ほむら「希望はこの世界にあった…」 (91)

スレ立て代行です。ではどうぞ。

※オリキャラ視点注意

夏見藍花は瓦礫の山の中に閉じ込められていた。

身動きが取れず、動けば瓦礫が崩れ生き埋めになりそうな状態である。
藍花は真っ暗闇の中、傷を負い何日も飲まず食わずの状態で横になって死か、救助隊を待つしかなかった。

(光が欲しい…)

これではまるで盲人と同じ状態で周りを把握出来ない。

直感が伝えていた。家族はきっと生きてはいないだろう。
藍花は必死で泣くのを堪えた。泣けばその分だけ水分を失う。
家族と来たデパートだが、予期出来ぬ大災害が襲いデパートは簡単に崩れた。

(学園都市 とある公園)

??「いやー、ここが学園都市か。やっと着いたぜ」

自動販売機(バチッ!、ジーガー…、ゴトン)

??「ってーと、とりあえずどこ行きゃいいのかね…お?なんか自販機にケリ入れてる人が…」

御坂「…」

??「あの人は確か…。おーい!!」

御坂「…?(誰よアイツ…見ない顔ね…)」

辺りを漂う血なまぐさい臭いにも慣れてしまった。
崩れたデパートの中で生き延びたのが奇跡だ。だが、奇跡はそう長続きはしない。このまま飢えて死ぬのだろう。

ケータイは瓦礫に破壊され、起動しなくなっていた。

(魔法が使えたらなぁ…)

藍花はそう思い瞳を閉じた。
魔法が使えたら、こんな所も容易く脱出出来るだろう。

『僕と契約すれば使えるようになるよ』

藍花は瞳を開けると、白く人形のようで眼の赤い生物が目の前に居た。
真っ暗く何も見えないはずなのに何故かそれが見えた。

??「いやいや、そこにいらっしゃるのは学園三位の能力者、(超電磁砲:レールガン)こと御坂美琴さんではないでしょうか?」

御坂「だったら何よ…サインならお断りよ」

??「いやいや、おれも運がいい。学園に来ていきなり会えるとはねえ…」

御坂「(何よ、ファンか何か?シカトするに限るわね…こういうのは)」

??「いやどうも、おれは詠矢…詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)ってもんだよろしくなー」

御坂「(はいはい無視無視。相手するとロクな事無いわ)」

「誰…?」

藍花はかすれた声で問いかけた。自分は幻覚でも見ているのではないかと疑う。

『僕の名前はキュゥべえ。僕なら、君をここから出してあげられる。』

「だったら、早く…出して…」

キュゥべえは首を振る。


『でも僕と契約して魔法少女になるのが条件だ。魔法少女になったら、魔女と戦う宿命を架せられる。』

「わかった…魔法少女になる。だから…助けて…!」

『契約成立だね。』

胸元が苦しくなり、藍花は気を失った。

詠矢「あ、おいおい、どこ行くんだ!(って…会えたはいいがどうするかね…あ、そうだ!)…ちょいと御坂さん」

御坂「…」

詠矢「それ犯罪だろ?」

御坂「…」

詠矢「電流を操作して自動販売機を誤作動させ、金を払わずに商品を手に入れる。普通に窃盗だよな?」

御坂「…」

詠矢「いいのかねえ、学園第三位の能力者とあろう人が、小銭ケチって窃盗なんて」

御坂「…」

詠矢「あんたは強くて、その振る舞いを周囲が容認してるのかも知れないが、こう公然と…」

御坂「うっさいわねぇ!!どうせもいいでしょそんな事!」

藍花は眩しいほどの光で意識を取り戻す。
いつの間にか瓦礫の山の外におり、地上へ出たのだ。
手のひらの中には、綺麗な真っ白の宝石がある。

空は荒れており風も強く台風が来ているのかと思う程の暴風が起きていた。

「生存者がいるぞ!」

救助隊が藍花を担架に乗せ運び出す。

藍花はうっすらと目を開き空を見て畏怖をした。
上空には、紫色のドレスを反対にしたのような体で頭に歯車がある巨大な物体がうっすらと見えていたからだ。

すぐさま病院に運び込まれた。

詠矢「いや、よくないっしょ。刑法的に」

御坂「だいたい、アンタに何の関係があるのよ!!」

詠矢「俺が関係してようがいまいが、それが犯罪であることは事実」

御坂「(ビキッ…)何よ、喧嘩売ってるワケ?(バチッ)」

詠矢「…まあ、そんな感じかな」

御坂「…いい度胸ねぇ…。じゃあ、お望み通り私の電撃で躍らせてあげるわ(バチッ)」

詠矢「ちょちょ!ちょっと待って!」

御坂「何よ!今更逃げれるとでも思ってんの!?」

次に意識を取り戻したのは病室のベッドの上だった。

体中に包帯を巻かれ、点滴をされていた。不思議な事に体はあまり痛くない。
手の中には綺麗な宝石が輝いていた。

「これは…?」

『それはソウルジェム。魔力の源であり、魔法少女の証でもある。』

窓際にいつの間にかキュゥべえが座っていた。心に呼びかけるように話しかけてくる。

「私…魔法少女になったの?」

『そうだよ、夏見藍花。それを使って魔法を使えば、その傷なんかあっという間に治っちゃうよ。』

藍花は言われた通りにソウルジェムを傷口に当ててゆく。
傷口がみるみるうちに塞がった。

「お父さん…お母さんは?」

『残念だけど…あのデパートで生き延びたのは君一人だ。』

キュゥべえは首を振る。

「うぅ…」

藍花は顔に手を当て、涙を流した。

詠矢「いや、違う。ちょっと離れただけ。5メートルも有れば十分かな」

御坂「?何言ってんの?私の能力知らないの?」

詠矢「いや、知ってる知ってる。ちゃんと調べてきた。超強力な発電能力だよな?」

御坂「知ってるなら、無駄だってわからない?…もういいわ、死んでなさい!!(バチバチッ)」」

詠矢「大丈夫、空気は絶縁体だ。ここまでは届かない」

御坂「…?(あれ、おかしい、電撃が飛ばない)」

詠矢「ごく近い距離なら、空気中でも放電現象が起こる場合は有るけど、これぐらい離れてればまず大丈夫」

御坂「…!?(あれ、あれ、何度やっても飛ばない!!…電気はちゃんと起きてるのに!)」

詠矢「(お、効果アリ…かな?)」

しばらくして落ち着いた後、藍花はキュゥべえに問いかける。

「あれは一体、何だったの?」

『あれはワルプルギスの夜。史上最悪の魔女さ。だけど、魔力の無い人間たちにはあれはただの天災に映るだろうね。』

「つまりあれは…その魔女が起こしたものなの?」

『そう。でもそれら魔女を倒す使命が君たち魔法少女にはある。』

藍花はショックを受ける。偶然起きた天災ではなく、魔女によってたくさんの人や家族が殺されたのが分かったからである。

『この辺りにたくさんの絶望が生まれてしまった。このままでは他の魔女による二次災害が発生する。さぁ、君の出番だ!』

藍花はキュゥべえから魔法少女というものについて詳しく教えてもらった。
魔法少女は魔女を倒す為にあることやソウルジェムの扱い方などである。そしてキュゥべえは選ばれた者しか見えないこと…。

