梓「放課後ストリウム」 (161)

暗闇に染まる街の中を、彼女は走っていた。
人っ子一人いない通りを、まるで「何か」を追うかのように駆け抜ける。

「止まりなさい!」

とあるビルの屋上にたどり着くと、ドアを蹴破り銃を構えた。

「行き止まりよ――もう逃がさないんだから!」

銃口を向け、威嚇する。
しかし、「何か」は慌てた様子もなく、至って平静なままだ。
その異様な雰囲気に、彼女は思わずたじろいだ。

「ふふ……あははははははっ……!」

突然「何か」は不気味に笑い、こちらを向く。
その姿に、彼女の心臓は飛び上がった。

「なっ――お前は!?」

「……知ってるくせに」

長い黒髪をストレートに下ろした、凛々しさと可愛らしさが入り交じった風の少女。
毎日鏡の前で顔を合わせている人間が、悪戯っぽく笑いかけてくる。

「あなたに私が撃てるかな?――ねえ、アズサ」

突然、少女の姿が赤い煙となって消える。
彼女は慌てて、少女がいた場所に駆け寄った。

「どこ?!出て来なさい!!」

「「ここだよ。アズサ(ちゃん)」」

びくん、と大きく身体が震える。
姿はないのに、友人の声だけが聞こえてきたのだ。
しかしその声は普段と違い氷のように冷たく、彼女の背筋を凍りつかせる。

「ビクビクしちゃって……弱いんだね、アズサちゃん」

「わざわざ地球防衛軍に入ったのにね。あはっ、そんなとこも可愛いよ」

「ほんっと――殺したいくらいに』

友人の声が不愉快な男の声に変わる。
同時に、赤い煙が竜巻のように舞い上がり、血のように真っ赤な異形の怪人が現れた。

『ウルトラ兄弟のみならず、愚鈍な人間ごときにまでコケにされるとはな。忌々しい』

「あなたの連れてきた怪獣はその人間が全部倒した。いい加減負けを認めたらどう?」

『負け?……フハハハハハッ!』

「このッ!」

レーザー光線が怪人の肩を直撃し、怪人がよろめいた。
しかし、それでもまったく動じる素振りがない。

『ぐっ……ハハッ!そうだ、確かに我々は負けた……だが』

次の瞬間。

『敗者の反対が……勝者だとは限らないぞ!』

地面が、ガラスのように割れた。

「な……っ!」

支えを失った身体は、怪人もろとも真っ逆さまに落ちていく。

『我らの怨念は不滅だ!!フハハハハハッ!!ハッハッハッハッ……!!』

怪人の高笑いと共に、真っ赤な裂け目に吸い込まれて―――
――


梓「にゃあぁぁぁーっ!!」ガタンッ!!

「!?」

「?!」

梓「う……あれ、夢……?」

教師「……中野」

梓「はひッ!?」

教師「丸くなるのは炬燵の中だけにしとけ」

梓「」

教室が、どっと揺れた。

梓「うぅ~……最悪」

爆笑に包まれた教室をそそくさと潜り抜け、部室に向かう。
いくら睡眠学習とはいえ、あんな目覚め方はあり得ない。

梓(もう、何なのよ!あの夢……)

趣味の悪い謎の怪人と対峙する、見慣れない制服を着た私。
眠れなくて深夜放送のB級な洋画を見たのが良くなかったんだろうか。

梓(でも、妙にリアルだったな――なんて)

そうこうしてるうちに部室に着いた。
もやもやした気分はとりあえず置いておこう。

梓「こんにちはー」

扉を開けると、いつもの軽音部――

梓「…………?」

と見せかけて、少し違った。
律先輩、唯先輩、ムギ先輩が楽しげにテーブルを囲んでいるのに、澪先輩だけ光のない虚ろな目で震えてるのだ。

梓「あの~、先輩?」

唯「あ、あずにゃん!待ってたよ~」

紬「今お茶入れるわね~」

梓「はあ」

梓(なんか変な感じ……)

梓「ところで、澪先輩はどうしたんですか?」

唯「りっちゃんが悪いんだよ、あんな煽りかたするからぁ」

律「なにをー!あたしのせいかっ」

梓「?」

紬「今日ね、授業でゴジラを見たの」

梓「ゴジラって……野球の?」

唯「ベタだけど違うよ、怪獣のほうだよ~」

律「ほら、昔ハム太郎の映画と一緒にやってたじゃん」

紬「わたしたちが見たのは最初のやつよね」

梓「ああ、いろいろ懐かしい響きが――って、なんで授業で?」

唯「日本史の先生がお休みでね。どうせ自習なんてやらないだろうし、それならこれ見とけって」

紬「白黒なのも驚いたけど、すごい迫力だったから余計に驚いたわぁ」

律「澪なんか前見たまま気絶してたもんな。おーい、目覚めよ澪~」

澪「――――はっ!みんな、揃ってたのか」

梓「澪先輩がここまでなるなんて、そんなに凄かったんですね」

唯「すごいんだよ、とにかく強くてね、東京があっという間に焼け野原になっちゃって」

紬「人間じゃ全然太刀打ちできなかったの」

律「銀座とか国会議事堂とか、ド派手にぶっ壊してな!すごかったよな、澪?」

澪「ぎくっ」

律「なはは!いやぁ、ほんとすごかったなあ。本当にああいうのがいたらいいのにな」

唯「確かに、退屈はしないよねえ」

梓「でも、そんなのいたらめちゃくちゃじゃないですか」

唯「そんな時の正義のヒーローだよ!」

律「何をー!そう簡単にやられはせんぞ!」

澪「生き残りたい――生き残りたい――」

梓(ああ、いつもの感じ――)

『――バカめ。呪われているとも知らずに』

梓「!?」ビクッ

唯「あずにゃん、どしたの?」

梓「いや……今、変な声しませんでした?」

紬「ううん、聞こえなかったけど」

律「気のせいじゃないのか?」

梓「で、ですよねー……?」

『この世界には怨敵も不在……容易く堕とせる』

『自らの欲望によって自滅するのだ――人間め』

『ハハ……ハハハハハハッ!』

梓「……!」ゾクッ

紬「――梓ちゃん?」

澪「大丈夫か?調子が悪そうだけど……」

梓「……すみません。なんか寒気が」

律「おいおい、無理すんなよ?今日はもう休んでいいって」

梓「ごめんなさい……失礼します」

唯「あっ、あずにゃん」

律「………」

……………………

梓(変な夢に空耳……どうなってるのよ)

