憧「はたらくお猿さん!」(56)

晩成高校

初瀬「……リーチ」トン

やえ「……」トン

巽「……」トン

憧「あっツモった。初瀬ごめんねー、一位抜けっと」

やえ「ニワカのくせにやるじゃないか」

憧「じゃあ今日はバイトの日なのでこれで失礼しますね。また明日」ペコリ

やえ「あのニワカ勿体無いな」

巽「新子ですか?確かに真面目に麻雀だけしてればもうレギュラー入りしてますね」

初瀬「バイトと部活を掛け持ちしても晩成の一年では一番強いんですよー」

やえ「だから勿体無いと言っている。アルバイトは禁止されてないし、辞めろとは言い出せなくてな」

巽「やえさんが言えないなら、私にも言えないですよ。新子は何のバイトしてたっけ?」

初瀬「駅前のマグロナルドですよ。短期で入ったけど人が足りなくてズルズルと今も続けてるそうです」

憧のバイト先

憧「いらっしゃいませー、御一緒にポテトはどうですか?ふるポテのりしお味とかもオススメしてます」ニコッ

穏乃「あ、あの…、面接に来たものです」

憧「そうでしたか。今すぐ店長呼んで来ますね」

憧(ラッキー新しい子入って来るかも。センタッキ―も店の前に新しくオープンするしこれは辞めれるかな)



穏乃「……」キョロキョロ

憧(にしてもジャージで面接ねぇ…。顔は可愛いけど…。なんだろう、すごく会った事あるような気もする)

面接後

憧「店長、さっきの子どうするんですか?」

店長「採用だよ。明日から早速働けるそうだ」

憧「そうですか」

店長「年も新子さんに近いし、しばらく新子さんについて貰って仕事を教えようと思う」

憧「はい、わかりました」

憧(教育係かー。めんどくさいわねぇ……。ついこの間まで私も新人だったけど)

憧(まぁいいか。年は近いって言ってたし)

