健夜「『白熱! のよりんぴっく』…?」 はやり「負けないぞ☆」 (218)

代行  ID:qnb3iP3U0

[某テレビ局 エントランス]


   ギャーギャー ワーワー


戒能「……はァ」

恒子「あれー? 戒能プロじゃないですか」

戒能「ん……? …あぁ、福与アナですか。グッアフタヌーンです」

恒子「アハハ、こんにちはー。 …なんだか溜息ついてたみたいですけど」

戒能「Oops、見られてましたか。お恥ずかしい限りです」

恒子「イヤイヤー、私も同じようなものですから。…アレですよねー」

戒能「えぇ……」ハァー


健夜「だからー! 私ははやりちゃんとは違うの! 一緒にしないで!」

はやり「はややっ、アラサーは無理しない方が身のためだぞ☆」

健夜「はやりちゃんもアラサーでしょ!」モーッ

 ギャーギャー ワーワー
     ワイワイ  ヤイノヤイノ


恒子「仲が良いんだか悪いんだか、って感じですねー」アハハ

戒能「仲が良いのは結構なんですが、さすがにこんなオープンな場で言い合いはよろしくないですね……」

恒子「…止めた方がいいですかねー?」

戒能「イエス、そうですね。少し手伝ってもらえますか?」

恒子「はいはいっ、すこやんは任せてくださいっ! …すこやんっ、何言い合ってるの!」テケテケー

戒能「ほら、はやりさんもその辺りで……」スタスタ

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

恒子「それで? すこやん、年甲斐もなく何で言い争ってたの? もう40も近いのに……」

健夜「アラサーだよ!! …それ言うのもなんかヤダ……」

戒能「はやりさん。もう大人なんですから、こんな往来の激しい場で口喧嘩は……」

はやり「だって! 健夜ちゃんが悪いんだよ! はやり悪くないもん☆」キャルンッ

戒能「……」


戒能「…アー。小鍛冶プロ、一体何があったのか教えていただけますか?」クルッ

健夜「うん。えっとね……」

はやり「良子ちゃんっ!? 露骨に目を反らさないでっ!!」ハヤヤヤヤッ

 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

――えっとね。ちょうど今から10分前くらいだったかな……

―――はやりが午前のお仕事を終えて「さぁお昼休みだ☆」ってときに、お弁当食べてる健夜ちゃんとばったり鉢合わせしたんだよっ

――それで……


はやり『やっほー、健夜ちゃんっ☆』

健夜『あ、はやりちゃん(モグモグ)。 今(モグ)お仕事(モグ)おわり?(モグ)』モグモグ

はやり『うんっ。……よく食べるねー、健夜ちゃん』マジマジ

健夜『麻雀打つとお腹が(モググッ)すいちゃうから(モグモグ)。 …ふぅっ、ごちそうさま』

はやり『お弁当箱、おっきいねー。はやりならとても食べきれそうにないや』ハヤー


   カチンッ


健夜『……き、今日はたまたま、おかーさんが大きいお弁当にしただけだから……』

はやり『それでもこれは大きすぎるよー☆ これだけあればはやりの一週間分のごはんになりそうだよっ』


   カチチンッ


健夜『……一週間分、は……さすがに言いすぎじゃないかな……?』ヒクヒク

はやり『いや、それくらいあるよー。いいなぁ、健夜ちゃんはー』

健夜『いいって……何が?』

はやり『さぞかし健康的に太れるんだろうなー☆』


   プッチーン

健夜『……でも、はやりちゃんもなんだかんだ言って段々おにく付いてきてるよね』

はやり『…ん? どういうことかな?』ピク

健夜『私知ってるんだよ? はやりちゃんの衣装、ここ数年でサイズ大きくなってきてるでしょ』


   カチン


はやり『……はやや。そんなことないぞ…☆ はやりのウエストは58って、ファンクラブのサイトにも……』

健夜『大嘘だよね』


   カチチンッ


はやり『……なんでそんなこと言えるのかな…?』ピクピク

健夜『全国プロ協会の身体測定で言われてたよね』

はやり『……』

健夜『もうそろそろ70台だよね』


   プチコーン

はやり『……はややー。健夜ちゃん、言っちゃいけないことを言っちゃったね……』ユラァ

健夜『元ははやりちゃんがケンカ売ってきたのが悪いんだよ……』ユラァ

はやり『……』ゴゴゴゴ

健夜『……』ゴゴゴゴ



健夜・はやり『『フンッッッッッッッ!!!』』ガシィィッ

健夜『このお腹! お腹まわりっ!! どう考えてもはやりちゃんのがおにくが付いてるよ!!』モミモミモミモミ

はやり『自分のお腹と比べてみてから言ったらどうかな!! 健夜ちゃんのがずっとにくにくしいよ!』モミモミモミモミ

健夜『二の腕はどうなのさ! こんなにもちもちして!! もちもちしてぇっ!』モチモチモチモチ

はやり『健夜ちゃんのなんてこんなにたゆんたゆんでしょ! ほら! たゆんたゆん!』タユンタユンタユン

健夜『何をーっ!? だったらここなんてどうなの!』プルンプルン

はやり『こっちの方がよっぽどだよ!』ムニュンムニュン


   ギャーギャー    ワーワー


 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

健夜「――ってわけだったの!」

恒子「……あぁ、うん……」ヒキー

はやり「良子ちゃん、ひどいと思わない? 健夜ちゃんったら…!」

戒能「……そう、ですね……」ドンビキー

戒能(というかはやりさん、スリーサイズ偽装してたんですね……もしやと思ってはいましたが……)

恒子「つまり……どっちの方がよりにくにくしいかで争ってたってこと?」

健夜「はやりちゃんの方だよね! ねっ!」

はやり「恒子ちゃん、ここは正直に言ってあげたほうが本人のためだぞ☆」

健夜「何? またケンカ売ってるの?」ピクッ

はやり「はややーっ☆ アラサーおばさんこわーい☆」キャルルンッ

健夜「上等だよー!」ウガーッ

戒能「ストップ! ストップですお二人とも!」


恒子(アラサー二人の争い……なーんか、おもしろい番組になりそうなんだけどなー……)ウムム

恒子(『にく付きの良さで対決』なんて生々しすぎてちょっと放送できないよねー…… …ん?)