藍花はベッドから降りてサンダルを履き点滴を運びながら部屋を出る。

『どこへいくんだい?』

「屋上。」

御坂「…アンタ…なんかやったわね…」

詠矢「多分…ね」

御坂「能力…者…」

詠矢「そうなるかな」

御坂「…なんか、アンタ嫌な雰囲気ね。その軽口、後悔させてあげるわ!!…!!(最大級の電撃を!)」

詠矢「お…電圧を上げてるのかな?それはいい判断だ。空気の絶縁限界を超える約300万V/mが有れば空気中でも電子雪崩が起こって雷を起こすことが出来る。但し!!」

御坂「さっきからゴチャゴチャうるさいわね!!でも…これでっ!!(バチッ!…バリバリ!)

詠矢「空気中に放電された電気は、一番近くにある電気抵抗の少ない物質に向かって流れる。この状況では、恐らく…」

自動販売機「(バチッ!!…ガガ…。プツン)」

御坂「えっ!?電撃が…」

天気は良く病院の屋上は風当たりがいいが、清々しい気分になれない。
屋上の手すりに寄りかかり、変わり果てた街を眺めた。
瓦礫がたくさんのパワーショベル等で撤去されているのが目に映る。

藍花の藍色でストレートの髪が風でなびく。

「私、魔女を倒す…倒し続けるよ。」

『………』

「もう、二度とこの悲劇を生まないように。」

キュゥべえは手すりに上る。

『うん、君ならあのワルプルギスの夜とも渡り合えるかもしれない。』

「ワルプルギスの夜はいつ、どこで出現するの?」

『それは僕にもわからない。彼女は天災そのものだ。大地震や火山の噴火は到底、予知できるものじゃないだろう?』

「………。」

キュゥべえは表情を全く変えぬまま話す。

『もしかしたら、他の魔法少女たちがワルプルギスの夜についての手がかりを知っているかもしれないよ。』

詠矢「窃盗に器物破損が追加…か」

御坂「なによ…これ…どういうこと!?アンタ何したのよ!!」

詠矢「いや…もういいんだ、十分使えることわかったし」

御坂「はあ?」

詠矢「ご協力ありがとうございました。そんじゃまた」

御坂「ちょっと、アンタみたいな得体のしれない奴、このまま逃がすとでも思ってんの?」

詠矢「あ、いやいや、ゴメンゴメン。怒らせたのは謝るからさ…」

御坂「うるさいっ!!電撃が飛ばないならこれよ!!(チャキ)」

詠矢「おっと、そのコインはレールガンですな!。えーっと、どうだっけかな(ポチポチ)」

御坂「…ナニ携帯なんか見てるのよ…」

詠矢「いや、うろ覚えなもんで…。と、電気伝導体の二本のレールの間にこれまた伝道物質を配置し、回路を形成して荷電することよってローレンツ力を発生させて打ち出す…。てことは…レールはどこにあるんだ?」

「他の…?」

『そう。まぁ、そのうち魔法少女たちもここにやって来るだろうね。』

「どうして…?」

『魔法少女にとってグリーフシードはソウルジェムの次に大切なものだ。何度も言うようだけど。この街は絶望に溢れていて、魔女たちにとって活動しやすいんだ。その魔女を狙って魔法少女が動くわけさ。』


気がつくと藍花のソウルジェムが、何やら点滅を繰り返していた。

『この反応は魔女だ!』

「…上等じゃないの…魔女への復讐、第一弾って訳ね。」

キュゥべえに教わった通り、ソウルジェムの反応を頼りに魔女を見つけ出す作業に入った。

御坂「はい?レール?」

詠矢「うん。安定した加速を行う為には、かなり長いレールが必要となる。コインは恐らく鉄をクロムメッキしたものだろうから弾丸としては使えるけど、砲身が無いのが問題だな」

御坂「…空気中の物質をプラズマ化して、加速レールとする…簡単な話よ」

詠矢「…え?空気をプラズマ化…いや、それなら伝導体にはなるけど飛散しちゃうし、空中に固定する方法がないと…」

御坂「関係ないわよ。今までだってそうやって来たし、何も問題ないわ」

詠矢「(ヤベ、居直った。もしかしてヤバイ?)。いや、だからですね…原理が…」

御坂「うるさいっ!!死っねえええええぇぇ!!(ビシュゥゥゥゥ…ン!!!)」

(近い…!)

たどり着いた先は小学校だった。
藍花の母校でもあり、思い入れがある場所でもある。
今は避難所としてたくさんの人々が居る。故にこのまま野放しにするのは危険すぎる。

足元に小型の懐中電灯があった。この災害時だ、きっと誰かが落としたのだろう。
藍花は懐中電灯をポケットに入れた。

さらに探っていくと、体育館裏に魔女の結界があった。

藍花は衣服を変身させる。
髪の毛に合った、藍色と紫のアニメで見るような衣装だ。

(かっこいい服…)

『覚悟は出来てるかい?』

「うん…。」

藍花とキュゥべえは魔女の結界の中に入った。

詠矢「どおうわっ!!ヤバイヤバイ、ヤバイってマジで!」

御坂「へえ…上手く避けたわね…(さすがに威力は落としたけど、ホントに上手く避けた…)」

詠矢「(撃ちやがった…。論証が弱かったか?。ってーと、別の切り口が必要だな…)」

御坂「…さあて、アンタの能力、詳しく聞かせてもらいましょうか?それとも…消し炭になりたい?(チャキ)」

詠矢「そういやあ、そろそろ昼時だけど…御坂サン、腹減ってないか?」

御坂「…あんたバカじゃないの?何の関係があるのよそんなこと!!」

詠矢「御坂サンが発電を行っているとして、電気を発生させてるのは体細胞だ。だとすれば、発電のために大量のエネルギーが必要になる。細胞活動のエネルギーは糖。血中の糖だ。空腹時は危険だぞ…」

御坂「…(あれ?なんか、体が…)」

魔女の結界の中はお伽話にでも出てくるような世界だった。

数メートルはある巨大な鉛筆や消しゴムといった勉強道具が不規則に散乱している。狂気と混沌に満ちあふれていた。

「何よここ…。」

(さっさと倒して出よう…)

奥に大きな扉があった。引き戸で窓ガラスがある。そこから強いオーラが感じとれる。
その引き戸を開けると、まさに教室そのものだった。

教室といっても体育館以上に広い空間で、机や椅子も自分の背より高い。
まるで自分が小さくなってしまったかのようだ。

『現れた!』

「っ!」

教壇の上に目がたくさんあり、内側から釘がたくさん飛び出したような醜い大きな魔女が居た。

詠矢「急激な血糖値の低下は発作を引き起こす。具体的な症状としては、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄!!」

