千早「愛しているよ、千早」(106)
千早「え……」
千早「愛してる」
千早「ぷ、プロデューサー……もう、またそんな冗談を言って」
千早「冗談なんかじゃないさ」
千早「……ほ、本当ですか? 嘘……じゃなくて……」
千早「ああ……」
千早「……少し、考える時間をください。急にそんなことを言われても、私……」
千早「……わかった。それじゃあ……また明日な」
千早「……はい」
春香(天海春香です)
春香(とんでもない現場に出くわしてしまいました)
真「え……」
俺「愛してる」
真「ぷ、プロデューサー……もう、またそんな冗談を言って」
俺「冗談なんかじゃないさ」
俺「……ほ、本当ですか? 嘘……じゃなくて……」
俺「ああ……」
俺「……少し、考える時間をください。急にそんなことを言われても、僕……」
俺「……わかった。それじゃあ……また明日な」
俺「……はい」
真かわいいいいいいいいいいいいいいい
春香(面白いから、もう少し様子を見よう……)
千早「はぁ……」
千早「はいさーい! って、あれ?」
千早「ああ、我那覇さん……」
春香(あ、響ちゃんが登場したみたい)
千早「どうしたんだ、千早……なんか元気ないぞ」
千早「……そう見える?」
千早「うんだぞ」
千早「実は……」
千早「ええ!? ぷ、プロデューサーが!? それはビックリだぞ」
春香(ちっがあああああうっ!!!)
春香(響ちゃんのこと普段どんな目で見てるの!? うんだぞって何よ!?
響ちゃんはそんなに語尾にだぞだぞ付けないよ千早ちゃん!!!)
春香(──って、言いたいけど……! こ、ここは我慢我慢……)
千早「うー……自分、あんまりそういうのよくわかんないけど……」
千早「……そうよね。ごめんなさい、急にこんな話をして」
千早「でっ、でもでも! 千早とプロデューサー、すっごくお似合いだって思うぞ!」
千早「え……そ、そう?」
千早「うんだぞ!」
千早「……」
千早「だから、自分……」
千早「……! が、我那覇さん……目が……」
千早「えっ、あ、あれ? なんだろ……急に、涙がこぼれて……」
千早「我那覇さん……もしかして、あなた……」
千早「ご、ごめんだぞ! えへへ、なんでだろーね、変なのっ!」ゴシゴシ
千早「……」
春香(なんかドラマチックになってきました)
千早「……我那覇さん、正直に話して」
千早「え……? 正直にって、なんのことだぞ?」
千早「あなた、本当は……プロデューサーのこと──
千早「うっうー!(裏声)」
春香「ブフォ────ッ!!」
千早「……? 何かしら……今な変な音」キョロキョロ
春香(千早ちゃんが出した音の方がよっぽど変だよ!!)
春香(うわぁぁ……今の録音しとけばよかった……!)
千早「……まぁいいわ。続けましょう」
千早「た、高槻さん!?」
千早「はーい!(裏声)」
春香(録音開始、っと)ピッ
千早「や、やよい……いつからここにいたんだぞ?」
千早「えっへへー、ついさっきお仕事が終わって帰ってきたんですっ!(裏声)」
千早「……そう」
千早「あれ? でも、あの……、千早さん、響さん……(裏声)」
千早「……どうしたの?」
千早「あぅ……なんだか、元気がないかなーってゲホゴホッ」
春香(あーあー、無理するから)
千早「……ごほん。えー……そ、そんなことないわよ、高槻さん」
千早「ホントですか?(裏声)」
千早「ええ……」
千早「そ、そうだぞ! まさかプロデューサーが千早にこ、告白したなんて、そんなことないんだぞ!」
千早「ええええっ!? ぷ、プロデューサーが!?」
春香(……フフッ。響ちゃんってば、トラブルメーカーなんだから)
千早「が、我那覇さん!?」
千早「え? ……うわあああっ! じ、自分、もしかして今、とんでもないこと言っちゃった!?」
千早「こ、コクハク……プロデューサーが……千早さんに……」ポー
千早「ち、違うのよ高槻さん……高槻さんにはまだこういう話は早いわ」
千早「……千早さんっ!」
千早「え?」
千早「私、あの、ちょっと恥ずかしいけど……こーいう話っ、だいじょうぶですっ!!」カァァ
千早「高槻さん……」
千早「だから、あの! ヒミツにされるのは、カナしいかなーって……」
千早「……!」ハッ
千早「やよい……。……ねえ、千早」
千早「……そう、ね……」
春香(次は誰が出てくるんだろうな)
千早「……私が間違っていたわ。そうね、こういう話をするのに、遅い早いなんて関係ない」
千早「だって(裏声)」
千早「自分達みんな」
千早「仲間だもんげ!」
千早「ウフフ……ウフフフ……」
春香(うわぁ)
春香(ひとりでこれやってるのを見たの、生まれて初めてだよ……)
春香(こう見ると、なんだか……きっついなぁ)
千早「男の人が、大好きです!(裏声)」
春香(やめて千早ちゃん! その言い間違いせいで、雪歩、三週間落ち込んでたんだから!)
