まどか「あなたを殺す」 (203)


まどか「ターゲット……ロックオン」ピピピピ


魔女「ギャフッ!!」ジュッ


メガほむ「す……凄い!」

マミ「鹿目さん、前より射撃の精度が上がってるわね」

まどか「目標の排除を確認。任務完了……」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1393817630

QB「貴様のために、何人のまどかが魔女化したとと思っているんだ!?」
ほむら「聞きたいかね?前回までの時点で9万9882人。」



メガほむ「あ、あなた達は……」

QB「彼女達は、魔法少女。魔女を狩る者達さ」

メガほむ「魔法……少女……?」

まどか「……クラスの連中には黙っていろ」

メガほむ「え……あ、はい……」

マミ「もう、鹿目さんったら怖い言い方しないの。女の子らしくないわよ」

まどか「……」チッ


>>1です

>>6の酉ミスりました




メガほむ「あ、あなた達は……」

QB「彼女達は、魔法少女。魔女を狩る者達さ」

メガほむ「魔法……少女……?」

まどか「……クラスの連中には黙っていろ」

メガほむ「え……あ、はい……」

マミ「もう、鹿目さんったら怖い言い方しないの。女の子らしくないわよ」

まどか「……」チッ






――マミの家



メガほむ「鹿目さん……いつもあんなのと戦ってるんですか?」

まどか「……そんなところだな」

マミ「鹿目さんはまだ、先週キュゥべえと契約したばかりなのよ。それなのに、初戦にも関わらず隙が無いからびっくりしたものね。今日の戦い方だって、以前より確実に上手くなってたわよ」

メガほむ「(鹿目さんって、実はとても強い人だったんだ……)」

まどか「……与えられた任務を全うする。それだけだよ……」モグモグ




――ワルプルギスの夜



メガほむ「鹿目さん……行っちゃうの?」

まどか「………」コクリ

メガほむ「そんな、巴さん死んじゃったのに……どうして……」

まどか「……ヤツを倒さなければ、全員死ぬ……」

メガほむ「無理よ! 一人だけで勝てっこない! 鹿目さんまで死んじゃうよ!」

まどか「……」

メガほむ「逃げようよ……誰も鹿目さんを恨んだりしないよ……」グスグス

まどか「弱い奴は逃げてればいい……私は止めない」ビシュッ

メガほむ「いやぁ! 行かないで! 鹿目さぁぁん!!」



30分後……


ワルプルギス「アハハハハ!!」



まどか「…………」ボロッ

メガほむ「か、鹿目さん! ひどい傷……」

まどか「……任務は失敗……か」スッ

メガほむ「……え?」

まどか「……自爆する」カチッ


トッ゙ギャアアァァン!!


メガほむ「いやあああぁぁ!! 鹿目さああぁん!!」



――時間遡行 一回目



メガほむ「暁美ほむらです! よろしくお願いします!」

早乙女「あ、暁美さんは心臓の病気でずっと……」

メガほむ「鹿目さん!」

まどか「?」

メガほむ「私も、魔法少女になったんだよ!」

まどか「!?」ビクッ

メガほむ「これから一緒に、頑張ろうね!」

まどか「…………」チッ

まどか「(どこでバレた……私のミスか?)」



――休み時間


まどか「……」カツカツ

メガほむ「あ! 鹿目さん、どうしたの?」

まどか「……」スッ

メガほむ「……?」

まどか「……あなたを殺す」ボソッ

メガほむ「!!?」ビクゥ

まどか「……」スタスタ

メガほむ「え……あ……」

メガほむ「(鹿目さん……どうしちゃったの?)」




――放課後


メガほむ「ど……どうですか……?」ゼェゼェ

まどか「…………」イライラ

マミ「時間停止ねぇ……確かに凄いけど、応用の仕方が問題ね」

メガほむ「は、はい……」

マミ「いくら一方的に攻撃できても、一発ごとの効き目が小さいんじゃ意味無いわ。魔女と戦うには、もっと威力のある武器を用意しないと」

メガほむ「わかり……ました」ショボーン

まどか「あなたは陰でサポートに回ればいい。その程度では、邪魔になるだけだ」

メガほむ「鹿目さん……」ジワァ

マミ「ちょっと言い過ぎよ、鹿目さん」

まどか「……」フン



――ワルプルギスの夜 2回目


ワルプルギス「」シュウウゥ



メガほむ「や、やったよ! ついに倒した……」

まどか「…………っ、」ブルブル

メガほむ「ど、どうしたの? 鹿目さん?」

まどか「魔法少女……魔女…………そういう事か……」パキィン

メガほむ「そ、そんな……! ソウルジェムがグリーフシードに……」

まどか「何て惨めな最期だ…………私の、私のミスだぁ!!」カチッ



ドッギャアァン!!



