穏乃「実家の店が潰れて売られた…」 (311)
・咲-Saki-のキャラたちが遊廓っぽいところで働いています。ただし和洋折衷です。
・お客も咲の女性キャラです
・時代や法律は気にしないでください
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穏乃「うぅ…」
靖子「そう悲観するな。ここにいれば食うに困ることはない。仕事はしてもらうがな」
靖子「ほら、後のことはこいつに訊くように。憧!」
憧「はーい。あ、新入り?」
靖子「ああ、穏乃だ。しばらくお前につける。面倒見てやってくれ」
憧「あたしももう先輩かー。感慨深いわねぇ」
穏乃「よ、よろしくお願いします…」
憧「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。いきなり客取らされるわけじゃないんだから」
穏乃「そうなの?あ、そうなんですか?」
憧「タメ口でもいいよ。多分同じくらいの歳だしね。」
憧「あたしは憧。よろしくね。シズって呼んでいい?」
~~~~~
穏乃「ねえ、さっき、すぐにお客を取るわけじゃないって言ってたけど、だったら私は何をするの?」
憧「えっとね、あたしたちは多分シズが想像してるような部屋での仕事もするけど、宴会に出たりもするの」
憧「だから最初はこの店の人気のある人の宴会に呼んでもらって、徐々にお客さんに顔を覚えてもらう感じね」
憧「あたしが呼べたらいいんだけど
、実はあたしもまだ人の宴会のほうが多くって。最近やっと個別のお客がつくようになってきたところかな」
穏乃「大変なんだね…」
憧「まあね。シズは踊りとかできる?」
穏乃「ぼ、盆踊りなら…」
憧「…じゃあ踊りも習わなきゃね。まあ最初は飲み物でも運んだり、それが無ければおとなしくしてればいいわ」
憧「とりあえず、近日中の宴会に呼んでもらえるように挨拶に行くわよ」
穏乃「誰に?」
憧「この店のナンバーワン」
穏乃「うえぇ!?そ、そんな、恐れ多いよ!」
憧「平気平気!美穂子さん優しいんだから」
憧「…あ、この部屋だ。ごめんくださーい」
穏乃「ひえぇ」
美穂子「どうぞ、開いてるわ」
憧「お邪魔しまーす」ガチャ
穏乃「お、おじゃましまふ」
美穂子「あら、憧ちゃん。いらっしゃい。そっちの子は?」
憧「はい、新しく入った穏乃です。…ほら、挨拶して」
穏乃「は、はじめまして!穏乃です」
美穂子「はじめまして。ふふ、怖がらなくていいのよ?」
美穂子「最初は心細いと思うけど、何かあったら力になるから遠慮なく言ってね」
穏乃「あ、ありがとうございます…!」
憧「それで、美穂子さん。今度、穏乃とあたしをご宴席に呼んでもらえませんか?」
憧「穏乃はまだ大したことできないんですけど、失敗はしないように私が見てるんで」
美穂子「ええ、もちろん構わないわよ」
美穂子「そうねえ、明後日なんてどうかしら?私の常連さんで、優しい方だからきっと大丈夫だと思うわ」
憧「ありがとうございます!じゃあそれまでに色々教えておくので!」
美穂子「憧ちゃんはいい先輩になるわね」ニコ
憧「えへへ」
・
・
・
憧「それでは失礼しました!」
穏乃「失礼しました…あの、本当にありがとうございます!」
美穂子「いいのよ。頑張ってね」
パタン
憧「…ね?すごくいい人だったでしょ?」
穏乃「うん、良かった…何とか働いていける気がしてきたよ…」
憧「その意気その意気!まだまだこれからだけどね。宴会までに最低限のマナーは叩き込むわよ!」
穏乃「うん!頑張る!」
憧「あ、ただ一応言っておくと、宴会の主催の人は、美穂子さんの上客なんだからね。色目とか使っちゃだめよ」
穏乃「し、しないよそんなこと//」
憧「あはは、シズはしないだろうねー」
穏乃「…する人もいるの?」
憧「んー、噂なんだけどね。とはいえ歩きながらする話でもないし、私の部屋に戻ろっか」
元の人間関係もリセットされた状態のスタートか
咲キャラが遊郭を舞台に演劇やっているようなものかな
~憧の部屋~
憧「二ヶ月くらい前にウチに来た人がいるの。副店長 ー最初にシズを連れてきた人ねー のツテらしいんだけど」
穏乃「けっこう最近だね」
憧「うん。その人、前は別の街にいて、もうちょっと大きい店の売れっ子だったんだって」
穏乃「それなのに、どうして?」
憧「そこのナンバーワンのお客を奪って、怒りを買ったらしいの。それで店を追い出されたって」
穏乃「えぇっ!?」
憧「あくまで噂よ。その人、ウチでは人気も中の上くらいだし」
憧「そのうち会うと思うけど、気さくな人だよ。そんなに気にしなくても大丈夫」
穏乃「うん…まあ、私にはまだお客もいないんだしね」
穏乃「その人、なんていうの?」
憧「うん、名前はね…」
>>7 そう思ってもらっても大丈夫です。
~別の部屋~
「…という噂が流れているぞ、久」
久「あら、それは心外ねぇ」
ゆみ「事実とは違うのか?」
久「違うわよ。向こうが勝手に私に惚れてきただけだもの」
ゆみ「……」
久「自分のお客を繋ぎ留めてもおけない人が悪いんだわ」
ゆみ「で、今は懲りておとなしくしているということなのか?」
久「まさか。最初から目立とうとするほど馬鹿じゃないってだけよ」
久「でも噂になってるなら、そろそろご期待に応えて本気出しちゃおうかしら」
ゆみ「…それは怖いな」
久「うふふ」
~その夜~
憧「…とりあえず立ち回りはこんな感じかな。覚えた?」
穏乃「…た、多分」
憧「明後日また確認するから大丈夫だよ。そろそろご飯が来るから、休憩にしよっか」
穏乃「え、部屋に持ってきてもらえるの?」
憧「うん。部屋やお座敷で、お客さんと食べる人が多いからね。あたしは今日はシズのために免除なんだけど」
憧「ちなみに、朝昼は下の食堂ね。そこで色んな人に会うから、しばらくは挨拶で大変かも」
穏乃「そっかぁ…」
コンコン
「夕食をお持ちしました」
憧「お、来たきた。はーい!」
・
・
・
穏乃「ご飯少ないね…」
憧「ここ、ケチなのよねー。宴会に出ればもうちょっと食べられるよ」
穏乃「宴会出たくなってきた」
憧「でしょ?」
穏乃「うん…。そういえば踊りを習うとか言ってたけど、どこで?」
憧「ウチでは昼間に先輩に教えてもらうのが普通かな。あたしが習ってる人に、明日頼んでみよっか」
穏乃「うん、お願い」
憧「シズはもう、自分の部屋は見た?」
穏乃「うん、最初に見せてもらった。ここの向かいの部屋」
憧「近いんだー。良かったような、良くないような」
穏乃「?」
憧「あはは、まあその内わかるわよ」
遊廓のシステムとかはご都合主義に改変しているので、軽く流してもらえると嬉しいです。
~~~~~
憧「じゃーねー。お疲れさま」
穏乃「憧、色々ありがとう」
憧「いいのいいの!また明日ね」
穏乃「うん!おやすみなさい」
パタン
穏乃「ふぅ…」
穏乃「疲れたなあ…。でも憧も美穂子さんも親切にしてくれたし、思ってたよりはマシだよね」
穏乃「だけど一人になるとやっぱり心細いや…今日は早く寝よう」
穏乃「おやすみ~。一人部屋だけど」
穏乃「すやすや…」
~数時間後~
『穏乃、ごめんね…』
『どうか元気で……』
穏乃「うーん、むにゃむにゃ…」
穏乃「(パチッ)ん…ここどこ…?」
穏乃「あ、そっか私…売られて……」
穏乃「……トイレ行こう…」ムクッ
穏乃「ん?何か聞こえるぞ?」
ギシギシ
アンアンッ
ヤッ…モウダメェ
穏乃「………///」
穏乃「ど、どうしよう…」
穏乃「私、本当にここでやっていけるのかな…」
穏乃「……」
穏乃「ぐすっ…お母さん…お父さん…」
穏乃「うえぇん…誰か助けてよぉ……」
~翌朝 とある部屋~
竜華「怜、私もう行かな…」
怜「ん…もうそんな時間か…えらい早いなぁ」
竜華「堪忍な。今度は何かお土産持ってくるわ」
怜「ううん、うちは何もいらん。だから、早く来て…?」
竜華「怜…。うん、絶対来るから、待っとって」
怜「ありがと、りゅーか」
竜華「見送りはええよ。少しでも寝て、養生しとき」
「大好きやで…」
******
穏乃「ふあぁ~、朝か~」ムクッ
穏乃「お腹すいた…。朝ご飯は食堂って聞いたけど、いつ行けばいいんだろ。憧に訊いてみようかな」
ガチャ
穏乃「って…あれ?」
シーン…
穏乃「七時過ぎなのに…それとも、もう誰もいないとか!?」
穏乃「ど、どうすれば…」
「あなた、何してるの?」
穏乃「ふぇっ!?」
久「見ない顔ね。お客様…じゃなさそうだし、新しく来た子かしら」
穏乃「は、はいっ!穏乃って言います」
久「そう。私は久よ。よろしくね」
穏乃(!? 久って、昨日憧が言ってた人じゃん!)
久「来たばかりだから知らないのね。ここではもうちょっと待たないと皆起きてこないわよ」
穏乃「え?そうなんですか」
久「ええ。私は遅く起きたお客を送ってきたところなんだけど、もう一度寝るつもり」
久「ところであなた、瞼が腫れてるわね」
穏乃「え、あ、これは…」
久「…ちょっと待ってて」スタスタ
穏乃「え?え?」
・
・
・
久「はい。これで冷やすといいわ」
穏乃「ありがとうございます…」
久「大した腫れじゃないけど、せっかくかわいいのに勿体無いものね」
穏乃「か、かわいいとかそんな//」
久「何言ってるの、とってもかわいいわよ。自信持ちなさい。…それと、これもどうぞ」ヒョイ
穏乃「黒糖まんじゅう?」
久「夕べのお客がたくさん置いていったの。お裾分け」
穏乃「いいんですか!?ありがとうございます!」
久「ふふ、やっと笑った」
穏乃「えっ」
久「そっちの顔のほうが好きよ。じゃあ、またね」ヒラヒラ
穏乃「行っちゃった…イメージと違ったなぁ」
穏乃「おまんじゅう、二個あるから後で憧と食べよう」
穏乃「もう寝る気分でもないし、外に出ちゃだめかな?」
穏乃「遠くに行かなければ大丈夫だよね…。よし、ちょっとだけ行ってこよう!」
******
穏乃「うーん、いい天気!」
穏乃「店の中は静かだったけど、外は意外と人通りあるんだなぁ」キョロキョロ
穏乃「道に迷ったら困るから、ちょっと一回りだけしてすぐ戻ろうっと」
穏乃「廓じゃないお店もたくさんあるみたいだね」テクテク
「うぅ、ココどこ…」
穏乃「ん?」
「迷っちゃったよぅ…」
穏乃「…あの、大丈夫ですか?」
「」ビクッ
穏乃「怪しい者じゃないです。そこの店で働いてて…穏乃って言います(昨日から自己紹介ばっかり…)」
咲「あ…私は、咲です」
穏乃「どこに行くつもりだったんですか?どこかの店の人?」
咲「いえ、私、お姉ちゃんを探してて」
穏乃「? はぐれたんですか?」
咲「いえ、家庭の事情で、もうだいぶ連絡も取ってないんです」
咲「でもやっぱり会いたくて…この街で働いてるって聞いて探してるんですけど、見つからないんです」
咲「照って名前、聞いたことありませんか?」
穏乃「…ごめんなさい。私はこの街に来たばっかりだから、何も」
咲「そうですか…」
穏乃「力になれなくて、」
咲「いえ、いいんです!…あの、それじゃあ、街の出口までどうやって行けばいいか教えてもらえませんか?」
遊女が勝手に散歩なんてしたら処刑ものでっせ
はやく戻らんと
>>38 街の出入り口の門に近づかなければ大丈夫だったみたいです。
~翌日 昼前~
穏乃「ううぅ緊張してきたー」
憧「落ち着きなって。心配してもしょうがないよ?」
穏乃「そんなこと言ったって…。そもそも、宴会は夜にあるものだと思ってたよ!」
憧「夜のほうが多いけどね。今回は昼見世だったんだから仕方ないじゃん」
「こんにちはー!」
穏乃「あれ?お客さん?」
憧「ううん。どうぞ、入ってー」
ガチャ
淡「あれー?はじめましての人がいる!」
憧「そ、一昨日来た穏乃。シズ、この子はウチに出入りしてる美容師の淡だよ」
穏乃「美容師さんなんだ!すごいですね」
淡「えっへん!」
憧「まだひとり立ちしたばっかりなんだけどねー。美穂子さんとかは、淡の師匠が担当してるの」
憧「この街で一番の腕前って言われてるんだって」
淡「むっ、私だって実力でいえば美容師百年目だよ!」
憧「何その数字」
穏乃「お師匠さんと二人でここの全員を見てるんですか?」
淡「ううん、他にも何人か来てるはずだよ」
憧「淡、そろそろ髪お願い。あたしはいつも通りで」
淡「りょーかい!シズは?」
穏乃「えっ私も!?」
憧「当たり前でしょ。綺麗にして行かなきゃ美穂子さんに悪いわよ」
穏乃「で、でも髪型なんてわからないよ…」
淡「それなら私の好きにしちゃっていい?」
穏乃「は、はい、お願いします」
穏乃「…何だか私、場違いだね」
淡「そうかな?」イソイソ
憧「まだ三日目なんだから、慣れてないのは仕方ないよ」
憧「あたしはここに来てすぐの頃、もっとやさぐれてたもん。シズは頑張ってるほう」
穏乃「それは憧が助けてくれてるから…」
憧「そう思うならもっと堂々としてて。宴会だってあたしと一緒なんだから、大丈夫だよ」
穏乃「うん、ありがとう//」
憧「あ…わ、わかればいいわ//」
******
~宴会場~
穏乃「」アタフタ
詠「なんか今日は場が若い感じだねー?知らんけど」
美穂子「ふふ、可愛らしいでしょう?でも浮気しちゃイヤですよ」
詠「大丈夫大丈夫、美穂子ちゃんには敵わんよ」ケラケラ
えり(三尋木さんに無理矢理連れて来られたけど、お座敷なんて初めてだから落ち着かない…)
穏乃「ああああのっ!おさけを…」
えり「あ、ありがとうございます」
穏乃「」ブルブル
トクトク…
えり(大丈夫かな…。でも初々しくてかわいい)
詠「そっちの子に踊ってもらいたいなー」
憧「」ハラハラ
美穂子「憧ちゃん」
憧「ふぇっ!?」
美穂子「踊れる?」
憧「は、はいもちろんですっ!」
・
・
・
穏乃「つ、疲れた……」
憧「あたしもなんか異様に疲れたわ…」
穏乃「美穂子さんに迷惑かけなかったかな…」
憧「大きな失敗はしてないものの、二人ともガタガタだったよね…」
憧「美穂子さんは怒ってないだろうけど、お詫びとお礼に明日行こうか」
穏乃「うん…」