純「あれっ、梓?」

梓「純。それに憂も」

憂「部活、もう終わったの?」

梓「ううん、私一人早引け」

純「ちょっと、早引けって大丈夫?」

梓「いや、体調は悪くないんだけど」

憂「それじゃあ、皆さんと何かあったの?」

梓「そういうわけでもないんだけど……その、幻聴がひどくて」

純「ほほう、幻聴とな」

梓「うん。なんか、呪われてるとか変な高笑いとか。気味悪くなって」

憂「なんか胡散臭いね」

梓「でしょ?やけに耳に残る声してたのに、私にしか聞こえてないの」

純「もしかして梓……目覚めちゃったとか?」

梓「目覚めたって?」

純「ほら、エスパーとか」

梓「いや、ないでしょ」

純「でもさ、今日なんかずっとぽーっとしてて、6限終わりのあれだもん」

憂「そうそう、どんな夢見てたの?」

梓「それがさ――」

梓「――って感じの」

純「何それ、ウルトラマン?」

梓「なんでウルトラマンなのよ……」

純「だって、こないだ見たウルトラマンにそんな展開があった気がする」

憂「梓ちゃんも見てたの?」

梓「見た事ないし……」

梓「っていうか、純の今度のマイブーム、ウルトラマンなんだ」

純「そ!こないだ部屋の掃除してたらさ、古いビデオがあって。面白かったから――ほらこれ」

梓「うわ、ウルトラマンの人形だ……懐かしい感じ」

純「お兄ちゃんからもらったんだ。良くない?」

憂「あっこれ、ウルトラセブンだね」

純「当たり!それからこれがタロウで、これがティガ、これがガイア」

梓「純、詳しいね」

純「でしょー、もっとほめてー」

憂「あはは」なでなで

ゴゴ……

梓「――あれ?」

ゴゴゴ……

憂「どうしたの?」

梓「なんか、空が変」

『――ふふ――ははは』

憂「え?――ほんとだ。雷?」

『時は――満ちた――』

純「でも、今日は雨降らないって――」

『我等の不滅の怨念を見るがいい』

『行けッ!剛力怪獣――キングシルバゴンッ!』

――ガシャン!!

純「えっ!?」

憂「空が、割れた――」

『ガアアアアアアッ!!』

ズズゥゥゥン!!

梓「かっ――怪獣!?」

純「はわぁ……すごいわね。今の特撮って」

憂「いやいやいやいや!!どう見てもあれ――」

『ガァァアアァァ!』

ガシャァァァンッ!

憂「本物だよぉ!」

純「――ウソぉっ!?」

ズン……ズン……

「うわぁぁぁっ!」

ズガァァァァン!!

「こっち来んなぁぁぁっ!!」

『フハハハハッ!いいぞ、マイナスエネルギーがどんどん貯まっていく!』

『怯えろ!絶望しろ!我等の糧となれェェッ!』

『もっと暴れろシルバゴン!すべてを――破壊しろ!!』

タッタッタッ――

純「どうなってんの!?本物の怪獣が出てくるなんて……!」

憂「わかんないけど、とにかく逃げなきゃ!」

純「もーっ、なんなのよ!夢ならさっさと覚めてよぉぉっ!」

梓「はっ、はあっ!ちょっと二人とも待ってってば――」

『ガアアアァァァッ!』

――バシュン!!

「――危ないっ!!」ガシィッ!

梓「え――にゃぁっ!?」ゴロゴロ

ズガァァァァァンッ!!

梓「――うぅ……ゲホ、ゲホッ!」

?「ふぅ、危なかった……」

梓「――!?」

梓(何これ、押し倒されてるみたい……!)

?「大丈夫か?」

梓「あ……あのっ、わ、私はぜんじぇっ!?」

梓(か、噛んだ……!)

?「よかった……平気みたいだな。立てるか?」

梓「は、はい。大丈夫ですっ」

梓(うぅ……男の人にダイビングキャッチされるなんて……)

憂「梓ちゃん!!大丈夫!?」

純「うちの梓をありがとうございますっ」

梓「うちのって何よ!」

?「はは、大丈夫さ……それより、あの怪獣だ」

『ガアアアァァァッ!!』

ズガァァン!ドォォン!

?「……よぉぉし」

憂「お兄さん?」

?「君達はどこかに隠れてるんだ。僕があの怪獣を引き付ける」

憂「へっ!?無茶ですよ、丸腰じゃないですか!」

?「武器は――ある!!」

梓「あっ!――行っちゃった」

……

?「このぉっ!これでどうだ!」

『ガアアアアァ!』

?(ちくしょう、石じゃ全然効果がない!)

?(あの怪獣、なんて固さなんだ!こっちに気づきすらしない!)

『ガアアアァァァッ!』

?(くそ――こうなったら!)

「タロォォォォォォウ!!」

パァァァァァッ……!!

純「うわっ!今度は何!?」

憂「さぁ……」

赤と銀の影が空を切り裂くように怪獣を貫き、怪獣が倒れ込む。
影はゆっくり立ち上がり、その姿を現した。

梓「あ……」

銀色のラインが走る深紅の身体。
光る黄金の目に、燦然と輝く二本の角。
胸には青く光る宝石。

梓「あれは――」

地響きと共にそびえ立つその姿は、さっき純が持っていた人形と同じ――

憂「ウルトラマン――」

純「――タロウ!?」

『トァァァッ!』

ファイティングポーズを取るや否や、ウルトラマンタロウは体勢の整っていない怪獣に躍りかかった。
怪獣はその動きを丸太のような腕で振り払おうとするが、タロウはそれを冷静に捌き、懐へ飛び込んでいく。

『フンッ!!デッッ!!』

パンチの連打を浴びせ、怯んだところに強力なストレートパンチ。
突き放したところで、思いっきり飛び上がり――

純「何あれ!?」

二回三回空中でひねりを入れ、怪獣に向かって急降下の飛び蹴り。
すかさず倒れこんだ怪獣に駆け寄ると尻尾を掴み、ハンマーのように回し始めて――鋭いスイングで投げ飛ばした。

憂「すごい……すごいよ」

純「同じだ……テレビで見たのと!」

「頑張れぇぇっ!!」

「頑張って、ウルトラマン!!」

………………

梓(―――あれ?)