メガほむ「か、鹿目さん……」ガクッ





――時間遡行 二回目


さやか「あのさぁ、キュゥべえがそんな嘘ついて一体何の得があるわけ?」

メガほむ「そ、それは……」

さやか「あたし達に妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?」

メガほむ「ち、違……」

さやか「ともかく、あたしこの子と組むの反対だわ。まどかやマミさんは飛び道具だから良いけど、いきなり爆弾とか勘弁して欲しいっていうか……」

まどか「……いきなり射線上に飛び込む奴に、言う資格は無い」

さやか「う……で、でも! あれは近接戦向きのあたしはしょうがなくて……」

まどか「とにかく邪魔だ。今度私の視界に入ったらあなたを殺す」

さやか「ごめん……」

メガほむ「…………」

メガほむ「(これって、庇ってくれたの?)」




――人魚の魔女 結界内部


オクタヴィア「ウギャギャギャ!!」


杏子「やめろ! 目を覚ませさやか!」

メガほむ「美樹さん……どうして……!」

まどか「…………」ピピピピ

杏子「お、おい……何やってるんだ! あいつはさやかなんだぞ!」

まどか「このままでは、どの道全員死ぬだけだ……」

杏子「だけどよ……!」


オクタヴィア「キシャー!」ブオン


マミ「きゃあっ!」ドシャ

メガほむ「巴さん!」

まどか「……さやかちゃん。あなたを殺す」ギュオッ


オクタヴィア「」ジュワッ


杏子「あ……ああ………さやかぁ!!」

メガほむ「佐倉さん……」

まどか「…………任務完了」

まどか「(…………許せ。さやかちゃん……)」



杏子「さやか…………畜生、こんな事って……!」

まどか「…………」

杏子「おい! 何とか言えよ! この――」


バァン


杏子「」パタリ

メガほむ「あ……!………ぐうっ!」ギュルルル

マミ「…………っ、」ガタガタ

メガほむ「と、巴さん……!?」

マミ「ソウルジェムが魔女を生むなら、みんな死ぬしかないじゃない! あなたも、私も……!」カチャリ

メガほむ「や、やめてっ……!」


ビュアアッ


マミ「」ジュッ

メガほむ「……か……鹿目さん!?」

まどか「…………心が弱い魔法少女は死ぬだけだ」

メガほむ「…………え」

まどか「私は…………私はまだ、死ねない!」



――ワルプルギスの夜 3回目


メガほむ「私達も、もうお終いだね……」

まどか「……」コクリ

メガほむ「……私達、このまま二人で怪物になって、いやな事も悲しい事も忘れるくらいに壊して、壊しまくって……」

まどか「…………」ギリッ

メガほむ「……それはそれで、良いと思わない?」

まどか「…………」コツン

メガほむ「!」シュウゥ



メガほむ「ど、どうして……!」

まどか「………私の傷は深い。ソウルジェムが回復しても、体が動けるとは考えられない。だから……ほむらちゃんに頼みたい事がある」

メガほむ「……私に……?」

まどか「自爆…………スイッチを……探して」

メガほむ「」



メガほむ「……スイッチなら、ここにあるよ………けど、鹿目さんには渡せないよ!」

まどか「……何故だ?」

メガほむ「だって……だってあなたは! いつも自分を犠牲にして、それだけで……!!」

まどか「…………まるで、私を何度も見てきたような言い分だな」

メガほむ「……!」ビクリ



まどか「なら、わかるはずだ。私がこれから何になるかという事を……」

メガほむ「そ、それは……」

まどか「さあ、その手にあるボタンを押せ。そうして、“今”の私にトドメを刺すんだ……」

メガほむ「……いやぁ………できないよ……!」ガチガチ

まどか「……私が、あなたを殺してしまう前に……早く……!」

メガほむ「……いやよ! あなたを死なすくらいなら、あなたに殺されて私も死ぬ方がよっぽどマシだわ!」



まどか「それがイヤだから、こうして頼んでいる……」

メガほむ「………でも、でも……!」

まどか「…………教えてくれほむらちゃん。私はあと何人殺せばいい?」

メガほむ「…………ええ?」

まどか「私はあと……何人、あの希望を願った少女達を殺せばいいんだ……」

メガほむ「…………」

まどか「私は……あなたを殺したくない」

メガほむ「!!」



まどか「……さあ、早く!」

メガほむ「…………っ!!」グッ

まどか「……そうだ。それでいい………」

メガほむ「……約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる! 何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」

まどか「…………よろしく……頼む……」

メガほむ「うう……うううぅぅっッ!!」カチッ



ボッギャアアァン!!




――時間遡行 三回目



-まどかの部屋-



まどか「…………任務受諾」カタカタ カタカタ

ほむら「(……まどかが熱心にパソコンをいじってる……)」

まどか「…………?」チラッ

ほむら「まどか………」ジィー

まどか「……誰だ!」ガタッ

ほむら「あっ……!(見つかった!?)」

まどか「どこから入った!?」スチャッ

ほむら「(け……拳銃を!?)」


パァン! パァン!


ほむら「くっ………ひとまず逃げるわ」ササッ

まどか「チッ、逃がしたか……」



QB「随時と気性の荒い子だね。今日は止めとこうかな」テクテク



――ワルプルギスの夜 4回目



ほむら「きゃあっ!!」ドゴーン


ワルプルギス「アッハハハハ!!」


まどか「…………一方的な戦いだな」

QB「仕方無いよ。彼女一人では荷が重すぎた」

ほむら「うぐぅっ……! まどか……ソイツの言葉に耳を貸しちゃダメぇッ!!」

QB「諦めたらそれまでだ。でも、君になら運命を変えられる」

まどか「…………」

QB「避けようの無い滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。そのための力が、君には備わっているんだから」

ほむら「騙されないで……! ソイツの思うツボよ!」



まどか「……本当なんだな?」

QB「もちろんさ! だから、僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか「……契約………了解」

ほむら「ダメええぇぇぇッ!!」


ピカアッ!

