成香「麻雀向いてないんでしょうか…」 誓子「……」(87)

[南北海道予選 数か月前]
[有珠山高校 麻雀部部室]

 ザワザワ ガヤガヤ
 パシッ ポンッ チーッ
 パンッ ロンッ センロッピャク!

爽(…ん。皆がんばってるな……)テクテク

揺杏「あっ、獅子原先輩」

爽「おー。どした、揺杏」

揺杏「向こうの卓なんですけど……」チラッ

爽「…まーた成香か」ポリポリ

揺杏「ちょっと今日は調子悪いみたいで…それでいつも通り……」

爽「ん、分かった。ちょっと見てくるわ」


由暉子「…」打:8p

誓子(…なるか……)打:白

成香「ぅぅ……」グズッ スンッ

爽(…またそーとーグズってるな……)

由暉子「…」

由暉子「あの、本内先輩のツモ番ですよ」

成香「あうっ!? ご、ごめんなさい……」スッ

成香(うぅ…今日はずっと和了れてません…… …あっ)

[2356m5(赤)66778s889p ツモ:4m]

成香(すてきに入りました…!)パァッ

爽(そんな顔したら良い手が入ったって他家にモロバレだ…しかもその牌は)

成香「り、リーチです!」打:9p

由暉子「ごめんなさい。それ、ロンです」パタン

成香「!?」ビクンッ

[11123m123s12399p ロン:9p]

由暉子「純チャン三色…8000で本内先輩のトビ終了ですね」

成香「……ぅ」

由暉子「?」

成香「ぅぅぅぅぅううううう……!!」ボロボロ



成香「……うぇぇぇぇぇええええええんん!!」ビエー

爽「…まーた始まった」ハァ

揺杏「ちょうど良い頃合いですし、ここらで切り上げましょうか」

爽「そうだな。みんなー、今日の部活は終了ー」


 ハーイ ザワザワ ガヤガヤ


成香「わ゙だじだげ和゙了゙れ゙ま゙ぜん゙でじだぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……!」グジュ ズビッ

揺杏「ほら、成香もグズってないで。後片付けするよ」

成香「ゔぅぅぅぅぅ……!! ぐずっ、すんっ……!」

誓子「……」

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[有珠山高校・学生寮]

成香「……」ゴローン

成香「…ベッドの上はおちつきます……」ホウッ

成香(……)

成香(…今日も大泣きしてしまいました……)ハァァ

成香(調子が良いときはすてきに打てるのですが……)

成香(悪いときはいつもこうです……)