御坂「(冷や汗が止まらない…、何で急に…た、立ってられない!)(ガクッ)」

詠矢「いや、いろいろゴメン。えーっと…さっき盗ってたジュース、あ、あったあった。『黒豆サイダー』?。ま、糖度高そうだからこれ飲めば多分回復するよ」

御坂「ちょ…っと…待ちなさ…」

詠矢「んじゃ、失礼しまっす」

藍花は懐中電灯を取り出し、強烈な光の剣になった。まるでビームサーベルのようだ。
魔女に飛びかかり光の剣で魔女の腕を切り落とす。

切り落とした所から大量の鎖が放出される。

「!?」

鎖は藍花の体を鞭のように叩き付けた。藍花は大きく吹っ飛び、壁にぶつかる。
藍花はしばらく、うつ伏せになった。

魔女は慢心して藍花を見下し笑っていた。

だが、うつ伏せになりながら藍花は力を溜めていた。
藍花は起き上がり溜めて、さらに魔法で増幅させた光線を両手から繰り出す。

「消し飛べ…!」

魔女は悲鳴をあげながら、跡形もなく消滅した。

白井「お姉さま!!お姉さま!!」

御坂「く…黒子…っ…」

白井「どうなさいましたの!?真っ青ですわよ!!」

御坂「ちょっと…それ…取って…」

白井「(缶ジュース?)は、はい、こちらですの?」

御坂「(プシッ)…(ゴクゴク)」

白井「…(ハラハラ)」

御坂「…ふう、ちょっと落ち着いた…」

白井「どうなされましたの?」

御坂「なんか変な奴に合って…、最初は追っ払ってやろうと思ったんだけど…」

白井「ま、まさか…お姉さまを退けたと?」

結界が消え、現実世界の体育館裏に戻る。

『凄いよ藍花!やっぱり僕が見込んだ通りだった。』

「………。」

藍花は魔女が落としたグリーフシードを拾い上げる。
キュゥべえに言われた通り、早速ソウルジェムから汚れを取ろうとした。
ソウルジェムはほとんど濁っておらず、グリーフシードがちょっと穢れを吸っただけで純白になってしまった。

『それにしても、凄いなぁ君の能力は。』

「どういうこと?」

『基本、この手の魔法というものは1からものを作ったり変化させたりすることが多い。だけど君の場合は元からある光のエネルギーを集め増幅させる力が備わっている。
1から作る魔法と違って魔力の消耗が少ない。つまり燃費がいいんだ。まぁどの魔法を使うかにもよるけど。』

「魔法少女って…みんな同じ能力じゃないの?」

『違うよ。基本となる力は何を願ったかによって大きく異なるんだ。君は暗い瓦礫の下で強く光を求めただろう?吸光の願いをベースにしたから、君は光を操る魔法少女になったんだ。』

御坂「いや、そうじゃないんだけど…。なんかゴチャゴチャうるさい奴でさ、話聞いてるとなんか調子出なくって」

白井「少なくとも、お姉さまから逃げおおせたのは確かなようですわね。何かの能力者…ですの?」

御坂「そうみたい…。はぐらかして、詳しくは分からなかったけど…」

白井「それは見過ごせませんわね…。黒子がたまたま通りかかったからよかったものの…」

御坂「なんか、ヤな感じの奴だったわね。強さは感じないんだけど…なんていうか、掴みどころの無い感じ…」

白井「これは、ジャッジメントとして対応する必要がありますわね。お姉さま、相手の特徴は覚えていらして?」

御坂「うん、それは覚えてる…。黒縁メガネで、眉毛が太くて…」

白井「支部で詳しくお聞きします。移動しましょう」

「でも、仮に光の無い所ではどうすれば?」

藍花はキュゥべえに尋ねる。

『確かに光が無ければ、まずいかもしれない。だけど実際、夜でも全く光が無いなんてことはない。どうしても心配ならその光を放つもの…さっき手に入れた懐中電灯のようなを常に持ち歩くといい。』

藍花は小型の懐中電灯を取り出す。

(これが…)

藍花は懐中電灯を大切にしまう。校門を出て、歩道を歩く。

『家に帰るのかい?』

「…帰る場所がない。」

『?』

たとえ家が無事だったとしても、家族がいない。むなしくなるだけだ。
藍花はひたすら、変わり果てた街並みを見て歩いていた。

(ジャッジメント177支部)
初春「(ヨメヤ ソラキ)ですか…。在学者の名簿にはありませんね…(カタカタ)」

白井「しかし、自分から名前を名乗るとは大胆なお方ですわね」

御坂「聞いてもいないのに勝手に名乗ったのよね…。背格好からして、多分高校生ぐらいかなあ…」

初春「ダメです。中等部、高等部含めて検索しましたけどヒットしませんね」

白井「能力者なら、学園のバンクに登録があるはずですのに…まさか偽名?」

御坂「偽名なら、もっと普通の名前にするでしょうし…あ…そういえば」

白井「何か思い出されまして?」

藍花は駅のホームに結界を張っていた魔女を倒し、グリーフシードを拾う。
キュゥべえは藍花を褒める。

『凄いなぁ。3日でグリーフシードを5つも集めちゃったよ!まぁその分、この街に絶望が湧いてるってことだけど。』

「………。」

藍花にとって魔女を倒すことは家族への復讐でもあり、同時に人間を守る大切な役割でもあった。

キュゥべえは尻尾を振りながらこちらを見る。

『君は無口だね。せっかく言葉という意志の伝達に最高のものがあるのに…。勿体無いじゃないか。』

「ごめん。」

藍花は変身を解き、髪の色と同じ紫色の魔法少女の服から私服へと戻る。

(私、無口だったのね)

ひと息つき魔女探しを始めようとした。



「ちょっと待ちな。」

御坂「学園に来ていきなりアタシに会ったって言ってた…もしかして…」

白井「学園都市に初めて来たと…初春!転入者名簿ですわ!」

初春「はい!!(カタカタ)あ、ありました!(詠矢空希 高等部1年)2日前に転入届が受理されたばかりです。また正式に生徒名簿には登録されてなかったみたいですね」

御坂「やっぱり高校生か。えーっとなになに…レベル0、無能力者。ただし学園での正式な測定は未実施…」

白井「外部での簡易検査では、能力は検出されなかったようですわね…」

御坂「なーんか、ますますよくわかんないわね」

白井「なんにせよ、お姉さまに危害を加えたことは事実。捨て置けませんわ…居場所さえ分かれば…」

初春「…あの…」

白井「何ですの?」

女の子の声をした誰かに声をかけられる。
振り向くと髪が紅く、ポニーテールの少女が立っていた。口にキャンディの棒をくわえている。

『佐倉杏子!来てたのか!』

「全く、余計な魔法少女を増やしやがって…」

杏子という少女は呆れるようにキュゥべえに言う。

『これが僕の仕事だから仕方ないだろう?』

(このコ…キュゥべえが見えるの?つまり…)

