女武道家「ぶっ飛ばしてやる!!!」 (101)

女武道家「たぁぁっ!」

ズガッ!

魔物「ぐべぇぇぇ」

ズーン

 魔物をやっつけた!!

女武道家「ふぅ、討伐完了っと」パンパン

女武道家「今ので4856体目かぁ、あと144体……ようやく終わりそうだなぁ」

女武道家「やっかいなのは人助けのほうか……あと5人なんだけど、残り10人切ってからからずっと全然……」

女武道家「ま、次の街は結構大きな商業都市みたいだし、もうすぐクリアだし、頑張って数日中に達成といきますか!」ムンッ

女武道家「──」

女武道家(長いこと一人旅してると独り言が多くなるのかな~)

女武道家(とりあえず、さっさと街に行ってシャワー浴びよっと)

--------

少年「はぁっはぁっはぁっ!!」

追っ手A「待てこのガキ!!」

追っ手B「クソが! 逃げ足の速い!!」

追っ手C「フッフッフッ……」

少年(こ、このままじゃ──追い付かれる──)ダダダダダッ

少年(でもこれは、ぜ、絶対に渡しちゃ駄目だ……中央に訴えるまで……絶対に!)

--------
女武道家「はぁー久しぶりだなーこんな大きな街」トコトコ

女武道家「大陸でも有数の商業都市、海の幸山の幸共に豊富に集う食の街でもある……か」グゥゥゥ

女武道家「よし、オナカもすいたし宿探しの前に腹ごしらえしよっかな」


女武道家(って感じで街の食堂に来たはいいけど……)

チンピラ共「ぎゃーっはっははははは!!!」

女武道家(あんまりお行儀のよくなさそうな連中ばっかりね)モグモグ

チンピラA「お、みろよあそこの女……みねえ顔だな」ヒソヒソ

チンピラB「しかも一人……うへへへ気が強そうだが割りと上玉じゃねえか?」ヒソヒソ

チンピラA「一人旅ってとこか、よーし、いっちょ俺らが長旅の疲れを忘れさせてやろうぜぇ」ヒソヒソ

女武道家(聴こえてんのよあんたらの下品なその声は──)ズズッ

ガタガタッ

チンピラB「おいおねーちゃん、ちょっと俺らに一杯注いでくれやぁ」

女僧侶「──んん?」プハ~

チンピラA「って、このアマ僧侶のクセに酒くせえぞ」

チンピラB「へえオカタイ聖職者にも結構いける口がいるもんじゃねえか! どうだ、俺らと一杯付き合わねえか?



女僧侶「うっさいなぁ、何やのあんたら……んぐっ」グビグビ

チンピラB「まーそーツンツンすんなよ。いい飲みっぷりじゃねえか。一杯くらい付き合ったってバチはあたんねー

だろ?」

女僧侶「──」グビグビ

女武道家(さて……ここは助けてあげるか……でも矛先がこっちにこなくてラッキーだったし……)

チンピラC「いよーネエちゃん。俺たちとちょっくらあそばねえか?」

チンピラD・E「げへへへへへ……」

女武道家「……」

チンピラD「お? どうした? 黙ってちゃなんにもぐべぇぇぇ」バキッ!

ガッシャーーン!!

チンピラB「ぶっ!!!」ドターー

な、なんだ!? 喧嘩か!? またかよ! ひぃぃぃ!!

女武道家「全く……チンピラのナンパってのはどこの町でも下種でワンパターンね」ガタッ

チンピラC「て、てめえこのアマ!!」チャキッ

チンピラE「やりやがったな!」チャキッ

女武道家「へぇ──女相手にそんなもの抜くのがこの街の男のやり方ってこと? 所詮チンピラはチンピラね」

チンピラA「でけえ口叩くじゃねえかねえちゃん……」

チンピラB「いてて……クソ、俺らの楽しい飲み会を邪魔しやがって、ちっと痛い目見てもらうとすっか」

女武道家「はぁ……わかり易い展開になっちゃったわね。ま、いいか、丁度イライラしてたとこだし、表出なさい」

チンピラE「んな必要ネエよ!!」ビュッ

女武道家「ふっ」ドガッ

 女武道家の攻撃!

 ガッシャーーン

 チンピラEをぶっ飛ばした!

う、うわー! 外でやれよ外でぇぇ!! ひぇぇ!!

 ドガシャーー!!

女僧侶「っ!?」

チンピラA「こいつ!!」

チンピラB・F「おらぁぁぁぁぁ!!!」
ガガッ バキッ ドボォ!

------
表 大通り

 チンピラたちをやっつけた!

チンピラ共「お、覚えてやがれ!!」

女武道家「全く、所詮チンピラか。捨て台詞までワンパターンね」

ザッ

女僧侶「──」プルプル

女武道家「あ。危ないトコだったねあなた、変なことされなかった?」ニコッ

女僧侶「……なや」ボソッ

女武道家「え?」

女僧侶「ヒトの楽しみを邪魔すんなや!!!」

女武道家「!?!?」キーン

女僧侶「せっかくヒトが久しぶりの一人酒満喫してる時にテーブルひっくり返しよってからに!! かえせ! アタシの楽しみをかえせ! むしろ弁償せえ!!」ヒック

女武道家「な、なによあんたが絡まれてたからついでに助けてやったんでしょうが!!」

女僧侶「はんっ! こちとらあんなチンピラ慣れっこやわ! 大体先に手ぇだして騒ぎでっかくしたんはあんたやろが!!」

女武道家「あんなチンピラぶっ飛ばして何が悪いっての! ほっといたら余計に面倒臭いことになるに決まって──」

ドンッ

女武道家「わっ!」

少年「はぁっはぁっ!!」ダダダッ

女武道家「ちょ、ちょっとアンタ! いきなり何を」

追っ手「邪魔だ! どけ!!」ドンッ

女武道家「わっと!!」ヨロッ

ダダダダダダ……

女武道家「全くもう、ほんっと品のない街ねここは!」

女僧侶「今の奴ら──魔物?」

女武道家「え? 今、なんて言った?」

女僧侶「今男の子を追いかけてった連中、魔物やわ。こんな街中で……しかも人間に変装してるやなんて──」

女武道家「魔物……追っ手……人助け……!!」ピーン

-------

少年「はぁはぁはぁはぁ……」

追っ手A「ふふふ、追い詰めたぞクソガキが」

追っ手C「グフ──グフ──」

追っ手B「手こずらせやがって、さあ、大人しく荷物を渡して死ぬか、殺されてから返して貰うか好きなほうを選ぶんだな」

少年「くっ……こうなったら」キィィン

追っ手A「なっなんだと!?」

追っ手B「このガキ、魔法使いかっ!?」

魔法使い「ベギラマぁぁぁ!!」カッ!

プスッ

追っ手A「……」

追っ手B「……」

魔法使い「じゃ、じゃあこれならどうだっ! メラミ! メラミッ!!」

ポンッ ポンッ ポンッ

魔法使い「でろっ! でろよっ! せ、せめてメラで! メラで! あーもうっ!!」

ポンッ ポンッ ポンッ

追っ手A「ふんっ!」ズガッ

魔法使い「ぎゃっ!」バタッ

追っ手B「脅かしやがって……今楽にしてやるっ!!」バッ

女武道家「はっ」ビュンッ

ドガッ

追っ手C「ギャフッ!!」

追っ手A「なんだ!?」

タタッ

女武道家「フゥゥ……たっ!」ビュンッ

ドガッ

追っ手B「ぐふっ!!」

魔法使い「うう……げほ」

女武道家「ったく男でしょ、しっかりしなさい」

追っ手B「へへ、やるじゃねえかお前さん」

女武道家「へぇ、今のを食らって倒れないとこ見ると、やっぱりあんた普通の人間じゃないってこと?」

追っ手A「さあどうかな? それよりも俺達が用があるのは後ろの小僧だけだ。今そこをどけば見逃してやらなくもないが?」

女武道家「お断りよ。こっちにとっちゃ一石二鳥のチャンスなんだから。絶対逃がさない」スッ

追っ手B「しかタネェ……」ビキビキ

追っ手A「できれば街ナカデショウタイヲダシタクネエガ……」ミチミチ

魔法使い「あ、あうう……」

 魔物の群れが現れた!