野依「つかれた!」プンスコ

みさき「お疲れ様です。ほら、汗まだ残ってますよ」フキフキ

野依「んん……」


恒子「……」

恒子「……こ」

戒能「…? どうしました、福与ア――」



恒子「これだァァァァァーーーーーーーッッッ!!!」

健夜「……へ?」キョトン

はやり「はや……?」キョトン

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[一ヵ月後:都内某高校 グラウンド]

   エー オンエアマデ5ビョウマエ……
   4… … … … …!!


恒子「お前らーッ、テレビの前に集合だーッ! 『白熱! のよりんぴっく』特番の時間だぞーッ!!」

みさき「ちょっと、マイク持っていかないで……! …こほん。司会の村吉です」

恒子「そして特別司会のスーパーアナウンサー、福与です! よろしくね、みさきちっ!」

みさき「……はい、この番組は元々『プロ雀士・野依理沙にさまざまな挑戦をしてもらう』という番組でしたが……」

恒子「みさきち、私の挨拶を見事にスルーっ! これはちょっとつら――」

みさき「ちょっと静かにしててくださいね」ボソッ

恒子「あ、はい……」


みさき「…えー。でしたが、本日の放送は急遽『アラサープロ対決! 小鍛治健夜 対 瑞原はやり』となりました」

恒子「だから今回は野依プロもこっち側ですよー」ヒソヒソ

野依「よろしく!」プンスコ

みさき「実は先日、お二人の間で『どちらの方がより運動オンチなのか』という内容でケンカが起こったそうですね」

野依「みにくい争い!」

恒子「いやー、そうなんですよー。それで『じゃあこの番組で決着をつけよう!』ってことになってー……」

恒子(…ホントはもっとしょうもない内容のケンカだったけど……視聴者にはこっちの方が引かれなくていいよね!)


辻垣内「……突然ウチのグラウンドを借りたい、なんていうから何かと思ったら……」

ダヴァン「これがジャパニーズ・トクバン! 私、シュウロクを見るのは初めテデス!」フンフン

ネリー「お金たくさんもらえたね!」ルンルン


みさき「――では、早速お二人に登場していただきましょう!」

恒子「赤ー! コォーナァー! 37歳ー!」


   27ダヨ!!


恒子「小鍛治ー!! 健夜ー!!!」


   ドォーーーン!!   

   モクモクモクモク......


――『私? 言っておくけど、運動神経はばりばりだからね。』

――『中学生のときは……聞いて驚かないでね。麻雀と一緒になんと! 卓球してたんだから!』

――『ほら、フットワークと素振りもまだまだ現役だよ! ほら、ほらっ(ひゅんっ ひゅんっ)』

――『…え? はやりちゃん?』

――『28でしょ? 私の方が年下なんだよ?』

――『負けるわけないじゃない』

――『負けるわけないじゃない(2カメ)』ドォーン

――『負けるわけないじゃない(3カメ)』ドォーン


――年上には負けられない…!

――反逆のアラサー、小鍛治健夜……いざ! 出陣!!


   ブシュゥゥゥゥッ!!


健夜「何この演出!?」ブルマーン

恒子「小鍛治選手、気合たっぷりのブルマ姿で出陣だー!」

健夜「こーこちゃんが着ろって言ったんじゃない!!」モーッ

野依「きつい!」

みさき「えー。服装はさておき小鍛治選手、堂々の出陣です。…ほら、福与アナ。次、瑞原プロの方を」

恒子「はいはいっ! ……続いてーッ!! 青コーナーッ!! 28歳、現役アイドルーッ!!」

恒子「瑞原ァーッ!! はやりーッ!!」


   ドォーーーン!!


――『はややー。私、アイドルなんだよ? 歌って踊るアイドル……』

――『分かるかな? お仕事で毎日歌って踊って、自然とシェイプアップされてるんだぞ☆』

――『…はや? すこやん?』

――『やだなー☆ あんなのと比べちゃイヤだよっ。だってすこやんって……』

――『ごろごろしてるだけの実家暮らしでしょ?』

――『実家暮らしでしょ?(2カメ)』ドォーン

――『実家暮らしでしょ?(3カメ)』ドォーン

――現役アイドルのプライドにかけて…!

――実家暮らしには負けられない…!!

――百万人のはやり王国民たちの想いを乗せ、瑞原が今……戦う!!


   ブシュゥゥゥゥッ!!


はやり「はややーっ☆ みんな、応援よろしくねーっ!!」ブルマーン

恒子「あーっと!! こちらもブルマ姿で登場ーッ!!」

野依「もっとキツい!!」

みさき「ですが瑞原選手サイドは応援者もいるようですね」


戒能「はやりさーん、ファイトですー。カメラ、ナウプレイングですからねー」


恒子「戒能プロだーッ! ハンディカムで絶賛録画中だーっ!!」

野依「バカップル…!」ムスーッ

みさき「さぁ、いよいよ両者が向かい合います」


はやり「ふーん。逃げずにちゃんと顔出したのは褒めてあげるよ」ハヤー

健夜「逃げる? まさか! はやりちゃんがびーびー泣きべそかくとこなんてそうそう見れないからね」フフンッ

はやり「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

健夜「……」ゴゴゴゴゴゴゴ


健夜・はやり「「……よろしくね(☆)」」ニコォ


恒子「険悪ーッ! 両者、一歩も退く様子を見せません!!」

みさき「それでは、早速第一種目と参りましょうか」

恒子「ちなみに競技種目はこちらのくじびきボックスで決まりまーす!」ジャンッ

野依「第一種目! 決める!」フンスッ

恒子「さァー、野依プロが引いた第一種目はー……?」



恒子「……>>53だァーッ!!」

水上おしくらまんじゅう

恒子「水上おしくらまんじゅうだァーッ!!」

はやり「…水上おしくらまんじゅう?」キョトン

健夜「ただのおしくらまんじゅうじゃなくて?」


みさき「えー、ご存じない方も多いかと思いますのでルール説明です」

みさき「これからお二人には水上に浮かべた浮島の上でおしくらまんじゅうを行ってもらいます」

野依「ぷかぷか!」

みさき「手は使ってはいけません。使っていいのはお互いのおしりのみ」

野依「おしり!」

みさき「お互いにおしりで押し合い、先に相手を落とした方が勝利となります。負けた方は……」

野依「びしょびしょ!!」

みさき「……以上がルールです。要はシンプルな落とし合いですね」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

