自称17才の勇者の末裔、小娘ハンジが仲間と繰り広げる、冒険の旅
DQ3の世界で暴れます
捏造設定ありです
DQ3を知らない人のために、説明をいれつつ進める予定です
ピーチチチ…
何処かで鳥の鳴き声がする
うららかな朝―
お母さん「ハンジ、ハンジ、朝よ。起きなさい」
ハンジ「うーん、まだ眠いよ…」
お母さん「ハンジ、今日は貴女が旅立つ日。王宮に挨拶に行かなくてはならないのよ…?用意をしなくちゃダメでしょ」
お母さんはハンジを揺さぶった
ハンジ「…わかったよお…」
ハンジは眠そうに目を擦りながら、体を起こした
ハンジ…という娘は、アリアハンという国に住む、17才になったばかりの少女
彼女の父勇者オルテガは、数年前に魔王討伐の旅に出てから、行方知れずになっていた
そして、17才になったばかりの少女ハンジは、父の後を継いで、魔王討伐の旅に出るのであった
アリアハンの王都を歩く親子
娘、ハンジは旅人の服という、冒険者が最初に身に付ける、簡素な服に、銅の剣を腰に差していた
ハンジは勇者の末裔として、毎日のように剣術を磨いてきた
これが魔物相手に通用するかはわからないが、努力はした
その結果、少女は素早さを生かし、強いと言うよりは美しい剣さばきが出来るようになっていた
やがて、親子は立ち止まった
目の前には立派な城が、荘厳に佇んでいた
お母さん「ハンジ、行ってらっしゃい。王様に失礼の無いように、きちんと挨拶なさい」
母は、娘の手を握り、少女の顔をそっと撫でた
ハンジ「お母さん、行ってくるね」
ハンジは母の手を握り返して城への桟橋を渡った
城の中は、確かに美しい調度品や、柱の細工が豪華ではあったが、決してけばけばしさなどなく、落ち着きのある空間であった
王の謁見室にたどり着くまでに、さほどかからなかった
王は懐が広く、訪ねてくる旅人や、商人、町の人々などと気さくに話すような人柄だった
しかし、ハンジは王と一対一で話すのは初めてだった
幾分緊張した面持ちで、謁見の順番を待った
兵士「さあ、君の番だよ、待たせたね。頑張っておいで」
と、優しい笑顔を見せるのは、馴染みの兵士だった
ハンジ「うん、頑張ってくるよ」
ハンジは頬をパン、両手で叩いた
ハンジ「よっし、行くぞ!!」
気合いを入れ直したハンジは、その眼差しを、前に向けた
ギィィ
扉が開くと、赤を基調とした絨毯が、玉座までの数メートルを飾っていた
所々、金糸で刺繍が施され、美しいその絨毯を踏むのは憚られたが、一歩一歩、背筋を伸ばし、慎重に進んだ
そして、玉座の手前についた時、さっと跪き、頭を垂れた
「…」
黙って王の言葉を待つ
王「勇者ハンジ、よくぞ来てくれた。待っておったぞ」
低く、だが優しげな声がハンジの耳に届く
ハンジは頭を上げ、王にそのまだあどけなさの残る、だが凛々しい顔立ちを披露した
王は立派な白い髭を蓄え、その声の通りの、柔和な表情でハンジを見ていた
「ハンジ、お前は勇者オルテガの一人娘にして、勇者の末裔…まだ幼い娘に魔王討伐の旅など、酷だとは思っているのじゃが…」
そこで、言葉を濁す王
ハンジはゆっくり慎重に言葉を発した
「王様。私はこの旅立つ日に備え、十分に鍛練して参りました。娘ではなく、勇者として、必ずや魔王を討伐し、父を見つけ出します」
凛々しい顔にある瞳は、力強い光を宿して輝いていた
王は、そんなハンジをまるで眩しく輝くような物を見るように、目を細めて見た
王「ハンジよ、よくぞ言ってくれた。お主の父オルテガは、魔王の城に程近い火山の火口に落ちて以来、行方がわからなくなっておる」
ハンジ「…はい」
王「お主の倒すべき敵は、魔物達の長、魔王バラモス。バラモスは、城のある地域の人間を全て殺した。その支配を、全世界に拡げようとしておる」
ハンジ「はい」
王「このままでは、人類は全て魔物に駆逐されてしまう…それだけは避けねばならん」
ハンジ「必ずや、魔王を討伐して参ります、王様」
ハンジは立ち上がり、王に敬礼をした
王「頼んだぞ、勇者ハンジよ。そうじゃ、旅に出るに当たって、お主に支度金を渡しておこう、大臣…」
大臣は、ハンジにお金の入った袋と、旅人の服、棍棒を手渡した
王「ハンジよ、お主はいくら勇者の末裔とはいえ、まだ娘。ルイーダの店に行き、気の合う仲間を連れて旅に出るがよいぞ」
ハンジ「わかりました。では行って参ります」
ハンジはもう一度敬礼し、踵を返して、謁見室を後にした
王宮を後にしたハンジは、ふぅっと息をついた
ハンジ「(いやあ、ほんと緊張したなあ…真面目な顔しすぎて、顔の筋肉がピクピクしちゃってるよ…)」
ハンジは顔を擦りながら、おもむろに王からの支度金を確認した
ハンジは目が点になった
ハンジ「(支度金って…たったの50G?こんなの何も買えないじゃないか…)」
はぁ、とため息をもらした
ハンジ「(とりあえず、ルイーダの酒場に行って、イケメンで強くて賢い人探そっと!!)」
ハンジは王宮での態度や仕草とはうって変わって、楽しげにスキップをしながら、冒険者達が集うルイーダの酒場に向かった
様々な職種の集まる酒場は、喧騒と笑い声に包まれていた
ハンジ「(さぁて、誰にしようかな…)」
ハンジが辺りをきょろきょろ見渡すと、一人の男が目に入った
ハンジ「(慎重190㎝超、手足のリーチが異様に長い。あの男は強そうだよ…)」
ハンジは品定めをする様な目を男に向けた
男は長身を椅子に無理矢理落ちつけるような格好で、酒を飲んでいた
ハンジは男にゆっくり歩み寄った
…王宮でやってのけた、猫を完全に被りながら…
ハンジ「やあ、あなたは何の職種なの?」
ハンジは男に、あどけないが凛々しい顔で、男の顔を覗き込む様に聞いた
世界の果てまでいってよしの人かな??
期待
>>10
はい、よろしく!
ここで説明しておこう
この世界の冒険者には、数種類の職業が存在する
まずは勇者…これは誰にでもなれるわけではなく、勇者の末裔のみが就ける職業だ
剣に加え、多少の魔法も扱うオールラウンダーだ
次に戦士…これは重い鎧や剣を振り回し戦う、剣のエキスパート
武道家…己の拳と腱を極限まで鍛え、その体自体が凶器となる、体術のエキスパート
僧侶…慈愛の精神を持ち合わせ、回復魔法を得意とする、神聖なる神の使い
魔法使い…その自信が持つ魔力を糧に、沢山の攻撃魔法を操る、まさに魔法のスペシャリスト
商人…金に目がない金の亡者だが、戦わせると結構強い
盗賊…素早い身のこなしに、宝箱を見つけ出す技術、ナイフを自在に操る、すばしっこい職業
遊び人…その名の通り、毎日遊び暮らす、戦いの役にたたない職業。だが秘めたる力を持っているらしい
最後に賢者…これはまだあまり知られていない職業。魔法使いの攻撃呪文に、僧侶の回復呪文の両方をマスターできる、唯一無二の職業…知力のスペシャリスト
ハンジの問いに、男はいきなり少女の襟首を掴み、自分に引き寄せた
ハンジ「ちょっ…!」
ハンジは男のいきなりの行動に面食らった
男は、そんなハンジの耳元に顔を寄せる
男「…スンスン」
そして、何故か匂いをかいだ
ハンジ「…いきなり…何をするんだっ!?」
ついつい被っていた猫を脱いでしまったハンジ
襟首を掴む男の手を、無理矢理引き離した
男「…お前は…まだ男を知らない…フッ」
そう言って、鼻で笑った
ハンジ「…な、何だよそれ…」
ハンジは目を丸くし、顔を真っ赤にした
男「当たっているだろ?」
ハンジ「わ、悪い…?」
ハンジは頬を染めて顔を背けた
男「で、何の用だ?処女」
ハンジ「ちょっとぉ!!そんな呼び方しないでくれる!?」
ハンジは激昂した
男「用は何なんだ、娘」
男の目が、ハンジを見据えた
ハンジ「…あなたの職業を聞いたと思うけど…」
男「お前の職業は?」
ハンジ「勇者、だよ」
ハンジのその言葉に、男は一瞬、目を大きく見開いた
男「俺は、ミケ。武道家だ」
そう言うと、ハンジを値踏みするように視線を這わせた
ハンジ「もし良かったら、一緒に旅に出てもらえないかな?君は、強そうだし」
ハンジの言葉に、男はしばらく考える様に視線を下にしたが、やがて顔を上げた
ミケ「勇者の旅か…いいだろう。ついていってやる」
ハンジは武道家ミケを仲間にした
ミケ「お前は、勇者オルテガの娘、ハンジか」
ハンジ「そうだよ」
ミケ「想像していたより子どもだな」
フン、と鼻で笑うミケ
ハンジ「ほっといてよ…」
ハンジは、先程から失礼極まりないこのミケという男の、お尻でも蹴り上げたい衝動に駆られたが、やめた
多分、返り討ちにあう
使い込まれて皮が分厚くなっている拳
長身で引き締まった身体は、きっと全身がバネの様に動くだろう
ミケ「俺の知り合いがいるんだが…もしまだ仲間を決めていないなら、会ってみるか?」
ハンジ「イケメンで強くて賢いかな?」
ハンジの無茶な要求に、ミケはまた鼻で笑った
ミケ「一人は間違いなくイケメン…だな。もう一人は、好みは別れるだろうが、悪くない」
ハンジ「まあ、とりあえず会ってみようかな」
ハンジは、背の高いミケを見上げて言った
ミケと共に、酒場の奥にあるバーカウンターに行く
そこには、男が二人飲み物を飲んでいた
二人が近づくと、男のうち一人が立ち上がり、手を上げた
男「やあ、ミケ。めずらしいな、女の子を連れているのか」
ハンジは早速値踏みを始める
ハンジ「(身長は190㎝弱、金髪碧眼の…イケメン!!結構いい体格してるな…しかも優しそう)」
ミケ「エルヴィン、僧侶のお前がこんな所で昼間から…世も末だ」
ミケは眉をひそめた
エルヴィン「いや、どうやら今日からアリアハンの勇者の末裔が旅に出るらしい。で、お役にたてないかなと待っていたのだが…」
エルヴィンと呼ばれた金髪碧眼の男は、辺りを見回した
すると、隣に座っていた男が吐き捨てるかの様に言葉を発する
男「エルヴィン、そんなご立派な奴が、こんな場末の酒場に仲間を求めに来るわけねぇだろうが…どうせ王宮お抱えの騎士や魔法使いを連れて、今頃街を出ているさ…」
男も椅子から降り、剣呑な眼差しをエルヴィンに向けた
ミケ「リヴァイ…それがな、こいつが勇者らしい…」
ミケはハンジの肩に手を置いて、呟くように言った
ハンジ「(リヴァイ…か。身長は160㎝くらい、私よりちびだな。身体は小さいけど、目付きが怖い…)」
ハンジはぶるっと震えた
リヴァイ「こいつが勇者…?」
エルヴィン「確かに、勇者オルテガの子は女性だとは聞いていたが、まさかこんなに…」
リヴァイ「ガキじゃねぇか」
エルヴィンが折角言葉を濁したのに、リヴァイははっきり言ってしまった
ハンジ「さっきから黙って聞いてれば、好き勝手言いまくって…私が勇者オルテガの娘、ハンジだよ。想像とかけ離れてて悪かったね!!」
ハンジはふん、と鼻息荒くそっぽを向いた
エルヴィン「勇者殿、ご無礼をお許し下さい。リヴァイも悪気があるわけではないのですが、どうにも口が悪くて…」
エルヴィンはハンジに頭を下げ、かなりへりくだった言い方をした
ハンジ「あのさ、勇者殿…とか要らないよ。そんな言い方されたら、背筋がぞわっとする」
ハンジは顔をしかめながら言った
リヴァイ「こんなガキに勇者殿なんて言う必要ねえよ」
リヴァイは毒づいた
エルヴィン「こら、リヴァイ!」
エルヴィンは、リヴァイに窘める様に言ったが、時すでに遅し、ハンジの顔は怒りで紅潮していた
ハンジ「もういいよ。私は一人で旅に出る!!」
ハンジはそう叫び、踵を返してその場を離れようとしたが…
ミケ「待て、一人では無理だ」
ハンジは、ミケに頭を掴まれて動きを封じられた
エルヴィンは、ハンジの手をとり跪く
エルヴィン「勇者ハンジ、どうぞ回復呪文が得意な私を仲間に加えて下さい。出来ましたら、リヴァイも…」
リヴァイ「…ふん」
ハンジ「…リヴァイは嫌そうだし、ミケとエルヴィンだけでいいや」
ハンジはつん、とそっぽを向いた
エルヴィン「ハンジ殿、リヴァイの力は必ずや貴女の旅の助けになります…彼は凄腕の魔法使いなのです」
ハンジ「…魔法使いか…まあ、役に立たなきゃまた酒場に戻せばいいか」
リヴァイに鋭い視線を投げるハンジ
リヴァイ「お前みたいなガキが勇者とはな…役に立たないのがどっちか、思い知らせてやるためにも、ついていってやるよ」
ハンジは、僧侶エルヴィンと、魔法使いリヴァイを仲間に加えた
兵長、魔法使いってことは
期待
ハンジ「仲間も集まった事だし、早速出発しよう」
そう言って酒場を出ようとしたその時…ハンジはマントを引っ張られた
振り向くと、優しげな顔つきの青年が、真剣な眼差しをハンジに向けていた
ハンジ「何だ、モブリットじゃないか。こんな所で何をやっているの?」
ハンジは幼馴染みを見つけて、少し安心した反面、何故彼がここにいるのか疑問に思った
モブリット「僕も君と一緒に旅に出たいんだ。連れていってもらえないかな…?」
モブリットは思い詰めた様な表情をしていた
ハンジ「君は大商人の息子だよ。ちゃんと立派な商人にならなくちゃ」
ハンジの諭すような言葉に、首を横に振るモブリット
モブリット「商人では、一緒にはいけないかい…?」
ハンジ「ごめん、もう仲間は集まったんだ…モブリットは、ちゃんと家を継げるように、立派な商人になるんだよ?」
ハンジは優しい声色で、モブリットに言った
モブリットはしばらくじっとハンジを見つめていたが、やがて笑顔になった
モブリット「わかったよ、ハンジ、気を付けて。もし僕が役に立てる事があったらいつでも言ってくれよ」
ハンジはモブリットの肩をぽんと叩いて、踵を返した
大分オーソドックスなPTになったな
リヴァイ「おい、ガキ…あいつ、ついて行きたそうだったじゃねぇか。置いていっていいのかよ?」
酒場を出るなり、リヴァイはハンジに言った
ハンジ「私はガキなんて名じゃない、ハンジだよ。…モブリットは、大店の息子なんだ。この旅に連れていくなんてできないよ」
ハンジははぁ、とため息をついた
エルヴィン「…ハンジ殿は優しいな。彼にはまだハンジ殿と旅ができる様な力が無いから、断ったのでしょう?」
ハンジ「…そうだよ…でも、モブリットには才覚があるんだ。商人としての…だから…」
そう言って俯くハンジの頭を、ワシャワシャと撫でるミケ
ミケ「時には辛い選択もしないとな、処女」
ハンジ「ち、ちょっとお!ミケ!?」
エルヴィン「ハンジ殿、そうだったのですね」
リヴァイ「…興味ねぇ」
ハンジ「二度と私を処女って呼ぶなぁぁ!!」
ハンジは町中で叫び、墓穴を掘るのだった
ハンジ「ねぇ、エルヴィン」
エルヴィン「何でしょうか、ハンジ殿」
エルヴィンはハンジに優しげな光を宿す瞳を向けた
ハンジは、その青い瞳に自分の姿が映っている事に、ドギマギした
ハンジ「その、ハンジ殿って言うのとか、敬語とか、止めてくれない?普通に話してよ。私はガキなんだし」
エルヴィン「普通に…ですか?」
エルヴィンは首を傾げた
ハンジ「うん、さっきミケやリヴァイに話していたのと同じ様に。敬語使われるような柄じゃないんだよね」
エルヴィン「ご命令とあらば、そういたしますよ、ハンジ殿」
そう言って恭しくお辞儀をするエルヴィンに向かって
ハンジ「エルヴィン、君、わざとやってるだろ!?」
ぷうっと顔を膨らませるハンジであった
HPと力の高い魔法使いとかチートすぎるw
>>29
w
ハンジ「さあ、今度こそ出発しよう!」
パン!!と両頬を叩いて気合いを入れ、ハンジは町の門に向かって歩き始めようとした
エルヴィン「ハンジ、待ちなさい」
その後ろ姿にエルヴィンが声を掛かる
ハンジ「エルヴィン、何だよ…」
気を削がれて不貞腐れたように振り向くハンジ
エルヴィン「まずは装備の確認と、薬草や毒消し草を準備しなければならないよ」
エルヴィンは優しく、諭すように言った
リヴァイ「まさか何の準備も無く旅に出る予定だったのか…?クソガキ」
リヴァイは眉をひそめた
ハンジ「うるっさいなあ!!リヴァイ!!わかったよ、薬草と毒消し草買いに…」
そこまで言った時、ハンジの頭をわしゃっと掴むミケ
ミケ「…知り合いか?処女」
ハンジ「また言うか!?って…あ…」
ミケの指差す方向には、見知った顔がいた
心配そうに、顔を曇らせている…ハンジの母だった
ハンジ「お母さん…」
ハンジは母に駆け寄った
母「ハンジ、無事に王様にご挨拶出来たのね…今から出立するの?」
母の不安げな表情を見ながら、頷くハンジ
ハンジ「お母さん、行ってくるね」
母「ハンジ、これをもってお行きなさい…」
母はハンジに皮で出来た、巾着袋を手渡した
中には…薬草や毒消し草、マヒをなおすまんげつ草などが入っていた
ハンジ「お母さん…ありがとう。必ず魔王を倒して帰ってくるからね」
ハンジははにかんだような笑顔で、母にそう言った
母は娘の後ろに立つ男達に頭を下げた
母「どうか娘を、よろしくお願いいたします」
エルヴィン「ハンジ殿の母君、ご安心下さい。我々が必ず娘さんを御守りいたしますから…」
母の手をとり、頷くエルヴィン
ミケ「…スンスン…」
ミケは母の後ろに回り込んで、匂いをかいだ
リヴァイ「まあ、俺がいるから大丈夫だ、死なねぇさ」
言葉はぶっきらぼうながら、不思議と優しい眼差しを、ハンジの母に向けるリヴァイであった
母は娘を抱き締めた
母「ハンジ…行ってらっしゃい。疲れたら戻ってきて、休んでね…」
ハンジ「うん、わかったよ、お母さん」
母は名残惜しそうに、娘を抱く腕を離した
ハンジ「じゃあ、行ってくるね」
ハンジは、心配そうな母の頬にそっと口づけし、踵を返した
ハンジと仲間達は、魔王討伐の旅に出立した
>>30
スレ紹介どうも!
>>26
分かる。俺は武道家じゃなくて戦士だったが
んで、魔法使いを賢者にするんだよな
期待!
旅立ちとはせつないものよの…
ミケ頑張ってねミケ
めっちゃ強そうなパーティだなw
今回も期待してる!
アリアハン城下町を出て西へ
明るい陽射しに、爽やかな風に包まれて、勇者一行は進む
こうして歩いていても、世界が魔王に脅かされているとは思えない…だがこうしている今も、魔王の手下達は、人間を脅かそうとしている
アリアハンは、島国だ
だからこそ、魔王の脅威を身近に感じにくいのである
ハンジはそう考え、つい急いでしまうが、そういう時に苦言を呈するのは、彼の役目になりつつあった
エルヴィン「ハンジ、そんなに急いでは、長く歩く事ができないぞ」
ハンジ「だって、のんびりしている間に、魔王がどんどん勢力を伸ばすじゃないか…沢山の人が犠牲になっちゃうし…」
ハンジは真剣な眼差しをエルヴィンに向けた
ミケ「まあ、気持ちはわからんでもないが、焦った所でどうしようもないぞ、しょ…」
言いかけたミケの口を慌てて手で塞ぐハンジ
ハンジ「言うなって言っただろ!?ミケのばか!!」
ミケ「フン…」
リヴァイ「そういやあ、まだこのアリアハン大陸から出る方法すらわからないよな…?そう言う眉唾物な話が好きなじいさんなら知っているが…」
アリアハン大陸は島国だ
船があるにはあるが、アリアハンにある船は貴重で、かつ他の大陸に移動できるほどの代物ではなかった
他の大陸になら、立派に大海原を渡る船があるかもしれないが…
船で渡らないなら、一体どうやって海に隔たれた他の大陸に行くのだろうか
ミケ「そのじいさんに会うには、《なじみの塔》に登らんとな…」
なじみの塔とは、アリアハン大陸の西の離れ小島にある、もともとは灯台として使われていた塔だ
今では魔王配下のモンスターが徘徊する、危険な場所になっていた
ハンジ「離れ小島にあるから、船で渡る必要があるかな…」
ハンジの疑問に、緑の装束をまとった小柄な男…リヴァイが首を振った
リヴァイ「なじみの塔に行くには、洞窟を通るんだ。海底洞窟になっていて、塔の地下と繋がっているはずだ」
ハンジ「ふぅん、リヴァイって物知りなんだね」
少し感心したようにリヴァイの顔を覗くハンジ
リヴァイ「お前が物を知らなすぎなんだよ、クソガキ…」
リヴァイはふぃっとそっぽを向いた
だが何故か頬が少々赤かった
3は勇盗商遊とかぼっちプレイでも進められるからバランスいいよな
>>43
そのpt成長したらバランスよさそう
DQ3一番好きだから、その話ができるのが嬉しい
年がばれる
>>45
しー
ナジミの塔に繋がる洞窟までの道のりを、各々の自己紹介がてら話ながら歩く
エルヴィン「私は僧侶なんだが、剣で戦うのも好きなんだよ。だからMP切れになったとしても、戦えるよ」
MPとは、マジックパワーの事で、魔力の容量である
この容量が大きいほど、魔法を休み無く、沢山使える
宿などに泊まると回復するが、洞窟や塔などの長期戦の探索では、このMPを温存しつつ戦うことも必要になってくる
ハンジ「確かにエルヴィンは、僧侶にしてはがたいが良いもんね。頼りになりそうだよ」
ハンジは納得したように頷いた
ミケ「俺は…見た目の通りだ」
ハンジ「…うん。強そうだと思ったから声かけたしね」
エルヴィン「さすがは勇者殿、ミケを真っ先に見つけるとは、見る目がありますね」
ハンジ「だからその話し方やめてってば!!エルヴィン!!」
リヴァイ「エルヴィンは、そうやって人をからかうのが趣味だと付け加えておく」
リヴァイが、エルヴィンをちらりと見て言った
ミケ「そうだな…」
エルヴィン「お前達、人聞きの悪い…」
ハンジ「そうは見えないけどなあ…」
エルヴィンは、ハンジの目には紳士な聖人君主のように映っていたのだ
リヴァイ「それはお前がガキだから見破れねぇだけだ。見た目で判断するんじゃねぇよ」
リヴァイはふん、と鼻をならした
ハンジ「リヴァイは、凄腕の魔法使いなんだろ?」
ハンジの問いに何故かエルヴィンが
エルヴィン「凄腕なんだが…」
と言いかけたその時
ミケ「魔物がいるぞ…」
ミケの指差す茂みの中で、何やらガサガサと音がした
ハンジ「魔物…?!」
ハンジは剣を構えた
エルヴィンは、油断無く瞳を周囲に這わせている
すると茂みから、数匹の魔物が飛び出してきた
青くてぷにぷにした、丸くて頭の先が角のように尖っている…
つぶらな瞳に、愛嬌のある口
ハンジ「スライムだ…かわいい!!」
ハンジがスライムに近づこうとした瞬間、その可愛らしい魔物が、ハンジに体当たりを食らわせた
ハンジ「うわっ!!痛っ!!」
ハンジは尻餅をついた
数匹のスライムは、一行に一斉に襲ってきた
ミケ「やっ!!」
飛びかかってきたスライムを、回し蹴りで仕留める
エルヴィンは、尻餅をついたハンジに襲いかかろうとしたスライムを、剣で切り裂いた
そしてリヴァイは…
数匹のスライムに囲まれながら、…何故かひのきの棒を片手に一本づつ持って構えている
ハンジ「リヴァイ!?君なにやってるの?魔物相手にひのきの棒って…しかも二本持ってさ…囲まれてるよ、助けなきゃ…」
駆け寄ろうとするハンジをエルヴィンが止める
エルヴィン「ハンジ、リヴァイの戦いを見ておきなさい」
ハンジ「えっ…?」
リヴァイは、ひのきの棒を両手に持ち、それを素早い動きと絶妙な力加減で器用に操り、数匹のスライムを叩き潰した
リヴァイ「ちっ…汚えな…よごれちまいやがった…」
神経質そうに、自前のひのきの棒を、ハンカチで綺麗にぬぐった
因みにひのきの棒は、まさにただの棒
魔法使いの最初の装備で、最弱の武器である
はっきりいって、素手と変わらない攻撃力だ
ハンジ「エルヴィン…凄腕ってまさか…」
エルヴィン「ああ、リヴァイは魔法使いだが、二刀流剣術にも長けているんだ」
ハンジ「あれは剣じゃないし…というか、リヴァイ強い…」
リヴァイ「俺は魔法使いだ。剣は装備できねえ。だからひのきの棒
で戦ってるだけだろうが」
ハンジ「なんで戦士にならなかったの…?強いのに…」
リヴァイ「俺の家系は代々魔法使いだからだ」
きっぱり言い切るリヴァイ
ミケ「宝の持ち腐れだろ?」
エルヴィン「何度も戦士になれと言ったんだが、聞かなくてな…」
ミケとエルヴィンは、二人揃ってはあ、とため息をついた
リヴァイ「まあ、MPの温存のために、ひのきの棒を使って切って…いやどついているが、たまには魔法を使ってやるから安心しろ、くそガキ」
ハンジ「たまにはって、君は魔法使いだろ!?」
ハンジの悲鳴の様な叫びが辺りに響いた
今だったら、魔法戦士が合ってる
DQ3にはないけど、エルヴィンはパラディンぽいな
ミケすんが毎度ハンジを処女呼ばわりするのは、いずれそうでなくなって気付かれるフラグと見たw
ハンジ「せめてひのきの棒じゃない武器装備した方がいいよね…」
戦いで汚れたゴーグルをくいっと上にあげ、思案顔をするハンジ
リヴァイ「このひのきの棒は、俺の相棒だ。切っても切り離せない」
リヴァイは不機嫌に眉をしかめた
エルヴィン「だがな、リヴァイ。現実問題として、魔王をひのきの棒で殴って倒せると思うか?」
エルヴィンは深刻そうに、顔を曇らせたが、リヴァイは意に介する様な素振りも無く…
リヴァイ「頑張り次第じゃねぇか?…お前らの…」
そう言って、明後日の方向に視線をやった
ハンジ「他力本願かよ!?真面目にやらないなら、酒場に戻すからね?リヴァイ!!」
リヴァイ「ふん、やれるもんならやってみやがれ」
ハンジ「私は本気だよっ!?」
ミケ「…まあ、一応魔法も使えたはずだから大丈夫だとは思うが…」
エルヴィン「リヴァイに、魔法を使う気があればいいがな…」
ちらりとリヴァイに視線を向けるエルヴィンとミケ
ハンジはぽん、と拳で手のひらをたたいた
ハンジ「わかった!!リヴァイ、君は本当は、魔法が使えないんだろ!?絶対そうだよ!!」
リヴァイ「俺は魔法使いだっつってるだろうが、クソガキメガネ」
ハンジ「なんかあだ名が長くなってる!?」
ミケ「クソガキ処女メガネ」
エルヴィン「…ははは」
ハンジ「みぃけぇぇぇぇ!!言うなって言ったのにぃ!!…そこ、エルヴィン笑わないっ!!」
ハンジは涙目になりながら、ミケの頬を手を伸ばして引っ張るのであった
ハンジ「はぁ、勇者とは言え、一応女の子なんだからさあ…処女だとかクソだとか言わないでよ…」
ハンジはしょんぼり俯いた
エルヴィン「笑ってすまなかった、機嫌を直してくれ、ハンジ」
優しい声色でそう言いながら、拗ねるハンジの頭を撫でてやるエルヴィン
リヴァイ「クソガキにクソガキと言って何がわりぃんだよ」
ミケ「処女に処女と…痛っ!!」
ミケの脇腹に肘鉄を食らわすハンジ
ハンジ「そもそもリヴァイ、君が魔法使いなのに魔法を使わないからこうなってるんだろ?!」
ハンジは顔を真っ赤にして、リヴァイに詰め寄る
リヴァイ「だから、必要になれば使ってやるって言ったはずだが」
少々後ずさりながら、眉をひそめるリヴァイ
エルヴィンは、そんな二人に割って入った
エルヴィン「リヴァイは本当に魔法も使えるよ。だから安心するといい。ひのきの棒では戦えないと分かる日は、そう遠くないはずだ」
エルヴィンは、ハンジの肩にそっと手を置いた
ミケ「さっきのスライム位ならひのきの棒で十分だが、ナジミの塔の魔物には、どうだろうな」
ハンジ「…リヴァイの魔法には、期待しないでおくよ…」
はぁ、とため息をついたハンジであった
そうこうしている間に、ぽっかりと洞窟の入口が見えてきた
ハンジ「あれが、ナジミの塔に続く洞窟?」
リヴァイ「ああ、そうだ」
洞窟の入口はぽっかり口を開けた闇夜のように、妙に不気味に見えて、ハンジは体をブルッと振るわせた
エルヴィン「大丈夫だよ、ハンジ」
エルヴィンはハンジの背中をぽん、と叩いた
ミケ「しっかりしろよ、勇者」
ミケはハンジの頭をぐしゃっと混ぜた
リヴァイ「…洞窟位でびびるなよ、クソガキ」
リヴァイはふん、と鼻で笑って呟いた
ハンジ「…ふーん、リヴァイは魔法使えない上に、私の名前が覚えられないんだね?ばーか」
ハンジはからかうような口調でリヴァイに言った
リヴァイ「誰が馬鹿だって!?クソガキ!!」
ハンジ「リヴァイ、きみだよ!!ふん!!」
そしてまた喧嘩になる二人
エルヴィン「二人とも、喧嘩をするな!!リヴァイもしつこいぞ。ちゃんと名前で呼ぶんだ」
ミケ「そうだそ、ハンジは勇者だ…処女だがな」
フッと鼻で笑う、長身の男
リヴァイ「ちっ…」
ハンジ「ミケぇ!!」
エルヴィン「…そろそろ行くぞ?二人とも」
エルヴィンははぁ、とため息をもらして呟いた
ゲームはちがうけど、リヴァイの魔法剣フレア二刀流乱れうちとかクッソたぎる
(でもひのきの棒)
>>60
FF5かな、それは滾るわ
ひのきの棒ってのがミソだね
勇者一行は、洞窟内に足を踏み入れた
エルヴィンが松明を持って先頭に立ち、その後をハンジがきょろきょろしながらついて行っている
ミケとリヴァイは、暗闇に異変がないかを確認しながら後からついてきていた
ミケ「スンスン…エルヴィン、ハンジ、待て。匂うぞ」
ミケの声に、歩みを止める二人
エルヴィン「どの方向だ?」
ミケ「左手の、奥だな」
ミケがそう言った瞬間、バサバサバサッと羽音の様な音が鳴った
『カ~カ~!!』
そんな鳴き声と共に左手から飛び出してきたのは…
リヴァイ「おおがらすか」
名前のとおり、体長1メートルはあろう大きなカラスだった
嘴が異様に大きく、鈍く光っていた
ミケ…「4匹だ…やるぞ」
ミケは拳を胸の前で握り、片足を後ろに引く
おおがらすが、一斉に襲ってきた!!
ハンジに向かって…
ハンジ「…きゃぁぁ!!」
と言いながら剣を構えるハンジ
リヴァイ「おせえんだよ、ばかが!」
ハンジに走り寄るリヴァイ
スパパパン!!