魔物A・B「コロセェェェェ!!!」

女武道家「はぁぁぁぁぁ!!!」シャッ

ガガガガガガガッ

魔物A・B「ぐぎゃぁぁぁぁ」ズシーン

 魔物の群れをやっつけた!

女武道家「退治完了っと」

魔法使い「す、すごい……」

女武道家「さて、大丈夫?」

魔法使い「あ、あの……いえ、ありがとう、ございます……助かりました」

女武道家「いえいえ、こちらこそ助かっちゃった」

魔法使い「え?」

女武道家「ううん、なんでもない、こっちの話。ところでなんで街中にあんな魔物が」

魔物C「グァァァァァ!!」

女武道家「! しまった!! まだもう一匹生きてた!?」

魔法使い「わああっ!!」

女武道家「少年! 逃げなさい!!」

魔物C「グルル……ガアアアアア!!!」バッ

魔法使い「め、メラァァァ!!」

カッ

ボウッッ!!!

魔物C「ゴ──グァァァァァァ……」ゴォォォォ

女武道家「……え?」

魔法使い「はぁっはぁっ、や、やった……うまくいった……」

女武道家(さっきはてんでからっきしだったのにどうしていきなり──っていうか)

女武道家(何今のバカみたいな威力のメラは……どう見てもメラゾーマ級だったけど)

魔法使い「さっきは本当にありがとうございました」ペコリ

女武道家「悪いわね、宿を紹介してもらった上にお茶までご馳走になって」ズズッ

魔法使い「ここ最近街の治安があまりよくないので、下手な宿屋なんかに泊まると色々と厄介な事もあると思いますから……」

女武道家「それそれ。昼間のチンピラといいさっきの魔物といい、この町ってそんなに物騒なとこなの?」

魔法使い「十年くらい前までは、本当に明るくて賑やかな、いい町だったんですけどね。この町の商人協会のトップが変って以来、この町の治安はどんどん悪くなっていったんです」

魔法使い「禁忌とされているご法度な品物、人身売買、盗品が堂々と出回りはじめ、最近は魔物の集団達と取引をしている……なんて噂も」

女武道家「何それ。そんなの中央教会の連中が黙ってないんじゃないの?」

魔法使い「ここでは古くから商人達の力が強いんです。中でも商人協会の力は、この町に出向している中央教会の方々ではどうすることもできません。現町長も商人協会と癒着していて、町のことなら様々な方向に圧力をかけられますから」

女武道家「なるほど、やがて犯罪者やチンピラ共がわらわらと身を寄せて、気がつけば悪人の吹き溜まりってことか」

魔法使い「……見てください、この町を」

女武道家「ん?」キョロキョロ

魔法使い「立派で綺麗な建物が多いでしょう。大陸でも有数の明媚な町並みとして昔から有名だったそうです。人々もすごく大らかな人ばかりで、様々な商人達が集い、大陸中はもちろん、外の国々の珍しいものも沢山集まってきて、交易の盛んな、豊かな町だった」

魔法使い「それを、今の商人協会のトップが台無しにしたんです……」

女武道家「ふーん……」

女武道家「で、そんな話をなんで私にしたわけ?」

魔法使い「……さっき僕の事を追いかけていた魔物達は、これを狙ってきたんだと思います」ガサッ

女武道家「これは……」

魔法使い「僕が偶然手に入れた、協会と魔物達との取引の手紙です。魔族の文字ですが、なんとか解読してみたら、魔界に人間の奴隷を送り込み、見返りに様々なご法度品を受け取ると──」

魔法使い「そしてこれは、手紙と一緒に手に入れた奇妙な宝玉です」コトッ

女武道家「な、なにこれ──随分と禍々しい雰囲気だけど」

魔法使い「──解りますか」

女武道家「これ、どうするつもりなの?」

魔法使い「僕はこれを持って中央に訴えようと思い、使者を送ってもらうよう内密に手紙を送ったんです。これだけの証拠品を直接中央に提示すれば、流石に動かざるを得ない……」

魔法使い「そこで──女武道家さんに、その腕を見込んでお願いがあるんです。どうか、中央から使者が来るその日まで、僕の護衛をお願いできませんでしょうか」

女武道家「はあ?」

魔法使い「恥ずかしい話なんですけど、僕はまだ魔法使いとしては未熟もいいところで……その、魔法のコントロールが下手なもので……」

女武道家「ああ、じゃあさっきのすごいメラは魔力が暴発しただけだったんだ」

女武道家(それにしたってとんでもない威力だったと思うけど……)

魔法使い「だから自分の身一つ満足に守れない……町外れに身を隠そうと思っていた矢先に襲われました」

女武道家「なるほどねぇ」

女武道家(んー厄介ごとに首突っ込んじゃった感じだけど……この子と一緒にいればトラブルのほうから転がり込んでくるかもしれないし、うまくいけば一気に目標達成も見えてくるかもしれないわね)

女武道家「オッケー、いいよ。あんたの護衛、引き受けましょ。言っとくけど安くないからね?」

魔法使い「ほ、本当ですか!?」

女武道家「こっちとしても都合がよさそうだし、ま、利害の一致も含めて、ね。じゃ、まあよろしく」スッ

魔法使い「あ……よ、宜しくお願いします」カァァ

ギュッ

 女武道家は、魔法使いと契約した!!

--------
商人協会 本部

男商人「で、まだなのですか、例の小僧を襲撃に行った連中からの報告は」

**「は──それがその……何でも街中でよそ者と思しきものが、魔物相手に大立ち回りを演じたとの情報が……」

男商人「全く……こういう時のためにわざわざ魔族の連中から雇っているというのに」

**「しかもその後、そのよそ者の武道家は例の少年と行動を共にしているようで」

男商人「まさか護衛として雇ったとでも言うのですか?」

**「おそらくは」

男商人「面倒ですね……仕方ない。あの男です、あの男戦士に依頼なさい」

**「男戦士ですか、奴は、その……」

男商人「多少性格に問題があっても構いません。少なくとも腕のほうは確かです」

**「わ、わかりました。では早速手配いたします……」ススッ

男商人「ふん、それにしてもあの小僧は、どこから宝珠と手形を持っていったのでしょうか。一度魔界との流通経路を洗う必要がありそうですね」

男商人「こんなふざけた手紙を中央に出して、どういうつもりかは知りませんが」ピラピラ

男商人「──私の邪魔をすればどんな目にあうか、身をもって知ってもらうとしましょうか」グシャッ

--------
深夜
街中にて

女「あーあ遅くなっちゃったなぁ」トコトコ

女「全く最近物騒になってきてるのに、女性をこんな時間まで働かせるなんて……」

女「最近妙な変質者も出るって言うし……あら?」

女「だ、誰? なによあなた……」

??「誰だと問うか何かと問うか──その返答は今いずこ」ジャリ……

女「……なにいってるのよ。と、とにかく道をあけて! 大声だすわよ!」

??「大声、悲鳴、おお、何者にも換え難い極上の美酒……さて本日はどんなお味を楽しませてくれるのでしょうか」ゴソゴソ

??「さあ! ショー☆タイムのはじまりだーーー!!」バッ

女「──ぎ」

ぎゃああああああああああああああ!!!!