穏乃のアパート

穏乃「ただいまー」

晴絵「おおっ魔王様!たった今、マグロナルドから電話があって採用だそうですよ」

穏乃「ホントですか!?わーいやったー!明日からバリバリ働くぞー」

晴絵「しかし、ホントに私は働かなくてもよろしいのでしょうか?」

穏乃「赤土先生は聖十字大陸ア・チガに帰れる方法を探して下さい。ここでの生活は私に任せて貰って」

晴絵「魔王様だけに働かせるとなると心苦しいのですが」

穏乃「気にしないで下さい。あと、敬語も辞めて貰えませんか?」

穏乃「日本の事を色々と調べたんですけど、年功序列?みたいなのがあって普通は年下が年上に敬語を使うそうです」

晴絵「そうなんですか……。しかし私には立場が」

穏乃「もう魔王軍も壊滅しましたし、いいんじゃないですか?もちろん、ア・チガに戻り次第反抗軍を倒し魔王軍の復活を急ぎますが」

晴絵「はい、私も悪魔大元帥として魔王様のお力になる所存であります」

穏乃「昔みたいに穏乃って呼んで下さいよ」

晴絵「……」

晴絵「……」

晴絵「仕方ないな。じゃあここにいる間だけ、敬語は使わないでおくよ。灼には内緒だぞ」

穏乃「はい!」

晴絵「しっかし、こんなにボロっちいアパートで良かったのか?六畳一間風呂無だぞ」

穏乃「お金ないですからね。仕方ないですよ」

晴絵「女の二人暮らしは危ないって不動産屋に言われたよ」

穏乃「魔力は回復してませんけど、人間相手に負けませんよ」

晴絵「ははは、魔王が人間相手に負けたなんて事になったら威厳も何もないもんな」

穏乃「全くです。勇者がこの世界に居なくてホッとしてます。今見つかったら瞬殺です」

晴絵「あの忌々しい勇者どもめ!」

~回想~

智葉「ここが魔王の根城、高鴨城か……」

憩「入る前に回復しとこかー。怪我してる所出して」

智葉「頼む」スッ

照「……」

憩「照ちゃんは怪我してへんの?」

照「問題ない。雑魚ばかりと戦ってたから」

憩「魔王軍四天王って聞いてたけど、ここに来るまで一人しか出くわさなかったな」

智葉「あの小さい悪魔えらく強かった…。いや、悪魔に大きさは関係ないが」

照「うん。四天王の内の二人松実姉妹に出くわさなかったのはラッキーだった」

憩「魔王相手に誰一人欠ける事無く来れたな。ここまで来たらもう一息やで」

智葉「よし!さぁ、行こうか」




晴絵「魔王様!魔王様!勇者達が高鴨城へと侵入して来ました」

穏乃「へぇー、ここに来たって事は玄さん達を倒して来たのかな」

晴絵「それが…、松実姉妹の行方はわからず…。現在も不明です」

穏乃「灼さんは?」

晴絵「反抗軍に身柄を拘束されています」

穏乃「…そうですか」

穏乃「私がここで勇者達を倒しもう一度ア・チガを征服します!」



そしてバトル中

智葉「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!天光炎斬」ドドド

穏乃「やりますね!流石、魔界までその名を轟かせる勇者智葉」ドガガガ



晴絵「魔王様!?今、お助けに」

照「そうはさせない」

憩「あんたの相手はうちら二人や」バシュュ

晴絵「そこを…、どけええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」ピカーーーー


カキーン

憩「うちの魔法を跳ね返したで!?」

照「どうやら遠距離からの攻撃は無効化するらしい。近づいて接近戦をしかける」

そして勇者智葉は魔王を後一歩の所まで追い詰めたが

智葉「この一撃で…、決める!」

穏乃(まずい、この勇者思ったより強い)



晴絵「シズうぅぅぅぅ、後ろのゲートに飛び込め!」

憩「なんやあれ!?」

穏乃(ゲート?今は考えてる余裕はない。魔王軍一の知将として知られる赤土先生を信じる)