シュゴオオォォ…


まどか「……契約完了。目標を排除する」ピピピピ



1分後……


ほむら「…………」バサバサ

QB「本当にもの凄かったね、変身したまどかは。まさか、あのワルプルギスの夜をいとも簡単に消し飛ばすとはね」

ほむら「……その結果どうなるかも、見越した上だったの?」

QB「遅かれ早かれ、結末は一緒だよ。彼女は最強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。もちろん後は、最悪の魔女になるしかない。今のまどかなら、10日かそこいらでこの地球を壊滅させてしまうんじゃないかな」

ほむら「…………インキュベーター」ギリッ

QB「まあ、後は君達人類の問題だ。僕らのエネルギー回収ノルマは、概ね達成できたしね」

ほむら「……」スクッ



QB「……戦わないのかい?」

ほむら「……ええ。私の戦場はここじゃない」

QB「…………暁美ほむら、君は……」

ほむら「……」カシャン



ほむら「(繰り返す。私は何度でも繰り返す)」ギュオオォ

ほむら「(同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る)」

ほむら「(……あなたを、絶望の運命から救い出す道を……)」

ほむら「(まどか……たった一人の、私の友達……)」



――本編時間軸


ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

さやか「うっわー、すげー美人だね」

ほむら「……」チラッ

まどか「…………?」ピーン

ほむら「(まどか……今度こそ)」

まどか「(………あの女、何故私を見る……?)」



――休み時間


ワイワイ

ガヤガヤ…


仁美「不思議な雰囲気の人ですよね、暁美さん」

さやか「ねえまどか、あの子知り合い? 何かさっき、思いっきりガン飛ばされてなかった?」

まどか「………さあな」

ほむら「…………」スタスタ

さやか「げっ、噂をすれば……」

ほむら「……鹿目まどかさん。あなたがこのクラスの保健係よね」

まどか「……そうだ」

ほむら「連れてってもらえる? 保健室……」

まどか「……了解」スクッ

さやか「(うわ……何これ気まずい)」



――渡り廊下


ほむら「…………」スタスタ

まどか「…………」スタスタ

ほむら「…………っ、」クルッ

まどか「……どうした?」

ほむら「鹿目まどか。あなたは、自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」

まどか「………命なんて安いもんだ。特に私のはな……」

ほむら「!?」ビクッ



ほむら「どうしてっ………どうして、そんな事を言うの?」プルプル

まどか「……あなたには関係ない」

ほむら「…………そう。なら、もういいわ」ファサッ

まどか「……?」

ほむら「だけど忘れないで。あなたに奇跡を約束し、取り入ろうとする者が現れても、決して言いなりになっては駄目。さもなければ、あなたは全てを失うことになる」

まどか「………覚えておく」

まどか「(私の……全て…………任務の事か?)」



――CDショップ


まどか「…………」シャカシャカ

???『助けて……』

まどか「…………?」ピタッ

???『助けて……まどか……!』

まどか「……誰だ? 私の名前を知っている……?」

???『僕を……助けて……!』

まどか「…………チッ、耳障りな声だ」イライラ



――CDショップ 改装工事現場


???『助けて……!』

まどか「通風口……上か!?」スチャッ


ガシャン!


QB「……ハァ、ハァ………」ボロボロ

まどか「…………」チャキッ

QB「まどか……!」

まどか「………あなたは……」

ほむら「そいつから離れて」

まどか「……!」クルッ

ほむら「…………」カツカツ

まどか「……ほむらちゃん」



まどか「………何の用だ?」

ほむら「あなたの側に横たわっている白いモノ、危険だから離れなさい」

まどか「なら、始末すれば問題ない」パァン!

QB「そ、そんな……」パタリ

ほむら「……」







さやか「あ……あんた達、何やってんの?」

まどか「……さやかちゃん、見てたのか」ジャコッ

ほむら「美樹さやか……」


グニャアァ…


さやか「えっ………ちょ、何これ!?」

まどか「……何だ? 何が起こっている……」

ほむら「こんな時に……」



アントニー「キャキャ」「キャッキャ」ゾロゾロ


さやか「うわわっ、来るなぁ!」

まどか「…………」パァン、パァン!


アントニー「」「」ブチャア


まどか「死にたくなければ下がっていろ」

さやか「あ、ありがと……」

ほむら「まどか……流石ね」ガァン、ガァン!

さやか「(女子中学生が拳銃を所持……って、相当ヤバいでしょ!)」



アントニー「ウヒヒ!」「ウェヒヒ!」ワラワラ


まどか「チッ、弾が……」カチカチ

さやか「ああっ! まどか、後ろ!」

まどか「……!」バキィ


アントニー「ゲフッ!」


さやか「ま、回し蹴り……」

ほむら「本命が出て来ないわね……無意味な戦いは避けたいのだけれど」


ヒュウウゥン…

ズドドドン!