リヴァイのひのきの棒が、ハンジをつつこうとしたカラスの嘴を叩き割る
嘴を叩き割ったついでの返す刀…ではなくひのきの棒で、体をスパンッと叩く
おおがらすを仕留めた
ハンジ「ちょっと油断しただけだよ!!」
ハンジは剣をしっかり構え直す
上段に、まるでかざすかの様に…
エルヴィン「…スカラ!」
エルヴィンの手から放たれた光が、ハンジの体を包む…
エルヴィンが放った、僧侶の神聖魔法、『スカラ』だ
一人の防御力を上げる効果がある
おおがらすは大きな翼を羽ばたかせ、舞い上がろうとした瞬間…
ハンジ「どっせい!!」
ハンジは素早く駆け寄り、銅の剣を降り下ろした
カラスは真っ二つになった
エルヴィン「あと二匹だ、ハンジ、後ろだ!」
ハンジ「わっ…」
後ろから襲われたハンジは、お尻をつつかれた…が…
エルヴィンのスカラのおかげで、体に傷ひとつ付くことはなかった
ハンジは銅の剣を横凪ぎにする
スパッ…
切っ先がカラスの体を捕らえた!!
おおがらすをやっつけた
残る一匹は…
「フッ…!」
ミケの放った無造作にも見える、だが伸びるような拳の一撃が仕留めた
ハンジ「ふぅ、エルヴィンありがとう。君の魔法のお陰で怪我をせずに済んだよ」
額の汗を手の甲で拭いながら、にこっと笑うハンジ
ミケ「ハンジもなかなかやるな」
ミケはハンジの頭にぽんと手を置いて言った
エルヴィン「ハンジ、よく鍛練していたんだな、無駄のない美しい動きだったよ。最初油断したのが惜しかったな」
ハンジ「ああ、ごめんね…もう実戦なんだもんね、いつでも戦えるように、武器を出せるように、気持ちも落ち着かせないとね」
ミケに頭を撫でられながら、真剣な目をするハンジであった
リヴァイ「ちっ…また汚れた…」
リヴァイはひのきの棒についたカラスの羽や血を、布で拭っていた
ハンジ「結局、リヴァイは魔法を使わなかったね。やっぱり使えないんでしょ?」
リヴァイの顔を覗き込む様に問うハンジ
リヴァイ「使えないんじゃねぇ、使わないんだ、しつこいぞクソメガネ…」
綺麗になったひのきの棒を腰の左右にさして、ハンジを睨むリヴァイ
エルヴィン「カラスが宝を持っていたよ。薬草と、Gだな」
エルヴィンは、ハンジにそれらを手渡した
ミケ「さて、先に進むぞ」
一行はおおがらすを倒し、一路ナジミの塔へ向かって洞窟内を進んだ
エルヴィン「あの階段が、塔に繋がっているのかな?」
エルヴィンが指差す方向には、上に上がるための階段があった
リヴァイ「ああ多分そうだ、さっさと行こう」
ハンジ「ねえリヴァイ、塔は明るいのかなあ…洞窟は暗くてなんだか怖いからやだよ…」
自分の体に腕をまわして震えるハンジ
リヴァイは、疑わしげな目をハンジに向ける
リヴァイ「…暗いのが怖い勇者って聞いたことねぇ」
ハンジ「勇者だっていってもさ、街の外に出るのだって初めてなのに、仕方ないだろ…怖い物の一つや二つ…」
ハンジは口を尖らせた
エルヴィン「そうだな、ハンジだって普通の17才の女の子だしな。それに、少しは怖い事があった方がかわいらしいしな」
エルヴィンはそう言って、ハンジの肩に手を置いた
ミケ「戦っている姿はなかなかかっこよかったしな」
ハンジ「そ、そうかな!!」
顔をぱあっと花が咲いた様に明るくするハンジ
リヴァイ「おい…さっさと塔に行くぞ?」
リヴァイはそう言うと、階段を一人で登って行った
三人も後を追って階段を昇った
ナジミの塔の中は、所々日が差し込み、明るかった
ハンジ「良かった~明るいね!!」
ハンジは嬉しそうにスキップをしながら歩みを進めようとした
ミケ「ハンジ、先々行くな」
それをミケに止められる…頭を掴まれて
ハンジ「ミケ、いちいち頭掴まないでよ!?」
頭にあるミケの手を自分の手で掴む
ミケ「ちょうど掴みやすいからな…フッ」
鼻で笑うミケ
エルヴィン「頭を掴まれる役が、リヴァイからハンジになったな、ははは」
ハンジ「リヴァイも頭掴まれてたのぉ」
ミケ「ああ、だがハンジの頭の方が、掴みやすいぞ」
ミケはそう言って、リヴァイの頭を掴んだ
リヴァイ「…ちっ。ミケ、離せ」
リヴァイは眉をひそめた
ハンジ「リヴァイ、なんだかかわいいなあー」
ハンジがその様子をあどけない笑顔で見ていた
エルヴィン「かわいいだろ?」
ククッと笑うエルヴィン
リヴァイ「エルヴィンてめぇ!!ミケ、いい加減離せ!」
リヴァイは頭を振って、ミケの手を振りほどいた
ハンジ「…あ、ねえ、あそこになんかいるよ?なんだろ。ピョンピョン…」
ハンジが指差す方向に、ピョンピョン跳ねる影が数個見えた
その影が、ハンジ達に近寄ってくる
リヴァイ「フロッガーだな。襲ってくるぞ」
フロッガーは、大きく毒々しい緑のヒキガエルである
ギョロッとした目に、口からはチロチロと長い舌
ハンジ「うっわ、気持ち悪…ぬるぬるしてそう」
ハンジは剣を上段に構えながら呟いた
フロッガーは三匹いた
びよんびよんと飛びはね、一行に襲い掛かってくる
ミケ「フッ!」
ミケの鍛え抜かれた脚が、飛びかかってきたフロッガーを蹴りつける
まるで脚自体が伸び縮みしている様に見える程のスピードだ
脚がヒットするやいなや、代わりに延びてきた手刀がフロッガーに止めをさした
ミケはフロッガーを倒した
ハンジ「たあ!!」
ハンジはフロッガーの見た目に嫌悪感を抱きつつも、片足を軸に体をくるっと回転させ、その勢いでフロッガーの腹を剣で切り裂いた
ハンジはフロッガーを倒した
エルヴィン「ヤッ!!」
エルヴィンの剣が、フロッガーの体に斬撃を加える
リヴァイ「止めだ…セイッ!!」
エルヴィンに体を裂かれてなお生きているフロッガーに、リヴァイが引導を渡した…勿論ひのきの棒で…
フロッガーの群れをやっつけた
エルヴィン「リヴァイ、助かったよ」
エルヴィンは、几帳面にひのきの棒を拭くリヴァイに頭を下げた
リヴァイ「いや、ひのきの棒であの気持ちわりぃ蛙を殴るのが嫌で、躊躇してしまった」
ハンジ「そういう時には魔法使えばいいんじゃないの?触らなくても倒せるじゃないか?」
ハンジの言葉にはっとするリヴァイ
リヴァイ「確かにそうだったな…」
ハンジ「そうだよ。リヴァイって結構天然だなあ」
リヴァイ「はあ!?てめぇに言われたくねえよ!くそガキ!!」
ハンジ「なんだよ!!ちびちび!!」
リヴァイ「てめぇ!!言いやがったな!?」
二人はお互いの襟首をつかんで喧嘩をはじめた
ミケ「どっちもどっちだな」
エルヴィン「案外気が合うのかもしれんな、あの二人」
リヴァイとハンジの様子を見ながら、小さな声で言う二人であった
なかなか順調ジャン?
ハンジさん17さいww
リヴァイの緑の装束は調査兵団マントかと思ったが、オリジナルの魔法使いスタイルか
とんがり帽子…
確かにwww
ハンジさんは年増のイメージがあるから17歳とかイチゴリップとかは斬新だな
作者の文章が上手く誘導してくれてるから違和感ないけど
ナジミの塔の2階にたどり着く
ハンジ「この塔は何階まであるんだろ、結構高そうだよね?見た目は」
ハンジは、リヴァイが被る、魔法使いのトレードマークの緑のとんがり帽子の先を、ピンピン引っ張りながら言った
リヴァイ「おい、帽子触るじゃねぇよ!!形が崩れるだろうが!?」
ハンジ「リヴァイ良く似合うよね、まるでおとぎ話に出てくる小人みたい。かわいいなあ!!」
エルヴィン「背丈はかわいいが目付きがな…」
ミケ「人相の悪い小人だな」
リヴァイ「お前らいい加減にしろ!!」
リヴァイは激昂した
エルヴィン「おっと、魔物がお出ましだぞ」
エルヴィンが身構えた
それは、緑のアメーバーの様な流体で、毒々しい色合いをしていた
洞窟の手前で遭遇した、スライムと顔は酷似していた
リヴァイ「バブルスライムだ。毒を持っているから、うかつに攻撃を食らうなよ?」
リヴァイはひのきの棒を2本構えた
ミケ「厄介だな…蹴りいれた瞬間毒を貰いそうだ」
ミケは困ったように肩をすくめた
ハンジ「ミケは下がっていて?私たちでやろう」
ハンジも剣を構えた
リヴァイ「ちっ…仕方ねぇな…」
バブルスライムは5匹いた
ヌラヌラヌラ…
バブルスライムが一行に襲いかかる、その瞬間…
リヴァイ「…メラ!」
リヴァイの手から放たれた火の玉が、一匹を蒸発させる
ハンジ「…魔法だ…使えたんだね!!ってやあ!!」
ハンジは襲いかかってきた二匹をくるくるっと踊るような剣舞で、一気にしとめた
エルヴィン「はっ!!」
エルヴィンの銅の剣が一匹のバブルスライムを潰す
残る一匹は…
リヴァイ「メラ!!」
リヴァイが放つ火の玉によって蒸発した
魔法使いリヴァイちゃん
リヴァイと魔法…なんか相性よさげに感じてきた
>>79
リヴァイは何やらせてもそつなさそう
ハンジ「リヴァイ、ちゃんと魔法が使えたんだね!!疑ってごめん」
手をあわせて、ペコッと頭を下げるハンジ
リヴァイはそんなハンジに、ちくりと刺すような視線を投げる
リヴァイ「だから言っただろうが…魔法使いだとな」
ふんっと鼻を鳴らした
エルヴィン「使えたのは知っていたが、あまりにも使わないから忘れたのかと、内心焦っていたよ」
エルヴィンはほっと胸を撫で下ろした
ミケ「さすがにひのきの棒はあきらめたか」
リヴァイ「んなわけねえだろ。まだまだこいつでやれるさ。きたねぇ奴は、魔法で仕留める事にしただけだ」
ハンジ「ってことは、魔王がきたねぇ奴じゃなかったら、ひのきの棒で…?」
眉をひそめるハンジにリヴァイは
リヴァイ「ま、時と場合に寄るが、その可能性はあるな」
の、藪にらみの目をハンジに向けた
エルヴィン「とりあえず、三階へ上がろう」
一行は、三階へ歩を進めた
三階は、塔から外を見渡せる様な造りになっていた
ハンジ「うわー高いね!!ねえ見てみて!?アリアハンがあそこに見えるよ!!」
ハンジは初めて登る高い場所と景色に、興奮の色が隠せない
ミケ「あまり身を乗り出すな。落ちるぞ?処女」
ハンジの頭を掴みながら、低い声でぼそっと言うミケ
ハンジ「忘れた頃に言ってくるね、ミケ…」
ハンジはじと目でミケを見やった
エルヴィン「確かに眺めがいいな。潮風を感じるよ」
エルヴィンの金の髪が、風に揺らめいた
リヴァイ「…風が強くて帽子が飛ぶ…」
リヴァイは、大事そうにとんがり帽子の鍔を手でおさえた
ハンジ「ずっと見ていても飽きないけど…進まなきゃね」
ハンジが後ろを振り返った時…
ハンジ「何かいるね、ちょうちょかな」
ミケ「ちょうちょだな。でかすぎるが」
リヴァイ「あれは…じんめんちょうだ。見てみろ、羽はあるが、顔もあるだろ…?気持ちわりぃ…」
リヴァイは眉を引き絞った
エルヴィン「後背を取られては厄介だな、こちらから行こう」
一行は、じんめん蝶に戦いを挑んだ
じんめんちょうは三匹いた
リヴァイ「どいつも気持ちわりぃ面してやがる…」
限界まで眉を引き絞り、顔を歪めるリヴァイ
ミケ「おっさんの顔だな」
ハンジ「キテレツだなあ…」
3人が口々に文句を言った時…
じんめんちょう「マヌーサ」
じんめんちょう「マヌーサ」
じんめんちょう「マヌーサ」
三匹のじんめんちょうがマヌーサと呼ばれる、相手に幻を見せる魔法をかけた
ハンジ「わっ!!」
ハンジは幻に包まれた!!
ミケ、リヴァイ、エルヴィンは何とか耐えた
ミケ、リヴァイ、エルヴィンは何とか耐えた
エルヴィン「しまった、ハンジに掛かってしまった」
ハンジ「うわぁ!!魔物めぇ!!いつの間にこんなところに!?」
ハンジは叫びながら、リヴァイに剣を振り上げた
リヴァイ「ちっ!掛かりやがったか…くっ」
ハンジの回転剣舞がリヴァイを容赦なく襲う
今ハンジは、マヌーサの呪文の影響下にあり、味方が敵に見える幻を見ているのだ
リヴァイはひのきの棒と、自らの身のこなしで何とかハンジの攻撃を躱していたが、その攻撃は思いの他激しかった
エルヴィン「ミケ、一気にやろう。リヴァイはそう長くもたない」
ミケ「…」
ミケは無言で頷くと、まるで猫の様にするするっと軽い足取りで、一気にじんめんちょうとの距離を縮める
エルヴィン「…スカラ!」
エルヴィンのスカラがミケの体に光となって宿る
ミケ「フッ…ヤッ…ハアッ!!」
矢継ぎ早に拳と脚を繰り出すミケ
まさに電光石火
しかし速いだけではなく、その一つ一つの攻撃には重い力が加わっていた
じんめんちょうも、ミケに噛みつきにかかる…が、その攻撃の殆どは、エルヴィンのスカラによって弾かれた
幾つかの擦り傷は作ったものの、素早くじんめんちょうの群れをやっつけた
ほぼ同時に…
リヴァイ「ちっ…!」
バキッ!!
リヴァイのひのきの棒が、ハンジの剣によってへし折られた
ハンジ「うっ…!」
ハンジが頭を抱えてその場にうずくまる
リヴァイ「おいクソちび」
リヴァイはその場にひざまづき、ハンジの頬を軽く叩いた
ハンジ「…う…あっ、リヴァイ…何か夢見てたみたい…」
ハンジは目を開け、頭をふるふると振った
エルヴィン「ハンジ、大丈夫か?」
エルヴィンとミケが二人に歩み寄った
ハンジ「うん…何かやった?私…」
エルヴィン「マヌーサの呪文に掛かってしまったんだよ、ハンジ」
ハンジ「マヌーサ…幻影呪文だよね…油断した…」
リヴァイ「…ちっ」
リヴァイは無惨に折られた愛用のひのきの棒を見て、舌打ちした
ハンジ「もしかして、私はリヴァイを襲ったの?」
ミケ「ああ、凄い回転剣舞で襲っていたぞ、処女」
ミケの言葉にもろくに反応せず、虚ろな目をリヴァイに向けるハンジ
ハンジ「…それ、私が折ったの…?リヴァイ」
リヴァイ「ああ、そうだ」
リヴァイはふん、とそっぽを向いた
ハンジ「ごめんね、リヴァイ…私が不甲斐ないばっかりに」
ハンジは泣きそうになりながら、立ち上がって俯いた
エルヴィン「仕方がないさ、マヌーサの呪文は誰にでも掛かる可能性がある。皆が大怪我せずにすんで、良かったよ」
エルヴィンはそう言って、ハンジの頭を優しく撫でたが…
ハンジの表情が明るくなる事はなかった
リヴァイ「…まあ、いいさ。ひのきの棒の1本や2本。また新しいのを買えば済む」
リヴァイは立ち上がり、俯くハンジの肩をぽんと叩いた
ハンジ「リヴァイ…ごめんね、ありがとう」
ハンジはリヴァイに泣き笑いの様な笑顔を見せた
リヴァイ「…ふん」
またそっぽを向いたが、照れ隠しにしか見えなかった
ミケ「これを期に、ひのきの棒を卒業しろ、リヴァイ」
エルヴィン「そうだな、折れて丁度良かった。そろそろ聖なるナイフくらいの武器にしないとな」
ミケとエルヴィンの言葉に、リヴァイはまた不機嫌になる
リヴァイ「俺はまたひのきの棒を買うんだよ…勝手に人の使う武器を決めんな!!」
口を尖らして叫ぶリヴァイ
ハンジ「……あはは!リヴァイ、うんうん、ひのきの棒買おうね!!あはは」
ハンジはそんなリヴァイの様子に、笑いが止まらなくなった
リヴァイ「クソガキ…馬鹿にしてるだろ…?お前…」
ハンジ「あはは、うん馬鹿にしてる!!だってまたひのきの棒に拘ってて、おかしいもん!!あは」
リヴァイ「クソガキ!!」
リヴァイはハンジの頬をつねった
ハンジ「痛いよ!!!ちびっ!!」
ハンジも負けじとリヴァイの頬をつねった
エルヴィン「ははは、お前ら仲良しだな」
ミケ「青春てところか」
リヴァイ「誰と誰が仲良しなんだよ!!」
ハンジ「喧嘩してるのに、仲良しなわけないよ!?」
エルヴィン「ははは」
ミケ「まあ、先に進むか…次の階にじいさんがいるはずだ」
一行はナジミの塔最上階に向かった
このスレばかりは読む時に鳥山明絵で想像するべきかw
リヴァイはテリーやトランクスが親和性高そう
ハンジは…アラレちゃん?
>>94
鳥山絵で想像萌え
ハンジアラレちゃんw
ナイルが出てたら、亀仙人エルヴィン、鶴仙人ナイルかな…
(私はエルヴィン好き)
これってリヴァイ→ハンジ要素有り?
>>96
あるかもしれません…考えて中です
勇者ハンジ一行は、ついにナジミの塔四階にたどり着いた
リヴァイ「よう、じいさん。元気だったか?」
四階に上がるや否や、リヴァイは本に囲まれた部屋の片隅で、読書に耽っていた老人に歩み寄った
じいさん「…おお、リヴァイじゃないか。久しいのう」
老人は、本から視線をリヴァイに移して、シワの深い顔をよりくしゃっと崩した
ハンジ「こんにちは、お爺様」
ハンジはまた、猫をかぶって可愛らしくお辞儀した…初対面の人に対しては猫をかぶって様子を伺う事が常である
エルヴィン「老人、読書にせいが出ますな」
ミケ「…」
エルヴィンとミケも、頭を下げた
老人「そこの女子はまさか…勇者オルテガの子、ハンジか?」
老人は三人にも目をやり、頭を下げた後、ハンジをじっと見つめた
ハンジ「はい、そうです、ご老人」
ハンジは今一度お辞儀をした
リヴァイ「どうやら俺たちは勇者一行の仲間になったらしい。俺たちを連れて、魔王を倒しにいくんだとよ、じいさん」
リヴァイが肩を竦めて言った
老人「そうじゃったか。リヴァイが勇者一行の仲間か。珍しい風の吹き回しじゃの」
そう言ってフォフォフォと笑った
エルヴィン「ご老人、その旅を続けるために、あなたのお力をお借りしたいのですが…アリアハンから出る方法をご存じではありませんか?」
エルヴィンは、恭しく頭を下げた後、言葉を続けた
老人「アリアハンから出る方法か…一つは、リヴァイが魔法使いとしてかなり修練を積み、新たな魔法『アバカム』を習得する事で、アリアハンから他の大陸に繋がる道…旅の扉のある祠の鍵をあける事じゃ」
リヴァイ「アバカム…鍵解除呪文か。あれはまだまだ俺の魔力では扱えねえよ、無理だ」
リヴァイは頭を振った
ミケ「旅の扉は聞いたことがある。世界各地に点在する、大陸と大陸とを繋ぐワープの様な存在らしいな…」
老人「そうじゃよ。その通りじゃ」
老人は頷いた
老人「あともう一つは…アリアハン大陸東にある、いざないの洞窟の最奥にある旅の扉で、大陸を渡る方法じゃ」
リヴァイ「…だが、いざないの洞窟は、入口が固く岩で閉じられてしまっていて、中に入る事が出来ねぇ」
リヴァイは眉をひそめた
老人「そうじゃよ。もう一つの方法は…その岩を破壊し、いざないの洞窟を抜けるという方法じゃ」
エルヴィン「それが可能なら…」
老人「…可能じゃよ。勇者ハンジよ、お主にこれを与えよう」
老人は立ち上がり、ハンジに歩み寄ると、一つの小さなブリキの鍵を手渡した
ハンジ「鍵…」
老人「それは、『盗賊の鍵』じゃ。お主になら正しく扱えよう。ある程度の難度の鍵の掛かった扉であれば、その鍵で開けることが出来る。それで、アリアハン大陸北のレーベ村にいる、爆弾職人の家の鍵を開けるといい。あやつは家にとじ込もって出てきやしないからのぉ」
老人はフォフォフォと笑った
エルヴィン「なるほど、その爆弾でいざないの洞窟を塞ぐ岩を破壊するのですね」
リヴァイ「盗賊の鍵といえば、大盗賊『バコタ』が作った鍵だよな。じいさん何で持ってんだよ」
リヴァイは怪訝そうな目を老人に向けた
老人「まあ、ちいと灸を据えてやったんじゃよ」
フォフォフォ…とまた笑った老人
ミケ「バコタはアリアハンの地下の牢獄にいるはずだ…じいさんが捕まえたのか…腕がたつんだな」
ミケが、細い目をより細くして、老人を見た
老人「フォフォフォ…まあ昔の話じゃがの。リヴァイにもその技を叩き込んだのじゃが…魔法使いになりよったからのぉ…」
ため息をつく老人
リヴァイ「ほっとけじいさん」
リヴァイはふいっとそっぽを向いた
ハンジ「リヴァイの二刀流の、師匠なのか…」
ハンジは目を輝かせた
そんなハンジの手を握り、老人は眩しそうにハンジの顔を見た
老人「勇者ハンジよ、辛い役割を背負い、心中察するに余りあるが…お主にはまだ秘めたる力がある。そして、強い仲間たちがおる。必ずや目的を成し遂げる事が叶おう…頑張るのじゃよ」
そう言って微笑んだ
ハンジ「はい、ご老人!!頑張ります!!」
ハンジはにこっと笑みを浮かべてお辞儀をした
一行は、老人に別れを告げ、一路北へ…レーベの村へ向かうのであった
>>97
まじっすか!ミケが処女呼びやめる時期含め期待
>>103
ありがとう、頑張る
ナジミの塔を後にし、一路北へ…
いつの間にか辺りは暗闇に包まれていた
ハンジ「もうこんな時間になっちゃったね…レーベの村はもうすぐかな?」
ハンジは少々不安げな様子で言った
エルヴィン「ああ、もうすぐ着くよ」
エルヴィンはハンジの頭を優しく撫でながら言った
ハンジは勇者とは言え、まだ夜に街の外を出歩いた事はなかった
茂みから何が飛び出してくるかわからない夜の闇は、まだ17才の少女には恐ろしい存在だった
そんなハンジの様子に眉をひそめるリヴァイ
リヴァイ「夜が怖い勇者…」
ぼそっと呟いた
ハンジ「ちょっと、リヴァイ!?」
ハンジが抗議の声をあげた時…
ミケ「見ろ、明かりが見えてきた…レーベの村だ」
ミケの指差す方向には、ちらちらと明かりが見えた
一行は疲れた体を癒すべく、レーベの村に急いだ
レーベの村に着いた一行
村はアリアハンの城下町とは比べるまでもなく田舎で、建物も少なかったが、民家からは明るい光がこぼれ、魔物との戦いで疲れた心を解きほぐした
エルヴィン「今日の所は宿に行こう。皆久々に戦って疲れただろう」
ミケ「そうだな…酒でもひっかけたい所だが…今日は休んでおくか」
リヴァイ「そうだな、今日は酒はやめておくべきだ」
ハンジ「私も疲れたな…」
ハンジは村について安心したのだろうか、目を擦りはじめていた
エルヴィン「疲れて当然だよ、ハンジ。はじめて魔物と戦ったんだからな。宿に急ごう」
一行は宿に向かった
ハンジは一人で部屋を使い、後のメンバーは一部屋を三人で使うことにした
ハンジ「みんなごめんね、窮屈な思いさせちゃうね」
申し訳なさそうなハンジに、ミケが
ミケ「一人で寂しいなら添い寝してやろうか?処女」
と、いたずらっぽい目を向けた
ハンジ「ちょっとミケ!?」
ハンジが抗議の声をあげると同時に…
リヴァイ「おいミケ、子どもをからかうんじゃねえよ」
とリヴァイが静かに言った
ミケ「ほう、リヴァイ…焼きもちか…」
エルヴィン「焼きもちだな」
ハンジ「ええっ!?」
リヴァイ「ちっ…そんなんじゃねえよ!」
掃き捨てるように言うリヴァイに畳み掛ける様に…
エルヴィン「心配ならお前が添い寝してやればいいさ、リヴァイ」
ハンジ「エルヴィンまで何て事言うんだよ!?」
ハンジは顔を真っ赤にした
リヴァイ「だから最初に言っただろうが。エルヴィンはそういう奴だと…」
フン、とリヴァイは鼻を鳴らした
ハンジ「じゃあ、まともな人いないじゃないか!?」
ハンジは悲鳴をあげた
真っ暗な部屋…
ハンジは宿の部屋に足を踏み入れ
窓に向かい、カーテンを開ける
月明かりの柔らかい光が、部屋に差した
ハンジ「ふう…疲れたな…」
ハンジは荷物から着替えを取り出し、さっと着替えた
緊張から開放されたからか、急に喉が乾いてきた
水差しから少しだけ、水を口に含む
そして、窓際にあるベッドに腰を下ろした
ハンジ「魔物と、戦った…よね」
ハンジは自分の右手をじっと見つめた
この手は、剣を握り、魔物と戦う…
世界一強いと言われたお父さんのように…
勇者オルテガの娘の名に恥じぬように戦う
いや、戦わなければならない
私には選択の余地はなかった
本当は、怖い
戦うのは怖い、魔物も魔王も怖い…
誰にも言えないし、言うつもりもないけど…恐怖心が後をついて止まらない
こうして一人で暗い部屋にいるのも怖い…
私なんかに、勇者が勤まるとは、正直思えなかった
ふと窓の外に目をやると、宿の前にある井戸の灯りの下で、見知った人影が座り込んでいるのが見えた
ハンジは、このまま部屋にいても眠れなさそうだったので、井戸に向かうことにした
ハンジ「…何してるの…?」
井戸の回りの明かりの下で、座っているのはリヴァイだった
服は魔法使いの装束のままだったが、とんがり帽子は被っていなかった
艶のある黒髪が、月明かりと井戸の明かりに照らされて、天使の環を作っていた
リヴァイ「…見てわからねえか?読書だ」
リヴァイは視線を一瞬だけハンジに向け、またすぐに書物に戻した
ハンジ「何の本…?」
そう言いながら隣に腰を下ろそうとした
すると…
リヴァイ「まて、直接座るな。寝間着が汚れるじゃねぇか…」
そう言って、懐からハンカチを取り出して地面に置いた
ハンジ「…ありがと」
ハンジはハンカチの上に、そっと腰を下ろした
リヴァイ「…」
そしてまた、黙々と書物に目を通すリヴァイ
ハンジは本を覗いて顔をしかめた
ハンジ「なにこれ、読めない…」
リヴァイ「当たり前だ…そう簡単に読めてたまるか。呪文の書だからな…」
ちらっとハンジに視線を向け、また書物に戻す
ハンジ「呪文を勉強してるの?」
リヴァイ「手持ちの呪文だけで魔王をどうにかできねえだろうからな」
視線を書物に向けたまま、呟くように言った
ハンジ「私も、ホイミくらいは使えるけどなあ…」
ホイミとは、回復の呪文である
一番初期の簡単な呪文だ
リヴァイ「お前は経験さえ積めば、もっと凄い魔法も使えるようになるさ。剣も、もっと上手く扱えるようになる」
ハンジ「…そうかな、あんまり自信はないんだけどな…」
ハンジは小さい声で呟いた
リヴァイは書物をぱたんと閉じ、ハンジの顔を見た
リヴァイ「最初から自信満々な奴なんていねえよ。皆不安なんだ。だからこそ、努力をするんだ。強くなる努力をな」
ハンジ「リヴァイも、不安なの?」
ハンジは助けを求めるかのような表情を、リヴァイに向けた
リヴァイ「不安だし恐ろしいな。当然だ」
リヴァイは目を伏せ、頷いた
ハンジ「そっか…リヴァイも怖いんだね」
リヴァイ「魔王なんか怖くねえって言ってる奴はいねえだろ?」
そう言うと、また書物に視線を向けたリヴァイ
ハンジはその横顔をちらりと盗み見る
鋭い眼光をいつも辺りに向けているような瞳は、今は穏やかな光を宿しているかのように優しげだった
ハンジは何となく、リヴァイの髪に触れてみたくなって、手をのばした
さらっと指で髪を掬う
リヴァイ「…っ、てめえ何しやがる!?」
リヴァイは慌てて、書物を膝から取り落とした
ハンジ「あ。いや、綺麗な黒髪だなあって…」
リヴァイ「勝手に触るな!!」
ハンジ「いいじゃん、減るもんじゃないし!」
まだしつこく髪に手を触れるハンジ
リヴァイ「汚え手で触るな!!」
リヴァイはハンジの手を振り払った
ハンジ「汚くないし!けちのちびっ!!」
リヴァイ「クソガキ!!眼鏡に落書きしてやるからじっとしてろ」
リヴァイはペンを取り出して、ハンジの顔に向けた
ハンジは慌てて立ち上がる
ハンジ「やだよ!!捕まらないよっ!!宿に戻ろ!!」
そう言って、走り去っていった
残されたリヴァイは…
リヴァイ「はぁ、あのクソガキ…」
そう言いながら、取り落とした本を拾い、宿に戻った
その顔は心なしか朱に染まっていた
体の小ささから魔法使いが案外似合う
>>118
リヴァイを魔法使いは迷ったから、そう言われると嬉しい
次の日の朝…
ハンジ「皆おはよう!!」
ハンジは男性三人の部屋のドアを叩いて叫んだ
エルヴィン「ハンジ、開いてるぞ」
と声がしたので、ハンジは扉を開けて中に入った
ミケ「ハンジ、早いな」
エルヴィン「よく眠れたか?」
エルヴィンがハンジの顔を覗きこんだ
ハンジ「うん、よく眠れたよ!!」
ハンジは元気よくそう答えた
そしてきょろきょろ辺りを見回す
ハンジ「あれ、リヴァイは?」
エルヴィン「ああ、あいつなら何時も早朝に起きて、読書だよ」
エルヴィンが窓の外を指差すと、昨夜と同じように井戸の縁に座って、本を読んでいるリヴァイの姿があった
ハンジ「リヴァイは勉強が好きだなあ…」
ミケ「あいつは昔からああだったな。何時も本を読んでいた」
エルヴィン「そうだな、だからいろいろ物も知っているよ」
ハンジ「そうなのか…なのに剣も使えるなんて…」
ミケ「剣は使う気は無さそうだな。棒だしな…」
エルヴィン「リヴァイを待たせているし、そろそろ宿を出よう」
三人は宿を出てリヴァイと合流した
ハンジ「ここが、爆弾職人の家かあ…」
一行は、レーベの村の北にある一軒の家の前にいた
その家はあちこちひび割れを直したような跡を残す、かなり異様な雰囲気だった
煙突からは紫とも赤ともとれるような、奇妙な色合いの煙が排出されていた
エルヴィン「薬品の臭いがぷんぷんするな…変な色の煙だな…」
ミケ「…今まさに爆弾を作っているんじゃないか?」
リヴァイ「…ニトロの臭いがする。爆弾を作っている事に間違いはねえだろうな」
リヴァイはそう言うと、家の扉をノックした
リヴァイ「爆弾職人のじじい、いたら返事しろ」
しーん、返事はなかった
ハンジ「仕方ないね、ナジミの塔のリヴァイの師匠さんに貰った鍵を使うよ?」
ハンジは三人に向かってそう言うと、扉の鍵穴に鍵を差し込んだ
…ガチャリ
鍵は簡単に開いた
ハンジ「こんにちは…爆弾職人さん…」
ハンジは恐る恐る家の内部に足を踏み入れた
部屋の奥には大きな錬金釜があり、その奥に人影が見えた
リヴァイはつかつかと釜の方に歩み寄る
リヴァイ「おい、お前が爆弾職人か…?じいさん」
リヴァイは、釜を覗いたまま動こうとしない人物に声をかけた
爆弾職人「騒がしい奴らじゃの…勝手に鍵を開けて入ってきおって…」
爆弾職人は、迷惑そうに言った
エルヴィン「あなたが爆弾職人でいらっしゃいますか?ご老人」
リヴァイよりも数倍丁寧に話しかけたエルヴィン
爆弾職人「そうじゃよ…お主たちはその鍵を持っていると言うことは…勇者の一行か」
爆弾職人は、釜から目を離し、一行を一人一人、値踏みするようにみた
その視線は、ハンジの前でとまる
爆弾職人「ほう、お主が勇者か…まだ若いのぉ、幼いとも言える年頃か…」
ハンジ「はい。勇者オルテガの娘、ハンジです」
ハンジは猫を被って、しなやかにお辞儀した
リヴァイ「じいさん、のんびりしている暇がねえんだ。単刀直入に言うが、いざないの洞窟に入るために、力を貸してほしい」
リヴァイが爆弾職人に言うと、職人は顔をしかめた
爆弾職人「…お主魔法使いならば、アバカムを使えばよかろう…あの難しい細工の鍵も、アバカムがあれば簡単にあく」
リヴァイ「…俺の力ではまだ無理なんだよ、じじい」
リヴァイは吐き捨てるかの様に呟いた
ハンジ「おじいさま、お願いいたします。私たちに爆弾を作って下さい…一刻もはやく、世界を救う為に、アリアハン大陸を出たいのです」
ハンジは真摯な眼差しを爆弾職人に向けた
爆弾職人「かわいい嬢ちゃんに言われたなら断れん。よかろう、いざないの洞窟の岩を壊す爆弾『魔法の玉』をお主たちに託そう
職人はそう言うと、怪しいものがたくさん入った戸棚の中から、大きな玉を取りだし、ハンジに手渡した
ハンジ「ありがとうございます!!おじいさま!!」
ハンジは頭を下げた
爆弾職人「くれぐれも扱いは注意するようにな。かなりの破壊力じゃからの」
ハンジ「はい、わかりました!!」
ハンジはにっこり笑って微笑んだ
続き期待
爆弾職人から魔法の玉を貰ったハンジ
ハンジ「これで、いざないの洞窟に入れるね。そして、新しい場所に行くんだ…」
ハンジは瞳を輝かせた
ミケ「お前の猫被りは大したもんだな…」
エルヴィン「声色も変わっていたな」
リヴァイ「じいさんまんまと騙されやがった」
3人は口々に呟いた
ハンジ「ちょっとぉ!!騙すとか聞き捨てならないなあ!!勇者っぽくいい子にしてただけだよ!!」
ハンジは口を尖らせた
エルヴィン「ま、便利な猫はこれからも活用出来るだろう」
ミケ「かわいい嬢ちゃん…の処女」
ハンジ「もう、処女は言わなくていいってば!!」
ハンジは頬を膨らました
リヴァイ「自分で言ってどうする…デリカシーのないやつめ…」
リヴァイははあ、とため息をついた
エルヴィン「リヴァイは恥ずかしがりで古風な人間だからな。ハンジみたいなかわいい女の子が、処女なんて言うのは気に食わないんだよな?」
ふっと笑みを浮かべてリヴァイに問う
リヴァイ「ちっ…こんなガキは可愛くねえよ!!」
ハンジ「ちびにガキなんて言われたくないよ!!ばかリヴァイ!!」
ミケ「…また喧嘩がはじまった…」
エルヴィン「仲の良い証拠だな」
エルヴィンはハンジとリヴァイを見て笑みを浮かべていた
魔法の玉を手に、一路いざないの洞窟へ
レーベの村から東へ進み、橋を渡って南下する
途中で大きな蜂の魔物が沢山現れたが、何とか怪我無く討伐し、山を回り込むように北上すると、目の前に洞窟が見えてきた
ハンジ「あれがいざないの洞窟かあ。ついにアリアハンを出るんだな…」
ハンジは感慨深げに呟いた
エルヴィン「大丈夫か、ハンジ。思い残す事はないか?」
少々心配そうな面持ちで尋ねてくるエルヴィンに、笑顔を返すハンジ
ハンジ「大丈夫。皆が一緒にいてくれるから!!」
それを聞いたミケが、ハンジの頭をわしゃわしゃと混ぜる
ミケ「任せとけ、処女」
ハンジ「また言うか!!」
エルヴィン「ははは、処女喪失するまで言われ続けるぞ、ハンジ。なんならもらってやろうか?」
いたずらっぽい表情で言うエルヴィンに、ハンジは顔を真っ赤にして叫ぶ
ハンジ「もらってもらわなくて結構だよ!!」
リヴァイ「どいつもこいつも…馬鹿ばっかりだ…」
リヴァイは独りごちた
馬鹿にしてるのに自分がちゃっかり処女をもらうリヴァイ
魔法使いの癖に不落の要塞に攻め入るわけですね
くっついても友情でもどっちでも良いよ!