───
──
─
春香(あ、なんか場面転換したみたい)
千早「我那覇さんも、高槻さんも……応援してくれるって言ってくれたわ。
でも……本当に、いいのかしら……」
千早「あら~? まぁ、千早ちゃんじゃない!」プルンッ
春香(……!?)
千早「あ、あずささん……」
千早「うふふっ、こんばんは。奇遇ねぇ、帰り道で会うなんて……」プルルンッ
春香(こ、このプルンって音はなに?)
春香(どこから聞こえているの……!!?)
春香(もう少しよく聞いてみよう……)
千早「あずささん、仕事帰りですか?」
千早「ええ。うふふっ、今日も大変だったのよ~。
亜美ちゃんと伊織ちゃんがまたケンカしちゃって……」ドタプ-ン
春香(……)
千早「け、ケンカ?」
千早「そうなのよ~。なんでも……プルン」
春香(……!)
千早「伊織ちゃんが大切に取っておいたケーキがいつの間にか無くなってて……ぷるん、
それでね、伊織ちゃんが『亜美が食べたんでしょ!』ってなっちゃったのよ~」
千早「そうだったんですか……ぷる……あ、今は私の番だから違うわね」
千早「うふふっ、本当は、私が食べたのにね~」プルンッ
春香(あわわわわわわ……)
春香(千早ちゃんがあずささんに対してどんなイメージを持っているかはともかくそんなことは問題にならないくらいヤバイよ)
春香(ち、千早ちゃん……自分の口で……)
千早「ふふっ、ケーキ、美味しかったですか?」
千早「ええ、とっても……ぷる……くっ!」
春香(自分で言ってとても傷ついている……)
春香(千早ちゃん、頑張って……!)
千早「……ところで、千早ちゃん」プルルン
千早「え……?」
千早「……ふふっ。こうして会ったのも、何かの縁ですし……提案があるんだけど」
千早「提案?」
千早「ええ。久しぶりに、いっしょに、銭湯にでもいかない?」
千早「銭湯……ですか?」
春香(なぜ人は自ら修羅の道を行くのか)
───
──
─
千早「カポーン」
春香(銭湯に着いたみたい。ふふ、千早ちゃんったら、名演出家なんだから)
千早「チャポン」
千早「……ふぅ~……生き返るわ~」
千早「……あずささん、なんだか、お年寄りみたいですよ」
千早「えぇっ!? うう、私ったら、だめね……ついつい、こんな言葉が出ちゃって」
千早「……でも」
千早「え?」
千早「確かに、あたたかくて……とても気持ちいいです……。悩みなんて、吹き飛んでしまうくらい……」
千早「……千早ちゃん……」
春香(いいな~。私も銭湯に入りたくなってきちゃった)
千早「……ねぇ、千早ちゃん」
千早「どうしたんですか?」
春香(うちの近くにあった銭湯、まだ営業してるのかな……)
千早「久しぶりね……、こうやってのんびりするのも」プカプカ
千早「……そうですね。最近はみんな、忙しかったですから」
春香(あのプカプカっていうのはきっと、あずささんのデカメロンがお湯の上に浮いてる音なんだよね)
春香(……あーあ。私も熱ーいお風呂に入って気持ちをさっぱりさせて、コーヒー牛乳飲んでぷっはーってやりたいなぁ)
春香(最後に銭湯に入ったのなんて、いつだったろ……)
千早「……うふふっ。千早ちゃん、久しぶりついでに……ナイショの話、しましょうか」
千早「ナイショの話?」
千早「ええ。……恋の悩み、抱えてるんでしょ?」
千早「え……!?」
春香(……!? あずささん、どうしてそれを……!)