純や憂、街の人々と一緒に応援している途中で、ふと何かが引っ掛かった。

梓(なんでだろう……見たことある気がする)

今まで私の人生の中で、ウルトラマンを見た経験はない。
なのに、なぜか初めて見た驚きのようなものはなかった。
ウルトラマンも怪獣も現実にはいるはずがないのに、今のこの光景に既視感を覚えているのだ。

梓(なんで……)

『デァァッ!?』

ウルトラマンタロウの驚いたような声で、私は現実に引き戻された。
見ると、タロウは怪獣の角から連続で打ち出された火の玉に怯み、苦しんでいる。
怪獣はチャンスと言わんばかりに近づき、巨大な尻尾でタロウを弾き飛ばした。
受け身を取って起き上がろうとするタロウ。
しかし、怪獣はそれより早くタロウを地面に押さえつけ、マウントポジションで攻撃を続ける。

『ふん……タロウめ、紛れこんでいたのか』

『だがその程度なら問題ない!シルバゴン、そのまま片付けてしまえ!!』

『ガアアアァァァッ!』

ガシッ!ドゴッ!

『ンンッ!デッ!』

憂「うわぁぁ……このままじゃやられちゃう」

純「大丈夫だよ!ウルトラマンならこれくらい、きっと……!」

『フンッッ!!』

純の言う通りだった。
タロウの二本の角が青く光って、レーザー光線が怪獣に襲いかかったのだ。

『ギィィィィィッ!!』

頭に直撃した反動で怪獣が思い切りのけぞり、拘束が緩む。
タロウはすかさず怪獣の腹を蹴って起き上がると、続けざまに鮮やかな後ろ回し蹴りで怪獣を吹っ飛ばした。
ふらつきながらも怪獣は立ち上がろうとするが、タロウはその隙を見逃さない。

『ストリウム――』

右腕を高々と掲げポーズをとると、その身体が七色に輝き――

『――光線ッ!』

次の瞬間、『T』の形に組まれた両腕から放たれた七色の光線が、怪獣に直撃した。

『ガ……ァァァ……』

怪獣もこれには耐えきれず、派手に爆発を起こし粉々に吹き飛んだ。

梓「やったぁぁ!」

憂「すごい!すごいね梓ちゃん、純ちゃん!!」

純「当たり前でしょ!だってウルトラマンだよ?!」

憂「ありがとう、ウルトラマァァン!」

『トァァッ!』

歓喜に酔いしれる私たちを見て頷くと、ウルトラマンタロウは空高く飛んでいった。

夜。

『その姿はかつて放送されていたテレビ番組のキャラクター、『ウルトラマンタロウ』に酷似しており――』

テレビには、コメンテーターの会話を挟んで、地元局のKCBに撮影されたウルトラマンと怪獣の戦いが延々と流れている。

梓「ううん……」

チャンネルを回しても同じような映像ばかりで、これ以上の情報は得られそうにない。

『ではここで現場から中継です。吉井さん?』

『はい、こちらは被害の大きい――』

梓「……いいや」

テレビの電源を消す。

梓(お腹空いたなあ……)

そろそろ夕飯と行きたいけれど、あいにく両親は旅行中で明後日まで帰ってこない。

梓(外で食べよっかな)

一通り支度を済ませ、私は家を出た。
怪獣もこの辺りには来なかったため、いつもと変わらない風景をよそに歩いていく。

梓「そういえば……あのウルトラマン、タロウだっけ?」

信号を待ってる間にふと思い出し、携帯に打ち込んでみた。
本当に何気なく検索ボタンを押し、出てきたサイトを適当に開き――

梓「――――ウソでしょ」

思わず携帯を落としかけた。
昼間私を助けてくれた男の人が――ウルトラマンタロウに変身する主人公=東光太郎として、映っていたのだ。

梓「えっ……だってこれ、40年前の番組で、」

頭が混乱してぐちゃぐちゃになる。
常識的に考えて彼が俳優さんだったとしても、今はもう60歳過ぎのはず。あんなに若いはずがない。
だとしたら彼は他人の空似か、はたまた幽霊か。
いや、でも。

『武器は――ある!!』

怪獣に向かって行ったあの熱さは、どちらにも真似できそうにないと思う。

梓「まさか……本物の」

『――ウルトラマンタロウですよね!?』

梓「へっ?!」

一瞬自分が呼びかけられたのかと思ったが、そうではなく。
声のした方を見ると、何やらサラリーマンの方々によって人だかりができていた。

『私も息子もファンなんですよ~』

『さっき戦ってましたよね?!変身してください!』

『ストリウム光線ってやってもらえませんか?!』

光太郎『いやその、僕は……』

梓「」

思わずずっこけた。
輪の中心では昼間の彼――東光太郎さん(?)が、困り果てたように質問攻めに遭っていた。

梓(もう、なんて日なの……!)

怪獣が出るわウルトラマンが出るわ、おまけに本物(?)と会うなんて――

梓「ちょっとお兄ちゃんっ!」

気づけば私はそんなことを言いながら、人だかりに突っ込んでいった。

梓「もーっ、いくらウルトラマンが好きだからってそんな格好でこんな時間に!」

光太郎「へ?」

梓(合わせて!!)