洞窟内部に入ると、直ぐに行き止まりにぶち当たった
リヴァイ「ここが入口だ。岩で塞がれているがな」
リヴァイの指差す場所には、たしかに洞窟を塞ぐように巨大な岩が鎮座していた
ハンジ「魔法の玉を使おう」
ハンジは魔法の玉を、巨大な岩の前に置いた
ミケ「お前たちは下がっていろ。俺が導火線に火をつける」
ミケはハンジを後ろに下げて、導火線に火をつけた
数瞬後…
どぉぉぉぉん!!
大音量の爆音と、爆風が一行を襲った…
そしてそれが収まって、岩のあった場所を見ると…
見事に破壊され、残骸となった岩と、薄暗く続く洞窟内部が顔を覗かせた
いざないの洞窟を奥へと進む一行
所々通路にぽっかりと穴が開いており、ぼーっと歩いていると落下してしまう
一行は、慎重に歩を進めた
ミケ「曲がり角で、何かが待ち伏せしている…」
ミケはスン、と鼻を鳴らして、小さな声で言った
エルヴィン「何体だ?」
ミケ「多分二体…」
ハンジ「こわっ…」
ハンジはそっと剣を抜いた
リヴァイは何も構えない…
ひのきの棒は一本しかないからだ
そのかわり、頭の中を集中させて、魔法を唱える支度をする
一行が曲がり角を曲がったその時…
ミケ「やっぱりいたな…」
魔物は二匹…リヴァイと同じように、緑の装束に緑のとんがり帽子を被っていた
リヴァイ「あいつらは、魔法使いた…メラを使ってくるぞ、注意しろ…」
リヴァイが皆にそう言った瞬間…
魔法使い「メラ!」
魔法使い「メラ!」
二匹の魔物が、一行に向かって魔法を放った
リヴァイ「ギラ!!」
リヴァイが間髪いれず、魔法を放った
メラよりも激しく、範囲の広い火炎呪文
数匹の魔物を一度に焼き付くす、ギラ系呪文だった
魔法使い「きやぁぁ…」
魔法使い二匹は、リヴァイのギラに、自ら放ったメラごと焼き尽くされた
続き全裸で待ってるで
>>136
服着て風邪引くw
魔法使いを倒し、またしばらく洞窟内部を進むと、行き止まりにぶち当たってしまった
たがその行き止まりには、宝箱があった
ハンジ「お宝発見!開けてみよ~」
ハンジが喜び勇んで宝箱を開けると、中からは一振りのナイフが入っていた
エルヴィン「お、それは聖なるナイフだな。リヴァイに丁度良さそうだ」
エルヴィンが、ナイフを手に取りリヴァイに差し出した
リヴァイ「ちっ、ナイフなんていらねえ。ひのきの棒でなけりゃ、調子が出ねえんだよ」
ミケ「だがリヴァイ、やはり護身用にも一振りくらいナイフは持っておけ。魔法がきかん魔物だっているかもしれん」
ハンジ「どうせならナイフ二本欲しいよね!?二刀流だけに!!」
ハンジが目を輝かせた
リヴァイ「俺は魔法使いだ…」
そう言いながらも、聖なるナイフを腰に装着したリヴァイであった
一行行き止まりを引き返し、下に降りる階段を見つけた
ハンジ「おっと、なんかウサギがいるよ!?でかい、うさぎが!!」
階段を降りるや否や、紫色の不気味な色をした、巨大なうさぎが襲いかかってきた
4匹もいた
リヴァイ「アルミラージだ。ラリホー(眠りの呪文)を使ってくるぞ!?気を強く保て」
ミケ「了解した」
ハンジ「気を強くって…どうやんのさ!?うわっ…」
アルミラージが鋭い牙を唸らせ、ハンジの体に噛みつこうと襲いかかってきた
寸前で避けるハンジ
ハンジ「やあっ!!」
体を回転させ、剣でアルミラージの体を薙ぐ
アルミラージを一体倒した
だが…
アルミラージ「ラリホー!!」
アルミラージの魔法の霧が、四人を包み込む…
そして、その魔法の霧が晴れた時…倒れていたのはハンジだった
リヴァイ「ちっ、またか…」
ミケ「仕方あるまい。まだ魔物と戦いなれていないからな。エルヴィン、ハンジを頼む」
ミケはそう言うと、次の瞬間拳をアルミラージに叩きつける
連続して膝の蹴りを加えると、アルミラージは事切れた
後二体
リヴァイ「ヒャド!!」
リヴァイの手のひらから、冷たい冷気と共に鋭く尖った氷のつららがアルミラージに向かって飛ぶ…
アルミラージは氷の刃に八つ裂きにされた
エルヴィン「ハンジ!」
ハンジの背中をぽん、と叩くと、ハンジは目を覚ました
ハンジ「ん…あれ、うさぎはどこ…?」
ハンジは目を擦りながら呟いた
エルヴィン「ミケとリヴァイが残りは倒してくれたよ」
エルヴィンがハンジの体を腕で支えながら、頬を撫でた
リヴァイ「よく魔法に掛かる奴だな、おまえ…」
リヴァイははあ、とため息をついた
ハンジ「また魔法にかかっちゃったのか…ごめんね皆、迷惑かけちゃって…」
ハンジは立ち上がり、項垂れた
エルヴィン「魔法に耐えるのにもコツがいる。また教えるから、気にすることはないよ、ハンジ」
エルヴィンは微笑みながらハンジの頭を撫でてやった
ミケ「処女は魔法に掛かりやすいのかもしれんな」
顎に手をやりながら呟くミケに
リヴァイ「そんなものは関係ねえよ!!」
リヴァイは不機嫌を隠しもせず言い捨てた
>>140と>>141の間にこのレス入れて…
後一体は…
エルヴィン「リヴァイ、危ない!!」
リヴァイの背丈を越えるジャンプをした残り一匹のアルミラージは、頭上からリヴァイを襲おうとした
リヴァイ「…セイッ!!」
リヴァイは聖なるナイフを片手に体を斜め上に飛ばし、標的を失ってきょろきょろするアルミラージ目掛けて体を飛ばす
アルミラージは聖なるナイフに急所をひとつきにされ、事切れた
アルミラージの群れをやっつけた
エルヴィン「ハンジ!」
ハンジの背中をぽん、と叩くと、ハンジは目を覚ました
ハンジ「ん…あれ、うさぎはどこ…?」
ハンジは目を擦りながら呟いた
エルヴィン「ミケとリヴァイが残りは倒してくれたよ」
エルヴィンがハンジの体を腕で支えながら、頬を撫でた
リヴァイ「よく魔法に掛かる奴だな、おまえ…」
リヴァイははあ、とため息をついた
ハンジ「また魔法にかかっちゃったのか…ごめんね皆、迷惑かけちゃって…」
ハンジは立ち上がり、項垂れた
エルヴィン「魔法に耐えるのにもコツがいる。また教えるから、気にすることはないよ、ハンジ」
エルヴィンは微笑みながらハンジの頭を撫でてやった
ミケ「処女は魔法に掛かりやすいのかもしれんな」
顎に手をやりながら呟くミケに
リヴァイ「そんなものは関係ねえよ!!」
リヴァイは不機嫌を隠しもせず言い捨てた
アルミラージを倒し、洞窟の最下層の最奥についた
鍵の掛かった扉を盗賊の鍵で開け中に入ると、目の前に水が渦巻いている泉のような水溜まりが見えた
リヴァイ「これが旅の扉だ。これに入る事で、繋がった各地へ移動ができる」
リヴァイは泉を覗きながら言った
ハンジはリヴァイの横に歩みより、恐る恐る泉を覗く
ハンジ「溺れたりしないかなあ…底も見えないし、怖いな…」
エルヴィン「よし、試しに俺が入ってみよう。もし体が消えたりしたら、君たちも後からおいで」
エルヴィンはそう言うと、旅の扉に身を躍らせた
エルヴィンの体はみるみるうちに、泉の奥に吸い込まれて行った
ミケ「先に行くぞ」
ミケも飛び込んだ
リヴァイ「ハンジ、お前先に行け。見ててやるよ」
リヴァイはハンジの肩をぽんと叩いた
ハンジ「うん、行ってみる!!」
ハンジは不安な表情を隠すためか、にっこり笑った
リヴァイ「大丈夫だ。さあ行け」
ハンジ「いきまーす!!」
ハンジは旅の扉に入った
それを見送ったリヴァイも、旅の扉に飛び込んだ
旅の扉は不思議な浮遊感で、何処かに体を移動させた
一瞬の出来事だった
体の浮遊感が収まり、目を開けると、心配そうに見つめるエルヴィンとミケの顔が見えた
ハンジ「ワープした?あっ…」
そう言いながら旅の扉から出ると、今度はリヴァイが旅の扉から浮かび上がってきた
ハンジ「リヴァイ!!」
ハンジは思わず駆け寄るが、リヴァイに止められる
リヴァイ「入ったらまたアリアハンに戻っちまうぞ」
そう言いながら、旅の扉から出た
エルヴィン「皆無事でよかったな」
エルヴィンは心底ほっとした様子だった
ミケ「さて、何処についたかな…」
早速一行は、探索に出ることにした
wktkするぜえ
旅の扉からしばらく進むと、大きな城と城下町が見えてきた
ハンジ「わー!新しい街だね!!」
ハンジは目を輝かせた
エルヴィン「少々疲れたな。街に行って休憩しよう」
ミケ「リヴァイ、何処だかわかるか?」
リヴァイはしばらく世界地図を見ていた
リヴァイ「地形から見るに…たぶんあの城はロマリア城だな」
エルヴィン「ロマリアか、聞いたことがあるぞ、あまりいい噂では無いが…王さまが変わり者らしいとな」
ハンジ「まずは王さまに挨拶をしなくちゃだよね」
ハンジは突然顔を引き締めた
ミケ「お得意の猫被りだな」
リヴァイ「…変なやつだな」
リヴァイはひとりごちた
城下町に入ると、まずは宿により、荷物をおいた
軽く腹ごしらえをした後、王との謁見のためにロマリア城へ向かった
城の中には大道芸人がいたり、音楽を奏でる人がいたり、至るところで娯楽が繰り広げられていた
アリアハンとは全然違う、軽い雰囲気の城だった
ハンジ達が謁見室に通されるや否や、王が駆け寄ってきた
ロマリア王「お前がアリアハンの勇者ハンジか、実はお願いがあるのじゃ」
細面で細い目をした王は、ハンジの両肩を掴んで自分に引き寄せ、悲壮な顔を見せた
ハンジ「と、とりあえずお離し下さい、王さま」
ハンジがのげぞるかの様に身をよじらせると、王はハッとしたように肩から手を離した
ロマリア王「すまんすまん、ついうっかり…実はな…」
王は落胆しながら話を始めた
王の話を聞き、宿にもどった一行
一部屋に集まり、今後の行動について話し合っていた
ハンジ「要するに、王様は『カンダタ』っていう盗賊に奪われた王家代々に伝わる『金の冠』を取り返して欲しいんだよね」
ハンジはベッドに腰掛けながら、足をぶらぶらさせていた
エルヴィン「そうだな。だが聞くところによると、カンダタは部下もかなり腕がたつらしく、今の我々の力で歯が立つのかどうかだな」
エルヴィンは思案を巡らすように、顎に手をやった
リヴァイ「とりあえず、明日は北のカザーブ村を目指すのが良さそうだ。カンダタの住みかであるらしい、『シャンパーニュの塔』もロマリアから直接では遠すぎるしな」
リヴァイは地図を見ながら言った
ミケ「今日の所はここで休んで、明日出発だな」
ハンジ「そうだね、いつの間にか夕焼け空になっているしね」
エルヴィン「では、そうしよう。新天地にはじめて来たのだし、俺は外を情報収集がてらぶらついてみるよ」
ミケ「俺は酒場に行くぞ。そろそろ酒を飲まんと禁断症状がでる」
ミケはそう言って部屋を出て行った
エルヴィン「俺も行ってくるよ。ちなみにハンジは一人でうろつくなよ?リヴァイがついててやってくれ。じゃあな」
リヴァイ「おい、俺に押し付けるなよ!?」
リヴァイの非難の声が届いたかわからないが、エルヴィンも二人を残して部屋を出て行った
部屋に残されたハンジとリヴァイ
ハンジはばつの悪そうな顔をして、リヴァイに頭を下げた
ハンジ「リヴァイ、なんかごめん」
リヴァイはちらりとハンジを見て、首を横に振った
リヴァイ「いや…別に構わねえよ。何がしたい?」
ハンジ「うーん、街を見てみたいかな、新しい武器とかさ、いいの無いかな?リヴァイにも」
そう言ってにっこり笑うハンジに、また眉をひそめるリヴァイ
リヴァイ「俺の武器はいいんだよ…ま、お望み通り街へ行くか」
二人は夕焼けの街へと繰り出した
ハンジ「これ、可愛くない!?」
リヴァイ「気持ちわりぃ」
ハンジ「えー!!可愛いってば!!」
武器を見るはずが、何故か雑貨屋でピアスを物色しているハンジ
ハンジは耳にピアス穴を開けており、折角だからとピアスを買うことにした
ハンジ「やっぱりこの、スライムピアスが一番だよ」
リヴァイ「変だろうが、魔物だぞ?」
ハンジ「可愛いからいいじゃない?」
どうしてもスライムピアスが欲しいハンジに、顔をひきつらせるリヴァイ
リヴァイ「変な趣味してやがるな…やっぱりガキだ…」
結局、スライムピアスを買い、早速耳につけたのだった
更新きてた!待ってました
ハンジとリヴァイは武器屋に足を運んだ
武器屋の店主「おっ、カップルで冒険の旅かい?」
茶化すような店主に、ハンジは顔を真っ赤にする
ハンジ「そ、そんなんじゃ…!」
リヴァイ「店主、何か良さそうな武器はあるか?」
じたばたと落ち着きを無くすハンジに対し、リヴァイは特に慌てる様子もなく、店内を物色する
武器屋の店主「魔法使いの兄さんにぴったりの武器があるよ」
そう言って、店の片隅に置かれたショーケースから、刃渡り20㎝ほどの、先の尖った針のような武器を出してきた
ハンジ「変わった武器だねえ、それ」
ハンジが店主の持つ変わった武器を手に取った
店主「刃先に触るなよ、嬢ちゃん。毒が刃先から染み出す様な仕組みになっているからな」
リヴァイ「毒針か…悪くない」
ハンジの手から毒針を取り上げて、左手に持ってそう言った
店主「兄さん左利きか?」
ハンジ「リヴァイは二刀流なんだよ。だからどっちも使えるんだ」
自分の事じゃないのに何故か胸を張ってそう言ったハンジであった
結局武器屋で、毒針を購入した後、品揃えが豊富な本屋に立ち寄っていた
ハンジ「むー。本が沢山だね!」
ハンジは本棚を見ながら、図鑑や物語や、様々な本を手に取っていた
リヴァイ「本が好きなのか、お前」
意外そうにハンジを見るリヴァイ
ハンジ「好きだよ。特にこういう動物の…」
ハンジがリヴァイに見せた本は、猛獣や珍獣の載っている物だった
リヴァイ「なるほどな、字が沢山な本じゃねえんだな。納得した」
ハンジ「何だよそれ?馬鹿にしただろ、リヴァイ!」
リヴァイ「…ああ、馬鹿にした」
ふん、と鼻で笑うリヴァイの頭を上から手で押さえつけるハンジ
ハンジ「ちびのくせに生意気だ!」
リヴァイ「うるせぇクソメガネ!!」
静かな本屋の中で、喧嘩が始まった
結局、追い出される寸前に魔法書を購入して、逃げるように店を後にしたのだった
本屋を出た後、何となく気まずくなって、お互い無言で街を歩く
ハンジはちらっと隣を歩くリヴァイの顔を盗み見る
特に不機嫌ではないように見える
切れ長の目に、すっと通った鼻筋、小さな口は常にぎゅっと閉じられていた
結構、綺麗な顔立ちだと思ったハンジであった
夕焼けの街に、いつの間にか夜のとばりが降りてきていた
ハンジ「ねえリヴァイ、お腹すかない?」
リヴァイの装束の袖を軽く引っ張り、問いかけるハンジ
リヴァイ「そうだな…腹へったな。何か食うか。エルヴィンとミケは多分酒場だろうしな」
二人は露店で肉の串焼きや芋のフライを購入し、町の噴水の回りに備え付けられているベンチに座って食べることにした
ハンジ「美味しいね!!リヴァイ」
ハンジは肉を一口かじって、嬉しそうに声をあげた
リヴァイ「…良かったな」
その様子をちらっと横目で見て、ぼそっと呟いた
と…とうとう今夜二人は…
>>159
ちょw気が早いw
そういやこの二人結構若いんだよね。(ハンジに至っては17歳)
本編よりも巨中寄りの青春模様wを楽しむべき?
いやいやゾーマの前までにはひとつ何とか頼む!
>>161
一応年齢設定としては、本編より大体 10才全員若いと思ってもらえれば…
本編でも年齢は明かされてないから予想でしかないけどね
いろいろ織り混ぜていければいいなと思ってるのでよろしく!
ハンジ「ねえ、リヴァイはさあ、酒場にはいかないの?私に気にせず行ってこればいいのに」
食事を終え、水を飲みながらベンチに座っている二人
リヴァイは外灯の下で、今日購入した本を読んでいた
リヴァイ「酒は嫌いじゃねえが、今日は読書の気分なんだ」
視線を本に這わせたまま呟くリヴァイ
ハンジ「そっか、ならいいんだけどね」
そう言いながら、リヴァイのとんがり帽子をひょいっと取り上げて、自分の頭に被るハンジ
リヴァイ「何するんだ、てめぇ」
非難の声をあげたリヴァイ
ハンジ「帽子似合わないからさ、被っててあげるよ。体の割に大きすぎると思うしさあ」
ハンジはにやりと笑った
リヴァイ「ほっとけ!!似合う似合わんは関係ねぇんだよ、返せ!!」
リヴァイの手がハンジの頭の上にある帽子に伸びる…が、空をきる
ハンジは身を翻してベンチから立ち上がった
ハンジ「やーだね!!」
そう言ってペロッと舌を出すハンジ
リヴァイ「ハンジてめえ!?ふざけやがって…!」
夜のとばりが降りた雰囲気の良い公園に、二人の悲鳴と笑い声が響いていた
夜、ロマリアの宿の一室に集まった勇者の一行
エルヴィン「酒場や街でいろいろ情報収集してきたんだが、どうやらカザーブの村のまた北に、『ノアニールの村』という村があるらしい」
ミケ「ああ。それは俺も聞いた…何やら不思議な現象に見舞われているとな」
リヴァイ「…なるほどな。まずカンダタの前に、その村に行ってみるのも手か」
リヴァイは俯き何かを考えはじめた
ハンジ「とりあえず明日は、カザーブ村に行くんだね。それからノアニール…」
エルヴィン「ああ、そうだな。後、ハンジの武器も買っておいたぞ。『鋼の剣』だ。銅の剣では心許ないだろう」
エルヴィンはそう言って、ハンジに鋼の剣を手渡した
銅の剣と重さ自体は変わらないが、すらりと長く、扱いやすそうだった
ハンジ「エルヴィンありがとう!!明日早速使ってみるよ!!」
ハンジは新しい剣の柄を握って、そう言った
━━の柄も握る日が楽しみです
>>165
ちょw毎朝吹き出すわw
リヴァイを後ろから見たら帽子だけが歩いてる感じを想像した
>>167
かわいいな!!
翌朝…
ロマリアを出て一路北へ…
しばらくは朝日がさす穏やかな平原を歩いていたが、ふと先頭にいたミケが立ち止まる
ミケ「あの茂みの向こうに何かいる」
ミケの言葉を魔物が聞いたか理解したかは分からないが、緑の体をした大きな蜂の様な魔物が襲ってきた
その数5体
リヴァイ「キラービーだ。あいつのけつの針に刺されたら、体が麻痺して動けなくなるぞ!?気を付けろ!」
ハンジ「こわっ…と言うかリヴァイけつって!!なんて言い方…うわっ!?」
軽口を叩いた隙をつかれて、まさにけつの針をぶちこまれそうになったハンジは、慌てて身を翻し、返す動きで剣をうならせた
ザンッ…ハンジの鋼の剣は見事にキラービーを切り裂いた
エルヴィン「ハンジやるな…!」
エルヴィンは、まさに上から襲いかかってきたキラービーを、剣を上につき出すように串刺しにした
ケツに針をぶっ刺されて後ろ穴処女失くしたらどうしようかとハラハラした
>>170
うむ、危ないところだった
残り三匹は、一斉にリヴァイに襲いかかる
ミケ「リヴァイ危ない!!」
ミケの蹴りが、キラービーを一匹地面に落とす
リヴァイ「ヒャド!!」
リヴァイの手から放たれた氷のつぶてが、キラービーを一匹凍らせる
しかし、残りの一匹が背後からリヴァイに針を突き立てようとする
エルヴィン「スカラ!!」
エルヴィンのスカラがその寸前で、リヴァイの体に薄い光の膜を張る
キラービーはリヴァイの体に針を突き立てるが、スカラの効果で攻撃は届かなかった
ハンジ「たぁぁっ!!」
ハンジは体を跳躍させ、リヴァイの背後のキラービーを叩き切った
ミケ「ふ、なかなか素早い奴だったな」
ミケは息をつき、そう言った
エルヴィン「確かに、大陸を渡ってから、魔物も強くなってきているな。油断はできない…だが…」
そう言って、ハンジの頭を撫でるエルヴィン
エルヴィン「ハンジがめきめきと成長しているな。戦いを重ねる毎に」
ハンジ「そ、そうかな!?」
ハンジは嬉しそうに顔を綻ばせた
リヴァイ「まあ、一応勇者だしな。あれくらいはやってもらわんと困る」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
キラービーを倒し、暫く平原を歩く
時おり魔物が襲っては来たものの、リヴァイの魔法などで危なげなく撃退していた
朝から歩きづめだったが、気がつけば日が高くなっていた
ハンジ「もうお昼だね、お腹すいちゃったよ」
ハンジが立ち止まり、お腹をさすった
エルヴィン「そうだな、昼飯にしようか」
エルヴィンは木陰に腰を下ろした
リヴァイ「行程的には丁度半分て所だな。この分だと夜にはカザーブに着きそうだ」
リヴァイは地図と方位磁石を見ながら言った
ミケ「今日はたくさん戦ったな。さすがにアリアハンよりは魔物の数も多い」
ハンジ「気を引き締めなきゃね」
ミケも腰を下ろし、ハンジを隣に座らせた
そしてスンスンと匂いをかぐ
ミケ「まだ処女だな」
ハンジ「当たり前だろ!!いい加減にしてよミケってば!!」
顔を真っ赤にして怒るハンジを、ミケはふん、と鼻で笑った
エルヴィン「ミケは気に入った相手の匂いは何度もかぐからな。ハンジは気に入られた証拠だよ、ははは」
エルヴィンは愉しげに笑った
ミケ「ああ、なかなか面白い奴だしな」
ハンジ「面白がらないでよね!?」
リヴァイ「…お前ら、飯早く食っちまえよ?」
おにぎりを頬張りながら呆れ顔のリヴァイであった
リヴァイが魔法使いでハンジが勇者って逆のイメージがあっていいな
ミケすんがエルヴィンとリヴァイの匂いをかいだら何と言うのか気になる…
>>177
一回は嗅いだと思うけど、二回目はなさそうw
昼食をとり、またしばらく歩くと小さな山が連なったような地形に変化していった
この山を越えれば、カザーブ村が見えてくるはずだった
エルヴィン「山登りは少し大変だが、焦らず行こう」
山は険しくはないものの、しばらく人が往来していないのだろう、獣道のような道らしきものがたまにあったくらいで、非常に歩きにくかった
リヴァイ「何とか夜になる前に山を越えなければな」
ハンジ「どうして?視界が悪いから?」
ハンジはきょとんとした顔をリヴァイに見せた
リヴァイ「いや、それだけじゃねぇ。魔物も昼間とは違い、更に狂暴になる上に、昼間には出てこないやつまで出てくるからな」
ミケ「まあ、出てきたらでてきたでひねってやればいい」
ミケは拳を握った
ハンジ「お化けみたいな魔物だったりして…」
ハンジは身体を震わせた
このパーティーに薬草とか売り付けたい
>>180
そりゃ、たぎりますな!!
