咲「そしてみんないなくなった」(90)

立つかな?

――清澄高校・旧校舎

京太郎「ふうん、じゃあ今日は部活出られないのか?」

咲『う、うん……明日には治ってると思うんだけど……ごほっごほっ』

京太郎「あーあー、無理すんなって。みんなには俺から伝えとくからさ、今日は日曜だしゆっくり休んどけ」

咲『わかった……じゃあまた明日ね京ちゃん』

京太郎「おう、夏だから幽霊には気をつけろよ」

咲『ゆ、幽霊!?』

京太郎「くくっ、じゃあなー」

咲『ちょ、ちょっと京ちゃ――』

ピッ

京太郎「さて、それじゃあ早く部室行ってみんなに咲の休みを伝えないとな」スタスタ

――麻雀部部室

京太郎「こんちわっす……ってあれ、まだ誰も来てないのか」

京太郎「しゃーない、掃除でもして待ってるかね……モップモップっと」

京太郎「それにしても暑い……もう少し気温下がらねえかな……」ゴシゴシ

京太郎「よし、次は雀卓の掃除っと……」

京太郎「牌の汚れ取れねえな……優希のやつ、何回注意してもサルサソースこぼしやがって……掃除する身にもなれっての……」




ガタン!

京太郎「……ん?今なんか音したような……」

ガタンガタン!

京太郎「ん?」クルッ

シーン…

京太郎「おっかしいなあ……間違いなく音してるんだけど誰もいない」

京太郎「まさか幽霊とかじゃないよな……いやいや、そんな事今までなかったっての」

京太郎「風かなんかだろう、うん。掃除に集中すりゃ気にならなくなるさ」ゴシゴシ

ガタ…

京太郎「……」

ガタガタガタン!

京太郎「……」

ガタンガタンガタン!

京太郎「――誰だか知らねえけどいいかげんにしろよ!」クルッ

ガタンガタン!

京太郎「……はっ!?」

京太郎(ロッカーが、こっちに向かって動いてる……おい、おいおいおいおいおいなんだよこれ!)

ギィィ…

京太郎(あ、ロッカー開い……)

ガシッ!

京太郎「なっ!?」

京太郎(なんだこれ、手?なんで、なんでロッカーから手が伸びて……つうかロッカーの中が暗くて、見えねえ……!おかしい、なんかおかしいってこれ!)

ググッ…

京太郎「げほっ、げえっ!?」ジタバタジタバタ

京太郎(首絞めて、きやがった……な、なんだよ、これは……!)

ギュウウウウ…

京太郎「が、あ……げ、ぐ……」

京太郎(首、絞まっ……力、強すぎて、振りほどけない……こいつ、なんなんだよ……モップ出した時は、何もいなかっ――)

ボキンッ!

ドサッ

ズルズルズルズル…

ギィィ…バタンッ

シーン…

――数分後

優希「とうちゃーく!」

優希「ってまだ誰も来てないじぇ……タコスでも食べて待ってるか」

――さらに数分後

優希「あー!ひーまーだー……みんな何してるんだ」

優希「退屈だじぇ……タコスも全部食べちゃったし」

カラン…

優希「じょ?」

優希「なんだこれ……あっ、男子制服の襟に付いてるプレートか」

優希「という事はこれは京太郎のか……なるほど、京太郎のやつ隠れて私を驚かせようという魂胆なんだな!」

優希「ふふっ、いいだろう……このかくれんぼの鬼と言われた片岡優希、京太郎ぐらいちょちょいのちょいで見つけてやろう!」

優希「さあて、どこに隠れたんだ京太郎め……」

優希「というか京太郎の体格じゃ隠れられるのなんてベッドかロッカーくらいしかないじゃないか!」

優希「そんな事にも気付かないとは浅はかな小僧だじぇ……こんな事してる暇があったらタコス買ってこーい!」バタンッ!