千早「……あずささん……どうして……」
千早「ふふ、見ればわかるわよ。だって、千早ちゃんと私の仲じゃない」
千早「……」ブクブクブク
千早「(──本当に……あずささんは、いつだってそうね……)」
春香(……!? こ、これは……)
千早「(のんびりとしているように見えて……意外なところで鋭くて……)」
春香(こ、心の声か……!! 口に出してるから、私には丸聞こえだよ千早ちゃん……!!)
千早「(……以前、一緒に暮らしていた頃も、
私の気が付かないところで、いつだって世話を焼いてくれていたのよね)」
春香(へ? 千早ちゃんとあずささん、一緒に暮らしてたの? それともそれも妄想?)
千早「(……普段は、照れくさくて言えないけれど……
私にとって、あずささんは……本当のお姉さんのような、大切な人……)」
春香(……ま、いっか)
千早「……あずささん。実は、私──」
春香(……)
───
──
─
千早「……そう。プロデューサーさんが……」
千早「……」
千早「……うふふっ。それで、どう答えたらいいか、迷っているのね?」
千早「……はい」
春香(……そりゃそうだよ、ね)
春香(私だって、急にこんなことになったら……きっと、千早ちゃんみたいに、悩んじゃうと思う)
春香(私が……もし……)
春香「……!」ハッ
春香(ちち、ちがいますよ? わ、私は別に、プロデューサーさんにコクハクされるなんて想像、
というか私は別にプロデューサーさんを意識したことなんてありませんですしおすし)
千早「千早ちゃんは、どうして悩んでいるの?」
千早「だ、だって……」
千早「……プロデューサーさんのこと、好きなんでしょう?」
千早「……!」
春香(……この表情……千早ちゃん、やっぱりプロデューサーさんのこと……
ていうかこの小芝居をしてる時点でわかりきってるんだけど)
春香(……千早ちゃん……)
千早「……はい」
千早「それなら……、千早ちゃんの思うとおりにやれば、それが一番だって、私は思うわ」
千早「…………」
千早「……ふふっ。──さんの、運命の人は……、千早ちゃんだったのね……」
千早「え……?」
千早「あ、う、ううん! なんでもないわ、なんでも……私ったら、何を言っているのかしら~……」
春香(千早ちゃん、こういうドロドロとした展開が好きなのかな)
───
──
─
千早「……それじゃあ、あずささん、おやすみなさい」
千早「ええ。……千早ちゃん、がんばってね」
千早「……はい」
千早「(……皆、私のことを応援してくれている)」
千早「(でも、私は……どうしたら……)」
春香(……それにしても、千早ちゃん、なんでそんなに悩んでるのかな。妄想なのに……)
千早「ピピピピ」
千早「……? 春香から、メール……」
春香(へっ? わ、私!? ついにわた春香さんの登場!? わっほぉい!!)
春香(どんな役割なのかな~)
春香(当然、親友ポジションだよね。千年経ってもはるちはだもん)
春香(きっと今から千早ちゃんが私に相談して、それから私がナイスアドバイスをして、それで……)
千早「ピッ」
千早「……! はる、か……」
春香(それでそれで……)
千早「……千早ちゃんへ。ねぇ聞いて聞いて! 今日ね、プロデューサーさんにクッキー作っていったんだけど」
春香(えっ)
千早「プロデューサーさんったら、『春香は良いお嫁さんになるな』なーんて言ってくれたんだ!