恒子「というわけでステージ変更だーッ!」

野依「プール!」キャッキャ

みさき「プールの上にステージを浮かべました。ちなみにプールの水は……」

恒子「……つべたいっ! 氷水です!」

野依「じゃあ早速対決!」

恒子「の前に―――エキシビジョンマッチです!」

野依「……?」キョトン

恒子「さ、ほら。野依プロ」

野依「……みさき?」

みさき「……」ニッコリ



みさき「はやくステージに上がってください、野依プロ」

野依「???!!!?!?!??!」プンスプンス

 ・ ・ ・ ・ ・

恒子「赤コーナー! プロ雀士! 野依理沙ーッ!」

野依「みさきぃ……」ウルウル

みさき「…!」ゾクゾクッ

みさき「……えー、野依プロの相手は『おしくらまんじゅう歴20年。カツ丼とおしくらまんじゅうなら私に任せろ』と豪語する藤田プロです」

藤田「まさか麻雀とグルメ番組以外の仕事が来るとはなぁ……しかもおしくらまんじゅうときた」


藤田「…負けませんよ、野依プロ」ニヤ

野依(こわい!!)プンスコカタカタ


恒子「では両者見合ってー……はっけよーい、のこった!!」


   オラァ!!
   !?!?!??!

   バッシャーン

 ・ ・ ・ ・ ・

野依「っくしゅん! ……さ、さむい…!」ガタガタ

みさき「……」ジィーッ

藤田「村吉アナ。…よだれ垂れてます」

みさき「! ……はい。野依プロが案の定瞬殺されたところで、いよいよメインに参りましょう」

恒子「それでは選手入場だァーッ! お前ら、出てこいやーッ!!」


   ドォーン!!


健夜「こーこちゃん! ブルマの次はなんなのこれ!!」スクミズーン

はやり「さすがにこれははやりでも恥ずかしいぞ…☆」スクミズーン


恒子「スク水だーッ! ブルマの次はスク水だァーッ!!」

野依「放送事故! …っくしゅん!」

健夜「もはやコスプレ大会だよ! しかも真冬だよ! 真冬にスク水だよ! 頭おかしいよ!」ガタガタ

恒子「でもブルマでびしょ濡れになっちゃうのはホントに放送事故になりかねないし……」

みさき(まぁ第一種目からいきなり着替える必要がある種目というのは番組構成に問題があるとしか言えませんが……)

はやり「はやや……ちょっと寒いよ……」ガタガタ

健夜「こんな痛々しい衣装、誰が得するの!」

野依「あそこ!」


戒能「はやりさーん。ナイスです、ナイスですよー」パシャッ パシャッパシャッ


みさき「……録画しながら一眼レフで撮影始めましたね」

野依「バカップル……!」ムッスー

恒子「それでは両者、位置についてー!」

健夜「びっしょびしょにして全国ネットで恥かかせてあげるよ、はやりちゃん…!」ニィ

はやり「はややっ! その言葉、そっくりそのまま返してあげるぞっ☆」

恒子「はっけよーい……のこった!!」


健夜「ふんっ!」ギュウッ

はやり「えいっ!」ギュウッ


みさき「両者がっぷり四つ、組み合ったまま動きません。藤田プロ、これをどう見ますか?」

藤田「おしくらまんじゅうは少しでも2人の間に力量差があると一瞬でケリが付く競技です。これはお互いの力が拮抗しているんでしょう」

みさき「なるほど、両者互角と……」

藤田「おしくらまんじゅうの素質がありますよ。どちらのおしりも程良くにくが付いた良いおしりですからね」


健夜(にく……?)ピキ

はやり(にく付き……?)ピキィ

健夜「……」ゴゴゴゴ

はやり「……」ゴゴゴゴ


藤田「…なんか、こっちに殺気向けられてません?」

みさき「そうでしょうか」

藤田「なんだか睨まれてるような……」


健夜「……いい加減ギブアップしたら? はやりちゃん……」グヌヌ

はやり「はやや……健夜ちゃんこそ、もう足腰限界なんじゃない…?」グヌヌ

恒子「両者一歩も退かなーい!! これは好試合だァーっ!」


はやり(ぐぬぬ……このままじゃラチがあかないよ……!)

はやり(……そういえば、さっき藤田プロが……)


―――藤田『おしくらまんじゅうの素質がありますよ。どちらのおしりも程良くにくが付いた―――』


はやり「……!」ピコン

はやり「はやー、もうダメぇーっ」ヨロヨロッ

健夜「!?」ドンッ


   バッシャァーン


恒子「決ぃーまったァーッ!! 勝者は小鍛治選手だァーッ!!」

健夜「あ、あれっ? ちょっと待って、今……」

はやり「あーぁ! 負けちゃったなーっ!! 健夜ちゃんのおしりがおにくたぷたぷのすっごいおしりだったから、はやり負けちゃったー!」

健夜「なっ、何言ってるのはやりちゃん!?」

はやり「でも仕方ないかなーっ! あんなボリューミーなおしりに勝てるわけないもんね! はぁー、残念☆ 残念☆」

健夜「……!」

健夜(や……やられた! 裏を突かれた! まさかワザと負けて自分の方がおにくが付いてないとアピールしてくるなんて…!)


はやり「……」ニヤッ

健夜「…!!」グヌヌヌ

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

恒子「さぁ、一戦目の水上おしくらまんじゅうを小鍛治選手が制したところで第二種目に移りましょう!」

みさき「お二人にはもう一度ブルマ姿に着替えてもらいました」

健夜「こんな恰好でもスク水よりはマシに思えるから不思議だよ……」

戒能「はやりさん、タオル準備しておきました」スッ

はやり「ありがとね、良子ちゃん☆」

戒能「いえ。タオル、使い終わったら回収しますね」


みさき「それでは第二種目の抽選です。野依プロ、どうぞ」

野依「任せて!」フンスッ


野依「……これ!」ジャンッ

恒子「第二種目は>>85だァーッ!!」

ローションビーチフラッグ

恒子「第二種目はローションビーチフラッグだァーッ!!」

健夜「ローションビーチフラッグって……あれ? ローション溜まりの中でビーチフラッグをするっていう……」

はやり「はやり、そんな芸人みたいなことしたくないな……」

戒能(水上おしくらまんじゅうも十分芸人ライクでしたが……黙っておきましょう)

