魔法少女だ」


そう。あの『超強い使い魔』は、魔女でも使い魔でもなく、魔法少女だったのだ。

魔女である『夜』と共にあることを望んだ魔法少女。

彼女の身体はとうの昔に朽ち果ててしまったのだろう。
だが願いが故に魔女がある限り彼女は魔法少女でありつづけたのだ。

まどか「QBがこの子たちにしたことは今さら聞かないし責めるつもりも無いよ。
     でも今この子がしたいことをさせてあげたいの」

QB「とうの昔に砕けてしまったと思っていたが、こんな形で存在していたとはね。
   強力な魔女の魔力に邪魔されていて判らなかったよ。
   もちろん協力するよ。彼女はとても強力な魔法少女だからね」(エネルギー回収的な意味で


QBによって、その古代の魔法少女のソウルジェムに補助リングが授けられた。

まどかは『彼女』に言った。

まどか「行っていいよ。あとはわたしに任せて!」

その『使い魔』改め、『古代の魔法少女』は、魔力の身体を生成してまどかから離れ、
ワルプルギスの夜へと飛んで行った。


アハハハハハハハハハ――……


巨大な魔女の高笑いが響いていた。

マミ「大丈夫なの?」

杏子「わからんが、やるっきゃない」

さやか「まどかが言ってるんだ。きっと大丈夫だよ」

魔法少女達の一団は、再びワルプルギスの夜を網で拘束する作戦を開始した。

あの『使い魔』と思われていた“古代の魔法少女”はワルプルギスの夜の歯車側に張り付いて動きを止めていた。

――――――♪

魔女の笑い声の合間に歌が聞こえていた。おそらく『彼女』が歌っているのであろう。

愉快で、勇壮で、悲しくて、愚かだった王国を歌った歌。

今は理解するものが皆無の古代の言語で歌われる歌だ。


ワルプルギスの夜もまた活動を沈静化し、他の使い魔たちはその姿を消していた。

~~

三度目の正直。

まどかは『神の鉄槌』のゴムバンドを引く役を全て受け持った。

トリガー部があった場所の残骸の上に、まどかは居た。
例によって彼女の周りには魔力の陽炎が揺らめいている。

ワルプルギスの夜は魔法少女総出で射出位置に『連れてこられた』。

まどか「じゃあ、いくよ?」

再び魔力を弓に込める。
まどかの身長を超える程になっていた弓は更に変形し、
枝分かれしてその先に赤い花が咲いた。

まどかは彼女の魔力の色であるピンク色に輝く魔力の矢を出した。
そして思い切り弓を引いた。
込められた余剰の魔力が桜色の煙となって弓の先から立ちのぼっていった。

まどか(さよなら。昔の魔法少女さんと大きな魔女さん……)

まどかが矢を放つ。

それと呼応して、バンド部分が『魔女』を強力に加速した。
もはや、ぶれる事も軌道を変えることも叶わない。三度目の加速は前の二回を遥かに上回っていた。

まどかがしたことは、
二十キロメートルに及ぶ加速のための軌道を魔力で満たし、それを巨大な砲身と化したことだった。

その気になれば『夜』を破壊してしまうことも出来たのかもしれない。
だがまどかはそれを望まない。

まどかがしたいのは、あくまで町から離れた場所に『彼女達』を送り届けることなのだ。


閉鎖されていない空間に『砲身』を作り出した膨大な魔法は、
これまた膨大な余剰の魔力も生み出していた。
その余った魔力はQBがホクホク顔で回収していったことを追記しておく。