成香「……はぁ」

成香「みんなみたいに、かっこよく麻雀打てたら良いのに……」

成香「……」

成香「ううぅぅぅぅ……っ!」モゾゾッ ゴソゴソッ

 ガチャッ

誓子「なるかー。お風呂あがったよー」ホクホク

誓子「……」

成香「……」

誓子「…なにやってるの、布団の中潜って…」

成香「あのっ、これはそのっ」ニョキッ

誓子「…そうやって布団から顔だけ出すと、あれだね。お布団ムシだ」クスッ

成香「む、むしじゃないです!」

誓子「よーし、じゃあなるかを外に引きずり出してやるー!」ガバッ

成香「わわっ…!」

誓子「でもってそーれ、こちょこちょこちょー」ワキワキ

成香「あ、あはははっ! ちょっ、それっ、くすぐったいです! ひゃめっ、あはっ!」

 コチョコチョー
 アハハハハッ ヤ、ヤメッ アハハッ

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

誓子「…それで? 何か悩み?」

成香「……」

誓子「なーるーかー。黙ってちゃ分かんないよ」

成香「…さっき「やめて」って言ったのに、止めてくれませんでした」

誓子「イヤだったの?」

成香「いやじゃないけど…いじわるのちかちゃんには教えてあげません」ツンッ

誓子「ふーん……」


誓子「……麻雀」

成香「!?」ビクッ

誓子「…やっぱりね」

成香「な、なんで分かるんですか!?」

誓子「誰だって分かるよ。今日のなるかの麻雀見てたらさ」

成香「そんなに分かりやすいですか、私…?」

誓子「顔に出るよね、顔に」ムニュッ

成香「ひょんにゃにでてましゅか?(そんなに出てますか?)」

誓子「うん、かなり出てるよ」

成香「ひょーでしゅか…(そうですか……)」

成香「…って、話ながら顔をむにむにするのやめてください!」バッ

誓子「うん、ごめんごめん」


成香「…私、いっつもなんです」

成香「たまに調子良く麻雀打てるときがあっても、それよりも悪いことがずっと多くて…」

成香「それで、そんなだめだめな時にずっと打ってたら……」

成香「その…っ なんだか、とってもかなしくなってきて……!」

成香「そしたら、なぜかっ…きゅ、きゅうにっ 涙が出てきてっ……」ポロッ

成香「私はそんななのに、みんなはすてきに麻雀、打ってて……っ」ヒック グスン

誓子「……なるか」ギュッ

成香「あ、あれ? ど、どうしよ……またっ、勝手に……ち、ちかちゃんっ」ポロポロ

誓子「だいじょうぶ…だいじょうぶだからね……」ナデナデ

成香「そんなごとされだらぁ……も、もっと泣けてきちゃいます……っ ぅぅう……」グシュ スンッ



成香「…うぇぇぇえぇえええぇぇぇえええんんん……!!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

誓子「…落ち着いた?」

成香「はい…ごめんね、ちかちゃん」

誓子「うぅん。いつものことだし」

成香「…いつも迷惑かけてるんですね……」ズーン

誓子「あっ! あ、いや、それは言葉のアヤっていうか……」アタフタ

成香「…ねぇ、ちかちゃん」

誓子「うん?」

成香「……」

誓子「なーるーかー?」

成香「あのぅ……言っても怒りませんか?」

誓子「それは言ってくれないと分からないよね」

成香「そうなんですけど……」

成香「……」スーッ

成香「…あのっ!」

誓子「はい」ニコ

成香「私って……その。…麻雀、向いてないんでしょうか…」

誓子「……」



 ゴツンッ


成香「いたいっ!?」

誓子「よしっ。なるか、次の日曜遊びに行こう!」

成香「え!? 次の、ですか?」

誓子「うん。空いてるでしょ?」

成香「確かに麻雀部もおやすみですけれど…遠出にはシスターの許可をもらわないと」

誓子「よし、じゃ今から二人で取りに行こう」ガシッ

成香「今からって、もう21時ですよ! シスターに怒られちゃいます…… …がしっ?」

誓子「思い立ったが吉日、だからね。さー張り切っていこー」ズルズル

成香「わ、わわっ、引っ張らないでくださいっ!」ズルズル

 ガチャッ
 ズルズル......


爽「……ん?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

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[遊園地 ルスツリゾート]

誓子「やっと着いたね、なるか!」

成香「まさか本当に来ることになるとは思いませんでした……」

誓子「ほら、テンション低いよ! 今日一日、めいっぱい遊ぶんだから」

成香「逆にちかちゃんはどうしてそんなにテンション高いんですか……」

誓子「まずはこれ乗ろっか! マウンテンジェットコースター!」

成香「…ちかちゃん? 聞いてますか?」

誓子「ほらしゅっぱーつ!」ズルズルー

成香「だから引っ張らないでくださいってばー!」



爽「……これをどう見る、諸君」

由暉子「どう、って……ただ遊びに来ただけじゃないですか?」

揺杏「ユキ~、それはちょっと甘いんじゃない?」

由暉子「はい?」

爽「じゃあ揺杏はなんだと思うんだ?」

揺杏「はいっ! これは間違いなくデートかと思われます!」

由暉子「デート!?」

爽「その根拠は?」

揺杏「はい! まず二人きりで遊園地というシチュエーションが完璧にデートです!」

爽「いいねいいね」

揺杏「そしてチカのあの表情! 見てください!」

 
 コッチノモオモシロソウダネ ゼッキョウケイ バカリデ コワイデス......