みさき「恨むなら野依プロのくじ運を恨んでくださいね」

野依「わたしっ!?」ビクッ

恒子「それではステージ移動の時間だァーッ!!」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

恒子「辺り一面ぬるぬる! これぞまさにローション地獄!!」

野依「あったかい! 人肌!」ツンツン

健夜「うわ、ほんとに全部ローションなんだ……」

はやり「ぬるぬるして気持ち悪いよ……」

野依「二人とも、はやく準備!」

みさき「? 二人の出番はまだですよ、野依プロ」

野依「……えっ」

恒子「どーんっ!!」ドンッ

野依「あうっ?!」コテン


恒子「みんなお楽しみ、エキシビジョンマッチの時間だーッ!!」

野依「……!!」プンスコベトベト

恒子「野依プロの相手をしていただくのはこの方です! 知る人ぞ知る名監督!」

トシ「まだまだ若い子には負けないよ!」

恒子「熊倉トシだーっ! サラシにふんどし、伝統的なスタイルでの登場です!」

トシ「ローション地獄といえばやっぱりこれだからねぇ」

野依「ひどい!!」プンスコ

トシ「…おや? アンタ、そんな恰好でローション地獄に挑もうってのかい?」

野依「…!」

トシ「ちょっと心構えがなってないねぇ……そうだ、ちょうどスペアのサラシとふんどしがあったね……」

野依「いや……だ、ダメ!」フルフル

トシ「ほら、ちょっと脱ぎな!」


   ダメ!
   イイカラジットシテナ! ホラッ!!
   アッ! …アッー


みさき「……」ドクドクドクドク

藤田「……村吉アナ。鼻血出てますよ……」

着替えてるとこも放送されてるんですか!?

 ・ ・ ・ ・ ・

野依「ぅぅぅぅううううう……」

トシ「なかなかサマになってるじゃないか!」

みさき「……」キャバァーン! キャバァーン!

藤田「あの、実況卓の下からケータイで盗撮はちょっと……」


恒子「それでは位置について!」

野依(こうなったらさっさとゴールして早く着替える!)

トシ「……」

恒子「よーい……」

トシ「『早くゴールして着替えたい』なんて思ってるんでしょうけど……」ボソッ

野依「!?」

恒子「どんっ!」



トシ「ごめんねぇ」ドンッ

野依「ひゃっ!?」ベチャッ

>>101

恒子「さすがにモザイクです!」

みさき「正真正銘、本物の放送事故になってしまいますからね」

野依「こっち違う! ゴールあっち!」ヌルヌルベトー

トシ「あら、知らないのかい? ローション地獄は……」

トシ「『視聴者へのサービスのため』にあるんだよ」ニヤァ

野依「そ、そんなの知らない!!」プンスコ

トシ「まだまだローションいくわよォ……ふふ、昔の血が疼いてきちゃうわねぇ!」

野依「だめ! 近寄らないで! だめ!」ヌルヌルアワアワ


   アァーッ!!

 ・ ・ ・ ・ ・

野依「お嫁いけない……」シクシク

トシ「楽しかったわぁ! 年甲斐もなく、ついハッスルしちゃったわよぉ」ツヤツヤ

恒子「それではメインマッチに移りましょう! 小鍛治選手、瑞原選手、どうぞローション地獄の中へ!」

健夜「うわ……べとべとだよ……」ベトォ

はやり「今にも転んじゃいそうだぞ……☆」


トシ「あら。あの子たち……」

みさき「やっぱりサラシとふんどしでないとダメですか?」

トシ「アリよ、大アリよ! 体操服とローションも鉄板中の鉄板よぉ!」

みさき「……そうですか」


恒子「では位置について!」

はやり「準備オッケーだよ☆」

健夜「ま、待って……ぬるぬるして止まれなくって……」

はやり「やっぱり健夜ちゃんの方が運動オ――」

健夜「あーっ! あしがーっ、すべったー!」ケリッ

はやり「はやっ!?」


   ドカッ  ビチャァッ

はやり「……」ヌルヌルベトー

健夜「ごめーん、足が滑っちゃったよ! だけど勘違いしないでね、悪気があったわけじゃないからね!」


野依「露骨!」

トシ「定石通りのプレーねぇ。試合前からアドバンテージを奪いに行く常套手段だわ」

みさき「なるほど……」


恒子「もう、気を付けてね! それじゃ、位置について……」

はやり「……」

健夜「……」

恒子「どんっ!」


はやり「はやっ!!」ドンッ

健夜「うわぁっ?!」


ベチャチャッ

健夜「……」ベトベトー

はやり「さっきのお返しだぞ☆ それじゃお先にー☆」スイスーイ

健夜「……」


健夜「…ふんっ!」グイッ

はやり「はやややっ!?」ベチョオッ

健夜「先には行かせないからね…!」グイッ

はやり「あ、足っ! 離してっ、足っ!!」ジタバタヌルヌル


恒子「文字通り足の引っ張り合いだーッ!」

野依「どろぬま!」プンスコ

トシ「面白い展開になってきたわねぇ。だけどこのままずっと足の引っ張り合いが続くと視聴者が飽きちゃうのが悩みどころね」

みさき(語り始めた…!)

健夜「はやりちゃんなんかこうして、こうして……!」グイッ グイッ

はやり「痛い痛い痛いっ! な、なにしてるのかな健夜ちゃんっ! 痛いって!」ヌルンヌルン

健夜「こうだーッ!!」バァーン!!