憧「はぁ、今日ばかりは夜に仕事入ってなくてよかったわ。でも美穂子さんはあるはずだよね」
穏乃「あ…そっか」
穏乃(またお座敷なのかな…それとも…。でも美穂子さんが…想像つかないなぁ…)
穏乃(…って、想像しなくていいってば///)ブンブン
憧「あたしたちは帰ろうか」
穏乃「そうだね…」
******
郁乃「美穂子ちゃんは肌が柔らかいなあ。すごく白いし」
美穂子「ん…」
郁乃「何食べてたらこうなるんやろね?」
郁乃「やっぱりお店の看板張ってるだけのことはあるわ~」
美穂子「…いえ」
郁乃「謙遜しなくてええよ~。この店はかわいい子が多いけど、その中でも美穂子ちゃんが一番だって、細見にも書いてある」
郁乃「そして噂に違わない抱き心地。大枚はたいた甲斐もあるってもんやわ~」
美穂子「……」
郁乃「うーん、なんか美穂子ちゃんさっきから上の空やねぇ」
美穂子「…そんなことありませんよ」ニコ
郁乃「そう?でもほら、ここもあんまり濡れとらんし」サワッ
美穂子「あっ…」ビクン
郁乃「お、やっと反応あった」
郁乃「だけどさっきまでお客様を放ってたんやから…ちょーっとお仕置きしちゃおうかなー」
美穂子「そんな…あんっ」
郁乃「ちゅ…ぺろ…」
美穂子「あ、あ…やぁ…」
美穂子「ああっ!も…やめて…」
郁乃「え~?」クチュクチュ
美穂子「ひうっ!はっ、あ、あ、」
郁乃「美穂子ちゃん、むっちゃやらしいわ~」クチュクチュ
美穂子「あっ、あああ、あ、」
美穂子「…ひっ、あ」
美穂子「~!!」ガシッ
郁乃「お?」
美穂子「……はっ、あ…あぅ…」クタッ
郁乃「え~?美穂子ちゃんもうイったん?」
美穂子「…は、い…」
郁乃「ふ~ん…」ペロ
美穂子「ひっ!?ま、待って…」
郁乃「え?だって美穂子ちゃんはプロやん。イったフリなんて朝飯前やろ?」
美穂子「フリじゃ、ないです…」
郁乃「私にはわからんしな~」ペロペロ
美穂子「そんな…あっ…」
~~~~~~
郁乃「ほな、またな~」
美穂子「…はい。お待ちしてます」
郁乃「最後にちゅーして?」
美穂子「…」スッ
美穂子「ちゅ…」
郁乃「ん…、うん、おおきに」
郁乃「楽しかったで~。美穂子ちゃん」
*******
~ 一週間後 ~
♪~
怜「うん、そこまで」
怜「初心者にしては上出来やで。穏乃ちゃんは運動神経がええんやな」
穏乃「ありがとうございます!」パアァ
怜「ただちょっと元気が良すぎるゆーか…もっと色っぽく踊れん?」
穏乃「い、色…」
憧「怜さんお手本見せてください!」
怜「んー。ええよ」
♪~
穏乃(うわ、キレイ…)
穏乃(表情も、切なそうで…)
穏乃(……)
穏乃(憧が、怜さんはお客さんと恋仲だって噂があるって言ってた)
穏乃(なんか、いいなぁ)
穏乃(私もそのうちお客さんを取らなきゃいけないけど…どんな人になるんだろう)
怜「…穏乃ちゃん見とった?」
穏乃「えっ、あ、はい!」
憧「ボーッとしてたでしょー。怜さんなかなかお手本やってくれないのに」
怜「だってうち病弱やし。仕事前に疲れたらかなわんわ」
穏乃「あ、今日お仕事なんですね」
怜「せやで。休んでばっかりいられんからな」
穏乃「…いつもの人ですか?」
怜「え?…ああ、今日は違うお客さんや」クスッ
怜「なんや有名になってもうてるんかなぁ」
穏乃「いえ、その」
怜「本当は褒められたことやないんやけどな」
穏乃(そっか…他のお客さんを断るわけにはいかないもんね…)
穏乃(でも私も、最初くらいは好きな人に…)
穏乃(って何考えてるんだろ私。好きな人なんていないのに)
怜「ほら穏乃ちゃん。もう一回踊ってみて」
穏乃「は、はい!」
~~~~~~~
穏乃「ねえ、憧」
憧「なに?」
穏乃「私っていつからお客さん取るんだっけ」
憧「…再来月だよ」
憧「小さい頃に売られてきた人は、もう当たり前だと思っちゃうらしいけど…やっぱり辛いよね」
穏乃「うーん、辛いっていうか…実感がわかないっていうか」
穏乃「でも怜さんを見てると、ちょっと羨ましくなっちゃうなー」アハハ
憧「……」
穏乃「憧?」
憧「…羨ましいなんて言わないほうがいいよ」
穏乃「え…」
憧「あたしたちは、目の前の仕事をこなすことを一番に考えないと」
穏乃「それは、そうだけど」
憧「……」
憧「怜さんは、ここから出られないかもしれないの」
穏乃「えっ?」
憧「あたしたちは皆、店に借金があるの。知ってるよね」
憧「昼も夜もお客がつく売れっ子だって、返済には十年近くかかる」
穏乃「うん…」
憧「それなのに怜さんは体が弱いから、見世に出られないことがよくある。お医者さんにも頻繁に来てもらってるから、そのお金もかかってる」
穏乃「…で、でもほら、その…恋人だっていうお客さんが、代わりに借金を返してくれたら」
憧「身請けね。相手はそれなりに良い家の跡取り娘らしいけど…」
憧「怜さんの借金があんまり減ってないことを考えたら、かなり厳しいんじゃないかな」
穏乃「そんな…」
憧「足抜け…つまり脱走を考える人もたまにいるけど、怜さんの体じゃ絶対に逃げ切れない」
憧「捕まったら見せしめのためにさんざん折檻されて、それから最低レベルの店に落とされて死ぬまで働かされる」
穏乃「……」
憧「怜さんがどんな気持ちでいるのか、あたしにはわからない。でも」
穏乃「憧…もういいよ。ごめん」
憧「シズ…」
穏乃「…まだお客さんも取ってない私が言うのも変かもしれないけど」
穏乃「私たちは絶対にここから出よう。二人で」
憧「え、二人で?」
穏乃「ああ、憧のほうが先に来たし、要領もいいから早く出ることになるよね、多分」
憧「それは、わからないけど…」
穏乃「でも私も頑張るからさ、この街を元気に出て、一緒に生きていこう」
憧「」
穏乃「…だめ?」
憧「だ、だめじゃないけど…あたしたちまだ出会って十日くらいじゃなかったかなーなんて…」
穏乃「そうだけど。でも憧とならずっと親友でいられる気がするんだ」
憧「…へっ?」
穏乃「えっ?」
憧「…親友」
穏乃「え?違うの?私…」
憧「……」
憧「…………」
憧「……………はぁ」
穏乃「わ、私だけ?」
憧「いやいや、親友ですよ~心の友ですよ~」
穏乃「投げやり!?」ガ-ン
*******
~その夜 美穂子の部屋~
美穂子「はぁ、はぁ…」
郁乃「今日もよかったで~美穂子ちゃん」
美穂子(赤阪さん、最近よく来るわね…ちょっと苦手なのに)
郁乃「ほなそろそろお暇するわ」
美穂子「えっ?」
郁乃「明日は朝から仕事だから、今日はお泊りでけへんのや。ごめんな~」
美穂子「い、いえ…」
美穂子「えっと、じゃあお送りしますね」
郁乃「うん、頼むわ~」
・
・
・
美穂子(ふぅ。ほっとしたわ…)
美穂子(部屋に戻って、今日はゆっくり寝ましょうか)テクテク
美穂子(店の喧騒も、この時間は少し落ち着いてるわね)
『アンッ』
美穂子「」ビクッ
美穂子(あ、この部屋って…)
美穂子(……)
美穂子(………)ソロリ
久『ふふっ、かわいい…我慢しなくていいのよ?』
エイスリン『アッ!アン、ア…!』
エイスリン『ヤ、ヤダヤダ、コワイ…!』
久『大丈夫、怖いことなんて何もないわ』チュッ
美穂子(……)ドキドキ
エイスリン『…ンッ!アーッ!』
久『…ん。ちゃんとイけたじゃない』
エイスリン『ハァ…ハ…』
久『疲れちゃった?』
エイスリン『ダイジョウブ…///』
久『そう、じゃあ次は一緒にしましょう?』
久『ね…?私も、もう…』
美穂子(……!///)ドキドキ
美穂子(見たい、かも…)
美穂子(でもさすがに、ドアを開けるのは…)
美穂子(………)
美穂子(ちょっと、だけ…。そっと…)キィ
エイスリン「アンッ、ア、ア、ア」
久「あっ…いい、わ…。もっと…!」
美穂子(……///)ドキドキ
エイスリン「ア…!ダメ、マタ、クル…!」
久「あんっ…私も…ああぁっ!」
美穂子(あぁ……!!///)ゾクゾク
*******
~美穂子の部屋~
美穂子「」ズ-ン
美穂子(私は、なんてことを…)
美穂子(どうして覗いたりしちゃったのかしら…久さんとはろくに話したこともないのに)
美穂子(…久さん)
美穂子(店替えは珍しいから、久さんは来た時から注目されてた)
美穂子(色々噂も飛び交っていたみたいだけど、彼女はいつも堂々としていて…)
美穂子(向こうは会うたびに声を掛けてくれるけど、私は毎回慌てちゃってまともに返事もできてないのよね…)
美穂子(感じの悪い奴だと思われているかもしれないわ…)
美穂子(……)
美穂子(でも、久さん…綺麗だった)
美穂子(お客様になりたいって、初めて思っちゃったわ…)
美穂子(見てただけで、私…///)
美穂子(久さん……///)
*******
~数日後 久の部屋~
ゆみ「今日は昼見世は?」
久「ん。昼も夜も両方あるわ」
ゆみ「最近本当に仕事が増えたな」
久「まあねー」
ゆみ「たまには休んだらどうだ?」
久「じゃあ今度ゆみが私を買ってよ。一晩飲み明かしましょう」
ゆみ「…私には高い酒盛り代だな」
久「あら、抱きたいの?」
ゆみ「そういう意味じゃない!!///」
久「あはは、冗談よ」
久「でも、私の値段調べてくれたことあるのね?」
ゆみ「……」
久「…え、マジで?」
ゆみ「…美容師として、自分の担当の評価が気になっただけだ」
久「それでも驚きだわ。堅物のゆみがねぇ…」シミジミ
久「それで、感想は?」
ゆみ「は?」
久「今ゆみと普通に話している私に会うために、お金をかけて通ってる人が何人もいる。…多分そろそろ値上がりするしね」
久「それを知って、どう思ったのかしら」
ゆみ「……別になんとも。私は客じゃないからな」
久「本当に?」ズイッ
ゆみ「…っ。本当だ」
久「ちぇ。つまんない」
ゆみ「あのな…」
久「ほら、早く髪お願い。昼見世に間に合わなくなっちゃう」
ゆみ「わかったわかった」
バンッ!!
桃子「先輩!こっちは終わったっす!帰るっすよー!」
ゆみ「…モモ、ノックしろと言っただろう。それにこちらはまだ終わっていない」
桃子「なんでそんなに時間かかるんすか!」
久「ごめんなさいねモモちゃん。もうすぐだから」
桃子「もうすぐって、ほとんど始まってもいないじゃないっすか!今まで何してたんすか!?」
久「モモちゃんが想像してる通りのことよ?」
桃子「~~~!!!」
ゆみ「久、からかうのはよせ。少し話し込んでいただけだ」
久「ごめんごめん、だってかわいいんだもの」
久「ゆみには急いでもらうから、適当に掛けて待っててね」
桃子「う~…」ストン
ゆみ「そういえばこの部屋にはなんでいつも衝立が立ってるんだ?」テキパキ
久「…向こう側は仕事場だからね」
久「私はわりと開き直ってるつもりだけど、やっぱり友達に見られるのは落ち着かないのよ」
ゆみ「…以外と繊細なんだな」
久「んー、似合わないかな」
ゆみ「そうは言っていないさ。客にも、そんなところを見せたほうが受けるんじゃないのか?」
久「……やめて」
ゆみ「え」
久「やめて」
久「私は死んでもそんなことしないわ。見くびらないで」
ゆみ「………」
ゆみ「……すまない、そんなつもりではなかったんだ」
久「…うん、わかってる。ムキになって悪かったわ」
・
・
・
久「じゃあ、またね~」
ゆみ「ああ」
桃子「…はいっす」
バタン
桃子「…やっぱり今度からあの人は私が担当するっす!」
ゆみ「あいつの髪は本人と同じで癖があって難しいぞ」
桃子「な、なんとかなるっすよ!」
ゆみ「そうだな。だが、私もあいつと話すのをけっこう楽しみにしてるんだ」
桃子(うぅ…)
桃子「で、でも今日なんていきなり怒られてたじゃないっすか!それもよくわからないことで!」
ゆみ「いや、あれは私が軽率だったんだ。久が怒ったのも無理はない」
ゆみ「しかしあいつのことだから、水に流してくれるだろう」
桃子「………」
桃子(なんすかこの理解しあってる感~!!)
*******
穏乃「名代?」
憧「うん」
穏乃「って何?」
憧「今夜、久さんにお客が重なっちゃってるの。だけどもちろん両方同時に相手はできないでしょ」
憧「だから、久さんがいない間の宴会の繋ぎに、あたしが入ることになったんだ」
穏乃「そういうこともあるんだ」
憧「うん。それ自体は珍しいことじゃないんだけどね」
憧「でも久さんのお客がどんな人か知らないし、緊張するなぁ」
穏乃「憧なら大丈夫だって!久さんもそう思ってるから任せるんでしょ?」
憧「いや、店側が空いてる人を適当に選ぶんだよ」
穏乃「……で、でも憧以外にもいたはずだし!その中で憧が選ばれたんだよ!」
憧「あはは、ありがと。頑張るよ」
穏乃「うん!」
憧「…シズも一緒に来るんだからね?」
穏乃「あ、そっか」
憧「あたしは正客からあんまり離れられないし、今回はシズがサポートしてよねー」
穏乃「うっ…若干不安だけど…」
穏乃「頑張るよ!憧のためにも!」グッ
憧「ありがと。でもシズもだいぶ慣れてきたし、平気でしょ」
穏乃「うん、要領は掴んだし、任せといて!」ドンッ
憧「よーし、任せたっ!」
憧・穏乃(…あれっ?フラグ?)
モモは存在を忘れられないよう、自分の仕事中はずっと大きな声で喋ったり歌ったりしているみたいです。
それと、>>51で
×詠
??咏
でした。すみません。
~その夜 宴会場~
洋榎「まったく久の奴、ウチを待たせるとはええ度胸やな~」ウイ-
憧「洋榎さんに早く会いたいって、久さん言ってましたよ」ニコニコ
洋榎「えー、ほんまかいな」
憧「はい!(知らんけど)」ニコニコ
絹恵(お姉ちゃん…赤阪さんに連れて来られて以来、すっかり花街通いにハマってしもうた)
絹恵(元々チヤホヤされるの大好きやしな…)
絹恵(最初はただのマイブームって感じで、指名も適当やったけど、最近お気に入りの人ができたっぽい)
絹恵(お姉ちゃんはのめり込むとなかなか止められへんからなぁ…ちょっと心配や)
穏乃「失礼いたしまーす」トクトク
由子「ありがとうなのよー」
洋榎「ま、自分も飲みぃ。ウチが酌したる!」ドヤァ
憧「きゃー、ありがとうございますぅー」
・
・
・
憧(よし、ここまでは順調!)