光太郎「ああ、ごめんごめん」

梓「うわっ、傷だらけじゃない……!さっさと帰るよ!」

光太郎「いててっ、そんな急に引っ張らないでって――」

私たちは何かを言われる前に、その場をダッシュで抜け出した。

…………………

梓「……っ、はぁっ、はぁ……」

光太郎「なんとか撒いたみたいだ……」

梓「大丈夫でしたか……?」

光太郎「いやあ、ありがとう。おかげで助かったよ」

梓「いえ、こちらこそ」

ぐーっ……

光太郎「……あっ」

梓「……………」

………………

光太郎「うまい!いやあ、本当にうまいなあ!!」

梓「あは、良かったです」

あの後。
近場のファミレスでは目立ちすぎると判断した私は進路を自宅に変更。
とりあえずお風呂で汚れを落としてもらっている間に夕飯を手早く用意し、こうして振る舞っているというわけだ。

光太郎「ごちそうさまでした!こんなうまいの、久しぶりに食べたよ」

梓「お粗末様でした。お茶、飲みますか?」

光太郎「じゃあ、お願いするよ」

梓「はーい」

コップに麦茶を入れながら、この後の事を考える。
突っ込みどころは山ほどあるが、果たしてどこから……

梓「どうぞ。麦茶で申し訳ないですけど」

光太郎「ありがとう」

梓「…………」

光太郎「……………」

梓「……あの、いろいろ聞いていいですか?」

光太郎「ああ、いいよ」

梓「えっと……じゃあまず名前から」

光太郎「東光太郎だ。よろしく」

梓「中野梓です。よろしくお願いします」

光太郎「梓ちゃん、か。いい名前だね」

梓「にゃ……どうも」

梓(……本物には間違いないらしい、けど……)

光太郎「どうした?」

梓「あ!いえ……その、ものすごく変な質問になるんですが」

光太郎「……僕の、正体のことか?」

梓「!? どうして」

光太郎「ハハ、目を見ればわかるさ。この世界では隠せないらしい」

梓「……光太郎さんは、ウルトラマンなんですか?」

光太郎「ああ。僕は、ウルトラマンタロウだ」

梓「」

光太郎「もっとも、今は東光太郎の姿を借りてるんだけど」

梓「――そうなんですか」

梓(どうしよう。まさかこんな食卓で未知との遭遇やるなんて)

梓「えっと……じゃあ二つ目です。なんでここにいるんですか?」

光太郎「え?」

梓「この世界には、怪獣もウルトラマンもいないはずなのに」

光太郎「確かに、ここは僕のいた世界じゃない。道端で会ったサラリーマンが、みんな僕をタロウだと知っていた」

梓「それはそうですよ!だってウルトラマンは、この世界ではテレビのヒーローなんですから」

光太郎「まさか、そんな世界にたどり着くとは……なんてことだ」

梓「たどり着く?」

光太郎「ああ。宇宙で異常な量のダークマターが検出されて、太陽系で調査をしていたんだけど……」

『――聞こえる?ウルトラマン』

タロウ『――何だ?』

『悪魔が目覚めて、ある世界を堕とそうとしている』

タロウ『悪魔、だと?』

『その世界は抗う力を持っていない――あなたの力が必要なの』

――ズズゥン!!

タロウ「ぬおぉっ!次元振動か!?」

『もう奴らが――時間がないわ!』

タロウ『くそっ……引き込まれる……!!』

『お願い!この世界の『わたし』と――共に世界を――』

――――

光太郎「それで、気がついたらこの街の公園に倒れていた」

梓「それって、パラレルワールドってやつですか?」

光太郎「よく知ってるね」

梓「前に小説で読んだことがあって……本当にあるとは思いませんでしたが」

光太郎「信じられないかな?」

梓「いえ!確かにおかしい事ですけど、現に怪獣もウルトラマンもこの目で見たわけですし」

梓「それに、あなたがウソをついてるようには見えませんから」

光太郎「……ありがとう」

梓「とりあえず明日は休みですし、今日はこのままゆっくりしていってくださいね」

光太郎「えっ!?」

梓「だって、この世界では行く当てがないでしょう?」

光太郎「いや、僕は野宿でいいよ」

梓「それはダメです!今出歩いたら、またさっきの二の舞じゃないですか」

光太郎「でも、君に迷惑をかけるわけにはいかないしなぁ」

梓「そのくらいは構いません!それに明後日まで両親が家を空けてるので、誰かにいてほしいんです」

光太郎「うーん……」

梓「お願いします!」

光太郎「……わかった。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」

梓「あ、ありがとうございます!」

………………

梓(……うう、ん……)

さて。
湯船に浸かりながら、改めて思う。

梓(どうしてこうなった……!!)

あまりに変な出来事が続いたせいかあっさり受け入れたけれど。
冷静に考えて男の人と家に二人きりだなんて、フラれた直後の先生に射殺されるレベルの一大事だ。
幸い、普通の人間ではないのが救い……

梓(いや救いでもなんでもないよね?!)

何せ相手はあのウルトラマンだ。
そんな人と一緒に過ごすってどうなのよ!

梓(そうじゃないよぉぉ!)バシャーン

光太郎(――駄目だ、テレパシーが繋がらない)

光太郎(やはりあの怪獣の影響か、マイナスエネルギーが増殖している)

光太郎(どうやらこの世界に怪獣は存在しないようだが、やはり例の悪魔が呼んだのか?そして、また怪獣は現れるのか?)

光太郎(何にせよ良くない兆候だ。光の国に報告しなければいけないのだが……)

梓「――光太郎さん?」

光太郎「おっと、梓ちゃ――ん?」

梓「?」

光太郎(――ん?)

梓「……あの、どうしました?」

光太郎「ん、ああ、何でもないよ。髪下ろしも似合ってるね」

梓「ふにゃっ!?そ、それはどうも」

光太郎(何だ?今の違和感は)

梓(ドストレート過ぎですよぉ……!)