えへへ……これも千早ちゃんのアドバイスのおかげだね! ありがとう、千早ちゃん!」
春香(私の知ってるはるちはと違う!!!!!!)
春香(千早ちゃんがこんなに悩んでるのは、私のせいかぁぁぁ……!!!)
春香(ちょっとは自重しなさいよっ、私!)
春香(この妄想のメインヒロインは千早ちゃんなのよ!)
千早「……千早ちゃんのおかげだよ。千早ちゃんが、背中を押してくれたから……」
千早「……春香……」
千早「あの、それでね……」モジモジ
千早「……ふふっ。どうしたのよ、急にモジモジして」
春香(いつの間にか、メールじゃなくて、普通に会話してる感じになってる。
妄想ってすごいな、なんでもできちゃうんだ。フリーダムすぎるよ)
千早「……私、明日……」
千早「……?」
千早「プロデューサーさんに、告白、しようかなー……なんて思ってるんだ。えへへ……」
千早「ええっ!?」
春香(バカヤロー!! 死ぬつもりか!!!)
千早「春香……本気?」
千早「……うん」
千早「……っ、そ、そう……」
千早「……千早ちゃん? どうしたの……?」
春香(そのへんはさすが私ね。千早ちゃんの異変に気づいたみたい)
千早「……やめといたほうが、いいんじゃないかしら」
千早「え……」
千早「だ、だって、私達、アイドルじゃない。アイドルに恋愛なんて、ご法度だし……」
千早「(……どの口が、そんなことを言っているのかしら)」
春香(ほんとだよ……)
千早「(春香……私は一体、どうしたら……)」
春香(それは私が聞きたいよ……)
千早「ど、どうしたの千早ちゃん。いつもだったら、そんなこと……」
千早「……」
千早「も、もしかして……プロデューサーさんと、何かあった?」
千早「……!!」
千早「……そう、なんだね?」
千早「は、春香っ! ち、ちがうのよ……」
千早「聞きたくないっ!」ピシッ
千早「っ! 春香……」
千早「う、うぅ……聞きたくないよぉ……!」
春香(聞きたくないのはこっちだよ……)
春香(とは思いつつも、聞いちゃうんだけど……)
春香(……ていうか、千早ちゃんの中の私、察しが良すぎるんじゃないかな)
春香「……!」ハッ
春香(ちち、違いますよ? 千早ちゃんの中の私って、べつにそんな、いやらしい意味なんかじゃないんですから)
千早「う、うぅ……ず、ずるいよ千早ちゃん……いつの間に、そんな……」
千早「……ズキッ」
春香(千早ちゃん、心が痛んでいるみたい……)
千早「……春香、私は──
千早「……なーんてね」
千早「え……?」
春香(え……?)
千早「えへへ……ほんとは私、わかってたんだ。私の相談に乗ってくれてる千早ちゃんが、本当は……って」
春香(……そうだったんだ、私……)
千早「……だから、本当にずるいのは、千早ちゃんじゃなくて、私のほうなの」
千早「春香が……? ど、どうしてそんな」
千早「だって……千早ちゃんの思いに気づいていながら、
こうやって相談することで……その思いに、見て見ぬフリを……させちゃったから」
千早「……本当にごめんね、千早ちゃん」
千早「……」
千早「……わ、私、は……ポロポロ」
春香(ダメよ、千早ちゃんの中の私ったら……泣いちゃだめ)
春香(ここまで言ったんだから、ちゃんと最後まで、千早ちゃんのこと……応援してあげなきゃ)
千早「私、は……千早ちゃんのことも、プロデューサーさんのことも……! 大好きだから……!
だから……幸せに、なってね……!」
千早「春香……」
千早「えへへ……それじゃ、ばいばいっ! また……また明日ねっ!」
千早「(……走り去っていく春香を、私は止めることができなかった)」
春香(……それでいいんだよ、千早ちゃん。
今の私には、きっと……ひとりでいる時間が、必要なんだから……)
春香(──じゃないよぉぉぉぉぉぉ!!!)