洋榎「ヒマやしゲームでもしよか?」
由子「それより踊りが見たいのよー」
洋榎「おお、せやなー。じゃあそっちのねーちゃん」
穏乃「えっ」
洋榎「ずっと酌ばっかでつまらんやろ?そこで踊ってみぃ」
穏乃「えっと…」チラ
憧(GOサイン)コクコク
穏乃「…じ、じゃあ少しだけ」
洋榎「いよっ!」
由子「待ってましたなのよー」パチパチ
穏乃(怜さんや憧の前でしか踊ったことないけど、大丈夫かな…)ドキドキ
穏乃(でもここで断ったら盛り下がっちゃうよね。やるしかない)
穏乃(よ、よーし)ゴクリ
スッ
穏乃(って、うわ)ヨロ
ガッ!
バラバラ…
穏乃(お菓子が散らばって…!)
穏乃「す、すみません!」
由子「気にせんでええよー」
洋榎「なんや、緊張しとんのかー?」ケラケラ
穏乃(しっかりしなきゃ…!)
憧(シズ…あたしが代わったほうがいいかな…?)
憧(いや、ここであたしが出たらシズは自分が信用されてないと思うかも)
憧(さりげなく声を掛けて落ちつかせよう)
憧「シ…」
♪~
憧(って、音楽始めるの早っ!空気読んでよ!)
穏乃「」
穏乃(と、とにかく踊らなきゃ…前に出てー)ガクガク
穏乃(出て…どうするんだっけ……)
♪~
憧(なんとか踊り出した…)
憧(けど、明らかにガタついてる。これじゃお客にもバレバレ)
憧(でも、もうどうしようもない)
憧(なんとか、短い振り付けを一周でいいから)
憧(乗り切って…シズ…!!)
♪~
穏乃「」マッシロ
穏乃(足…しびれたみたいに、感覚がない)
穏乃(振り付け、合ってるの?)
穏乃(終わらせなきゃ…でもどこで終わるんだっけ…)
穏乃(どこ………)ピタリ
憧(と、止まっちゃった!!)
憧(じゃあもうそこでいいから!お辞儀して戻って!)
穏乃「」
憧(シズー!!)
「お待ちどうさまでしたー!久さんですー」
憧「!」
穏乃「」
憧(よかった、これで誤魔化せるかも!)
憧(久さんが、お客の気を引きつけてくれればー)
スッ
久「お待たせしました」ニコ
久「ありがとね、憧ちゃん」
憧「えっ…」
憧(真っ先にそれ?)
久「穏乃ちゃんも。助かったわ」
憧「あ、あの、それよりお客様を」ヒソヒソ
洋榎「おーい、うちは無視かーい!」
憧(あーやっぱり)
久「ふふふ、ごめんなさい。来てくださって嬉しいわ」
久「皆様も、長らくお待たせして申し訳ありませんでした」フカブカ
洋榎「ったく、信用ならんわ~」
久「あら酷い」
洋榎「自業自得や」
久「ちゃんと考えがあってのことなんですよ?」
洋榎「なんや。言うてみい」
久「あなたから先に呼んでほしかったの。私のこと」
洋榎「は…///」
久「でも失敗かな。まだ私の名前、呼んでくださらないものね」
久「それとも、もうお忘れなのかしら」
洋榎「………」
洋榎「……覚えとるわ。…久」
久「…!」パアァ
久「嬉しい…!会いたかったわ///」
洋榎「さ、さいで…///」
憧「」ポカ-ン
穏乃「」ポカ-ン
憧(え?え?)
憧(久さんのお座敷ならシズが来る前にも呼ばれたけど、こんなじゃなかったよね?)
憧(完全にセオリー無視っていうか…相手によっては大顰蹙じゃない)
憧(…って、そんなこと言ってる場合じゃなかった!)
憧「シズ!あたしたちも移動しなきゃ!」
穏乃「う、うん」
~~~~~~~
穏乃「憧、さっきは本当にごめん…」
憧「仕方ないわよ。そういうこともあるって」
穏乃「でも、憧に迷惑かけて…久さんにも…」
憧「そのあたしが大丈夫だって言ってるの。お客さんも神経質じゃなさそうだったし、平気だよ」
憧「久さんだって、気にしてるように見えた?」
穏乃「…ううん」
憧「でしょ?じゃあもう問題ないわよ」
穏乃「だけど…」
憧「だけどじゃないの」
憧「今回あたしは迷惑かけられたなんて思ってないけど、たとえかけられたって別に構わない」
憧「あたしたちは親友だって、シズが言ったんだよ?」
憧「だからグダグダ謝らない!わかった?」
穏乃「う、うん」
穏乃「ありがとう…憧」
すみません、しばらく留守にします。
今月末くらいには戻れると思います。
~同じ夜 怜の部屋~
怜「セーラが一人で来んのは珍しいなあ」
セーラ「ご無沙汰やったし、たまにはな。調子はどうや?」
怜「何とかやっとるよ。休みがちやからちょっと肩身は狭いけど、かわいい後輩もおるしな」
セーラ「そか。ならよかった」
怜「セーラのほうこそ、最近どうなん?」
セーラ「ああ、今度また新しく仕事任せてもらえることになったで」
怜「へぇ、すごいやん。…セーラと竜華と、三人で遊んどった頃がえらい昔みたいや」
セーラ「…俺はついこないだみたいな気がしとるけどな」
怜「そうかもな。もう一杯飲む?」
セーラ「おう。おおきにー」
怜「なあ、セーラ」トクトク
セーラ「ん?」
怜「竜華、何かあったんか?」
セーラ「…なんでそう思うん?」
怜「家の話とか、最近全然しーひんから。羽振りがええ時は色々言うてたのに」
セーラ「あー、わっかりやすいなぁアイツ」
怜「…やっぱり」
セーラ「あ、別に路頭に迷うとか、そんなレベルの話ちゃうで?ちょっとゴタゴタしとんのや」
怜「そっか…」
セーラ「ただ竜華の奴も跡取りやから、体面上、しばらくは来にくいかもしれへん」
怜「そらそうやろなぁ。気にせんでって伝えといて」
セーラ「りょーかい」ニッ
セーラ「そんなわけで今日は俺だけやけど、久々やし景気良くいったるわ!」
怜「払えなくて恥かいても知らんでー?」
セーラ「払えるわ!馬鹿にすんな!」
怜「あはは、冗談や。おおきにな、セーラ」
セーラ「ったく…。まあええわ、今日は怜を独占して、帰ったら竜華に思いっきり自慢したる」
怜「お、それ楽しそうやな」
セーラ「せやろー?」
セーラ「怜が絡むと竜華の執念はすごいからな。悔しがって、早く怜に会うために必死になるんやないか?」
怜「んー、でも今も頑張ってんのやろ?」
セーラ「まあな。アイツ真面目やし」
怜「ほな、あんま無理せんでほしいわ。それで体壊したら元も子もないし」
セーラ「その大変さは怜がようわかっとるもんな」
怜「うん。それに、うちはセーラが来てくれることだってありがたいと思っとるんやで」
セーラ「お?えらい素直やなー!」アハハ
怜「…ほんまやって」
怜(幼馴染三人の中で、うちの家だけ貧乏になって売られてしもうた)
怜(でも、たまたま近場だったとはいえ、竜華もセーラも暇を見つけては会いに来てくれる)
怜(しかも竜華は、うちのことを好きだって言うてくれた)
怜(うちは十分、幸せもんや…)
~翌日 午前~
穏乃(憧は気にしてないって言ってくれたけど、あんな失敗はもうできないよな)
穏乃(やっぱり練習が足りなかったんだ)
穏乃(今日は怜さんのお稽古がない日だけど、頼んでちょっとだけでも見てもらおう)
穏乃「すみませーん、怜さんいらっしゃいますか?」コンコン
怜『ん…誰?』
穏乃「穏乃です!今いいですか?」
怜『…ええよ、開いとるで』
穏乃「お邪魔しまーす」ガチャ
穏乃「あれ、怜さん寝てたんですか?起こしちゃいました?」
怜「目は冷めとったから。で、どしたん?」
穏乃「あの、踊りを見てもらえないかと…」
怜「ああ。見るだけなら、ええよ」
穏乃「…ひょっとなくても具合悪いんじゃ」
怜「お客さん帰った後からちょっとな。でも、よくあることやから」
穏乃「だけど顔色が…。やっぱり今日は遠慮しときます」
怜「へーきへーき…。んしょっと」ムクッ
怜「っ、けほっ、ごほっ」
穏乃「わわ、無理しちゃダメですってば!」
穏乃「薬とかは…あ、そういえば朝ご飯は食べました?」
怜「食堂行くのが億劫で…」
穏乃「食べたほうがいいですよ!私、何かもらってくるんで!」バッ
怜「お」
穏乃「すぐ戻ります!」ガチャ
穏乃「よーし急いで…って、うわ」
ドンッ
穏乃「す、すいません!」
「…大丈夫」
穏乃(あれ?店にこんな人いたっけ)
穏乃(この時間だとお客さんじゃないはずだし…)
穏乃(あ、でも今は食堂に行くんだった)
穏乃「本当ごめんなさい!それじゃ」
「……」
*******
淡「あー、それテルーだよ多分」
穏乃「てるー?」
淡「うん。赤い髪の、あんまり喋らない人でしょ?」
憧「ほら、前に言ってた淡の師匠だよ」
穏乃「あー、あの人が! …でもどこか他のところでも聞いた気がするな」
憧「うちに出入りしてるんだから、名前くらい聞いたことあってもおかしくないよ」
穏乃「うーん…」
憧「それより、怜さん大丈夫かなぁ」
穏乃「さっきはかなり辛そうだったけど…。あ、でもお粥持っていったらそれはペロッと食べちゃったよ」
憧「んー、いつも食欲はわりとあるんだよねぇ」
憧「やっぱ気になるから、あたしも後でお見舞いに行こうっと」
淡「最近寒くなってきたし、風邪なのかな?」
憧「そうかも。ただ、詳しくは教えてもらってないけど持病もあるみたい」
憧(店に買われてから体を壊したのか、病気を隠して売られたのか…なんとなく、後者な気がする)
憧(店にとってはもう、怜さんは厄介者だよね)
憧(身請けの話が持ち上がれば、たぶん相場より安くしてもらえるんだろうけど…)
淡「アコってば、前向いててくれなきゃ髪セットしにくいよー!」プンプン
憧「あ、ごめんごめん」
~その夜 美穂子の部屋~
郁乃「美穂子ちゃんの今日の服、きれいやなぁ」
郁乃「やっぱりナンバーワンともなると、着る衣装も違うんやな~」
美穂子「……」
郁乃「どしたん~?」
美穂子「…『ナンバーワン』は、やめてもらえませんか」
郁乃「え~?本当のことやん」
美穂子「…私が最初のお客様を取るより前に、店が勝手に決めたことです」
郁乃「美穂子ちゃんが一番かわいくて、お利口やったからやろ?」
美穂子「買いかぶりです。私は…」
郁乃「ようわからんなぁ。この店のナンバーワンだから、美穂子ちゃんにはいっつもお客さんがついとる。お金持ちのお得意先だって、何人もおるやろ」
郁乃「美穂子ちゃんあんまり熱心に営業してへんやん。それでも回ってるのは、美穂子ちゃんがナンバーワンやからやで」
美穂子「…わかってます」
郁乃「何が不満なん~?」
美穂子「…私のお客様達は『ここで一番の遊女』に会いにくるんです」
郁乃「うん」
美穂子「私自身に興味があるわけじゃない…」
郁乃「あ~、そういうことか」
郁乃「つまり美穂子ちゃんは、恋愛がしたいんやな」
美穂子「え?」
郁乃「だってそうやろ?美穂子ちゃんのことを愛してる、君の代わりはいないって言って欲しいんやないの?」
美穂子「いえ、そんな…。そこまでは」
郁乃「恋に恋する乙女、かあ。遊女とは思えんなぁ」
美穂子「……!」
郁乃「けど、前から薄々思っとったにしても、急に言い出したのは何でなん?どんな心境の変化やろな」
美穂子「え」
郁乃「誰か好きな人でもできたん?」
美穂子「いえ」
郁乃「ひょっとして、うち?」
美穂子「ち、違います!」
郁乃「うわぁ全否定。傷つくわ~」
美穂子「すみませ、」
郁乃「でもやっぱり、おるんやろ?好きな人」
美穂子「…いません」
郁乃「え~、そら残念やなぁ。うちは美穂子ちゃん気に入っとるから、ちょっとくらい相談に乗ろうかと思ったのに」
美穂子「……」
郁乃「詮索はせーへんよ。店に告げ口したりも」
郁乃「でも美穂子ちゃん控えめやからなぁ。遠くから見とるだけじゃ何も変わらんで~?」
美穂子「…お気遣いなく」
郁乃「まあ確かに、うちには関係あらへんな。ほな、お楽しみといこか」ギッ
美穂子「あ…」
郁乃「お金払っとるし、堪忍な~。でもキスはせんといたるわ」
郁乃「そういうのが、乙女のロマンってやつやろ?」
美穂子「……」
美穂子「…あっ」
美穂子「ひぁ、っ、」
美穂子「あっ、はあっ、は…」ポロッ
郁乃「え~、泣かんといてーな」
美穂子「ひっく、うぇ」
郁乃「泣き顔もかわええけど、他のお客さんやったら怒るかもしれへんで~?」
美穂子「ごめ、なさ、」
郁乃「ま、ええか」ムニュ
美穂子「っ」
郁乃「いつもより反応鈍いなぁ。ローション使ってええ?」
美穂子「……」
郁乃「ちょっとだけな~」トロリ
美穂子「……」
美穂子「!?」
美穂子「赤阪さ、これ、何…」
郁乃「お、わかるん?ちょっぴりお薬入りのやつ」
美穂子「そんな!」
郁乃「危ないもんやないから。気持ちええやろ?」
美穂子「……っ」
郁乃「ほら、見せて」
美穂子(…熱い)
美穂子(じんじんする)
郁乃「どんどん溢れてきとるで~。あ、また」
郁乃「めっちゃヒクヒクしとるし」クチュ
美穂子「あっ!!」ビクン
郁乃「あはは、すごいわ~」ヌプッ
美穂子「ああっ…!」
郁乃「美穂子ちゃん普段、ナカではあんまり感じてへんのにな」クチュクチュ
美穂子「あ、あ、やっ!」
郁乃「わ、暴れんといて。せっかくやしもっと奥までな?」ヌププ
美穂子「あぅっ、あっ、あん」
郁乃「めっちゃ絡みついてくるで~。指増やせるかな」
美穂子「いやっ、あん、久さ、久さん…!」
郁乃「へーぇ」クニッ
美穂子「ーーっ!!」ビクビクッ
郁乃「ここ、ええみたいやな」グッ
美穂子「あ! あ、あ、あ、」
美穂子「だめ、もうだめ、久さ、」
美穂子「いや、あっ、ああっ」
郁乃「気持ちいいって言うてみ」
美穂子「気持ち、い、」
郁乃「そうそう」
美穂子「気持ち、いいっ…あっ、あ…いいっ!」
美穂子「い、あ、あああーっ!」ビクンビクン
大阪勢を出しすぎて、エセ関西弁ばっかり書いてる気がする…。
宮守勢出してエセ岩手弁を書くんだ!