グラッ…

京太郎「」ドサッ

優希「……えっ?」

優希「きょ、京太郎……?」

京太郎「」

優希「こ、こんなところで寝てたら風邪ひくじぇ……早く起きろ……」ユサユサ

京太郎「」

優希「京太郎、京太郎……」ユサユサ

京太郎「」

優希「あ、ああああ……」

優希(で、電話……電話しなきゃ……)

優希「あ、あう……指、震え……」チラッ

京太郎「《●》《●》」カッ

優希「ひいっ!?」

優希(な、なんで!?さっきまで目閉じてたのにいつの間にか、開いてる……!)

優希「そ、そんな目で見ないで……だ、誰か、早く出て……」



ピクッ…

まこ『おぉ、優希か。何かあったんか?』

ユラッ…

優希「そ、そめ、染谷先輩……!」

まこ『ど、どうしたんじゃ?』

ズルズル…

優希「きょ、京太郎が……京太郎が……!」

まこ『京太郎がどうした?優希、落ち着いて話を……』

ブンッ!

優希「京太郎が!ロッカーの中で死ん――」

ガツンッ!

優希「あぐうっ!?」

まこ『優希!?』

優希「い、痛……痛い、じぇ……」

ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!

優希「だ、だれ、か……」

まこ『おい優希!どうしたんじゃ、優希!』

優希「たす、け、て……」

グシャッ!

まこ『優希、優希!返事をせんか、優――』

バキッ、メキッ!

ブツンッ…

ズルズルズルズル…

ギィィ…バタンッ!

シーン…

――数分後

まこ「優希!」

まこ「誰も、おらんのか……?」

まこ「いや、そんなはずがない……あの時の優希の様子はとてもじゃないが冗談ですむようなものじゃなかった……」

まこ「確か優希が最後に言おうとしてた言葉は京太郎がロッカーで……じゃったな」

まこ「ロッカーか……」

ギィィ…

まこ「何も、ないな……」

バタンッ

まこ「いったい部室で何があったんじゃ……」



「《●》《●》」

まこ「!?」

シーン…

まこ「な、なんじゃ……今誰かに見られてたような気が……」

まこ「くそっ、どうにも冷静にものを考えられん……一回外に出た方がええな」

ガチャガチャ…

まこ「んっ?なぜじゃ、なぜ開かんのじゃ……?この、この!」

バタンッ!

まこ「っ!?」クルッ

まこ「今、ロッカーから音が……だ、誰かおるんか!」

シーン…

まこ「……ええい、くそっ!いったいなんだって言うんじゃ!悪ふざけなら本気で怒るぞ!」

バタンッ!

シーン…

まこ「やっぱり、何もないか……全く何だって言うんじゃ……」

ドスッ!

まこ「……っ!?」ブシュッ

まこ「……」ドクドク…

まこ(なんじゃ、これ……何か、わしに刺さって――)

ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ!

まこ「あ、が…」

まこ(こりゃ、しくじったか……すまん、優希、京太郎……仇、取れそうにない――)