穏乃「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」ピョン

晴絵「よし、私も!」シュバッ

智葉「負けて!逃げるな!!」ババッ

憩「魔王も勇者も吸い込まれてしもた……」

照「このゲート異世界に繋がってるんじゃないかな?」

憩「って事は逃げられたん?」

照「そうなる」

憩「もう少しやったのに…って!勇者どうしよ!」

照「智葉もゲートに突っ込んで行ったね。私達も今なら追いかけれるけど」

憩「あかんあかん。まずは報告せな」

照「そうだね。智葉ならどんな世界でもきっと上手くやっていける」

そして現在に戻る

穏乃「はぁ~魔力が回復しないってこの世界はどうなってるんだろう」

晴絵「ここでは魔力の概念が存在せず、ア・チガへ戻るためのゲートを開くことも難しいよ。まぁ、それを何とかするのが私の仕事だけど」

穏乃「任せました!ところで今日の晩御飯は?」

晴絵「モヤシだよ。モ・ヤ・シ。いっぱいあるからさ」ジャーーー、シャッシャッ

穏乃「またモヤシか~。お肉食べたいです」グーーー

晴絵「マグロナルドで食べさして貰えるんじゃないの?正直、うらやましいよ」

穏乃「えへへ、テリヤキバーガーにダブルチーズバーガーにチキンフィレオ。何でもいいから食べたいなぁ」

次の日、マグロナルド

憧「で、レジはこうやって打つ」

穏乃「はい!」メモメモ

憧「クーポンなんだけど、携帯の場合は……」

店長「二人とも休憩入ってくれ。代わるから」

憧「はい、ほら行くわよ」

穏乃「まだメモが途中で……」

憧「後でもう一回教えてあげるからさ」

穏乃「はい!」

休憩室

憧「穏乃ちゃんだっけ?」

穏乃「は、はい!」

憧「真奥穏乃って変わった名前ねぇ。あっ名字がね」

穏乃「そ、そうですか(やべー、適当に名前つけちゃったからなぁ)」

憧「年はいくつなの?私と大して変わらないように見えるけど」

穏乃「せん…じゃなくて16歳です!(1016歳だけどね)」

憧「同い年か。別にかしこまらなくていいわよ。普通に喋ってよ」

穏乃「わかった」コクン

穏乃「新子さんは高校生だよね?」

憧「晩成高校に通ってるわよ。アコでいいわよ、アコで」

穏乃「あ、あこ?」

憧「私はシズって呼ぶし。何か不満?」

穏乃「いや特に。何か友達みたいだなぁ」

憧「嫌なの?」

穏乃「違う違う。こっちに来てから友達とか居なくてさ。友達以前に知ってる人が誰も居ないんだけどね」

憧「じゃあ私がシズのお友達第一号になってあげる」

穏乃「うん、すごくうれしいよ!」ニコッ

憧「…///」ドキッ

憧「す、すぐにマグロナルド辞めたら友達も辞めるからね」

穏乃「辞めないよ。生活できなくなるし」

憧「そーいや、シズは何高なの?」

穏乃「私?高校通ってないよ」

憧「へぇー、あっ聞いちゃまずかった?」

穏乃「全然。私は外国からやって来たの」

憧「外国ねぇ。どうりで何か不慣れな感じがするわけだ」

憧「今日もジャージだったわよね。外国じゃ、あれが流行ってるの?」

穏乃「違うよー。服はあのジャージ一着しか持ってないから」

憧「はぁぁぁ!?」

穏乃「ご飯も買うお金もないのに、服なんか買えないよー」

憧「ホントに出稼ぎに来た外国人なのね」

穏乃「そうそう同居人の分まで稼がないと駄目だしね」

憧「同居人?」ピクッ

憧「こ、恋人居るの!?」

穏乃「違う違う。ホントに同居人。部下…って言うか元先生なんだけど…、まぁ恩人みたいな」

憧「へぇー、女の人?年上?年下?」

穏乃「女の人で25歳だよ(1525歳だけどね)」

憧「大人の女ね……」

憧(なんだろう…すごく気になる。モヤモヤする)

穏乃「…はぁ」グーーーー

穏乃「お腹すいた」ガクッ

憧「なに?まだ夕方よ」

穏乃「お昼食べて無いんだよー」

憧「そうなの?ダイエット中…なわけないか」

穏乃「お金ないから我慢」グーーーー

憧「はぁ…、何か好きな物食べなさいよ。マグロで良かった」

穏乃「えっ!?」

憧「社員割引も効くし、私は先輩だしね。奢りでいいよ」

穏乃「マジで!?!???!!??!?!」

憧「まっ…、感謝しなさいよね。私が奢るなんてめったにないからね」

穏乃「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ、アコは天使!アコは女神!アコはゴッド!!!!!!!!」

憧「ちょっと///褒めすぎだから///どれ頼んでも500円もしない物だし」

穏乃「うめえぇぇぇぇぇぇぇ!これがハンバーガーあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ガツガツ

憧(そんなに美味しいかな?私はもう食べ飽きたけど)

穏乃「これは売れる!こんなの毎日食べたくなっちゃうよ!」パクパク

憧「まぁ売るのはシズの仕事だけどね。シズってフリーターでしょ?ここで正社員でも目指したら?」

穏乃「頑張るよ!」

憧「元気がシズの取り柄みたいね。うんうん」

憧「ご一緒にポテトもいかがですかー」アーン

穏乃「頂きます」パクッッッ

そして穏乃が日本に来てから二ヶ月が経った


晩成高校

やえ「新子、新子は居るかー」

初瀬「すいません、今日も部活休むそうです」

巽「またか。最近バイトに力入れ過ぎじゃないか?」

やえ「実力はニワカだが、やる気がニワカ以下だな」

初瀬「最近、バイトの話しかしなくて……。辞めるって言ってたのになぁ」

マグロナルド

憧「シズー、シャカシャカポテトのタコヤキ味の粉末ってどこにあるの?」

穏乃「あぁ、あれね。置く所なくて休憩室に置いてる。取って来てよ」


ウィーン

憧「お客さんね。いらっ…」穏乃「いらっしゃいませ!!!!!!!メニューはこちらにあります!」

憧「……」

憧(いつの間にかシズに抜かされちゃったな。教える立場だったのにもう逆転されちゃった)