道なき山道を北え、たまに谷を回り込みながら進む事数時間、小高い山を越え、目の前に平地が広がった
ハンジ「すっかり暗くなっちゃったね…」
山を越える間に、夕方から夜になってしまっていた
リヴァイ「ま、じきにカザーブ村だろうから、さっさと進んじまうぞ」
リヴァイの言葉に、ミケが鼻をならす
ミケ「その前に、やらなきゃならん事があるな…右手前方の木の後ろに…二体」
ハンジ「うわっもしかしてお化け?!」
ハンジは思わずエルヴィンの背中に隠れた
エルヴィン「ハンジ、大丈夫だ。お化けならニフラムで追い払ってやるからな」
背中にへばりつくハンジに、優しい声をかけてやるエルヴィンであった
右手から飛び出してきたのは、奇妙な翼の生えた、黒ずくめのスーツを着たような、人相の悪い人型の魔物であった
人と違うのは、翼と、鋭い爪、そして大きく引き裂かれた様な口からは、鋭い牙が二本見えている所だ
リヴァイ「こうもりおとこだ。こいつはマホトーンを使ってくるぞ!?」
リヴァイの言葉に頷く一行
ハンジ「…メラ!!」
ハンジはミケをちらっとみた後、一体に火の玉呪文を食らわせた
ミケはその火の玉の後を追うように素早くすすむ
ミケ「フッ…!」
気の籠った拳を、火の玉がぶつかって怯んだこうもりおとこの顔面に叩きつけた
そのまま回し蹴りを胴体に食らわす
こうもりおとこ「ぎゃぁぁ!」
炎に包まれながら、こうもりおとこは断末魔をあげた
エルヴィン「バギ!」
エルヴィンは、バギという、真空の刃を呼ぶ呪文を放った
リヴァイ「メラ!!」
同時に発動するリヴァイのメラ
メラの炎がバギの風圧によって、まるで炎の風のようになってこうもりおとこを襲う
こうもりおとこ「ぎゃぁぁぁぁ」
一行は無事にこうもりおとこを倒した
そろそろラッキースケベが欲しいです
>>184
ラッキースケベw期待に応えるべく頑張りますw
カザーブの村に到着した一行は、真っ直ぐ宿に向かった
今日は一日でかなりの距離を踏破した上、低い山とはいえ山歩きまでしていたため、皆一様に疲れていた
部屋に入り、体をベッドにダイブさせたハンジだったが、今日は寝る前に風呂で体を解しておこうと思っていたため、直ぐに起き上がった
ハンジ「たまにはすっきりしなきゃねえ」
寝間着とタオルを持ち、いそいそと宿の風呂に向かった
宿の宿泊客はハンジ達四人しかいなかったため、女湯は貸し切りだった
ハンジ「ふ~、いい湯だなあ」
ハンジは疲れた体を伸ばし、目を閉じた
アリアハンを出てから数日、やっと旅と、魔物との戦いに慣れてはきたものの、仲間達と比べれば自分の力はまだまだだなあと思うハンジ
ハンジ「剣術の稽古をしなきゃねえ…後は魔法も…」
かと言って、ハンジの師匠である父は側にはいない
ふと考えを巡らせた
ハンジ「リヴァイがいるじゃないか…」
魔法にも剣術にも長けている小さな魔法使いの姿を思いだし、頷く
ハンジ「リヴァイに頼んでみよっと!!」
そうなると善は急げ、さっさと体や髪を洗い、風呂から上がった
三人の部屋に行くと、ミケとエルヴィンは部屋にいたが、リヴァイはいなかった
ミケ「スンスン…おっハンジも風呂に入ってきたか。いい匂いがする」
ミケがまた首筋に鼻を近づけた
吐息が首筋にかかって、一瞬体をビクッと震わせたハンジ
ハンジ「わ、ミケ止めてよ、くすぐったいじゃないか!?」
慌てて身を翻し、エルヴィンの背中に隠れるハンジ
ミケ「よりによって一番危ない奴の背中に隠れるとはな…フッ」
エルヴィン「誰が一番危ない奴だよ…ははは」
ハンジ「エルヴィンは危なくないもんね!!」
背中から顔だけ出して、ミケにあっかんべーをするハンジ
エルヴィン「いやいやハンジ、危なくないもんね、と価値観を押し付けられるのも困るな…俺も男だぞ?」
背後を振り返りながら、困ったように言うエルヴィン
ハンジ「だって僧侶だろ!?」
エルヴィンはその言葉に、ハンジの体を自分の背中から、前に移動させた
エルヴィン「僧侶でも、やることはやるんだぞ?ハンジ」
自分の両肩をがっしり掴まれ、顔を覗き込まれたハンジは、顔を真っ赤にした
ハンジ「は、離せよ、エルヴィン!」
エルヴィン「さて、どうしようかな…」
ますます近づいてくるエルヴィンの顔に、一瞬目を閉じたハンジ
エルヴィンの唇は、ハンジの…頬に落とされた
ハンジ「ひゃっ!」
エルヴィンの手から無理矢理逃れたハンジは、またあっかんべーをして、部屋を出ていった
ミケ「…おいエルヴィン、お前に本当にやる気だったろ?」
ミケが怪訝そうな表情をエルヴィンに向けた
エルヴィン「しかしミケ、あのタイミングで目を閉じられたら…」
ふるふると、頭を振るエルヴィン
ミケ「まあな…さすがは処女って事だ」
エルヴィン「きっとリヴァイに言いつけているだろうな」
フッと怪しげな、何かを企むような笑みを浮かべたエルヴィン
ミケ「また何か企んでやがる…」
ミケは肩をすくめた
エルヴィン「ま、少しは楽しませてもらうとするかな」
生き生きと目を輝かせるエルヴィンに、ミケはため息をついた
ハンジはほてった顔を何とか戻そうと、夜風に当たるべく宿の外に出た
そして、宿の敷地内のベンチに腰を下ろす人影に駆け寄った
ハンジ「リヴァイ…読書?」
リヴァイは声のかかった方にちらりと上目使いをし、また視線を本に戻した
リヴァイ「見りゃわかるだろうが…クソメガネ」
ハンジ「あ、うん、そうだよね…ねえ、隣座ってもいいかな?」
リヴァイ「集中できねえ、帰って寝てろよ」
視線をハンジに合わす事すらせずに即答するリヴァイ
ハンジ「すーわろっと!!」
ハンジはその言葉を無視して、リヴァイの隣に腰を下ろした
リヴァイ「ちっ…座るなら最初から聞かなきゃいいだろうが!!クソメガネ」
リヴァイはぼそっと呟いた
ハンジは隣で本に視線を落とすリヴァイの横から、覗き込むように本の内容を見ていた
リヴァイ「おい、ハンジ」
リヴァイが視線をハンジの顔に移動させ、言葉を発した
ハンジ「ん、なんだい?リヴァイ…」
ハンジも、リヴァイの顔に視線を移動させ、一瞬体を震わせる
お互いの睫毛の長さが確認出来る程の距離―さっきのエルヴィンと同じ状況
思わず目を閉じてしまうハンジ
リヴァイ「…おい、ハンジ…そこで目を瞑ったりするな…馬鹿が」
ハンジ「えっ!?」
ハンジはあわてて目を開けた
リヴァイ「キスしてくれと言ってる様なもんだぞ…?」
リヴァイは眉を引き絞った
ハンジ「あっ…そうか…だからか…」
リヴァイ「何が、だからか…なんだ?何かあったのか?」
詰問するかの様に鋭い目線をハンジに当てるリヴァイ
ハンジ「あっ…いや何も…」
ハンジは視線をそらし、顔を赤らめた
リヴァイはしばらくハンジの表情を探るように見ていたが、やがて息をつき、また本に視線を戻した
ハンジ「あのさ、リヴァイ、お願いがあるんだけど」
ハンジはリヴァイの肩をつんつんとつつきながら言った
リヴァイ「…断る」
静かに、だがはっきり拒絶したリヴァイ
ハンジ「ちょっとお!!断る前に話くらい聞いてよ!?リヴァイ!!」
リヴァイ「どうせろくでもねえお願いだろうが…お前の事だからな…」
リヴァイは、胡散臭げな目をハンジに向けた
ハンジ「ろくでも無くはないよ…あのさ、魔法を教えて欲しいんだ、後、剣術も…」
ハンジは真剣な眼差しをリヴァイに向ける
リヴァイはその眼差しを、しばらく自分の両の目で受け止めていたが、やがて頷いた
リヴァイ「魔法に関しては、教えてやっても構わない。剣術に関しては、俺は教える事は出来ねえが、訓練の相手にならなってやるぞ…?」
ハンジ「本当に!?リヴァイありがとう!!」
ハンジはそう言うと、リヴァイに両の腕を絡めて抱きついた
リヴァイ「ハンジ!!抱きつくな!!離れろ!!」
ハンジ「やーだね!!」
リヴァイ「てめぇ…!」
二人の距離が少し縮まったカザーブ村の夜だった
なんてかわいい二人なんだろう
しかし早くしないとエルヴィンにやられる!
>>193
エルヴィン…wにげろハンジw
次の日の早朝…
ハンジ「おはようリヴァイ。あれ、服装が違うね?」
村の広場のベンチに腰を下ろしていたリヴァイは、何時もの緑の足元まで隠れる装束ではなく、シャツにスラックスと言った出で立ちだった
リヴァイ「剣術の稽古だろうが。あの装束ではやりにくいから、脱いだだけだ」
確かに、ベンチには緑の装束が几帳面に畳まれて置いてあった
勿論とんがり帽子も…
手には、銅の剣を握っていた
ハンジはリヴァイに歩みより、腕やら脚やら触りまくった
ハンジ「うわあ…すっごい引き締まってるね…魔法使いの体じゃないよ」
そう、何時もはぶかっとした装束に隠れて見えなかったが、リヴァイの肉体はしっかりと鍛えられた剣士のそれだった
ハンジはシャツをまくって腹筋まで見ようとし…引き離された
リヴァイ「べたべた触んな!!気色わりぃ…」
ハンジ「だって、凄いんだもん」
リヴァイ「しつけえな!!もう稽古に付き合ってやらねえぞ!?」
ハンジはぶつくさと文句を言いながらも、剣を握って構えた
ハンジ「リヴァイ、よろしくね!!」
そう言うや否や、リヴァイに切りかかった
ラッキースケベって?
ミケすんがポロリしたりすんですか?
え?ミケがお色気役なの?峰…じゃなくミケ不二子なの?
どこをポロリするかが問題だ…
ギィン!!
ハンジの唸るような剣が、リヴァイの体に当たる寸前で弾かれる
リヴァイは、ハンジの剣を弾くと同時に身を屈めてハンジの脇腹を狙う
ハンジはバックステップでそれをかわす
その隙に、リヴァイは体を前に跳ばし、ハンジに体当たりを仕掛けた
ハンジ「うわっ…」
ハンジは後方に倒れた
その体を跨ぐように、リヴァイは立ち、銅の剣の剣先をハンジの首元にあてた
ハンジ「こ、降参…」
ハンジの言葉に、リヴァイは剣を引いた
ハンジ「と見せかけて!!」
ハンジは起き上がり様リヴァイの脚を腕で固めようとした
リヴァイ「てめえ!!ハンジ!!」
リヴァイは身を翻し、逆にハンジの肩を地面に押さえつけた
ハンジは完全に、リヴァイに組み敷かれた
ハンジ「はは、やっぱり無理か…本当に降参」
リヴァイ「お前は、攻撃の後の横が無防備すぎる。盾を使う練習をしろ。身軽なお前の動きが損なわれない、軽い盾を使え」
ハンジ「うん、わかった、そうするよ、リヴァイ」
ハンジはリヴァイに組み敷かれたまま頷いた
ミケ「…ほう、公開プレイか…なかなかやるな…」
エルヴィン「朝から精が出るな、お前たち」
いつの間にか来ていたミケとエルヴィンが、二人の様子を客観的に判断した
リヴァイ「…ちっ…」
リヴァイは組み敷くのをやめて立ち上がり、ベンチに置いた装束をとりに向かった
ハンジ「ちっ、ちがうよ!!そんなんじゃない!!稽古してたんだってば!!」
ハンジは顔を真っ赤にした
エルヴィン「何の稽古なんだろうな?」
ハンジ「剣のに決まってるだろ!?馬鹿っ!!」
ミケ「すんすん…ああ、まだ処女だった。リヴァイの匂いもついていない…いてっ…」
ふっと笑うミケの頭を叩いたのは、ハンジではなく、リヴァイだった
ミケのいてっがかわいくて死んだ
>>203
死んじゃだめだ生きろw
カザーブの村をでて、しばらく北上していくと、やがて小さな村が見えてきた
ハンジ「あれがノアニールの村かな?」
リヴァイ「ああ、そうだな」
リヴァイは頷いた
エルヴィン「どうやら凄い状況らしいからな、村の中でも念のため警戒を怠らない様にしよう
エルヴィンの話に、一同頷いた
村に入ると、一見普通なのだが、何故か人が生活している雰囲気がない
村じたいは綺麗に整備され、特別変わった様子はないのだが…
ハンジ「とりあえず、宿に行ってみようか」
ハンジの言葉に従い、一同は宿に向かうことにした
宿に入って、異変に気がつく
ミケ「…宿の中の奴が全員寝ているな。店主まで」
そう、宿の店主らしき人物はカウンター裏のベッドに寝ていた
掃除婦のような女も、ベッドに寝ていた
客も例がいなく…寝ていた
エルヴィン「これが、異変か…」
エルヴィンは顎に手をやって、暫しなにかを考えるように俯いた
ハンジ「村人がもれなく全員寝てるね…」
村の家々を見て回ったが、起きている人は一人もいなかった
リヴァイ「村が何かのトラブルで、この状況になっちまったんだろうな…」
エルヴィン「村の奥にある家、あれで最後の家だな。行ってみよう」
その家に近づくと、他の家とは違う状況が見てとれた…煙突から煙が出ていたのだ
ミケ「食い物の匂いがするな…」
ハンジ「起きている人がいるかもしれない!行ってみよう」
一行は村外れの一軒家の扉をノックした
ノックをし、中に入ると、確かに鍋に何かの料理が火にかかっていた
ハンジ「こんにちはー。どなたかいらっしゃいますか?」
ハンジが大きな声で言うと、家の二階から足音が聞こえ、老人が降りてきた
老人「おお、旅の者か…」
老人は、顔に深く刻まれたしわを、より一層しわくちゃにして、笑顔になった
だが、その笑顔はどことなく悲しげであった
リヴァイ「ご老人、この村の状況は、どういう事だ?」
リヴァイの静かなる問いに、老人が一行に椅子をすすめながら話を始めた
老人「実はな…この村は、みな眠らされておるんじゃ…西にあるエルフの村の女王にな…」
老人は静かに話を続けた
この村の男と、エルフの女王の娘が恋仲になった
だが、エルフは人間を嫌っていた
人間は排他的であったからだ
エルフの女王は、ましてや自分の娘が人間と恋仲など、許すはすがなく、大反対をした
その結果…二人は村から出て駆け落ちし、ノアニールの西の洞窟に入って消息をたった
エルフの女王は怒り狂い、ノアニールの村に魔法をかけた…村人が永遠に起きない魔法を…
それからずっと、老人は一人、で村人の世話や、村の管理をしていた
一行は、老人…ノアニール村の村長の家を後にし、西にあるエルフの隠れ里に向かった
ハンジ「エルフかあ…排他的って聞いたけど…どうして人間を嫌うのかなあ」
ハンジの疑問に、リヴァイが口を開く
リヴァイ「エルフはな、人間に強いたげられた過去があるんだ。エルフの流す涙が、ルビーになる時があってな…」
リヴァイの話は、ハンジの心を強く締め上げるに十分だった
ハンジ「そりゃ、エルフは人間を嫌うよ…涙のためにエルフを監禁して、あらゆるやり方で涙を流させて…私、人間であることが、恥ずかしいよ…」
ハンジは瞳に涙を貯めていた
エルヴィン「全ての人間が悪いわけではないが、同じ種族がやった事だ。反省と労りの心は持って、エルフに接しなければな」
エルヴィンは、ハンジの震える肩をそっと抱いた
ミケ「…村が見えてきたぞ?」
ミケの指差す方向に、森があり、その中に小さな家々があった
ハンちゃん…イイ子や…
エルフの村に到着した一行
村に入るなり、とがった耳が特徴的なエルフ達が、蜘蛛の子を散らすかの様に、家に隠れてしまった
ハンジ「やっぱり、嫌われているんだね…」
ハンジは俯き目を閉じた
村の奥に向かって歩くと、一人だけ人がいた―老人だった
エルヴィン「ご老人、このような場所で何をしておられるのですか?」
エルヴィンが静かな声で問いかけた
老人「旅の方々か…私は、実はエルフの女王に謝りに来ておるのじゃが…全く取り合ってもらえんのじゃ…」
老人は疲れた顔をし、ため息をついた
話によると、老人は、エルフの女王の娘と駆け落ちした、男の父親であった
エルフの女王に、ノアニールの村の眠りの呪いを解いてもらえるよう、謝罪に訪れていたのだという
ミケ「…話を聞こうともしないのか…」
ミケは鼻をすん、と鳴らして村の奥に視線を投げた
その視線の先には、此方に険悪な視線を送ってくる者がいた
剣呑な視線を送ってきていたのは、エルフの女王であった
女王「この村に、何かご用でしょうか?私たちはあなた方人間に用などないのですが」
きっぱりと拒絶の意を示す女王に、ハンジは哀しげな表情を見せる
ハンジ「女王様…」
エルヴィン「女王様。ノアニールの村の、眠りの呪いなのですが…」
そこに、エルヴィンが単刀直入に話を始めた
女王「当然の報復です!!あの男は、私の大切な娘を奪うだけでは飽きたらず、この村に代々伝わる宝物『夢見るルビー』までも、奪っていったのですから!!」
リヴァイ「夢見るルビー…」
リヴァイが小さな声で呟いた
女王「さあ、あなた方に呪いをかける前に、この村から出て行きなさい!!」
取りつく島もない女王に急かされるように、一行は村を追い出された
ハンジ「凄く、嫌われているんだね…」
現実を目の当たりにし、今までそんな敵意を向けられた事がなかったハンジは、顔を真っ青にして震えていた
エルヴィン「ハンジになら、きっと心を開いてくれると思うよ。君は優しい心を持っているからな」
エルヴィンはそう言いながら、ハンジの頭を優しく撫でてやった
ミケ「とりあえず、消息をたったらしい洞窟に行ってみるか」
一行はノアニール西の洞窟に足を運んだ
>>209
コメントありがとう!!
洞窟内部は、過去は整備されていたのだろうか、石畳があったり、ランプが設えてあったりしたが、今はそのどれもが朽ち果ててぼろぼろであった
何故か靄がかっており、水分を含んだ空気と、時おり天井から滴り落ちる水滴に、一行の集中力も散漫になった
ハンジ「こんな不気味な所に、本当に二人は入ったのかなあ…無事だといいけれど…」
ハンジの呟きに、リヴァイはちらりと視線を向けたが、何も言わずにまた視線を前に戻した
二人が居なくなったのは随分前
こんな魔物の多い洞窟で、ずっと隠れて過ごす事は、不可能に近かった
ミケとエルヴィンも顔を見合わせて、複雑な表情をしていた
その時、突然背後から何かがリヴァイに飛びかかり、背中に爪をたて、切り裂いた
リヴァイ「ちっ…」
ミケ「く、しまった…」
ミケの鼻すら気がつかない速さで、魔物は尚もリヴァイに噛みつこうとする
リヴァイの背丈程の体長の、犬…のような魔物
目玉がだらんと飛び出し、その体は皮膚も毛も疎らで、骨や肉が覗いていた
ハンジの「リヴァイ!!」
ハンジが慌てて剣を抜き打ち、その勢いのまま、犬の体を切り裂いた
尚も襲いかかろうとする犬の…ゾンビに、ミケの蹴りが炸裂する
―身体は大きく折れ曲がった…だが、まだ尚も動きを止めない犬
ミケ「し、死なんのか!?」
犬は、エルヴィンに襲いかかろうとする
その時、エルヴィンが静かに力ある言葉を発する
エルヴィン「ニ フ ラ ム!」
その言葉と同時に、エルヴィンの手から眩しい光が生まれ、それは今まさにエルヴィンを襲おうとした犬のゾンビの身体を包み込んだ
光が収束した時、犬の姿は跡形もなく消え去っていた
あ、二フラム額からじゃなくて手から出るんだ
>>215
ちょw吹いたw
このハンジ愛おしすぎてリヴァイに奪われるのが惜しくなってきた
リヴァイより先に奪ってやる
>>217
まじか!!が、がんばれ!?w
ハンジ「リヴァイ!?」
ハンジは慌ててリヴァイに駆け寄り、背中を見た
リヴァイ「大丈夫だ。かすり傷程度だ…服が破けちまったがな…」
ハンジ「大丈夫じゃないよ!?結構深く抉られているし、傷口が変色してる…」
ハンジの声に、エルヴィンとミケが駆け寄った
エルヴィン「毒だな…間に合うといいが…キアリー!!」
エルヴィンは手のひらをリヴァイの背中にかざし、力ある言葉を紡いだ
キアリーとは、解毒の呪文である
その光は緑…背中の傷口に入り込んで、消えた
ミケ「少し色がましになったな」
リヴァイ「すまん、エルヴィン」
リヴァイの額には汗が滲んでいた
額だけではない、顔中から汗が吹き出していた
ハンジ「変な汗をかいているよ…?!本当に大丈夫!?」
ハンジは心配そうに、リヴァイの顔と、傷口とを交互に見ていた
エルヴィン「汗が出るのは毒と体が戦っている証拠だが、少し毒が身体に回っているかもしれんな…うかつだった」
ハンジ「とりあえず、傷口だけでもふさいでいいかな…」
ハンジの声に、エルヴィンが頷いた
ハンジはリヴァイの背に手をかざし、力ある言葉を発する
ハンジ「ホイミ!」
傷口を塞ぐ呪文、ホイミを唱えると、手のひらから放たれた淡い光が、背中の傷口を塞いだ
リヴァイ「ハンジ、すまん」
リヴァイはハンジにも頭を下げた
ハンジ「ちょ、ちょっと謝らないでよ!?リヴァイ!!」
ハンジは何故か真っ赤になって落ち着きを無くした
リヴァイはそんなハンジにちらりと目をやると、ぼそっと呟く
「俺だってたまには頭を下げる…」
エルヴィン「リヴァイの新たな一面に、ハンジが惚れ直したかな?」
エルヴィンのからかうような言葉にハンジは…
ハンジ「違う!!リヴァイなんて謝ったりしそうにないからさ!?俺がいつも一番、みたいじゃない!?偉そうだし…だから…」
焦ったように捲し立てた
リヴァイ「誰がいつも偉そうなんだよ、誰が!!」
リヴァイはハンジの額を指で弾いた
胸を指ではじいて欲しかった
>>221
もうwいちいち笑えるわw
>>223
あ、紹介して頂きありがとう。私が出ていますね
素敵な話に出させていただいているようですね
リヴァイの背中の傷も幸い大事には至らず、そのまま洞窟探検を続けた
しばらくすると下に降りる階段があり、慎重に降りた
下の階はより一層靄がかっており、洞窟内は湿気が充満していた
リヴァイ「でけえ地底湖があるな。そのせいで湿気が多いのか」
リヴァイは神経質そうに、額に張り付く前髪や、身体にへばりつくインナーを気にしていた
ハンジ「こんな所に…ほんとに来たのかな…信じられない…」
ハンジは慎重に回りに視線を送りながら、行方知れずの二人を探した
地底湖の奥には、小さな祭壇が設えてあった
一行はその祭壇に足を運んだ
祭壇の上には、簡素な宝箱があった
ミケ「スン…罠の匂いはしない…開けて大丈夫だぞ」
その言葉に、ハンジはゆっくり箱を開けた
箱の中には、真っ赤な石でできた小さな置物と、手紙が入っていた
ハンジ「これは…」
リヴァイ「夢見るルビーだろうな」
リヴァイは頷いた
>>215のせいでエルヴィンの呪文がみんな額から出るという脳内補完が…
>>226
なんて脳内補完なんだよw
ハンジ「手紙、封が空いてるけと…読んでもいいかな?二人の行方の手がかりになるよね?」
ハンジは手紙を大事そうに手に持ちながら、仲間たちに訊ねた
エルヴィン「ああ、読んでみてくれるかい?ハンジ」
エルヴィンの言葉に頷くと、ハンジは手紙の内容を、声に出して読んでみた
ハンジ「『わたしたちは、エルフと人間、この世で許されぬ愛ならば、せめて天国で一緒になります。お母様、ごめんなさい…アン』」
ハンジは、読み終わると鼻をすすりだした
その瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていた
ミケ「…身投げ…か」
ミケが湖を覗いて呟いた
ハンジ「死んじゃったの…?」
ハンジの問いに、仲間たちは頷いた
リヴァイ「添い遂げる為に、死を選んだんだな…」
その言葉に、ハンジは涙の川が出来ている顔をリヴァイに向ける
ハンジ「死ななきゃならなかったのかな…他に、方法はなかったのかな…」
やりきれない思いをぶつけるかの様に、言葉を発した
リヴァイ「こいつら…アンと男は、それしか方法を見つけられなかったんだろうな…」
リヴァイの言葉に、ハンジは頭を振った
ハンジ「死んだら何も、残らないのに…」
そう言うと、また大粒の涙を溢すのだった
エルヴィンは跪き、懐から聖水の入った瓶を取り出し、湖に撒いた
そして両手を合わせて握り、目を閉じた
ミケ「向こうで仲良くやってるだろう。ハンジ、泣くな」
ミケは、未だに涙が止まらないハンジの肩を抱いて、聞く者が落ち着くような低い落ち着いた声で、言葉を紡いだ
リヴァイは持っていたハンカチを破り、魔法で小さな炎をその切れ端に宿した
リヴァイ「安らかに…眠れ」
静かにそう言って、その炎を湖に浮かべた
洞窟を出て、またエルフの隠れ里に行った
夢見るルビーと、アンの手紙をエルフの女王に渡すためだ
ハンジは洞窟から出ても、ずっと俯き、一言も言葉を発しなかった
添い遂げるためとはいえ、自ら命を絶たねばならなかった彼らの気持ちを考えると、胸が締め付けられる様に痛んだ
エルフの村に入り、真っ先に女王の元に行った
エルヴィンが、ハンジにルビーと手紙を手渡した
エルヴィン「ハンジ、これは君が、渡すんだよ。わかったね?」
優しく諭すような声を掛けるエルヴィンの顔を、じっと見つめ、ハンジは頷いた
ハンジ「女王様…夢見るルビーを探して参りました…後、この手紙を…」
ハンジは女王に歩みより、ルビーと手紙を手渡した
女王はルビーを見て、そして手紙に目を通した
その目は初めは厳しい光を宿していたが、やがて潤んできた
女王「あの子は…アンは…死を選んだのですね…私が許さなかったばかりに…」
女王の言葉に、ハンジは首を振った
ハンジ「元はと言えば…私たち人間が、あなた方に酷いことをしたから…それが悪いんです…女王様…」
ハンジの目から、また涙がこぼれ落ちた
そのハンジの涙を見たエルフの女王は、玉座から立ち上がり、ハンジの頬に手を添えた
女王「貴女は優しい心の持ち主…それは涙を見ればわかります。確かに人間がした事は許されませんし、これからも仲良くすることは難しいでしょう…」
女王はゆっくり言い聞かせる様に、言葉を紡いだ
女王「ですが、貴女のような方がいるのなら、人間と歩み寄ろうとするエルフが、今後現れるかもしれません。その時には…」
女王は、俯くハンジの顎に手を掛け、顔を上に向けた
女王「アンの時のように頭ごなしに反対せず、見守ってみましょう…。さあ、これをお持ちなさい。これをノアニールの村に撒けば、村人は目を覚ますでしょう」
女王は、ハンジの手に革袋を持たせた。
ハンジ「あ…ありがとうございます…女王様」
ハンジはその革袋をしっかりと握りしめた
一行は、男の父と共に、ノアニールの村に戻った
ノアニールの村に帰ってきた一行
ハンジ「これを、村に撒けばいいんだよね…」
ハンジが不安そうに仲間を見た
リヴァイ「ああ…魔法の粉の様だから、勝手に風に乗って舞うはずだ」
ハンジは頷き、革袋の紐をほどき、中にある粉を空中に撒いた
すると、そのきらきらした粉はみるみるうちに村全体に広がった
しばらくすると…
家々から人が出てきたり、窓を開けたり…
村人達が目を覚まし出した
エルヴィン「眠りの呪いが解けたようだな…良かった」
ハンジ「うん…」
複雑そうな表情のハンジの頭を、エルヴィンは優しく撫でてやるのだった
そこへ、村長が駆け寄ってきた
村長「勇者殿、村の呪いを解いて頂き、ありがとうございました…」
そう言って、ハンジの手を握る村長
ハンジ「いえ、仲間たちと、エルフの女王様の計らいのお陰です…」
ハンジは頭を振って、そう答えた
村長「今日は、村の宿にどうか休んで行って下さい。おもてなしをさせていただきますから」
村長の言葉に、ミケが静かに口を開く
ミケ「もてなしはいらんが、明日はシャンパーニュの塔に行く。だから一夜の寝床をお借りしたい」
村長「勿論です、どうぞ、ご案内致します」
宿に行く道すがら、エルフの女王の話や、駆け落ちした二人の話を村長にしてやるハンジであった
宿で村長が食事をご馳走してくれた後…
各々充てがわれた部屋に行った
一人一部屋づつ…男メンバーは久々の一人部屋であった
ミケは部屋の床の上で、入念にストレッチをしていた
驚く程柔軟性のある体
この柔軟性があってこそ、伸びやかで、アクロバティックな攻撃が可能になるのだ
ミケ「明日はシャンパーニュの塔か…天下の大盗賊カンダタ相手だ…一切油断はできんな…」
ミケは拳に鉄の爪…といわれるナックルダスターに、長く鋭い爪の様な物がついた武器を装着した
ミケ「これを使ってみるかな…」
ミケは鉄の爪に慣れるために、宿の外で修練することにした
ミケが宿の外へ出てしばらく歩くと、宿の前のベンチに一人座って書物を広げているハンジが見えた
ミケはハンジに歩み寄った
ハンジ「あっ、ミケ」
ハンジはそばに来たミケに、はにかんだ様な笑顔を見せた
ミケ「リヴァイがいないのか…珍しいな、外で読書が日課なはずなのにな…」
ミケの言葉に、ハンジは頭を振る
ハンジ「誘ったんだけど、今日はそんな気分じゃねえって…」
ハンジは沈んだような表情をして、俯いた
ミケ「ハンジは、リヴァイがいなければ寂しそうだな」
そう言って鼻を鳴らすミケに、ハンジは真っ赤な顔を向ける
ハンジ「そ、そんな事はないもん!!」
ミケ「だか、本当におかしいな…体調でも悪いんじゃないか?昼間の洞窟で毒をもらっていたしな…」
ミケのその言葉に、はっとして立ち上がるハンジ
ハンジ「私、リヴァイの様子を見てくる!!」
そう言って、本をベンチに置き去りにして、走り去って行った
ミケ「…ハンジは、そうか。やはりな…」
ミケは本を手に、修練のためのスペース探しに出た
ハンジは息を弾ませて、宿に戻った
そのままリヴァイの部屋に行こうとして思いとどまり、自分の部屋に戻った
ハンジ「汚い格好で行ったら、リヴァイ嫌がるよね…」
さっさと寝間着に着替えて、部屋を出た
リヴァイの部屋のドアをノックする
ハンジ「リヴァイ、いるかな?」
待てども返事はなかった
ハンジがドアを引くと、ギイッと音を出して開いた
ハンジ「リヴァイ、入るね…」
ハンジが部屋に入ると、開きっぱなしのカーテンから、月明かりが部屋を明るく照らしていた
ハンジ「リヴァイ?」
ベッドに歩み寄ると、リヴァイが横たわっているのが確認できた
顔を覗くと…汗をかいているのがわかった
ハンジがそっとリヴァイの額に手を当てると…
ハンジ「熱い…」
ハンジは慌てて部屋を飛び出した
ハンジ「エルヴィーン!!大変!!」
ハンジはノックを忘れて、エルヴィンの部屋に雪崩れ込んだ
エルヴィンは、ベッドサイドの椅子に腰を下ろして本を広げていたが、ハンジを見て立ち上がった
エルヴィン「どうしたハンジ。寝間着のまま飛び込んできて…」
エルヴィンは苦笑した
ハンジ「リヴァイが、あっついんだ…熱があるみたいで…」
エルヴィン「そうか、やはり毒が抜けきれていなかったか…」
エルヴィンが顎に手をやりながら言った
ハンジ「エルヴィン、どうすればいいかな…」
狼狽えるハンジに、エルヴィンは静かに言葉を発する
エルヴィン「リヴァイには、一応寝る前に飲む薬を渡したんだ。多分その薬のせいで、熱と汗が出ていると思う」
エルヴィンの言葉に、ほっと胸を撫で下ろすハンジ
ハンジ「そ、そっか…良かったぁ…」
そう言って、笑顔を見せた
エルヴィン「だが、寝汗が酷くて風邪を引かれても困るな…ハンジ、汗を拭いてやってくれ」
ハンジ「…えっ!?それは…」
口ごもるハンジに、清潔なタオルをぽんと手渡すエルヴィン
エルヴィン「頼んだぞ?ハンジ」
ハンジはしばらく物言いたげにエルヴィンの顔を窺っていたが、やがて頷いて、リヴァイの部屋に向かった
ハンジはリヴァイの部屋の扉を一応ノックして、中に入った
ベッドに歩み寄ると、リヴァイは相変わらず眠っていた
額や首筋だけを見ても、かなり汗をかいているのはわかった
ハンジはベッドサイドに椅子を持ってきて座ると、タオルでそっと額の汗を拭った
ハンジ「凄い汗…」
そっと布団をめくると、案の定シャツが汗で濡れていた
ハンジはしばし考えた後、そのシャツのボタンに手をかけた
やはり、そのままにしていては風邪をひいてしまうかもしれない、そんな不安が、恥ずかしさより先に立った
シャツのボタンが全部外れた時…
リヴァイ「おい…」
リヴァイが目を覚ました
ハンジ「うわっ…ごめん起こしちゃったね」
あたふたするハンジを尻目に、リヴァイは体を起こし、表情一つ変えずに言葉を発した
リヴァイ「…いやいい。ところで、これは一体どんな状況だ?まさか夜這いじゃねえだろうな…?」
眉をひそめるリヴァイに、ハンジが顔を真っ赤にする
ハンジ「ちっ、違うよ!!熱で汗だくだから、拭いてあげようかと…」
リヴァイに抗議するような口調で言った
リヴァイ「…冗談だ、わかってる。それ、貸せ」
リヴァイはハンジからタオルを受け取り、シャツを脱いで汗を拭きはじめた
ハンジ「リヴァイ、熱はどう?体はまだしんどいかな…」
ハンジは上半身裸のリヴァイから目をそらしながら、心配そうに言った
リヴァイ「大丈夫だ。薬がきいたみてえだな」
ハンジ「そっか、良かった!!」
ハンジはリヴァイの顔に視線を移して、輝くような笑みを浮かべた
リヴァイ「…ふん」
リヴァイはハンジのその笑顔から顔を背けた
ハンジ「あっ、待ってリヴァイ。背中は拭いてあげる。傷も見せて欲しいし」
ハンジは、リヴァイの手のタオルを取り上げ、ベッドの上に飛び乗った
リヴァイ「おい、勝手に…」
リヴァイの制止の言葉に重なるように、ハンジが背中をタオルで拭きはじめた
ハンジ「傷、まだしっかり残ってるね…私のホイミが弱かったのかもね、ごめんね」
ハンジは、背中の傷にそっと手を触れながら、申し訳なさそうに言った
リヴァイ「…別にお前のせいじゃねえよ。そんな傷どうってことねえ。唾でもつけときゃ、勝手に治る」
リヴァイは何かを隠すように、早口で捲し立てた
ハンジ「唾では治らないよ、リヴァイ」
ハンジは静かにそう言うと、その背にそっと唇を寄せた
背中に触れた、指先とは違う感覚
リヴァイは一瞬体に電流が流れた様に痺れた…そんな気がした
リヴァイ「…ハンジ、お前…何かしたか…?」
リヴァイの問いに、顔を真っ赤にして首を振るハンジ
ハンジ「うっ、ううん何も…何もしてないよ!?触っただけ、うん…」
リヴァイがハンジの方に体を向けると、月明かりだけでもわかるほどに紅潮した顔が、目の前にあった
リヴァイ「…唾でもつけてくれようとしたのか…?」
リヴァイの問いに、ハンジはあたふたと言葉を発する
ハンジ「あっあのね…うん、唾を…いやいや!!そんな事は考えてない…」
リヴァイは、その言葉を遮るように、ハンジの頬に軽く唇で触れた
リヴァイ「確か、こんな感触だったような気がしたんだがな…違うか?」
リヴァイの言葉が耳に入ったのかわからないが、ハンジは顔を赤らめたまま、頷いた
ハンジ「そ、そうかも、しれないね…」
リヴァイ「…やっぱり夜這いだったのか…危ない危ない…」
ハンジ「ちょ、ちょっとぉ!!リヴァイったら何て事を!!」
二人はじゃれ合うように、ベッドの上でまるで色気のない喧嘩に興じるのであった
翌朝、一行は一路ノアニールから西の岬の先端にある、シャンパーニュの塔へ向かった
ハンジ「リヴァイ、背中の傷はどう?熱は本当に大丈夫?」
ハンジは村を出る前から、同じ質問を何度も投げ掛けていた
リヴァイ「ちっ、しつけえな…大丈夫だと言ってるだろうが…」
リヴァイは迷惑そうに眉をひそめた
エルヴィン「リヴァイ、迷惑そうにしているが、本当は嬉しいんだろう?昨日はお前の部屋で、二人きりで何をしていたんだろうな…?」
エルヴィンは不敵な笑みを浮かべてそう言った
ハンジは顔を真っ赤にして捲し立てる
ハンジ「な、何もしてないよっ!!人聞き悪いなっ…ひゃっ…」
ミケはすかさずハンジの首筋の匂いを嗅いだ
ミケ「スンスン…ああ、まだ処女だ。なんだ、何もなかったのか。折角けしかけたのにな」
ミケは肩をすくめた
ハンジ「ちょっと、ミケ!?処女とか言わないでっていうか、匂いを嗅ぐの止めてよね!?」
そんなハンジの苦情に耳を貸すはずがないミケ
ミケ「リヴァイよ、ハンジは首筋が弱いからな、覚えておけよ?…っていてっ」
ハンジ「いい加減にしてよね!?ミケのばか!!」
ハンジに頭を叩かれたのであった
シャンパーニュの塔には、明らかに人が生活している形跡があった
ただ、やはり魔物は入り込んでいる様で、一階から二階に上がる階段の上で、唐突にそれと出くわした
がしゃん…がしゃん…
エルヴィン程の背丈の、鎧の騎士がそこにいた…ただしその騎士は、体の中身がなかった
それなのに動いていると言う事は…
ハンジ「お化けぇぇぇ!!」
ハンジは慌ててミケの後ろに隠れた
リヴァイ「ちっ…さまよう鎧…か」
リヴァイは舌打ちをし、指先に意識を集中させた
エルヴィン「…ふっ!!」
エルヴィンの剣が、鎧の脇を薙いだ…
キィン!!