追跡・監視担当の魔法少女から報告が入った。

魔女の軌道はもともと予定していた山間部に至る前に向きを変えて海上に出たとのこと。

まどかがやったのか、あるいはあの古代の魔法少女がしたことなのか、最後まで判らなかったが、
飛距離が倍以上になっていたので、この方が好都合だった。

直線で行くと山間部を超えてその向こうの町村に届いてしまうからだ。


魔法少女R『海上で魔女は「終幕」らしき行動には入らず、爆発を繰り返しながら海へ崩れ落ちていきました』


この報告を受けた瞬間、結果を待って集っていた魔法少女達から歓声が上がった。

中には感極まって涙を流して抱き合う者も見られた。



そして……。


恭介(少女)「それで、説明はしてくれないのかい?」

まどか「ごめん。覚えてなくって」

ほむら「まどか……」

案の定、鹿目まどかは『あの使い魔』とどんなやり取りがあったのかはおろか、
作戦中の行動さえも綺麗さっぱり忘れてしまっていた。

まどか「でも後悔してないよ。それだけは判る」

あの超強力な使い魔が実は魔法少女だったことだけはQBの証言から判ったが、
それ以上は推測の域を出ない諸説を生み出すに留まった。

その中で、そこそこ説得力があり一番支持されてたのが、

どういう経緯か、魔女と共にあることを願い事として魔法少女になった彼女が、
いつか魔女を止めたいと思っていたが、
倒した瞬間自らが魔女になって同じ事を続けてしまうことが判っていたため出来ずにいた。

だが今回まどかと会うことで、魔女にならない道を知り、
それを実行できたのだ。

……という説である。

諸説の信憑性はともかく、
魔女が『終幕』の行動に出ず、崩れ落ちたその後に、
あの『古代の魔法少女』の気配すらなかった事を考えると、
彼女が魔女を巻き込んで心中したのは確かのようであった。

<<古代の魔法少女エンド>>



じゃなくてここまで

<<古代の魔法少女エンド>>



じゃなくてここまで

えぴろーぐ的な


まどかは自らが最後に弓を引いた廃墟のそばに、ほむらを呼び出していた。
そこは魔女が魔法の建物を破壊して通過した後で、
現実世界では竜巻が通過した後のようであった。

まどか「わたしね、ほむらちゃんに話があるの」

ほむら「話ならこんな所まで来なくても……」

まどか「ううん。ここがよかったの。あの時もこんな場所だったから」

ほむら「あの時?」

まどかはそれには答えなかった。

ほむら「わたし、馬鹿だったでしょ?」

ほむら「え」

ほむら「ほむらちゃんに何回も何回も何回も何回も迷惑ばっかりかけて。ほんと酷いよね」

ほむら「何を言ってるの?」

ほむら「『過去のわたしをお願い』なんて、無責任なこと言って、ほむらちゃんに全部押し付けて、
     最期はわたしの命まで背負わせて……」

ほむら「ま……まどか? どうしてそれを!?」

まどか「許してなんていえないよね。わたし、ほむらちゃんに世界で一番酷いことしちゃった」

それはいつかの約束をした『まどか』だった。

『こんな場所』とは、あの約束を交わした場所のこと。

何故?