はやり「いたたたたたっ!!」ヌルビチョッ

恒子「四の字固めだーッ!! 小鍛治選手、まさかのプロレス技だーッ!!」

トシ「なるほど、ゴールより前に相手選手を徹底的に潰すつもりね……あの子、なかなか見どころがあるわよぉ」

みさき「…これ、ビーチフラッグでしたよね?」


はやり「もうだめぇ…!」バタンキュー

健夜「よしっ、今のうちに…!」ヌルンヌルン


   ヌルンッ   ヌルッ


健夜「あとすこし…!」


   スコヤー


健夜「……ん?」クルッ

健ママ「健夜ー! 頑張れー! 後ちょっとよー!」ヤンヤヤンヤ

健夜「おかーさん!? 何でいるの!?」

健ママ「恒子ちゃんに教えてもらってねぇ。ほら、もう少し! がんばれっ!」

健夜「恥ずかしいからテレビに出てくるのやめてって言ったでしょ!」

健ママ「そんなこと言ってもねぇ……あ、そうだ! 健夜、あんた今日の晩ごはんは何がいい?」

健夜「なんでもいいよっ!!」ムキーッ


恒子「ここで健夜ママの登場だー! 小鍛治選手、母親の相手で必死です!」

トシ「親ってのはいつまで経っても子供のことが気になるものだからねぇ」シミジミ

野依「親の心子知らず!」

みさき「…おや、その間に瑞原選手が……」


はやり「……」ソローリ ソローリ

はやり「……よしっ!」


   ガシッ

はやり「取ったよー☆」

健夜「だから何でもいいってば! ……へ?」


恒子「決ぃーまったー! ローションビーチフラッグを制したのは瑞原選手だーッ!」

トシ「小鍛治ちゃんはちょっと油断してしまったねぇ……いやぁ、良い試合だったわよぉ!」


健夜「おかーさんのせいで負けちゃったじゃない!」モー

健ママ「そんなこと言われてもねぇ……」

はやり「健夜ちゃんのお母さんのおかげで勝てましたっ☆ ありがとうございますっ」ペッコリン

健ママ「あらやだ、私は何もしてないわよぉ。それよりはやりちゃん、またウチに来て一緒にご飯食べましょうね!」

はやり「はいっ☆」

健夜「……お」



健夜「おかーさんのばかーっ!!」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

恒子「今のところ一勝一敗! 一進一退の攻防を繰り広げています!」

みさき「お互いのスペックは互角ですからね」

野依「互角じゃない!」

みさき「? それはどういう……」


健夜「……あの、カメラさん? どこ映してるのかな……?」ペターン

はやり「はや?」バイーン


みさき「……あぁ、なるほど」

健夜「『なるほど』じゃないよ!」


恒子「それでは第三種目です! 第三種目はー……」

野依「……これっ!」

恒子「>>135>>135です!」

ちょっと眠気覚ましにお風呂入ってきます……!

水中迷路

恒子「水中迷路! 水中迷路です!」

はやり「水中迷路……?」

健夜「水中、って……まさか」

恒子「ちゃんと着替えてきてねっ!」

健夜「やだよ! また水着なんて! しかもスク水! 絶対着ないからね!」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

健夜「さむい……」ガタガタガタガタ

はやり「なんだか競技の度に着替えさせられてる気がするよ…!」

みさき(後で番組構成でたっぷり叱られるんでしょうね……)ハァ

恒子「そしてみんなお楽しみ、水中迷路がこちらになります!」


   ドォーン


健夜「これは……」

はやり「ガラス張りの立方体だね…☆」

野依「水がいっぱい!」

みさき「二人には小型の酸素ボンベを担いで、この立方体の水中迷路、上面のスタート地点からスタートしてもらいます」

みさき「立方体内部の迷路を泳ぎながら進んでもらい、先に中央のトロフィーを手にした方の勝利となります」

恒子「ちなみにこの水中迷路、事前に野依プロにもチャレンジしていただいたのですが……」


――野依『迷路? 楽しそう! する!』フンスー

――野依『みさき! 水の中なんて聞いてない!』

――野依『……分かった。チャレンジ、する…!』

――野依『……っ!』バシャンッ

    ブクブクブク......

    プハァッ

――野依『も、潜れない!』プンスコ


恒子「…と、水に顔を付けただけで終わってしまいました」

野依「水こわい…・・」

恒子「それでは二人とも、準備はよろしいでしょうか!」

健夜「あ、ちょっと待ってね……」ジィーッ

はやり「こっちも少し待ってほしいな☆」ジィーッ

恒子「へ? あ、うん……」

健夜「……」

はやり「……」

健夜「……」

はやり「……」


恒子「…あの、もういいかな……?」

健夜「…うん! 大丈夫だよ!」

はやり「こっちもおっけーだぞ☆」


みさき「なんだったんでしょうか、今の間は……」

野依「悪巧み!」

恒子「それでは改めて……」

健夜(ふふふ……私、気づいちゃったよ! この競技には必勝法がある!)

恒子「位置について!」

健夜(この迷路はガラス張りだから、あらかじめゴールまでの道のりをチェックすることができる! つまり…!)

恒子「よーい……」

健夜(スタート前にゴールまでの最短ルートを覚えてしまう! そして相手がルートを分からなくなるようにするために……)

恒子「どんっ!!」



健夜・はやり「こうすればいいんだーッ!!」ドボドボドボ

健夜・はやり「……あれ?」ドボドボ


恒子「卑劣ーッ! なんと迷路の水に懐に忍ばせていた墨汁を垂れ流したーッ!」

野依「水の中がまっくら! 見えない!」

みさき「ですが2人とも同じことを考えていたようですね」

恒子「これでは折角の作戦の意味が無いぞォーッ! さぁ、どうする!?」

健夜(まさかはやりちゃんも同じ手で来るなんてっ…! ど、どうしよう…!?)