刃は弾かれて、ダメージを与えられない
さまよう鎧が、剣を上段から降り下ろす
エルヴィンはギリギリのところで避けて、バックステップした
その間にも、今度は鎧の剣がエルヴィンの胴を薙ぐべく振られる
キンッ…その剣は、ミケの拳にはめられた鉄の爪が止めた
すると、突然さまよう鎧が後ろに下がり、一行から距離をとった
鎧「うぁぁぁ!!」
そして、突然奇声をあげた
リヴァイ「…何だ?」
呪文を放とうとして、一瞬躊躇した
すると、奥からふわふわと、クラゲの様な物体が飛んできた
それはさまよう鎧の隣でぴたりと止まる
エルヴィン「仲間を呼んだか!」
ミケ「スライムの頭に沢山の脚…か」
ハンジ「オバケが仲間を呼んだの…?」
ハンジはおそるおそる、といった体で視線を新たなる珍入者…に向けた
青いゼリーのような、丸みをおびた頭の下に、黄色い棒状の脚が十数本、ゆらゆら揺れていた
リヴァイ「…ベギラマっ!!」
指先に貯めていた魔力を、前方に向けて一気に解き放つリヴァイ
ギラ系の上位呪文は、広範囲に渡り、業火を撒き散らした
「きゅぅぅ…」
現れたばかりのクラゲの魔物は、業火に触れるだけで蒸発した
しかし鎧は、盾で業火を防いでいた
ハンジ「盾でも呪文を、防げるのか…」
ハンジの呟きに、リヴァイが反応する
リヴァイ「ベギラマ程度なら防げる。ただし、それ以上の上位呪文は防げねえぞ。しかし、厄介だな…」
さまよう鎧はなかなかの強敵で、斬撃は弾かれるわ、ベギラマは防がれるわ…
八方塞がりに見えた
しかし、意外な人物が声をあげた
ハンジ「エルヴィン、スカラを頂戴。リヴァイはルカニを鎧にかけて!!ミケは、援護して!!」
ハンジはそう言うと、ゴーグルの奥の目を光らせた
ハンジの声に呼応し、二人は呪文を唱える
エルヴィン「スカラ!」
リヴァイ「ルカニ!」
エルヴィンのスカラは、ハンジの、体を青い光で包み込む
リヴァイのルカニは、さまよう鎧の鎧部分に赤い光を浸透させる…防御力低下の呪文だ
ミケは鎧に向けて一瞬で間合いをつめ、鉄の爪を叩き込む
防御力が低下した鎧の体は、その衝撃で亀裂が入る…しかし、まだ動きは止まらない
ミケに対して斬撃を加えるべく、剣を振りかざした
その時―
ハンジ「たぁっ!!」
そのタイミングを見計らったかの様に、勢い良く飛び出すハンジ
大きくジャンプし、鎧の肩の上に肩車のような格好で取りついた
暴れる鎧にしがみつきながら、指先に魔力を集中させる
そして、闇の様な鎧の顔の部分に手を突っ込み…
ハンジ「ギラッ!!」
その炎が、チリチリと音をさせて、鎧の内部に熱を伝えていく
鎧「ぎぃやぁぁぁ…」
鎧は断末魔の様な叫びを残して、ガラガラと崩れ落ちた
ハンジ「…っつ、やった!!」
ハンジは少し顔をしかめたが、ガッツポーズをした
ミケ「凄いなハンジ。偉いぞ」
ミケはハンジの頭をぐしゃっと撫でた
エルヴィン「いい指示だったな。惚れ惚れするよ。さすがは勇者と言ったところかな」
エルヴィンは満足そうに頷いた
ハンジ「鎧のおばけはさ、内部に魂が潜んでるって聞いたことがあってさ!!…って、あっ…」
ハンジの言を遮るかの様に、リヴァイがその腕をつかんで引き寄せた
リヴァイ「手を見せてみろ」
ハンジ「だ、大丈夫だよ…?」
ハンジは手を後ろに隠した
リヴァイ「早く見せろ」
リヴァイの真剣な表情に、仕方無しに両手をリヴァイに差し出した
「…ちっ」
リヴァイはハンジの手を見て、舌打ちをした
ハンジ「ご、ごめん、リヴァイ…」
何だか怒られそうな雰囲気に、つい謝ってしまったハンジ
ハンジの手の平は、鎧から伝わる熱のせいで火傷をおっていた
ミケ「大丈夫か?」
エルヴィン「ホイミでは無理かな…」
仲間の心配そうな声に、ますます身を縮ませるハンジ
ハンジ「ご、ごめんなさい、でも大丈夫…あっ…」
リヴァイは水を火傷の手のひらにかけ、その手に薬を擦り込んでいく
リヴァイ「お前は手のひらを怪我すりゃ、剣が握れねえだろうが。少しは考えろ」
ハンジ「う、うん…ごめんね。スカラじゃ呪文は防げないんだね…」
ハンジは項垂れた
リヴァイ「スカラは打撃のみに有効だ。勉強不足だな…エルヴィン、べホイミだ」
エルヴィン「ああ、わかった。べホイミ!!」
ホイミより強力な回復呪文を、ハンジの手のひらにかける
そうすると、ある程度火傷は改善された
ミケ「戦えそうか?一度引き返すか?」
ミケは心配そうにすん、と鼻を鳴らした
ハンジ「皆ごめん…」
謝るハンジの手に包帯をまきながら、リヴァイは目線は手のままで口を開く
リヴァイ「俺が早くその方法に気がつきゃ良かったんだ。お前が悪いんじゃねえから謝るな。だが、今後は無茶はするなよ?勇者の代わりはいねえんだからな」
ハンジは今にも泣き出しそうな顔をした
ハンジ「う、うん。わかった…皆ごめんね、心配してくれてありがとう」
そう言うと、瞳からポタポタと大粒の涙をこぼし始めた
その様子に慌て出したのはリヴァイ
リヴァイ「お、おい…泣くなよ!?」
柄にもなくオロオロした様を見せるリヴァイに、仲間が声をかける
ミケ「リヴァイが勇者を泣かせた…」
エルヴィン「女の子を苛めて泣かせるなんて…男の風上にもおけんな…愛情表現の裏返しなのはわかるがなあ…」
リヴァイ「お、お前ら…!」
リヴァイは鋭い視線を二人に向けたが、それ以上何も言えなかった
ハンジ「うっ…うっ…」
ゴーグルの中は、洪水に成るほどに涙がたまっていた
リヴァイはそのゴーグルを外してやる
リヴァイ「おい、もう泣くなよ、頼むから…」
リヴァイはもはやどうして良いかわからず、とりあえずハンカチで涙を拭いてやった
ハンジ「リヴァイ、皆ごめんね。…うん、大丈夫、剣は握れるよ」
ハンジはリヴァイに借りたハンカチで涙を拭きながら、手を握ったり開いたりしてみて言った
エルヴィン「そうか、良かった良かった!」
エルヴィンは、ハンジの頭をよしよしと撫でた
リヴァイはばつが悪そうに、ちっと舌打ちした
ミケ「ハンジ、無理はするなよ?カンダタは強敵らしい。お前の剣がなけりゃ倒せないだろう…本当に平気か?」
ミケの心配そうな声に、ハンジは笑顔になった
ハンジ「うん、大丈夫!!薬と、ベホイミのお陰で殆ど痛みも無いよ!いける!!」
エルヴィン「では、先に進むか」
ハンジ「カンダタかあ、怖そうだなあ…」
ハンジは背中をぶるっと震わせた
ミケ「ハンジは勇者のくせに恐がりだな。お化け~って叫んでいたしな…」
ミケはスン、と鼻を鳴らした
ハンジ「わ、悪かったね!!お化け恐がりのインチキ勇者で!」
ミケ「そこまで言ってないぞ?」
ミケはスンと笑った
そのまま、塔の上へと歩を進める
時おり魔物が一行の行く手を阻んだが、リヴァイのベギラマや、ミケの鉄の爪で難なく蹴散らせた
エルヴィン「さて、最上階の様だな」
塔の最上階までたどり着いた一行
塔を囲む柵からは、広くロマリア地方を見渡せる、抜群のロケーションだった
ハンジ「すっごい見晴らしだなあ!!っと…呑気なことは言ってられないか」
ハンジは両頬をパチンと叩いた
エルヴィン「あの真ん中の部屋が怪しいな…行ってみよう」
一行は、真ん中の部屋にむかった
部屋には鍵が掛かっていたが、盗賊の鍵で開けることができた
中には…
酒盛りをしている、いかにも盗賊風情なやからがいた
盗賊A「なんだお前ら、何しにきた?」
部屋に突然入ってきた侵入者に、酒で焼けたようなしゃがれた声で対応する盗賊
盗賊B「仲間になりにきたのか…?生憎だが、今は募集してねえんだ」
そう言いながら、一行に歩み寄る盗賊二人
ハンジ「あの、カンダタって人を知りませんか?」
ハンジはばか正直に、盗賊に向かってそう言った
エルヴィンが一瞬あちゃーと頭を抱えたが、口に出しては何も言わなかった
盗賊A「なんだねえちゃん、カンダタ親分に用があるのか…そうだな…」
盗賊は、ハンジの腕をとり、自分にぐいっと引き寄せた
ハンジ「わっ!!」
盗賊A「まだガキだが、なかなかの上玉じゃねえか?親分も喜ぶぜ」
盗賊B「確かにな。後ろの男どもには用はねえ、死んでもら…うっ!?」
盗賊Bの言葉を遮ったのは、盗賊Aだった
ハンジは、盗賊Aを盗賊Bに向かって投げたのだった
ハンジ「ガキじゃないよ!!ばーか!!」
ハンジはあっかんべーをした
盗賊A「なんだこのあま!!強え!!親分の所に報告だ!!」
そう言い残し、盗賊たちは奥の部屋に消えた
一行が後を追うと、空っぽの宝箱と、下に降りる梯子があった
エルヴィン「下に降りて行ったようだな…皆準備はいいか?」
ミケ「大丈夫だ」
ハンジ「うん、おっけ!!」
リヴァイ「…ああ」
一行は、梯子を降りた
すると、目の前にがたいの良い、レスラーの様な覆面に、パンツだけをはいたような奴がいた
手には斧と…金に輝く冠を持っていた
ハンジ「あなたがカンダタ!?」
ハンジの声に、ニヤリと笑う男
盗賊A「あいつです、俺を投げ飛ばした女は…カンダタ親分」
カンダタ「なるほどな…嬢ちゃんなかなかやるようだな」
ハンジ「カンダタさん、その冠はロマリアの大切な宝。返してくれませんか?」
ハンジはカンダタに歩み寄りながら、言葉を発した
カンダタは珍しいものを見ているかのような目をハンジに向けた
カンダタ「ふん、この冠が欲しいのか…」
カンダタは下卑た笑みを浮かべた
ハンジはカンダタの傍まで歩み寄って、頷く
ハンジ「はい、ロマリアの王にお返ししたいんです」
真摯な表情を見せるハンジを、じっと見つめるカンダタ
エルヴィン「…ハンジ、近寄りすぎだぞ?」
エルヴィンがそう言った瞬間―
カンダタは冠を部下に放り投げ、代わりにハンジを担ぎ上げた
ハンジ「わ、わっちょっと!!」
カンダタ「この嬢ちゃんも貰って行く。じゃあな、間抜けども!!」
カンダタが走り去ろうとした、その瞬間…
リヴァイ「ヒャド!!」
リヴァイの魔法がカンダタの足元に炸裂する
カンダタの片足が、完全に地面と一緒に凍りついた
ハンジ「は、は、離せ!!お尻触らないでよっ…」
ハンジはじたばたするが、カンダタの屈強な腕は、ハンジの体を離さない
それどころか、空いた手でハンジの体をまさぐっていた
ミケ「やっ、はっ!!」
ミケはすでに盗賊Aと交戦していた
エルヴィンは、盗賊Bとにらみ合っていた
カンダタ「ふん、ガキだがなかなか、ついてるところに肉がついてていいな。とりあえず凍った足を…ふんっ」
カンダタは凍った足を一気に地面から引き離した
尚もハンジの体を探る
ハンジ「やだ、触らないでよっ…気持ち悪…」
ハンジの声が弱々しくなり、その瞳から涙がこぼれ落ちた時…
リヴァイ「お前は、死ね」
リヴァイのいつもは静かに光る瞳に、狂気の焔が宿った
リヴァイの体はまるでバネの様に、カンダタにむかって跳ぶ
そして、カンダタの顎にむかって拳を飛ばす
カンダタ「…ちびでひ弱な魔法使いが、俺に格闘で挑むつもり…ガッ!!」
カンダタは、その攻撃を受け止めようと片手を構えたが、その片手ごと、リヴァイの拳は顎をとらえた
間髪を入れず、脚がカンダタの胴を捕らえる
それを避けようと、カンダタはハンジを放り出した
ハンジ「わ、わっ!!」
ハンジは体が地面に投げ出される瞬間、身を翻して着地した
リヴァイ「…」
それを見たリヴァイは、カンダタから距離をとった
ハンジ「リヴァイ、ありがとう」
ハンジの言葉と、顔に張りついた涙の後に、ちっと舌打ちをした
リヴァイ「油断するな。馬鹿が…」
ハンジ「うん、ごめんね」
ハンジは素直に頷いた
ハンジ「よくも触ってくれたな…許さないからね…カンダタ!!覚悟!!」
ハンジはそう言って、カンダタに斬りかかった
リヴァイ「ルカニ!!」
リヴァイの防御低下呪文がカンダタにかかる
鈍い赤い光がカンダタの体を包む
カンダタは、斧を手にハンジに襲いかかった
ハンジ「やあっ!!」
カンダタ「ふんっ!!」
キィン…
ハンジとカンダタの剣と斧がぶつかり合う
キィン、キィン
何度か攻防を繰り返すうち、息が乱れてきたのは、体の小さなハンジだった
リヴァイ「ハンジ、離れろ…ベギラマっ!!」
ハンジが離れた瞬間、カンダタの体が炎に包まれる
カンダタ「ぎやぁぁぁ!!」
ハンジ「今だ!!」
ハンジは再度、体を跳ばす
大きくジャンプし、剣を上段に構え、着地ざまに振りおろした
剣は炎に包まれるカンダタの、腹を薙いだ
カンダタ「くっ…野郎共、退却だ!!」
カンダタはそう言ったが…
盗賊ABともに、エルヴィンとミケに倒され、気を失っていた
カンダタ「くそったれ…仕方ねえ…強いお前たち、冠は返すから俺たちを見逃してくれ」
カンダタは、冠をハンジに放り投げた
ハンジ「…もう二度と悪いことをしないなら、許すよ」
ハンジは冠を抱きながらそう言った
リヴァイ「…甘えな…お前」
リヴァイはちらっとハンジを見てボソッと呟いた
カンダタ「ありがてえ…助かったぜ、じゃあな?つええ嬢ちゃん」
カンダタはそう言い残して、部下を担いで去って行った
エルヴィン「ハンジ、大丈夫か?」
ミケ「危ないところだったな、処女」
エルヴィンとミケがハンジに歩み寄り、声をかけた
ハンジ「うん、大丈夫。処女は余計だけどね」
リヴァイは無言で、拳をさすっていた
その様子を見たエルヴィンが、リヴァイに歩み寄る
エルヴィン「リヴァイ、大丈夫か?拳が…」
先程ハンジを助けるべく飛ばした拳が、青く変色して少し歪になっていた
リヴァイ「…やっちまった」
ミケ「力の制御を怠ったか」
ハンジ「えっ…何?どうしたの…あっ…」
ハンジはリヴァイの拳を見て絶句した
リヴァイ「…何てことねえ」
リヴァイは自ら包帯で、くるくると拳をまきはじめた
ハンジ「…とりあえず、ロマリアに戻ろう…病院に行った方が…」
リヴァイ「大丈夫だ。後でホイミをくれ」
リヴァイはそう言うと、両手を伸ばした
リヴァイ「塔から出る呪文を唱えるから、掴まれ」
三人が自分の腕につかまったのを確認したリヴァイは、静かに言葉を発した
リヴァイ「リレミト!!」
リレミトが唱えた脱出呪文リレミトが、一行を塔の外に運んだ
塔の外に出た一行
今度はハンジが腕を伸ばした
ハンジ「私も、新しい呪文を使うから…つかまって」
エルヴィン「ほう…ワープ呪文か」
ミケ「ハンジも勉強しているんだな、偉いぞ」
リヴァイ「…」
一行はハンジにつかまった
ハンジ「ルーラ!!」
ハンジの呪文は、一度行った場所へ運んでくれる効果がある
ハンジたちは一瞬で、ロマリアに戻った
ロマリアの王は、ハンジに抱きつかんばかりに喜んだ
金の冠は、半分諦めていたのだ
それをこんな少女が取り返してきた
王「勇者ハンジよ、是非わが妃に…」
ハンジに腕を伸ばす王
ハンジはびくっと身を震わせた
その顔には何故か恐れが貼り付いていた
ロマリアの王に冠を返した後、宿に行った
王は城に泊まるよう促したが、ハンジがそれを断った
そして、かわりに宿を用意してくれたのだった
二日連続で一人一部屋。
四人は各自思い思いに過ごす事にした
ハンジはリヴァイの部屋にいた
いつの間にか夕暮れ時になっていて、部屋には赤い光が射し込んでいた
ハンジ「リヴァイ、ごめんね…私が油断したせいで…」
ハンジはベッドに腰かけるリヴァイの手に、自分の手のひらを乗せながら、申し訳なさそうに呟いた
先程から、ホイミを数回かけた
そのお陰か、拳の怪我はかなりましになっていた
リヴァイ「いや、俺が力を制御出来なかっただけだ。お前のせいじゃねえよ」
リヴァイはボソッと呟いた
ハンジ「制御って?」
リヴァイ「…ああ、火事場の馬鹿力ってやつがあるだろ…あれがたまにでちまう。そのせいで、骨は無事でも、皮膚や肉が削げちまう事がある」
リヴァイは淡々と説明した
ハンジ「無理をしちゃうって事?」
ハンジは心配そうにリヴァイの顔を覗いた
リヴァイ「体に無理をさせるって事かもな…ま、久々にやっちまった。滅多に出ねえよ」
リヴァイははぁ、とため息をついた
ハンジ「私のせい…だよね」
ハンジは俯いた
リヴァイ「…おい、泣くなよ?」
リヴァイは俯いたハンジの頭をぽんぽんと、軽く叩いた
ハンジは顔をあげた…泣きそうな顔ではあったが、涙は流していなかった
ハンジ「うん、ごめんね、泣かないよ」
そう言って、無理矢理笑顔を作った
リヴァイがそんなハンジの頬に手を伸ばして触れようとした時…
ハンジはびくっと身を震わせた
顔が強張っていた
リヴァイ「…ハンジ?」
顔が真っ青になったハンジを見て、表情を曇らせたリヴァイ
ハンジ「ご、ごめんね…何だか、体が勝手に…」
体の震えが止まらないハンジに、極力優しい口調で語りかけるリヴァイ
リヴァイ「…嫌だったよな。気持ち悪かっただろ。それに…怖かっただろうが、もう大丈夫だ、ハンジ」
リヴァイの何時になく優しい声色に誘われる様に、ハンジの瞳から涙がこぼれ落ちた
ハンジ「う、うん…怖かった…」
リヴァイ「ああ、俺だってあんな風にされたら、気持ちわりぃしな。お前はよく耐えた」
リヴァイはまた、その手を伸ばそうとしたが、引っ込めた
ハンジはゴーグルを外して、ベッドの下に座り込んで、泣いた
リヴァイ「ハンジ」
俯き泣きじゃくるハンジに、リヴァイはベッドから降りて跪き、視線を合わせようとした
リヴァイの自分の名を呼ぶ声に、顔をあげるハンジ
目の前には、心配そうに見つめる、リヴァイの顔があった
ハンジ「リヴァイ…」
ハンジはおそるおそる手を伸ばした
その手がかすかにリヴァイの手に触れる
リヴァイが、その手をそっと握り返す
リヴァイ「大丈夫…か?」
手と手を繋いだまま、尚も心配そうに見つめるリヴァイに、ハンジはやっと、笑顔を見せた
ハンジ「うん…大丈夫だよ、リヴァイ」
リヴァイ「そうか…ならいい」
リヴァイはふぅ、と息をついた
ハンジをベッドに座らせて、リヴァイは隣に腰を下ろした
手は、繋いだまま…
ハンジ「気持ち悪い触られ方…だったんだ」
ハンジはまた、ブルッと身を震わせた
リヴァイ「…思い出さなくてもいい」
リヴァイはハンジをちらっと見て、静かに言った
ハンジ「でもね、リヴァイは怒ってくれただろ…?だから、嬉しかったんだ…」
ハンジはそう言うと、顔に笑みを浮かべた
リヴァイ「…そうか」
ハンジ「だから…」
ハンジはそこまで言って、リヴァイの手をギュッと握り締めた
そして、手を繋いだまま、ハンジはリヴァイの頬に唇を落とした
ハンジ「ありがとう、リヴァイ」
ハンジはにっこり笑って微笑んだ
王道展開美味しいです(^q^)
>>279
コメントありがとう!!