ガクッ、ドサッ

ズルズルズルズルズルズル…

ギィィ…バタンッ

シーン…

――数分後

和「こんにちは……あら、まだ誰も来てないんですか」

和「おかしいですね……ゆーきと須賀君は部室に向かった姿を確かに見たはずなんですが」

和「言っていてもしかたないですね、ネト麻でもして待ってましょう」ストンッ

和「……」カチカチ

「……」ジー

和「……」カチカチ

「……」ジー

和「……」カチ…

「……」ジー

和「あの、何でしょうか……部長」

久「あら、気付いてたの?」

和「あれだけ視線を送られれば気付きますよ……いつ来たんですか」

久「いや、最初からいたわよ?ちょっとベッドで寝てて今起きたのよ、最近学生議会の書類が多いから疲れちゃって……休みも仕事やらないと追いつかないのよね」

和「そうだったんですか」

久「ちなみに須賀君は来てたけどまた出て行ったみたいね。ウトウトしてる時独り言が聞こえたから」

和「じゃあゆーきのためにタコスを買いに行ったんですね、きっと」

久「たぶんね……っと噂をすればメールがきたわ……あら」

和「どうしました?」

久「えーっと……なんか体調崩したみたいだから今日は休むって。優希も付き添いで一緒みたい」

和「そうですか……じゃあ後は染谷先輩と咲さん待ちですね」

久「そうねー……暇だし須賀君もいないから雀卓でも拭いてようかしら」

和「私も手伝いましょうか?」

久「いいわよ、1人でも出来る作業だしね。えっとタオルは確かロッカーに……」キィ

まこ「」ドクドク…

久「!?」

まこ「」ドクドク…

久「……」バタンッ

久(な、何、今の……ロッカーに血まみれのまこが入ってたように見えたんだけど……)

久「いや、そんなまさかね……」キィ

まこ「」ドクドク

久「ひっ……」

まこ「」ドクドク

久「あ、あはは……私、疲れがたまってるのかしらね。さすがに幻覚見るなら休んだ方がいいかも……」

まこ「」ガシッ

久「さ、最近の幻覚は物が掴めるのね……新発見、だわ……」カタカタ…

まこ「」ニタア…

久「の、和、助け――」

まこ「」ガバッ

久「んぐうっ!?」

まこ「」ググッ

久「んう、んー!」ジタバタジタバタ!

まこ「」ミシッ…

久「ん、ぐう……!」

久(いや……やだ、私はまだ死にたくないの!やめて、やめてよ、いや、いやあ!)ググッ…

まこ「」ガリッ!

久「っ……!」

パッ…

久(いやあああああああああっ!!)

バタンッ!

ガタガタガタ!

グシャッ、グチュッ、ブシュッ!

ガタン…

シーン…

和「ふうっ、少し休憩しましょうか。お茶を入れますけど部長は……」

和「部長?」

和「どこに行ってしまったんでしょうか……」

ジー

和「……はあ」

ジー

和「またですか部長……こういう事はやめてください」クルッ

シーン…

和「えっ……確かに今見られてたはずなのに。ゆ、ゆーきですか、こんな悪ふざけをするのは!?」

グイッ!

和「痛っ!?だ、誰です、人の髪を引っ張るのは!」クルッ

シーン…

和「ど、どうして?誰もいないんですか……?今の数秒で足音も出さずに隠れるなんて出来るわけ……」カタカタ…

グイッ、グイッ!

和「ううっ!や、やめて……痛、いです……」

和(色んな方向から髪を引っ張られて……でも誰もいない……そ、そんなオカルトありえません!)

和「出ないと、部室から早く……!」タタタッ

ガチャガチャ!

和「なんで、なんで扉が開かないんですか!?なんで……嘘です、こんなの、こんなのありえるはずが!」

グイッ!

和「きゃあっ!?」バタッ!

ズルズル…

和「や、やめてください!髪を引っ張らないで、引きずらないで!お願いします、やめてください……!」ポロポロ

ガンッ!

和「うっ!?」

和(何かにぶつかって……これはロッカー、ですか?頭だけ、ロッカーに入った状態……っ、なんで、こんな目に遭わなければいけないんですか……!)チラッ

京太郎「」

優希「」

まこ「」

久「」

和「ひいっ!?」

和(そんな……ゆーき、染谷先輩、部長、須賀君……みんな、もう……)

ググッ…!

和「痛っ!いや!やめてください!頭押さえつけないで!」

ギィィ…

和「な、何を……いや、そんな……まさか……」

和(ロッカーの扉が限界まで開いて……待ってください、今思いっきり閉められたら首の骨が……)

和「いや……いやです、いや、いや、やめてええええええっ!!」

ギィィ!

和「助けて、咲さん……」ポロポロ

.





バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!バタンッ!

ボキッ、メキッ!

ガンガンガンガンガン!

ブチブチブチ…ゴトンッ

ギィィ…

ズルズルズルズル…

ギィィ…バタンッ

シーン…

.





――数日後





.