光太郎「ところで、梓ちゃんは音楽が好きなのかい?」

梓「えっ!?どうしてそれを」

光太郎「いや、リビングに結構レコードとかが置いてあったからさ」

梓「なるほど、そういうことですか……見ていきます?」

光太郎「いいの?」

梓「はい。――ここです」

光太郎「うわぁ、すごいな!ギターもいっぱいある」

梓「……ウルトラマンの世界にも、音楽ってあるんですか?」

光太郎「もちろんあるさ。ジャック兄さんがよくギターを弾いてるよ」

梓「へえっ、お兄さんがいるんですか」

光太郎「本当の兄さんじゃないけどね」

梓「どういうことです?」

光太郎「地球で活躍したウルトラマン達の事をウルトラ兄弟といって、僕はその六番目なんだ」

光太郎「みんな、本物の兄弟のように強い絆で結ばれているのさ」

梓「それって、部活の先輩みたいですね」

光太郎「ハハハ……あっ、そういえば、セブン兄さんが宇宙警備隊に軽音部を作ろうとか言ってたな」

梓「ぶっ!! セブン兄さんって、あのウルトラセブンですか!?」

光太郎「そうさ。なんでも地球で流行ってたテレビに影響されたみたいで、僕も見せられたよ」

梓「あはははっ!何ですかそれ、ウルトラマンが……ぶふっ!あっ、お腹痛い……!」

光太郎「おいおい、大丈夫か?そんなにおかしいかな」

梓「だっ、大丈夫です……けどっ、正義のヒーローが、そんな所帯染みた……あはははっ!」

光太郎「いやあ、地球を守るウルトラマンにだって地球での生活があるからなあ」

梓「……もう、悩んでた私がバカみたいじゃないですか」

光太郎「?」

梓「何でもないです!それより、光太郎さんもギター弾いてみませんか?」

光太郎「えっ?梓ちゃん、ギター弾けるの?」

梓「はい!これでも軽音部でバンド組んでますから!」

光太郎「すごいじゃないか!僕、やったことないけど大丈夫かな」

梓「大丈夫ですよ!私がちゃんと教えます」

光太郎「よぉし!よろしくお願いします!」

梓「それじゃあ、まずはストラップを肩にかけて――」

――――
――

すんません、ちょっと保守してくださるとありがたいです
税務署にいってきます

くぅ~疲れましたwこれにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

――――
――

たいなかけ!

律「――でさー、出てきたウルトラマンにあっさり負けちゃったじゃんか」

律「え、講習?中止になって……ないの!?」

律「――うん、うん。わかってるよ、じゃあ明日なー」ピッ

律「ふー……せっかく怪獣が出たってのに、なーんかパッとしないなあ」ドンッ

聡「うるせーぞ姉ちゃん」ガチャ

律「おお、すまん弟よ……お前も見た?」

聡「シルバゴンのこと?まあニュースでだけど」

律「へー、あれシルバゴンっていうのか」

聡「ウルトラマンティガに出てた怪獣だよ」

律「ティガ?出てきたのタロウじゃん」

聡「だから結構レアな戦いだったんだよ。タロウとティガじゃ世界観が違うからな」

律「詳しいな、さすが特オタ」

聡「お、おう。つか姉ちゃん、生で見たのな」

律「生ったって、部室の窓から超遠巻きにだぜ?さっさとケリついたし、あんま実感湧かないよ」

聡「そんなもんだろ。そもそも、ウルトラマンがマジでいたってだけでメシウマもんだし」

聡「まだこの街の近くにいるらしいぞ」

律「せやかて工藤!せっかくなんやし、もっと強敵とのドキドキするようなバトルが見たいやん!」

聡「ってもなあ。また怪獣が出るかだってわかんないし。むしろ出たら困るだろ」

律「夢のない弟だなあ」

聡「はいはい、じゃけん受験生はさっさと勉強しましょうねー」バタン

律「まったく……わかってるよ。ほんとは怪獣なんか出るわけないって」

律「でも、一度は出たんだから、少しくらい夢見たって――」

『その夢、叶えてやろうか』

律「!?」

『お前のマイナスエネルギー……利用しがいがありそうだからな』

律「お、おうふ……ついに幻聴ががが」

『いい機会だ、協力してやろう!お前の闇――使わせてもらうぞ!』

律「へ―――うわぁぁぁぁぁっ!?」

―――――
――――

翌朝

光太郎「いやあ、ありがとう。朝ごはんも用意してくれるなんて」

梓「いいんですよ全然。ところで、光太郎さんは今日どうするんですか?」

光太郎「そうだなあ。僕を呼んでいた、この世界の『わたし』って存在を探さなくちゃ」

梓「探すって……手がかりとか何か、ないんですか?」

光太郎「それは……声の主が、君くらいの女の子みたいだった事かな」

梓「」

梓(ほぼないじゃないですか……)

梓「で、でも!光太郎さんがこの街に倒れてたってことは、案外近くにいるのかもしれませんね」

光太郎「なるほど!つまり、この街の女の子にひたすら聞き込みをすれば――」

梓「えっ」

光太郎「まずい?」

梓「いえ、さすがにその格好でそうしたら……不審者扱いされそうですよ」

光太郎「ええっ、そんなことあるかなあ」

梓「今時知らない人って警戒対象ですし……」

光太郎「そうなのか?」

梓「あと何より、昨日ウルトラマンだってバレてるんです。変に騒がれたら困りますよ」

光太郎「そうか……どうしよう」

梓「うーん――あっ、そうだ!」

二階!

梓「やっぱり!最高に似合ってますって!」

光太郎「本当?変じゃないかな」

梓「全然変じゃありません!お父さんと体格似てるから、サイズもばっちりですし」

光太郎「でも僕、こういうスーツはなあ。どうもピンと来ないよ」

梓「いいんですよそれで。後は適当に髪型を整えればほら、別人みたいじゃないですか!」

光太郎「そう?梓ちゃんがそう言ってくれるならいいんだけど」

梓「後は探偵みたいにアンケートとか、適当な理由をつけて話しかければいいと思います」

光太郎「ありがとう!なんだか見つけられる気がしてきたよ」

梓「あと……もしよかったら、私もついていってもいいですか?」

光太郎「えっ、いいの?せっかくの休みに付き合わせちゃうけど」

梓「いいんですよ、どうせ暇ですし……場所の案内とかなら、任せてください!」

光太郎「そうか、それならお願いするよ」

梓「ありがとうございます!――あっ、ネクタイが曲がってますよ」

光太郎「おっ、やってくれるの?」

梓「いいんですよ。このくらいは……っと」

光太郎「ありがとう。決まってるかな?」

梓「はい!ばっちりです!」

光太郎「よぉし!!それじゃあ――」

梓「行きましょう!」

…………

光太郎「――それで、ここが探す場所?」

梓「ええ。るるぽーとっていって、この辺で一番賑わってるショッピングモールです」

光太郎「なるほど……うわ!本当だ、すごい人だかりだな」

梓「こんな人混みで大丈夫ですか?」

光太郎「大丈夫さ。このくらいなら、まだ聞こえる」

梓「聞こえる……って、えっ?」

光太郎「この中から、似てる声の人を探すんだ」

梓「いや、でも結構ざわついてますけど」

光太郎「おっ、聞こえた……あっちだ!」

梓「えっ!? 待って……もういない」

光太郎「すみませーん!」

?「わっ、なんなんですかあなたは!?世界一カワイイボクにナンパだなんて、身の程知らずですね!」

光太郎「いやぁ、そんなんじゃないよ。アンケートに答えてほしいんだ」

?「アンケート?」

光太郎「そうさ。昨日、怪獣が出ただろ?」

?「はぁ」

光太郎「その時思った事とか、あの怪獣について知ってる事とか、何でもいいから聞かせてくれないかな」

?「なぁんだ、あの騒ぎですか……」

光太郎「おっ、何か知ってるのかい?」

?「どこもかしこも怪獣怪獣!おかげでボクのかわいさがちっとも話題に上がらないんですよ!?」

光太郎「うん?」

?「ほんと、あんなバケモノのどこがいいんですかね!?」

光太郎「う、うん」

?「だいたいボクみたいなカワイイ存在のほうが、よっぽどスポットライトを浴びるにふさわしいのに――」

……

光太郎「くそっ、違ったか」

光太郎(結局、聞けたのは『ボクはカワイイ』ってことだけだったぞ)