リヴァイ「礼なんか、いらねえよ」
リヴァイは俯き目を閉じた
耳朶の熱さは、触らなくてもわかった
繋がった手と手の温もりは、まだ出会って間もない二人の絆を深めていた
ハンジ「明日はさ、何処に行こうかな。情報収集しなくちゃね」
ハンジは窓の外を見た
まだ見ぬ未知の大陸が、国が自分を待っている気がした
リヴァイ「地図では、ロマリアの南方に位置する砂漠地帯に、古くからある王家と、墓…があるらしい。魔王に関する何か…情報も入手出来るかもしれんな」
ハンジは目を見張る
ハンジ「リヴァイってば、もう次の事を考えていたんだね…凄いな!!」
リヴァイは眉をひそめる
リヴァイ「…お前が何も考え無さすぎなんじゃねえのか…?」
ハンジ「…うっ、何も言い返せない…その場限りの事しか考えてないから…」
リヴァイ「ばーか」
リヴァイはハンジをちらりと見てそう言った
ハンジ「ふんだ、ちび!!」
二人は手を繋ぎながら、年齢の割りには幼い《痴話喧嘩》に興じるのであった
明くる朝…
ハンジ「皆、よく眠れた?」
ハンジは生き生きとした表情を見せていた
エルヴィン「ああ、久しぶりに満喫したよ。夜の酒場を」
ミケ「同じく…だ。ハンジは…スンスン…まだ順調に処女か…」
ハンジ「な、何だよそれ!!ほんと、初めてあった時からずっと言われ続けてるよ…私」
ハンジはため息をついた
エルヴィン「処女喪失するまで、言われ続けるんだろうな。早いところ、喪失したほうが良さそうだ、なあリヴァイ」
リヴァイ「…何で俺に振るんだ?!」
リヴァイは剣呑な眼差しをエルヴィンに向けた
エルヴィン「では、俺がもらってやっても…」
ハンジ「やだやだやだ!!勝手に決めないでよね!!私の体なんだから!!」
ハンジは顔を真っ赤にして叫んだ
リヴァイ「…南東の街、アッサラームに向かい、そこから砂漠地帯に入ろう」
リヴァイはその会話を終わらすべく、地図を広げて指し示した
ハンジ「新たな土地か…頑張ろう!!皆引き続きよろしくね♪」
勇者一行は、新たな土地に向かい、歩みを進めるのであった
ロマリアを出てまずは東へ
勇者一行は歩みを進める
アリアハンを出てから短い間だったが、ハンジは勇者として確実に力をつけ始めていた
仲間との連携も、徐々にスムーズになってきていた
四人の間にも仲間としての絆が生まれつつあり、その役割も決まりつつあった
ミケは持ち前の鋭い感覚から、策敵を
エルヴィンは常識と落ち着きのある行動で仲間のまとめ役
リヴァイはよくものを知る、歩く百科事典
ハンジはそんな仲間に支えられて、ここまで歩んできたのだった
偶然酒場で出会った、運命の仲間
この出会いこそが、果たして世界を救う鍵となるのか…
まだまだ旅は、続く…
東に進むと、やがて南に向かって伸びる長い橋が見えてきた
橋を南に渡ると、ロマリア地方からアッサラーム地方になる
ハンジ「アッサラームかあ、どんな街かなあ」
橋を渡りながら、ハンジはにこにこと笑顔を見せながらスキップをしていた
リヴァイ「アッサラームの街は、バザーをやっているみてえだな。いろんな屋台が出ていたり…珍しい武器、宝石…様々な物が集まる、貿易の拠点だ」
リヴァイは頭を巡らせながら言った
エルヴィン「それは楽しみだな」
ミケ「異文化に触れあう、絶好の機会だな」
ハンジ「宝石!!」
ハンジは目を輝かせた
ミケ「処女は宝石が好きなのか」
ハンジ「また、処女って言ったな…宝石は、見るのが好きなんだ。きらきらと、不思議だろ?」
エルヴィン「宝石よりも、お前の瞳の方がきらきらして綺麗だよ、ハンジ」
エルヴィンは突然笑みを浮かべて静かにそう言った
そのブルーの瞳は、ハンジの大きな瞳を見つめていた
ハンジ「エ、エルヴィン…?な、何だよ急に…」
ハンジは顔を赤らめた
リヴァイ「…」
リヴァイはちらりとエルヴィンを見たが、何も言葉を発しなかった
ミケ「…エルヴィン…お前」
ミケがすん、と鼻を鳴らした
エルヴィン「…こんな感じで言ってやれば、落とせるぞ、リヴァイ」
エルヴィンはにやりと不敵な笑みを浮かべた
ハンジ「エルヴィン!!」
ハンジは真っ赤になった
リヴァイ「…そんなくせぇ言葉、言えるかよ!」
リヴァイはふん、とそっぽを向いた
橋を渡り終え、ついにアッサラーム地方に上陸した
ここから更に南下し、砂漠の玄関口、貿易の拠点の街アッサラームに向かう
一行が歩みを進めていると、突然体長二メートルはある、紫色の…猿…が襲ってきた
猿にしては体つきががっしりしており、さながらゴリラに近い
体に見合わぬ敏捷性で、先頭にいたミケに、素早いパンチを繰り出してきた
ミケ「フッ…タッ…」
ミケはそのパンチを避けながら、伸びるような腕の動きで拳を叩きつける
リヴァイ「キラーエイプだ。群で生活しているはずだから、まだ近くに…いた!!」
ミケとエイプの戦いの背後から、更に二匹の猿が躍り出る
ハンジ「たぁっ!!」
ハンジは素早い動きで、一瞬でキラーエイプに詰め寄り、剣を一閃させる
キラーエイプ「うごご!!」
エイプは変な呻き声をあげてハンジに襲いかかるが、返す剣で切り込まれ、絶命した
エルヴィン「ふっ…やっ!!」
エルヴィンは剣でエイプの攻撃を全て受ける
僧侶ではあるが、全く力負けする事はなかった
リヴァイがその戦いの間隙を縫うように、背後から身を踊らせる
リヴァイ「…」
無言でエイプの体に背後からとりつき…持っていた毒針を首筋につきさした
エイプ「ががが…」
エイプの体が震え始める
しばらくすると、地面に倒れた
ミケもエイプを倒して、戦いは幕をおろした
ロマリアを出て日中いっぱい歩き、やっとたどり着いたアッサラームの街
バザーが開催されており、沢山の商人で賑わいを見せていた
ハンジ「ターバンを頭に巻いた人が多いね。それと、白い装束着てる人も多いね」
ハンジは辺りをきょろきょろ見回しながら言った
リヴァイ「白い装束は、砂漠地方特有の…謂わば民族衣装の様なもんだな」
エルヴィン「ターバンは、商人だな」
ミケ「珍しい酒もありそうだ。今日は夜通し楽しむかな…ハンジも行くか?」
ミケはそう言って、ちらりとハンジに目をやった
ハンジ「行こうかな!!ミケと一緒にお散歩したこと無いしね!!」
ミケ「…お前はいつもリヴァイといるからな、遠慮している」
ミケはぼそっと呟いた
リヴァイ「別にいつも一緒じゃねえ」
プイッと顔を背けるリヴァイ
エルヴィン「今日はハンジに大人の嗜みについて教えてやるかな」
エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた
ハンジ「何それ、やらしいなあ!!」
顔を真っ赤にするハンジに、ミケは
ミケ「処女は想像力だけは豊からしい。酒の飲み方を教えてやると言っているだけなのにな…」
そう言って、ふっと鼻で笑うのだった
アッサラームの街を四人でぶらつく
街は活況を呈していた
人々は商人相手に品物の値段を値切ったり、沢山の食べ物に舌鼓を打ったり…
今までのどの街よりも賑やかであった
ハンジ「すっごいね~賑やかで楽しい!」
ハンジは楽しそうに辺りをきょろきょろと見回していた
エルヴィン「ハンジはアリアハンから出たことが無いしな。色んな場所があって、新鮮だろう?」
ハンジ「うん!!って、あれ?あの人私たちを呼んでない?」
ハンジの指差す方向には、露出の多い服を着た女性…とはいえ、ハンジと同じくらいの年齢に見えるのだが…が、一行を手招きしていた
ミケ「まだ小娘だが、ハンジよりは豊満だな…っいて!!」
ぼそっと呟くミケに、ハンジはすかさず腰に蹴りをいれた
ハンジ「悪かったね!!胸が小さくて!!」
ハンジは不貞腐れつつも、小娘の元へ歩み寄った
小娘「あなたたち…ぱふぱふしていかない?」
小娘はしなをつくって、こちらに言い寄ってきた
ハンジ「ぱふぱふってなに?」
ハンジはきょとんとした
リヴァイ「間に合ってる。結構だ」
リヴァイが鋭い目線を小娘に向けた
エルヴィン「ぱふぱふって言うのはな…」
リヴァイ「説明するな」
リヴァイは機嫌が悪そうに吐き捨てた
ミケ「ハンジにはまだ無理かもしれんなあ…」
ハンジをちらりと見て言うミケに、ハンジは詰め寄る
ハンジ「無理ってなんだよ!?出来るし!!」
エルヴィン「出来ないことはないと思うがなあ…」
リヴァイ「やらんでいい」
ますます不機嫌になるリヴァイの腕をとる、小娘
小娘「あなた、気に入っちゃった…サービスしてあげるから、ただで、どうぞ」
リヴァイ「…っておいまて離せ!!」
ハンジ「行ってらっしゃい」
リヴァイは一軒の家に引きずられる様に連れていかれた
ハンジ「リヴァイ、連れていかれたね?」
ハンジはあどけない表情を、エルヴィンとミケにむけた
エルヴィン「ハンジ、ぱふぱふって言うのはな…」
エルヴィンが、ハンジの耳元でささやくように説明した
ハンジ「…え、え、え、え、えー!!」
ハンジの顔がみるみるうちに真っ赤になった
ミケ「だから、ハンジにはまだ無理だと言ったんだ」
ミケは勝ち誇ったような笑みを浮かべて、すんと笑った
ハンジ「じゃあリヴァイは…いかがわしいことをしに…行ったんだ…」
ハンジは何だが急に、胸が苦しくなった気がした
ミケ「男はたまには羽目をはずさんとな」
ハンジ「そ、そうなんだね…」
ハンジは俯きため息をついた
小娘の家の二階
リヴァイ「…おい、てめえ離せ」
二階まで引きずられる様に連れてこられたリヴァイは、心底迷惑そうな顔をしていた
まだ昼間であるに関わらず、カーテンがしまった薄暗い部屋
簡素なベッドと簡素なテーブルに椅子があるだけの部屋だった
小娘「私はリーネって言うの…お兄さん、名前は…?」
リーネはリヴァイの腕をとり、ベッドに誘った
リヴァイ「…俺にはこんなサービスは必要ねえんだ。手荒な真似はしたくね…うっ…」
リーネはリヴァイの肩をぐいっと指で掴んだ
リーネ「お兄さん、すっごく凝ってるね…肩…ばきばきよ?」
リヴァイ「…」
結局リヴァイはリーネの言う通りにベッドに横になり、全身指圧を受けたのであった
リーネ「本当はね、男は父さんにマッサージしてもらうの…でも、今日は父さんいないから…」
リーネはリヴァイの背中を丁寧に揉みほぐしながら、耳元でささやいた
リヴァイ「…そうか」
リーネ「お兄さん、素敵だったからつい誘っちゃった…いい体してるよね、ふふ」
リーネの声色がよりいっそう艶めく
リーネの手が、明らかにマッサージと違う動きをし出した事に気がつき、体を起こすリヴァイ
リヴァイ「おい、そのサービスはいらねえと…っ」
そのリヴァイの口を、リーネは自らの口で塞いだ
リーネ「お兄さん…ほんとに、しない?」
リーネの上目使いを、さらりとかわすように、視線を遠くにやる、リヴァイ
リヴァイ「しねえ…」
リーネ「私、結構楽しませる自信、あるよ?もしかして、一緒にいた女の子と…そういう関係?」
リヴァイ「うるせえ。関係ねえだろうが」
リヴァイは吐き捨てるように言った
リーネ「そっか…私になびかない男なんて初めてだよ…大抵はがっついてくるのにさ…」
リーネは、唇を尖らせた
リヴァイ「お前はもう少し自分の体を大事にしろ」
リヴァイはリーネをちらりと見て言った
リーネ「大事に…か。ねえ、あの子の事は大事なの?まだ、手を出していないの?」
リーネはリヴァイの顔を覗きこんだ
リヴァイ「…そういう関係じゃねえ」
リーネ「…ふぅん。じゃあ私にも付け入る隙はあるかな?」
リヴァイ「…それは、ねえな」
リヴァイはふん、と鼻で笑った
リーネ「あの子が羨ましいな。大事にしてもらってるんだ…よく見たら目が大きくて可愛らしい子だもんね…」
リヴァイ「…マッサージありがとう。代金置いていく」
リヴァイは少し多目にお金をテーブルに置いた
リーネ「いらないのに…」
リヴァイ「あっても困らん。もう少し露出の少ない服でも買えよ」
リーネはリヴァイのその言葉に
「本気で惚れちゃいそう」
と言って、また唇を寄せるのだった
リヴァイが家から出てくると、エルヴィンとミケが歩み寄った
エルヴィン「どうだった?」
リヴァイ「…まあ、良かったぞ。体がすっきりした」
ミケ「ほう…そうか」
男三人の話を聞くともなしに聞いていたハンジは、苦虫を噛み潰した様な顔をしていた
ハンジ「…すっきりしたんなら、良かったね!」
そう言い捨てて、一人街の奥に消えた
リヴァイ「…あいつ…」
リヴァイは顔をしかめた
エルヴィン「ぱふぱふが何なのかを教えてやったら、物凄く機嫌が悪くなってな…はは」
エルヴィンは苦笑いした
ミケ「処女には刺激が強すぎたか」
リヴァイ「あのなあ…俺はマッサージを受けただけだ。指圧とな…やましいことは何も…」
リヴァイはそこで、言葉の歯切れを悪くした
エルヴィン「ん?何かあったのか…?」
エルヴィンの問いには答えず、踵を返すリヴァイ
リヴァイ「ハンジを探してくる」
そう言い残して、二人の元を去った
リヴァイ「おい、ハンジ」
街の端にある公園の噴水の縁に、腰を下ろしているハンジを見つけて、リヴァイは歩み寄った
ハンジ「…リヴァイ」
ハンジは一瞬リヴァイに視線をやったが、すぐに反らした
リヴァイ「何か…怒ってるのか?」
ハンジ「…いや、いいよ、別に。男ってそういうものなんだろ?好きでなくても、何でも、誰でも、いいんだろ」
ハンジは俯きため息をついた
リヴァイ「…確かに、そうかもしれん。否定はしねえ」
リヴァイはハンジの隣に腰を掛けてそう言った
ハンジ「私は、そういうのは、嫌いだ…誰でもいいなんて…」
ハンジは頭を振った
リヴァイ「俺は…誰でも構わず抱かねぇ。気持ちわりぃだろうが…知らないとやつなんか」
リヴァイは眉間にシワを寄せた
ハンジ「でも…さっきはしたんだろ?ぱふぱふ…すっきりしたらしいじゃない」
ハンジはジト目でリヴァイを見た
リヴァイ「いや、あのな…」
ハンジ「いいってば…リヴァイの好きにすればいいんだから。私は、関係ないんだから…」
ハンジは消え去りそうな声で言った
リヴァイ「いや、だからな…?」
ハンジ「それに、リヴァイの口に、口紅がついてるよ?…私、もう、嫌だ!!」
ハンジはそう叫ぶと、瞳に涙を貯めながら、一人駆け出して行ってしまった
リヴァイ「…ちっ」
拭いたつもりが不十分だったのか…隠そうとするのが悪いのか…
誤解をされているのは間違いはなくとも、全く何もなかったわけではなく…
何を言っても言い訳にしかならない
それ以前に、元々二人の関係が何なのかを、もう一度考える必要があるかもしれない…と思うリヴァイであった
エルヴィン「まったく、あの二人は困ったものだな」
エルヴィンはリヴァイが去ったあと、一人ごちた
ミケ「お前が変な事をハンジに吹き込むからだろう」
ミケがあきれた顔でエルヴィンを見やった
エルヴィンは肩をすくめる
エルヴィン「男とはそういうものだという事を、そろそろ知っておかなければならない年齢だと思わんか?ミケ」
ミケ「・・・まあ、そうだがな・・・何もあのタイミングで・・・」
エルヴィン「雨降って地固まるというだろう」
エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた
ミケ「エルヴィン…お前またその笑い方をしているぞ・・・普通に笑えないのか。女を口説く時のようなスマイルは普段はでないのか」
エルヴィン「俺はいつも同じように笑っているつもりだがなぁ・・・」
エルヴィンは困ったように苦笑いした
ミケ「ま、いつも何か企んでいるようなお前だから、仕方ないか」
ミケはスン、と鼻を鳴らした
二人はそのまま、宿に向かったのだった
ハンジは一人、にぎやかなアッサラームの町を歩いていた
どうしてリヴァイがそういう事をしたからってこんなに腹が立つのか
どうしてリヴァイの口に口紅がついているからって、こんなに悲しいのか
ハンジにはわからなかった
わかりたく、なかったのかもしれない
エルヴィンがパフパフのことを教えてくれた
何となくは、いくら処女の自分でもわかってはいたし、男がそういうものだというのも、何となくはわかっていたつもりだった
じゃあなんでリヴァイにこんなに腹を立てているのか・・・
リヴァイは背は小さいけど立派な『男』だ
だから、そんな事があったっておかしくない
それに、目つきは鋭くて怖いけど、実は優しいし、綺麗な顔立ちをしている
だから、そういう誘いだってあって当然だ
自分はどうだろう
何も知らない初心なガキだ
ガキだから、きっと腹が立つんだ
大人なら・・・腹が立たないのかもしれない
自分が情けなくて、また涙があふれてきた
誰に頼ればいいのかもわからなくて・・・ただ、人通りの少ない道を選んで、涙を隠して歩くしかなかった
ハンジがとぼとぼと歩いていると、先ほどリヴァイが誘われていた、あの家の前に来ていた
ハンジ「・・・・・・」
ハンジはちらっとその家に目をやったが、すぐに踵を返した
その時だった
「あ、さっきの女の子だ」
背後から声をかけられた
振り返ると、先ほどリヴァイを部屋に連れ込んだ・・・ぱふぱふ相手の少女が立っていた
少女はぱたぱたとハンジに歩み寄る
「さっきの女の子だよね?あら・・・もしかして、泣いてるの?」
少女に涙の後を見抜かれ、思わず目をこするハンジ
ハンジ「あ・・・ううん、泣いてない、目に、ごみが入っただけ」
「・・・ふうん・・・そっか。家に寄っていかない?あなたと話がしてみたかったんだー」
少女はきらきらと目を輝かせながら、ハンジの顔を覗いた
身長が170センチ近くある自分に比べて、少女は150センチほどしかなく小柄だ
ほっそり華奢なのに、付くところにはしっかりついている・・・胸も豊満だ
露出の高い服装が、さらに少女の美しい身体を際立たせていた
それに引き替え自分は・・・
全然魅力的じゃない
ハンジはそう確信して、またため息を漏らした
「さ、どうぞどうぞ」
結局半ば無理やり、家の中に入れられた
部屋に通されて、簡素な椅子に座るようすすめられたハンジは、おとなしく腰をかけた
「あなた、名前なんていうの?私はリーネ」
リーネはハンジの前にいい匂いの紅茶を出しながら、話しかけてきた
ハンジ「私は、ハンジ」
ハンジはぼそっと呟く様に言った
リーネ「ハンジいい名前ね・・・ところで、ねえ、どうして泣いていたの?」
リーネが単刀直入に訪ねてきて、ハンジは紅茶を吹きそうになった
ハンジ「な、泣いてなんかいないから」
ハンジは首を横に振った
リーネ「泣いていたよ、すぐにわかるよ。その顔についている涙の跡。よかったら話してくれない?」
リーネは心配そうにハンジの顔を覗いた
ハンジ「どうして、あなたに話さないといけないの・・・?」
リーネ「どうしてだろ、あなたが誰かに話を聞いてほしそうにしているなって、何となく思ったからだけど。だって、あなた旅をしているんだよね?仲間はみんな男でしょ?その人たちに相談できないことって絶対あるじゃない?だから・・・」
ハンジははっとした
リーネは本当に自分のことを心配してくれている様で、自分を見つめる瞳はどことなく憂いを秘めて、だが限りなく優しいまなざしだった
ハンジ「・・・私は最低なんだ。うん・・・」
ハンジはぽつりぽつりと、洗いざらい話始めた
リーネ「・・・そっか、ハンジ。ごめんね」
リーネはすべて語り終えたハンジの顔を、じっと見つめながら、申し訳なさそうに言った
ハンジ「ううん、私が、悪いんだから・・・みっともなくて、ごめんなさい」
ハンジはまた、涙を一筋こぼした
リーネ「まずさ、どうしてそんなにリヴァイのやることが気に入らなかったのかだけど・・・それは、自分でもわかっているんじゃないの?ハンジ」
ハンジ「え・・・?」
ハンジはきょとんとした
リーネ「うーん、はっきり言うと、ハンジは私に嫉妬してたわけ。で、それはどうしてかというと・・・」
ハンジ「・・・」
リーネ「言わなくてもわかるよね?それくらいは」
リーネはいたずらっぽい笑みを浮かべた
ハンジは項垂れた
ハンジ「そうなのかな・・・やっぱり・・・」
リーネ「そうだよ、そうとしか思えないよ、ハンジ」
リーネはハンジの頬に手をのばし、涙をすくった
ハンジ「でも・・・私は綺麗じゃないし・・・あなたみたいに、魅力的じゃないし・・・」
リーネ「ハンジ・・・あなたは十分魅力的だよ。自分ではわからないのかもしれないけど・・・ぶっちゃけ、私リヴァイの事一目ぼれしちゃってさ。だから、キスしちゃったわけだけど・・・」
ハンジ「・・・うん」
ハンジは頷いた
リーネ「でもね、それも無理やりだったの。すごく嫌がられたし・・・その先をしよっていっても拒絶されたよ。大事な人が、いるみたいだったね」
リーネはふふっと笑みを浮かべた
ハンジ「・・・そうだったのか」
リーネ「しかもさぁ聞いてよハンジ・・私は男を誘って、そうならなかった事、一度もないのが自慢だったの!それなのにリヴァイはなびかなかった・・・すっごく悔しい」
ハンジ「・・・うん」
リーネ「でもね・・・その理由が今わかった気がするよ。ハンジ、あなたを見ていたらね」
リーネはそういうと、ハンジの頬にそっと唇を落とした
ハンジ「ひゃっ・・・」
リーネ「あなたはとっても可愛いし、魅力的。私男だったら、絶対あなたを好きになると思う。だって、純粋でまっすぐで、しかも戦っても強いんだよ?最高の女じゃない!」
リーネはそう言って、今度はハンジを抱きしめた
ハンジ「リーネ・・・」
ハンジは顔を赤らめた
リーネ「さ、話はおしまい!さっさとリヴァイに誤解していたことをあやまっておいで?わかった?世話のやける勇者様」
リーネはそう言って、ハンジを立たせて玄関に連れて行った
ハンジ「リーネ、紅茶ごちそう様、話を聞いてくれて、ありがとう」
リーネ「ハンジ、旅が終わったら、また遊びに来てくれる?私、あなたと友達になりたいんだ」
リーネのその申し出に、ハンジは輝くような笑顔で応えた
ハンジ「うん、喜んで!!」
ハンジは一路、リヴァイを探すべく町へ繰り出した
ハンジは町をうろうろしながら、リヴァイになんて謝ろう・・・と考えていた
上手く言える自信が全くない
ハンジ「どうしよう・・・」
当てもなく町を歩きながら、あーでもない、こーでもないと考えていると、いつの間にか先ほどリヴァイがいた噴水に来ていた
そして、その噴水の周りに設えてあるベンチに、腰をおろして読書をしているリヴァイが目に入った
ハンジはしばらくためらった末、ゆっくりとリヴァイに歩み寄った
目の前に立つと、本から顔を上げたリヴァイと目があった
リヴァイ「ハンジ」
自分の名を呼ぶリヴァイの声
ハンジは何故か、その声を聴くだけで背中が震えて、胸の鼓動が怪しい動きをした・・・気がした
ハンジ「リヴァイ、あのね、私・・・」
そこまで言った所で、リヴァイは自分の横に置いていたとんがり帽子を頭に被り、ハンジにその場を指し示した
リヴァイ「ハンジ、座れよ」
ハンジ「う、うん」
ハンジは弾かれたように、リヴァイの隣に座った
リヴァイ「何か、言いかけていたが」
本を閉じ、自分の顔をまっすぐ見てくるリヴァイに、顔の紅潮が隠せないほどになってきたハンジ
ハンジ「あっ・・・あのね、謝らなきゃいけなくて・・・その、リーネの事なんだけど・・・誤解、していたみたいで、その、ごめんなさい」
しどろもどろに話すハンジを、まっすぐな目でじっと見つめているリヴァイ
その瞳はいつもは鋭い眼光が見えているが、今は穏やかな光を灯していた
リヴァイ「・・・そうか」
リヴァイはそう言うと、また本を開き、本に視線を移した
ハンジ「リーネと、話をしたんだ・・・。とっても、いい子だった。綺麗だし、優しいし」
ハンジはリーネとの会話を思い出しながら、話をし始めた
リヴァイ「ああ」
リヴァイはちらっとハンジに視線をやったが、またすぐに本に視線を戻した
ハンジ「あの子がきれいでうらやましいと思ったんだ、けど、それを言ったら・・・あの子は私がうらやましいと言ったんだ」
リヴァイ「・・・そうか」
ハンジ「それでね、友達になってって言われたんだよ。私、同年代の女の友達っていないから、うれしくて」
ハンジは顔を綻ばせながら、話をした
リヴァイ「良かったな」
ハンジ「うん」
そこからしばらく、沈黙が二人を包んだ
リヴァイは本にずっと視線を送り、ハンジはその横顔に、視線を送っていた
突然、リヴァイが本を閉じた
リヴァイ「・・・じっと見られてりゃ読書にならねえ・・・」
リヴァイは眉をひそめてそう言った
ハンジ「あっ、ごめん、ついつい・・・」
ハンジは顔を真っ赤にした
リヴァイ「お前は、おっちょこちょいでガキでバカだ」
ハンジ「ええっいきなり何だよそれ!」
ハンジは今度は怒りで顔を真っ赤にした
リヴァイ「勝手に怒ってどこかへ行きやがるし、突然いい雰囲気にしたと思えば自分からぶちこわしていきやがるし・・・」
ハンジ「あ・・・」
ハンジは急に恥ずかしくなって、俯いた
リヴァイ「だがな、お前はまっすぐで純粋だ。天然で、何しでかすかわからねえ奴だがな」
ハンジ「う・・・否定できない・・・」
リヴァイ「そうだ、そんなどうしようもない奴を、俺は・・・」
俯いたままのハンジの頬に、手を伸ばすリヴァイ
ハンジは恐る恐る顔を上げた
真摯な表情で自分を見つめるリヴァイの顔が、目の前にあった
ハンジ「リ、リヴァイ・・・?」
リヴァイ「お前は・・・勇者だ。特別な存在だ。バカで天然なのにな・・・」
リヴァイはそう言いながら、ハンジの頬をそっと撫でた
その表情は、どことなく憂いを秘めているように見えた
ハンジ「リヴァイ・・・私は、勇者だけど・・・でも・・・普通のちょっとバカな、女の子だよ」
ハンジはそう言いながら、何となく悲しくなって、瞳に涙をあふれさせた
リヴァイ「ああ、バカだなお前・・・また泣きやがった。まあ、おれも・・・バカだがな」
そう言って、ハンジの涙を指ですくってやるリヴァイ
その手をハンジの頬に添えて、自分の顔をハンジに近づける
まつ毛とまつ毛が触れ合うくらいの距離で、ハンジは恥ずかしさのあまり、たまらず目を閉じた
―そして、二人の唇は一瞬重なり合った
ハンジ「リヴァイ・・・」
唇が離れてしばらく、二人は見つめあっていたが、やがてハンジがおそるおそるといった口調でリヴァイの名を呼んだ
リヴァイはハンジの頬に触れながらそれを撫でた
リヴァイ「ハンジ、なんて面だ」
ハンジ「え、変な顔してるかな・・・」
ハンジはうろたえた
リヴァイ「顔がゆでだこみてぇに真っ赤だな」
ハンジ「だ、だって・・・仕方ないじゃないか・・・その・・・」
ハンジはしどろもどろに言葉を発した
リヴァイ「その、何だ?」
ハンジ「何だって・・・な、何もないよ!バカ!」
ハンジはぷいっとそっぽを向いた
リヴァイ「そうか・・・何もないか」
ハンジ「う、うるさい、リヴァイのばか!」
ハンジはぶんぶんと首を振った
リヴァイ「お前にバカと言われたくはないがな」
ハンジ「だって、デリカシーがなさすぎなんだもん、リヴァイは!」
ハンジは顔を限界まで紅潮させながら、リヴァイに詰め寄った
リヴァイはそんなハンジの頭を、優しく撫でてやるのだった
リヴァイ「そういえばハンジ、町は見て回ったか?おもしれぇ店がたくさんあった。一緒に行くか?」
リヴァイのその言葉に、ハンジは目を輝かせた
ハンジ「うんうん、行く!」
二人はベンチから立ち上がり、歩き始めた
リヴァイ「ミケとエルヴィン一緒に夜は酒場に行くんだったよな?それまで時間をつぶすか」
リヴァイの言葉を聞いたハンジは、リヴァイの緑の装束の裾をぴんぴんと引っ張った
ハンジ「リヴァイも一緒にきてよ・・・何言われるかわかったもんじゃないよ・・・ミケとエルヴィンとなんてさ・・・」
リヴァイ「まあ、言われる事といえば、決まっているだろうがな」
ハンジ「な、何だろ・・・」
リヴァイ「処女処女と・・・」
肩をすくめながらそう言うリヴァイに、ハンジは後ろから背中をどんと叩く
ハンジ「リヴァイまでそんな事言うかな!」
リヴァイ「ばかいえ、たまには俺だって言う」
ハンジ「ばかっ」
二人の恋は、こうして一歩踏み出したのであった
リヴァイとハンジは二人肩を並べて、活況を呈するアッサラームの商店街を歩く
あちこちから、客引きの声が飛び交う
そんな中、ある店の前でリヴァイが男に声をかけられた
男「かわいい彼女だね、お兄さん」
身なりのいい服装をした中年男性
口髭を生やしていて、いかにも上流階級そうな雰囲気だ
リヴァイ「・・・ああ」
リヴァイはちらっとハンジをみて小さな声で言った
ハンジ「か、か、か、彼女?!」
ハンジは急に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしてあわて始めた
リヴァイ「落ち着け、恥ずかしい」
リヴァイはその様子に眉をひそめた
男「いやあういういしいカップルだね。どうだい、綺麗なネックレスがあるんだが」
男の後ろには宝石屋があった
どうやら男はここの主人らしかった
リヴァイがちらりとハンジを見ると、目をきらきらと輝かせていた
リヴァイ「ハンジ、見てみるか?」
ハンジ「えっ、あ、ああ!」
二人は店主に導かれて、店に入った
店の中には、アクセサリーから、宝石のままの物、岩についている宝石など、さまざまな美しい物が置いてあった
ハンジ「うわーーこれすっごく綺麗だねぇ」
リヴァイ「ああ、家が3軒くらい立てられる金額だな」
ハンジ「たかーい!」
店内に輝く青や赤や黄色や緑、さまざまな自然の輝きが目の保養をさせてくれていた
店主「ここにあるものはどうかな?君たちはお似合いだから、安くしておくよ」
店主が誘ったショーケースの中には、小さな石のついたネックレスがたくさん置いてあった