杏子はフーンといった顔つきで藍花を眺め、好戦的に話しかける。

「アンタさぁ、先輩がやって来たんだから挨拶くらいしたら?」

「…申し遅れました。夏見藍花と言います。」

杏子はキャンディをガリッと噛み砕く。

(調子狂うなぁ…こういう馬鹿みたいに素直なタイプ)

初春「転入者名簿に顔写真があります。これを監視カメラの記録と照合すれば…」

白井「足取りが分かりますわ!流石ですわね初春」

初春「はい!ありがとうございます!では早速(カタカタ)、第7学区の、170号カメラの記録と照合できますね…5分前のログです」

白井「そこなら、ここのすぐ近くですわね…。私なら一瞬ですわ」

御坂「じゃあ、アタシも一緒に行くわ。このままじゃ気が済まないし!…って…と…(グラッ)」

白井「いけません!お姉さまはまだ本調子ではありませんわ。ここは黒子が…その殿方をひっ捕らえて、お姉さまの前に引き出して差し上げますわ!」

初春「それに、これはジャッジメントとしてのお仕事でもありますから、御坂さんはどうか休んでて下さい」

御坂「…わかった、今回ばかりはおとなしくしといたほうがよさそうね…」

白井「どうかご自愛下さいませ。では初春、正確な位置をお願いしますわ!」

初春「はい!」

「だったら用件を先に言っちゃうか…。アンタ、この街を出て行ってくれない?」

「え?」

藍花は予想もしなかった先輩の要求に驚く。

「もうこの街で充分魔女を狩って、グリーフシードを手に入れただろう?後は先輩の魔法少女に任せるのが筋ってもんだ。」

「でも、ここは…私の生まれ育った街で…。」

「その街をあたしが守ってやろうって言ってんじゃない。」

「そんなに…グリーフシードが欲しいの?」

「はぁ?何当たり前な事言ってんの?」

次の瞬間、藍花のとった思わぬ行動に佐倉杏子はしばらく言葉も出なくなった。

藍花はグリーフシードを5つ杏子に差し出したのだ。

「私が今日まで、この街で集めた未使用のグリーフシードです。これを差し上げますから手を引いて…私に街を守らせてください。」

(第7学区 路地裏)
店主「はーい、かけそばお待ちどう!」

詠矢「うーい、どうもー。(これからいろいろ物入りだろうし、節約しとかないとなあ)(ズルズル)」

詠矢「(しかしかけそば一杯じゃ腹膨れねえなあ、おにぎり食っちまうかなあ)(ズルズル)」

詠矢「(でもおにぎりまで買っちゃうと牛丼の方が安いんだよなあ)(ズルズル)」

詠矢「(腹減ってたから勢いで入っちまったけど、やっぱ牛丼屋探せばよかったかなあ)(ズルズル)」

詠矢「ごちそうーさまー」

店主「あい、まいどー」

詠矢「さて…転居申請だっけか。どこ行きゃいいのかな(ポチポチ)」

白井「ちょっと、そこのお方…」

杏子は身を引きそうになるほど驚いた。

「これでも不満ですか?」

「ふざけんじゃねぇ!ソウルジェムの次に大切なもんなんだぞ!」

杏子は藍花の胸ぐらを掴み、睨みつける。
藍花の目には迷いがなかった。逆に杏子の目に迷いが生じていた。

「くそっ!」

杏子は藍花を離しあっという間にどこかへ行ってしまった。

『どうしてだろう?彼女にとっても、いい条件だと思ったのに。わけがわからないよ。』

「私も…。」

藍花は5つのグリーフシードを見る。

(どうしてこれを差し出すようなマネをしたんだろう…)

詠矢「あ、はい?俺のことっすか?」

白井「詠矢空希…ご本人に間違いございませんこと?」

詠矢「ええ、まあ…間違いございませんが…どちらさん?(お、結構かわいいじゃねえの。中学生ぐらいかね…)」

白井「ジャッジメントですの!!(ビシッ)」

詠矢「ジャッジメント…えーっと、確か、学園内の治安維持に努める学生で構成された組織…だったかな」

白井「お分かりなら話は早い…。ジャッジメントの権限にてあなたを拘束します!」

詠矢「でーっ!!て、なんですかいきなり容疑者ですか!(流石にいろいろマズかったかな、さっきのは…)」

白井「あなたにはいろいろとお伺いしたいことがあります。素直に同行して頂けませんか?」

詠矢「…」

白井「…お答えなさい!」

詠矢「…俺の容疑は?」

白井「は?」

夜遅く、杏子はホテルの一室でお菓子をやけ食いしていた。スナック菓子を次々に口に運んでゆく。

(ったく…調子狂うってレベルじゃねーぞ)

いつの間にかキュゥべえが窓際に座っていた。
杏子はその存在に気付いておりキュゥべえに問いかける。

「おい、何なんだあいつは?」

『夏見藍花は5日前、吸光の願いをベースに契約したばかりの魔法少女さ。光を操る力を持ってるよ。』

「なんでお前と契約したんだ?」

『藍花はワルプルギスの夜にデパートを破壊され家族を殺された。藍花もまたデパートに居て運良く死は免れたけど、瓦礫で生き埋めに等しい状態で死にそうだった。』

「で、お前と契約したわけか。」

杏子はソファーに寝そべり天井を見ながら言う。

『そう。彼女の能力自体がソウルジェムに負担をかけないんだ。だから、穢れも溜まりにくい。』

(だから、グリーフシードを容易くあたしに…)

「サンキュー。もうどっかに行きな。」

キュゥべえはいつの間にか居なくなる。杏子はしばらく、ソファーに寝そべっていた。

(ワルプルギスの夜に両親を…か…)

詠矢「俺が拘束されるのは何の容疑だって聞いてるんだよ」

白井「…いえ、まだ罪状が確定したわけではありませんが…」

詠矢「容疑者じゃなけりゃ、任意同行にすらならねえだろう。不審者への職質レベルなら、従う必要はねえよな…」

白井「いえ、あなたにはお姉さまに危害を加えたという疑いがありますわ!」

詠矢「お姉さま?って…もしかして、えー…あの第三位の人かな」

白井「そうですわ。ご本人の証言から、先ほどお姉さまと関わったのはあなたであることは明白!」

詠矢「そりゃ関わったかもしれんが、俺はあの人には指一本触れてない。因果関係が成立するか?」

白井「何らかの能力を使われたと、ほのめかしていませんのこと?」

詠矢「どうだったかなあ…。それに、俺はレベル0、無能力者だぜ?」

夜中、藍花は廃屋で野宿をしていた。

(寒い…)

家に帰れば、あったかい毛布にくるまって寝れるだろう。
けど、誰もいない家に帰りたくなかった。

毛布を作り出し、なるべく温まるようにした。

(またあのコが来るかもしれない-)

この廃屋もその気になれば豪華な家に変えれるかもしれない。

だが、この5つのグリーフシードは交渉用として、とっておくべきだと思った。
だから、なるべく魔力は温存したかった。

「見てられねーな。」

藍花が寝ている廃屋に杏子がどら焼きを片手に現れ、藍花を叩き起こす。

「人間を救う魔法少女様が、何で人間以下の生活をしてんだよ。」

「私には…帰る場所がないの。」

白井「あなた…いろいろと面度なお方ですわね」

詠矢「昔から理屈っぽい性格でねえ。友達いねえんだこれがまた…」

白井「聞いてせんわそんなこと…。いずれにせよ、素直に従わないのはやましいことがある証拠!」

詠矢「いやー、権力側の人間っていつもそう言うんだよねえ」

白井「(イラッ)、では、同行していただけないと?」

詠矢「とりあえず、今の段階では『やだね』だ」

白井「では、力ずくですわね。やはりあなたを野放しには出来ません!!」(シュン!!)