まどか「……この弾道…………ヘビーアームズか?」

マミ「あなた達、大丈夫?」

ほむら「巴マミ……」



マミ「これで最後よ」ドガガガ


アントニー「」「」ベチャア


ほむら「……マスケット銃、じゃないのね」

マミ「何を言ってるの? 私は元々、連射が効く銃器しか使わないわ。……というよりその格好、あなたも魔法少女?」

ほむら「そんな所ね……」ファサッ

マミ「そう……。そこの二人も、怪我は無いかしら?」

まどか「……ああ」

さやか「だ、大丈夫です! というより、その白い生き物みたいなのがヤバそうですけど……」

QB「」チーン

マミ「……え、キュゥべえ?」



マミ「酷い……傷だらけじゃない! 頭も撃ち抜かれて……誰がこんなことを!?」

まどか「私が殺した」

マミ「! あ……あなたが?」

まどか「危険だとその女に聞いたんだ。だから始末した。それだけだ」

マミ「キュゥべえが危険って……あなた何を考えてるの!?」

ほむら「……事実よ。あなたも真実を知れば、ソイツがいかに害悪か思い知るわ」

マミ「真実……?」

ほむら「…………魔法少女についてのね」



さやか「ちょ、ちょっと……何がどうなってんのかわからないんだけど。さっきの出来事は一体………ていうか、魔法少女って何なんですか!?」

マミ「……そうね。あなた達にもキュゥべえが見えているからには、それなりの説明が必要ね。だけどその前に……彼女から話を聞いてからにさせてもらえる?」ガシャン

まどか「……まだ戦う気か」

ほむら「無駄な争いは本望じゃないわ。やめなさい」

マミ「私の友達を傷つけておいて、今更虫が良すぎると思わない?」

ほむら「…………なら聞かせてあげるわ。私達、魔法少女がどういう存在かをね……」



3分後……


マミ「確かに酷い話ね……でも、それが真実だという証拠はあるの?」

ほむら「ソイツは何度でも蘇る。今度会ったら、直接聞いてみるといいわ。コイツに感情なんてものは無いから、白々しく答えてくれるでしょうね」

さやか「……話聞いてると、魔法少女ってそんなに良くない感じがしてきちゃったわ……。なのに何で、あんたみたいに魔法少女になる人がいるの?」

ほむら「この事実は、普通は耳に入らない情報よ。なんたってコイツが、それについて自分から黙って喋らないんだもの」

さやか「随分と意地悪だね……」

マミ「それに魔法少女になれば、キュゥべえが何でも一つだけ願いを叶えてくれるから、それを信じて契約するのが普通なのよ」



さやか「え……何でも一つ?」

ほむら「!」

マミ「そうよ。つまり、どんな奇跡でも叶えてくれる代わりに、戦わなければならないのが魔法少女なのよ」

さやか「“奇跡”、かぁ……」

ほむら「一瞬、魔法少女になろうって、思ったでしょ?」

さやか「ちょっと……ね」

ほむら「やめときなさい。あなたのためにならないわ」

さやか「……どうしてさ?」

ほむら「それは……」

マミ「キュゥべえに選ばれた子には、選択する権利があるけど、決めるのは当人の問題よ。あなたや私が口出ししていい謂れは無いわ」

ほむら「……」

マミ「ただ、魔法少女になりたいと思うなら、よく考えて決めることね。自分勝手な使命感、目先の欲や願望に囚われてなるくらいなら、普通の生活を送った方がよっぽど良いわ」