それをしばらく見ていたハンジが、一つのネックレスに目を奪われる
ハンジ「これ、綺麗」
ハンジが指をさしたのは、本当に小さな石のはまったシンプルな一粒石ネックレスだった
色が不思議で、ブルーなのだが、蛍光感があり、その石自体に光がともっているような、そんな感覚を思わせる石だった
店主「それに目をつけたか・・・それはな、アウイナイトという宝石だ。不思議な光方をする。小粒でも存在感があるだろう」
ハンジ「うん、不思議だね、なんだか吸い込まれそうになるよ」
リヴァイ「それが、いいのか?」
リヴァイは静かにそう言った
ハンジ「え?いやいいよ!見るだけで十分。それに結構高い・・・」
ハンジはあわてて首を振った
リヴァイ「いい、それを買うから、包んでくれ」
ハンジ「えええええちょっと!リヴァイ?!」
結局その宝石のペンダントを手に、店を後にした
リヴァイ「ほらよ」
リヴァイは買ったばかりの包みをハンジに手渡した
ハンジ「あ、あのさ、でも・・・」
リヴァイ「いらねぇのか?」
ハンジ「いや、そうじゃないけど・・・高かったのに」
ハンジはそう言うと、包みをそっと握った
リヴァイ「気にするな。俺だって多少の金くらい持ってる」
リヴァイはちらりとハンジを見て言った
ハンジ「あ、ありがとう、リヴァイ」
ハンジは顔を赤らめた
リヴァイ「まだ少し時間があるな・・・酒場の周辺で時間でもつぶすか」
ハンジ「う、うん・・・あのさ」
リヴァイ「なんだ?」
ハンジ「これ、なくしたらやだから、開けてつけちゃってもいいかな?」
顔を赤く染めながらそう言うハンジに、リヴァイが頷く
リヴァイ「ああ、そうだな。お前すぐになくしそうだしな。そうしとけ」
リヴァイはそう言うと、手際よく包みを開けて、ハンジにネックレスをつけてやるのだった
エルヴィン「なあミケ、あいつらは仲直りしただろうか?」
エルヴィンは酒場のカウンターに腰を下ろして、酒をちびちびやっていた
ミケ「大丈夫じゃないか?リヴァイの事だ、あいつはやるときにはやる男だしな」
ミケはかなり早いペースで酒を飲んでいた
エルヴィン「まあ、まだかわいらしい恋愛で懐かしいな」
エルヴィンは遠い目をした
ミケ「お前にあんな可愛らしい時代なんてあったのか?信じられんな」
エルヴィン「あったさ・・・10歳くらい・・・かな」
ミケ「早すぎやしないか、それ・・・」
ミケはスンと鼻を鳴らした
エルヴィン「あいつらがもたもたしすぎなんだと俺は思うがな」
ミケ「まあ、ハンジはともかく、リヴァイにはいろいろと思うところもあるだろう。あそこまで手を出さない理由がな」
エルヴィン「・・・なるほどな。確かにリヴァイはいろいろ考えていそうだ」
エルヴィンはふうと息を吐いた
ミケ「あいつは考えすぎるくらいに考える。身長の割に脳みそが大きすぎるんじゃないかと心配するくらいにな」
ミケは肩をすくめた
エルヴィン「とりあえず、見守ってやる事しかできないが・・・応援はしてやりたいな」
ミケ「ああ、そうだな。そうしておこう」
二人の会話は酒を飲みながら、他愛もない話へと移行していった
ハンジとリヴァイは二人で夕焼けから夜に移り変わろうとしているアッサラームの町を散策した
色とりどりの服、おいしそうな料理の匂い、美しい女性のダンサーだろうか・・・腰に綺麗な宝飾品をしゃらりと身につけた集団がいたり、町はとても賑やかだった
アッサラームの町は夜こそ盛り上がる
夜にはダンサーがダンスホールで美しく魅惑的なダンスを披露し、店もたくさん開店するのが夜だ
そんな町は見た事がなかったハンジは、目を輝かせていた
ハンジ「ねえねえリヴァイ、すごいね、夜なのにまぶしいよ!」
リヴァイ「ああ、そうだな。この町は夜の街と呼ばれているからな」
リヴァイはきょろきょろと落ち着きのないハンジにちらりと目をやってそう答えた
ハンジ「夜の街・・・かあ!なんだか響きが魅惑的だよねぇ」
スキップをしながらそんな事をいうハンジ
リヴァイ「お前はほんと、落ち着きがねぇな・・・」
そんな様子にリヴァイはため息をついた
ハンジはそれを聞いてぴたっとスキップをやめる
ハンジ「えっ・・・スキップはだめだった?ごめんねリヴァイ」
突然謝るハンジに、リヴァイがまた眉をひそめる
リヴァイ「駄目じゃねえんだがな・・・」
リヴァイは肩をすくめた
ハンジ「やっぱりわたしってガキなのかなぁ」
ハンジは俯き視線を地面に落とした
リヴァイ「まあ、それは否定はできねぇかもな」
リヴァイは肩をすくめた
ハンジ「うーん、大人ってなんだろうね、私にはわかんないよ」
ハンジは頬を膨らませた
リヴァイ「エルヴィンに聞いてみたらどうだ?」
ハンジ「・・・どうせやらしい答えしか返ってこないよ・・・」
ハンジはため息をついた
リヴァイ「だろうな」
ハンジ「知っててエルヴィンに聞けって言ったね、リヴァイ!」
ハンジはリヴァイに詰め寄った
が、リヴァイはひらりとその身を躱す
リヴァイ「まあ、もう少し落ち着いてみるとかじゃねえか?俺にもよくわからん」
ハンジ「落ち着いておとなしいのって・・・私?」
リヴァイ「・・・気持ちわりぃ」
ハンジ「だよね?まあいいか!私は私らしくが一番!」
ハンジはそう言ってまたスキップを始めたのだった
ハンジとリヴァイが酒場に行くと、すでにミケは酒を数本あけており、エルヴィンは少し頬を赤らめていた
ハンジ「お待たせー二人ともすでにできあがってるの?もしかして」
ハンジはエルヴィンの顔と、ミケの顔を交互に見てそう言った
リヴァイ「・・・昼間から飲み過ぎだろ、お前ら」
リヴァイはこめかみに手をあてて呟く様に言った
エルヴィン「さあ、座れ。いやあさすが交易の町といったところかな、珍しくて旨い酒がたくさんあってな、ついつい」
ミケ「ああ、リヴァイも飲めよ。旨いぞ」
ミケは新しいグラスに酒を注いでリヴァイに手渡した
リヴァイ「・・・ああ、確かに旨いな」
リヴァイはそれを一口ふくんでそう言った
ハンジはその様子をじっと見ていたが、やがて口を開く
ハンジ「リヴァイもお酒飲めるんだね」
ミケ「ああ、リヴァイは実は酒が強いぞ。普段はあまり飲まないがな。自制しているらしい」
リヴァイ「はかりまちがってよっぱらいでもしたらいけねえからな。夜の読書もままならなくなる」
リヴァイはふんと鼻を鳴らした
エルヴィン「お前たち、仲直りをしたみたいで良かったよ」
エルヴィンの言葉に、ハンジが顔を真っ赤にした
ハンジ「う、うん」
ハンジはそう言って俯いた
ミケが突然ハンジの方に顔を寄せる
ミケ「スンスン・・・お、処女は変わりなしか・・・だがなんだ、いつもよりリヴァイの匂いが濃い気がするな。何があった?」
ハンジ「ちょっと、ミケ?!何もない何もない何もない!」
ハンジはますます顔を赤らめて首を横に何度も振った
エルヴィン「その態度が何かがあったことを物語っているよ。ハンジ」
エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた
リヴァイ「ばかが・・・」
リヴァイはハンジの様子にため息を一つついた
ミケ「何があったのか、まあ想像に難くはないな。処女喪失も時間の問題か」
ミケはスンと鼻で笑った
ハンジ「ミケは処女処女うるさいんだよ!放っておいてよね?!もう!」
ハンジは顔を真っ赤にしながら、頬を膨らませた
エルヴィン「大きな声で、自ら処女処女と叫ぶあたりがハンジらしいな」
ははは、とエルヴィンは高らかに笑った
ハンジ「ああああ・・・しまった・・・」
ハンジはがっくりとうなだれた
リヴァイ「・・・バカだなお前」
リヴァイは肩をすくめた
ハンジはそのまま少しだけ酒を飲んだのだが、一口飲んだだけで顔を真っ赤にしてしまっていた
そして酒場のテーブルに突っ伏して、眠りに落ちてしまっていた
エルヴィン「ふむ、なかなか可愛らしい寝顔だな」
エルヴィンがハンジの頭をそっと撫でてやりながらつぶやいた
ミケ「確かに、磨けば光ると俺は思う」
ミケは頷いた
エルヴィン「しかし酒に弱すぎだろう・・・一人で絶対に酒場に来させたらだめだな。飲まされたらアウトだ」
ミケ「ああ、お前みたいな狼にすぐに食べられちまうからな」
エルヴィン「誰が狼なんだ、誰が」
リヴァイ「・・・お前だろうが、エルヴィン」
リヴァイはふん、と鼻を鳴らした
エルヴィン「人聞きが悪いな。意識のない女を襲ったりしないよ。そこまで不自由していないしな」
ミケ「どうだかな・・・」
リヴァイ「信用ならねえな」
エルヴィン「おいまて、俺がなんだかすけこましの様に扱われているじゃないか」
リヴァイ「そう扱っている」
ミケ「ああ、そうだ」
エルヴィン「・・・まあすけこましならすけこましなりに、ハンジを部屋に送り届けてくるよ」
エルヴィンはそう言って立ち上がり、ハンジを抱きかかえようとした
リヴァイ「・・・」
リヴァイの視線がエルヴィンに絡み付く
エルヴィン「リヴァイ・・・にらむくらいなら自分で連れて行けよ・・・こわいこわい」
ミケ「リヴァイはついに一線を越えるか・・・明日の匂いを楽しみにしているとしよう」
リヴァイ「ばか共が」
リヴァイはそう言い捨てて、ハンジを担いで酒場を後にした
リヴァイ「っち…重てぇ…」
リヴァイは独りごちながら、ハンジを部屋に運び入れた
真っ暗な部屋だが、カーテン越しにかすかに外灯の明かりが射し込む
その明かりを頼りに、ハンジを部屋の隅のベッドに寝かせた
スースーと規則正しい寝息をたてるハンジ
その呼吸の度に、否が応にも女、と認識せざるを得ない胸の双丘が上下する
リヴァイは呑気なハンジに、苦虫を噛み潰したような顔を向ける
リヴァイ「隙だらけなんだよ、お前は…」
そう言いながら、そっと身体に布団を掛けてやった
側にあった椅子に腰を下ろし、その寝顔に目をやる
…あどけない寝顔、起きていればよく笑い、よく泣き、よく怒る
そのどの表情にも、いつしか惹かれている自分に気が付いた
だから、キスをした…ごく自然な成り行きだ
だがリヴァイには、それを喜ぶ事は出来なかった
ハンジは勇者である
魔王を倒せば、たちまち一国の王よりも名高い存在になるだろう
そうなれば、自分の様な存在は、邪魔でしかない
自分はただの、魔法使いなのだから
だがもし、名高さでは勇者に劣らぬあの職につけたのなら…
リヴァイはそこまで考えて、首を横に振った
…大それた事を考えすぎた…現実を見据えるのが自分の仕事だと言うのに
リヴァイは、呑気に眠るハンジの頬をそっと撫でて、自室に戻った
次の日
ハンジ「う…ん」
ハンジが目を覚ますと、見慣れない天井が目に入った
ハンジ「あれ…」
ベッドから体を起こすと、服を着替えずそのまま寝てしまっていたのがわかった
ただ、マントだけは脱いで、椅子の上に綺麗にたたんであった
ハンジ「昨日の夜…そっか、酒場でお酒を飲んでから、記憶がないや…」
ハンジは頭を振った
誰かが運んでくれて、寝かせてくれたんだろう
リヴァイかな…
ハンジはそんな事を考えながら、マントを羽織り、部屋を後にした
リヴァイと言えば…昨日はキスをした
両親以外と初めてするキスだった
思い出すだけで、顔が紅潮していくのがわかった…リヴァイに会うのが気恥ずかしい…だが、会いたい
ハンジはそんな想いを抱えながら、早朝のアッサラームの町へ足を踏み出した
宿を出てすぐ側にあるベンチに、本を広げるリヴァイの姿があった
ハンジは一瞬躊躇った後、リヴァイにそっと歩み寄った
ハンジ「リヴァイ、おはよう」
そう声をかけると、リヴァイは本から目を離し、ハンジを見た
リヴァイ「よう…昨日はよく眠れたか?」
そう言って、自分の隣を指し示す
ハンジはリヴァイの隣に座った
ハンジ「あ、うん。ねえ、リヴァイが部屋に運んでくれたの?」
リヴァイ「ああ、そうだ。お前酒に弱すぎだろう、一杯だけでねちまいやがって…一人で絶対に酒飲むなよ?」
ハンジ「うん、ごめんね、リヴァイ。昨日はいろいろあって疲れてたのもあるかもしれない、お酒も初めてだし…」
そこまで言って、ハンジはまた顔を赤く染めた
昨日のキスを思い出したのだ
リヴァイ「…まあ確かにいろいろあったかもな」
リヴァイはそんなハンジの様子にちらりと目をやり、また本に視線を移動した
ハンジはそんなリヴァイの横顔を、じっと見つめる
本を読む、真剣な眼差し…ハンジが好きな顔の一つだ
思えばあまり笑ったり、砕けた表情をしないリヴァイ
リヴァイの笑った顔はまだ見たことがない
いつか、見せてくれるんだろうか…ハンジはそんな事を考えながら、リヴァイの横顔から目を離せずにいた
リヴァイ「朝飯食ったか?」
本を閉じ、自分の方を見てそういうリヴァイに、ハンジは首を横に振った
ハンジ「ううん、まだ。起きたところだから・・・」
リヴァイはハンジのその言葉を聞いて、傍らに置いていた包みをぽんとハンジの手に乗せる
リヴァイ「握り飯食っとけ」
ぼそっとそう言うと、また本に視線を戻した
ハンジ「リヴァイが作ったの?ありがとう!」
ハンジは包み紙を開けて、さっそくぱくぱくと口に運び出した
リヴァイ「・・・」
その様子をちらりと横目でみて、また読書に励むリヴァイ
ハンジ「んーおいしい!外で食べるとさらにおいしいよねえ!ピクニックみたいでさ!そう思わない?」
リヴァイ「・・・どこで食っても同じ味しかしねえよ」
リヴァイは嬉しそうなハンジを後目に、いつもどおり不機嫌そうな表情でぼそっと呟いた
ハンジ「リヴァイは朝から不機嫌そうだねえ・・・爽やかスマイルとかできないの?」
ハンジはそう言うと、リヴァイの頬を指でつついた
リヴァイ「・・・んなもんできるわけねえだろうが」
ハンジ「リヴァイはあまり笑わないもんね。笑わないどころか、あまり表情を変えないよね。怒る所は何回か見てるけど」
ハンジは今度はおもむろに、リヴァイの頬を片手でつまんでのばした
リヴァイ「・・痛・・なにしやがる」
ハンジ「顔変わらないかなーと思って」
リヴァイ「やめろ、ばかが。痛えだろうが」
リヴァイは自分の頬をつねって伸ばすハンジの手をつかみ、代わりにハンジの頬をつねって伸ばした
リヴァイ「…今日は砂漠の旅になる。キツいぞ?まだ時間はある、休んでおいた方がいい」
リヴァイは本を閉じ、自分の横顔をじっと見つめるハンジに、そう言葉をかけた
ハンジ「大丈夫、たくさん寝たし、体調ばっちりだよ。リヴァイこそ、休まなくていいの?」
リヴァイ「俺はいつも同じ時間に起きてるからな、平気だ」
リヴァイはそう言いながら、ハンジの顔に手を伸ばす…ハンジはその手が顔に触れた瞬間、びくりと背中を震わせた
ハンジ「あ…」
一瞬のその感覚に、ハンジは思わず声を出した
リヴァイはその様子に肩をすくめて、ハンジの眼鏡を外した
リヴァイ「…眼鏡がきたねえ…ちゃんとみがいておけよな」
そう言って、徐に眼鏡を拭き始めた
ハンジ「あ、なんだ…眼鏡か…」
ハンジは顔を真っ赤にした
リヴァイ「…何を期待したんだろうな…変な声、出しやがって」
リヴァイはそう言って、ふんと鼻を鳴らした
ハンジ「なっ、何も期待してないよ!?変な声なんて出してない!!」
リヴァイ「どうだかな…」
ハンジ「リ…リヴァイのばか!!」
ハンジは顔を真っ赤にして、そっぽを向いた
リヴァイ「お前にばかと言われたくねえよ」
リヴァイはそう言って眼鏡をハンジの顔に戻してやるのだった
早朝アッサラームを出て一路西へ
砂漠の真ん中にあるオアシスを中心に栄えている国、イシスへと向かう
本来ならば砂漠の横断は比較的過ごしやすい夜に行う事が多いが、この付近には夜、かなり強いモンスターが沢山現れるため、早朝に出発していた
途中にあった小さな池の畔にある祠で休息をとり、情報を集めて、またイシスへと足を踏み出す
ハンジ「イシスは美しい女王様が治めているらしいね♪お会いするのが楽しみだよ!!」
ハンジは目を輝かせていた
エルヴィン「確かに非常に気になるな」
エルヴィンはニヤリと笑った
ミケ「エルヴィンの最近の生臭坊主ぶりが酷いな」
ミケはスンと鼻を鳴らした
ハンジ「そうだよねえ…はじめてあった時には、凄くイケメンで落ち着いた、正統派だと思ったのに…」
リヴァイ「言っただろうが。見た目に騙されるなと」
リヴァイの言葉に、ハンジは素直に頷いた
ハンジ「本当そうだよねえ」
エルヴィン「お前達…酷いな…傷ついたよ」
エルヴィンは項垂れた
ハンジ「うわ、ごめんエルヴィン、言い過ぎた」
エルヴィン「…デートしてくれるなら許すぞ」
ハンジ「ばかっ!!」
ハンジの肘鉄がエルヴィンの脇腹を捉えたのだった
太陽が一番高く上る時間を祠で過ごしたため、イシスに到着したのは夕方だった
途中数回の魔物と対峙したが、危なげなく撃退した
イシスの城下町に足を踏み入れると、まず目に入ったのは町に流れる小川だった
ハンジ「砂漠とはいえ、水が豊富なんだね」
リヴァイ「南の山岳地帯の貯水が、少しずつ砂漠の地下水となっているらしいな」
噴水こそ無いものの、砂漠の真ん中とは思えない程の水量があった
ミケ「今日は疲れたな。宿に向かうか」
ハンジ「ああ、そうだね、そうしよう。少し休憩したら、夜のイシスを散歩しよう!」
リヴァイ「俺は読みたい本がある。今日はミケとエルヴィンと回れ」
リヴァイはそう言うと、踵を返した
ハンジ「勉強かあ…わかった!!なら今日はミケに…」
エルヴィン「俺は?」
ハンジ「あ、じゃあ、仕方ないから一緒に…」
エルヴィン「仕方ないからってなんだ!!処女喪失手伝ってやろうか!?」
ハンジ「じょ…冗談だよ!!エルヴィン怖いよ…」
ハンジはぶるっと身を震わせた
しばらく宿で休憩した後、イシスの城下町に繰り出した3人
イシスの町の住民は、独特の白い布を体に巻き付けたような装束を着ていた
ハンジ「肌の色が濃い人が多いね。顔立ちは堀深くて、端正で…美男美女が多い気がする」
ハンジは道行く人を眺めながら感嘆の吐息をもらした
エルヴィン「確かに、エキゾチックな美女が多いな。選り取りみどりだ」
ミケ「また狙っているのか…懲りないやつだな」
エルヴィン「狙ってはいないさ、目の保養させてもらうだけだ」
ハンジ「エルヴィン僧侶辞めるべきだよ…」
ハンジの言葉に、ミケが頷く
ミケ「その通りだ…ってあれは…」
ミケが突然駆け出した
その先には…男に無理矢理担ぎ上げられる女性らしき姿があった
回りには、数人の男女が倒れていた
ミケに続いて、ハンジとエルヴィンもその場に急ぐ
野党の様な恰好の男たちが、数人の白装束の人達と戦っていたが、その力の差は歴然
白装束の人達は次々と倒されていった
女性を担いでいる男はその場を立ち去ろうとして失敗する
ミケ「フッ!」
ミケは女性を担いでいる男に体当たりをかますと同時に、脚を掛ける
男がもんどりうって倒れる隙に、その腕から女性を奪い返した
ハンジ「私たちも、加勢しよう」
事情はよく飲めないものの、武器を持たない丸腰の白装束を相手に、野盗の連中はシミターを閃かせて無残に切って捨てている
ハンジの判断は迅速だった
エルヴィンが野盗に向かって剣で切り付ける
もう刃こぼれがして、買い替え時の銅の剣なのだが・・・
野盗相手には十分だったのか、エルヴィンの剣の腕前がいつの間にかあがったのか
数人相手に一歩も引かずに、むしろ優勢に戦いを進めていた
そしてほどなく・・・
野盗はちりじりに逃げ、白装束の人たちと、ハンジ一行、そして女性がその場に残った
エルヴィンは倒れている白装束の人たちの介抱を始めていた
ハンジも同様に、ホイミをかけて回る
幸いにも死者はいなかった
ミケ「ふう・・・」
ミケは息をつき、抱いていた女性をそっと地面に下ろした
「・・・ありがとうございます。旅のお方」
凛とした美しい声
イシスの住人と同じような白い布の装束を身にまとい、まったく飾り気のない衣装であるのだが、何故か住人とは違う雰囲気・・・気品を感じた
そしてその顔は例えようもなく美しく、細くしなやかな身体は女性らしいふくらみはしっかりおさえつつも、くびれるところはしっかりとくびれていた
黒くまっすぐな髪は腰の長さほどだろうか
前髪は眉のあたりでまっすぐに切りそろえられていた
その下で優しげな光を宿す瞳は、青く輝いていた
ミケ「いや、俺は何も」
ミケは思わずその姿に見惚れた
「じょ、女王様・・・このような下賤の物と口をきいてはなりませぬ」
白装束の一人があわてて間に割って入るが、女王…と呼ばれた美しい女性はそれを拒む
女王「いいのです、この方々は命の恩人。城にお迎えしなさい」
女王はきっぱりとそう言い、ミケの手を取って歩きはじめた
城の中は、砂漠の中の城とは思えない雰囲気だった
地下の庭園には、水と緑があふれている
そんな庭園の真ん中に設えてある白い椅子に、4人・・・
ハンジ達と女王だ
ハンジ「とても美しいお庭だねえ」
ハンジはうっとりしながらきょろきょろあたりを見回した
女王「気に入りましたか?勇者ハンジ。どうぞご自由に散策なさってくださいね」
ハンジ「いいんですか?やったあ!エルヴィン一緒に来てよ!」
ハンジはそう言って立ち上がると、エルヴィンの手を取った
エルヴィン「・・・?ああ、デートのお誘いか。勿論フルコースだよな?」
ハンジ「ち、違うよ!そんなんじゃないよ!もうバカエロヴィン!」
エルヴィン「なんだ、その新しいあだ名、やめてくれないかな」
ハンジとエルヴィンはそんなことを言いながら、庭園内の橋を渡って行った
女王「うふふ、にぎやかな勇者様なんですね」
女王は笑みをこぼした
ミケ「まあ・・・いつもあんな感じ・・・です、女王陛下」
ミケは頷いた
女王「いつも、貴方は敬語をお使いになるの?そうでなければ、普通に話して欲しいのですけれど」
少しさびしそうな顔を見せる女王に、ミケは首を傾げた
ミケ「だがあなたは女王・・・」
女王「今は、命を助けられた者と、その恩人です」
女王はそう言って、ミケの手をテーブルの下で握りしめた
女王「とってもお強いのですね・・・先ほどは本当に危ないところを、ありがとうございました、ミケ」
女王はミケの手を握りながら静かにそう言った
ミケ「いや、きな臭いとおもって加勢しただけだ、俺は何もしていないし・・・」
女王「街中で襲われるとはまさか思っておらず、兵にも武器を持たせていなかったので・・・うかつでした」
ミケ「さすがにいくら街中でも、旅の者たちがいる、ピラミッドのお宝目当ての野盗もいるだろう、気を付けた方がいい」
女王「そうですね・・・今後は気を付けなければなりません、ですが・・・」
女王はそこで言葉を切った
そして、ミケの顔をじっと見つめる
ミケ「?」
ミケは首を傾げた
女王「ですが・・・おかげで貴方と出会えました」
女王はそう言うと、テーブルの下で握った手に力を込めた
ミケ「・・・」
ミケはその言葉の真意をはかりかねて、自分の手を握りしめるその美しい女性の顔をじっと見つめた
その頬は、ほんのり朱に染まっている様に見えた
それから、二人でしばらく話をした
美しいと言われる事にどんな価値も見いだせないという事
自由に恋愛すらできず、旅にでたいのにでられないという事
女王・・・イシスはミケに思いのたけを打ち明けた
その話を、ただ頷いて聞いているだけのミケ
女王はそんなミケの手を、話の間離す事はなかった
そして、夕食を4人で共にし、イシスの城を出た時にはすでに日が暮れ、夜になっていた
ハンジはリヴァイの部屋を訪れた
イシスの女王の計らいで、またしても部屋を人数分確保してくれたのだった
ノックをすると、返事が返ってきた
リヴァイ「今、本で忙しい・・・」
そう一言だけ
ハンジ「そっか・・・お城でもらってきた食べ物の折詰、美味しいから食べてね、リヴァイ」
ハンジは扉の向こうにそう呼びかけると、部屋の扉の前に食べ物を置いて、自室へ戻った
夜のイシス城
その裏手の城壁を器用に上る人影
身体の大きさのわりに身軽なその人物にとって、これくらいの壁は難なくよじ登る事ができた
その人物は、城の主に請われてこうして夜の城にこっそり忍び込んでいるわけだが、いまだにその理由が把握できずにいた
城のある一室に、窓から身体を滑り込ませる
その部屋の位置は、城の主女王イシスから聞いていた
微かな灯りが部屋を照らしていた
部屋の中央辺りに人影が見える
その人影は、窓から侵入してきた者に歩み寄る
イシス「わざわざご足労頂いて…すみません、ミケ」
侵入者に向かってそう声をかけた
ミケはスン、と鼻を鳴らす
ミケ「いや、対して苦もなく登れた…部屋の位置や警備ももっと厚くした方がいい」
ミケは肩を竦めた
イシス「…ふふ、そうですね、貴方みたいな方が、他にいるとは思えませんけど」
イシスは愉しげに微笑んだ
そして、目の前に立つ長身の男にその身を投げ出す
ミケはイシスのその行動にいささか面食らいながらも、その身体を抱き止めた
鼻先を首筋に近付け、何時ものように匂いをかぐ
ミケ「いい匂いだ…だが、俺の鼻も鈍ったか、処女の匂いがする」
ミケのその言葉に、イシスは顔を上げた
イシス「私が処女では、変ですか…?」
ミケ「いや、変ではない、意外ではあるが、な」
イシスは女盛りだ
醸し出す色気は隠しようもないくらいに溢れている
顔は勿論、その身体はまさに咲き誇らんばかりの美しさと瑞々しさ
まだ誰にも抱かれた事が無いと言うのが不思議に思えた
自分の側にいるもう一人の、元祖処女とはまた違う…
あっちの処女はまだ初々しく可愛らしい…けっして女らしく無い訳ではないのだが
イシス「本当は、勇者様にこの身を捧げるつもりでした…ですが、勇者様は可愛らしい女性でした」
ミケ「だからと言って…何故…」
ミケは首を傾げた
イシス「貴方は易々と私を助け、易々と城の壁を登り、こうしてここに来てくださいました…貴方は勇者も同然です…それに…」
女王は、そこまで言って言葉をきった
イシス「それに…貴方を一目見た時から…運命を感じました」
イシスはふう、と息を吐いた…その吐息は、熱を帯びていた
ミケ「一目惚れか…?ただの旅人に女王が、その身を投げ出すか…」
ミケは女王の肩に手を置き、その顔を覗いた
頬を朱に染めたイシスは、得も言われぬ美しさを醸し出していた
ミケがその頬に触れると、イシスはくすぐったそうに目を閉じた
花開いた美しい唇に、ミケは少しためらった後、自分の唇を重ねた
イシス「あ…」
唇が離れると、イシスはまるで名残を惜しむかのように声を出した
ミケ「…キスが気に入ったか?」
ミケはそう言って、スンと鼻を鳴らした
イシス「ま…貴方はいじわるです、ミケ…」
イシスはますます顔を赤く染めた
ミケ「すまん、あまりに残念そうな顔をするし、変な声は出すしな…」
イシス「ま…ミケのいじわ…」
イシスの言葉は途中で途切れた
今度はイシスの望み通り、ミケは彼女の唇に、自分のそれをしっかり密着させた
かすかに開いた唇の隙間を逃さず、ミケの舌はそれをこじ開ける
イシスの口内を這い、奥に逃げる彼女の舌に、自分のそれを絡ませた
まさかミケすんにこんな春が来ようとはw
なんかリヴァイがハンジによそよそしいのが寂しい…
月明かりにだけ照らされた二人の影は、やがて一つになる
二人の忍んだ逢瀬は、窓から射す月明かりだけが知っていた
イシス「ミケ…もう行ってしまうのですか…?」
事を終え、しばしそのままイシスの身体を抱いていたミケだが、やがてベッドから降り、衣服を羽織始めた
ミケ「ああ、明日はピラミッドだ。朝も早い」
イシス「そうですよね、あなたは勇者の一行…ここで夜を明かすなど出来ませんよね…」
イシスは少し寂しそうに俯き呟いた
ミケ「すまない…」
ミケはもう一度ベッドに腰を掛け、イシスの頬に手で触れた
イシス「いいえ…私のわがままを聞いてくださって、ありがとうございます、ミケ」
イシスは微笑みを浮かべた
ミケは首をふり、立ち上がった
イシスは自らの手首に着けていた腕飾りを外し、ミケに手渡した
ミケ「これは?」
イシス「星降る腕輪…です。身が軽くなる様です。あなたの旅のお役に立てたら…」
ミケ「ありがたく頂戴しておくよ…俺の腕には小さそうだ。勇者に渡しておこう」
イシス「勇者様にもよろしくお伝え下さいね…そして、また来てください…待っています、ミケ」
ミケ「ああ、旅が終わったらな…」
ミケはそう言って、イシスの部屋の窓から身を踊らせた
ハンジ「ピラミッドにはさ、不思議な仕掛けがたくさんあるらしいね…何かさ、通路の真ん中を歩いていたら落とし穴があったりさぁ…」
エルヴィン「そうらしいな、秘宝も眠っているらしいぞ?ピラミッドの地下にな」
ハンジ「すっごい高価なお宝なのかなあ!?あとはさ、魔法の鍵もあるらしいよ」
ハンジはリヴァイの部屋を訪れた後、一人で部屋で今日仕入れた情報を整理していた
そこに飲み物を持ったエルヴィンが来たので、一緒に明日行くピラミッドの話をしていたのだ
エルヴィン「魔法の鍵か…ハンジの部屋に入りたい放題になるな」
エルヴィンはにやりと笑った
ハンジ「な、何やましいことに使おうとしてるんだよ!?エルヴィンたら!!」
エルヴィン「やはり駄目か」
ハンジ「当たり前だろ… もう、エルヴィンは本当にエロヴィンだよ!!」
エルヴィン「自らの欲に忠実なだけだよ。男なんてみんなそんなものだ、ははは」
ハンジ「ははは、じゃないよ!!もう少し自重した方がいいんじゃないの?エルヴィンは!!」
顔を真っ赤にして怒るハンジに、エルヴィンは微笑みを浮かべる
エルヴィン「まあ、冗談だよ、ハンジ。処女の部屋を覗いてもあまり特は無さそうだしな」
ハンジ「エルヴィンは一言多いよ!!」
ハンジはそう言って、ふんと顔を背けたのだった
ミケかっこいいな
リヴァイとハンジはどうなるか…
続き楽しみにしてる!