 明け方

**「あっ!?」ダダダ

女「   」プルプル

**「もし、もし! 大丈夫ですか!?」

女「う~ん……か、かたい……あつい……すじきのこ……」ガクッ ブクブクブク……

**「わぁぁっ!? き、気をたしかにっ! い、医者だ! 医者だーー!!」

--------
 町外れ

魔法使い「すみません、買い物まで付き合ってもらってしまって」

女武道家「あんたの護衛なんだから当然でしょ」

魔法使い「この先に師匠が昔使っていた空き家があるんです。今日からそこに身を隠そうと思ってるんですけど」

女武道家「うーん人の多い場所から外れるのはよくないと思うんだけど」

魔法使い「だからといって昨日みたいな騒ぎになったら、町の人たちを巻き込むかも知れませんし」

女武道家「ま、雇い主はあんただし、好きにして」

魔法使い「そういえば、女武道家さんはどうしてこの町に来たんですか?」

女武道家「んーちょっと武者修行の最中でね。聞きたい?」

魔法使い「ちょっと興味があります」

女武道家「……私の出身地は大陸の端っこにある小さな村なんだけどね。武術の盛んな土地で、あたしはそこの……まあ一族の纏め役みたいな家柄の娘だった。その家系の長には代々”拳聖”っていう称号が与えられるんだけど」

魔法使い「拳聖……聞いたことがあります。大昔に実在した武術の神様と言われる武道家の称号とか」

女武道家「そうそう。で、あたしはその時期拳聖候補なんだけどね」

魔法使い「え!? そ、それってすごいじゃないですか!」

女武道家「その称号を継ぐために一人旅で修行をするのが掟なのよ。で、クリアしないといけない条件が二つあるの。5000体の魔物退治と、100の人助けをこなさないといけない。確かな実力と経験値を身につけるのと同時に、人徳を養うってことらしいけど」

魔法使い「ご、ごせん……」

女武道家「この両腕の腕輪はね、その条件をクリアするまで外れない呪いのかかった封印の腕輪。こいつがある限りあたしは本当の力を抑えられている。クリアするまで拳聖の力を振るう資格はないってことね」

魔法使い「そ、その、あとどれくらい残ってるんですか」

女武道家「昨日あんた助けたからあと4人、魔物退治が今4856……」

魔物「ガァァァァ!!!」

魔物「ガァァァァ!!!」

 魔物が、あらわれた!!

魔法使い「わわっ!」

女武道家「ふんっ!」ドコォ!!

 魔物を、やっつけた!!

女武道家「これで4857体目」

魔法使い「い、一撃で……!?」

女武道家「まあね。てゆうかこの辺りの魔物なんてあんまり強くないじゃない。あんまり弱すぎるとカウントされないから、最近までもうちょっと強い魔物の出る地域にいたし」

魔法使い「何でもいいってわけじゃないんですね」

女武道家「最初のうちはスライムやドラキーばっかり狩ってたんだけど、50体目からはカウントされなくなっちゃったし」

魔法使い「大変だったんですね……あ、あの小屋です」

女武道家「うっわ辺鄙なとこね、町から遠いから魔物も出るし、砂と岩ばっかり……こんなとこであんたの師匠は何して──」

 ジャリッ

魔法使い「な、なんだ!?」

女武道家「誰か小屋の前にいる……」

マントの男「そこの少年は例の魔法使いだな」

魔法使い「っ!? ま、まさか」

マントの男「俺の名は男戦士。とある方の依頼を受け、奪われた物品の奪還に参った」

魔法使い「く……」

男戦士「手形と宝玉、どちらも大人しく渡せば危険な目にあわずに済むが」

魔法使い「こ、断る! これは中央に提出する大事な証拠品だ……絶対に渡さない!」

男戦士「ならば仕方ない、実力で奪い取ることになるな」

女武道家「──そうなると、護衛のあたしの出番ってわけね」パシッ

男戦士「女との戦いなど久しぶりだが……いいだろう、力ずくで倒すしかあるまい」

女武道家「女だからって甘く見てるの? バカバカしい」

男戦士「お主武道家か、なかなか腕も立ちそうだ……ふふふ、これは本気を出せそうだ」

女武道家「ごたごた言ってないで、早く始めない? こっちはいつでもいいけど」ザッ

男戦士「一人の戦士として……そして」グッ

 ババッ

女武道家「ちょっ!?」

魔法使い「え、ええっ!?」

男戦士「一人の変態としてっ!!!」ムキムキィッ!

 E ビキニアーマー
 E あみタイツ
 E うさぎのしっぽ

女武道家「な、なな、なにこいつ!?」

魔法使い「まさか最近町で噂になってる、例の変質者……!?」

男戦士「さあ、ショー☆タイムのはじまりだーーー!!」バッ

 変態……もとい、男戦士が現れた!!

男戦士「はああっ!!」シャッ

女武道家「ぎゃああっ!!」バッ

女武道家(く……き、気持ち悪い!! でもこの太刀筋……かなりの使い手!!)

男戦士「さあさあどんどん行くぞっ!!」ブンッ

  プラプラッ

男戦士「だあっ!」シャッ

  プラプラッ

女武道家(ぷ、プラプラって何!? 何なのこいつ!?)

男戦士「言っておくが下半身のガードの下は象さんのお鼻が素敵なことになっているぞ!」

魔法使い「ひぃぃっ!?」

女武道家「うぐ……こうなったら!」ガッ

女武道家「ふんっ」ブオッ

 女武道家は持ち上げた岩を放り投げた!!

男戦士「ぬっ!」ガギッ

女武道家(牽制で動きを止めてから一気に落とす!!)

女武道家「はああっ!!」

 女武道家は真空波を放った!

男戦士「ぐっ!」

女武道家「ふぅぅ……はっ!!」ドゴォォッ!!

 女武道家は腰を落とし、真っ直ぐ男戦士を突いた!!

男戦士「ぐ、は……が、岩石飛ばしに真空波……どうやら並みの武道家ではないなお主」

女武道家「……」タタッ

女武道家(正拳突きは完全に捕らえた筈なのに、大して効いてない……ビキニアーマーで全身ほぼ丸出しだってのに)

女武道家(やっぱりこの変態、実力はとんでもないわね)

男戦士「ならばこちらも秘技を使わせてもらおう」スッ

男戦士「俺の剣の師匠は、様々な形で散り散りになっていた古代の勇者の技を纏め上げ、一つの流派として伝説の剣術を復活させた……」

 男戦士は大きく息を吸い込んだ!

男戦士「かつて存在したとされ、今もなお歴史にその名を残す伝説の勇者の名を拝借し、師はその無名の古流剣術に名をつけたのだ」

男戦士「古流剣術、ロト真剣流──」コォォ

男戦士「隼!!」シュバッ!!

 ブワッ!!

女武道家「な──!?」

 女武道家は全ての攻撃に備え、身構えた!

ドガァァァ!!!

女武道家「ああああっ!!」

魔法使い「女武道家さん!!」

男戦士「……驚いた、武道家がまさか大防御まで習得しているとは」

女武道家「くっ……」タラッ

男戦士「それでも今のを完全には防ぎきれまい。ゆくぞっ!!」バッ

女武道家「は、あああああ!!」バッ

 バシッ ガキッ! ズバッ ドガガッ シャッ!

魔法使い「あわわ……」

魔法使い(す、すごい戦いだけど……女武道家さんはダメージが大きそうだし……)

 プラプラ  プラプラ  プラプラプラッ

魔法使い(なんかぷらぷらしてるっぽいし!!)