ほむら「……!」

さやか「そ、そうですか……」

まどか「…………フン」

まどか「(私には任務がある。他に何も要らない……)」



――鹿目邸 夕食時


ドクターJ「はーいたっくん、アーン」

タツヤ「マウアー」パクリ

ドクターT「コーヒーのおかわり、いるかい?」

ドクターJ「んー、じゃあもらおっかな」

まどか「…………」モグモグ

ドクターJ「ねえまどか。今日の任務は少し楽過ぎたかねぇ?」

まどか「……別に。いつもと同じだ」ゴックン

ドクターT「市内汚職議員の粛清。ここ最近はそればっかりだね」

ドクターJ「いいんじゃない? 不要な人間を消して、それで市民のためになってるんだからさ。あたしらも、それでこんな豪勢な暮らしできるんだし」

ドクターT「ははっ、それもそうだね。だけど、全てはこの見滝原のためだということを忘れちゃいけないよ」

ドクターJ「わかってるさ。まどかだって、そのためにここまであたしらが育ててきたんだ」

まどか「…………」ズズー



――翌日 学校屋上


ほむら「どう? 話してもらった?」

マミ「悪びれることなく喋ってくれたわよ。あまりに腹が立ったから、今はベランダに吊してあるわ」

ほむら「……それで正解よ」

さやか「あたしも、マミさん家で聞いちゃったよ。キュゥべえ……見た目によらずとんでもない奴だったんだね」

マミ「宇宙のためだとか知らないけど、人を利用するだけ利用して要らなくなったら捨てるとか、まるで使い捨てのような扱いね」

ほむら「……アイツらは、そういう生き物だから……」




ほむら「……それにしても、随分と強いのね。あなたは……」

マミ「暁美さん……どうしたの?」

ほむら「いえ……魔法少女の真実を知ったら、普通はかなりショックを受けると思うのだけど……」

マミ「……あなたから初めて話を聞いた時、確かにショックは大きかったわ。キュゥべえから事実だと知らせれて、それなりに動揺もしたけど……」

ほむら「……けど?」



マミ「……だけど、塞ぎ込む理由にはならないわ。元々私なんて、生まれた時から死んでるようなものだし……」

さやか「え…………?」

ほむら「…………巴さん?」

マミ「……ごめんなさい。何でもないわ。ただ、こういう事には馴れていると言いたかっただけよ」

ほむら「……なら、良いのだけれど」

ほむら「(この時間軸の巴マミは、何かが違う……?)」



――昼休み


まどか「…………」

さやか「……ねえまどか。昨日の事、まだ覚えてる?」

まどか「……ああ」

さやか「あの白い生き物……キュゥべえって言うんだけど、ソイツの話聞いてたらさ、何だか無性に腹が立って来ちゃって……」

まどか「…………」

さやか「魔法少女とか願い事とか、全てアイツの口実で、本当はあたし達を利用しようとしてたんだよ」

まどか「…………そうか」

さやか「…………でもやっぱり、願いは本当に叶えてくれるみたい。マミさんも、実際に叶えてもらったと言ってたし……」

まどか「…………」



さやか「……もしさ、本当に何でも一つだけ願いが叶うとしたら、まどかは……どうする?」

まどか「…………くだらないな」

さやか「……!?」

まどか「……世の中は不公平だ。奇跡なんて、誰にも降りかかる物じゃない。それを使って事を成そうとするのは……間違っている」

さやか「…………そうだよね……ごめん」

まどか「……どうして謝る?」

さやか「いや……当たり前の事、訊いちゃったからさ……」

まどか「…………?」



――薔薇園の魔女 結界内部


ゲルトルート「グルルル」


マミ「悪いけど、そんなに構ってられないのよね」ドガガガ


ゲルトルート「エエッ!?」ボギャアァン


マミ「あっけない……もう終わりなの?」

ほむら「……強い」

ほむら「(戦い方がまるで違う……巴マミは、こんなに冷静だったかしら)」



――美国家の屋敷


バスン!


久臣「」ドタリ

まどか「……任務完了。これより帰投する」ササッ


ガチャリ


織莉子「…………お、お父様……?」

久臣「」グッタリ

織莉子「いやああぁぁぁっ!!」



まどか「……動くな」チャキ

織莉子「ひっ……!」

まどか「…………っ」ググッ

織莉子「……お父様が……お父様が何をしたって言うの!?」

まどか「(……何故だ、何故撃てない……! こいつに同情でもしているのか?)」

まどか「チッ……!」ガンッ

織莉子「あうっ……」ドサ

まどか「…………何をやってるんだ、私は……」ハァ ハァ



――鹿目邸


まどか「…………」ズズー

ドクターJ「今日はやけに疲れた顔してんじゃん」ゴクゴク

まどか「少し……な」

ドクターT「同じ任務ばっかりで、そろそろ飽きてきたんじゃないか?」

まどか「……そうだな」

ドクターJ「今度は、人殺し以外の任務を回せたら良いねえ。モビルスーツのテストとかさ」

まどか「……頼む」



――翌日 学校屋上


ほむら「キュゥべえが消えた?」

マミ「ええ。吊していたベランダから抜け出したようだったわ。全く、どうやって逃げたのかしら……」

さやか「思えばアイツ、この地球の生き物じゃないもんね。人間にはできない事もやってのけるんじゃ……」

マミ「とにかく、見つけたらただじゃおかないんだから」

ほむら「(……放っておけば、まどかにも奴の魔の手が伸びる………)」

さやか「ほむら、どうしたの?」

ほむら「いえ……何でもないわ」



――病院前


まどか「……」テクテク


ズズズズ…


まどか「……? これは……」

さやか「あ、まどか。どうしたのこんな所で………って、それグリーフシードじゃん!」

まどか「………面倒だな」

さやか「どうしよう! マミさんやほむらとも連絡とれないし、このままじゃ……」

まどか「……行け」

さやか「へ?」

まどか「私が中に入って時間を稼ぐ。その間に二人を早く呼んでこい」

さやか「そんな危険なこと……まどか一人じゃ無理だよ!」

まどか「……あなたにはできない。私にはできる」タタッ

さやか「あっ、ちょっと……!」


グニャアァ…


さやか「必ず……生きててよ! まどか!」ダッ



――お菓子の魔女 結界内部


まどか「…………邪魔だ」パァン パァン!


ピョートル「」「」バタ バタ


まどか「……前方に5匹、左右に3匹ずつか……」ジャコッ


ピョートル「トテトテ」「トテトテ」


まどか「…………」バキィ!


ピョートル「ブッ!」グシャ


まどか「(……遅い。さやかちゃんは何をしてるんだ)」



5分後……


まどか「……目標確認」ジャコッ


シャルロッテ「ムベベー!」チョコン


さやか「まどかー! 無事!?」

まどか「……来たか」

マミ「使い魔の死体が……これ全部、あなたが殺ったの?」

まどか「……ああ」

さやか「あのぬいぐるみみたいなヤツが魔女? 何か弱そうなんですけど……」

ほむら「見かけで判断してはダメよ。どんな手を隠し持ってるか……」



まどか「……死ね」パァン!