爽「…ふむ」

揺杏「恋する乙女の表情ですよあれは!!」

由暉子「…楽しんでいるだけでは」

爽「うん、なかなか良い推理だったぞ! 80点だ!」

揺杏「イエスッ!」

由暉子「さっぱり理解できません……」

揺杏「フフフ…その内ユキも分かる時が来るよ……」

爽「それじゃ揺杏、これから我々はどうすべきか?」

揺杏「もち! 尾行です!」

爽「よしきた! お前ら私について来い!」ダダッ

揺杏「サー! イエッサー!」タタッ

由暉子「……なんだかなぁ」トテテ

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[マウンテンジェットコースター]

成香「うわ、すごいです…」

誓子「スピードとアップダウンが看板らしいね。ほら、次だよ」

成香「ちょっと待ってください…心の準備を……」

誓子「あ、一番前でお願いします」

成香「まえっ!? そ、それはさすがに怖いです!」ガタガタ

誓子「何言ってるの、前が一番楽しいんだよ?」

成香「いちばん最初に落ちるのいやです!」

誓子「あ、こっちの子もお願いします」ガチャンッ

成香「こわいです! やっぱり降ります!」ガチャンッ

成香「……あっ」サーッ

誓子「もう諦めるしかないね、なるか」ニヒヒ

成香「ひどいです……!」

 マモナク スタートシマス

成香「あっ、まだ心の準備出来てないです! 止まって!」

誓子「たのしみだねー、なるかー」ニパー

成香「ぜんぜんです! こわいです! たかいです!」

誓子「…おっ、そろそろ落ちるよ……」

成香「ひっ……!」ジワッ


 ゴォォォォォォッ

成香「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」ビエー

誓子「あっはっは! はやいねー!!」ケラケラ


 キャヤァァァァァァァァァァ......!!



成香「しぬかとおもいました……」ゲッソリ

誓子「あれ、まだ1つ乗っただけだよ?」

成香「……へ?」

誓子「次はこれが良いかなー。このコークスクリューってやつ」

成香「もしかしてまたコースター系ですか……!?」

誓子「午前中にここのコースター完全制覇するからねー」スタスタ

成香「それはイヤです! 考え直してくださいちかちゃん!」タタタッ


爽「何でしょっぱなからコースターなんだ……チカのやつぅ~……」フラフラ

揺杏「大丈夫ですか先輩…フラフラですよ……?」フラーッ

由暉子「そういう岩館先輩もですね」

揺杏「ユキはヘーキそうだな~……見ろよ、獅子原先輩なんか」

爽「……」ユラー

揺杏「もう色々抜けちゃってるからなぁ…ほらっ、先輩!」ペシ

爽「はっ!?」ビクッ

由暉子「二人とも、もう次のとこ行ってますよ。はやく追いかけないと」

揺杏「待って、ユキ……うぅぅ」ヨロー

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[遊園地内 レストラン]