はやり「……えいっ!」バシャーンッ

健夜「! …スピード勝負、ってわけだね……上等だよ!」バシャーンッ


恒子「お互い意を決して飛び込んだーっ!」

みさき「元々ゴールまでのスピードを競う種目なわけですからね。当然でしょう」

恒子「……だけど、これって……」

みさき「…えぇ。言いたいことは分かりますよ」



野依「まっくらで何も見えない! つまんない!」プンスコ

みさき「…ここ、カットにしましょうか」

恒子「そうですね……」ショボーン

 ・ ・ ・ ・ ・

恒子「チンイツっ」

野依「つ…つ……つばめ返し!」

みさき「し……シバ棒、ってアリですか?」

戒能「アリでいいんじゃないでしょうか。では五門斉で」

恒子「うーめ……え、なんですかそれ」

野依「うーめんちー! 中国麻将の役!」

恒子「へぇー……」

藤田「それじゃ、次は「ち」かな」

トシ「おや、「い」じゃないのかい?」

藤田「こういうときは普通前の文字を取りません?」

トシ「イヤ、でもねぇ……」


   バシャーンッ


健夜「はぁっ、はぁっ……と、取ったよー!!」

恒子「あ、終わったみたいですねー。 えーっと……勝ったのは小鍛治選手でーす」


   シラーッ


健夜「……あれ?」


   バシャーンッ


はやり「うー…あと一歩のところだったよー…!」

健夜「……」

はやり「……あれれ?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

健夜「見てなかったの!? あの熱戦を!?」

恒子「だって水真っ黒になっちゃって何も見えなかったし……」

はやり「私が健夜ちゃんの攻撃を鮮やかな知略で見事に躱したところも!?」

みさき「何も映りませんでした」

健夜「何故か迷路の中に紛れ込んでいたピラニアとの死闘も!?」

恒子「だから見えなかったってば」

はやり「酸素ボンベが故障して窒息間際になった健夜ちゃんに私が酸素を分けてあげたところも!?」

みさき「撮っていません」

健夜「信じられない! それでもテレビの人なのっ!」

恒子「……」

はやり「あんな名シーン集を撮り逃すなんてテレビ関係者失格だよ!」

みさき「……」



恒子「そ も そ も 墨 汁 垂 れ 流 し た り し た 二 人 が 悪 い ん だ か ら ね ?」

健夜「 」グサッ

みさき「後 で デ ィ レ ク タ ー か ら キ ッ ツ い お 説 教 が あ る そ う で す の で」

はやり「 」ハヤ゙ッ

野依「自業自得!」

みさき「えー……三戦目は一応、小鍛治選手の勝ちということで……」

健夜「…わ、わーい……」

はやり「はやや……」シューン

恒子「それより切り替えて第四種目に行くぞォーッ!」

野依「やんややんや!」

恒子「第四種目の抽選、野依プロよろしくっ!」

野依「んんんーっ……」ガサゴソ


野依「…これ!」バンッ

恒子「第四種目は>>161で決定だァーッ!!」

ポッキーゲーム

恒子「第四種目はポッキーゲームで決定だァーッ!!」


健夜「……あの、こーこちゃん?」

恒子「ん? なぁに?」

健夜「今までのは何だかんだで運動要素があったから文句は言わなかったけどさ……」

恒子「うん?」


健夜「これ明らかに運動会要素ゼロだよね!?」

恒子「フフフ……そう言うだろうと思ってたよ…! だけど!」

恒子「このポッキーゲーム! むしろ今までの競技で一番運動会らしい種目といっても過言ではないのだ!」バァーン

はやり「それは一体どういうことかな?」

恒子「あちらをご覧くださいッ!!」

健夜「あれは……」

はやり「はやっ! すごいっ!」



恒子「全長200メートル! 特注ポッキーだーッ!!」ドドォーン

桁を一つ間違えました…!
×:200メートル
○:20メートル
でお願いします……

はやり「すごい、すごい! こんな大きなポッキー、はやり初めて見たよ!」キャーキャー

健夜「よくこんなの作ってもらえたね……」

恒子「普通のポッキーのおよそ150本分の長さ! お腹に溜まりすぎないように少し細めに作ってあります!」

みさき「というわけで、このポッキーを使ってポッキーゲームをしてもらいます」

野依「……ねぇ、みさき」

みさき「ルールは簡単。宙に吊るされたこの特注ポッキーを両端からお互いに食べ進めてもらいます」

野依「みさき……」

みさき「すべてのポッキーが無くなった時点で、より多くのポッキーを食べ進めた選手の勝ちです」

野依「みーさーき!」

みさき「……なんですか、野依プロ」

野依「……あの」



野依「なんで特注ポッキー2本……?」カタカタ

みさき「……」ニッコリ

野依「……」

 ・ ・ ・ ・ ・

恒子「エキシビジョンマッチの時間だァー!」

野依「ぅぅうう……!」

健夜「がんばれー、理沙ちゃーん!」ヘラヘラ

野依(他人事だと思って…!)プンスコ

はやり「だけど今回のはポッキー食べるだけでしょ? 今までのに比べたらラクだよね☆」

野依「!」

健夜「食べ飽きちゃってももう一方の人に食べきってもらえばいいんだもんね」

野依「!!」

野依(その手があった! 楽勝!)パァーッ


恒子「ちなみに今回のエキシビジョンマッチの相手は隠れ甘党として知られるこの人、大沼プロです!」

大沼「あー……よろしく」

野依(前言撤回!)プンスコ

恒子「それでは行きますよー!」

野依(…ちゅーの前にぎりぎり逃げる! それしかない!)

大沼「……」

恒子「よーい……どんっ!」

野依「っ!」ハムハム


野依(……おいしい!)

野依(もうちょっと…もうちょっとだけ食べる!)モグモグプンスコ

野依(……♪)モクモクプンスコ

野依(……)モシャモシャプンスコ

野依(……?)プンス......


   ......グモグ
   ...モグモグモグモグモグ


大沼「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ」ズンッ ズンッ ズンッ

野依「?!?!」ビクッ

野依「こわい!! 真顔こわい!!」


   ダダダッ


みさき「……あー。野依プロ、威圧感に負けて逃げちゃいましたね」

恒子「まぁ真顔でずんずん近寄って来られたら逃げたくなる気持ちも分かりますけどねー」ケラケラ

大沼「……ん。美味かった……な……」ペロリ

 ・ ・ ・ ・ ・

恒子「それじゃ本戦だァーッ!! 二人とも準備は大丈夫だね!」

健夜「準備も何もあったもんじゃないけどね……」

はやり「はやりも大丈夫だよ!」

恒子「じゃあ行くよー! よーい……どんっ!!」


   ムシャムシャムシャムシャ!!
   モグモグモグモグモグ!!


恒子「さぁ、両者一斉にスタートしました!」

みさき「今のところは両者同じくらいのペースでしょうか。大沼プロ、ここからどういう展開が予想されるでしょうか?」

大沼「あー……」

大沼(これは「どちらがより多く喰らうか」が肝の勝負……そのためにはポッキーに飽きずにずっと食べ続ける工夫が必要になる……例えば)

大沼「……水…だな……」

みさき「…み、水がキーになるそうです!」


健夜(……そ、そろそろ飽きてきちゃったかも……)ムシャムシャ

健夜「み、水……!」

恒子「おーっと、ここで小鍛治選手から給水のサインーっ! 一旦ポッキーを食べるのをやめ、給水タイムに入ります!」


はやり(健夜ちゃんはどうやら給水してるようだね…☆)モグモグモグ

はやり(だけどはやりはそんな生っちょろいことはしないよ! どんな相手(スイーツ)だろうと正面突破!)モグモグモグ

はやり(水になんて頼らないのだッ☆)モグモグモグモグ

恒子「さぁーいよいよ長いポッキーも半分を突破! 残り半分をどう攻めるのか!」


健夜(…うん! 水のおかげでポッキーを美味しく食べられてる!)ムシャムシャムシャムシャ

健夜(これなら給水のロスタイム分も取り返せる!)ムシャムシャムシャムシャ


はやり(……ちょっと、キツくなってきたかも……)モグモグ

はやり(うぅ……チョコが胸に溜まるよぉ……)モグ

はやり(健夜ちゃんは……ウソっ!? もうあんなとこまで食べてるの!?)