詠矢「(消えた…?)…!!(って、いきなり目の前に!)」

白井「はっ!!(ガシッ)せいっ!!」

「チッ…」

杏子はどら焼きを一気にもぐもぐと食べる。

「だったら、あたしの所に来いよ。」

杏子は藍花の手を引き、自分が住んでいるホテルへと誘った。

「あの…お昼のことだけど…。」

「それは後にしよう。」

藍花は言いかけたが杏子に止められる。

とうとう杏子が住む、ホテルの一室に連れて来られた。
部屋の中は食料やお菓子が山済みになっている。藍花はそれらを見ると、お腹が鳴ってしまい恥ずかしくなる。

「飯もろくに食ってねーのか。好きなの食えよ。ホラホラ。」

藍花は杏子にお菓子やフルーツ、惣菜など次々と渡される。

藍花はお菓子の袋を開け、もぐもぐと食べた。
急に何かが満たされた気持ちになり藍花は泣き始める。

「おっ…おい、そんなに美味いのか?」

「うん…美味しい…嬉しい。」

藍花はひとりぼっちではなくなった。

詠矢「(襟首と袖を!投げる気か…!!)よっと!(ババッ)」

白井「…!(引き手を切った!!体を裁いて釣り手も!!)…」

詠矢「あぶねえあぶねえ。テレポーターさんか…ちょっと離れさせてもらうぜ」

白井「やりますわね…、わたくしの捕縛術から簡単に逃れるとは…」

詠矢「一応心得はあるもんでね。さあ、どうする?いくら瞬間移動が出来ても、拘束するには俺を組み伏せる必要があるぜ?」

白井「他に方法はいくらでもありますわわ!いきますわ…」

詠矢「あーちょっと待ってくれ!!」

白井「…なんですの」

詠矢「テレポーターってさあ、瞬間的に位置を移動するわけだよな?」

白井「そうですわよ。それが何か?」

「あの…先輩…。」

「杏子でいい。どうせ年は違わないだろ?」

「じゃあ、杏子ちゃんはどうして私をこんなに優しくしてくれるの?」

最初は藍花を街から追い出すような言い方をしていた。でも、今は違う。
杏子はリンゴをガツガツと食べながら言う。

「キュゥべえから聞いたよ。お前、家族をワルプルギスに殺されたんだよな…あたしも実は家族が居ないんだ。」

「えっ?」

杏子は魔法少女になり、家族を失う経緯を語ってくれた。

「だから、なんか変な親近感が湧いて来たんだよ。」

「………。」

杏子は最初は藍花を街から追い出すような言い方をしていた。結局いざこざが発生するかもしれない。

杏子は食べるのを止め、真剣な眼差しで藍花を見る。

「本題に入ろう。お前はこの街で魔女を倒したい、けど特別グリーフシードが欲しいわけではないんだな?」

「うん…。」

詠矢「転移先の物体はどうなるわけ?分子の重複とか起こらないのかな?」

白井「問題ありませんわ。わたくしの転移は…!(そういえばお姉さまがおっしゃってましたわ『ゴチャゴチャうるさい奴』と。まさか能力と何か関係が…)」

詠矢「えーっと、どう問題ないのかな?」

白井「…答える必要はありませんわ。あなたのご質問には何か別の意図を感じます」

詠矢「(あ、気付かれたか…。ま、しょうがない)いやあ、単なる好奇心だけどね」

白井「ご質問なら後で支部でゆっくりと。但し、わたくしの質問に答えて頂くのが先ですけど…(シュン)」

詠矢「…(また消えた、今度はどっから来る!)・・・どあっ!(上かっ!!)」

白井「(よし、倒しましたわ!。後は針で拘束!)…ふっ!!」

「だったら、こういうのはどうだ?あたしがアンタの魔女狩りに協力してやる。だけど、分け前のグリーフシードはあたしが少し多く貰う。その代わり、衣食住を保証してやろう。」