誓子「たくさん乗ったねー。すっごく楽しかったよ。特にスタンディングコースターは……」

成香「……」ブクブク

誓子「…お行儀悪いよ、なるか。ストローでジュースぶくぶくなんて」

成香「だって……」プクー

誓子「なに?」プスッ

成香「ぷふー…。 …って、つっつかないでください!」

誓子「なるかが可愛いからつい…」

成香「…ふんっ」プイッ

誓子「それで。なぁに?」

成香「…だって。ちかちゃんだけ、乗りたいのに乗ってるから……。私だって好きなのに乗りたいです……」

誓子「…ふーん。そっか、そっか…」

成香「なんですかその反応は…」

誓子「いや、なるほどね。分かった分かった」バシバシ

成香「せ、背中叩かないでください! いたいです!」

誓子「安心しちゃった。なるか、今までずっと楽しそうじゃなかったから…もしかしたら遊園地嫌いだったのかも、って思ってたんだ」

成香「遊園地はすきですよ。…怖いのがきらいなだけです!」

誓子「ん、良かった。ゴメンね? 無理矢理コースター付き合わせちゃって」

成香「まったくです! だからここからは私に付き合ってくださいね、ちかちゃん!」フンスー

誓子「…なんかやたら張り切ってるね?」

成香「もちろんです! こわいの回ってる間にどれだけ乗りたいのがあったでしょうか……!」

成香「まずはメリーゴーランドに乗りましょう! …あ、アヒルさんレースなんてありますよ、ちかちゃん! わ、これも……」キラキラ

誓子「…楽しそうで何よりだよ」フフ



爽「……」ブクブクブク

揺杏「なにナルカと同じことしてるんですか……」

爽「……」ブクブクブクブク

由暉子「シスターにまた怒られますよ。『淑女たるものお淑やかに』…って」

爽「…だってさー」

揺杏(あっ、これ愚痴る流れだな……)

爽「あいつら二人だけしてズルくないか!?」バンッ

爽「私たちはいつもと変わらない麻雀部のメンツといつもどーり顔合わせてるだけなのにさ!」

揺杏(あっちも麻雀部同士なんですけど…)

爽「あいつらはデートだぞ! でえと!」

揺杏(まだ推測ですけど)

爽「絶対ズルいって! あぁー、デートする相手欲しいぃぃー…」グデー

由暉子「……」ズズーッ

由暉子「…あちらがデート、だというのなら」

爽「ん…?」

由暉子「あちらがデートなら、私たちの行動もデートだと言えるのではないでしょうか? 同じ場所に来てるわけですから…」

由暉子「『遊園地というシチュエーションは完全にデート』…でしたっけ」

爽「……」



爽「 」ボンッ

揺杏「うおっ」

爽「…ヤバい」ヒソッ

揺杏「ヤバい?」

爽「そんなこと言われたら、ちょっと…意識、してしまう……」モジモジ

由暉子「……」ズズー

揺杏「ユキ……そーとうポテンシャル秘めてるね…こっちの世界の」

由暉子「なんのことでしょうか?」シレッ

爽「……///」ブクブク

申し訳ありませんが、夜ごはん食べつつ小休止いただきますね……

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

成香「この馬車! すてきです!」ニコニコ

誓子「ふつうは馬に乗るものじゃないかな……」

成香「たくさんの馬に引いてもらえるんですよ!」ピコピコピコ

誓子(すっごい楽しそうだな……)


成香「ちかちゃん! ゾウさんが飛んでます!」キャッキャ

誓子「結構高いトコ飛んでるね…あれは大丈夫なの?」

成香「はいっ! たのしそうです!」

誓子「ん。じゃ乗ろうか」

成香「楽しみです…!」ウキウキ


成香「高いです! とってもすてきです!」

誓子「…意外と楽しいね、これ」

 グイーン グイーン

成香「わわ、上下にも動きました!」

誓子「……」フフ

成香「すごいです! いっぱい動いてます!」アワアワ


成香「ここでアヒルさんたちがレースするみたいですね…!」

誓子「あ、あれが選手かな?」

成香「どの子もかわいいです……」ポー

誓子「…ね、なるか」

成香「?」

誓子「どの子が一番にゴールするか、勝負しない?」ニヤ

成香「! 受けて立ちます!」

誓子「それじゃ私はあの緑の首輪の子ね」

成香「私は…あの子にします! 水色の子!」


 サー イヨイヨアヒルサンタチガ スタートシマスヨ!!