それをQBは後に『彼女は“因果を消費”して莫大な魔力を作り出した』と言っていた。

消費することで重なった因果が引き剥がされて
過去にほむらが経験した時間軸の因果が浮かび上がってきたのだと。

ほむら「そんなことないわ! 私がしたくてしてきたことなのよ!」

まどか「ううん。あるよ。
     でもわたしは謝らない。
     謝ったら今までほむらちゃんがしてきたことを否定することになっちゃうから」

ほむら「まどか……」

まどか「だから、その代わりもう一回だけ我侭を言わせて」

ほむら「な、何を言っているの?」

まどか「そんな不安な顔しないで。大丈夫だから」

じりっ、と、まどかはほむらとの距離を詰めた。

ほむら「……なにをする気なの?」

まどか「こんなほむらちゃんになっちゃったのは、わたしのせいだから……」

ほむらは、ふわっとピンク色に抱きしめられた。
まどかが変身している。

ほむら「まどか?」

まどか「もういいんだよ? わたしのために戦わなくていいからね?」

ほむら「そんなっ、私はあなたのために戦い続けてきたのよ。あなたを守るために、ただそれだけのために」

まどか「もう良いの。これがわたしの我侭。ほむらちゃんはもうわたしの為に戦わないで!」

まどかの強い言葉にほむらの心が揺らぐ。

ほむら「うっ……くっ……」

胸が締め付けつけられるような感覚。

ほむら「だめっ、私が戦いを放棄したら……私は……」

まどか「もういいの。いいんだよ」

ほむらの指輪のソウルジェムが宝石形態に還元する。
すでにその色はどす黒く濁っていた。

ほむら「まどか、駄目っ、……離してっ!」

ほむらは逃れようともがくが、しっかりと抱きしめられて逃れることは出来なかった。

まどか「大丈夫。怖くないよ。わたしはそばに居るから。これからもずっと一緒に居るから」

ほむら「……まどかぁ」

まどか「ほむらちゃんはどうなの? わたしと一緒にいたくないの?」

そんな資格があるのだろうか、という思いがほむらを躊躇させる。

抱きしめ返すことは出来なかった。

ほむらはただ震える手で密着したまどかの身体に手で触れた。

ほむら「そんなことは……ない……私……は……」

ピシッと音がしてほむらのソウルジェムが砕け散った。

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ ……
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

すこし離れます
今夜中に終わらす

>ほむら「わたし、馬鹿だったでしょ?」
>ほむら「え」
>ほむら「ほむらちゃんに何回も何回も何回も何回も迷惑ばっかりかけて。ほんと酷いよね」
>ほむら「何を言ってるの?」
>ほむら「『過去のわたしをお願い』なんて、無責任なこと言って、ほむらちゃんに全部押し付けて、
     最期はわたしの命まで背負わせて……」
>ほむら「ま……まどか? どうしてそれを!?」

ほむら喋りすぎワロスwwwwww

>>719
orz
>>712
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まどか「わたし、馬鹿だったでしょ?」

ほむら「え」

まどか「ほむらちゃんに何回も何回も何回も何回も迷惑ばっかりかけて。ほんと酷いよね」

ほむら「何を言ってるの?」

まどか「『過去のわたしをお願い』なんて、無責任なこと言って、ほむらちゃんに全部押し付けて、
     最期はわたしの命まで背負わせて……」

ほむら「ま……まどか? どうしてそれを!?」

まどか「許してなんていえないよね。わたし、ほむらちゃんに世界で一番酷いことしちゃった」

それはいつかの約束をした『まどか』だった。

『こんな場所』とは、あの約束を交わした場所のこと。

職員室。

早乙女先生「暁美さん、なんか雰囲気変わりましたね」

ほむら「そうですか?」

早乙女先生「なんだか、柔らかくなったというか、可愛らしくなっちゃって」

ほむら「え? え?///」

まどか「だめだよ。先生。ほむらちゃんをからかわないで」

早乙女先生「まあ、それはともかく、災害前の長期欠席の分はこの課題をやってもらうという事でいいですね?」

ほむら「はい」
まどか「はい」
さやか「はーい」

まどか「先生、上条君は?」

早乙女先生「上条恭介君はリハビリに集中するために再入院してましたけど、
        ちゃんと事前に出した課題を提出してますよ。
        何故か休んだ期間があなたたちとぴったり一致するんですけどね」

まどか「不思議ですね」

さやか「偶然って怖いですね」

ほむら「……」

早乙女先生「……もう良いです。親御さんが良いって言ってますからそこは追求しません。はい解散!」

まどか「はーい」

さやか「失礼しましたー」

ほむら「失礼しました」

あの災害の前一週間ほど、彼女のクラスの4人、いや5人の生徒が学校を休んでいたわけだが、
その理由は風邪だったり親の都合で海外に行っていたり、入院だったりとばらばらであった。
共通していたのはそれらが全部嘘っぱちであったという事だろう。