…原作で使ってないけど
美穂子でこんなエロが来ると思っていなかったからちょっとお得感
~翌朝 食堂~
美穂子「……」モグモグ
「ここ、空いてる?」
美穂子「あ、はい…」
美穂子「!」
久「おはよ」ニコ
美穂子「お、おはようございます」
久「美穂子さんと食堂で会うの、珍しいわね。いつもこの時間?」
美穂子「は、はい」
久「そう。私は普段もうちょっとだけ遅いから、それでかな」
美穂子「……き、今日はどうして?」
久「夕べのお客が早く寝かせてくれたから、目が覚めちゃったのよね~」アハハ
美穂子「……」
久(賑やかしたいだけとか体目当てとかの、私にあんまり興味ないお客ならむしろ燃えるんだけど)
久(淡白だし、そのくせ不満はないって言ってたし、払いはかなりいいみたいだし、いまいち掴めないのよねあの人…)
美穂子「あの、」
久「ああ、ごめん。何?」
美穂子「久さんは」
久「うん」
美穂子「……」
久「?」
美穂子「…やっぱりいいです」
久「え? なに、気になるじゃない」
美穂子「大したことではないので…」
久「そうなの?…じゃあ、気が向いたら話してね」
久「たまには吐き出さないと、やってらんないわよ~?」フフ
美穂子「はい…」
久「…本当に浮かない顔ね」
美穂子「……」
久「そうだ、もし時間あるなら、気分転換に甘いものでも食べに行かない?」
美穂子「えっ!? い、いえ、いいですっ!!」
久「…そ、そう」
美穂子(しまった…!)ガ-ン
久「……」モグモグ
美穂子「……」
久「ふぅ、ごちそうさま。じゃあ私はこれで」ガタッ
美穂子「あ、あの!」
久「?」
美穂子「その、えっと…」
美穂子「今度から、」
美穂子「………今度から『美穂子』って、呼んでもらえませんか…?」
*******
~数日後~
穏乃「怜さん、まだ具合悪そうだね」
憧「みたいね。これまではせいぜい二日くらいで回復してたのに」
穏乃「心配だね…」
憧「悪いことになってなきゃいいけど。でもとりあえず、お稽古は他の人に頼んだほうがいいかなぁ」
憧「特にシズはまだ初心者だから、あんまり間を空けないほうがいいもんね…」
穏乃「うーん…」
憧「それと、今夜はシズはお休みでいいよ」
穏乃「え?憧は?」
憧「あたしは仕事だけど、一人で大丈夫だから」
穏乃「休みかあ。そうは言ってもやることないんだよなぁ」
憧「たまにはたっぷり寝ればいいんじゃない?ここのところ明け方就寝が続いてたし」
穏乃「うー…。まあそれしかないか」
・
・
・
憧「じゃあね、お疲れさま」
穏乃「頑張れ~」
ガチャ、バタン
穏乃「ふぅ…。私も部屋に帰るか~」
穏乃「しかしすっかり夜型になっちゃって、あんまり眠くないんだよな。うーむ」
穏乃「そうだ、ちょっと怜さんの部屋に顔出していこうっと!」
穏乃「起きてるといいなー」テクテク
穏乃「…ここだ。怜さ…」
『…で、…では、もう…』
『…が……は、』
穏乃(話し声?)
穏乃「……」キキミミ
『…店から出すわけにはいきません』
『しかし、設備のある環境でないとこれ以上の治療は…』
『気の毒ですが、彼女だけを特別扱いはできないのです』
『それに、仮に入院したとしても、治療費は彼女自身に降りかかってくる』
『…どうにもなりませんか』
『店の金は、先生が思っている以上に流動的です。一人に同情しすぎれば他の者達を路頭に迷わせることになる』
『そうですか…』
穏乃(えっと…どういうことだ?)
穏乃(誰の声かはわからないけど、怜さんの話?)
穏乃(入院?店からは出せない?)
穏乃(お医者さんが来てるのかな。じゃあもう一人は店の人?)
穏乃(深刻そうな雰囲気)
穏乃(怜さんの病気、そんなに悪いのか…?)
~~~~~~
穏乃(結局、そのまま自分の部屋に戻ってきてしまった)
穏乃(怜さん、どうなるんだろう)
穏乃(入院してちゃんと治療すれば良くなるのかな…でもそれはだめで)
穏乃(怜さんはただでさえ借金を返せてないって、憧が言ってたし)
穏乃(身請け…も難しいんだっけ)
穏乃「うー、憧がいないとよくわからない!」
『アンッ』
穏乃「…え」
『アアッ』
穏乃(うわっ、いつの間にか時間が経ってた)
穏乃(だいぶ慣れたとはいえ…)
穏乃「ピークになる前に寝よう…」ドサ
穏乃(……)
穏乃(『店からは出せない』)
穏乃(『治療費』)
穏乃(借金…)
穏乃(……………)グルグル
穏乃(うがー!眠れない!)
『アンアン』
『ドンチャンドンチャン』
穏乃(あーもう!)
『お久しぶりですね』
穏乃(…え)
『全然会いにきてくれないんだもん。忘れちゃうとこだったわよ?』
穏乃(……)
『もう…本当~?』
『じゃあ今夜は思いっきり、可愛がってくださいね?』
穏乃(……憧の、声だ)
>>105 少なくともシロは出したいと思ってはいるんですけどね…
はよ(´・ω・`)ノ
~翌朝~
穏乃「……」ボ-
憧「どうしたの?寝過ぎ?」
穏乃「あー…。えっと、一度は寝たんだけど深夜に起きちゃって、そこから眠れなくてさ」
穏乃「…その時は、周りはもうだいぶ静かだったんだけど」
憧「ふーん」
穏乃(うう、憧の顔を見づらい…)
穏乃(憧がお客さんを取ってることなんて、とっくに知ってたはずなのに)
穏乃(何で私、こんなに動揺してるんだろ…)
*********
セーラ「で、そっちはどうや?」
竜華「一応返済のメドは立ったで」
セーラ「早いなあ。よかったやん」
竜華「ちょっと事業を整理して、あと古い美術品を売却することにしたんや」
竜華「ただ、その美術品の一つを親戚の人がえらい気に入ってたらしくて…。すっかり機嫌損ねてもうた」
セーラ「そもそも竜華がこさえた借金やないのにな」
竜華「それどころか、その文句言っとる人の相方やで。借金したの」
セーラ「うっわ」
竜華「しかも、ご丁寧に本家の土地を担保に入れてくれてな」
セーラ「何のための借金だったん?」
竜華「名目は事業拡大やったらしいけど。本人が急死してもうたし、わからんな」
セーラ「そうか」
竜華「ただな、その人、どうも花街に通いつめとったらしい」
セーラ「……」
竜華「今は本家も皆イライラしとって…」
セーラ「出掛けられる雰囲気やない、か…」
竜華「今回のことで貯蓄が減ったから、皆に倹約を呼びかけとるしな…。うぅ、怜ぃ~」
セーラ「怜のことは俺が気に掛けとく。手紙くらいなら持ってったるしな」
セーラ「少しでも早く会いに行けるように、竜華は家のことに専念しとき」
竜華「うん…」
待ってた(´・ω・`)ノ
********
美穂子『本当に頂いていいんですか?この髪飾り』
久『ええ。私には色が合わないから』
美穂子『そうでしょうか』
久『美穂子がつけたほうが可愛いわ』
美穂子『…///』
美穂子『自分で買ったものですか?』
久『ううん。前の店にいた時、お客からもらったの』
美穂子『…そうですか』
美穂子『そのお客様は、久さんがいなくなって寂しかったでしょうね』
久『かもね。でも遊女なんて沢山いるから』
美穂子『…そうですね。悲しいですけど、そういうものかもしれません』
久『美穂子は、ここで働くのが辛い?』
美穂子『…時々は。久さんは?』
久『…私は昔から器用だったから。どこでもそれなりにやっていけるんだと思うわ』
久『まあ、もし選べたら遊廓なんて来なかったけどね』クス
美穂子『…やっぱり辛いってことですか?』
久『ううん。辛くはないわ』
久『諦めてしまえば、辛いことなんてそうそうないのよ』
・
・
・
美穂子「……」
コンコン
美穂子「! …どうぞ」
憧「お邪魔しまーす」ガチャ
美穂子「憧ちゃん。どうしたの?」
憧「実は、シズ…穏乃のことで」
美穂子「穏乃ちゃん?」
憧「はい。そろそろ、初見世のお客探しを意識してお披露目していこうかと」
美穂子「あら、もうそんな時期なのね」
憧「まだ一ヶ月以上先なんですけどね。でも当日までにお客が決まらないと困りますから」
美穂子「そうね…」
憧「…ちょっと可哀想な気もするんです。あたしも初見世前は色々考えちゃったし」
美穂子「…ええ」
憧「だけどあたしたちはそれが仕事だから」
美穂子「…憧ちゃんは偉いわね」
憧「え?」
美穂子「………」
美穂子「私も、お客様のお連れの方に声を掛けてみるわね。穏乃ちゃんのこと」
憧「助かります」
美穂子「…辛いこともあるかもしれないけど、その度に落ち込んでたらキリがないわ」
美穂子「きっといいこともあると信じて、前を向いて生きていく。…私たちには、それしかないのよ」
憧「…はい。やっぱり美穂子さんはすごいなぁ」
美穂子「…そんなことないわ」
美穂子(…久さん)
美穂子(あなたは、何を諦めてしまったの…?)
********
~二日後 食堂~
憧「あれっ?」
穏乃「え?…あー!」
ダダッ
穏乃「怜さん!?大丈夫なんですか?」
怜「お、穏乃ちゃんおはよう」
怜「うん、お医者さんからもらった新しい薬が効いてな。おかげさまでほとんど良くなったわ」
穏乃「ほ、本当に…」
怜「? 本当やで」
穏乃「よ、」
怜「?」
穏乃「よかったぁ…」ヘナヘナ
怜「え、何、うちが死ぬとでも思っとったん?」
穏乃「い、いや、そんなんじゃないですけど」
怜「確かに病弱やけど、そんなすぐ死んだりせーへんって」
怜「お稽古もずっと休んでもうてすまんな。誰かに代わりに頼んでたりするん?」
憧「頼んでないです。どうしようかなと迷ってはいたんですけど」
怜「そか。ほな、今日からでも見たるわ」
憧「大丈夫ですか?」
怜「今まで通り、見るのメインで良ければな」
怜「…ただ、正直もっとちゃんとお手本できる人に習ったほうがええと思うわ」
憧「……」
怜「うちとの練習は繋ぎやと思って、他に教えてくれる人を探してみて」
穏乃「わ、私は怜さんのままでも」
憧「わかりました」
穏乃「え」
怜「穏乃ちゃん、うちに気を使うことないんやで」
怜「うちらの芸事は遊びやないんや」
穏乃「だけど……」
憧「他の先生が見つかっても、時々はお部屋に行っていいですか?」
怜「ええで。いつでもおいで」ニコ
怜「穏乃ちゃんも、な?」
穏乃「はい…」
********
郁乃「ねえねえ、『久さん』ってひょっとして、ここの座敷持ちの久ちゃんのこと~?」
美穂子「!?」
美穂子「な、なんで」
郁乃「あれ?覚えとらんの~?」
郁乃「この前、『久さん久さん』ってうわごとみたいに何度も呼んどったで」
美穂子「え…」
郁乃「やっぱりそうか~」
美穂子「…っ」
郁乃「聞くとこによると、すごい子みたいやね~。お喋り上手で床上手、人気もうなぎ登りらしいやん」
郁乃「ね、どんなとこに惚れたん?」
美穂子「………」
郁乃「教えてくれへんの~?」
美穂子「………」
郁乃「店を通さない相手はダメ言うても、遊女同士ならまずばれないだろうし~」
郁乃「ひょっとしてもうエッチとかしてるん?」
美穂子「し、してません!」
郁乃「えー。じゃあ、お願いしてみたら?すぐしてくれるかもよ~?」
美穂子「しません。それに、久さんはそんな人じゃありません」
郁乃「ほな、どんな人?」
美穂子「………」
美穂子「…明るくて、」
郁乃「うん」
美穂子「優しい、人です」
郁乃「……」
郁乃「…美穂子ちゃんってほんま可愛いなぁ」
美穂子「え」
郁乃「それともそういう作戦なん?手練手管に長けた久ちゃんなら、逆に純情な子にグラッとくるんやないか~みたいな?」
美穂子「ち、違います」
郁乃「まあそうやろな」
郁乃「ねえ美穂子ちゃん」
郁乃「あの子を、手に入れたい?」
美穂子「えっ…」
郁乃「自分のものにしたいと思う?」
美穂子「そんな…私はそこまで望んでません」
郁乃「じゃあ何を望んでるん?」
美穂子「……」
郁乃「好きって言ってほしい?抱きしめてほしい?キスしてほしい?」
美穂子「……無理です。そんなの」
郁乃「かもしれんな~」
美穂子「………」
郁乃「でも、ちょっとだけなら?」
美穂子「…?」
郁乃「美穂子ちゃん」
郁乃「久ちゃんをちょっとだけ美穂子ちゃんのものにできるって言うたら、どないする?」
~~~~~~~~
ドンチャンドンチャン
美穂子「………」
トシ「たまにはこういうのもいいだろう?」
豊音「綺麗な人がいっぱいだよー!」
白望「ダルい…」
胡桃(教え子を遊廓に連れてくるとか…)
穏乃「失礼致します」トクトク
塞「あ、ありがとう」
エイスリン(ヒサ、イナイ…)キョロキョロ
トシ「実はエイスリンは前にも来たことがあるんだよ」
白望「え、初耳…」
エイスリン「!」ドキッ
豊音「えー?なんでエイちゃんだけー?」
トシ「留学の思い出作りにと思って勧めたのさ」
胡桃(意味わかんない!)
美穂子「………」ボ-
穏乃(美穂子さんどうしたんだろ?)
憧(シズのこと紹介してくれるって約束だったのに、忘れてるのかな~…)
憧(もうあたしから催促しちゃおうか…)ヤキモキ
塞「あの」
憧「あ、はい?」
塞「えっと…あなたとそっちの子も、ここで働いてるんですよね?」
憧「え、ああはい、もちろん」
塞「そうですか…」
憧(? まあいいや、チャンス!)