成香「きゃー! 水色アヒルさん、がんばってください!」ブンブン

誓子「行けー! 緑がんばれー!」

 ……スタートデス!!
 バサササッ バササァッ

成香「うわわ! すごい勢いです!」

誓子「おっ、緑が一番だぞ! 行けー、その調子だー!」

 …クワッ、クワワーッ!!
 バッサ バッサ

誓子「わ、こらバカ!」

 オオゴエダスト アヒルサンタチガチカヨッテクルノデ キヲツケテクダサイネー

誓子「それを先に言ってよー! …わわ、柵乗り越えてきた!?」

成香「やりました! 水色さんがいちばんでゴールです!」キャアキャア

成香「…あれ? ちかちゃん?」

 グワッ クワッ クワッ

誓子「もー…離れろお前らーっ!」


誓子「ねぇ、なるか」グルグルグル

成香「なんですかちかちゃん?」グルグルグル

誓子「…回し過ぎじゃない?」グルグルグルグル

成香「けどたのしいです!」グルグルグルグル

誓子「こんなに高速で回るものだったの…コーヒーカップって……」グルグルグルグル

成香「そーれ、もっとぐるぐるーっ」ギュルルルルルンッ

誓子「わーっ! はやいはやいはやいって!!」ギュルルルルンッ

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

成香「だいじょうぶ? ちかちゃん?」

誓子「なんとかね……」ヨロリ

成香「…もうこんな時間ですか……」

誓子「夕焼けがまぶしいね……乗れて、あとひとつかな」

成香「あ! それじゃあれにしましょう! あれ!」ビッ

誓子「お、いいね。それじゃラストはあれにしようか」


爽「うぷっ……」

揺杏「調子に乗って回し過ぎなんですよ…コーヒーカップ、吹っ飛ぶ勢いだったじゃないですか……」

由暉子「…あ、とうとう乗るみたいですよ。あれ」

揺杏「! 行きますよ、先輩!」グイッ

爽「ちょ、待って……もうちょい落ち着いてから……うぇぇ」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[遊園地 観覧車内]