シャルロッテ「ベベッ!」ビスッ


さやか「ありゃあ……もうお終いか」

マミ「……! 見て、あれ……!」


シャルロッテ「ムベー!!」ニュルン


ほむら「まどか、危ないわ!」

まどか「……ちっ、まだ生きていたか」サッ


シャルロッテ「ウガー!」


マミ「……蜂の巣にしてあげる」ギュガガガ

ほむら「え……」


シャルロッテ「ヒドイノデス!」ボゴーン


さやか「マミさん……強えェ……」

まどか「…………これが、魔法少女か」



――翌日 上条恭介の病室


恭介「もうやめてくれよ! 弾けもしない曲なんか聞いたって、辛いだけなんだ!」ガシャァン

さやか「き、恭介……!」

恭介「…………帰って、くれないか……。一人にして欲しいんだ」

さやか「…………ごめん。本当に、ごめん……」


ガラガラッ

ピシャッ


さやか「…………」グスン


――病室前廊下


さやか「………」トボトボ

まどか「……」

さやか「……あ、まどか…………待たせちゃってごめんね」

まどか「…………」

さやか「……やっぱり、聞こえてた?」

まどか「まあな………」

さやか「…………あたしって、ホント馬鹿だよね。恭介のためにやってきた事が全部裏目に出ちゃうなんて……自分の独善でやってきた証拠だよ」

まどか「……さやかちゃん…………」



さやか「……もう、絶対に面会してくれなさそうだね……」ジワリ

まどか「…………」

さやか「うう……うぅっ………」ポロポロ

まどか「……早く帰れ。ここにいたら、自分を苦しめるだけだ」

さやか「…………うん」グズッ



――帰り道


まどか「…………」スタスタ

仁美「ウフフ……」フラフラ

まどか「………?」

仁美「……あら、まどかさんじゃありませんか」

まどか「……歯を食いしばれ」

仁美「え?」


バキッ


仁美「」パタリ

まどか「……フン」

まどか「(魔女の口づけ……どうしてこいつが……)」




グニャアァ…


まどか「……この気配、魔女か……」


エリー「ヒヒヒヒ!!」パタパタ


まどか「……」パァン パァン!


使い魔「」「」バタバタ


まどか「くそっ……」カチカチ

まどか「(雑魚に構っている余裕は無い……か)」




ブッピガン!


エリー「!?」スパパッ


まどか「! あの姿……」

さやか「これで終わりだああぁぁ!!」ブオンッ


エリー「」パックリ


さやか「遅くなってゴメン、まどか!」

まどか「…………さやかちゃん。その格好……」

さやか「……えーと、まあ色々考えた結果だよ」アハハ…

まどか「…………」




ほむら「……美樹さやか。あなたって子は……」ザッ

まどか「!」

さやか「ほむら………あんた、見てたんだね」

ほむら「魔法少女になれば、どういう結末になるか知っていたはずよ。なのに、どうして……」

さやか「……キュゥべえの口車に乗ったって言うんなら、確かにそうかもしれない。けど、あたしにはこうするしか無かったんだよ。これ以上……アイツが、恭介が苦しむ姿を見たくないんだ」

ほむら「…………っ」グッ



まどか「…………好きにさせておけ」

ほむら「!」

さやか「……まどか?」

まどか「……自分で選んだ道だ。私やほむらちゃんには関係ない」

ほむら「まどか…………あなたは……」

さやか「…………」

まどか「……ただ、自ら戦いを選び、その先で後悔するような奴なら……私は許さない」

さやか「…………当たり前だよ。後悔なんて、あるわけない」

ほむら「…………」ファサッ





――翌日


マミ「……そう。美樹さんも、魔法少女になったのね」

さやか「というわけでマミさん、今日から後輩として頑張るんで、どうかよろしくお願いします!」

ほむら「せいぜい頑張りなさい。私は助けないわよ」

さやか「そ、そんな冷たい事言わなくても……」

マミ「でも、戦場で必ず誰かが助けに来てくれる保証なんて、どこにも無いわよ」

まどか「……自分で生き延びる術を見つけることだな」

さやか「わ、わかってるって!」

さやか「(ほむらやマミさんはともかく、まどかも戦い馴れしてるのかな……)」





――路地裏


さやか「こんのぉッ! 待てー!」ヒュカッ


使い魔「ブーン!」「ブンブンブーン!」


まどか「…………」パァン!


使い魔「ヒャアッ!?」ガキィン


まどか「……!?」

さやか「逃げられた!?」

杏子「ちょっとあんた達、何してくれちゃってるのさ?」フォン フォン

まどか「……」




さやか「何って……あれを放っておいたら、誰かが殺されるんじゃ……!」

杏子「わかってないねぇあんたも。あれは使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」

さやか「……何が言いたいの?」

杏子「だからさぁ、4、5人ばかり喰って魔女になるまで待てば、グリーフシードも孕むんだって。グリーフシードがあれば魔法で人生好き放題、それでこそキュゥべえと契約した旨味があるってモンだ」

さやか「要するにあんたは、魔女に襲われる人達を……見殺しにするっていうの!?」

杏子「……あたしはね、弱いヤツが嫌いなんだ。自分より弱いヤツなんて、殺す価値も無い。だから弱い人間を魔女に喰わせて、その魔女をあたしが喰う。あたしが殺すのは、強いヤツと魔女だけさ」ブォン

さやか「…………あんたはっ」ジャキッ



杏子「まさかとは思うけど、やれ人助けだの正義だのとかいう理由で、あいつと契約したんじゃないだろうねぇ?」

さやか「だったら……何だって言うのよ!」


ガキィン、ガキィン

ブッピガン!!


さやか「あうぅッ!」

杏子「あたしのツインビームトライデントを真っ正面から受け流そうなんざ、百年早えんだよ!」

さやか「くぅっ………まだだ!」ブォン

杏子「素人が! 見え見えなんだよ!」ギュイィッ

さやか「なっ……何か伸びた!?」


バキィン


さやか「かはっ……」ドシャ

杏子「……ドラゴンハングの直撃を食らったとなりゃあ、立ち上がれねえだろ」ヒュン ヒュン



さやか「ま……まだ終わってないわよ!」

杏子「……回復魔法か。随分とけっこうな技持ってるようだけど、果たしていつまで保つかねえ? そこの桃髪の野郎は助けないのかい?」

まどか「…………」

さやか「まどかは……まどかは関係無いわよ!あんたと戦う理由なんて、これっぽっちも無いんだから!」ビュオッ

さやか「(ここでまどかに頼ったら、私が魔法少女として戦うことに示しがつかない!)」

杏子「そうかい。でもそんな戦い方じゃあ、いつまで経ってもあたしにゃ勝てないよ」ガキン

さやか「ちいっ……!」



杏子「そらよッ!」ガキィン

さやか「しまった! 武器が……!」

杏子「終わりだよ!」ブオンッ


ガキィン!!

