エレン「アニにキスされたんだが」アルミン「!?」(328)

わからない。

自分がなぜあんな行動をとってしまったのか。

気付いた時にはもう遅かった。

私の唇があいつの……エレンの唇と重なっていた。

数瞬の間を置いて、自分のしでかしたことに気付く。

顔が熱。頭の中が沸騰する。あいつの顔を見ることができない。

混乱する私を尻目に、更に数瞬の間を置いたのちにあいつが口を開く。

ぽかんとした顔をしながら、

「……なぁ、アニ。どうして急にキスなんかしたんだ?」

それは、今から三時間前の出来事。

あの事故から三時間が経った今もなお、私の顔から熱がひくことはない。

頭から布団をかぶり、ベッドの上で丸くなる。

そう、夢だ。あれはたちの悪い夢だったのだ。

夢からは覚めなければならない。夢は終わりにしなければならない。

現実の世界が私を呼んでいる。

このまま目を閉じ眠りの世界に入り、目が覚めればそれでおしまい。

そう自分に言い聞かせているものの、先程から一向に眠りの気配は訪れない。

そうして現実逃避を続けている私の耳に、ギシリ、ギシリと二段ベッドの梯子が軋む音が届けられる。

軋む音が止む。頭からかぶった布団越しに、人の気配を感じる。

どうやら、こんな私と話をするためにわざわざベッドを登る物好きがいたようだ。

だが、今の私はとても話をするような気分じゃない。

寝たフリをしてどうにかやり過ごせないものだろうか。

そんな私の願いは虚しく、訪問者は容赦なく布団越しに声をかけてくる。

「……ねぇ、アニ。起きてる?」

「起きてるよね?うん。寝たフリだよねそれ?さっきからバタバタ騒がしかったしね」

クスクスとお上品な笑い声。

相手は私が寝たフリをしていることに気付いている。

相手の問い掛けに対し、私は返答を行わない。それが意味するところはわかっているだろうに。

にも関わらず、声の主は喋ることを止めない。

……もうやめてくれ。今は本当に人と話したくないんだ。頼むから帰ってくれ。

「……でね?アニ」

「……私、さっき見ちゃったんだ」

「アニとエレンが……その……キス、してるところ」

「きゃっ!」

どうして、それを。

一体どこから。

なんで、なんで、なんで。

パニックになった私の頭は、思考を言葉に変換する能力が一時的に麻痺してしまったようだ。

言葉にならないうめき声を発し、布団をかぶったまま声の主の両肩を掴み身体を揺さぶる。

「ちょっ、お、落ち着いてってば!」

「言わない!誰にも言わないから!!」

……その言葉に私は少しだけ、本当に少しだけ冷静さを取り戻す

「……本当に?」

「うん!絶対に本当!」

「……絶対だからね」

任せて!と。我ら104期訓練兵団が誇る天使は満面の笑みを浮かべ力強く頷いた。

「ふむふむ、なるほど」

狭いベッドに向かい合い、私はことの顛末をクリスタに説明していた。

……なぜ私はクリスタにこんなことを話しているのだろう。

「うん、わかった。そういうことだったんだね」

そもそもクリスタと私は大して深い仲でもないはず。なのに私はこんな自分の立ち入った話を……。

「で?どうかな?」

「……なにが?」

「少しは落ち着いた?」

「!?」

そう、

わかってしまえばなんてことはない。

「……ありがとう」

私は、

「別にお礼を言われることじゃないよ」

ただ、誰かに話を聞いて欲しかったんだ。

「でも意外だなぁ」

フフフと、口に手をそえお上品に笑う姿は同性の私から見ても美しかった。

普段の立ち振る舞いもそうだ。所作の一つ一つに慎みと気品のようなものを感じる。

男共が熱をあげるのにも頷ける。私なんかとは大違いだ。

ああ、私もクリスタのようになれたらきっと……。

……。

……ん?