魔法使い(僕にできること……何か……だめだ、魔法のコントロールもできないんじゃ、サポートなんて……)

魔法使い「が、頑張れ! 頑張って!!」


女武道家「はぁ、はぁ……」

男戦士「先ほどのダメージが決め手だな、この勝負先が見えた」

女武道家「ぐっ」ギリッ

男戦士「それにしてもお前、力をあまり出せていないようだが、どういうつもりだ?」

女武道家「余計なお世話よ……はっ!!」シャッ

男戦士「むっ!」

 女武道家は疾風の如く攻撃した!!

男戦士「ぐ、ふ!」

女武道家「はぁぁぁっ!!」ドガガガガガッ

 女武道家は爆裂拳を放った!!!

男戦士「が、ががががっ!!」

男戦士(ふっ、一撃の重さでなく速度と手数で来たか……だが!!)

男戦士「く……古流剣術ロト真剣流──」

女武道家(っ! 来るっ!)ババッ

男戦士「猛虎!!」グアッ

 ズババババッ

 男戦士は構えた剣を振り抜いた!!

女武道家「あああっ!!」ブシュッ!!

 ガクッ

魔法使い「女武道家さんっ!!」タタッ

男戦士「隼斬りを凌駕する速度で、かつ威力を落とさずに斬撃を浴びせる”猛虎”をまともに食らったのだ。大防御とて防ぎきれん」

女武道「ぐ──ぁ……」ポタ ポタ……

男戦士「その出血量で動けば、命を落とすぞ武道家」

女武道家「あ、ぐ……ぅ……」ガクガク

 ドサッ

 女武道家は気を失った!

魔法使い「ああっ!」

男戦士「勝負、あったな……う、ぐ……!?」ズシッ

男戦士(く、こ、これだけの重さの攻撃を爆裂拳で連発するとは……この女一体)

男戦士「やはりこの場でケリをつけておくべきだな」スッ

魔法使い「お、お前まさか!」

男戦士「はああっ!!」バッ


パキン

 男戦士の股間のガードが外れた!!
 ビキーン

男戦士「さあ、強き女よ、この俺の聖剣を見るがいいっ!」バッ

 ぐーるぐーる

魔法使い「う、うわっ!?」

男戦士「ほらほら、早く起きないと、顔の上でこんなことしちゃったり」モリッ

魔法使い「ひぃぃぃっ!?」

男戦士「おにーさんの熱くて硬いすじきのこだよーー! はーっはっはっはー!!!」フリフリフリ

魔法使い「な、何してんだよあんた!!」

男戦士「何って露出ダンスではないか ほれっ君も見たまえ!! いよいよ先っちょがむずむずしてきたぞ!!」ボキーン

魔法使い「ひっ!! ろ、露出ダンス……!?」

男戦士「俺は一人の戦士の前に一人の変態だからな! そして変態は紳士であるべき! 弱いものいじめも人殺しも断じて行わん!! そして弱いお前に剣を振るうわけにはいかんので……変態的お仕置きをすることにしよう」ニヤッ

魔法使い「う、うあああ……」ダラダラ

男戦士「それとも、眠れるこの少女の前でダンスを踊り続けたほうが効果的かな!? んーーっ!?」ブラブラブラ

魔法使い「うあああああああああああああ!!!!!!」

--------

男戦士「よし、確かに受け取ったぞ」

魔法使い「く、くそ……」ダラダラ

男戦士「やめておけ。お前では俺には勝てん。呪文のコントロールを身につけておればまだマシだろうがな」

男戦士「女が目覚めたら伝えておいてくれ、俺はこの町に当分滞在している。真の実力を出す気になったらまた再戦してやろう、と」

魔法使い「え──?」

男戦士「それと起きている間に俺のショーを見たければいつでも大歓迎だとっ!!」

魔法使い「それは絶対嫌だ!!」

男戦士「はははははーっ! じゃあな少年、今度会う時はもう少し男っぷりを上げておくがいい」タタッ

魔法使い「な──なんだったんだ一体……」

魔法使い「っ! そ、そうだ、女武道家さん」タタッ

魔法使い「ひどい傷だ……とにかく、ここには薬草もないし、すぐ宿屋に運んで僧侶か神父さんを……」

??「あれ……あんたらどしたんそれ」

魔法使い「──え?」

ちょっと風呂沸かしてくる

--------
男戦士「これが約束の品物だ」

**「うむ確かに。流石は伝説の剣術を継承する戦士だ。こちらは約束の報酬になる」ジャラッ

男戦士「しかし女子供から手形と宝玉を取り返すだけでこれほどの額を貰えるとは」

男戦士「よほど重要なものなのだろうな」

**「貴様が知る必要もあるまい。傭兵を続けたければ尚更首を突っ込まんことだ」

男戦士「まあ何でもいいが、これで仕事は完了したな」

**「で、例の武道家と魔法使いは殺したのか?」

男戦士「何度も念を押したはずだ。俺は殺しはしないとな」

**「殺せばさらに報酬を弾むとも言っておいたと思うが」

男戦士「そこまで金に堕ちてはいない。それではまたいずれ」

**「……証拠を知るあの魔法使いだけでも消えていれば都合がよかったのだが。さて、旦那様に報告に行くか」

--------
魔商人「約束の品と手形は取り返したか?」

男商人「勿論ですとも。この通りこちらに」スッ

魔商人「フン、いいだろう。そいつはしばらくこちらで守っておけ。必ず守り抜くのだ」

男商人「魔界にお持ち帰りになられたほうがよろしいのでは?」

魔商人「魔界ではそいつを狙う輩が多すぎる。ここならその宝珠の本当の価値を知るものなぞおるまい」

男商人「さて……それではこちらが今回の目録にございます」

魔商人「──よし、いつも通りだな。それではこちらも前回と同じだ」スッ

男商人「ははっ、魔族の麻薬、ダーククリスタル、呪いの武具の数々……いやはや、どれもこちらでは貴重なものばかりでございます」

男商人「それでは本日はこれにて……」ススッ

***「──良いのですか? 人間と取引など」

魔商人「人間共も使いようというわけだ。ああいう欲深い人間は我々に利益をもたらす……ククク……集まった魂は今いくつだ」

**「まもなく800体に届くかと」

魔商人「順調だな。姿を潜めて魂を集めるには、ああいう手合いから奴隷を集めるのが効率がいいのだよ。バカ正直に人間狩りに興じていては、制約に触れるリスクも大きく、時間と労力を消費するだけだ」

***「それと例の件ですが、あの”転生体”は現在こちらに護送中です」

魔商人「よし、奴と宝珠、どちらも我が手の中というわけだ。両方を人間界に置いておくのは少々不安が残るが、まあ引き逢うこともあるまい。むしろ他の連中に手を廻されるリスクを回避するべきだからな」

魔商人「くく……ははは……すべてが上手くいっている……」

魔商人「はーっはっはっはっは!!」

 女僧侶はベホマを唱えた!!

女僧侶「はい、これで大丈夫やな」

女武道家「つつ、まだ少し痛む……」

女僧侶「あれだけの重傷やで? それにアンタ回復呪文慣れてないやろ。まあちょっとま体がパニックになる思うけど、気にせんと安静にしとき」

魔法使い「回復呪文か……すごいや」

女武道家「ありがとね、助けてもらっちゃって」

女僧侶「何いうとんねん、こっちは腐っても僧侶やで、けが人の治療は職務内やって。それにアンタには一回会いたかったし」

女武道家「え?」

女僧侶「昨日はごめんな、ウチ酒飲んどる時に邪魔されるとカーッとなってまうねん。あの時はつい言い過ぎたわ。それと、チンピラ追っ払ってくれてありがとーな」ニコ

女武道家「あ──」

 女武道家の腕輪のカウントが 一つ増えた!!