憧「その子は穏乃っていうんですけど」
憧「実は今、初見世のお客様を探してるんですよ~」
塞「え」
穏乃「え」
トシ「塞、興味あるのかい?」
塞「えっ、いやいや、そんな」アタフタ
憧(ほら、シズ!こっち!)テマネキ
穏乃「へっ? あ、はい」スタスタ
穏乃「ど、どうも…」
豊音「わー、可愛いねー」
憧「そうでしょう?」ニコニコ
穏乃「ふえっ!?」
憧「不束者ですけど、芸事も頑張って練習してるんですよー」
トシ「じゃあ折角だし、見せてもらおうか」
穏乃「は、はいっ!」
豊音「おー!楽しみだよー」
白望「……」
今確認したら、いくのんの一人称は「私」でしたね…。
すみません、勘違いしてました。
~~~~~~~~
テクテク
穏乃「はーー疲れたぁー」
憧「あれくらいで何言ってんの。早く終わったほうでしょーが」
穏乃「そうだけど、あんなに注目されたの初めてだし…」
憧「甘い。初見世のお客が決まるまではガンガン押し出すからね!」
穏乃「えぇー!?」
憧「えーじゃないの!」
穏乃「うう、憧が厳しい…」
憧「…仕方ないのよ。初見世の日取りは店から決められちゃうし」
憧「お客が決まってなかったら、当日に必死で探す羽目になるんだよ?」
穏乃「うん…」
穏乃「私のため、なんだよな…。文句言ってごめん」
憧「…ううん」
憧「あ、ここ怜さんの部屋だ」
穏乃「明かりがついてる。もう今日からお客取ってるのかな?」
憧「どうだったかなー。下に降りて確認すればわかるけど…」
穏乃「人に訊くの?」
憧「いや、今誰にお客がついてるかわかるように、一覧表みたいなのがあるんだよ」
穏乃「へー。あ、そういえば見たことあるかも。名前書いた札がいっぱい下がってるやつ?」
憧「そうそれ」
穏乃「だけど、あれ店の入り口だよね。お客さんと鉢合わせしても気まずいし…」
ガチャ
憧・穏乃「え?」
セーラ「あー、おったおった。この子らか?」
怜「そうやけど…いきなり開けるから面喰らっとるやん」
セーラ「あはは、悪いなぁ。仕事終わったとこか?」
憧「え、まあ…」
怜「ええって、セーラ。寝かしてやり」
セーラ「まあまあ、すぐやから」
穏乃「??」
セーラ「二人とも寄ってってくれへん?食いもんあるでー」
・
・
・
怜「疲れとんのに悪いな」
憧「いや…というかあたしたちこそお邪魔していいんですか?」
セーラ「ええってええって!」
怜「あとそいつ馴れ馴れしゅーてごめんな」
セーラ「そーそーごめんな…って、なんでやねん!」
穏乃「あ、あはは?」
セーラ「まあその辺座っとき。茶でも淹れたるわ」
憧「あ、あたしやります」
セーラ「そか?おおきに」
穏乃「お菓子……!」キラキラ
セーラ「好きに食べ。元々あんたらの分もあるんや」
穏乃「え?」
セーラ「怜が世話になっとるみたいやからなー」
穏乃「えっ、いやいや!それは私たちのほうで」
怜「それにしたって多すぎや。こんなん食べきれんて」
セーラ「日持ちするし平気やろ」
穏乃(もう食べていいのかな)
憧「お茶どうぞ」
怜「おおきに」
モグモグ
怜「これおいしいな」
セーラ「せやろ?」
穏乃「…ねえ憧、この人がひょっとして怜さんの恋人?」モグモグ ヒソヒソ
憧「違ったような気がするけど…近くで見たことないからなー」ヒソヒソ
セーラ「ちゃうちゃう」
穏乃・憧「」ギクッ
セーラ「俺は怜の幼馴染みや。江口セーラ。よろしゅう」
憧「…憧です。こっちは穏乃」
穏乃「ど、どうも」ペコ
セーラ「ああ。怜から聞いとってな、いっぺん顔見てみたかったんや。付き合わせてすまんな」
怜「本当いい迷惑やな」
穏乃「いやそんな」モグモグ
セーラ「まあ、好きなだけ菓子食っていき。何なら部屋に持って帰ってもええし」
憧「じゃあ、あたしは持っていきます。今食べたら太るし」
穏乃「んっ?」モグモグ
憧「シズはいいよもう」
怜「うちも食べとるしな」
セーラ「怜はもうちょい太り。ちょっと見ない間にやつれとるやん」
憧「怜さん、しばらく寝込んでて…」
セーラ「らしいな。こいつ無理しとらんかったか?」
怜「しとらんって」
セーラ「ほんまか~?」
穏乃「お二人は仲良いんですね」
セーラ「まあな。ちょくちょく来とるから、何か食いたいもんとかあったら言えよ。買ってきたるわ」
怜「食べ物限定かいな」
セーラ「アクセサリーとかわからんし」
憧「…ふぁ」
穏乃「へふいほ?(眠いの?)」モグモグ
怜「眠いんか?」
憧「あ、いや」
セーラ「ええよ、引き止めてすまんな。好きな菓子取ってもう帰り」
憧(子供扱い…?)
穏乃「ごくん…。いいんですかっ!?」
怜「いくらでも持ってき~」
・
・
・
憧「じゃあ、おやすみなさい」
穏乃「おやすみなさい!ご馳走さまでした!」
怜「おやすみ」
セーラ「じゃあな~」
パタン
セーラ「…さて、お子様たちも帰ったことやし」
怜「なんや気持ち悪い。それにセーラも泊まりじゃないやろ」
セーラ「帰る前に話があんねん」
怜「なんや?」
セーラ「……」
怜「? ひょっとして竜華のこと?なんかマズイん?」
セーラ「ちゃうけど、関係はある」
怜「何なん?」
セーラ「…あいつの家のゴタゴタは多分まだ当分続く」
セーラ「せやから、考えたんや」
怜「?」
セーラ「お前に提案がある」
セーラ「怜、」
セーラ「…俺と一緒に来ーへんか?」ニッ
********
~次の夜 久の部屋~
戒能「これ、プレゼント」スッ
久「あら、嬉しい。何ですか?」
久(包みの大きさからして衣類ね。使えるものだといいな)
久(戒能さんは表情が薄いから、何考えてるのか読みにくいのよねー)
久(あんまり執着もない感じだし、ひょっとしたらもう来ないかもと思ったんだけど)
久(一週間ちょっとでまた来て、しかもおみやげ付き…。意外と好かれてるのかしら)
戒能「開けてみて」
久「はい」ガサガサ
久(…やっぱり。でもこれは…)
戒能「チープで悪いけど」
久(どう見ても安くないわよ…)
戒能「気に入らない?」
久「いえ、素敵です」
久(本当何なんだろこの人。私より少し年上くらいにしか見えないのに、それにしてはお金もあるし)
久(美人だし、スタイル抜群だし、…ちょっと癪なくらい上手かったし)
戒能「この前着けてたイヤリングに合うと思って」ニコ
久「……」
戒能「どうしたの?」
久「…そこは、私に似合うって言ってくださるところよ?」
戒能「ソーリー」
久「いえ、ありがとうございます。着てみましょうか?」
戒能「うん。サイズが合わなかったら、直してもらうから」
久「……」
久(本当、変な人)
久(もう考えるだけ無駄かしら。どうせ私がすることは同じだし)
久(しばらくぶりの床上手なお客なんだもの、楽しく遊んじゃいましょう)
久「……」スッ
パチン
シュル、パサッ
久「……」
戒能「?」
久「……」ヒタヒタ
戒能「久?」
久「……」ギュ
戒能「着てくれないの?」
久「後で」
戒能「今じゃだめ?」
久「…おかしな人ですね。こんなに露骨に誘うことって、あんまり無いんですけど」
戒能「やっぱり誘ってるんだ」
久「馬鹿にしてます?」
戒能「まさか」
久「…そうですか。でも流石に私も、引っ込みがつきませんよ」
戒能「……」
久「?」
戒能「…せっかくプレゼント持ってきたのに…」ボソッ
久「…………」
久「…ぷっ」
久「あはははっ、ふ、あはは」
戒能「?」
久「く、ふふふ…」ムギュ
久「そんな、子供じゃないんだから…ふふ」
久「あはは、あーもう、勘弁して。窒息する」
戒能「私の胸に顔埋めてるせいだよねそれ」
久「ナチュラルに巨乳アピールもやめてください」
戒能「ええー」
久「服は最後に着ます。大絶賛して大喜びしますから。いいでしょう?」ニコ
戒能「…はあ。あなたもさっきから子供っぽいね」
久「あら、もう大人ですよ?」
戒能「はいはい」
ドサッ
戒能「…」チュ
久「ん…」
久「んぅ…ふ…」
戒能「久、」ペロ
久「んっ///」
ピチャ、ピチャ
久「ふっ…う」フルフル
久(音が…)
久「んぅ…」
戒能「ん」チュル
久「あ、はぅ…」
久(気持ち、いい…)
久(リードしたがる人って、胸と下ばっかりグリグリしてくることが多いけど)
久(耳とか首筋とか、優しくしてもらえるだけでこんなに、いいんだ…)
戒能「考えごと?」
久「ふふ、ごめんなさい。…ねえ、戒能さんってもてるでしょ」
戒能「急にどうしたの」
久「なんとなく思っただけですよ」
久「ね、もっとして?」
戒能「…悪い子」チュ
久「あ…」
久「あんっ…」
久(恥ずかしいくらい感じちゃう…)
久(下もすごく濡れてる、わよね…)
久(でも、まだ…)
久(時間はいつも限られてるけど、それでも、もっとゆっくりしてほしい)
久(勿体無いから、もっとゆっくり…)
久「あっ、あぁ、…ふふっ」
久(私ったら、ばかみたい)
久「これって、夢、なのかしら…」
戒能「?」
久「だって、よすぎる…」
戒能「……」
久「…?」トロン
戒能「…久」
久「あ、止めちゃだめ…」ギュ
グッ
久「え…? ーんっ」
戒能「んむ…ちゅ…」
久「ふ…ぅ…」
久(熱い…)
********
~翌朝~
久「……ふあぁ」
久(戒能さんを送ってきたけど、なんだか今さら悔しくなってきたわ…)
久(多分私が先に寝ちゃった、っていうかほぼ気絶しちゃったし)
久(あらぬこと口走ったような気もする…)
久(声もちょっと掠れてるかしら)
久「………」
久(今度来たら仕返ししてやるんだから!)
久「…とりあえず部屋に帰ってもう一眠りしましょう」テクテク
ザワザワ
久(?)
久「…ねえ、何かあったの?」
憧「あ、久さん…。それが、美穂子さんが店長に怒られてたみたいで」
久「え?」
憧「ここのところ仕事中に上の空で、ゆうべのお客から苦情が出たらしいんです」
久「…まさか、仕置き部屋行き?」
憧「いえ、そこまではなかったみたいですけど」
久「そう…」ホッ
~~~~~~~~
美穂子「ぐすっ…」
コンコン
久『美穂子、私。久だけど』
美穂子「!」
久『入ってもいい?』
美穂子「」ワタワタ
久『…開けるわよ』
ガチャ
美穂子「あ…」
久「…やっぱり泣いてた」
久「目が充血してるわよ?せっかく綺麗なのに」スッ
美穂子「…///」
久「叱られたんだって?よしよし、気にしすぎないのよ?」ナデナデ
美穂子「久さん…」
久「…好きな人でもできた?」
美穂子「!?///」カアァ
久「…そうなのね」
美穂子「ど、どうして」
久「急に仕事に身が入らなくなる子って、大体そうだもの」
美穂子「………」ジワ
久「だけど美穂子なら可愛いから、身請けも夢じゃないかもね」
美穂子「え…」
久「とはいえ、一々怒られてちゃ身が持たないわよ」
美穂子「…違うんです」
久「?」
美穂子「…………お客様じゃ、ないんです…」
久「………」
美穂子「ぐすっ…うぇ…」
久「…美穂子」
ギュッ
美穂子「ひ、久さん?///」
久「…美穂子。悪いことは言わないわ」
久「やめておきなさい」
美穂子「えっ…?」
久「…次こんなことがあれば、窓もない仕置部屋に何日も閉じ込められるのよ。それに、もし逢引が見つかればそれどころじゃない」
久「運良く隠れおおせたとしても、年季明けまであと何年?」
久「言っちゃ悪いけど、十中八九痛い目を見るわよ」
美穂子「ち、違…」
久「違わないわ」
久「…辛いなら私を恨んでくれていい」
久「前の店で私を可愛がってくれた先輩は、恋人に裏切られて身を投げた」
久「勝手かもしれないけど私、あなたが破滅するところは見たくないのよ…」
美穂子「久、さん…」
美穂子「違うんです、…違うんです」
美穂子「ちがう…」
美穂子「う、うく、うぇ」
美穂子「うわあああぁん…」
********
靖子「申し訳ありません。美穂子は体調を崩していまして、今日は見世に出ていないんです」
咏「え~。そんなに悪いんだ?」
靖子「ご心配には及びませんが、迷惑を掛けてしまうかもしれないので…」
咏「しょうがないねぃ。また来るよ」
靖子「はい、お待ちしております」
靖子(ふぅ。美穂子の馴染みは店にとっても上客だから、困るんだがな…)
靖子(しかし一昨日に上の空だったのも体調不良のせいだったと久に話したらしいし、休ませて回復を待つしかないか)
~~~~~~~~
美穂子「あっ、あっ!」ムニュムニュ
美穂子「あん…久さんっ」
美穂子「あっ…もっとぉ」
美穂子(私、もうこんなに溢れちゃってます…)
美穂子(恥ずかしいけど、見てください)
美穂子「あっ…激しっ」クチュクチュ
美穂子「もうイっちゃいます…!」クチュクチュ
美穂子「ふ、あああああぁ!」ビクンビクン
美穂子「はあ、はぁ…久さん…」
美穂子(こんなっ、いやらしい子で、ごめんなさい…)ハァハァ
美穂子(でも、久さんにだけ、なんですよ…)ハァハァ
美穂子(…全部、久さんだけだったら良かったのに…)
美穂子「………」
美穂子「…久さん、私まだ足りません……」
美穂子「もっと欲しいです…」
美穂子「十分濡れてますから、ほら…」ヌプ
美穂子「あ、う」ズッ
美穂子「う…あ、はあぁ~」ズププ
美穂子「…はぁ、はぁ」
美穂子(指の付け根まで、入っちゃった…///)
美穂子「久さん…っ」
美穂子「…あっ、そんな、いきなりっ」グプグプ
美穂子「いっ、奥っ、当たって…」
美穂子「だ、大丈夫ですっ。すごいっ…あっ」コリコリ
美穂子(私の中、久さんでいっぱいですっ)ガクガク
美穂子「…あ、あ、あ!いくっ!」ビビクン
美穂子「ひゃ、あああ…止まらな…」ビクンビクン
美穂子「は、あああ…」
美穂子「はっ、は、あ…」グチュ
美穂子「っ、」
美穂子「や、そんな…いったばっかりなのにぃ」グチュグチュ
美穂子「あ、だめですっ、何か、」グチュグチュ
美穂子(で、出ちゃう!出ちゃいます!)グチュグチュ
美穂子「あ!あ!」プシッ、プシィッ
美穂子「ああああああああ!!」プシャアアァ
・
・
・
美穂子(シーツが、ビショビショだわ…)
美穂子「………久さん」
美穂子(私なんて、あなたの眼中にもないのね…)
美穂子(優しくされて、舞い上がってしまっていた)
美穂子(好きになってもらうなんて無理だと言ったけど、本当はすごく期待してた)
美穂子「……」ジワ
美穂子「………ああ…」クチュ
クチュックチュッ
美穂子(私、何やってるのかしら…)クチュクチュ
美穂子(昨日からずっとこんな…)クチュクチュ
美穂子(…もう、ここも痛いくらいなのに)クチュクチュ
美穂子(こういうことするの、嫌だったはずなのに)クチュクチュ
美穂子「…あっ、はあ…」ウズッ
美穂子(こんなことしてたって、何にもならない)ヌプ
美穂子(でも…じゃあどうすればいいの?)ヌププ
美穂子(諦めなきゃいけないの?)ヌププ
美穂子「ふっ…あ…はんっ」グチュ
美穂子(終わっちゃうんだ)グチュッグチュッ
美穂子(終わっちゃうんだ
…)グチュッ
美穂子(………)グチュッグチュッ
美穂子(久さん)グチュグチュ
美穂子(久さん、久さん久さん久さん久さん久さん)グチュグチュ
美穂子「~~~!!」ビクンビクン
『美穂子ちゃん』
『久ちゃんをちょっとだけ美穂子ちゃんのものにできるって言うたら、どないする?』
~~~~~~~~~~~~
怜『ごめんな、竜華』
竜華『え?』
怜『こんなとこまで、しょっちゅう来てもらって…お金もかかるのに』
竜華『何言ってるんや。私が来たいから来とるんやで』
怜『家の人に悪く思われてたりせーへん?』
竜華『平気やって。もう子供じゃないんだから』
怜『ならええけど…』
竜華『ねえ、怜』
怜『ん?』
竜華『私、早く一人前になって、仕事頑張って、誰にも文句言われん立場になる』
竜華『そしたら、怜のこと迎えにくるから』
怜『竜華…』
竜華『だからそれまで、待っててくれる?』
~~~~~~~~~~~~~~
~怜の部屋~
怜「けほっ、ごほっ」
怜「けほっ…」
怜(今日は仕事休んで正解やったな…)
怜(治ったばっかりやのに…体力落ちとるんかなぁ)
怜(うち、どうなるんやろ)
怜(これまで自分なりに頑張ってきたつもりやけど…)
怜「…っ、げほっげほっ!」
怜「ごほっ、ごほっ…。はぁっ、」
怜(竜華、苦しいよ、りゅーか)
怜(…売られてからそれなりに苦労もして、少しは強くなったつもりやった)
怜(だけど…ごめん、竜華)
怜(結局昔の、弱虫なうちのまんまや…)
怜(ずっと待っていたかった)
怜(いつまででも、待ってるつもりやった)
怜(だけど……)
怜「ちょっと、疲れてもうたな…」
*************
~同じ頃 久の座敷~
久「おつかれ。頑張ったわね」
穏乃「あははは…もう何がなんだか」グッタリ
久「なーに言ってんの。妬けちゃうくらいモテモテだったじゃない」
憧(久さんがお客を煽りまくったからだけどね)
穏乃「…無事にお客さん決まりますかね」
久「なんとかなるでしょ。それに私、穏乃ちゃんは人気出ると思ってるわよ?」
穏乃「えっ? いや、私は憧みたいに垢抜けてないし…」
久「確かに憧ちゃんとはタイプが違うけど、好みなんて人それぞれだもの」
久「今日のお客に聞いてみたら、穏乃ちゃんは素朴で感じがいいって言ってたわ」
穏乃「ほ、本当ですか?」
久「もち」ニコ
穏乃「わわわ///」
憧「……」
憧「…そうだ、今日見てて思ったんですけど、久さんってお客によって少し雰囲気とか、受け答えの仕方が変わりますよね」
久「ん?そう思う?」
憧「はい。…それがコツなんですか?」
久「あら、何のコツかしら?」
憧「………お客を惹きつける…?」
久「…ふふっ」
久「でも実はあんまり意識してないのよ」
憧「そうなんですか?」
久「ええ。話してると相手が自分に何を求めてるのか何となくわかって、ついそれに合わせちゃうのよね」
穏乃「す、すごい…」
久「そんなことないわ。わかりにくい人もたまにいるし、…わかっても応えてあげられないこともある」
穏乃「難しいんですね」
久「かもね」
憧「ちなみに、わかるときは何でわかるんですか?」
久「そうねえ、ちょっと説明しにくいけど…」
穏乃(憧は勉強熱心だなあ)
穏乃(久さんもプロって感じだし)
穏乃(………)
穏乃(私はまだ、何も知らないんだ……)
***************
~翌朝~
タタタッ
美穂子「久さん、おはようございます!」ニコニコ
久「美穂子…。おはよう。その、もう大丈夫なの?」
美穂子「はい!ご心配かけてすみません」ニコニコ
久「…?」
美穂子「これからお食事なら、ご一緒してもいいですか?」
久「ええ、もちろん」
美穂子「じゃあ私、久さんの分もお味噌汁もらってきますね」タタッ
久「あ、ありがとう」
久(元気になったのはいいけど、なんだか急すぎるような…。いまいち腑に落ちないわね)
・
・
・
美穂子「いただきます」
久「…いただきます」
モグモグ
久「ねえ、美穂子」
美穂子「久さんは、食べ終わったらお部屋に戻りますか?」
久「戻るけど…それが何か?」
美穂子「いいえ、訊いてみただけです」
久「どこかに行きたいの?」
美穂子「いいえ、訊いてみただけです」
久「…美穂子、あなた本当に大丈夫?」
美穂子「何がですか?」ニコ
久「いえ…大丈夫ならいいの」
モグモグ
久(…やっぱり何か、ものすごく違和感がある)
久(どうしてかしら…)
モグモグ
久(美穂子が仕事に集中できなかったのは多分私のせい)
久(これがその延長なら、私がなんとかしたい)
久(だけど…)スルッ
カラン
美穂子「あら、お箸が…」ガタッ
久「あ、平気よ。自分で拾うわ」スッ
美穂子「じゃあ私、代わりの取ってきますね」
久「あはは、そんなに気を遣わ…」
久(…あれ?)カタ
久(私、手が、震えて…)カタカタ
美穂子「?どうかしましたか?」
久「い、いえ。何も」グッ
美穂子「はい、新しいお箸です」
久「…ありがとう」
久(どういうこと?)