春香(うわっ、うわわわ……わ、私ったら、いつの間にかこんなに感情移入しちゃって……うわぁ、なんか恥ずかしい……!!)カァァ
───
──
─
春香(あ、また場面が……)
千早「……──はや、千早?」ユサユサ
千早「……! あ、あなた……」
春香(え? あなた?)
千早「どうしたんだ? 随分うなされてたけど……」
千早「……いえ。少し、昔の夢を……見てしまって」
千早「……昔の夢?」
千早「……はい。プロデューサー……じゃなくて、あなたと、結婚する前の……夢」
春香(おおおおおおおお!?)
春香(気が付いたらゴールインしてたよ……)
千早「……あなた。私は今でも、考えてしまうんです」
千早「どんなことを?」
千早「私達の間にある、この幸せは……本当に、たくさんの人の思いの上に、立っているんだって」
千早「……ああ、そうだな」
春香(もっとこう、説明しなきゃいけない場面は色々とあったんじゃないかな……)
春香(そのあと私はどうなったの? 響ちゃんは?)
千早「……あなた」
千早「ん?」
千早「あの……──す、して、くれませんか?」
千早「な、なんだ?」
千早「だから、その……き、きき……、きす、を……」カァァ
春香(あ、たぶんこれは素で恥ずかしがってる顔だ。可愛いなぁ千早ちゃんでへへ)
千早「……ああ。ほら、千早、こっちにおいで」
千早「……はい」
春香(き、キスシーンだ……!)
千早「……んー……」
春香(うひゃあ……こ、これは……)
千早「……ちゅ……、ちゅっ」
春香(これは恥ずかしい!! これはさすがに恥ずかしいよ千早ちゃん!!)
千早「……」
千早「……だ、だめっ! これ以上は無理無理っ!」ブンブン
千早「こ、このシーンは別に必要ないわね、うん……」
千早「ちょ、ちょっと落ち着きましょう……すー……はー……」
春香(そもそも何を想定して必要あるなしを判断してるんだろ)
───
──
─
千早「……」
千早「……zzz……」
千早「あなた……あなたには、まだ言ってなかったけれど……
実は私、伝えないといけないことがあるんです」
春香(ん? なんだろ……)
千早「……これを伝えたら、あなたは……どんな顔、するのかしら」
千早「むにゃむにゃ……」
千早「……ふふっ。きっと……喜んでくれますよね」サスサス
春香(サスサス? おなかを撫でて……
って、ま、まさかこれは……!)
千早「……もう、六週目、ですって」
春香(……!!!)
春香(あわわわわわ……)
春香(キスひとつであんなに恥ずかしがってた千早ちゃんが……ついに、妊娠しちゃった……!)
千早「……どんな名前がいいかしらね。ふふっ……」
春香(……でも。今の千早ちゃん……妄想とはいえ、とっても幸せそうな顔してる……)
千早「そうね……男の子だったら、あなたの名前から一文字もらって……それで……」
春香(……)
千早「女の子だったら……やっぱり……」
春香(……ふふっ。おめでとう、千早ちゃん……!)
春香(私も、とっても嬉しいよ──!)