光太郎(でも、へこたれても仕方ない。もっといろんな人に――)

「だから言ってるでしょ!? あれ絶対闇堕ちしたあるちゃんの仕業だよ!」

「ハッ……貴女の想像力には本当に驚かされるわね。さすがは大人気小説家(笑)のリノ先生」

「(笑)って何よ!」

「まあまあお二方とも、落ち着いてくだされ」

光太郎(おっ――あの子は)

光太郎「すみませーん!みんな、ちょっといいかな」

「へ?」

「……」

「む、何用ですかな?」

光太郎「昨日出た怪獣の事で調査をしてるんだけど、少し話を聞かせてくれないかな」

「怪獣でござるか?それでしたら、このお二方の方が詳しいですぞ」

「……デタラメは止めて頂戴。私はあんな稚拙な化物、認めたくは無いわ」

「あたしだって特オタじゃないし……」

「あら、話せばいいじゃない。さっきの闇堕ちしたあるちゃん(笑)の事でも――」

「なっ……こんのクソ猫ぉぉぉ!」

梓「光太郎さーん!」

梓(うーん、どこ行ったんだろ……?)

光太郎「おーい、あずさちゃーん……」

梓「わっ!大丈夫ですか?なんかやつれてますけど……」

光太郎「いやあ、なかなか会話が噛み合わなくてね……」

梓「何か分かりましたか?」

光太郎「そうだなあ。『カワイイは正義』とか、『めるる可愛い』とか……あと、『野郎はみんな豚』とか」

梓「お疲れ様です……」

光太郎「ハハハ……まあ、平和だって事はいいことなんだけどね」

梓「……辛くないんですか?」

光太郎「えっ?」

梓「手がかりもほとんどなしに、がむしゃらに走り回って……」

梓「これじゃあ、まるで終わりのないマラソンじゃないですか」

光太郎「そんなことないよ。確かに手がかりは少ないけど、ないわけじゃない」

光太郎「大事なのは、最後まで諦めないことだ」

光太郎「諦めないでやり抜けば、不可能だって可能にできる」

梓「でも……たった一人きりで、どうしてそこまで」

光太郎「一人じゃないさ」

梓「え?」

光太郎「だって、梓ちゃんが心配してくれてるじゃないか。それで十分さ」

梓「……!」

梓(光太郎さんの目は、ただひたすらにまっすぐ、前を向いていた)

梓(『絶対に諦めない』なんて簡単なようで難しいのに、こんなさらっと――)