女武道家「いえ、こちらこそ、本当にありがとう」ニコ

女僧侶「にしても一体何があったんよ? かなりズタズタにされてたけど」

女武道家「ああ、あの変態戦士……」ギリッ

魔法使い「お、思い出しただけで寒気が……」

女武道家「あんな奴があれだけ強いなんて、世の中おかしいんじゃない? 次会った時は自慢の聖剣ごとブチ抜いてやる……」メラメラ……

魔法使い「結局……手形と宝玉は奪われてしまいました」

女武道家「あーあ護衛を引き受けておきながら不甲斐無い話だわ」バタッ

魔法使い「いえ、こうして命が無事なのは女武道家さんのお陰ですから……」

女僧侶「何や事情がありそうやなぁ、何やったら手伝ったろか? ウチこの町にしばらく留まるんやけど、今のとこ結構暇してるから、できることなら力になるで」

魔法使い「ほ、本当ですか?」

女武道家「アンタまだ何かするつもりなの?」

魔法使い「……僕はあの町を昔みたいな町に戻したい。そのためには、裏で牛耳っている商人協会のトップ……男商人を何としても引き摺り下ろさなきゃいけないんです」

女武道家「で、また別の証拠品を掴みたいってわけね。なんでアンタそこまでするの? 今回の事で明らかに自分の手に負えることじゃないって解ってるでしょ」

魔法使い「──」

女武道家「……」

女僧侶「……」

魔法使い「……僕の師匠は、同じように商人協会の悪事を明るみにしようとして、殺されたんです」

魔法使い「連中を中央教会に突き出そうとしたら逆に罠に嵌められて……最後は町から離れた場所で、魔物に体中をズタズタにされていました」

女僧侶「ひどい……」

女武道家「なるほど、師匠の敵討ちでもあるってわけね」

魔法使い「──」

女武道家「ま、いいか。それで、次はどうするの?」

魔法使い「え?」

女武道家「忘れたの? あたしあんたに雇われてるんだから、あんたが何かしたいってんなら付き合うのが役割だと思うけど」

魔法使い「え、あ、で、でも」

女武道家「それにあの変態戦士には是非ともリベンジしたいし、腕輪の封印が解けるまではこの町で滞在する予定だったし。付き合ってあげるわよ」

魔法使い「い、いいんですか……あ、ありがとうございます!」

女僧侶「なんやその変な腕輪呪われとったんやな。言うたら解呪したったのに……」

女武道家「あ、これは違」

 女僧侶は ザメハを唱えた!

 腕輪が怪しい光を発した!

女僧侶「え?」

 カッ!!

 うにょ~……

女僧侶「わ、わっ! ちょ、な、何これ!?」

女武道家「あっちゃ~、遅かった……」

魔法使い「うわっ! な、何なんですかこれは!?」

 うにょうにょうにょにょ~

女僧侶「ち、ちょっとこいつらっ! からっ、絡み付いて! ああっ!!」ジタバタ

女武道家「何ていうか……表向きはインチキを防ぐための仕掛け」

魔法使い「う、裏向きは?」

女武道家「──何代か前の拳聖の悪趣味らしいわ」

 腕輪から出現した無数の触手が女僧侶を襲う!!

女僧侶「ちょっと! た、たす、たすけ、ああもうどこ入ってきとんねやっ、あ、あんっ!!」ビクッ

女武道家「安心して、死んだりしないし取って食われたりもしないから。ただちょっと全身を弄くられるだけよ」

女僧侶「こ、こんなんおかしい! おかしいて! あ、ああっ、ふああっ! ちょ、ま、そ、そこは、そこヤバ、ひうっ!?」

魔法使い「──ゴクッ」ハァハァ

女僧侶「あっあ、あ、あああああああ~~~っ!!」

--------
 数日後

魔商人「フン、達成は目前だというのに次の人間がまだ集まらんのか」

男商人「申し訳ありません……先日の騒ぎが原因で、町の者達の中に魔物が街中に潜んでいるという噂が流れておりまして……奴隷として拉致してきている行方不明者も、魔物に食われているのではないか、などと……」