誓子「…遊んだねー」

成香「そうですね! とっても楽しかったです!」

誓子「…どう? 少しは気が晴れた?」

成香「へ? ……あ」

誓子「…私だってさ。たまには落ち込んだりするときもあるの」

成香「ちかちゃんも?」

誓子「うん。意外かな?」

成香「落ち込んでるとことか見ませんから……」

誓子「私だけじゃないよ。表に出さないだけで、揺杏ちゃんも爽ちゃんも…たぶんユキちゃんも」

成香「へぇー……」

誓子「みんなおんなじ人間なんだから。ね?」

成香「うん……でも、それじゃあどうやってみんな落ち込みを隠してるんですか?」

誓子「そ、そこなんだよね。そういうのって、人それぞれで方法が違うんだよ」

成香「なるほど…ちかちゃんはどうしてるんですか?」

誓子「私? ……へへへ」ツンッ

成香「あうっ」

誓子「…こ・こ」チョイチョイ

成香「…ここ、ですか」

誓子「うん。遊園地とか、とにかく遊べるところで思いっきり遊ぶ。そうしたらさ、胸の中がこう…なんていうのかな」

誓子「楽しさとか、嬉しさとか…そんな、すてきな気持ちでいっぱいになるんだ」

成香「よく分かります! 今の私もそうですから!」

誓子「ふふ、そうだね。そんな気持ちになったら、悩みとか落ち込みとかどうでもよくなってこない?」

成香「…うーん。そこまでは……」ウムム

誓子「…そっか。ま、あくまで私の場合は、だからね」

誓子「人にはそれぞれ違った気の晴らし方があるんだよ。私には私の、なるかにはなるかの、ね」

成香「私も見つけられるでしょうか……そんなすてきなのが」

誓子「きっと見つけられるよ。私も一緒に付き合ってあげるからね」

成香「はい! ありがと、ちかちゃん!」

誓子「ん、どういたしまして」ニコ

誓子「…だから、さ」

成香「はい?」

誓子「もう『麻雀向いてないかも』なんて悲しいこと、言わないでね」

成香「……」

誓子「なるかはとってもすてきな麻雀打ててるんだから。私がうらやましくなるくらいに、ね」

成香「…ほんとですか…?」

誓子「うん、ほんと。私が保証するよ」

成香「…えへへへ」テレッ

誓子「でも、一度調子悪くなっちゃうとずっとひきずっちゃうのがタマにキズだね」

成香「うぅ…」シュン

誓子「だから、そんな時は…今日感じたような気持ちを思い出して。そうしたらきっと……」

成香「…もっとすてきに打てるようになりますか?」

誓子「うん。きっとね」

成香「そっかぁ……! …うん、私もっとがんばります! がんばって、ちかちゃんにも負けないくらい強くなります!」グッ

誓子「その意気、その意気」フフ

成香「……実は、少し不安だったのもあるんです」

誓子「不安?」

成香「はい。その…私、足手まといになってるんじゃないかなって」

誓子「足手まとい? まさか! なるかは立派なウチの先鋒だよ!」

成香「だけど私、時々麻雀ぼろぼろになっちゃうから……。みんなも、他の人が先鋒の方が良いって思ってるんじゃないかって……」

誓子「ふふ…なるかは心配性だね。そんなわけないじゃない」

成香「でもっ」

誓子「…うしろの観覧車、見てごらん?」

成香「うしろ…?」クルッ


爽『――!』

揺杏『―! ――!』

由暉子『……』

成香「…みんな……っ」


爽『――! ――!!』ギャーギャー

揺杏『――! ―! ――!』バッタンバッタン

由暉子『……』ニコッ


成香「…! おーい! みんなー! おーい!」キャッキャ

誓子「きっと、みんななるかのことが心配で来てくれたんだよ」

成香「ほ、ほんとですか!?」

誓子「本人たちに聞いても絶対はぐらかすだろうけどね。特に爽ちゃんは」

成香「わぁ……なんだか、とっても嬉しいです……!」

誓子「…なーるか」ギュッ

成香「…ちかちゃん?」

誓子「なるかはこんなにもみんなに愛されてるんだからさ。もっと自信持っても良いんだよ」

成香「私が、自信を……?」

誓子「うん。そうしたらもっと強くなれると思う。…なんてったって」ポンッ

成香「ん……」

誓子「なるかは私が認めるくらいのすてきな打ち手なんだからね!」ニッ

成香「…はいっ!!」



揺杏「先輩がばたばたしてるおかげで何してたかなんにも分からなかったじゃないですか!」

爽「何言ってるんだ! 元はといえばお前が気づかれたから…!」

揺杏「先輩が先に見つかってたんじゃないですか!」

由暉子「…もう地上着きますよ」

 ギャーギャー ワーワー

爽「上等だ! 表出ろこら!」

揺杏「ノしてあんな衣装やこんな衣装着せてあげますよ!」

誓子「お疲れさまです」

成香「お疲れさまです…!」

爽「ん、お疲れ!」

揺杏「良い雰囲気だったね二人とも!」



爽・揺杏「……んん?」

由暉子「やっと地上ですか……」

成香「ユキちゃん! 来てくれてありがとうございます!」

由暉子「あ、いえ。先輩たちも気になってたみたいですから」

誓子「…ね? 言った通りでしょ?」

成香「はいっ!」

誓子「私としては頼れる仲間になってるつもりなんだからさ。麻雀くらい、どーんと打ちなよ」

成香「どーん、と…!」

誓子「ちょっとくらいマイナスになったって、成香は先鋒なんだからさ。あとは私たちが取り返してあげるから」

成香「……ちかちゃんっ」ダキッ

誓子「わわっ!?」

成香「えへへ……ありがとうございます、ちかちゃん」

成香「……だいすきです!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[インターハイ会場 準決勝Bブロック 先鋒戦終了]
[有珠山高校 控室]

誓子「なるか、かなり削られたね」

成香「すみません……」

爽「ま、大丈夫だ! なんてったって私たちが控えてるからな!」

由暉子「あんまり慢心するのは良くないと思いますけど」

爽「ゴメン……」

揺杏「でも今日は泣かなかったね、ナルカ」

成香「はい! …ちょっとだけ、目に涙が浮かんだりはしましたけれど……」

爽「それくらいなら大丈夫大丈夫!」

成香「ぜんぶ、ちかちゃんのおかげですね」ニコ

誓子「ふふ、そうかな。なるかが強いからだよ」

成香「そんなことないですよ!」

誓子「…じゃ、そろそろ行ってくるね」

成香「がんばって、ちかちゃん!」

揺杏「頑張ってくださいね」

爽「頼むぞー」

由暉子「ファイトです」

誓子「では」


 ガチャッ


誓子「……」

誓子(……取り返す)



誓子(なるかが取られた点棒、全部ッ!!)ゴッ




    カン

有珠山メンツの名前を覚えたかったので書きました
みんなで覚えよう有珠山高校!

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