藍花は表情がパッと明るくなる。藍花にとってこの交渉はいいことだらけであった。

「あなたがよければ、喜んで。」

「交渉成立だな。」

藍花は杏子と握手をし、2人で魔女退治をすることになった。
分け前は藍花の魔力の消耗が少ない分、妥当なのかもしれない。

「今までこの集めたグリーフシードは…」

「それはお前が持っとけよ。グリーフシードは自分だけのもの。他人に簡単に渡していいもんじゃねぇ。」

「でも私たち、もう友達だよね?」

詠矢「(な!針!どっからあんなもん、投げる気か!)…!!(ゴロゴロ)」

白井「(キイン、タスタスタス)…!(針が地面に!転がって逃げた…)」

詠矢「…よいしょっと・・・。っとにあぶねえなあ…。手裏剣か。投げた…訳じゃなさそうだな」

白井「…」

詠矢「投げただけじゃ、金属の針がアスファルトに刺さるわけねえ。地面に向かって転移させた、ってとこか」

白井「あなた…何者ですの…」

詠矢「ただの理屈っぽい高校生ですよ」

白井「なら今のはどうやって避けたと…」

詠矢「いや、偶然あんたの手に針が見えたんでね。投げられるかと思ったんで転がって逃げた。そんだけさ」

白井「…たったそれだけのきっかけで…」

「そ、そうだな…。」

杏子は切ない表情をしてベッドに横になり、反対側を向いてしまった。

「早く寝ろ。明日は早い…グスッ。」

「うん。」

藍花も隣のベッドに寝る。野宿と違ってとても寝心地が良く、すぐにスースーといびきをかいて寝てしまった。

夜中、杏子はあまり寝付けないでいた。明日からペアで戦うのが楽しみだからかもしれない。

「お父さん…お母さん…」

藍花はベッドのシーツを掴みながら寝言を言う。

「………。」

杏子は藍花の崩れかけた布団をかけ直してやった。


翌日からペアで魔女を退治する事になった。

詠矢「だが、今のでわかった。テレポーターがどうやって転移先を指定しているか」

白井「…」

詠矢「指定先は『座標』だな。物を投げるのと同じ。『どの位置に向けて転移する』と指定して物体を送り込んでいる。俺が回避行動を取って針を避けられたのが証拠」

白井「それが…どうかしましたの?」

詠矢「座標なら、対抗する方法はある。要するに、狙いを定めさせなければいい(ザッ)常に動きまわってる対象には、当てにくいはず!(ダッ)」

白井「く…!(どういうことですの!針が当たらない…。この状態では細部を狙って拘束するのは無理ですわ!)…仕方ありません!多少の怪我は覚悟して頂きます!」

詠矢「しかも、銃弾や投擲と違って到達点までの軌道がない。つまり!!」

白井「(方向転換する瞬間なら、動きが止まはず。直接体に針を!)…そこっ!!(シュン)」

詠矢「相手に近づいても、流れ弾に当たる心配はねえ!一旦狙いをつけさせれば、距離を詰めた方が有利!!(ザッ)」

白井「(まさか!いきなりこっちに向かって!外したっ!!)…!」

詠矢「どっせい!!上段正拳!!」

白井「…!!(ダメ!演算が間に合わない!!)」

川沿いで魔女の手下である遣い魔の結界を発見し、倒そうとし、変身した藍花を杏子が止める。

「おい、この魔力からすると遣い魔だぜ?倒すのは感心しないなぁ。」

「どうして?ただでさえ、街の人は弱ってるのに…遣い魔とて野放しに出来ないよ。」

「まさか…アンタもあいつみたいに正義の味方を気取るタイプ?」

「気取っていない…私は魔女に復讐するの。その魔女になりかねない遣い魔は倒さないといけない。」

「じゃあ、遣い魔が成長するまで待ってその魔女を倒せばいいんだよ。グリーフシードも落とす…いくらでも復讐も出来る。一石二鳥じゃん。」

杏子は藍花を煽るように言う。藍花はカッとなりとうとう杏子に掴みかかる。

「へぇ、あたしと一戦交えようっていうの?上等じゃない。」

「違うの…ついカッとなって。」

藍花は杏子を放し謝る。しかし杏子はソウルジェムを取り出し変身する。

「やってやろうじゃないの。」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「あー…」

白井「…え?…(寸止め?)」

詠矢「殴るつもりはなかったんだわ。忘れてた…」

白井「…(ガシッ)…(シュン)」

詠矢「のごあっっ!(なんだ、いきなり頭から落ちた!?)」

白井「…(キイン)…(タスタスタス)…ふう、拘束完了ですわ」

詠矢「ひでえなー、転移した対象の方向まで変えられるのか。受け身とれねえっての…」

白井「手こずらせてくれましたわね…」

詠矢「いやー、ゴメン。悪気はなかったんだけどねえ。『論証』に入るとつい熱くなっちまって」

白井「では、おとなしくご同行して頂けると?」

詠矢「はいはい、転がされて、一張羅の袖口を縫い付けられて抵抗する気力もございません。どこなりとお連れ下さい」

白井「最初からおとなしくそうおっしゃっていれば…。とりあえず、あなたの能力、手短にご説明いただけます?」

杏子が変身した後の服は紅い髪の色にあった紅い服だ。

「覚悟は出来たかい?」

「ええ…。」

杏子は大きな槍を持ち、構える。藍花は懐中電灯を取り出し構えた。

「それが武器!?」

杏子は笑うが、藍花がスイッチを入れ強烈な光の剣に変わるのを見ると笑うのを止めた。

今日は天気が良く晴れ渡っている。

(確かコイツは光を操る…まぁちょうどいいハンデか)

杏子は高速で槍を振り回し、藍花に強襲する。

藍花は光の剣で振り払った。

杏子の長い槍が2つに折れるが、ヌンチャクのように分裂し蛇のように自在に動く。

藍花の手元をヌンチャクで攻撃し光の剣を叩き落とす。
さらに、鳩尾を思い切り槍の反対側で突き飛ばす。

詠矢「すいません、せめて立って話したいんですがー」

白井「口まで拘束した覚えはございません。そのままでどうぞ」

詠矢「うわ地味にひでえ」

白井「で、なんですの?あなたの能力。お姉さまの言った通り、あなたの言葉を聞いてると調子が狂いましてよ?」

詠矢「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれました!。俺の能力はなあ!『論証を立てることによって、相手の能力を変質させる力』だ!」

白井「変質?まさそのような能力が…」

詠矢「いや、今日俺は確信に至った。この能力は間違いなく有る。そして、おれはこの力をこう名付けた。絶対反論(マ ジ レ ス)と!!!!」

白井「最低のネーミングセンスですわね…」

詠矢「あ、ダメかな?でも気に入ってるんで変えねえぞ」

白井「ご自由に…。ですが、もしその力が本当なら、かなり特殊な能力ですわね。まさか、パーソナルリアリティに干渉する力…?」

詠矢「はい?ぱーそなる・・・りありてぃ?