『『く゛ーっ……』』

梓「あ……」

光太郎「……あっ」

梓「……あははははっ!なんですか今の、締まらないですよー」

光太郎「はっはっはっ!梓ちゃんこそ!」

梓「もー、ちょうどいいタイミングで……そうだ、ここらで気分転換でもしませんか?」

光太郎「気分転換?」

梓「はい!せっかく街に来たんですし、ご飯食べたり遊んだり、楽しみましょうよ」

光太郎「おっ、いいね!案内してくれるかな」

梓「もちろんです!さ、こっちですよ――」

『……――』スゥゥ……

『――お、戻ってきたか。どれ』

『ほー……仲良くデート気取りか。いいご身分だ』

『我々の計画が順調だとも知らずになぁ』

『マイナスエネルギーとこのガディバさえあれば、確実に邪魔者を消し去ることができる』

『それまではせいぜい楽しむんだな……お前たちの墓場の見学を』

「ふふ……あはは――」

澪「こら、律」

律「あてっ!なんだよ」

澪「そろそろ次の授業だぞ。ケータイ弄りはその辺にして、教室戻ろうな」

律「あはは、悪い悪い」

…………
♪~

梓「そろそろラストですよー!」

光太郎「おっと、このっ……うわっ」

ジャーン♪

光太郎「……どうだ?」

『♪all clear♪』

光太郎「やったぁ!」

梓「すごいですよ!昨日ちょっと弾いただけで、ここまで出来るなんて!」

光太郎「いやあ、ついてくので精一杯だったよ。梓ちゃんはすごいなあ」

梓「まあ、私はいつも弾いてますからね」

光太郎「いつからギターをやってるんだい?」

梓「小四からなんで、もう六、七年です」

光太郎「すごいなあ。きっと、部活でもすごく熱心に練習してるんだな」

梓「そんな、全然違いますよ!むしろゆるいくらいです」

光太郎「そうなの?」

梓「ええ。だって、練習よりティータイムのほうが多いんですよ?」

光太郎「てぃ、ティータイム?」

梓「先輩にすごいお嬢様がいて、毎日お茶とかお菓子とか出してくれるんです」

光太郎「すごい息抜きだなぁ……」

梓「でしょう?だからバンドの名前も、放課後ティータイムっていって。私はもっと真面目にやりたいのに」

光太郎「でも梓ちゃん、楽しそうじゃないか」

梓「にゃ!?」

光太郎「僕も思い出すなあ。ZATにいた時のこと」

梓「ざっと?」

光太郎「怪獣や宇宙人から地球を守るチームさ」

梓「ああ、ウルトラマンと一緒に戦う組織ですか」

光太郎「僕はわりと後輩だったけどね。よく作戦会議中にみんなで差し入れのおにぎりとか食べたりしたな」

梓「……え?いいんですか、それ」

光太郎「なんたって、隊長が『昨日カレー食った奴いるか?』って出動させるとこだからね」

梓「あ、あはは……らしくないですね」

光太郎「でも、すごくいいチームだったよ。僕も隊員としていろいろ学ばされた」

梓「なんていうか、似てますね。私たち」

光太郎「ハハハ、そうだね。楽しいって思える気持ち、大事にしてくれよ」

梓「はい!じゃあ、次はあれをしますか!」

光太郎「ぷり……くら?」

梓「はい。これはプリクラって言って、写真を撮るんですよ」

光太郎「なんだか、証明写真みたいだね」

梓「あはは……でも、ただの証明写真と違って、撮った写真にいろいろ細工ができるんです」

光太郎「本当かい?楽しみだなぁ!」

シャーッ

梓「あ、私たちの番で――」

純「でさー、そこで梓ったら……ぁ」

梓「」

憂「え、梓……ちゃん?その人……」

梓「えっと……憂?これはね、その」

光太郎「あれ?君たち、昨日の」

憂「……あぁーっ!!」

純「本物!本物のウルトrむぐっ!!」

梓「――お話しようか」

純「むー!」

…………
外。

梓「……っていうわけなの」

憂「へぇっ、梓ちゃんちにいたんだ」

純「すごいじゃん!パラレルワールドとか漫画みたいで」

梓「もう……内緒にしてね」

憂「うん!私たちの秘密ね♪」

光太郎「憂ちゃんに純ちゃんか、ありがとう。助かるよ」

純「で、さくやはおたのしみでしたの?」

梓「ぶっ!! 何言ってんの純!?」

純「そら夜二人ったらそう……ね?」

梓「ないない!! 特に何にもないってば!」

憂「えーっ? すごく仲良さそうだったじゃん」

純「ほらほら、おねーさんに言ってごらん」

梓「うー……光太郎さん、なんとか言ってくださいよお」

光太郎「はっはっは! みんな仲が良いんだね」

梓「ムエンゴ!?」

純「あっははっ、もー最高!梓ってほんっと面白いよね」

梓「デュアッ!」

純「げふぅっ!」

梓「さ、純。向こうでお話しよ」

純「ひー!?」

憂「あはは!もう、梓ちゃんたら」

光太郎「いいもんだね、友情ってのは」

憂「……あの、タロウさん?」

光太郎「光太郎でいいよ」

憂「じゃあ、光太郎さんは、梓ちゃんのこと――どう思いますか?」

光太郎「えっ?」

憂「梓ちゃん昨日、変な夢を見たとか幻聴がしたとか言ってて」

光太郎「えっ、本当かい?」

憂「はい……その時は特に何もなかったんですけど、少し心配で」

光太郎「そうだったのか……」

憂「どうでしたか?昨日から梓ちゃんを見てて」

光太郎「特に変わったとこはなかったよ。むしろ、楽しそうだった」

憂「良かった……」

光太郎「本当に大事な友達なんだね」

憂「はい!梓ちゃん、すごく可愛いですよね!」

光太郎「ははは、そうだね。昨日なんか、遅くまでギターをすごく丁寧に教えてくれてね」

憂「梓ちゃんらしいなぁ」

光太郎「いやぁ、本当にいい子だよ。素直で、とても優しくて――」

(お願い――この世界を――)

光太郎「……あれ?」

憂「光太郎さん?」

光太郎「いや……今、何かが頭に浮かんで」

『ウルトラマンタロォォォウッ!』

光太郎「何ッ!?」

憂「えっ?」

光太郎「なんだ?どこかから声が」

『どこにいるゥゥッ!』

『出てこい!タロォォウ!』

『出て来ないなら街の人間を皆殺しにしてやるぞ……!』

光太郎「近い……!」

憂「ど、どうしました?」

光太郎「ごめん憂ちゃん!すぐ戻る!」

憂「あっ、光太郎さん!?」

光太郎(この声……テレパシーか?)

光太郎(人間ではない、明らかに強いマイナスエネルギーを感じる……まさか)

光太郎(……宇宙人か!?)

『さぁ来い!ウルトラマンタロォォォウ!』

警官「ひぃぃぃっ!ば、化け物ッ!?」

『おっと……人間か?少し黙っていろ』

警官「うぐっ!」ガクッ

『む、ずいぶんあっさり伸びたな。楽に記憶を消せるからありがたいが、だらしない奴だ』

光太郎(なっ……あれは、テンペラー星人!?)

光太郎(わざわざ等身大で、こんな森の中で一体何を……)