久(………)
美穂子「どうしたんですか?」
久「…っ。ごめんなさい、ぼうっとしちゃって」
美穂子「珍しいですね。私は時々ありますけど」
久「そうね…」
久(…何もわからないんじゃ仕方ないわ。とりあえず早く食べて退散しましょう)ズッ
久(…?)
久(このお味噌汁、苦いような…)
美穂子「どうしたんですか?」
久「いえ…」
美穂子「ご飯、おいしいですね」
久「ええ…」
~~~~~~~~~~~~~~
久「じゃあね」
美穂子「はい」ニコ
パタン
久「はぁー」ストン
久(何だったのかしら…気のせいならいいけど…)
久(でも私、自分の直感はけっこうアテにしてるのよね)
久「………」
久(ゆみが来るまで、まだ時間あるわね)
久(なんだか疲れちゃった…)フラフラ
ドサッ
久(ちょっとだけ、寝ようかな…)
久「ふあ…」
・
・
・
ガチャ
久「」スウスウ
美穂子「……………久さん」
キャラの誕生日と身長が公開されましたね。
すばらですが、阿知賀勢、特にシズアコの小ささにびっくりしました。
スッ
美穂子「久さん」ピト
久「」スウスウ
美穂子「おやすみですか…?」ツッ…
久「」スウスウ
美穂子「寝顔、初めて見ました」
美穂子(かわいい…)
美穂子(だけど少し顔色が悪いかも)
美穂子(さっきも気分が優れないようだったし、風邪かしら?心配だわ)
美穂子(ああ、でもやっぱりきれい…)
美穂子「はぁ…っ」
美穂子(見ているだけで充分かと思っていたけれど…)ウズウズ
クチュッ
美穂子(私、もう…)
クチュクチュ
美穂子「あっ…は…」
美穂子(久さん…久さん久さん)
美穂子(………)
美穂子「服、失礼しますね…」スッ
スルッ
美穂子「わあ…」ドキッ
美穂(久さんの素肌…すごい、眩しいくらいだわ…)ドキドキ
美穂子(すべすべ…)ツゥ-
美穂子(細いけど、柔らかい…)ムニュムニュ
美穂子「あ…ん」ブルッ
美穂子「ふ…」クチュ
美穂子「あ、あ、ああっ」クチュクチュ
美穂子「あっ、ああああ!」ビクン!
美穂子「はあ、はあ…」
美穂子(もうイっちゃった…///)
美穂子「久さん…」ハァハァ
美穂子(もう我慢できない…)スッ
美穂子(きれいな脚、)
グイッ
美穂子「あ、ふあぁ…」クラクラ
美穂子(久さんのは、こんなふうなんだ…)ドキドキ
美穂子(ちょっと不思議…でもすごい、きれい、すごい)ソ-ッ
クニッ
美穂(全然濡れてないわ)クニュクニュ
美穂子(眠っている時って、そういうものなのかしら)クニュクニュ
美穂子(ああでも、私はこの前久さんの夢を見て…朝起きたら下着がびしょびしょになっていたっけ)
美穂子「……」
美穂子「久さんは、どんな人なら好きになるんですか?」
美穂子(いつも私だけが熱を上げて)
美穂子(浮かされて、一人で夢を見て)
美穂子(…変ね、いま眠っているのは久さんのほうなのに)
美穂子(それとも私が眠っているのかしら)
美穂子「ああ…」
夢の中なら、こわいことなんて何もない。
久さんの上に跨って、ゆっくりと覆い被さった。横たわる体に抱きつく。女同士の身体は柔らかく押し合うけれど、それでいてどこまでも別物だった。
久さんの手を取って自分の乳房に導き、彼女の掌で包むように揉みしだく。
それから濡れそぼった私の秘部へ。けれども自分のものでない指を繊細に動かすのは至難の技で、結局そこを数回なぞっただけで諦めた。
久さんの脚の間は相変わらず乾いていた。指を押し当てると柔らかい。
その感触につられて、小さな入り口に中指を挿し入れた。
「う…」
久さんが小さく呻いた。苦しいのかもしれない。しばらく動きを止めて見守ったが、彼女の瞼は閉じたままだった。
ゆっくりと指を進める。彼女の中は温かく、湿り気を帯びていた。
「久、さん……」
彼女の内側で、私は急にどうしていいかわからなくなった。助けを求めて彼女の名前を呼んだ。彼女は眠っている。眠らせたのは私。
コンコン
美穂子「!?」ビクッ
ゆみ『久、来たぞ』
ゆみ『…いないのか?』
ゆみ『……?』
ゆみ『……すまない、入るぞ』
ガチャッ
美穂子「………」
ゆみ「? 君は…」ハッ
ゆみ「ひ、久?」
久「」
ゆみ「なんだ、一体何が」
美穂子「あ、あ…」ガクガク
ゆみ「おい、久はどうしたんだ。君は何故ここに」
美穂子「あ…ごめ、なさ」
ゆみ「久に、何をした?」
美穂子「」ビクッ
ゆみ「おい!」
ゆみ「久、しっかりしろ!…くっ」タッ
ゆみ「モモ!来てくれ、モモ!!」
美穂子「」ガタガタ
ゆみ「おい、久に何を」
桃子「先輩っ?どうしたんすか?」ユラリ
ゆみ「…っ。すまない、ここの店長か誰かを呼んできてくれ。急いで」
桃子「えっ、わ、わかったっす!」ダッ
美穂子「」ガタガタ
ゆみ「……」
ゆみ(逃げる様子はないか…)
久「…」
ゆみ(呼吸は正常…顔色は悪いが、眠っているだけか?)
ゆみ(服がかなり乱れている)
ゆみ(………)
ゆみ(もうすぐモモが人を連れて戻ってくる)
ゆみ(現場を保全すべきかもしれないが…久はこんな姿を見られたくないだろうな。簡単に直しておこう)スッ
~~~~~~~~~~~~~~~~
ゆみ(その後、店長がやって来た)
ゆみ(久の部屋にいた遊女…美穂子は、客が忘れていった睡眠薬を久の食事に混ぜたと白状し、そのまま仕置部屋に送られた)
ゆみ(窓も明かりもないその部屋に、手を縛られた上で閉じこめられるらしい)
ゆみ(前例がないことなので、どのくらいの期間になるかはまだわからないそうだ)
ゆみ(久はその後予想よりも早く目を覚ましたが、睡眠薬が体に合わなかったのか、ひとしきり嘔吐した)
ゆみ(落ち着いてから、久は自分の身に起こったことを聞かされ、しばらく仕事を休んでもいいと店長から言われたのだが)
久「必要ありません」
ゆみ「おい、そんなに無理すること…」
久「無理なんてしてないわ」
ゆみ「…お前、自分が何されたかわかっているのか?」
久「わかってるわよ。でも、だから何?」
久「私がいつも客としてることと同じよ」
ゆみ「…久」
久「ほっといて」
ゆみ(蒼白な顔で、彼女はきっぱりとそう言った)
****************
タタタ…
バン!!
穏乃「怜さん!!」
怜「わっ」
穏乃「身請け決まったってホントですか!?」
怜「…ああ、ほんまや」
穏乃「わー!よかった!おめでとうございます!!」
憧「す、すいませんいきなり…シズったら興奮しちゃって」
憧「でも本当によかった!おめでとうございます」
怜「おおきに」
穏乃「うう、よかったよー」グスッ
憧「ちょ、なに泣いてんのよ」
穏乃「だってー…」グスグス
憧「もう…」クスッ
穏乃「怜さん、幸せになってくださいね!」
怜「うん」
穏乃「すごいなあ。恋人さんもきっとすごく喜んでますよね」
怜「……」
憧「怜さん?」
怜「…ちゃうよ」
穏乃・憧「え?」
怜「うち、別の人に身請けされるんや」
穏乃「へ?」
憧「どういうことですか…?」
怜「そのまんまの意味やで」
憧「まさか、無理矢理…」
怜「いや、うちが決めたことや」
憧「……なん、で」
穏乃(憧…?)