「ぐはっ…!」

藍花は痛みとショックで倒れ込む。
杏子の槍が元の形に戻る。

「なんだ、この程度か?ガッカリだよ。」

藍花は太陽に向け手をかざす。

「光の速度を…かわせる?」

「まさかっ…」

杏子が気付いたときには遅かった。溜めに溜めた光による光線が杏子に降り注ぐ。
光線は巨大な柱のように天まで貫いた。

「くっ…やるな。」

杏子はボロボロになって現れ、仰向けに倒れ込んだ。藍花も急所をやられ、動けずにいた。

しばらく、2人で仰向けになり青空を眺める。
お互いどこか、清々しい気分になっていた。

白井「そういえば、学園に来られたばかりでしたわね。ご存知無いでしょう。ご心配無くとも、カリキュラムの中で習いますわ」

詠矢「はあ…ソウナンデスカ。楽しみにしときます…」

白井「では、連行致します。よろしいですの?(ガシッ)」

詠矢「えー、あ、そうか。転移するんですな。接触者と同時転移も可能とは便利ですなあ」

白井「わたくしはレベル4ですのよ。これくらいは朝飯前」

詠矢「あ、でもでもさあ!」

白井「なんですの…行きますわよ…」

詠矢「こうやって、移動するときに、おれだけ上空に転移させられるとさあ」

白井「え?・・・(シュン)」

詠矢「死ぬしかないよなあ…(シュン)」

「藍花…最後の一撃、手加減しただろ。」

「うん…杏子ちゃんだって…刃で私を貫かなかった。」

「せっかくできた友達を貫けるわけねーじゃん…」

杏子はフンと笑い、語りかける。

「ホントのこと言うとな…藍花の力を試したかったんだ。だから挑発した。」

「え?」

「魔女との戦いにおいてパートナーの能力くらい把握しておきたいもんだろ?」

「それで、どう?私のチカラ…。」

「まだまだだな…。能力自身は申し分ないが、イマイチ扱いきれてない。まぁそこんとこは、あたしがアドバイスしてやるよ。」

遣い魔も2人の戦闘を嗅ぎ付け、とっくに逃げ去ってしまった。

ジャッジメント177支部)
白井「(シュン)」

初春「あ、おかえりなさい!どうでしたか?」

御坂「結構時間かかったわねえ…、て、黒子1人なの?」

白井「へ?…1人?」

初春「あれ、もしかして取り逃がしちゃったとか…」

白井「あ………」

御坂「…?」

白井「あ…あわあわわわわわわわわ!置いてきてしまいましたわ!!」

初春「置いてきたって…どういうことですか?」

白井「た、確かに接触して転移しましたの!でもわたくしだけが戻ってきたということは!どこかに…」

御坂「まさか、黒子の能力が暴発したっていうの?…え、じゃあ、置いてきたってどこに?」

白井「え…、どこと申されましても…あ!上空ですわ!」

御坂・初春「上空!?」

「遣い魔は倒さない方がいいの?」

「損得を考えるならな…まぁここは藍花の街だ。藍花のやり方に従うよ。裏から街を支えて行こうじゃないか。」

「ありがとう…。」

次第に傷が治癒していき、杏子は立ち上がる。藍花もよれよれと立ち上がった。

ソウルジェムはまだ反応している。今から追いかければ間に合うだろう。

「さっきの遣い魔を追わないと…。」

「…おっ、おい!」

藍花は少しだけ嬉しそうな杏子の手を引き、走り出した。

詠矢「あー、おれ落ちてるなあ…」

詠矢「うわこれどうしょうもなくね?…」

詠矢「…」

詠矢「……つまんねえ人生だったなー……」

杏子と協力して魔女退治を始めてから20日近くが過ぎようとしていた。
藍花は不思議なことに魔女を倒すのが楽しくなってきたことだった。
2人で協力し戦うことで安全に魔女を倒せる。
鏡の魔女との戦闘で藍花の能力を反射されたときは危うかったが、なんとか杏子が倒してくれた。

杏子はソウルジェムで魔女の位置を探索しようとするが、反応が無い。

「魔女の出現率も減ってきたなぁ。流石に狩りすぎたか。」

「でもほら…街に希望が戻って来たよ。」

人々は街の復旧に力を入れて頑張っていた。人間は元より立ち直る力を持っている。

「そういえば最近、キュゥべえを見ないね。」

「他の街で、契約の押し売りでもしてんじゃねえの?」


『僕を呼んだかい?』

絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。

それは比喩的表現ではなく、ただ真っ当な「落下」である。

地面まで数秒。その落差を計測する余裕などなかったが、それが殺意を持った高さであることは容易に想像できた。

「……つまんねえ人生だったなー……」

彼の命脈は既に尽きていた…かに見えた。

時間は数秒ほど遡る

キュゥべえが物陰からひょこっと顔を出す。杏子は呆れるように言う。

「相変わらず神出鬼没だな…お前は。」

『君たちが僕を必要としているなら、僕はいつでも来るよ。』

「別に必要となんかしてねーよ。」

『そう?藍花は?』

「じゃあ…ワルプルギスの夜を詳しく知ってそうな魔法少女を知らない?」

「藍花!?」

キュゥべえは少し間を置いて言う。

『うーん…見滝原にイレギュラーの魔法少女が居るなぁ。彼女なら何か知っているかもしれないよ。』

「見滝原…巴マミか!?」

杏子は顔をしかませる。

『違うよ。確かにそこには巴マミも居るけど彼女とは対立している。ま、行ってみればわかると思うよ。』

藍花はその見滝原という場所に興味をそそられた。杏子もそこを知っているような素振りを見せた。

打止「おかいものっ!おかいものっ!とミサカはミサカはうれしさのあまりお出かけの目的を連呼してみたり!」

一方「ったく、っせーな…。食料の買出しに行くだけだろーが…」

打止「でも一緒にお出かけはそれだけで楽しいんだよ?なんてミサカはミサカは素直に同意を求めてみたり!」

一方「ケッ…ナニ言ってやがんだ…。いいから静かにしやがれ!」

ショッピングモールに向かう橋の上を歩く少女と、それを追う学園第一位能力者の青年。青白い首筋をもたげて、なんとなく空を見る。

一方「しっかし…腹立つぐれえいい天気だな…あ?」

青年の視界、つまりは上空に何かが写った。そしてそれはすぐに人の形をしていることに気づく。

だが、形より圧倒的に重要なことは、それが自然落下してくるということだ。前を小走りに進む少女の頭上に。狙い済ましたように。

一方「ちょ…なんだアレは!!…あぶねえっっ!!!」

青年は走る。だが杖が必要な足は付いていかず、上半身だけが先行する。半ば飛び掛るような状態で、なんとか少女の頭上に手をかざすことが出来た瞬間、落下物が彼の腕に触れた。

一方「っつ!!…!」

夜、杏子とホテルでくつろいでいた。
杏子は相変わらず食料を口に入れていく。
藍花は地図を開いて見ていた。

「杏子ちゃん、私…見滝原に行ってみたい。」

テレビを見ながら山積みのドーナツを食べていた杏子は驚く。

「はぁ?アイツの言うことを鵜呑みにすんのかよ?」

「行ってみるだけ。何も情報が無かったらすぐに帰って来る。」

杏子は再びテレビの方を向きながら問いかける。

「それは勝手だけどさぁ…どうすんの、この街?」

「杏子ちゃん…私が見滝原に行ってる間、街を守ってくれるかな?」

「まぁいいけどさ…早く帰って来るんだぞ?」

「うん…ありがとう!」

嬉しそうな藍花を見るが、杏子は、あまりいい気分になれなかった。
藍花は、早速旅行の準備をして明日の出発に備えた。

彼の能力「ベクトル変換」が発動する。落下物は水平に弾き飛ばされ、橋の欄干を通り越し、水柱を上げながら水面に叩きつけられた。

打止「ひゃあっ!!とミサカはミサカは驚きを隠せないでいたり・・・」

一方「なンだ……?」

詠矢「(あれ、俺まだ意識あるな)」

詠矢「(なんかものすごい衝撃を感じたんだが)」

詠矢「(感じたってことは生きてるんだよな?)」

詠矢「(そうだ、確か水に落ちたんだ)」

詠矢「(えーっと、つまり今水中にいるわけで)」

詠矢「(…取り合えず浮上しないと死ぬ!)」

詠矢「ぶわっ!」

詠矢「あぶねえ、せっかく命拾いしたのにまた死ぬとこだった!」

次の日、杏子は電車で旅立つ藍花を駅まで見送る。

「じゃ、また会おうぜ。」

杏子は格好付けてクールに別れを告げる。しかし、藍花に抱き付きつかれて台無しになる。

「私、杏子ちゃんが居なかったらずっと孤独だったと思う…今までありがとう。」

「…そ…それはこっちの台詞だバカ野郎。」

杏子は必死に涙をこらえた。

藍花は手を振りながら電車に乗る。

藍花は電車を何度も乗り継ぎ、何時間もかけて見滝原の駅に到着する。
着いたときには、夕日がさしかかっていた。

一方「なンだテメェは!!自殺ならヨソでヤレやァ!!!!」

詠矢「えー、なんと言うか。事故なんですよ」

一方「ンだぁ?…事故だと?」

詠矢「事情を説明すと簡単なようなややこしいような…」

詠矢「とにかく、助かったよ。あんたも何かの能力者なのかな?」

詠矢「確か俺は橋の上に落下するはずだった」

詠矢「だが気づいたら川に落ちてた」

詠矢「突風が吹いたとかそんなチャチなレベルじゃなく、俺の体は弾き飛ばされてる」

詠矢「なら、やっぱり何かの能力によって助けられたと考えるべきだよな」

詠矢「というわけで、ありがとう。助かったよ」

(綺麗な街…)