憧(まっ、私は学生のバイト。シズはフリーター。私の三倍以上働いてるもんね。そりゃ仕事出来るようになるか)

穏乃「そーいえばさー聞いて聞いて」

憧「なによ」

穏乃「私、時間帯責任者に選ばれたよ!今度の日曜日」

憧「へぇー、バイトチーフって事?すごいじゃん、店長の代わりね」

穏乃「うん。店長が用事あるらしくて、私に任せるって。他にもバイトは居るのに」

憧「信頼されてるのよ。この店でシズが誰よりも大きな声を出して、熱心にメモを取って、セットメニューを売っているか…」

憧「毎日バイト入ってない私でも知ってるもん」

穏乃「えへへ///頑張ったかいがあったなぁ。正社員に一歩近づいたかも」

穏乃「でもさ。日曜日なんだけどみんな休みたいみたいで」

憧「ふーむ」

穏乃「私と如月さんと佐々木さんと柏木さんしか居ないんだ」

憧「日曜日なのに少なくない?平日並じゃない」

穏乃「…うん。少し不安だよね。でも居るメンバーでやるしかないし」

憧(間違いなくシズは休憩無しで働く事になるわね。日曜日で四人だと…)

憧「……」

憧「……」

穏乃「憧。誰か日曜日来れそうな人、聞いといてよ。私がお礼にラーメン奢るからさ」

憧「私が出るわ」

穏乃「ええっ!?日曜日、部活の練習試合って言って無かった?」

憧「……何とかするわよ」

穏乃「大丈夫なの?来れるの?」

憧「必ず行くから…。ラーメン忘れるんじゃないわよ」

穏乃「うん、任せといて。天下一品だけどね」

憧(よしっ!シズとのラーメンデートゲット!!)



日曜日

やえ「小学三年生が紛れ込んで居るようだが?」

衣「衣は高校二年生だーーーー!」

透華「本日の練習試合、引き受けて頂き感謝でございます」、

憧「あーーーーーアイタタタいたっっっ、いたっ!」

初瀬「憧、どうしたの?」

憧「お腹の調子が…、うっ…」

純「おいおい悪いもんでも食ったのか?」

一「肩貸してあげなよ」

憧「大丈夫…、大丈夫です…」ヨロヨロ

やえ「ふぅ~む」

巽「しかたない。新子にも打って貰おうと思ってたが…、初瀬!」

初瀬「は、はい!」

やえ「天江さんと私の卓に入るといい」

衣「ほぅ…、今宵の生贄は一年生か」

マグロナルド

穏乃「やばい!思った以上にお客さんが来てとても回せないよ!」

ちーちゃん「新子さん来ないと休憩なんて無理ですね」

穏乃「私は時間帯責任者だからいいですけど…、他のみなさんは…」



憧「ごめん!待たせた!ここにまず一人居る!」

穏乃「憧!?来てくれたの!」

憧「約束したからね。シズと」

穏乃「ホント助かるー、みんなー憧が来てくれたぞー!」

憧「さてと…、レジ変わるね。ちーちゃんは先に休憩に行っていいわよ」

ちーちゃん「はい、じゃあお言葉に甘えて」

こうして、穏乃は時間帯責任者も難なくこなし、二年後正社員に抜擢される。
その年、憧は高校の卒業を迎えた。


穏乃「憧、私正社員になったよ」

憧「うん、おめでとう。で、話って何なのよ?」

穏乃「……すぅぅぅ」



穏乃「私と結婚して下さい!!!!!!!」

憧「ッッ!?」

憧「に、日本は同性婚は禁止だから…」ポロポロ



穏乃「同性婚が禁止!?そんなの私が許さない」



魔王穏乃によって支配された日本は同性婚が可能な国に生まれ変わりました



終わり

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