千早「春香、かしら」
春香「ダメぇぇぇぇぇええええええ!!!」
千早「えっ」
春香「だめっ、ダメよ! 千早ちゃん!」
千早「……」
春香「そ、そりゃあ私の名前をつけてくれるのは嬉しいけど、さすがになんか……」
春香「──すっごく重い!!! 千早ちゃんの思いが重い!!!!」
千早「は、る……え……!!?」
春香「もしかして私、死んでる!? なんとなくだけど、愛憎の末に、私、死んじゃってる気がするんだけど!!」
千早「いえ……死んでなんかいないわ……
ただ春香は、ある日を境に行方不明になってて……そしてこのあと、迷子になっていた私の娘の春香に出会って」
『……あなたのお名前は?』
『はるかです!』
『あ……ふふっ、偶然だね。私も、春香っていうんだ……』
『そーなの?』
『うん……それに、あなたは……昔、大好きだった人たちに……似てるわね……』
千早「って……」
春香「やっぱり私に救いは無いんじゃない!!!」
春香「うぅ……ひ、ひどいよ千早ちゃん……」
千早「……というか、あの……」
春香「もっとこうさ、皆が笑顔になるような、そんなハッピーエンドがいいって思うな」
千早「春香……」
春香「だいたい、ドロドロしすぎだよ。響ちゃんといいあずささんといい……私ならきっと」
千早「……春香っ!」
春香「へっ?」
千早「あ、あの……ひとつ、聞いてもいいかしら……正直に言って、あまり聞きたくはないんだけど」
春香「な、なぁに?」
千早「………………いつから、ここにいたの……?」
春香「……あっ」
千早「……」
春香「……えへへ……プロデューサーさんが千早ちゃんに告白したあたりから」ポリポリ
千早「最初からじゃない……!!」
千早「優……今、会いに行きます」
春香「お、落ち着いて」
千早「これが落ち着いていられる!? も、もう……もう私のことは放っておいて!」
春香「ほっとかない! ほっとけないよ!」
千早「……!」
春香「……千早ちゃん、あのね。ひとつだけ、言いたいことがあったんだ」
千早「……なに……?」
春香「千早ちゃんが思っているほど……きっと、私は……良い子じゃないよ」
千早「え?」
春香「千早ちゃんの想像の中の私は、えへへ、途中で泣いちゃってたけど……
でも、最後には、千早ちゃんのことを応援してた」
春香「だけど……現実の私は、たぶん……そんなこと、出来ないって、思う」
千早「春香……」
春香「────きっと、私は……」
春香(……きっと私は──)
『あはは! 春香、よくやったな!』
春香(恋をしたら、その人のことしか、考えられなくなっちゃうと思う)
『ああ、そうだな……きっとこの調子でいけば、トップアイドルなんてすぐさ!』
春香(その人が笑ったら、一緒に笑って……その人が悲しんだら、一緒に悲しんで)
『……うん、美味いよ』
『春香は……きっと良いお嫁さんになるな』
春香(……そして────)
春香(……そして)
『……は? それってもしかして……ヤバイ意味じゃないだろうな』
春香(もし、失恋なんてしたら……思いっきり、泣いちゃうと思う……)
春香(そのことだけで、頭がいっぱいになって……誰か他の人のことなんて、考えられないくらいに)
春香(だからね、千早ちゃん……私は──)
千早「あの……」
春香「え?」
千早「今の回想、本当にあったことなの……?」
春香「一切ないけど……」
千早「そう……」
春香「えへへ……私の妄想も、なかなかのものでしょ?
千早ちゃんの妄想なんてね、私のに比べたら、全然大したことないんだから!」
千早「……ふふっ、そうね……そうかもしれないわね……」
ウフフ……
アハハハ……
春香(──こうして、千早ちゃんは少しだけ、元気を取り戻してくれました)
春香(誰かに恋する気持ちは……ときどきこんな風に、暴走しちゃうときもあります)
春香(でも、それは……)
春香「えへへ」ピッ
『うっうー!(裏声)』
千早「……!!?」
春香(それは決して、恥ずかしがるようなことでは、ないんです)
春香(迷いながら、暴走しながら……そうやって、私達は、恋をしていく……)
春香(たったひとつの……世界で一番大切な、初恋を……育てていくんです)
春香「ねぇ、千早ちゃん!」
千早「な、なに……?」
春香「えへへ……頑張ってねっ!」
千早「……ええ。ありがとう、春香……!」
おわり
乙
笑わせてもらったわ。他に何か書いてたら教えてくれ。
おわりです 読んでくれた方ありがとうございました
千早かわいいよ千早
>>99
今月書いたのだと、
P「成長した亜美を肩車したら亜美がおしっこ漏らした」
P「たかね酒?」貴音「はい」の後半のやつ
よろしければ
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