アルミン「ミカサに打ち明けるなんて、本当にみっともなくて仕方ないんだけど……」
ミカサ「アルミン、目が赤い」
アルミン「このごろ全然眠れないんだよ。エレンに相談したって笑われるだけだろうし、ミカサに話せば何とかなるかも、って」
ミカサ「私たちは幼馴染。話せないことなんて何もない」
「おじさんと一緒に堕ちよう。ねえ君」
「嫌だあ!」
「! やっと声を聞かせてくれたね、かわい子ちゃん!」
アルミン「そういう場面が頭から離れないんだ。忘れようとすればするほど、もっと気持ち悪いことが次から次に頭に浮かんできて」
ミカサ「」
アルミン「気がついたら朝になってたりする。このままだと僕はどうなってしまんだろう」
ミカサ「」
アルミン「気持ち悪いよね。僕のこと軽蔑しただろう?」
ミカサ「」
アルミン「ミカサ……」
ミカサ「アルミン落ち着いて。よく私に相談してくれた」
アルミン「え?」
ミカサ「さあ立って。今は感情的になっている時じゃない」
ミカサ「ねえアルミン。おじさんの幻を排除すれば、アルミンはよく眠れて、元気を取り戻せる。違わない?」
アルミン「それはそうだけど……」
ミカサは分かっているんだろうか? 僕が怖れているのは、本当は、
ミカサ「分かってる。アルミンがおびえているのはあのおじさんよりも、自分自身の影」
アルミン「!?」
ミカサ「今、あなたがしなければならないのは、それに立ち向かうこと。戦って勝つ。勝てば生きる、戦わなければ勝てない!」
アルミン「えっ……」
ミカサ「さあ。私をあのおじさんそして自分自身の影だと思って、ぶつかってきて!」
アルミン「それは、どういうこと?」
ミカサ「つべこべ言わない。私を倒すつもりで、全力でぶつかってくるの!」
アルミン「そうか…… よしっ」ダッ
ミカサ「フンッ!」
ドサァ
アルミン「痛った…… ミカサ、少しは手加減してよ!」
ミカサ「手加減してないとでも? ほんとに手加減してなかったら、今頃あなたはそこで気絶している」
アルミン「……」
アルミン「……」
ミカサ「さあもう一度!」
アルミン「くそっ!」
ポイッ
ガシャーン
アルミン「うう……」
ミカサ「どうしたの? アルミンあなたの魂が全然感じられない! そんな体当たりでは私を倒すどころか、ここから1センチだって動かすことはできない!」
アルミン「……無理だよ。だってしょせん僕は僕だし、君はミカサなんだもの」
ミカサ「そんなの関係ない」
アルミン「か、関係ないってそんな……」
ミカサ「聞いてアルミン。私は9歳の時に初めて戦った。そして勝った。相手は大人の男。私はその時、魂ごとぶつかっていく戦い方を知った。そうすれば倒せないものなんてない。たとえ相手が巨人でも。
アルミン。今があなたにとって一番大事な時。あなたは今、この戦い方を学ばなければならない!」
アルミン「分かったよ…… でも無茶苦茶だな」
ミカサ「つべこべ言わない!」
アルミン「そうか…… 行くぞ!」
ミカサ「フッ!!」
ドシーン
ガラガラ
ミカサ「そうその調子! 今のが一番いい、今の気持ちを忘れては駄目!」
エレン「うるせえなあ。何時だと思ってんだ」
ミカサ「ごめんなさいエレン、ちょっとアルミンの相談事を聞いてあげてて」
エレン「お前の相談室は真夜中にこんな騒音たてなきゃいけねえのかよ。いい加減にしろ」
アルミン「……ごめんよエレン。もう済んだから」
エレン「そうか? あんまりミカサに世話焼かせんなよ」
ミカサ「アルミン、これだけは忘れないで。もし魂が死んでしまったら、その人間はそれで終わり。でもあなたなら大丈夫。きっと勝てる!」
エレン「……」
バタン
ミカサの言うことが、何となく分かったような分からないような気持ちで、僕はベッドに入った。
そして……
やっぱり眠れなかった。
数日後。
おじさん「わあああ!? やっと見つけたぞかわい子ちゃん!」
アルミン「おじさんどうしてここへ?」
おじさん「探したんだよぉお、君に会うことを楽しみにして足を棒にして!」
駄目だ。
なんで僕は…… おじさんが近づいてくるのをぼーっと眺めてるんだ。
どうして僕の体は動かないんだ。
(この異端者!)
──立ち塞がるいじめっ子、巨人に食われる34班のフラッシュバック──
(戦え!)
(今の声は? ミカサ?)
その時、思い出した。
この光景は今までに何度も、何度も見てきた。
でも、……見なかったことにしていた!
(戦え!)
そうだ。この世界は、残酷なんだ。
(戦え!)
その瞬間、体の震えが止まった。
その時から僕は、自分を完璧に支配できた。
何でもできると思った!
うおおおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォォォォーーーッ!!!!
完
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