みさき「なるほど……確かに、水が運命の分かれ道となりましたね」

大沼「どんなに美味い物でも喰い続ければ飽きる……ということ、だな……」

大沼(これは明暗決したか…… …ん?)



はやり(はやや……このまま負けちゃうのかな……)

はやり(……チョコの食べ過ぎで……意識が遠のいて……)


   ......リ     ......ヤリ      ......ハヤリ

はやり(…誰……?)


――はやり。


はやり(……おと……おさん……)


 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


――はやり。アイドルになりたいのかい?

―――うんっ。はやり、大きくなったらすてきなアイドルになるんだー!

――ハハ、そうか。それなら……折角だし、他の子たちとは全く違うアイドルになりなさい。

―――他の子と違うアイドル?

――あぁ。他の誰でもない……はやり。お前にしかなれないアイドルに。

―――はやりにしかなれないアイドル……

――そうすればきっと、誰にも負けない世界一の、素敵なアイドルになっているはずだよ。


 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

はやり(…そうだった……☆)

はやり(はやりは……はやりは、アイドルになったんだ…!)

はやり(はやりにしかなれないアイドルに…! 世界一のアイドルに…! …そして!!)


はやり(誰にも負けないアイドルに!!)モグモグモグモグモグモグモグモグモグ!!



大沼「…変わったな……風向きが……」

恒子「瑞原選手、突如急加速!! リードしていた小鍛治選手を一気に追い上げます!!」

みさき「これは一気に勝負が分からなくなってきました! ポッキーの残りはあとわずか!」



はやり(……これが…! これが……!)モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ!!

はやり(これがアイドル、瑞原はやりだっっっ☆)モグゥッ!!




恒子「……き」

恒子「決ィーまったァーッッッ!! 今ポッキーがすべて無くなりました!」

恒子「そして二人が食べた量は! 瑞原選手が上回っているッッ!!」

恒子「第四種目・ポッキーゲームを制したのは瑞原選手だァーッ!!」


はやり「はぁっ……はぁっ……!」

健夜「……はやりちゃん」

はやり「…健夜ちゃん」

はやり(なんだろう……あんなにもいがみ合って対立してたのに、今ではその気持ちもすっかり消えちゃってる……)

はやり(……今なら。健夜ちゃんとも仲直りできるかもしれない…!)

はやり「あ、あのね……健夜ちゃん……。その……」


健夜「10キロカロリー」

はやり「……はや?」

健夜「知らないの? 10キロカロリー」

はやり「…えっと、健夜ちゃん? 何言って―――」




健夜「ポッキー1本のカロリーだよ」

はやり「   」

健夜「はやりちゃん、ずいぶんたくさん食べたよねー? 13メートルくらい? ポッキーおよそ100本分だよ」

はやり「   」グサッ

健夜「10キロカロリーが100本だからー?」

はやり「   」グササッ

健夜「 1 0 0 0 キ ロ カ ロ リ ー だ ね !」

はやり「   」チーン



恒子「ちぇ。すこやんは途中で気づいちゃったのかー」

みさき「それでも十分な量は食べてますけどね」

健夜「  」ザクゥッ


大沼「……あー」

大沼「食べ過ぎはよくない……な」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

はやり「1000キロカロリー……1000キロカロリー……1000キロカロリー……」ブツブツ

健夜「食べ過ぎた……食べ過ぎた……食べ過ぎた……」ブツブツ


野依「…何があったの……」

みさき「なんでもありませんよ。ただ暴食を後悔してるだけです」

戒能「私としては少々ファッティなはやりさんも好みなんですが……」

恒子「ほら、気を取り直して! 食べた分は運動して消費すればいいんだよ!」

はやり「……まぁ、確かにそうだけれど……」

恒子「それに、次のが最後の種目だよ! これでどっちの方がおにくが付いてるか……もとい、運動オンチかを決めるんでしょ!」

健夜「……それもそうだね。せめて、はやりちゃんよりはスレンダーってことを証明しなきゃ…!」

はやり「スレンダー? 健夜ちゃんが? ……ぷふーっ☆」

健夜「笑った? 今笑ったよねはやりちゃん!?」

はやり「だって、健夜ちゃんの口からスレンダーだなんて……ふふっ、あははっ!」


   ギャーギャー    ワーワー

   ギャーギャー     ワーワー

  ニギニギ     ワイワイ


みさき「……やっぱりあの二人、ほんとは仲良いですよね」

野依「ケンカするほど!」フンスッ

戒能「これ、もう勝負とかしなくてもいいんじゃないでしょうか……」

恒子「まぁほら、そこは番組だから。やっぱり最後までばっちり締めておかないと!」

みさき「そうですね。 ……それでは、最終種目に移ります!」

健夜「なんでもこい、だよ!」

はやり「カロリーを燃やすぞ☆」

恒子「それではいってみましょう! 最終種目は……」

野依「……! これ!」バンッ

恒子「……>>194だァーッ!!」

縄跳び

恒子「縄跳びだァーッ!!」

健夜「…はァ~っ……」ヨロヨロ

はやり「ほ、ほっとしたよぉ~っ……」ペタン

恒子「へ? なに、物足りなかった? なんならすぐそばに『ベッドで相撲』とかあるけど」

野依「えろい!」プンスコ

健夜「それは要らないよ! …いや、ほら。今まで到底運動会には似つかわしくないような競技ばかりだったから……」

はやり「最後の最後でやっと普通の競技が来て安心したよ…☆」


みさき「今回の縄跳びですが、大縄跳びではなく個人用の縄跳びを使っていただきます」

みさき「2人同時にスタートしてもらい、引っかかるまでに跳べた回数で競ってもらいます」

恒子「ちなみに野依プロに事前にお願いしたときは……」


――野依『縄跳び? する!』フンスッ

――野依『……っ!』ピョンッ

   ペチッ

――野依『……!』プンスコプンスコ

恒子「――と、まさかの記録0回でした」

野依「むずかしかった…!」

みさき「……どうやら、二人の準備が整ったようですね」


恒子「いよいよ最終決戦だーッ! 準備はいいかーッ!?」

健夜「いつでも大丈夫だよ!」

はやり「靴ひもも大丈夫……おっけーだぞ☆」

戒能「充電OK。録画の準備も大丈夫です」


恒子「それではー……よーい、どんっ!!」


健夜「っ!」ピョンッ

はやり「えいっ☆」ピョンッ


   ピョンッ ピョンッ ピョンッ ピョンッ......