親とは最終的にそれぞれがそれぞれに紆余曲折あったものの
早乙女先生の話にある通り、なんとか収まるところに収まっていた。

あのとき、ほむらのソウルジェムが砕けて、
ほむらは『まどかを守るために戦い続ける』という『希望』を失った。

まどかが起こした奇跡は小さなものだった。


ほむら「……鹿目……さん?」

まどか「もう、今まで通り『まどか』って呼んでくれないと」

ほむら「で、でも……えっ? なんで……?」

まどかの表情が曇る。

まどか「……もしかして、全部忘れちゃったの?」

ほむら「あ……」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「ううん。覚えてる。……私、覚えてるよ」

まどか「よかった」ホッ

ほむら「まどか……さん?」

まどか「これからはずっと一緒だよ」

まどかはそう言ってまたほむらを抱きしめた。

今度はほむらもしっかりと抱きしめ返した。

まどか「でも『さん』はいらなと思う」

ほむら「えっ? えーっと、……まどか?」

まどか「うん。その方が格好いいよ?」

ほむら「////」


二人で共にあること。

それを『希望』として、まどかは親友が再生することを祈った。

もしかしたら、そこには魔法の力すら働いてなかったのかもしれない。

なぜなら、まどかは親友の心を後押ししただけだったから。

“ただ一緒に居たい”

それは『守る』とか『守られる』以前に互いに望んでいたことなのだ。

QBは『目減りしてしまったが、かなりのエネルギーを回収できた』として、まどかから手を引いた。

あの作戦で『因果を消費した』まどかの魔法係数は、
まだ序列で言えば大きい方ではあるものの、「とてつもない」程ではなくなってしまったそうだ。

そのQBは、まだ上条恭介と関わっていて、時々美樹さやかの話す話題に登場していた。

一方、ほむらの方は、作戦のことも、あのとてつもない繰り返しの戦いの経験も、記憶が薄れていた。

ほむら「まどか……は、どう? 覚えてる?」

まどか「うん。思い出せるけど、なんか夢で見たみたいで実感がないの」

あの作戦後まどかは、
ほむらが経験した沢山の別の時間軸のまどかとしての記憶も有するようになっていた。

ほむら「私もそうなの。覚えているけど、別世界の出来事みたいに感じてる……」

まどか「でも、これでいいんだと思うよ」

ほむら「うん。そうね……」

まどか「それになんかね、眼鏡をかけてる今のほむらちゃんが一番しっくり来るんだ」

ほむら「////」

~~

さやか「魔獣?」

QB「そうさ。例の補助リングで魔女は発生しなくなるけど、
   相転移の時かなりの量の『呪いの元』とも言うべき物質、まあこれを『瘴気』と呼ぼうか。
   それを放出するんだよ。
   これが蓄積すると魔女みたいに現実世界に悪影響を与えるようになるんだ」

さやか「それってやばいんじゃないの?」

QB「そうなんだ。だけどこれは霧みたいなもので実体が無いから魔女みたいに倒すことが出来ない」

さやか「それって、どうすんのよ?」

QB「そこで魔法少女の登場さ。
   淀んで瘴気の溜まった空間に凝集する核を用意して
   強力な魔法を打ち込むと瘴気が実体化する」

さやか「それが魔獣なの?」

QB「まあ、瘴気を実体化させた存在を『魔獣』って呼ぶことにしたから名前は後付けなんだけどね」

さやか「あー、なんか判った。魔女を生み出さなくなった代わりに、
     そうやって魔法少女に瘴気の掃除をしてもらおうってことね?」

QB「その通りだよ。まだ魔女が使い魔を生み出してそこから増える魔女もいるけど、
   新たに生まれなくなればいずれ魔女は居なくなる。
   そうなった時のための新しい魔法少女システムなんだ」