光太郎「テンペラー星人!」

星人『……! 現れたな、ウルトラマンタロウ!』

光太郎「なぜお前が、この世界にいるんだ!」

星人『決まっている!お前を倒すため、地獄の闇から蘇ったのだ』

光太郎「お前を蘇らせた黒幕は誰だ!?」

星人『ハハハハハ!黒幕?そんなことはどうでもいい。ワシはただ、お前を倒すのみ……だッ!』

光太郎「ぬぉっ!?」

星人『どうした。早くタロウに変身しろ。さもなくば死ぬぞ』

光太郎「……こんなところで、戦うわけにはいかない」

星人『ぬるい事を言うな!変身しないと言うんなら、そこの警官を殺してもいいんだぞ』

光太郎「何だって!?」

星人『無論、街の人間もろとも皆殺しでも構わないが……さぁ、どうする?』

光太郎「くそっ……タロォォォォウ!」

星人『ふっ、そう来なくてはな!』

タロウ『……いくぞっ!』

……………

梓「……あれ、光太郎さんは?」

憂「それが、すぐ戻るって言って……どっか走ってっちゃった」

梓「また何か聞こえたのかな」

純「聞こえたって?」

梓「自分をこの世界に呼んだ人を探してるんだって。その時聞こえた声だけを頼りに」

純「……なにそれ」

憂「いくらウルトラマンでも、なかなか難しい注文だね……」

純「声だけって、不親切じゃない」

梓「でも、結構ニアミスがあったみたいよ?るるぽーとだけでも3回くらい」

純「偶然じゃないの?」

梓「でも光太郎さん、これだって人にしか声かけてないみたいだし。それは違うと思う」

純「うーん……」

憂「それで、どんな声の人を探してるの?」

梓「私みたいな年の女の子だって」

憂「……それだけ?」

梓「それだけ」

憂「……」

純「なるほどね……それで、空いた時間におデート、と」

梓「に゛ゃっ……!」

純「いやはや、まさか梓がねえ」

梓「そっ、その話はさっき済んだんじゃないの!?」

純「人の恋路はおちょくってナンボでしょ、ねー憂?」

憂「ねー?」

梓「」

純「で、どうだったのさ?ウルトラマンさんは」

梓「どうって……普通のお兄さんって感じだったよ」

純「……ちっ」

梓「何その反応!?」

純「だってさ、ウルトラマンだよ!?なんでそんなあっさりしてるのさ!」

憂「本物になんて絶対会えないからねえ」

純「ファンの人が聞いたらスペシウム光線の蜂の巣だよ」

梓「ほんとなんだってば!まっすぐで、気取ってなくて、とっても爽やかだし」

梓「正直……こんなお兄ちゃんなら欲しいかなあ……なんて」

純憂「「……」」

梓「……何?」

純「あーもー!うらやましい!」

憂「梓ちゃん健気~♪」

梓「えっもう、何よこの雰囲気ーっ!?」

「あーずにゃぁぁん!」

梓「に゛ゃぁっ!?」

憂「お姉ちゃん!」

律「良い子の諸君!お揃いかねー!」

純「と、軽音部の皆さん?」

……

……

タロウ『タァァァァッ!』

星人『グァァァァァッ!』

タロウ『くっ……まさか、ここまで粘られるとは……』

星人『ふ……はは、なんてことだ、昔戦った時はああも弱かったお前が』

タロウ『もう、あの頃の甘えた末っ子ではない。それを見誤ったお前の負けだ』

星人『くっ……さすが、言うことが違うな。ウルトラ兄弟一のエリートというわけか……ハハハ』

タロウ『……なぜだ?なぜ、そこまでの余裕を』

星人『はっ……!わしの目的はもう既に果たしたからな……』

タロウ『何っ?』

星人『奴の言いなりになるのは癪だったが……お前ともう一度戦えるのならばと了承した』

タロウ『答えろ!奴とは誰だ!』

星人『今にわかる――ぐふぁッ!』

タロウ『なっ!?』

星人『は……はは……やはりお前は、昔と同じだ、な』

星人『目の前の罠に全力で飛び込み――隣の女を見失――』

タロウ『……!?』

タロウ(梓ちゃんが……!?)

……

紬「そういえば三人は、どういう集まりなのかしら?」

純「たまたま会ってお出かけですけど……先輩方は?」

澪「学校で講習会をやってくれるっていうから、みんなで受けてきたんだ」

憂「ああ、受験生ですもんね」

梓「ところであの、唯先輩」

唯「なーに?」

梓「なんかいつもより締め付けられてる感が強いんですがそれは」

唯「クックック、よくぞ聞いてくれたなあずにゃん君」

梓「はぁ」

唯「私は今、猛烈に君が妬ましいのだよ」

律「そうだよ!」

梓「はい?あと律先輩、なんで便乗する必要があるんですか」

律「とぼけるな!もうネタは上がってんだぞぉ」

唯「さあ吐きなさい!生の怪獣、ウルトラマンの迫力を!」

梓「はにゃぁぁっ!」

澪「こら、落ち着けお前ら」

唯律「あうっ」

梓「はぁ、はぁ……やっぱり、先輩方の周りもその話題ですか?」

紬「そうね。私たちも部室から遠巻きに見てたけど、唯ちゃんとりっちゃんがすごくはしゃいでてね」

唯「そりゃそうだよ、なんたって本物だよ?」

律「ずるいぞ!梓だけ生で見たなんて!」

唯「そうだよ!生のウルトラマンに黄色い声上げるなんて、ずるいよ!」

梓「ずるいって」

純「確かに迫力はありましたけどね」

憂「お姉ちゃん……」

澪「でも、本当に本物の怪獣が出るなんて……どうなってるんだ」

律「いいじゃん!別に、もっと出てきても」

梓「何言ってんですか!?」

澪「わっ」

梓「あんなの……見せ物じゃないんですよ!?」

律「でもさぁ、せっかく出たってのにすぐに倒されたってのはなぁ」

唯「ちょっとつまんないよね」

律「その通り!もっと強いやつが来てくれないとつまらんぞ!なぁムギ!」

紬「ええっ?私は、みんなと一緒ならそれでいいかな……って」

梓「いくらなんでも、唯先輩も律先輩も言いすぎです!」

『それはどうかな』

梓「!? り、律先輩――じゃない」

『未知に対する興味関心は誰にでもあると思わないか……中野梓?』

梓「だ……誰?」

『異次元人――ヤプール』

紬「……梓ちゃん?」

澪「おーい、梓?あずさ!――へんじがない」

律「どうしたんだ?急にぼーっとして」

紬「しかも、りっちゃんをじーっと見つめて……」

律「――はっ!?」

唯「まさかあずにゃん、そういう……」

律「私のここ、いつでも空いてますよ」

唯「埋まってたことないでしょ!」

律「へっ!」

『ふふ、騒がないか……賢明だな。この声は、お前にしか聞こえないのだ』

梓「なんでわざわざ、そんな事を」

『お前と話がしたいからだ。もちろん、邪魔者のウルトラマンタロウは抜きでな』

梓「っ……光太郎さんは!? 光太郎さんに何したの!!」

『そんなに逸るな……ちょっとした足止めに、刺客を放っただけだ』

『ウルトラ戦士がそんなものでくたばる訳がないだろうが』

梓「捨て駒って……そんな」

『ひどいとでも言うか?心外だな』

『我々の怨念は一蓮托生……奴もタロウと戦えて満足だろうに』

梓「怨念って――そういえば、昨日も部室で」

『そうか、お前には聞こえていたか……ハッハッハッハッハ!』

梓「な、何?」

『ハッハッハッ!実に面白いぞ、中野梓!』

『何も知らないままの人間をただ滅ぼすだけではつまらんがな』

『我々の呪いを知っていながら何もできない方が、俄然楽しいではないか』

『ましてやそれが怨敵――ウルトラマンタロウの、最も身近な人間だと言うのだからな』

『そんな無力な人間からウルトラマンという希望を消し去れるなんて、最高の余興じゃないか』

梓「……ない」

『ん?』

梓「光太郎さんは負けない!あなたみたいな卑怯者に!」

梓「その体から出てって!」

『……ほう!』

梓「にゃっ!?」ズキッ

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