憧「ヤマノムスメ」 (21)

とある吉野の山中。


ざっざっ…

憧「……ねぇしず…未だ着かないの……」はぁはぁ…

穏乃「もう…何言ってるの憧?まだまだだよ」

憧「あーもう…疲れたよ。ちょっと休憩しよ?しず」

穏乃「うーん。そんなに高い山じゃないんだけどな……」

憧「私は…アンタと違って田舎育ちだけど山育ちじゃないんだからさ」

穏乃「山育ちって……」

憧「若しくは…そう――――」

憧「ヤマノムスメ」

憧「――――って感じかしらね……」

穏乃「何だよ?ヤマノムスメって……」

憧「アンタみたいに山に登って遊ぶのが好きな、お猿さんみたいなみたいな娘の事よ」

穏乃「誰がお猿さんだよ!?誰が?」むっ

憧「アンタの事よ。しず――――」

憧<――――そう…しずは私にとって世界一かわいいお猿さん……>

穏乃「……まったく憧は歯に衣を着せないんだから……」むぅ

憧「全くはこっちのセリフよ?……ほんとにどうしてこんな事に……」

穏乃「あのねぇ…こんな事にって、言うんだったら。その原因を作ったのは、憧自身なんだからね?」

憧「――――うっ…それは……」

憧<そう…どうしてこんな事になってしまったかと言うと―――――>


もわんもわんもわん。

一昨日。

穏乃さんの部屋。


穏乃「今日はどうしたの憧?急に逢いたいだなんて」

憧「うん……その事なんだけど……」もじもじ

憧「……あのね…しず……私…しずに借りたジャージ返すね……/////」すすっ

穏乃「……………ねえ憧……」

憧「なぁに…しず?//////」そわそわ

穏乃「…………私…憧にジャージ貸した記憶なんて無いよ?」

憧「え?」

穏乃「……憧がウチにきた後に、ジャージが無くなってた事なら有るんだけど」じとー

憧「うっ!?」ぎくっ

憧<私が…ついうっかり拝借したジャージを都合よく借りていたと言う設定にした――――>

憧<その名も『ジャージ借り返し御返し倍返し作戦』(?)が裏目に出たーーーー!!!!>がびーん

穏乃「?」

憧<しずも流石にそこまで能天気なお猿さんでは無かった……と言うか、私が間抜けだっただけか……>がくっ
 

……。

穏乃「…………で、どうして憧は私のジャージを盗ったりしたの?」

憧「そ…それは……その…………」もごもご

穏乃「言えない事なの?」

憧「――――そっそんな事無いわよ!!」

憧<ほ…ホントはそんな事あるんだけど……//////>かぁぁ


憧<あの時……前にしずの家に遊びに行った時――――>

憧<帰る時にうっかり、しずが無造作に脱ぎ捨てたジャージを見付けて――――>

憧<インターハイの時に着た感触と匂い……あの時の半ば倒錯した感覚を思い出してつい――――>

憧<魔が差してお持ち帰りしてしまったなんて……言えやしない言えやしないよ……>

穏乃「……まったくナンに使ったのか知らないけど……」

穏乃「普段ジャージばっかり着てないで、もうちょっとオシャレしなさいよ。なんて言いてくるクセにさ……」
 

憧「ちょっ…ちょっと着てみたくなっただけよ!そっそれだけなんだからっね?」

憧<よしっこのいい訳なら、怪しまれないでナンとか乗り切れる!!>ぐっ

穏乃「それだったら…インターハイの時に、私の制服と取り換えっこして、着てたじゃないか?」

憧「うっ……」

穏乃「それに…着るだけだったら、わざわざ盗む必要なんて無いし……」

憧「そ…それは……」

穏乃「ホントのトコはどうなのさ?」

憧「う…うう……」たじ…

憧<これだけは死んでも言えるわけないよーーーー>

穏乃「……まぁどういう心変わりか知らないけど、こうして返してくれたし……」

穏乃「ちゃんと洗濯…しかもクリーニングじゃなくて……」

穏乃「わざわざ手洗いにして、アイロンまで掛けてくれたのは、私もちょっと嬉しかったけどさ」
 