さやか「魔法少女が魔女になって、別の魔法少女に倒されるのよりマシ……なのかな?」

QB「恭介はまだ不満みたいだけどね。でもこれでもかなり譲歩したんだよ?」

さやか「まあこれなら変に隠さなくても『願いを叶えてもらった代償』って言えば、
     納得する人はいるかもしれないわね」

QB「そうあってほしいね」

QB「あ、あと、今回ワルプルギスの夜と共に逝ったあの魔法少女が大量に瘴気を放出してるから、
   これから忙しくなるよ」

さやか「げっ。早速なの?」

QB「キミなら負けることは無いよ。それにこの前の作戦に参加した魔法少女にも声をかけてあるからね」

相転移のときリングが変化したあの『四角いグリフシード』が瘴気を魔獣化する核なんだそうだ。

汚れを吸収できなくなったそれが魔獣の核となる。
それは再利用可能で、魔獣を倒すと再び汚れを吸収可能な状態になって戻ってくるとのこと。


ところで、
後に魔法少女が干渉しなくても瘴気が人間を取り込んで魔獣になるという現象が確認されるのだが、
それはまた別の物語である。

エピローグ


さやか「今日こそは遊んで帰ろうよ」

まどか「そうだね。何処へ行く?」

ほむら「私はまどかが行くなら何処でも」

さやか「またこの子は、まどかラヴなんだから」

ほむら「そうよ。悪い?」

まどか「ほむらちゃん////」

さやか「あー、はいはい。そう開き直られるとからかい甲斐がないわ」

仁美「私も同行させていただいてよろしいかしら?」

さやか「当然じゃない。でもお稽古事は無いの?」

仁美「災害の影響でしばらくはありませんの」

さやか「そっか。じゃあいきますか」

まどか「ほむらちゃん。行こっ」

そう言ってまどかは手を差し出した。

ほむら「うん」

そう答えて差し出された手を握る。

さやか「あーこら、あたしの前でいちゃつくんじゃないっ!」

仁美「まあ、さやかさんたら。今度はまどかさんとほむらさんのどちらを狙ってますの?」

さやか「ちょっと待って。なんでそうなるわけ」

仁美「だって、さやかさんは今、上条君と、佐倉さんでしたっけ、
    校外の女の子を両天秤にかけているってもっぱらの噂ですわよ?」

まどか「えー? そうだったんだ。知らなかったよ」

ほむら「他にも、二つ年上のSさんとの噂もあるよね」

仁美「まあ、高校生の方まで? プレイガールなのですわ。私も気をつけなければ」

さやか「そういうんじゃないって」

まどか「でも学校休んでる間に女の子の知り合い沢山増やしたんだよね?」ウソジャナイヨ

仁美「まあまあ!」キラキラ

ほむら「無節操ね」ボソ

さやか「こっ……」フルフル

まどか「あ……」

ほむら「……」


さやか「こーらー!」

まどか「逃げるよっ!」

ほむら「うん!」

笑いあって二人で駆け出した。




<<まどほむエンド>>

   ̄| / ̄
  (゚Д゚)/ <<おーわりだよ!
 _(ノ_)つ
(__ノ /
 UU

お詫びと訂正
>>662>>663 の間に、以下が抜けてました。
なんか重要な箇所を狙ったように投下ミスしててすまなかった。
---------------------------------
それは、恭とさやかが離脱している最中、
沈静化していた『夜』の使い魔たちが再び蠢き始めた時であり、『鉄槌』が再稼動を始めた時でもあった。

つい先程まで、恭とさやかが居た場所、魔女のてっぺんにある歯車の一つが大爆発を起こした。

杏子「なんだ!? 自爆か?」

マミ「いいえ、違うわ……」

そして、『それ』が現われた。



杏子「あいつ、まだ隠し玉もってやがったのか!」

そいつは飛び切り強力な人型の使い魔であった。

目に見える衝撃波のような攻撃で魔法少女達を蹴散らしながら、
そいつは魔法で編みこんだ網を破壊していった。

マミ「みんな逃げて! 防御できないわ!」

そいつは一撃で数十人がかりで作った魔法の帯をいとも簡単に薙ぎ払った。

それでも、その使い魔が超強力とはいえ、人間サイズであったことが幸いしてか、
あるいはそれが強力すぎて魔女の本体を巻き込む攻撃を避けていたからなのか、
魔法少女達がかけた『夜』を覆う巨大な網は一撃で全部が破壊されることはなかった。