翌朝、一行は早朝からピラミッドに向けてイシスから北上した
一時間ほど進むと、目の前に巨大なピラミッドが見えてきた
ハンジ「うわあ…おっきいねえ!!」
ハンジはピラミッドを見上げて感嘆の声をあげた
エルヴィン「落とし穴にいきなりはまるなよ、ハンジ」
エルヴィンはにやりと笑った
ハンジ「だ、大丈夫だよ…ミケに先頭行ってもらうもん」
ミケ「なんだ、俺を犠牲にするつもりか?」
ミケは肩をすくめた
エルヴィン「ミケを踏み台に前に進むとは、鬼畜勇者だな、ハンジ」
ハンジ「ち、違うよ!!ミケは鼻が効くからさ、罠っぽいのもわかるんじゃないかと…」
ミケ「まあ、先頭は任せておけ」
ミケはふんと鼻を鳴らした
リヴァイ「行くぞ、何が起こるかわからん、気を付けろ」
リヴァイの静かな言葉に、一行は頷いた
続き待機
ピラミッド内部は、なぜだろうか・・・砂漠のど真ん中にあるにもかかわらず、じんわりと湿った様な空気が内部に充満していた
風が通る隙間など見当たらないほどに緻密に組み上げられた石の建造物なのだが、どこからか、肌を撫でる風が吹いていた
ハンジ「なんだか…へんな模様の壁画だねえ」
ハンジはミケの背中にへばりつく様に歩みながら、ものめずらしげに視線をきょろきょろさせていた
エルヴィン「ハンジは怖がりなのに、いろんな事に興味深々だよな」
エルヴィンがその様子をみて笑みを浮かべた
リヴァイは後方から抜け目なく、周囲の様子に気を配っていた
ミケ「いろんな事・・・なあ。確かに、昨日の夜どこに行っていたのか、しつこく聞かれて参った」
ミケは肩をすくめた
ハンジ「だって、心配するじゃないか・・・急にいなくなるんだもん」
ハンジはぷぅと頬を膨らませた
エルヴィン「夜いなくなるなんて、アレしかないだろう?いい加減に察する事を学べ、ハンジ」
エルヴィンはハンジのふくれっ面を指でぶしっと潰しながらそう言った
リヴァイ「おい、無駄口はその辺にしておけ・・・あたりからいやな空気を感じる・・・気がする」
リヴァイが静かにそう口を開いた
ミケ「気が付いたか、リヴァイ。右前方、曲がり角の所になにか、いる」
ミケの声に、ハンジはびくっとしたが、すらりと剣を抜く
ハンジ「ピラミッドって、王家の墓なんだよね?ってことは、お化け…な可能性も。もしお化けならよろしくね、リヴァイ」
お化けに剣が効かない事は、ハンジも学んだのであった
リヴァイ「ああ」
リヴァイは頷いた
曲がり角の手前で全員が臨戦態勢と整えていたその時・・・予想通り、曲がり角から何かがぴょこんと飛び出してきた
ハンジ「・・・うわあ、きれい!!!」
ハンジは飛び出してきた物を見て目を輝かせ、思わず歩み寄った
それは宝石をたくさん入れた袋・・・の様な形をしていた
ぴょこんと飛び出したまま、袋は動かない
ハンジはその宝石にそっと手を伸ばした、その時
ハンジ「きゃっ!痛っ!」
突然宝石袋が隠していた大きな口をあけ、ハンジの手を噛んだ
ミケ「ハンジ!」
ミケがあわててハンジの手を噛んでいる袋に、拳を食らわせた
エルヴィン「ハンジ・・・おっちょこちょいだな、君は」
リヴァイ「・・・ちっ、ちょっとは怪しめクソメガネ」
リヴァイは限界まで眉を引き絞った
ハンジ「ご、ごめん!ついうっかり」
ハンジはぺろりと舌を出した
ミケ「あれを倒せば一財産になりそうだ・・・やるか」
ハンジ「よし、倒そう!」
エルヴィン「いい酒が飲めそうだ」
リヴァイ「本がたくさん買える・・・」
全員目を血走らせ、宝石の魔物に押しかけた
すると、宝石袋は出てきた時よりずいぶん早いスピードで、逃げ去ってしまった
ハンジ「逃がしちゃったよ・・・手を噛まれ損だ」
ハンジは項垂れた
宝石袋という名の一財産を逃して意気消沈している一行は、地道に稼ごうという思いを新たにピラミッドの奥へと進んだ
ハンジ「まんまるボタンは おひさま ボタン♪ ちいさなボタンで とびらが ひらく♪はじめは ひがし つぎは にし♪」
ハンジは先ほどから思い出したかの様に、独特な音階で歌を口ずさんでいた
エルヴィンが耳をふさぐ
エルヴィン「なあハンジ、歌の内容はともかく、その音程はどうにかならんのか?」
ミケ「たまに出す高音が、叫び声にしか聞こえん」
リヴァイ「夢に出てきそうなほどの歌声だ・・・悪い意味でな」
ハンジ「ちょっと、ひっどいなあ。これがピラミッドで役に立つかもしれない歌だって、お城の人が教えてくれたんだよ?子どもが歌っていたわらべ歌なんだ」
エルヴィン「そういえば、城にいた時に子どもがずっと歌ってたな・・・メロディーが似ても似つかなくて、おなじ歌だと気が付かなかった」
エルヴィンは肩をすくめた
ハンジ「さらっと私が音痴だと言いたい訳だね、エルヴィン」
エルヴィン「ああ、そうだ」
ハンジ「・・・ふんだ!」
ハンジはまた頬を膨らませた
ミケ「最近お前ら仲良いよな」
ミケがその様子を見てそう言った
ハンジ「仲良くない!!冗談!こんな変態と仲良くないよ!」
エルヴィン「いやあ、やはりそう思うか、ミケよ」
ハンジ「見た目はともかく性格が嫌だ!女癖悪いし!浮気ばっかりされそうだし!」
ハンジはぶんぶん首を振った
リヴァイ「・・・まて、ハンジ。もう一回、歌を歌え」
リヴァイが突然ハンジの肩をつかんでそう言った
ハンジ「へっ?!」
突然肩をつかまれて見つめられ、ハンジは顔を真っ赤にした
リヴァイ「早くしろ」
ハンジ「う、うん。ハンジ「まんまるボタンは おひさま ボタン♪ ちいさなボタンで とびらが ひらく♪はじめは ひがし つぎは にし♪」
エルヴィン「何か隠されたヒントでもあるのか?リヴァイ」
エルヴィンは首を傾げた
リヴァイは目の前にある壁を指さした
リヴァイ「あの壁の向こう、行き止まりのようだが、建物の構造的にその先がある様に思う。で、そこに太陽の模様が描かれている」
ミケ「・・・おひさまぼたん?」
リヴァイ「ああ、始めは東、次は西。順にボタンを押していけば、あの太陽の模様の壁が動くような仕掛けがあるかもしれん」
ハンジ「なるほど!そっか!だからピラミッドで役立つって言ってたのか!」
ハンジはぽんと手を叩いた
エルヴィン「そうと決まれば善は急げだ、早速やってみよう」
一行はわらべ歌の通り、まずは東へ向かい、行き止まりにあったちいさな丸いボタンを押した
そして、次は西へ向かい、同じようにボタンを押した、その時・・・
ゴゴゴゴと音が、ピラミッド中に響き渡った
太陽の模様の壁の前に戻ると・・・その壁は両側に開いて降り、行き止まりと思われていた先には宝箱と・・・奥には階段が見えた
ハンジ「ビンゴだ!さすがリヴァイ」
ハンジは嬉しそうに微笑んだ
進んだ先の宝箱には・・・
リヴァイ「魔法の鍵だ。盗賊の鍵では開かない扉も、開けられる様になる。旅の助けになるだろう」
リヴァイはその鍵をハンジに手渡しながらそう言った
ハンジ「綺麗な鍵だなあ・・・なくさない様にしなきゃ!」
ハンジは鍵を鞄に大切にしまい込んだ
エルヴィン「さて、奥へ行くか?それとも戻るか?とりあえず鍵入手が目的だったよな?」
ミケ「少し頼みがあるんだが」
ミケがぼそっと言葉を発した
ハンジ「何だい、ミケ?」
ミケ「実は、このピラミッドの地下に、黄金の爪とやらがあるらしい。ピラミッドの外にでるまで呪われるらしいが、外に持ち出しさえすれば、かなり強力な武器になるらしい」
リヴァイ「・・・呪いか、どういった類かが問題だな」
エルヴィン「その話は俺も城で聞いた。どうやらまだ持ち去る事に成功した奴はいないらしいな、どうする?ハンジ」
ハンジ「ミケの頼みなら・・・行こう!お化け、出るかもしれないけど!」
ハンジはにっこり笑って、拳を天に突き上げた
ピラミッドの地下は、より一層じめっとしていた・・・あたりには人骨が散乱していて、黄金の爪を狙った人の運命を如実に示していた
ハンジ「こわ・・・」
ハンジは身を震わせたが、それでも前に進んだ
そして、難なく奥に到達した・・・そこには棺が置いてあった
ミケがそれをそっと開けると・・・
ミケ「ほう・・・これか」
中には噂通り、黄金に輝く爪が入っていた
ハンジ「はめてみて・・・念のため、マヌーサの用意、しておいて、エルヴィン」
エルヴィン「ああ、呪いでミケに暴れられてはかなわんからな」
ハンジは頷いた
ミケ「じゃあはめるぞ?」
ミケは黄金の爪を装着した
リヴァイ「・・・何も起きねえな」
ハンジ「ほっ、ミケ大丈夫?」
ミケ「ああ、何ともない・・・む、匂う、全方向から、多数・・・!」
ミケは突然そう叫んだ
そしてその嗅覚通り・・・
沢山の包帯を巻いた人間の様な魔物が、全方向から湧き出るように現れた
ハンジ「ぎゃあああ!おばけええ!」
ハンジはそう言いながらも剣を抜き去り、退路を確保すべく、入口の方向にいる包帯人間に切り付けた
剣は包帯人間を確実にとらえる・・・おばけではない様だ
リヴァイ「あれはマミーだ。強いぞ、退路を確保しながら、背後にも警戒を怠るな」
リヴァイはそう言いながら用意していた呪文と解き放つ
リヴァイ「ベギラマ!」
リヴァイの力ある言葉は・・・だが、周囲になんの変化ももたらさなかった
エルヴィン「何?!ニフラム!」
エルヴィンも、神聖魔法を唱えたが、そちらも発動しなかった
リヴァイ「ここでは魔法が使えねぇのか・・・ちっ」
リヴァイは舌打ちをした
ハンジ「ここは何とか魔法なしで乗り切ろう!」
ハンジの言葉に、一行は頷いた
そこからは激しい死闘・・・だった
ハンジ次々に湧き出るマミーを際限なく切りまくる
エルヴィンもミケも、リヴァイも、各々の武器で応戦した
新しく買ったはずの鉄の剣が、刃こぼれをするほどに何度も何度も、何匹も倒し続けて・・・
やっとピラミッドを出る事が出来た
ハンジ「はあ・・・はあ・・・やった、出られたよ」
ミケ「済まない、まさかこんなに大変だとは」
ミケは頭を下げた
エルヴィン「魔法が使えないとは、厄介だったよな。しかし・・・その爪、あれだけ敵を屠ってきたにもかかわらず、輝き一つ鈍らないな」
エルヴィンはミケの手にはまっている爪を見て言った
ハンジ「私の剣なんて、買ったばかりなのにもうこんなんだよ?」
刃こぼれして使えなくなった鉄の剣をかざして、ため息をついた
リヴァイ「呪いも解けたようだな。とりあえず、イシスへ戻るぞ・・・ハンジ」
ハンジ「あ、うん、皆つかまって」
ハンジは皆が体をつかんだのを確認してから、ルーラを唱えてイシスに戻った
エルハン展開もありそうな予感......wktk
イシスの城下町に戻った一行は、宿に引き上げた
その後、情報収集と夕食のために、宿から外に繰り出した
辺りは夕暮れ時
家々には明かりが灯され、窓からは家族の団らん風景が垣間見える
ハンジはそれを、少しだけ羨ましげに見つめた
エルヴィン「どうした、ハンジ。家が恋しくなったか?」
エルヴィンはそんなハンジを見とがめて、顔を覗いた
ハンジ「う、うん、少しだけね」
ハンジは少し寂しげに微笑んだ
エルヴィン「少しだけ…か、その割りには、捨てられた子犬の様な目をしていたぞ」
ハンジ「そんな顔してないよ!!大丈夫だってば!!」
ハンジは頬を膨らませた
エルヴィン「そうか、気のせいか。まあ寂しいのも、お腹がいっぱいになれば治る治る」
エルヴィンはそう言って、ハンジの頭を撫でた
ハンジ「ちょっとエルヴィン!!子供扱いしないでよね!!まったくもう!!」
エルヴィン「身体は大人に片足突っ込んでいるが、心はこども…」
ハンジ「もう!!違うよ!!私は…どっちも、大人だもん…」
ハンジはそう言って、俯いた
魔法が使えなくてもまったく足手まといにならないリヴァイww
>>366 ビクッw
ハンジ「ねえエルヴィン、ミケって、イシスのお城に行くって行ってたんだよね。綺麗な、女王様に会いに行ったのかな」
小さな食堂で夕飯にありつきながら、向いに座っているエルヴィンに問いかけた
エルヴィン「ああ、そうだろうな。あの女王は、ミケを気に入っていたしな」
エルヴィンは頷いた
ハンジ「ミケは背が高くて、強くて、それに実は優しいし・・・いい男、だと思う。うん。ちょっと変なくせはあるけど」
エルヴィン「ああ、そうだな。ミケに惚れたのか?ハンジ」
エルヴィンはいたずらっぽい笑みを浮かべた
ハンジ「そんなわけないだろ、いや、嫌いじゃないけど、仲間として好きだけどね」
ハンジはそう言って、夕食をつついた
だが、先ほどから食はほとんど進んでいなかった
エルヴィン「・・・ハンジ、お前大丈夫か?しんどいのか?さっきから全然食べていないじゃないか」
その様子を見咎めたエルヴィンが、心配そうな面持ちで言葉を発した
ハンジ「ん?ううん、しんどくないよ、平気。ちょっと考え事をしていただけ」
ハンジはそう言ってにこっと笑うと、食べ物を口に運び始めた
エルヴィン「ハンジ、お前そう言えば最近、あまりリヴァイと絡んでないな」
エルヴィンの言葉に、ハンジはびくっと身体を震わせた
ハンジ「あ、そうかな?そんな事ないよ」
ハンジはそう言うと、俯いてまた食事を口に運んだ
エルヴィン「何か、あったのか?」
エルヴィンのその言葉に、ハンジは首を振る
ハンジ「何も・・・無いよ」
ハンジは顔を上げて微笑んだ、だがその表情はどことなく哀しげに見えた
エルヴィン「何も無いなら、いいんだがな。しっかり食べないと、身体がもたんぞ、ハンジ」
ハンジ「うん、そうだよね」
ハンジは素直に頷いた
エルヴィンは、訝しげな表情をハンジに向けた
リヴァイの態度が最近おかしいのは、エルヴィンにもわかっていた
かと言って、理由まではわからない
一度あいつに聞いてみるべきなのかな、と思うのだが、何故かその行動に積極的に出ない自分がいた
エルヴィン「ハンジ、ほら、ちゃんと食え。あーん」
エルヴィンは、肉の切り身をフォークに突き刺して、ハンジの口元に押しやった
ハンジ「恥ずかしいよ…あーんとか…」
ハンジは頬を染めながら後ずさりした
エルヴィン「俺の肉が食えんと言うのか!?女ならみんな喜んで食べるんだがなあ…」
エルヴィンは寂しげな表情をハンジに見せた
するとハンジは慌てて肉を口に入れた
ハンジ「そ、そんな顔しないでよ、エルヴィン…」
エルヴィン「ハンジ、食べてくれたか…嬉しいよ」
エルヴィンの微笑みに、ハンジは照れたような笑みを浮かべた
ハンジ「エルヴィンはずるいよねえ…生臭坊主のくせに、なまじ顔がいいから、ちょっと笑うだけで許されちゃうもん…」
ハンジはそう言いながら、頬を膨らませた
エルヴィン「生臭坊主とはなんだ、人聞きの悪い。この旅の間、お前にも他の女にも手を出していないだろうが」
ハンジ「そうなの?行く先々でナンパしてるのかと…って冗談だよ冗談!」
エルヴィンが鋭い視線を向けている事に気がつき、ハンジは慌てて言葉の矛先を納めた
エルヴィン「俺は真面目なんだよ」
ハンジ「自分で言ってるのって、信用できないなあ…エルヴィンは頭の中でなに考えてるのかわかんないし」
エルヴィン「わかってくれよ、ハンジ」
エルヴィンはハンジの手を握り、真摯な眼差しを向けた
ハンジは顔を真っ赤にした
ハンジ「ちょ、ちょっと!!エルヴィン?!」
エルヴィン「手を握っただけで顔が茹でたこの様になったな。興味深い。本番はどうなるのか気になるところだ」
ハンジ「エルヴィン!!本番って何だよ!?やっぱり生臭坊主だ、エルヴィンは!!」
ハンジはなんとか握られた手を離そうとしながら、叫んだのだった
情報を集めながら、エルヴィンと町を歩くハンジ
リヴァイの様子がおかしいのは分かってはいたものの、自分が何をしでかしたのか、見当もつかなかった
旅も進めなければならない
立ち止まっている暇はないのだ
父の行方、魔王の討伐…
いろいろ成さねばならない事がある
自分の色恋沙汰に、うつつをぬかしている暇はない…ハンジはそう思いながらも、やはりリヴァイの態度の豹変が気になってしまうのであった
エルヴィン「明日は、東の地方へ行ってみるか。アッサラームの東の山脈を越えた先だ。洞窟を越えなければならないらしいが…」
ハンジ「番人に通せんぼ、されているらしいねえ。話を聞きに行ってみようか…全く通れない訳では無いみたいだし」
エルヴィン「そうだな、勇者ご一行なら通してもらえるかもしれんしな…勇者らしくしておけよ、ハンジ」
エルヴィンはハンジの頬をびょんと指で引っ張りながら言った
ハンジ「痛っ!!止めてくれよ、エルヴィン!!」
エルヴィン「変な顔をしているからだよ。元気出せ、ハンジ」
エルヴィンはそう言って、ハンジの頭を優しく撫でたのだった
イシスの夜が明けた
ハンジは早朝一人、外で剣の稽古をしていた
前にリヴァイにアドバイスをされた、シールドを使っての戦い…これをマスターするためだ
身軽なハンジには一見盾の使用は本人の力を殺ぐ様に思えるが、これからの戦いは、盾無しではやっていけないと、自分で結論付けたのだ
ハンジ「ヤッ!!ハァッ!!セイッ!!」
気合いの掛け声と共に、剣を振りながら盾を構える
攻撃の際に一瞬出来る隙を、盾で補う練習も兼ねていた
ハンジ「はあ、はあ…やっぱり盾使うと左手が疲れる…当たり前だけど」
盾を地面に置いて、ハンジは息を切らせた
ハンジ「でも慣れなきゃだもんね…うん、頑張らなきゃ!!」
ハンジはそう言って、自らの頬をぱちんと両手で叩くと、また稽古を再開させた
ハンジのその姿を、リヴァイが宿の窓から見ていた事に、勿論ハンジは気がついていない
リヴァイ「ハンジ…」
リヴァイはぐっと拳を握り締め、そして目を伏せた
…まるで何かに、堪える様に
ルーラというワープ呪文で、一行は目的地である東の洞窟に近い、アッサラームの町へ戻ってきた
砂漠であるイシスに比べれば、この付近は格段に過ごしやすい
ハンジ「イシスは暑かったねえ…顔が日にすっかり焼けちゃったかもしれない…何だかひりひりするんだ」
ハンジは頬の辺りを押さえながら言葉を発した
エルヴィン「確かに日焼けしたみたいだな。リヴァイにヒャドでもかけてもらえば冷えるぞ?」
ハンジ「そんなの、冷えるだけじゃ済まないよ!!凍っちゃうって!」
ハンジは頬を膨らませた
すると、リヴァイがハンジの頬に手を伸ばして触れた
ぬるっとした感触が、ハンジの頬に伝わる
リヴァイ「それでも付けとけば治る」
リヴァイはぼそっと呟くと、そっぽを向いた
ハンジ「リ、リヴァイ…ありがとう…」
リヴァイがハンジの頬に触れたのは、軟膏を塗るためだった
それでもハンジは、久々にリヴァイに触れて貰えたことに、心を震わせるのだった
ミケ「スン…仲直りしたのか」
エルヴィン「元々喧嘩はしていないと思うんだがな」
内心二人の仲を心配していた年長者二人は、目を見合わせた
ハンジ「通して貰えないの?!」
ハンジは背の小さなひげ面の男に聞き返した
ここはアッサラーム東の洞窟…アッサラームと、東の地域を結ぶ、陸路唯一の道だ
だが、この小さな男は一行の願いを一蹴した
男「ここはロマリアの西にある、ポルトガ王国の管轄、わしはここの守りを任されておる。王が許可せねば、勇者といえど通すわけにはいかん。それに、お前みたいなちんくしゃな女が勇者だとは信じられんしな。一昨日来やがれ!」
ハンジ「ちんくしゃ!?」
エルヴィン「ははは!!」
ハンジ「エルヴィン、笑い事じゃないだろ…」
情けない顔をするハンジに、エルヴィンはぽんぽんと頭を叩いた
ミケ「まあ、ポルトガとやらに行ってみるしかないか」
リヴァイ「そうだな。ポルトガの王と言えば、これまた変わり者らしいが…」
ハンジ「ロマリアといい、王ってなんで変わった人が多いのかなあ…アリアハンの王様は普通だけどさ…」
エルヴィン「イシスの女王はいい女だったがな、ミケよ」
ミケ「まあな」
エルヴィンのしたり顔に、ミケはスンと鼻を鳴らした
ハンジ「じゃあ、さっそくロマリアにルーラしよう!!」
一行はポルトガを目指すべく、旅を再開させた
ロマリアの北西に位置する、旅のほこらから、西の国ポルトガへ渡る
そこを通り抜けると、海の香りが漂う街道筋に出る
海沿いの街道を南下し、やがて岬の先端に、立派な城が見えてきた
ハンジ「うわあ~どんな所なのかなあ!!楽しみだ!!見て?沢山船がとまっているよ!!」
リヴァイ「ポルトガは貿易の要地だからな。世界中の貿易船がここに集まってくる」
エルヴィン「この国になら、大陸を渡る船があるんじゃないか?」
エルヴィンの言葉に、ミケがすん、と鼻をならす
ミケ「ま、ただでは貸してもらえんだろうがな」
ハンジ「とにかく行ってみるしかないね!!小さいおっさんに、洞窟通して貰わなきゃだし」
エルヴィン「話のわかる王ならいいんだがなあ…」
一行は一抹の不安を抱えながら、ポルトガの町に足を運んだ
ポルトガに入ると、沢山の商人や船乗り達が、船着き場と市場を往き来していた
ハンジ「凄く活気がある町だねえ」
ハンジは目を細めながら、行き交う人々を眺めていた
エルヴィン「そうだな、魔物が出る海域が多いからか、戦士や魔法使いの姿もよく見かける…用心棒といった所だな」
リヴァイ「とりあえず、城へ行ってみるか?船を貸してもらえるかもしれない。船があれば、更に遠くへ旅を進められる」
リヴァイの言葉に、ハンジが頷く
ハンジ「うん、そうだね、そうしよう!!」
一行はポルトガの城に足を運んだ
王「小さいおっさん…洞窟守のホビットの事やな。あの洞窟は、わがポルトガの管轄なんや。ダーマ地方へ陸路で渡る唯一の道なんや。せやけどあそこは通せんのや。あの先の魔物は強い、ダーマを目指して、皆が命を落として行ったからな。ほんま厄介やで…転職希望者は後をたたんちゅうのに、通してやれんのや」
ハンジ「………話ながっ」
エルヴィン「ああ…」
ミケ「…」
リヴァイ「…ダーマ…に是非行きたい。通してくれ。何でもする。金が必要なら用意する」
王に詰め寄ったのは、意外にもリヴァイだった
王はリヴァイの顔をじっと見つめた
王「兄ちゃんええ目しとるな。よっしゃ、その目に免じて通したろ。ただな、一つお願いがあるんや。洞窟の先を南下した所にバハラタっちゅう町があるんや。そこの名物黒こしょうを手に入れて欲しいんや…わしは黒こしょうを振り掛けたカルボナーラや、鶏肉が大好物での…もし持ってきてくれたら、兄ちゃんらに船を一艘くれてやろう」
ハンジ「………船!わかりました!!やりますやらせてください!!」
エルヴィン「やはり話は長かった…だが、船を手に入れられるなら一石二鳥だな」
ミケ「ああ、リヴァイはダーマに行きたがっているみたいだし、ついでにバハラタに寄ればいいだろう」
リヴァイ「すまない、頼む」
リヴァイは三人に頭を下げた
ハンジ「リヴァイが頭を下げるなんて…いいよ!!皆でダーマに行こう!」
エルヴィン「リヴァイ、お前…」
ミケ「スン」
一行はこうして、ポルトガ王の親書を携え、ホビットの洞窟へ戻るのであった
東の洞窟に舞い戻り、小さいおっさん…ホビットに、ポルトガ王の親書を見せる
ホビット「確かに王の筆跡。わかった、通ってもいいぞ。しかし…王は話が長い上に、変わった話し方だっただろう…?」
ハンジ「確かに!!でも何か好きです、あの話し方!」
エルヴィン「そうだな、なんとなく愛着があるなあとは思ったよ」
ホビット「さあ、通るがいい。魔物は劇的に強い奴らが出没する。気を付けるんだな」
リヴァイ「行くぞ」
一行はついに、ダーマ地方へ足を踏み入れたのであった
ハンジ「ダーマってさ、神殿だっけ?」
ミケ「そうだ、転職ができるらしいがな」
エルヴィン「転職なあ…ハンジも転職したらどうだ。遊び人に…」
ハンジ「そのままそっくり君に返すよ!!エルヴィン!!」
ハンジは頬を膨らませた
洞窟を抜けた先は、確かに今までとは段違いに強い魔物が群れをなして襲ってきた
だが、一行も旅の中でかなり力をつけており、それらを危なげなく退けていた
ハンジ「南の街バハラタはもうすぐかなあ…」
ハンジは荒野を歩きながら、遠くに目を凝らした
リヴァイ「後数時間でつくと思う」
リヴァイが静かにそう言った
ハンジ「黒胡椒あるといいな」
ミケ「王が欲しがるほどだ。高価かもな…」
エルヴィン「ハンジが一肌脱いで稼ぐしかないかもな…」
ハンジ「さりげなくセクハラ発言するなよ、エロヴィンめ!!」
ハンジを中心に、旅は今のところ順調に進んでいる様に見えていた
426 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:30:43 ID:WrbFOlX6
男「来ました、第16回」
女「タイトルは『勇者ハンジ「ドラゴンクエスト3 ―そして壁外へ―』です」
女「そして、偶数回なので解説は男です」
男「まず真っ先に突っ込みたいことは、カッコ閉じろ、ですね」
女「確かに、てっきり>>425がコピペミスしたのかと思いましたよ」
男「開く前からこの>>1は、ああダメなヤツなんだなって思われます」
女「厳しいですね」
427 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:33:51 ID:WrbFOlX6
女「さて開いてみましょう」
男「おっとぉ……」
女「何度同じことを言わせるんですかね……」
男「>>1で説明を入れるSSは即閉じ、これ基本な」
女「まあ今回は突っ込めると思って見逃しますがね」
428 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:39:13 ID:WrbFOlX6
男「ふむ、ハンジって名前が出てくるからてっきり進撃とDQ3のクロスかと思ったが」
女「どうやらオリキャラのようですね」
男「ここまで出てこなかったから言う機会もなかったが」
男「キャラに名前をつけるのは甘え」
男「そしてクソ」
女「どうしてですか?」
男「有象無象な物語の一つに過ぎないSSのキャラに名前なんておこがましいんだよ」
男「普段だったら役割ではなく名称で区分けされるSSなんて読まん」
女「なるほど、覚えるのが面倒くさいとかではないんですね」
429 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:44:46 ID:WrbFOlX6
男「うわあ……」
女「あちゃー……」
男「地の文ですよ、これ」
女「ですね」
男「さっきからこの>>1、俺の嫌いなことを次から次に繰り出してきますね」
女「精神攻撃に余念がない」
男「あと『お母さん』ってのも気に食わないな」
女「母にしろって思いますよね」
男「全くだ。普段人前で親のことを話すときにもお母さんとか言ってるのだろうかね、恥ずかしくないのかな」
430 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:46:11 ID:WrbFOlX6
男「よく見ると意味不明なコテ付けてるな」
女「これもマイナスですねー」
男「ヤバいよ、これだけ連続でマイナス点出されたら普段の俺なら即リターンだよ」
女「我慢しましょうねー」
431 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:51:25 ID:WrbFOlX6
女「内容はどうですか?」
男「まだ序盤だからなんともだが、展開としては王道みたいだな」
女「オルデガの娘だと言ってますから、DQ3の話をある程度なぞる気なのかも知れませんね」
男「かもしれんな」
男「しかし読点多いな、この>>1。滑舌の悪い人みたいで読みづらいわ」
433 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 03:55:27 ID:WrbFOlX6
男「あちゃー……」
女「どうかしましたか?」
男「地の文形式のSSって台詞の前に話者を書かないのが基本だろ?」
女「んー、まあですかね」
男「でもそれを書いてたから鬱陶しいなあ、と思ってたんだが」
女「そこは許したんですか」
男「もう突っ込むのも面倒くさくてな。だがこの>>1、話者を書いたり書かなかったりする」
女「あー、大事ですよね、統一感」
男「その通り。書くなら書く、書かないなら書かない。明確なルールのない文は猿がキーボードを叩いて書いた文と同じだ」
434 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:00:54 ID:WrbFOlX6
男「>>10,11」
女「馴れ合いですね」
男「ああ、それだよ」
男「しかも『○○の人?』『はい、よろしく!』だと? ふざけるな」
女「SSの作者と読者は一期一会、ですよね」
男「全くその通り。不要な馴れ合いは荒れや老害生産の原因になる」
男「書く人はただ書き、読む人はただ感想を書く。これだけあればSSは書ける」
435 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:05:17 ID:WrbFOlX6
男「エルヴィンとかミケとか出てきたな」
女「ええ、出てきましたね」
男「……進撃だよな」
女「……ですね」
男「はあああああ、また二次創作かよ」
女「もしかしてDQ3の世界観で進撃キャラを活躍させたいだけのオナニーSSかもですね」
男「一応覚悟しておくか……」
436 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:08:20 ID:WrbFOlX6
男「地の文のくせに話者を入れるから面倒くさいことになってるな」
女「謎の男が現れるたびに男「」ってなってますね」
男「これで読みやすいと思ってるなら>>1は脳味噌入れ替えた方がいいかもなあ」
女「読みやすい云々よりも、見た目に格好悪い」
437 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:18:04 ID:WrbFOlX6
男「こういう世界観だけのクロスって役割の割り振りが重要だな」
女「ですねー」
男「ハンジが17歳で勇者ってのがもう読んでて辛い」
女「そんなことしてまで進撃キャラにDQのRPさせたいかって感じです」
男「もう顔さえ同じだったら誰でも良いんだろって思う。あだち充に頼めよ」
女「なんのためにゲームにクロスしてるのか全く分からないですね」
438 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:25:15 ID:WrbFOlX6
男「ここまで来るとわざとなのかなーって思うわ」
女「今度はなに?」
男「これ」
ミケ「そのじいさんに会うには、《なじみの塔》に登らんとな…」
女「……もしかして《》?」
男「これを付けるタイミングが意味不明」
女「ここが初登場よね」
男「そう。だから少なくとも初登場の地名に付けるためのものではない」
男「アリアハンとか普通に出てるしな」
女「そうだねー」
男「気になってほかに使ってないか調べたら次に出てきたのは《痴話喧嘩》だった」
女「もはや固有名詞ですらないね」
男「強調に使いたいのかも知れないが、このタイミングで変な記号を使ってまで強調する理由が意味不明」
女「ほかにはなかったの?」
男「この2か所だけだわ、何がしたいんだよほんと」
439 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:28:41 ID:WrbFOlX6
男「はい、キャラ崩壊頂きましたー」
女「こんなの自分の妄想だけでやってろって話ですよねー」
男「ハンジがリヴァイの顔を覗き込んで顔を赤くするとかどんなだよ」
女「リヴァイをショタにでもしたいんですかねー」
男「じゃあハンジはショタコンか、キモイなー」
男「これは書き方とか関係なく素でキツいものがあるわ」
440 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:33:54 ID:WrbFOlX6
男「もしかして>>1はハンジのキャラを自分と被せてるんだろうか」
女「風呂にも入らない汚い女だってことかな」
男「そこまで自分のことを客観的に見れてるならもう何も言わないけどな……」
男「ハンジが全くハンジらしい台詞を言わないのだから、こんな邪推もしたくなるだろ?」
女「正直エルヴィンもミケもリヴァイもこんなだったかなあって思うけどね」
男「>>1の目にはそういうキャラに映ってたんだろ……」
女「少なくとも私が知る限り、ミケは処女処女連呼するシーンは思い出せないんだよなあ」
男「ミケにそんな注目したことなかったしな」
441 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:38:25 ID:WrbFOlX6
男「俺もう、ハンジ→勇者、エルヴィン→僧侶、リヴァイ→魔法使い、ミケ→武道家って読み替えるわ」
女「限界ですね、>>1の自己投影は」
男「もうホントに無理。熱心な進撃ファンとかでは全くないはずなのに」
男「読みながらキャラの顔が思い浮かぶだけで吐き気がする」
442 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:43:39 ID:WrbFOlX6
男「勇者ってこんなに弱い職業だっけ」
女「そうなんじゃないですかー」
男「いちいち僧侶や魔法使いや武道家が勇者を庇ってるの見ると、>>1の自己投影にしか見えなくてなあ」
女「それ以上考えるのはやめなさい、気持ち悪くなるだけです」
443 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:47:23 ID:WrbFOlX6
男「んー定期的に変な書きミスがあるな」
女「ですね、細々だったので敢えて突っ込まないでいましたがちょっと数が多過ぎです」
男「さっきのなじみの塔はナジミだし」
女「『先々行くな』は意味不明だし」
男「ミケ…「台詞」とかミケの名前は実は省略されたのかとか」
女「予測変換のミスっぽいですよね」
男「ケータイ勢は死ね」
女(パソコンにも予測変換はあるけどね)
444 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:50:19 ID:WrbFOlX6
男「>>68の内容酷いな」
女「男が言いたいことは分かりました、頭痛が痛いんですね」
男「ああ、台詞と地の文で同じことするって馬鹿なの?」
女「わりと真面目に読んでるのにストーリーが入ってこないくらい突っ込んでますね」
男「えーっと、魔王討伐のためにPT組んで何かを知るためにナジミの塔に向かってるんだろ」
女「で、その道中の洞窟でしたね」
445 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:51:58 ID:WrbFOlX6
男「リヴァイってこんなになんでもかんでも怒鳴る性格だったかなあ……」
女「リヴァイじゃないよ、魔法使いだよ」
男「おっとぉ……」
446 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:54:45 ID:WrbFOlX6
男「馴れ合いキター」
女「なーにが『作者の文章が上手く誘導してるから違和感ない』だ」
男「そもそもこの勇者にハンジ要素、名前しかねーじゃねーか!」
女「全くだ! 二次創作舐めんな!!」
447 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 04:57:23 ID:WrbFOlX6
男「>>80のそつなそうってなんだよ……」
女「きっとそつなくこなすって言い回しが>>1の生きる世界ではそうやって省略されてるんだよ……」
男「異世界の住人でしたか……」
448 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:05:58 ID:WrbFOlX6
男「うあああああああ、ゾワゾワするよぉ……」
女「ダメよ! これが>>1の自己投影SSだと思うからそんなことになるのよ!!」
男「一度そう思って読んじまったらもうダメだぜ……」
男「俺はもう、、ダメだ……」
ハンジ「そっか…リヴァイも怖いんだね」
リヴァイ「魔王なんか怖くねえって言ってる奴はいねえだろ?」
男「俺の知ってるリヴァイはよお、ここでこんな台詞吐くようなヤツじゃねーんだよ」
男「リヴァイだったらなあ『ふん、魔王の野郎なんか俺の剣の錆にしてやるよ』くらい言うんだよ……」
男「誰だよ、これ。もうホントになんのためのクロスなんだよ……」
女「だからリヴァイじゃないよ、魔法使いだよ」
男「うああああ……」
449 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:10:08 ID:WrbFOlX6
爆弾職人「かわいい嬢ちゃんに言われたなら断れん。よかろう、いざないの洞窟の岩を壊す爆弾『魔法の玉』をお主たちに託そう
男「ゾクゾクした」
女「さっきからしまくりだね」
男「勇者に魔王討伐の使命を全うするための道具を渡す理由がこれって」
女「きっと>>1はかわいいって言われたかったんだよ」
男「うわあ……」
450 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:16:45 ID:WrbFOlX6
男「定期的に馴れ合いが入りますね」
女「ですね」
男「正直、さっさと書き溜めて完結しろよって思ってます」
男「どうせ、このあともおよそDQ3になぞってオリジナル展開なんてほとんどないんだろうし」
女「ですねー、これだけDQ3にストーリーを被せるなら、考えるのは微妙な台詞の言い方くらいですもんね」
男「最初は滑舌悪いみたいで読みづらかったのに、途中からそれなりに読みやすいから余計に苛つく」
女「自分の物語で勝負しろって思いますよね」
男「全くだ。キャラも物語も借り物で、キャラを崩壊させて、>>1自身が書いてるのは文だけだ」
451 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:19:39 ID:WrbFOlX6
男「馴れ合いの中とは言え、単芝は嫌いなんだ」
女「しかもこれ半芝だね」
男「ホントに勘弁してくれ」
女「古参っぽくてキモイよ」
男「分かっているんだけど、単半芝は勘違いして使うヤツが多いから脊椎反射的になあ」
452 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:25:22 ID:WrbFOlX6
男「話については実況する必要ないよな」
女「ほんとに淡々とDQ3をなぞってるみたいですからね」
男「強いて言えば無駄にリヴァイとハンジがイチャついてて見ててイライラするくらいだな」
女「単純に男が恋愛アレルギーの可能性」
男「ふつうの純愛物だとか、これの名前が勇者と魔法使いだったらここまで嫌悪感ねーよ」
453 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:31:03 ID:WrbFOlX6
男「ああああ、ついに単半芝どころか♪を使い始めやがったあああ」
女「落ち着け! 落ち着け男!」
男「だめだああああ、だってこの画面の向こうには風呂にも入らず悪臭を漂わせてる女が『ありがとう♪』とか言ってるんだぞ?!」
女「そういう自己投影はしてないとおもうよ?!」
454 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:35:59 ID:WrbFOlX6
男「ちょくちょく本筋とは無関係なリヴァイとハンジをくっつけようとする話があるな」
女「むしろ、こっちが本筋なんだろうけど……」
男「進撃の巨人ってもしかして最新刊だと演劇とかやってるのかもなー」
女「遠い目してないで解説しなさい」
男「えーじゃあ、リヴァイが魔王って言う強敵を倒せていない現状で女に現を抜かすとかありえないと思います」
女「はい、身も蓋もないことをまた言いましたね」
男「もう最近はそれしか思ってません」
455 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:40:08 ID:WrbFOlX6
男「雰囲気で流し読みしてたから気付かなかったが」
女「はい」
男「地の文がブレてないか?」
女「よくあることじゃないですか、どうせ素人の書いた物語ですから」
男「いやそうだけど……神の視点の地の文なのにハンジの心の声がべたで書かれてるのはどうなんだよ」
女「もしかしたらハンジの心の中では一人称がハンジなのかもしれないでしょうに」
男「それだったら整合がとれるような内容だったっけか? 読み返す気も起きないわ」
456 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:43:58 ID:WrbFOlX6
男「後半になってまた読みにくくなってきた」
女「読点とか?」
男「これまでとはまた別の原因」
男「行間だな」
女「あー確かに。>>300くらいから5、6行連続で書かれてるレスがあるねー」
男「校正してないにしてもこれは酷い」
457 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:47:33 ID:WrbFOlX6
男「今さらだが・・と…を併用してるなあ」
女「長い間書いてるとどこかで切り替わってしまうのでは?」
男「それにしてもそれくらい統一しろと言いたい」
男「一日に僅かしか書かないならその僅かにもう少しの労力をかけたっていいだろ?」
458 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:54:13 ID:WrbFOlX6
男「お、追いついた」
女「このSSまだ完結してないんですね。2月から続いて最終レスが8/30ですか」
男「きっと、このペースで細々続けていくんだろうな。その気力は認めるよ」
女「ダーマ地方へ足を踏み入れましたね」
男「ストーリー進行的にどの辺だっけ?」
女「んー、真ん中、ですかね」
男「まだまだ続くんだな……よーやるわ」
459 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 05:56:53 ID:WrbFOlX6
女「さて追いついたなら総括ですよ、総括」
男「うーん……言いたいことを真面目に言うと多過ぎる」
女「ですねー、めっちゃ突っ込んでましたもんね」
男「これだな、触らぬ神に祟りなし。だ」
女「違う人種だと思って住み分けた方が良い、ってことですね」
男「うむ……。普段だったら絶対に読まないものを無理して読むことはないと思いました」
女「では次安価下下でー」
男「2個↓ねー」
460 :以下、名無しが深夜にお送りします:2014/09/17(水) 06:21:52 ID:pmoGllQE
なるほど。読まなくて良さそうだ。乙
安価なら
ゾンビ娘「レイ〇されました。死にたいです」
完
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