憧「そっそうよ。私は誠実な女なんだからっ」ふんす

憧<ほ…ホントは…はむはむしたり、くんかくんかしたり、擦り付けたりして――――>

憧<その結果、色んな汁と匂いのこびり付いた、カピカピのジャージなんか……>

憧<……流石にとてもクリーニングなんかに、出せる訳が無かっただけだけど…………>

憧<でも…却ってその方がしずには、好印象みたいで良かった……>ほっ

穏乃「……………」じー

憧「はっ!!」びくっ

憧<この目…まさかサトラレた!?>どきどき

穏乃「もういいよ……憧にもいろんな事情があるんだろうし……」はぁ

憧「…………」ほっ

穏乃「でも――――憧が私のジャージを盗った事実は変わらないよ?」

憧「……うう…わ…分かったわよ。な…何でもするからそれで許してくれる?」

穏乃「憧……今、何でもするって言ったよね?」ずいっ

憧「う……い…言ったわよ……」たじ…

穏乃「それなら――――――――」



もわんもわんもわん。

穏乃「――――そう言って、私の言う事を聞いてくれるって言ったのは、憧なんだからね?」

憧「それは…そうだけど……でもどうしてよりによって、山登り(こんなこと)なのよ?」

憧<て…てっきり……あんな貌するもんだから……>

憧<しずが…私にあんなコトさせたり、こんなコトしたりするなんて…期待してたんだけど……>

穏乃「…………憧がナニを考えているのか分からないけど……」

穏乃「憧は私の勉強を見てくれたり、一緒にゲームしてはくれるんだけど……」

穏乃「山登りだけは嫌がって、一緒に登ってくれなかったから…だからいい機会だと思ってさ」

憧「だから…こうして仕方なく――――――」

穏乃「それに…憧のピンク色のジャージ姿もとっても似合っててカワイイよ」にこ

憧「!!////////」どきーん

憧<し…しずが私のジャージ姿がカワイイって……今までどんなにオシャレしても言ってくれなかったのに……>どきどき
 

憧「ふんっ。わっ…私は何を着ても、カワイイんだからねっ///////」ふいっ

穏乃「ははは…その様子だと、まだ元気があるみたいだね?憧」

憧「――――はぁ分かったわよ。こうなったらさっさと登って、さっさと下山してやるんだから!!」

穏乃「うん。その意気だよ憧。でも張り切り過ぎには注意しないとね」にこっ

憧「!!」どきっ

憧「う…うん……//////」こく…

穏乃「ふふふ…」にこにこ

憧<ふぇ~ん。こういう時のしずの笑顔は、私には眩し過ぎるよ~//////>どきどき

 

ざっざっ


穏乃「憧…大丈夫?ちょっと休憩しようか?」

憧「だ…大丈夫よそれにもう山頂(てっぺん)まで近いんでしょ?」はぁはぁ

穏乃「うん…そうだけど。無理していく必要はないし……」

憧「無理なんかしてないわよ!ほら、しずさっさと行くw――――」

ずる―――

憧「わわっ――――」

穏乃「だっ大丈夫!?憧!!」


憧「だっ大丈夫に決まって……つっ……」

穏乃「憧……もしかして膝を打ったの?」

憧「だから大丈夫だって――――」

穏乃「ちょっと見せて!!」ばっ

ずりっ

憧「あっ!?//////」

穏乃「ほらやっぱり、擦り剥いてる…それにちょっと膝を打ってるみたいだね……」

憧「だっ大丈夫よ!こんなもん嘗めれば――――!?」

穏乃「――――んっ……」すっ…

じゅじゅっじゅる…

ぺっ

ぺろ…

憧<えっ!?しずが私の傷口を嘗めて……////////>

穏乃「ん……」

ぺろぺろ…

憧<しずの濡れた舌の感触が…痛気持ちいい――――///////>んんっ…

ぺろ…

憧「あ…しず……///////」はぁはぁ
 

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