魔商人「人間共の情報操作くらい貴様には造作もなかろう。それに原因は宝珠と手形を盗まれた貴様らの不手際だろうが!」

男商人「は、は、ははあっ!!」

魔商人「まあいい、一刻も早く次の魂を収めるんだ、いいな!」

男商人「は、はいっ!!」


男商人「く……知恵が働くだけの下っ端魔族の分際で偉そうに……しかし奴がいなければこれだけの利益を得られませんでしたし……全く」ブツブツ

**「旦那様」

男商人「何ですか」

**「魔界の連中との取引を進めていた者たちから連絡です。珍しい物品を魔界で発見したとか」

男商人「ほう、それはいいですね。どれ、一つ見せてもらいましょうか」

--------
**「こちらになります」コト

男商人「装飾の施された箱、ですか。なかなか面白いデザインですね」

 パカッ

男商人「中身は空……この箱はどのようなものですか?」

**「詳細は現在鑑定中ですが、魔界で何かを封印するために使われていたものではないかと思われます」

男商人「成る程。こういうものを骨董品感覚で集めている者もいます。良い取引相手が見つかり次第利益に変えなさい」

**「はっ」

男商人「さて、私は今晩のお楽しみといきますか……」

ガチャ バタン


 シュゥゥゥゥ……

 ぞぶ……ぞぶぞぶぞぶ……

数日後 街中

酔っ払い「う、うう……ありがとうございます……」

嫁さん「全く酔いつぶれて人様に迷惑かけるなんて何考えてんだいアンタ!!」

女武道家「あはは、いいっていいって。それじゃ、あたしはこれで失礼します」

嫁さん「あっ、本当にありがとねお嬢さん! わざわざこんなロクデナシ世話してくれて!」ペコペコ

女武道家「オジサン、飲み過ぎには注意してね」

酔っ払い「う、うう、うげ──」

--------
女武道家「……あー酒臭かった」

女武道家「よし、あと2人、あと2人で片方達成……」

女武道家「偶々ああいうのがいたから助けられたけど……まあばったり遭遇ってのはレアケースよねぇ」

魔法使い「女武道家さん!」タタタッ

女武道家「あ、どうだった?」

魔法使い「駄目ですね……噂以上の話は聞けませんでした」

女武道家「こっちも同じく。やっぱり噂は噂なのかなー」

魔法使い「それでも、これだけはっきりした噂になっているところを見ると、あながちデマでもないかもしれませんね」

女武道家「”悪魔憑き”かぁ……」

--------
 数時間前

女武道家「悪魔憑き?」

魔法使い「今町で噂になってるんですよ。悪魔に乗り移られて発狂してしまった人が相次いでるって」

女武道家「何それ、全くあんたの住んでる町はそんな怪奇まで呼び寄せてるワケ?」

魔法使い「まあ、あくまで噂ですから……それに先日僕が魔物に襲われたのを大勢の人が見ていたせいか、魔物が街中に潜んでる、なんて話もありましたよ」

女武道家「うーん……でもその悪魔憑きが本当だとしたらさ、その悪魔をあたしがやっつければ、誰かを助けられるかもしれないわね」

魔法使い「き、興味、あるんですか?」

女武道家「面白そうじゃん。さ、そうと決まれば情報収集行きましょ」

魔法使い「え? あ、ぼ、僕も!?」

--------
女武道家「ま、思わぬ人助けが出来たから、こうして出てきたのも無駄でもなかったけど」

魔法使い「どうしますか? もう少し情報を集めてみます?」

女武道家「うーんそうねぇ」

老人「おい、そこのお二人さん……」

女武道家&魔法使い「「ん?」」

老人「ふぉふぉふぉ。お主らさっきから町中嗅ぎ回っとるようじゃが、何やっとるんじゃ?」

女武道家「何よいきなり話しかけてきて……」

老人「まあまあ聞きなされ。例の悪魔憑きの噂を調べ取るんじゃろ?」

魔法使い「え? ま、まあ……」

女武道家「ちょっとなんであんたそんなコト知ってるのよ」

老人「ふぉふぉふぉ。あれだけ聞き回っとたら、ワシみたいな耳ざといモノは気付くもんじゃて。どうじゃ? このワシが纏めた最新の情報を売ってやっても良いが」

女武道家「売るって、あんた一体何者?」

老人「まあ、好奇心に任せて情報屋の真似事を道楽でやっとるもんじゃ」

女武道家「情報屋ねぇ、で、いくらで売ってくれるの?」

老人「そうさのぉ、5000Gってとこかの」

魔法使い「ごっ、ごせんゴールド?」

女武道家「はぁ!? そんなに払えるわけないでしょ!」

老人「だろうと思ったよ。そこでじゃ、ひとつワシと勝負せんか?」

女武道家「勝負?」

老人「ふぉふぉふぉ、ワシは元盗賊でな、オイボレても器用さと素早さにはまだまだ自信があるんじゃ。見たところお嬢ちゃんは武道家じゃろう。どれ、素早さ勝負でどうじゃ? 勝ったらタダで教えてやるわい」

女武道家「へぇ……持ちかけてくるって事はそれなりの自信があるってことよね、面白いじゃない」

老人「そのかわり負けたら……そうじゃのぉ、お嬢ちゃんの尻でも触らせてもらおうかの」

魔法使い「え゙っ!?」

女武道家「ゔ……と、とんだスケベじじいね……」

老人「どうじゃ? 何なら尻でぱふはふさせてくれたらタダで教えてやってもいいぞ? ふぇふぇふぇ!」

女武道家「い、いいじゃない、やってやるわよ!」

魔法使い「えっ!? や、やるんですか!?」

老人「決まりじゃ! ほれ、気の変らんうちに準備するぞ! おい少年、ちょっとこっちへ」

魔法使い「は、はい」

老人「ここに30G硬貨二枚と50G硬貨が一枚、100G硬貨一枚がある。この四枚の硬貨を少年の手に乗せる。ワシら二人は少年を真ん中にそれぞれ5メートルずつ離れて、合図と共に少年の掌の硬貨を取りに行く」

老人「硬貨は何枚でも取ってよいが、早い者勝ち、故意に相手の行動を邪魔すれば反則負け、地面に取りこぼしたコインは無効、取れた硬貨の合計額が大きいほうが勝ちじゃ」

女武道家「……いいわ、それでいきましょう」

老人「ふぉふぉふぉふぉ、イカサマを防ぐために、互いに財布は少年に預けようかの」

--------
老人「それでは……少年、合図を頼むぞい」

魔法使い「は、はい……」ゴクッ

女武道家「──いつでもいいわよ」

老人「──」ジャリ……

女武道家「──」ジリ……

魔法使い「……はいっ!!」
 シャシャッ

魔法使い「!?」

 ババッ シュバババッ!!

老人「っ!!」

女武道家「っ!!」

魔法使い(ふ、二人ともいつのまに……!? て、掌のコインも消えてる……)

老人「……」

女武道家「──う、うそでしょ……」

老人「ふぇふぇふぇ、ワシの勝ちじゃな」ジャラッ

魔法使い「お爺さんが、100G硬貨と30G硬貨二枚……」

女武道家「く、くく……」

老人「ふふふ、何が起こったか説明してやろう少年。お嬢ちゃんは先に少年の元に辿りつき、最初に100G硬貨を手に取った。しかしその次に50G硬貨に手を伸ばした瞬間」

女武道家「あたしの手の中から100G硬貨を”盗んだ”のよね」

老人「!? あ、あの瞬間を見抜いておったか……たまげたのぅ、見抜けたのはお前さんがはじめてじゃわい」

女武道家「あたしの”行動”を妨げたわけじゃないから、ルール上でも問題なし。それにあたしが100G硬貨を取っている間に、あなたは30G硬貨を二枚取っていた。どの道純粋な素早さ勝負でも、あたしの負けね」

魔法使い(あの一瞬でそんなやりとりを……僕なんかいつの間に二人が迫ってきたのかさえ解らなかったのに)

老人「さーてそれじゃあお楽しみタイムじゃ」ニヤッ

女武道家「う……」ビクッ

魔法使い「あ──」

--------
女武道家「く、屈辱……恥辱……」プルプル

老人「いやーすっかり堪能させてもろたわい! お嬢ちゃん見立て通りいい尻をしとるのぉ」

魔法使い「うう……あんな……顔を埋めるなんて……」

女武道家「絶対夢に出るわねこのスケベジジィ……その時は全力でぶっ飛ばしてやるわ……」

老人「さて、ええ尻を触らせてくれた礼じゃ。約束通り例の悪魔事件の情報をくれてやるわい」

女武道家「勿論よ、あそこまでしといて今更何も知らないとか言い出したら速攻ぶん殴るからね」

老人「まず悪魔の噂の真偽じゃが……この数日のうちに原因不明のこん睡状態に陥った者が数名おるんじゃ」

魔法使い「その人たちが悪魔憑きの被害者ですか?」

老人「それはまだはっきりしとらんが、そのもの達にはいくつかの共通点があるんじゃ。まずは殆どが若い男という事。中には女もおるから絶対条件ではないかも知れん。第二に、全員が独り身や天涯孤独、あるいは両親に先立たれたり、恋人と別れたばかりのものもおったの」

女武道家「それって要するに、何らかの寂しい思いをしてるってこと?」

老人「そうじゃろうな、そういった心の隙間に付け入っておるのかもしれん」

老人「最後に、こん睡状態の者達の殆どが、この町の南西ブロックに住んどるということじゃ」

魔法使い「南西ブロック……」

女武道家「つまり南西ブロックに住んでいる若い男、それも最近誰かと別れたり、何かを失った人物を調べれば」

老人「行き当たるかもしれん」

女武道家「よし、それならもう一度南西ブロックで情報収集といきましょう」

魔法使い「そうですね」

--------
女武道家「ってなんであんたが着いて来るのよ!」

老人「面白そうじゃからのう。このオイボレもちっと首を突っ込んでみたくなっての」

魔法使い「……」ムスッ

老人(ふぉふぉふぉ、お気に入りの女子の尻を良い様にされて悔しいかの?)ボソボソ

魔法使い(え、えっ!?)ドキッ

老人(見ておればモロバレじゃ。ま、恋路には疎そうな女子じゃて、頑張る事じゃな)

魔法使い(う、ううっ)カァァ

女武道家「ちょっと何やってんのよ二人して」

老人「何でもないわい」

女武道家「それより老人さん。さっきの勝負だけど、今度やる時は絶対負けないからね」

老人「ほぉ、リベンジしたいとな?」

女武道家「当然よ。現役の武道家が引退した盗賊に負けたなんてとんだお笑い種よ」

老人「安心せい、次やる時はお嬢ちゃんの勝ちじゃろう。拳聖に本気を出されたら、オイボレたワシなんぞがどうひっくり返ったって勝てやせんわい」

女武道家「!」

魔法使い「お、お爺さん女武道家さんのこと知ってるの?」

老人「その腕輪は東の大陸の沿岸部にある武術の村に伝わる封印の腕輪じゃろ。これでも若い頃は盗賊として色んな場所を冒険したもんでの。余所の国の伝説なんかもよく聞いたもんじゃ」