きっと、なんなんだろうか。


私は、何故クリスタの女性らしさに羨ましさを感じているのだろう。

「……まさか、アニがエレンのことを好きだったなんてねぇ」

「はっ、はぁっ!?」

頭の中の考え事が一気に吹き飛ぶ爆弾発言だ。

「な、なんで、私が、あいつの、ことを」

「……えっ?」

「そ、そんなわけ、ない、じゃないか、だって、だってあいつは」

「……ねぇアニ。それ本当で言ってるの?」

「……うん」

「……」

クリスタは何も言わない。言わないが、何を言いたいのかはわかる。

目は口ほどにものを言う。

そう、クリスタのあの目は私にこう言っている。

『アニのばーか』

情けないことに、私はクリスタの視線に立ち向かうことが出来なかった。

何も言い返すことが出来なかった。

ついに。

ついにこの時が来てしまった。

覚悟はしていた。

いつか必ず来るであろうこの日に備えて、頭の中で散々予行演習を行った。

だから、エレンに恋愛のいろはを説くこと自体は問題ない。

ただ、一つだけ予想外だったこと。

それは。

初めての相手が、ミカサではなくアニだったということ。

エレンとアニ。

二人の間で一体なにがあったのかなんて、僕には知りようもない。

……ああ、頭が痛くなってきた。

ごめん実は仕事中

「……ミン!」

「おい………聞…………か」

「アルミン!」

「あっ、ああごめんよエレン。ちょっと考え事をしててさ」

「ったく。こっちは真面目に相談してるってのに」

全く、何が真面目に相談してるだ。

年頃の男が「落とし物を拾ったんだけど」みたいなノリで異性からキスされたことを相談なんてするもんか。

あのアニがそんなことをしたんだ。

きっとアニは本当にエレンのことが好きなんだ。

だというのに、当の本人はこの有様。

……うん。なんだか少し腹が立ってきたぞ。

とりあえずミカサのことは置いといて、まずはアニのフォローをしなくちゃ。

じゃないとあまりにもアニが可哀相だからね。

すぅ、と大きく息を吸い込む。

よし、いくぞ。

アルミン・アルレルト、義によってアニ・レオンハートを助太刀いたす。なんちゃって。

「いいかいエレン、僕の話をよく聞くんだ」

「おう」

「まずさ、キスって一体なんだと思う?」

「はぁ?お前何言ってん

「もちろんお互いの唇と唇を重ね合わせる行為、だなんてくだらないことは聞いてないからね」

エレンの言葉にかぶせるように言葉を繰り出す。

もとよりこの手の問答にエレンの正答なんて期待していない。

そう、これは問答の形式をとった攻城戦。

僕の理屈の刃で、エレンを護る無知という名の防壁を崩せるかどうか。

アニの恋心を、絶対にエレンの心に届けるんだ。

全てを受け止めた上でアニを袖にするというのであれば僕は何も言わない。

でも、アニの気持ちも知らないままになあなあで済ませることだけは絶対に許さない。

「あっ、もうこんな時間!?続きは明日ね!おやすみアニ!」

満面の笑顔とともに、天使は地上へ下りていった。

布団をかぶり(今度は普通に)、クリスタとの話を反芻する。

悔しいが、クリスタの言っていることはあっている。

私は、エレン・イェーガーを異性として意識してしまっている。

ああ、自分でもわかっている。

生まれてこのかた接してきた異性といえばあの二人ぐらいだ。

しかしあの二人も、今じゃ「男の人」というより「お兄ちゃん」という感覚の方が近い。

思春期になり「たまたま」出会った異性のエレンと「たまたま」仲良くなり、その親愛の情を恋愛のそれと勘違いしているだけなのだ。

端的に言ってしまえば、今の私は恋に恋している状態なのだ。

そしてたまたまそのおままごとな恋の相手に選ばれたのがあいつだというだけ。つまり……。

……ああくそう。

適当な理屈をこねくりまわして自分を納得させようとしたが、どうやら逆効果だったみたい。

さっきからあいつの顔しか頭に浮かんでこない。

それもこれも全部クリスタのせいだ。

「おはようエレン」

「おう……おはようアルミン」

「ふふふ。目、クマが出来てるよ?」

「誰のせいだと思ってるんだ……」

「その台詞、アニにも言える?」

「ぐっ……」

少しやり過ぎてしまったかと今更ながら反省する。

エレンへの説明は上手くいったみたい。その結果、どうやらエレンは一晩中アニのことを考えるはめになったらしいけど。

眠たげに眼をこするエレンを見て、少しだけ「いい気味だ」と思ってしまう。僕って性格悪いのかな?

「さ、顔洗ったら食堂に行こう」

「お、おう」

「わかってると思うけど、アニに会っても……」

「い、いつも通りだろ?わかってるわかってる」

あぁ、多分無理だ。

(結婚しよ)

  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/


バンバンバンバンバンバンバン
バン     バンバンバン
バン (∩`・ω・)  バンバン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
   \/___/ ̄


    ; '  ;
     \,( ⌒;;)
     (;;(:;⌒)/
    (;.(⌒ ,;))'
 (´・ω((:,( ,;;),
 ( ⊃ ⊃ / ̄ ̄ ̄/__
    \/___/

テーブルに座る前に、みんなと挨拶を交わす。

僕はとくに問題ない。問題なのはエレンだ。

ミーナとの挨拶。

「おはようエレン」「おう、おはようミーナ」

クリスタとの挨拶。

「エレン、おはよう」「おはようクリスタ」

アニとの挨拶。

「……お、おう」「……お、おはよ」

うん。実に予想通り。

そんなにぎこちない会話だとミーナやクリスタに怪しまれちゃう……。

……ん?

クリスタの反応。まさか……。

アニ×エレンSSの未完率(´・ω・`)

アニ「……」ライナー「(アニのやつまた妄想の世界に……)」

も完結させて

http://i.imgur.com/C4et13e.jpg

まだー?

ミカサ「……エレン?」エレン「!?」アニ「あ」

も完結させろよ!!

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