色々な場所から希望が伝わって来る。ここの魔法少女も魔女退治だけではなく、遣い魔を倒すのにも頑張っているのが伺える。

取りあえず藍花は杏子に見滝原に着いたとメールを送信しておいた。

(キュゥべえが言っていた魔法少女はどこだろう?)

手っ取り早く魔法少女に会うには、魔女や遣い魔の結界で合流するしかないだろう。
だが、この街でそう簡単に魔女が現れるだろうか。

「…!」

藍花のソウルジェムが思いのほか早速、反応する。この反応の大きさから推測すると、おそらく魔女だ。
藍花はソウルジェムを頼りに魔女の居る結界を探し出す。

街角に結界を発見した。

一方「……なンかゴチャゴチャ回りくどい奴だな」

打止「…(ジー)」

一方「どしたぁ?」

打止「…(オカイモノ)」

一方「アア、そうだったな…」

詠矢「あー、なんか用があるなら行ってくれ。後は自力でなんとかするから」

一方「言われ無くてもそうすらァ…。じゃあな飛び降り野郎…おら、行くぞガキ…(スタスタ)」

(あった…!)

藍花は変身して結界の中に入り込む。

結界の中は相変わらず狂気に満ちていた。
大量の毒々しい薬品が並び魔女の手下が飛び跳ねている。

「誰…?」

少し進むと、大きなリボンで束縛された魔法少女が居た。黒髪でヘアバンドをしており、長い髪をしている。

「貴方…私を解放して…!」

切羽詰まった雰囲気で言われ藍花は戸惑う。

「手遅れになる前に早く!」

凄まじい気迫で怒鳴られ藍花は光の剣をしなる鞭のように操りリボンをバラバラにする。

その瞬間、彼女はあっという間に消えた。

「!?」

彼女が消えたかと思うと、奥の方から爆発音が何度もする。
するといきなり結界が無くなり、先ほどの魔法少女を含め4人の女の子が現れる。そして、キュゥべえが居た。

詠矢「行っちまったか…」

詠矢「ていうかあの顔どっかで見たことあるような…」

詠矢「…まあいいか、そのうち思い出すだろう」

詠矢「さあて、これからどうするかな」

詠矢「取り合えず位置検索か(ポチポチ)」

詠矢「あ…」

詠矢「完全水没、だよな…。携帯が…電源も入らねえ…」

詠矢「水没じゃ保障対象外だよなあ…。か…金が…」

詠矢「しょうがねえ、適当に地図見ながら歩くか」

詠矢「取り合えず置いてきた荷物を回収しねえとな」

詠矢「さっきのソバ屋どこかな」

詠矢「フロ屋も探さねえとな…(トボトボ)」

『藍花!君も来てたんだね!』

黒髪の少女はキュゥべえを無視して呆然としている金髪の魔法少女に話しかける。

「命拾いしたわね…巴マミ。このコが結界に入って来なかったら、ソウルジェムごと頭を食いちぎられていたわ…。」

「…助けてくれたの?」

「そうよ…。」

藍花は現状の把握を理解出来ずにいた。
黒髪の魔法少女は髪の毛をサラッと自分でなびかせ、藍花の目の前にやって来る。

「少し、私の家まで来てくれないかしら?」

「いいけど…。」

黒髪の少女は、先導して藍花を案内する。
他の3人の少女も気になったがキュゥべえが言っていたイレギュラーというのは、おそらく目の前の少女だろう。

詠矢「あ、そうだ、俺は連行される所だったんだよな」

詠矢「嫌疑がかけられてるんなら、ちゃんと出頭しとかないとな…」

詠矢「これ以上ジャッジメントと事を構えるつもりもないし」

詠矢「とはいえ、何処に行ったもんだか…」

詠矢「その辺の人に聞いてわかるかな?」

詠矢「…不審者扱いされるのがオチか」

詠矢「あのツインテールの娘、名前ぐらい聞いとけばよかったな」

詠矢「さあて、どうするかな…」

嘆いたって始まらない。取り合えず俺は歩きながら考えることにした。

都市の案内板を頼りに、どうにか元の場所に戻った俺は荷物を回収することに成功した。

フロでも入りたかったがあいにく銭湯は見つからず、ネットカフェのコインシャワーで体を流すと、
万が一にと持ってきた私服に着替える。
水に落ちたときの打ち身で体のあちこちが軋む。まったく落ち着ける状況ではなかったが、考える
時間だけは十分に確保出来た。

俺は思考に結論を出し、一番近くにある図書館へ向かった。

さるくらってばっかだしもうだめか

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月27日 (木) 20:54:59   ID: eOQ4fo-_

2012/03/07(水) 02:07:15.21 ID:+d4fu3+qO
まどかは皆に呼びかける。
「ちょっと待って!」
「どうしたのまどか…?」
ほむらは尋ねるがまどかの隣にはすでにキュゥべえが居た。
「私の願い…見つけたの!それは、VIPのキモオタたちを全て消し去ること!」
まどかは変身し光の矢を放った。全てのPCの前に座っているVIPPERのキモオタは円還の理に導かれた。

HAPPYEND

2 :  ID:+d4fu3+qO   2014年03月27日 (木) 21:01:52   ID: eOQ4fo-_

懸命に書き綴った小説を無下に扱われては誰だって憤慨するでしょう内容については人を選ぶものかもしれませんしかし読んでもいない方にこの小説の何がわかるのでしょう僕には読んでもいないのに他の方に便乗して批判しているとしか思えないのです一度最初から読み直してみてください僕の誠意が伝わるはずです

3 :  ID:+d4fu3+qO   2014年03月27日 (木) 21:07:53   ID: eOQ4fo-_

多くのSSで描かれているキャラクターはほとんどが性格がずれているものばかりそんなものにキャラクター愛が備わっているとお思いですか?それは1種のオリジナル・キャラクターと言えるのではないですか?この小説を叩くのなら原作に沿っていない性格のキャラクターが出演しているSSも叩くべきです僕は原作に忠実にキャラクターを作り上げました
愛ゆえに、です

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