みさき「お互い、安定したスタートを見せましたね」

恒子「ですがどちらももういい歳ですからねー。すぐに息が上がってくると思いますよ」

みさき「もって何分だと思いますか?」

恒子「2分くらいじゃないですかねー! それくらいしたら息も絶え絶え、ぜーぜー言ってると思いますよ!」

健夜(好き放題言って…! こうなったら2分どころか20分は跳び続けて目に物見せてやるんだから!)ピョンッ ピョンッ

はやり(私だってそう簡単に白旗は上げないぞ…☆ 少なくとも10分くらいは続けなきゃね☆)ピョンッ バルンッ ピョンッ バルンッ

野依「……」

健夜「…っ! …っ!」ピョンッ ピョンッ

はやり「えいっ☆ えいっ☆」ピョン バルンッ ピョン バルンッ

野依「……格差社会!!」

 ・ ・ ・ ・ ・

みさき「…2分、経過しました」


健夜「ぜひーっ…! ぜひーっ…!」ピョンッ… ピョンッ…

はやり「ふぅーっ…! …えいっ…!」ピョンッ…プルンッ… ピョンッ…プルンッ…


恒子「ほら! やっぱり2分でいっぱいいっぱいってとこですよ!」フフンッ

みさき「予想通りの展開でしたね」

野依「跳ぶのに必死! 地獄絵図!」

恒子「あとはどっちの根性が先に尽きるかの勝負じゃないですかね?」

みさき「なるほど…さぁ、果たしてどちらが勝利の栄光を手にするのか!?」


健夜(うぅ……思ったよりはやりちゃん、喰らいついてくるよ…!)ピョンッ…

はやり(健夜ちゃん、まだ跳べるの…? はやりはもう足が限界だよ……)ピョンッ…

健夜(まだ跳びたい……まだ跳びたいけど……)ピョンッ…

はやり(はやや……もう……)ピョンッ…


健夜・はやり(も、もうダメぇ……!)パタンッ



恒子「…だ、ダブルノックダウーン! まさかの二人同時終了です!」

みさき「戒能プロ、跳んだ回数はどうでしょう」

戒能「それが……ミラクルですね。どちらも跳んだ回数、同じです」

恒子「ということは……あれ? 引き分け?」


健夜・はやり「「引き分け!?」」ガバッ


健夜「冗談じゃないよ! これだけ恥ずかしい思いさせられたりとんでもないカロリー摂らされたりして、結果が引き分けなんて納得できないよ!」

はやり「しっかりと決着着けるまでは終われないぞ☆」

恒子「……あの、お二人とも?」

健夜「もう一回! もう一回縄跳びで勝負!」

はやり「受けて立ってあげるよ☆」

健夜「よーい、スタート!」


   ピョンッ ピョンッ ピョンッ


恒子「……勝手に始めちゃいましたね」

野依「熱血!」

みさき「まぁ、勝手にさせておきましょうか……。 …おや?」


   ブロロロロロ......キキィッ


咏「えりちゃん、運転ありがとねぃ~」ヒラヒラ

えり「免許持ってない人に運転させるわけにはいきませんからね……お疲れ様です、みなさん」

恒子「お疲れさまでーす! 収録見に来た感じですか?」

えり「そうなんですが……もしかして、まだ収録中ですか? あの二人」

みさき「いえ、収録予定分はすべて撮り終えました。…二人で勝手に盛り上がって始めてしまって……」

咏「あっれー? 小鍛治さんにはやりさん、まだ対決中なんすか?」

健夜「うん……っ、最後のっ、縄跳びでっ、引き分けにっ、なっちゃって……」ゼェゼェ

はやり「今っ…、決着、つけようと、してるん、だぞっ…☆」ゼェゼェ

咏「へぇー……まー、縄跳びなんかで決着つくわけねーっすよねー」



咏「こんなのいくらでも跳び続けられるしねぃ」

健夜「……へ?」ピタ

はやり「今、なんて…?」ピタッ

咏「ん? だから縄跳びなんてずっと跳んでられるって。知らんけど」

健夜「……はい」スッ

咏「え、跳んでみろってことっすか? …着物で跳んだことはないんだけどなぁ……よっと」ピョンッ

はやり「……」

咏「あ、意外とイケるねぃ。ほら、あや跳びに交差跳び…二重跳びもイケるみてーっす」ピョンッ ピョンッ ピョピョンッ

健夜「……」

はやり「……」

咏「ま、こんなの余程のおばさんじゃなけりゃ余裕なんじゃねーっすかねー」

健夜「……」

咏「なんでも40過ぎたら縄跳び2,3分しか続けられなくなるらしいっすよ。こーわいなー、老化ってー!」ヘラヘラ

はやり「……」

咏「お二人はまだ20代なんで大丈夫だとは思いますけど…… …あれ?」


健夜「……」ゴゴゴゴゴゴゴ

はやり「……」ゴゴゴゴゴゴゴ


咏「……あの。もしかして……なんか怒ってます?」タラー

健夜「うぅん、全然怒ってないよ」ニッコリ

はやり「健夜ちゃん、健夜ちゃん」ニコニコ

健夜「なぁに、はやりちゃん?」ニコー

はやり「咏ちゃんの言う通り縄跳びじゃ決着つかないみたいだし、ここは麻雀で勝負を決めない?」ニコォ

健夜「そうだね、そうしよう! ……咏ちゃんも付き合ってくれるよね?」ニコォォォ

咏「……」タラーッ

咏「ちょ、ちょっと今日は麻雀はダメな日で……」

はやり「ダメだぞ☆ プロがそんなこと言ってちゃ☆」

咏「今日は財布持ってきてなくて……」

健夜「ツケでいいよ」

咏「……の、野依プロっ! 助けてっ!」

野依「……」キョトン

咏「…! …!」コクコクコク

野依「……!」


野依「私も打つ!!」プンスコプンスコ

咏「あんぽんたんーっ!!」

健夜「今日は徹夜で打つよー!」

咏「徹夜はマズいですって! そんなに打ち続けたらどれだけ負けるか…!」

はやり「だからツケでいいってば☆」

野依「咏ちゃんと麻雀! 久しぶり!」ウキウキ

健夜「ねー。楽しみだねー」

咏「全然楽しみじゃなぁーいっ!!」




――結局、「どちらの方がよりにくにくしいか」はうやむやのまま終わってしまいました。

――……ですが


健夜「はやりちゃんには負けないからねっ!」

はやり「はややっ、こっちのセリフだぞ☆」


――二人の仲は、また“ちょっとだけ”深まったようです。


●カン

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