咲(翌日、風邪を治した私を待っていたのはあまりに残酷な知らせでした)

咲(和ちゃん、優希ちゃん、京ちゃん、染谷先輩、部長……私以外の麻雀部部員がみんな行方不明になった……緊急の全校集会で先生が話していた内容が今でも頭の中でこだまみたいに響いています)

咲(麻雀部の部室は今開かずの部屋となっています……先生達が調べようとしたみたいですが、扉は開かず扉を壊そうとすると事故が多発していつしか誰も開けようと思わなくなったらしいです)

咲(団体戦は麻雀部が私だけになってしまって廃部同然となったため、二位の龍門渕高校が繰り上げで県代表になると聞きましたが、正直私はそんな事どうでもよくなっていました)

咲(クラスのみんなは麻雀部で1人残った私を避けています……いつの間にか私がみんなをどうにかしたんじゃないかなんて噂も流れていて)

咲(だから……)

.





咲(私、疲れちゃいました)





.

――旧校舎・麻雀部部室前

咲「……」

咲(他の人が開けようとしても開かない扉……たぶんその理由は……)グッ
ギィィ…

咲(――私じゃないと、開かないから)

バタンッ!

咲(閉まっちゃったか……まあ、いいや。どちらにしろ私はここに用があるんだし)

ガタン!

咲「……」スタスタ

咲(ロッカーか……もし私の予想が正しいならみんなは――)

ギィィ…

咲「ああ……」

咲(やっぱり、そうだったんだ……)

咲「みんな、私を待っててくれたんだね……」

京太郎「」ガシッ

咲「京ちゃん……」

優希「」ガシッ

咲「優希ちゃん……」

まこ「」ガシッ

咲「染谷先輩……」

久「」ガシッ

咲「部長……」

和「」ガシッ

咲「和ちゃん……」

咲「みんな、待たせてごめんなさい……」

咲「――私も今逝きます」

.





ボキッ、メキッ、グシャッ、グチュッ、ガンッ、ドスッ、ブシュッ、グチャッ、ガブッ…

ズルズルズルズルズルズルズルズル…

ギィィ…バタンッ!

シーン…

――あー、咲ちゃんやっと来たじぇ!

――全く、相変わらず迷子になりやすいな咲は

――ご、ごめんなさい!

――まあ、構わんじゃろ。時間はたっぷりあったしのう?

――まあねー……最初はどうなるかとも思ったけど

――咲さん……来てしまったんですね。私は別にいくらでも待ちましたよ?

――ごめんね、みんなに早く会いたかったから……

――別に謝る必要はありませんよ。ありがとうございます咲さん……

――……うん

――よし、じゃあ麻雀部全員揃ったし……早速打ちましょうか!

――やれやれ、あんたはどこ行っても変わらんな

――よっしゃー!じゃあ来たばかりの咲ちゃんがやるべきだな!

――わ、私!?

――ゆーきの言うとおりですね……行きましょう咲さん!

――えっとえっと……うん!

――ねぇねぇ、知ってる?開かずの麻雀部部室の噂

――麻雀部?清澄って麻雀部あったんだ?

――ずっと昔にね。で、その開かずの麻雀部部室なんだけど……実は特定の条件を持つ人だけ開けられるんだって!

――その条件って?

――それはね、麻雀を楽しんでる人なんだって!

――へぇ、それで?

――なんでも開かずの麻雀部部室にはロッカーがあって……そのロッカーはずっとその時間を過ごしていたいって思う人の願いを叶えてくれるんだってさ!

ギィィ…

――ふうん、じゃあいい話なんだ?

――あー、そうでもないかも。だってその方法って……

バタン…

――その人を殺して、永遠に自分の作った世界に引きずり込むってやり方らしいから


カン!

暑さにムシャクシャしてやった、反省はしている
一応言っておくと社畜の人とは別人です

補足するとロッカーさんは部長が一年の頃1人で寂しがってるのを見ていたので、今一番幸せだろうこの瞬間を永遠にしてあげようとよかれと思ってやらかしました

それでは

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