お詫びに<<没った断片や小ネタ>>を投下する

[さやかの契約シーン]

さやか「恭介、ごめんね。あたし約束破るよ……」

QB「さあキミの願いを言ってごらん。美樹さやか」

さやか「あたしは、恭介が背負っているものを私も背負いたい。
     恭介の力になれるあたしになりたい!」

QB「ちょっとまってくれよ。その願いは、成立しないんじゃないか?
   キミは恭介が背負っているものを今知らないじゃないか」

さやか「えー……」

QB「いや、まってくれ」

さやか「!」

QB「そうか。キミの願いはエントロピーを超越し、時空も超えた。
   君が魂をかけて願った対象、上条恭介がこれから背負うであろう因果にまで、
   君の願いは作用したようだ」

QB「これは君の想いの強さよりも対象の因果の特殊性が深く関わっているようだね。
   君は『強い魔法少女』になるよ」

さやか「くぅっ……」

QB「契約は成立した。さあ受け取って。これがキミの運命だ」

[さやかと恭介(時期不明)]

さやか「ねえ、恭介」

恭介「なんだい」

さやか「あたしに話すことあると思うんだけど」

恭介「な、何のことかな?」

さやか「まあ恭介がそうしたいなら、あたしは協力するだけだけどね」

恭介「何の話かなー」

さやか(まあ、あれでバレてないつもりなのが可愛いんだけど)

【EGとか】

ほむら「それ、まだ持ってたの?」

まどか「うん。なんかもうわたしの物だから、一生持ってていいって」

ほむら「……ちょっと貸して」

まどか「あっ!」

ほむら「まどかは人の不幸を見ると見境無く助けようとするから」

まどか「もうあの時みたいに使えないし、使おうとも思わないよ」

ほむら「これは私が預かるわ」

まどか「うーん。まあいいけど」

まどか「そうだ。ほむらちゃん使ってみようよ」

ほむら「え?」

まどか「仁美ちゃんだって使えたんだから。でもあんなことになっちゃったら嫌だから軽くだよ?」

ほむら「多分無理」

まどか「なんで?」

ほむら「私の魔法のイメージは私が魔法少女として生きていた時のものしかないけど、
     あの頃の想いはどうやっても、もう出てこないの」

まどか「それは逆に出てきちゃったら困るよ。
     そうじゃなくって、えーとね、わたしも変身だけなら出来るんだよ?」

ほむら「そうなの?」

まどか「うん。QBに持っていってもらうような魔力はもう出てこないんだけど。
     やり方教えるから」

ほむら「じゃあ、一応、教えて」

まどか「あのね。『変身できたら嬉しいな』って思いながら、それをEGに向けて、
     変身後の自分を思い浮かべるの」

ほむら「やっぱり無理。だって変身しても嬉しくないし」

まどか「もう。ほむらちゃんたら。でも感情が魔力になるんだから何でもいいんだよ?」

ほむら「なんでも?……それなら」

EGを手の平に乗せて目をつぶる。

ほむら(まどかが可愛い、まどかが可愛い、まどかが可愛い……)パァッ

まどか「あっ、変身できたよ!」

ほむら「……これでいいんだ」

ほむら(これなら、まどかが居れば何でも出来そう)

そう。
新生・暁美ほむらは『まどかパワー』で魔法少女に変身するのだ!

今度こそ以上
何か浮かんだら投下するかも
しばらく放置してもう浮かびそうも無かったらHTML化依頼出します

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