ジガガガ…


杏子「何っ……!?」

まどか「…………」ググググ

さやか「…………ま、まどか!?」



ブッピガン!


杏子「……懐にビームサーベル仕込んであるなんて……あんた、ただ者じゃないね」

まどか「…………」

さやか「まどか……」

まどか「……いつまでも世話の焼けるヤツだ」

さやか「うう……ごめん」

杏子「見た所あんたは魔法少女じゃないっぽいけど、あたしと殺り合う気かい?」

まどか「……そのつもりは無い」スッ

杏子「へえ、賢いじゃん」



まどか「私には任務がある。いちいち小事に構っている余裕は無い」

さやか「…………」

杏子「……なるほどね。どうやらシラけちまったようだし、あたしは帰るよ。それと、二度とあたしに戦いを挑まないように、そこの勘違い野郎にキツくお灸を据えてやってくれよ?」シュンッ

さやか「なっ……何をッ!」ダッ

まどか「よせ。未来は見えているはずだ」ガシッ

さやか「………負けた。あんな奴に……」



――鹿目邸 地下格納庫


ドクターJ「まどか、リーオーの調子はどうだい?」

まどか『良好だ。任務への支障も無いだろう』ピピピッ

ドクターT「その内、モビルスーツ戦を想定したVRトレーニングも実装する予定だからね。楽しみにしておくといい」

まどか『了解した』

タツヤ「りーおー、おっきいー!」ジタバタ

ドクターJ「たっくんはまだ早いよー。大きくなったら乗せてあげるからね」



――2日後


さやか「はああぁっ!!」ズバシュ


使い魔「」「」ザックリ


さやか「ふうー、ようやく終わったみたい」

まどか「…………」

さやか「……ごめんね、まどか。私のわがままに付き合ってもらっちゃって」

まどか「……問題無い。それより、その戦い方では全く進歩しないぞ」

さやか「うぐぅ、相変わらずお厳しい……」

まどか「相手の動きを読め。まずはそれからだ」

さやか「(それができれば苦労しないっつーの!)」



さやか「ほむらとマミさんは別の反応がある場所へ行っちゃったけど……どうする?」

まどか「あの二人なら心配無い。あなたと違ってな」

さやか「あはは……そうだよね」

さやか「(な、何もそこまで言わなくても……)」ズキ

まどか「……私は戻る。任務があるからな」

さやか「ああ……うん。今日はありがと、まどか」

まどか「…………」スタスタ


――上条家の前


さやか「……」

杏子「やれやれ。今日一日追っかけ回して素直に会う度胸も無いのかい?」

さやか「! お前は……」

杏子「……まったく、たった一度の奇跡をくだらねぇ事に使い潰すとはね」

さやか「お前なんかに……何がわかる!」

杏子「場所変えようぜ。ここじゃあんたも。安心して戦えないだろ?」

さやか「……ちっ」



>>157の訂正


――上条家の前


さやか「……恭介」

杏子「やれやれ。今日一日追っかけ回して素直に会う度胸も無いのかい?」

さやか「! お前は……」

杏子「……まったく、たった一度の奇跡をくだらねぇ事に使い潰すとはね」

さやか「お前なんかに……何がわかる!」

杏子「場所変えようぜ。ここじゃあんたも、安心して戦えないだろ?」

さやか「……ちっ」



――歩道橋


杏子「……あんたは正しいのか?」

さやか「何……!?」

杏子「あんたは正しいのかと聞いている!」ブオン

さやか「くぅっ!」ガキィン

杏子「他人のために奇跡を使い、自分を犠牲にして、それが正しいと言うならとんだ甘ちゃんだよ!」ブンッ

さやか「あぐっ!」ズシャ

杏子「今度こそ本当に息の根を止めてやろうか?」チャキン

さやか「うう……」


ババババ!

ズドドドドン…


さやか「な、何が……」

杏子「……久しぶりだね。マミ先輩?」

マミ「これ以上、私のかわいい後輩に手を出さないでくれるかしら?」

さやか「マミさん!」



杏子「そのデタラメな量の弾幕……。音だけでわかったさ」

マミ「どういうつもり? 美樹さんが何をしたって言うの?」

杏子「ちょっとばかしお説教さ。あたしはどうもこいつのやり方が気に食わないんでね」

マミ「……まだ引きずってるのね」

杏子「……」チッ

さやか「……?」



――翌日 ファーストフード店


仁美「ずっと前から……私、上条恭介君のことお慕いしていましたの」

さやか「……え?」

仁美「さやかさんは、上条君とは幼馴染みでしたわね」

さやか「そりゃまあ、そうだけど……」

仁美「……さやかさん。あなたは、本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「な、何言って……」

仁美「私、明日の放課後に上条君へ告白します。一日だけお待ちしますわ。その間に……さやかさんは上条君に、自分の気持ちを伝えるべきかどうか決めて下さい」

さやか「あ、あたしは……」



――廃墟の教会


杏子「だからあたしは、他人のために二度と魔法を使わないって決めたんだ。人の都合を知りもせず、勝手な思い込みで願いごとをしちまったせいで、結局誰もが不幸になったんだ……」

さやか「……どうしてその話を、私に?」

杏子「あんたとあたしは同類だ。他人のために魔法を使うことでしか、自分の願いを見つけることができなかったんだよ。これ以上、後悔するような生き方を続けるべきじゃない。あたしらはもう、対価としては高すぎるモンを支払っちまってるんだ」