女武道家「まさか気付いてて話しかけてきたってわけ?」

老人「ふぉふぉふぉ、オイボレてもこの好奇心はどうも止められん」

魔法使い(そういえば、かつて世界の半分を騒がせた伝説の盗賊がいたっていう話を何かで読んだことがあるけど……まさかなぁ)

--------
 南西ブロック 広場にて

女武道家「夜だってのに賑やかねぇ」

魔法使い「でもこの辺りは、商人協会の本部が近くにありますから、あまり長居はしないほうがいいかもしれません」

女武道家「こんな時間だし、顔なんかよく見えないでしょ。それよりどこで情報収集すればいい?」

老人「もう夜も遅い、明日夜が明けてからという手もあるぞい」

女武道家「んーとりあえず情報収集の基本は酒場って相場が……あっ」

女僧侶「あれ」

魔法使い「あ、女僧侶さん、こんばんは」

老人「ふぉ? お知り合いか」

女僧侶「何? なんなんこのお爺ちゃん、てゆうか、あんたらこんな時間に何しとん?」

女武道家「それはこっちの台詞よ。聖職者がこんな時間にウロチョロ夜遊びしてていいの?」

女僧侶「アホ。ウチは今仕事ちゅうや、例の悪魔騒ぎでな」

魔法使い「女僧侶さんも悪魔憑きの噂を?」

女僧侶「いや、アレは噂ちゃう。この辺りにホンマに悪魔が潜んどる筈やねん」

老人「流石僧侶じゃな、気配で解るのか?」

女僧侶「まあそんなとこや」

魔法使い「実は僕たちも──」

--------
 路地裏に移動

女僧侶「成る程なぁ」

女武道家「で、さっきのそっちの話だけど……ホントに悪魔はいるの?」

女僧侶「正確には”悪魔”かどうかは解らへん。ただ、事件の起った場所の周辺には、何か異様な気配の残り香があったねん。どう見てもあれは邪気の類やで。せやから何かが起っとるのは確実やろな」

魔法使い「核心に近づいたようなそうでもないような……」

女武道家「十分じゃない? 少なくともこれでハッキリしたわ。確実にこの町の南西ブロックを中心に何かが起っている」

女僧侶「せやかて……若くて、寂しい想いをしてる南西ブロック在住の男……こんなん探そ思たらなかなか難しいんちゃう?」

魔法使い「一度広場に戻るか、やっぱり酒場にでも行ってみますか?」

 ──!

老人「む?」

女武道家「どうしたの老人さん?」

老人「しっ──今のは……悲鳴じゃ!!」

--------
数分前

女遊び人「あーあ、疲れちゃったぁ」カツカツ

女遊び人「あの商人さん口ぶりは知的なのに顔と中身はスケベなのよねぇ」

女遊び人「まあでもお給料いいしぃ、しばらくはあそこの接待で稼げるわねぇ」

女遊び人「はぁ、あの子はいい子に寝てるかしらぁ」

ガチャ

女遊び人「ただいまぁ~」ボソボソ

 ユラッ

少年「──」

女遊び人「あらまだ起きてたのぉ? ママのお仕事夜遅くなるから寝てなさいって言ったじゃなぁい」

少年「ママ……」ユラッ

女遊び人「どうしたの少年ちゃん? なんか暗いけど、気分でも悪いぃ?」

少年「……ギ、ギギ」ブルブル…

少年「ギギギギギ──!!」バッ

女遊び人「ひっ!?」

ドガッ

女遊び人「きゃっ!!」ダンッ

少年「ハァァァァァ」

女遊び人「ど、どうしたの!? ママを殴るなんて……少年ちゃん!?」

少年「──」オオオオオオ……

 少年の周囲に、黒い霧が現れた!
 霧がおぞましい魔物の姿をかたどっている!
 
 霧の魔物が現れた!

少年「ガガッ!!」

女遊び人「きゃあっ!」

少年「フゥゥゥ……」

女遊び人「そんな……少年ちゃぁん!」

ヌゥゥ……

魔物「ケタケタケタケタ!!」

 魔物は笑っている!

女遊び人「くっ……少年ちゃん、ママが……ママが助けて、あげるからねぇ……」ヨロッ

 シュウッ

 魔物は少年の体内に戻った!

少年「ガアッッ!!」

女遊び人「っ!!」

シャッ

少年「!?」

女武道家「ふんっ!」

 女武道家は、少年を取り押さえた!

 女武道家が駆けつけた!
 魔法使いが駆けつけた!
 女僧侶が駆けつけた!
 老人が駆けつけた!

老人「大丈夫かのママさん」

女遊び人「あ、あの、貴方達はぁ……」

魔法使い「危機一髪ってところでしたね」

女僧侶「この子や……この子からあの邪気が感じられるわ」

女武道家「いきなりビンゴってわけね。これも日ごろの行いがいいからかな?」

少年「ググ……」バッ

女武道家「鈍いっ!」ガシッ

 ブンッ

 女武道家は少年をぶん投げた!

さるさん食らってた
ゆっくりいきます

少年「グヘッ!」ダンッ

女武道家「はっ!」

女僧侶「待って! このまま攻撃したらあかん!」

女武道家「えっ!?」

少年「ぐ、ぐるる……」

女僧侶「ママさん、あの子はあんたの息子さんやんな?」

女遊び人「え、ええ……」

女僧侶「あの子から何か霧とか影とか……モヤみたいなのは出たりせんかった?」

女遊び人「そういえば出てきましたぁ……なんか怪物みたいな形してましたけどぉ」

魔法使い「じゃあやっぱり」

女僧侶「実体のない思念体タイプの魔物。あの子の中におるかぎりこっちは手出しできひん。どうにかして引き摺りださな……」

女武道家「どうすんのよそれ、実体がなけりゃ殴れないじゃない」

女僧侶「本体さえ出せれば攻撃呪文で何とかなるわ。よし、女武道家ちゃん、あの子取り押さえられる?」

女武道家「まあ体自体は子供の力だしね……」

女僧侶「取り押さえてさえくれたら、ウチが本体引き摺りだすから。後は魔法使いクン、君が呪文で一発ドカンや」

魔法使い「え、ええっ!? 僕ですか?」

女武道家「だ、大丈夫なのそれ……」

女僧侶「あの子を傷つけずに中の魔物だけを倒すなんて不可能やし、それなら引っ張り出して攻撃するしかないわ。ウチが強引に繋ぎとめてる間に誰かが攻撃呪文を使わな、倒されへんで」

魔法使い「わ、わかりました、やってみます」

女武道家「──それしか、手はないみたいね」

老人「方針が固まったのならさっさとしたほうがええ。あの手の魔物はとり付いた生き物の生命力を吸って力を蓄える輩が多い筈じゃ。あまりもたもたしてもおれんぞ」

女武道家「よし、行くわよ!」バッ

少年「ぐっ! ががっ!」

 女武道家は少年を押さえつけた!

女武道家「女僧侶! 押さえた!」

女僧侶「よっしゃ! そのまま……ニフラム!!」

 女僧侶はニフラムを唱えた!

 少年をまばゆい光が包み込んだ!

少年「ぐ……グゴォォォォ」
 シュゥゥゥゥ……

 ぞぶ……ぞぶぞぶぞぶ……

 霧の魔物が姿を現した!

少年「──」ガクッ

女僧侶「今や! 魔法使いクン!」

魔法使い「よ、よーしっ! メラッ!!」

 ポフッ

女僧侶「あ、あれ?」

魔法使い「メラッ! メラッ! く、くそ! ヒャド!」

女武道家「あ、あんたまたぁ!?」

霧の魔物「ぐ、グガアアアアア」バッ

女僧侶「! あかん!」

 フッ

 霧の魔物の姿が消えた!