怜「だってうち病弱やし、もうここで働くのもキツくてな」
憧「そんな…」
憧「それで、いいんですか…?」ワナワナ
怜「…別に知らん人のとこ行くんちゃうし、ここを出てしまえばこっちのもんやろ」
怜「二人には沢山助けてもろーたな。ほんま、感謝しとる」
穏乃「いえ…」
憧「……………」
怜「ちゅーてもすぐに出て行くわけやないけど。向こうさんの準備ができるまで、もうしばらく…」
憧「……」ダッ
穏乃「あ、憧!?待って…」
穏乃「すみません怜さん、失礼します!」
怜「……」
・
・
・
ダダダ
穏乃「憧!」ガシッ
憧「…」
穏乃「いきなりどうしたんだよ!」
憧「……」
穏乃「…怜さんが恋人じゃない人を選んだから、怒ってるのか?」
憧「………」
穏乃「怜さんは体が弱いし…仕方なかったんだよ。きっとすごく悩んで」
憧「うるさい」
穏乃「え…」
憧「シズにはわかんないよ。あたしの気持ち」
穏乃「憧…」
憧「…部屋で寝る。今日は仕事いいから、入ってこないで」ガチャ
穏乃「待っ…」
パタン…
穏乃「憧……」
****************
~花街 大門(入口)付近~
白望「…何してるの?」
塞「うわっ」ビクッ
塞「シロ!?どうしてここに」
白望「…塞が最近花街に通ってるって、胡桃が心配してた」
塞「え、あ~…」
白望「でも私は近くにお菓子買いに来たから…」
塞「ついでなんだ!?」ガ-ン
塞「まあシロが待っててくれただけでも十分すごいか…」
白望「ダルくて動けない…」
塞「…………」
白望「塞は、この前の店…?」
塞「う、うん。でも遊んでるんじゃないから」
白望「?」
塞「熊倉先生のお遣いなの。中に知り合いが何人かいるらしくて」
白望「前は行ってなかったよね」
塞「」ギクッ
白望「…この前の見習いの子?」
塞「………」
白望「………」
塞「………………うん」
白望「初客に…?」
塞「そ、れは…まだ決めてないわ」
白望「…」
塞「先生は、もしその気になったら口利きしてくれるって」
白望「その代わりにお遣い?」
塞「うん…」
塞「あのさ、シロ」
白望「……」クルッ
塞「へ?」
白望「ダルいから先帰る…」
塞「は?」
白望「また後で…」
塞「いや、止めに来たんじゃないの?」
白望「別に…」
塞「………」
白望「…ちゃんと帰ってきてね」
塞「…うん」
白望「……」テクテク
塞「…………」
****************
~憧の部屋~
憧(…仕方なかった、なんて)
憧「わかってるわよ、それくらい…」
憧(美穂子さんはすごく良い人だし、久さんも最初は変な噂があったけど、仕事を見てるうちにかっこいいなって思った)
憧(…でも、あたしが一番好きなのは怜さんだった)
憧(怜さんと恋人さんが、二人でいるのが好きだった)
憧(並んでるところを二、三回、遠くから見ただけだったけど)
憧(…あたしの理想、だった)
憧「………」ゴロ
憧「八つ当たり、だよね…」
憧「シズに謝らないと」
憧「怜さんのことも、笑って送り出してあげ、」ジワッ
憧「あ、あれ…」ゴシゴシ
憧(あたし、何やってんだろ)
憧(怜さんは怜さん、あたしはあたしじゃん)
憧(都合の良い夢よりも、目の前の仕事)
憧(それで、一日も早くここから…)
憧(…………)
憧(あと何年も、こんな…)
トントン
憧「!」
穏乃『憧?…穏乃だけど、そのー、起きてる?』
憧「……」
穏乃『寝てるかな…』
憧「………」スクッ テクテク
ガチャ
穏乃「あ…」
憧「…何」
憧(う…我ながら感じ悪い…)
穏乃「えっと、さっきそこに小物屋さんが来てて、っていうか美穂子さんのとこに来たみたいなんだけど、留守だったらしくてさ」
穏乃「それで通りがかったら、ついでだからって商品見せてくれて」
穏乃「私こういうのよくわかんないし、お金もあんまりなかったから、気に入らないかもしれないけど」
穏乃「これ、憧に」スッ
憧「え…」
憧(花の髪飾り…)
穏乃「む、無理に使わなくていいからさ!」
憧「…なんで」
穏乃「え?」
憧「なんで、あたしに?」
穏乃「…あー、いや、手ぶらじゃちょっと話しかけにくいなーと思って」アハハ
憧「……ごめん」
穏乃「私こそゴメン。憧に頼ってばっかりだったよね」
憧(シズはまだ馴染み客がいないから、自分のお金なんてほとんどない)
憧(高そうなものでは全然ないけど、それでも…)
憧(…………)
穏乃「…やっぱそれ、気に入らない?安っぽいかな?」
憧「…シズのぶんは?」
穏乃「お金が足りなかった」アハハ
憧「…自分のを先に買いなさいよ。全然持ってなくて、あたしと淡から借りてるくせに」
穏乃「うっ!」
憧「まったく…」
憧「じゃあシズのぶんは、あたしが今度買ってあげる」
穏乃「えっ?」
憧「ちゃんと合うやつ見繕ってあげるわ」
穏乃「いや、大丈夫だよそんな!」
憧「何言ってんの。ま、一つだけね。あとは自分で何とかすること!」
穏乃「憧…」
穏乃「う、うん!頑張る!」
憧(…頑張る、か)
憧(…シズは自覚してないみたいだけど、うちの店は、外見の悪い子は置かない)
憧(店に買われたってことは、合格したってこと)
憧(他人の性欲の対象たりうる、それがあたしたちがここにいる条件)
憧(芸事も話術も、結局はそのためでしかない)
憧(あたしたちは…)
穏乃「どうしたの?」
憧「…なんでもない」
憧(シズだって遠からず気づくはず)
憧(そうして本当に、シズはあたしたちの仲間になる)
憧(でも……)
穏乃「憧ー?」
憧「…髪飾り、いらないかな」
穏乃「え、えぇ?」
憧「髪なんて適当に括っちゃってさ、服もそんな、裾の長いやつじゃなくて」
憧「山の中とか、走り回っちゃったりして…そっちの方が似合うよ。シズには」
穏乃「…まあ実際、家にいた頃はそんな感じだったけど」
穏乃「でもここじゃそんな訳にはいかないだろ?」
憧「あはは、そうだよね」
穏乃「憧って意外と変なこと言うなー」
憧「何よ、髪飾り買うのやめるわよ?」
穏乃「ちょ、結局どっちだよ!」
憧「あはははっ」
****************
~その夜 久の部屋~
洋榎「…で、そん時にうちがビシーッと!」
久「ふふっ、かっこいいですね」
洋榎「せやろーさすがやろー」
洋榎「でもってな…ひゃっ!?」ビクッ
洋榎「なっ、なんやねんいきなり!」
久「ちょっと舐めただけじゃない。声はかわいいわね」
洋榎「かわ…、ふ、普通せーへんわ!///」
久「洋榎さんのうなじがすごく綺麗だから、ついね」ペロ
洋榎「ふっ…、やめてーな…」フルフル
久「え?今日はお友達と一緒じゃないから、こういうつもりかと思ったんだけど」
洋榎「……///」カ-ッ
久「そうでしょ?」クスッ
洋榎「そ、それにしたって急すぎやろ…。まだ来たばっかやで?」
久「そうね…。もっとムードとか欲しかったかしら」
洋榎「いや、そんなんやないけど…」
久「……」
久「でもごめんなさい。私、もう抑えられないの」サワ…
洋榎「んっ…。ひ、久?なんかお前、今日ちょっとおかしいで?」
久「…それだけあなたのことが欲しいのよ」
久「ね、一緒におかしくなって…?」
洋榎「あ…///」
「んっ、あ…はぁっ、」
久(ちょろいわ)
洋榎「は…んっ…」
久「声、殺さないで?」
洋榎「あ…///」
久「ちゃんと聞かせて…」ツゥ-
洋榎「あっ!」
久「…かわいい」
久「ねえ、一人ですることってある?」
洋榎「は、はぁ!?///」
久「二の腕とか、内腿とか、触らないでしょ?」
久「でも、意外とイイのよ?ほら…」サワ
洋榎「ふぁ…や、やめ…」
久「最初はくすぐったいだけかもしれないけど、ね?」
久「私がこうやって触ったの、一人の時も思い出して」
洋榎「す、するか…アホ…」
久「ふーん」
久「こんなに濡れちゃってるのに?」クチュ
洋榎「ひぁ、」
久「まだ直接触ってないわよね?服もほとんど着てるし」
久「それなのにこんなに…洋榎はエッチなのね」
久「私がいない時、本当に我慢できるのかしら…」
洋榎「うっさ……、あ…」
久「かわいい…綺麗よ、洋榎…」
洋榎「ひ、さ…」
久「なあに?」
洋榎「………///」モジモジ
久「言ってくれなきゃわからないわ」
洋榎「う…」
洋榎「も、もっと、触って…」
久「…ふふっ」
久「そうね、じゃあ、自分で脚開ける?」
洋榎「うん…」ソロソロ
久「下着脱がせるわね?腰浮かせて」
洋榎「……」スッ
スルリ
久「…すごいじゃない」
洋榎「うぅ…」
久「下着にも糸引いてたし」
久「いやらしく光ってるわよ?…あ、また溢れた」
洋榎「あっ…言わんといて…」
久「綺麗…ほんとに、」スッ
洋榎「久?」
洋榎「あ、待っ、やめ…!」
ピチャ
洋榎「あああっ!」
ピチャピチャ、チュル
久「ん…おいし…」
洋榎「う、嘘、」
久「嘘なんてつかないわ…ちゅ…」
洋榎「あ、ああっ!」
洋榎「やめ、やめろアホ、きたな、」
久「んっ…」ピチャ
洋榎「あっ、な、ホンマ、やめ、もう」
久「ちゅる…んく」ピチャピチャ
洋榎「あ、あ、あ」
洋榎「ひ、あっ…あ!」
洋榎「う…あ、ああああぁっ!」ビクンビクン
・
・
・
洋榎「はあっ、はあ…」
久「…イっちゃったわね」チユ
久「すっごくエッチな顔してたわよ?…今の蕩けた表情もなかなかだけど」
洋榎「…///」
久「本命の人にはいつも見せてるのかしら。妬けるわね」
洋榎「い、いーひんもん…」
久「え?」
洋榎「別に、本命とか…」
久「あら、じゃあ私にもチャンスある?」
洋榎「知らんわ…///」プイ
久「……」
久「…ああもう、かっわいい」ダキッ
洋榎「うわっ」
久「大好きよ、洋榎」
洋榎「…さっきから呼び捨てになってんのはまあええとして、どうせ誰にでも言っとるんやろ」
久「どうかしらね」シュル
洋榎「あ」
久「服、全部脱がせるから、背中上げて」
洋榎「あ、はい…///」
パサッ
久「素敵…」
洋榎「…///」
洋榎「う、うちばっかりさせんな…久も脱ぎ」
久「ああ、うん。そうね」スルッ
久「…あ、脱がせたい?」クス
洋榎「さ、さっさとしぃ!///」
久「はいはい」プチプチ、シュル
洋榎「あ…」
洋榎(久…やっぱキレイやなぁ…)
洋榎(胸が特別大きいとかやないけど、体の線とかむっちゃ色っぽい…)
久「もう、あんまり見ないでくださいよ。恥ずかしいわ」
洋榎「あ、うん」
洋榎「なあ、久って、いつもする方なん?」
久「え?…ああ」
久「そういうこと、あんまり訊くものじゃありませんよ?」
洋榎「…すまん」
久「いいですけど」ポスッ
洋榎「? なんや、急に倒れこんで」
久「だって、抱いてくれるんでしょう?」
洋榎「え」
久「優しくしてね?」
洋榎「いや、でもあんまりわからんし…」
久「じゃあ教えてあげるわ」
久「…私のイイところ」
洋榎「…///」
久「今日はずっとこうしていましょう」
久「……何も考えずに済むように」
元々はキンクリ予定でしたが、昨夜酔った勢いで書いてここで力尽きました
なんもかんも忘年会が悪い。
****************
憧「シズ」
穏乃「ん?改まってどうしたの?」
憧「さっき副店長が来てね。…初見世に申し出があったって」
穏乃「えっ!?私の?」
憧「当たり前でしょ」
穏乃「それって、客さんが決まったってことだよね?」
憧「まだ少し日があるから募集は続けるけどね。他にも誰か出てきたら、競りになるの」
穏乃「そ、れはないんじゃ…」
憧「わかんないわよ?でもとりあえず一安心かな」
穏乃「そうだね。憧、ありがとう!」
憧「…ううん」
穏乃「そういえば、そのお客さんってどんな人?」
憧「この前、美穂子さんのお座敷にいた人みたい。美穂子さんのお客の連れだから、わりと安心じゃないかな」
穏乃「そっかー」
穏乃「それなら美穂子さんにもお礼言わなきゃ」
憧「そうだね。夜見世まで時間あるし、今行ってこようか」
穏乃「うん!」
・
・
・
コンコン
憧「美穂子さんいますか~?」
穏乃「ごめんくださーい!」
シーン
憧「あれ?出掛けてるのかな」
女「…あんたたち、美穂子さんに用事?」
穏乃「は、はい!」
女「あの人、今仕置き部屋らしいよ」
穏乃「?」
憧「!?」
女「二、三日前からね。噂になってたけど知らない?」
憧「聞いて、ない…」
憧「まさか、またお客さん怒らせちゃったの?」
女「詳しいことは知らない。今のところ、他の人の部屋から物を盗んだって説が有力かな」
穏乃「ええっ!?」
憧「美穂子さんがそんなことするわけない!」
女「店が閉まってる昼前の時間に何か揉めてて、それからいなくなったからね」
女「客絡みのことじゃないかもしれないってだけだよ」
憧「それにしたって!」
女「そ、そんなに怒らないでよ。あたしが流した噂じゃないんだから」
穏乃「……」
女「とにかく、その部屋は無人だよ。じゃあね」スタスタ
憧「……」
穏乃「美穂子さんは、泥棒なんかしないよね…」
憧「っ、当たり前でしょ!?」
穏乃「わっ!大きな声出さないでよ」
憧「…ゴメン」
穏乃「…だけど、証拠もないのにあんなこと言われるなんて」
憧「ここぞとばかりって感じね…」
憧「美穂子さんは立場上、やっかみも買ってただろうし」
憧「だけどありえないよ、絶対…」
穏乃「うん…」
穏乃「でも、昼間に揉めてたって何があったんだろう」
憧「やっぱそこだよね。それが本当なら、店の中の誰かとトラブルがあったってことかな」
穏乃「美穂子さんはケンカなんてしそうにないけど…」
憧「よっぽど失礼のことを言われたとか、一方的に突っかかられたのかも」
穏乃「なるほど」
憧「ただ、もしそうならその相手にもお咎めがあるはず」
憧「美穂子さん以外にもいなくなってる人っていたかな?」
穏乃「うーん…あんまり気にしてなかったなあ。食堂に来る時間も皆まちまちだし」
憧「いないのか、たまたま見かけてないだけなのか判断がつかないよね」
穏乃「どうしよう…」
憧「んー…」
憧「…あたし、店長に訊いてみようかな」
穏乃「えっ!」
憧「だって気になるもん」
穏乃「教えてもらえるの?」
憧「わかんない。けど、意外と大したことない話かもしれないでしょ」
穏乃「店長か…私、この店に買われた日以来話してないや」
憧「表に出る仕事は副店長に任せてるみたいだからね」
穏乃「店長って、どういう人なの?」
憧「元々はあたし達と同じだよ」
憧「…ただ、晴れて年季が明けたものの、ここでの暮らしが長かったから、外でどうしていいかわからなかったらしくて」
憧「一度は門を出たけどすぐに帰ってきて、裏方として働くことになって今に至るとか」
穏乃「へ、へえー」
憧「わりとよくある話だけどね…」
穏乃「まだ若かったよね?」
憧「正確には知らないけど、三十前後じゃないかな」
穏乃「アラフォーってやつだね!」
憧「それを言うならアラサーだよ」
穏乃「あ、そっか」
憧「よしっ、行ってくるわ。シズは先に戻ってて」
穏乃「わかった、待ってるね!」
憧「ちゃんと夜見世の準備してなさいよー」
穏乃「はーい!」
今回はここまでです。
ペース落ちてて申し訳ない…
>>229
穏乃のセリフ中
×客さん
○お客さん
です。
****************
セーラ「家具も用意できたし、部屋はだいたいこんなもんやなー」
セーラ(細かい物は追い追いっちゅうことで…)
竜華「なんや、下宿人でも置くん?」
セーラ「うわっ!」
セーラ「竜華、いつ来たんや…」
竜華「今や。ちゃんと声掛けたでー」
竜華「この部屋ずっと物置状態やったのに、急にどないしたん?」
セーラ「あー、まあ、ちょっとな」
竜華「誰か来るん?」
セーラ「下宿人、みたいなもんやな」
竜華「ふーん」
セーラ「竜華こそ何や?うちまでくるなんて久々やん」
竜華「最近会う機会なかったから。この家、まだ顔パスでよかったわー」
セーラ「昔はさんざん行き来したからな」
竜華「今日は急にごめんな。でも怜のとこは相変わらず行けてへんし、せめて様子を知りたくて」
竜華「セーラ、見に行ってくれとるんやろ?どんな感じ?」
セーラ「…ちょっと前に、体調崩してみたいや。この間行ったときは持ち直しとったけど」
竜華「本当?大丈夫かなあ…」
セーラ「…ちゃんと治療すれば、良くなるやろ」
竜華「でも花街では往診だけやろ?」
セーラ「そやから」
竜華「?」
セーラ「…いや、なんでもない」
竜華「え~?気になるやん」
セーラ「心配いらんって!俺に任しとき」
竜華「ますます不安や」
セーラ「おい」
****************
~店長の部屋~
健夜「ごめんね、それは教えられないんだ」
憧「…どうしてですか?」
健夜「広めても誰も得しないからだよ」
憧「でも、秘密にされるせいで美穂子さんは損してるんです!」
健夜「大っぴらにしたら尚更損だよ」
憧「…どういうことですか?」
健夜「傍から…少なくとも私から見て、美穂子ちゃんは一方的な加害者だった」
憧「え…」
憧「そんな…美穂子さんが泥棒なんて…」
健夜「泥棒?」
憧「えっ?」
憧「違うんですか?じゃあ本当は」
健夜「…だから、それは秘密」
憧「…『加害者』ってことは、被害者もいるんですよね?」
憧「その人が、嘘をついてるってことは」
健夜「美穂子ちゃんはずいぶん信用されてるんだね」
憧「店長だって知ってるはずです。悪いことができる人じゃありません」
健夜「そうかもしれないね」
憧「だったら!」
健夜「そういえば憧ちゃん、穏乃ちゃんのお世話頑張ってくれてるみたいだね」
憧「え?」
健夜「だけどちょっとかまけすぎかな?ここ一ヶ月の憧ちゃんの売り上げ、だいぶ少ないよ」
憧「……」
健夜「美穂子ちゃんも今いないし、店としても苦しいんだよね」
憧「…すみません」
健夜「穏乃ちゃんの初見世が済めばもう手は離れるから、まあいいけど」
健夜「リハビリのつもりで、今から自分の仕事にも精を出してほしいな」
憧「はい…」
健夜「あ、もうすぐ夜見世の時間だよ」
憧「…はい。失礼しました」
健夜「うん」
****************
~その夜 久の座敷~
♪~
穏乃(憧から急に『今日は一人で行ってみて』って言われたけど…)
穏乃(ちょっとイライラしてるみたいだったなぁ。店長さんに何か言われたのかな?)