さやか「……」

杏子「あんたも開き直って、好き勝手やればいい。自業自得の人生だ、誰にも文句を言われる筋合いはねえよ」

さやか「……それでも、それでも私は、人のために祈ったことを後悔してない。その気持ちを嘘にしないために、後悔だけはしないって決めたんだ」

杏子「……何であんたは」

さやか「……あんたのこと、色々と誤解してたのは謝るよ。ごめんね」

杏子「……」

さやか「でも、私は高すぎるものを支払ったなんて思わない。この力は使い方次第で、いくらでも素晴らしいモノにできるはずだから……」

杏子「……馬鹿が。あたしらは魔法少女だぞ! 他にわかってくれる奴なんていねえんだぞ!」

さやか「私は、私のやり方で戦う。それが間違ってるって言うんなら、この前みたいに殺しに来ればいい。私も負けないし、あんたのことも恨んだりしないよ」スタスタ

杏子「……くそっ」ガンッ




――公園


ほむら「ここいらの魔女も、粗方片付いたわね」

マミ「手応えがなくて飽きちゃうわ。ここ最近弱い魔女ばかりしか出てこないもの」

ほむら「…………そうね」

織莉子「あら、その恰好……。お二人ははもしかして、魔法少女ですか?」

マミ「……あなたこそ、その衣装は魔法少女のものでしょう?」

織莉子「ふふふ。お仲間ができてうれしいですわ」

ほむら「…………」



織莉子「ところで、お二人にお聞きしたいことがありますの。この写真の子を探してるんですけど、どこかで見かけたりはしてませんか?」ピラッ

マミ「……! こ、これは……」

ほむら「(!! なぜ、まどかが……)」

マミ「あ……あの、この子がどうかしたーー」

ほむら「知らないわ。悪いけど、他を当たってくれるかしら?」

織莉子「そうですか……。ごめんなさいね、お邪魔してしまって。また縁がありましたらどこかでお会いしましょう」スタスタ

マミ「……あ、暁美さん? あの人、どうして鹿目さんを……」

ほむら「……わからないわ」ファサッ

ほむら「(まどかを探していた……? 何のために……)」



――影の魔女 結界内部


エルザマリア「……」シュン シュン


さやか「くうッ……!」ザクッ

まどか「……下がれ。このままだと死ぬぞ」

さやか「……っ、ま、まだやれるよ……」


ブオンッ

ブッピガン!!


杏子「まったく……見てらんねーっつーの」シュタッ

さやか「……あんた」

杏子「いいからもうすっこんでなよ。手本を見せてやるからさ……」

さやか「邪魔しないで。一人でやれるわ」ヒュンッ

杏子「お、おい!」

まどか「…………」



ドスッ


さやか「……ッ」ゴフッ

杏子「さ、さやか!」

さやか「はは……あはは……」ボタボタ

杏子「……な、何笑ってやがるんだ」


ザクッ、ザクッ

ドスッ、グシャ


エルザマリア「」バキッ ピキッ


さやか「キュゥべえの言ってた通りだ……。その気になれば、痛みなんて完全に消しちゃえるんだ……」クスクス

杏子「……さやか。あんたまさか……」

まどか「…………」チッ




シュウウゥ…


さやか「やり方さえわかれば簡単なもんだね。これなら負ける気がしないわ」ククク

杏子「おい……」

さやか「グリーフシード、あげるよ。それが目当てなんでしょ?」ポイッ

杏子「……」パシッ

さやか「あんたに借りは作らない。これでチャラ。いいね?」

杏子「さやか……」

さやか「さ、帰ろう? まどか」スタスタ

まどか「……ああ」スタスタ



杏子「…………あのバカ……」



――バス停


さやか「ねえまどか。今日のあたし、いつもよりちゃんと戦えてたでしょ? これで、あたしもルーキー卒業だよね」フフフ

まどか「……素人の戦いだ。あんなものは……」

さやか「…………何?」

まどか「……あんな戦い方を続ければ、いずれ命を落とす。何よりも、あなたのためにならない」

さやか「……あたしのためって、何よ?」

まどか「…………」




さやか「こんな姿になった後で、何があたしのためになるって言うの?」

まどか「……」

さやか「あんたはいつもそうだよね。あたしをを見下して、それでいて自分は何もせずにただ見てるだけ……」

まどか「……」

さやか「あんたはいいよね。魔法少女のあたしなんかより、ずっと強いんだし」

まどか「……」

さやか「キュゥべえから聞いたわよ。あんた、誰よりも才能あるんだって。あたしみたいに苦労しなくても、簡単に魔女をやっつけられるんでしょ!?」

まどか「……」

さやか「何とか言いなさいよ!! いつも黙ってばかりで気味悪いのよ、あんたは!」



まどか「…………私を殴れ」

さやか「…………は?」

まどか「あなたは私が気に食わないんだろう? だったら、気が済むまで私を殴ればいい」

さやか「……随分とナメられたもんだね、あたしも……」ブチッ

まどか「……早くしろ。やるならやれ」

さやか「……ッ! 言われなくても!」ブンッ


パチンッ


まどか「……っ!!」ギロッ

さやか「あ……まどか……?」ビクッ


ドゴッ!!


さやか「か……は………。な、何を……」ガクガク

まどか「悪いな。一回は一回だ」

さやか「ま……ど…………か………」パタリ

まどか「……フン」

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