女遊び人「う、うぐっ!?」

老人「うっ!?」

女遊び人「う、うう……」ブルブル

老人「いかん! 今度はこっちに乗り移りよった!」

女僧侶「も、もう一回や! ニフラム!」

女遊び人「ううう……ぐ、ぐる……!」バッ

 キラーン!

 女僧侶の呪文は光のカベに反射した!
女僧侶「な──ま、マホカンタ!?」

老人「この女子、ただの遊び人ではない! やっかいじゃぞ!」

女遊び人「ぐぅぅぅぅ!!」

 女遊び人はメラミを唱えた! 女遊び人はベギラマを唱えた!

 ドドドドドドド!!

女武道家「うぐっ!!」

魔法使い「わああっ!!」

女僧侶「攻撃呪文の嵐やわ……きゃっ!」

女武道家「でも威力はそれほどでも……わっと!」

魔法使い「きっと魔力の絶対値が低いんですよ。それに操られてる状態ですし……だから出力が全然でない」

女僧侶「きゃあっ!」

ドォン!!

 女僧侶は気を失った!

魔法使い「女僧侶さん!? しっかり! ぐうっ!?」

ドガッ!!

女武道家「くっ……」

老人「お嬢ちゃん、どうにかして拳聖の力を使えんのか?」

女武道家「えっ!?」

老人「拳聖の拳にはその名の通り聖なる力が宿ると聞いたことがあるぞ。拳聖の力を使えれば、あの女子の中の魔物にだけダメージを与えることも可能ではないか?」

女武道家「──できると思う。でも、この腕輪で私の力は半分近く抑えられているし、正式な拳聖の称号はまだ認められていないから……かなり難しいわね」

老人「じゃが他に手はない、魔力が切れてしまうと、女子の中の魔物は今度は生命力を吸いにかかるじゃろう。一刻も早く打開せんとまた犠牲者が出てしまうかもしれん──うぐっ!」

ドンッ!!

女武道家「──」

魔法使い「くそ……僕が……僕がさっきちゃんと呪文を成功させていれば……!」

女武道家「魔法使い君、あたしが必ずあの人から魔物を引きずり出すから、今度こそ呪文を成功させなさい」

魔法使い「え? あ、えっと……」

女武道家「──返事しろ!!」

魔法使い「は、はい! 必ず!!」

女武道家「はぁぁぁっ!!」

 女武道家は精神を統一し、大きく息を吸った!!

女遊び人「ぐる、ぐるる……」

 女遊び人はイオを唱えた! しかし魔力が足りなかった!

老人「! いかん、魔力が切れた! こうなったら魔物が生命力を吸い出してしまうぞ!」

魔法使い「女武道家さん!」

女武道家「──呪文が止まって好都合よ」

少年「う、う~ん……」モゾモゾ

老人「おお、少年! 気付いたかの」

少年「ぼ、僕一体……あっ、ま、ママッ!!」

女遊び人「ぐ、ぐげげげげ!!」

 女遊び人は女武道家に飛び掛った!!

老人「大丈夫、お前さんの母親は大丈夫じゃ」

女武道家「──! はーーーっ!!」

 ドガァッ!

 女武道家は聖なる力を篭め、真っ直ぐ相手を突いた!!

女遊び人「がほぉっ!!」

 ぞ……ぞぶぅぅっ!!

霧の魔物「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」ジタバタ

魔法使い「い、今だ! ギラーーーー!!」

 プスン

魔法使い「あ、ああ……」

女武道家「ああっ! もうっ!!」

老人「し、失敗じゃ!」

霧の魔物「ぎゃはぁぁぁぁぁっ!!」バッ

 霧の魔物は少年に襲い掛かった!

少年「う、うわあああっ!!!」

魔法使い「あ、危ないっ!!」


女僧侶「バギマ!!!」

 女僧侶はバギマを唱えた!!

 ゴォォォォォッ!!

霧の魔物「ぐ、グヘェェェェェ!!」

 シュゥゥゥ

 霧の魔物を やっつけた!

女武道家「女僧侶!」

女僧侶「あたた……なんとかなったみたいやな……」

--------
少年「ママァ!!」ギュッ

女遊び人「本当にどうもありがとうございましたぁ」ペコッ

女武道家「全くこんなやっかいな事になるなんて思わなかったなぁ」

女僧侶「ま、みんな怪我で済んだんやからよかったやん」

老人「しかし家の中は滅茶苦茶じゃの」

女僧侶「ああ 今回はウチが正式に討伐の手続きしとるし、中央教会から保証金出るから大丈夫やで」

魔法使い「……」グス

女武道家「──何よまだベソかいてんの?」

魔法使い「僕がもっとしっかりしていれば……あそこで呪文を成功させていれば……」

女武道家「あのねぇ、あんたはあんたなりに頑張ったじゃない。そりゃ努力は実らなかったけど、だからっていつまでもしょげてんじゃないの。後悔してるんなら反省だけしっかりして、その分もっと修行しなおしなさい」

魔法使い「あの……怒ってないんですか? 女武道家さん」

女武道家「何? 怒って欲しいの? じゃあ──」ボカッ

魔法使い「あでっ!!」

女武道家「はいお仕置き終了」

魔法使い「い、いたた……はは」

老人「しかし悪魔憑き事件を一晩で解決してしまうとは。偶然が重なったとはいえなかなかようやるお嬢ちゃん達じゃ」

女遊び人「でもなんでウチの子にそんな魔物がとり付いちゃったんでしょうかぁ」

老人「きっと夜に母親がいなかった事がさびしかったんじゃろう。そういった感情にあの魔物は引かれておったようでな」

女僧侶「よしよし、家に一人で寂しかったんやなぁ。ひどい目にあってもうて……」ナデナデ

また規制くらった
眠くはないんだけど明日でもいいですか

とりあえずキリのいいとこまで

少年「……」ジー

女僧侶「ん? どしたん?」

少年「ねえ──もっと優しくできないの?」

女僧侶「は?」

少年「こんな小さくて可愛い子がひどい目にあってんだよ? それならさぁ、聖職者のお姉さんとしてもっとこうおっぱいや太ももの癒しがあって然るべきじゃない?」

女僧侶「──な、なんやこの子」

少年「僧侶のねーちゃんが駄目ならさぁ、そっちの武道家のねーちゃんのお尻でもいいからさぁ」

女武道家「こ、このガキ……」

女遊び人「ご、ごめんなさいねぇ、この子変なところが、蒸発したパパに似ちゃったみたいでぇ……」

少年「ママーっ」ギュッ
 ムニュムニュ

少年「うへへ……」

女僧侶「は、母親のムネに顔埋めて喜んどる──」

女武道家(このクソガキの顔……数時間前にも同類の顔を見た気がする……)プルプル

老人「ぶへっくしょい!」

女僧侶「とりあえず一件落着という事で」

女武道家「あとカウント一つ……残り魔物も100体を切ったし、クリアも間近ね」

老人「さて、ワシもそろそろ帰るかのう。オイボレに夜の寒空はキツいわい」

魔法使い「あの、老人さん……お話があるんですが」

老人「ん? ワシか?」

魔法使い「もしかして老人さんは、あのカマイタチじゃないですか?」

女武道家「カマイタチ?」

老人「──ふぉふぉふぉ、血気の勇に駆られた若い頃はそんな肩書きを名乗っておったの」

魔法使い「……盗んで欲しいものが、あるんです」

老人「むう?」

女武道家「あ、あんたまさか」


規制が煩わしいので続きはまた明日の夜に
残ってたらここで続き書く

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