穏乃(美穂子さんの件もやっぱりわからなかったらしいし…)
巴「踊り、上手ですね」
穏乃「あ、ありがとうございま…」
春「…久のほうが上手」
久「あらあら」
巴「は、春ちゃん、そんな言い方…」
春「事実」
穏乃(うぅ…)
春「巴ちゃんは先に帰って」
巴「え、だけど霞ちゃんが心配して」
春「小さな子供じゃないんだから、平気」
巴「…お泊りはさせないでって」
春「私の勝手」
巴「でも」
春「あんまり通うなって言われて、ずっと我慢した。そのせいで久を取られた」ギリッ
穏乃(??)
巴(なんか怖い…)
春「帰って。霞ちゃんには私から話すから」
巴「わ、わかった…。気を付けてね」スクッ
穏乃「えっと、じゃあ下まで」
巴「いえ、大丈夫です。失礼します」ガチャ
バタン
穏乃(帰っちゃった…)
穏乃(もう一人のお客さんは久さんしか眼中にないみたいだし、私がいる意味あるのかな)
穏乃(むしろ邪魔なんじゃ…。下がったほうがいいかも)
穏乃「あのー…」
春「久。その服、どういうつもり」
穏乃(……)
久「え?」
春「その高そうな服。他の人にもらったんでしょ」
久「…自分で買ったのよ」
春「嘘」
久「……」
春「なんで私と会うのに着てくるの」
久「……」
春「…私は久より年下だし、ここに登楼するだけでお金はぎりぎり。そんな立派なプレゼントなんてできない」
春「だけど本当に久のこと好きなのに…!」
久「…ありがとう。そんな風に言ってもらえるなんてとっても嬉しい」
久「でも、これは本当に自分で買ったものよ」
春「嘘、つかないで…!」グイッ
久「え?…きゃっ」
ドサッ
穏乃(えっ!?)
久「やっ…待って、春…」
春「嫌。そんな服、脱いで」グッ
久「せ、せめて部屋のほうに」
春「久のバカ…。んっ…」
久「あ…だめ、見られちゃう…」
春「知らないっ…!」
久「穏乃ちゃ…見ないで…あんっ」
穏乃(~~~!?///)カアァ
久「んぅ…、あっ、やぁん…」
春「久、ひさぁ…」
穏乃(あ、あ…)
穏乃(どうしよう、何これ、なんで、)
穏乃(いやだ、こんなの、いやだ!)
久「ああっ!」
穏乃「」ハッ
穏乃「わ…」
穏乃「わ、わたし、失礼しますっ!」ダッ
ガチャ、バタン!
~~~~~~~~~~~~~~~~
~翌朝~
憧「シズ~!起きてる?」
憧「食堂行こー!」
ガチャ
穏乃「……」
憧「? おはよ…?」
穏乃「おはよう…」
憧「えっと、朝ごはん行くよ?」
穏乃「…私、今日はいいや」
憧「え」
穏乃「あんまり食欲な…」
ぐぎゅ~~~
憧「………」
穏乃「………」
憧「…食堂、行くっしょ?」
穏乃「うん…」
テクテク
憧「どうしたの?昨日何かあった?」
穏乃「ん…」
憧「久さんのとこだったよね?怒られたとか?」
穏乃「ううん」
憧「…じゃあ、お客さんに何か…」
穏乃「………」
ピタ
穏乃「憧」
憧「?」
穏乃「私…初見世、したくない…」
憧「え…」
穏乃「ぐすっ、」
穏乃「うえぇ…」
憧「ちょ、どうしたのよ!お客さんに嫌なことされたの?」
穏乃「ひぐっ…」フルフル
憧「と、とりあえずここ廊下だから、部屋に戻ろう!」
・
・
・
穏乃「…」
憧「それで、一体何があったの?」
穏乃「………」
穏乃「……ひささん、が」
憧「うん」
穏乃「ぐすっ…、う」
穏乃「うわあああん」
憧「え、ええ!?」
憧「久さんがどうしたの?」
穏乃「うえええ」
憧「泣いてちゃわかんないわよぉ…。意地悪されたの?」オロオロ
穏乃「ひっく、ひっ、うえ」フルフル
穏乃「ひささ、が、」
穏乃「おきゃくさん、に」
憧「…?」
穏乃「えっく、ひぐ」
穏乃「ひっく…」
穏乃「私、あんなことしたくないよぉ…」
憧(あんなこと…って、まさか)
憧「…待って、久さんがシズの前で、その…したってこと?」
穏乃「……」
憧「お座敷では、一応マナー違反のはずなんだけど…」
穏乃「お客さんに、無理矢理…」
憧「え…?」
穏乃「久さんは嫌って言ってたのに、」
憧「ま、待って。それって…久さんは大丈夫なの?」
穏乃「あ…」
穏乃「…私、途中で逃げちゃって」
憧「……」
穏乃「ごめん、どうしよう、久さんが」
憧「…シズ」
憧「大丈夫だよ。確かにあたしたちは大店の売れっ子みたいに、好みでお客を選べるわけじゃない」
憧「それでも、本当に嫌なことを嫌だって言う権利くらいはあるんだから」
穏乃「でも、久さんは…」
憧「あたしが様子見に行ってみる。でもあの人はあたしたちより長く働いてるんだし、たぶん大丈夫だよ」
憧「…ただね、辛いだろうけど、あたしたちは結局それが仕事なの」
憧「毎日ご飯がもらえるのも、綺麗な服を着られるのも、結局はそのためなんだよ…」
穏乃「……うん」
憧「…大丈夫。シズは、何も変わったりしないよ」
憧「あたしも、ここにいるからさ…」
穏乃「うん…」
穏乃(だけど、やっぱり)
穏乃(お客さんは、私にああいうことをしにくるんだ…)
穏乃(初見世に申し込んでくれた人も、ちょっと喋っただけなのに、私を)ゾッ
穏乃(気持ち、悪い)
穏乃(嫌だよ……)
****************
~久の部屋~
久「…」スヤスヤ
コンコン
ゆみ『久!来たぞ』
久「…?」
ゆみ『久?』
久「ん…ゆみ?」
久「ごめん、寝てたわ…。ちょっと待ってて…」
ゆみ『…わかった』
久「んっ…。ふあぁ…」
久(もうこんな時間かぁ…。適当に着替えなきゃ)
久(戒能さんにもらった服、しわくちゃにされちゃったわね…)
久(破れてはいないみたい。やっぱり質がいいのね)
久(これを自分で買った、はいくらなんでも通らないわよねー)クスッ
チリッ
久「いたっ…。って、うわ」
久(あちゃー、思いっきり痕つけられてる。…げ、こっちも)
久(そういえば体中吸われまくったわね…。参ったなあ、今日のお客に何て言おうかしら)
久(穏乃ちゃんもショック受けてたみたいだし、やりすぎちゃったかな…)
久(っと。いけない、ゆみを待たせてるんだった)ゴソゴソ
久「どうぞ、入って~」
ガチャ
ゆみ「邪魔するぞ。……!?」ギョッ
久「いらっしゃい。何か?」
ゆみ「いや……」
久「ああこれ?キスマーク」
ゆみ「…それ、まずいだろ」
久「やっぱりそうかしら」
ゆみ「一日くらい見世に出るのを諦めたらどうだ?」
久「んー。ゆみはどうしてそんなに私をサボらせたいの?」
ゆみ「むしろなぜお前はそんなに仕事をしたがるんだ」
久「だって仕事だもの」
ゆみ「……」
ゆみ「…お前、痩せただろ」
久「そう?」
ゆみ「ちゃんと食べているのか?」
久「ああ、寝坊したせいで今朝は食べ損ねたわ」
ゆみ「昨日は?」
久「食べた食べた」
ゆみ「嘘をつけ」
久「本当よ」
ゆみ「信用できないな」
久「…ま、遊女の言葉は真に受けないのが賢い遊び人よね」
ゆみ「…そういう意味ではない」
久「ああ、ゆみは真面目だものね」
ゆみ「話をすり替えるな」
久「お客の前では食べてるわよ。でも気が進まないのは確かね」
久「ここ数日は何を食べても、苦い味しかしないから」
ゆみ「…久」
久「で?真面目で優しいゆみちゃんは、それを知ってどうしてくれるのかしら」
ゆみ「…話を聞くくらいは」
久「話ねぇ」
久「そうね、じゃあ抱いてくれたら話すわ」
ゆみ「…は?」
久「今、ここで。私がするのでもいいけど」
ゆみ「待て、どうしてそうなるんだ」
久「してくれないなら何も言わない」
ゆみ「……前にも言っただろう、私は客じゃないんだ」
久「……」
久「…あなたのそういうところが嫌なのよ」
ゆみ「え…」
久「自分はこんな世界とは関係ありませんって顔で、私を見下してる」
ゆみ「そんなつもりは」
久「私のことをかわいそうだって思うんでしょう?」
久「体を売らなきゃいけなくてかわいそう、同僚に犯されてかわいそう」
久「きっと傷ついているに違いない!って」
ゆみ「久、」
久「見当外れよ。私は客と寝るのは全然辛くなんかない」
久「美穂子にされたことだって、別にどうでもいいわ」
ゆみ「…お前はあいつに強姦されたんだぞ!?」
久「だから何?合意じゃないからどうとか言うつもり?」
ゆみ「…っ」
ゆみ「だが、味覚がおかしくなったというのはおそらく精神的なものだろう」
ゆみ「平気だというのなら、どうしてそんなことが起きるんだ」
久「知らないわ」
ゆみ「ふざけるな!」
久「ふざけてないわよ!知らないものは知らないの!」
久「偉そうに怒鳴って何よ!結局私のこと、自分と対等だなんて思ってないんじゃない!」
ゆみ「……!」
久「もう出ていってよ…」
ゆみ「…わかった」
ゆみ「怒鳴ったのはすまなかった。ただ、これだけは言わせてほしい」
ゆみ「お前の目にどう映っていたとしても、私は友人として、お前の力になりたかったんだ」
ゆみ「…また今度、髪を結いに来る。お互い頭を冷やそう」
久「……」
ゆみ「…じゃあ」クルッ
ガチャ
ゆみ「っ、すまない」
「………」
ゆみ「?」
ゆみ「…君は、ずっとここにいたのか?」
憧「………………」
乙
モチベ維持のために自分で書いてしまいました…反省
****************
霞「お久しぶり。あんまり来られなくてごめんなさいね」
穏乃「いえそんな!ありがとうございます」
霞「春ちゃんの手前、私があんまり頻繁に空けるわけにはいかないのよねぇ」
穏乃「春さん、久さんに夢中ですもんね」
霞「私の見立てでは、春ちゃんからの完全な一方通行なのだけれど。恋は盲目ってことかしら」
穏乃「あはは…」
霞「まあ、私も大概よね」クス
穏乃「?」
霞「春ちゃんのお目付けのはずが、自分もお客になっちゃったんだもの」
霞「ミイラ取りがミイラになった、なんて笑われちゃったわ」
穏乃「……」
霞「だけど、後悔はしてないのよ?最近はこうしてあなたに会うのが、一番の楽しみなの」
穏乃「…えへへ///」
霞「あなたのほうはどう?順調なのかしら」
穏乃「は、はい!」
穏乃「まだ馴染みのお客さんは少ないので、大抵は先輩のお座敷に上がって、運が良ければそこでお客さんがつくって感じです」
霞「…頑張ってるのね」
穏乃「はい!」
霞「あなたの良さをわかってもらえるのは私としても誇らしいのだけれど、忘れないでほしいわ」
霞「私があなたの最初の人だってこと」
穏乃「…///」カアァ
穏乃「わ、忘れてない、ですよ///」
霞「あら、それは良かった」
霞「でも、いつもこうやってお喋りしてるだけではそのうち薄れちゃうわね」
穏乃「え…」
霞「だから、今日は寝かさないわよ?なんてね」
穏乃「はわわ///」
****************
憧「………」
セーラ「なんや怖い顔して」
憧「いや、なんであたしのとこ来るんですか…」
憧「遊女を身請けした人が早速同じ店で遊んでるとか、印象悪いですよ」
セーラ「ははっ、そらそうやなー!」
憧「はぁ」
セーラ「でも怜がお前らのこと気にしとるから」
憧「……」
憧「怜さんは元気ですか?」
セーラ「おう。ちゅーても病院通いやけどな」
セーラ「竜華が隙あらばついていきたがって、ほんまごちそうさんやで」ケラケラ
憧「…そうですか」
セーラ「あ、竜華ってのは…」
憧「怜さんが店を出る少し前に聞きました」
セーラ「そか」
憧「……」
憧(いいなあ、怜さんは)
憧(…だけどもう、他の人にばっかり期待を押し付けるのはやめたんだ)
憧(あたしだって、負けてらんない!)
バンッ
憧「ひゃっ!?」
セーラ「まあそう落ち込むなって!俺がまた来たるからな!」
憧「は、はぁ!?別に落ち込んでないわよ!!」
セーラ「お前にもそのうちええ人が見つかるやろー!」
憧「人の話を聞いてよ!」
セーラ「おう何でも話せや!」ドンッ
憧「あーもうさっきから声のボリューム大きすぎ!ちょっとくらい静かにできないの!?」
セーラ「え」
憧「は?」
セーラ「い、いや、だって…静かにすると…」
ドンチャンドンチャン
アンアンイヤン
憧「あー…」
憧(ここは仮宅だから元の店よりも壁が薄いのよねー)
憧(移動しなきゃいけなくなったのはあたしのせいだけど…)
セーラ「うぅ…///」モジモジ
憧「わ、悪かったわよ…。でも廓自体には何度も来てるんでしょ?慣れないの?」
セーラ「俺は怜と話しに来とっただけやし…」
憧「そう…」
セーラ「………///」
憧(…なんか、ちょっとかわいい…かも)
憧(って、ないない!こんなガサツな人!)
憧「あのさ」
セーラ「……うがー!!」ガバッ
憧「ぎゃっ!?」
セーラ「そうやった食いもん持ってきたんや食いもん!食うで!!」
憧「は、はぁ!?」
セーラ「今日はダイエットとか言わせへんからな!」ガサガサ
憧「あーせっかく触れないようにしてたのに!その包み明らかに二人で食べる量じゃないわよ!」
セーラ「俺が倍食うから問題あらへん!」
憧「太るわよ!?」
セーラ「俺は太ったことない!!」
憧「何それムカつく!!」
後日談らしきもの。
霞シズは出会いを書いてないので唐突感ハンパないですね…。
多少の心残りはありますが、これで終わりにしようかと思います。お付き合い本当にありがとうございました。
よいお年を!
あ、ちなみに一度遊女だった人は身請けや年季明けの後も、一度出たらもう花街には戻りません。
それなので怜は来られず、セーラが代わりに様子を見に来ています。
このSSまとめへのコメント
面白かった
糞猿ざまぁそのままオモチャになって飽きられた後に東京湾にでも沈められればよかったのに≪しず≫だけに残念