日直「さあ、『落日の円卓会議』の始まりだ……!!」 (9)

日直「皆の者、立ち上がれ!」

ざっ

日直「頭を垂れよ!」

ざっ

日直「己が『座』へと還れ!」

ざっ

日直「皆の者、よろしい」

日直「では、『断罪』を始めようではないか……くっくっく」

A君「……」すっ

日直「Aよ、発言を許す」

A君「はっ」

A君「本日、私はたかし殿より暴言による辱めを受けました……」

日直「たかしよ、先ほどこの者が申したことは真実か?」

たかし「え……ちが……」

B君「……」すっ

日直「Bよ、なんだ?」

B君「はっ」

B君「僭越ながら、私めもその現場に居合わしておりました」

日直「真か!?」

日直「たかしよ、これで言い逃れはできまい」

たかし「あの……その……」

Cちゃん「たかしよ、己が罪深き存在と認めよ」

D君「然るべき断罪を」

ざわ………ざわざわ……


日直「皆の者静粛に!!」

日直「まずはたかしが犯した罪の深さを確かめようではないか」

日直「断罪はその後でも遅くはあるまい」

日直「Aよ、貴殿はたかしよりいかような辱めを受けたのか」

A君「はっ、たかし殿は私に対して『チビ』だと……」

Cちゃん「議長よ、既に断罪は決定的なものとなった」

Cちゃん「本人には如何し難い身体的特徴をあげつらい貶めるなど」

Cちゃん「人間として、いや理性ある一個の生命としてあるまじき行為である」

たかし「だ、だってA君が俺のことデブだって!」

A君「場を弁えよたかし殿、いまはC殿の発言中だぞ!!」

日直「……Aよ、先ほどのたかしの証言は真か」

A君「そ、それは……」チラッ

B君「……」すっ

日直「Bよ、発言を許す」

B君「はっ」

B君「さきほどのたかし殿の証言は偽証であります」

たかし「う、嘘だ!!」

D君「見苦しいぞたかし殿」

Cちゃん「虚言を弄し神聖なる裁きの庭を汚した罪……」

Cちゃん「断罪がどれほど深くなろうとも言い逃れはできまい」

たかし「よしお君信じてよ!」

たかし「先に俺のことデブっていったのはA君なんだよ!!」

日直「私は議長として、公平な審判機関たる存在としてこの場に居る」

日直「皆の意見を元に合理的な回答を出力するだけの私に、今は個人の意思など無い」

たかし「そんな……」

E君「……」すっ

ABCD「「「「ッ!?」」」」

A君(あのE殿が挙手を……)

Cちゃん(いったい何が始まるというのだ……!?)

日直「Eよ、発言を許可しよう」

E君「……これは関係のない話かも知れない、と先に前置きしておこう」

A君「……」ゴクリ

E君「今日の昼、A殿の給食のプリンがなくなっていた」

A君「ッ!?」

E君「代わりにB殿のプリンの数は2個に増えていた」

B君「くっ!」

E君「まあ、ただそれだけの話だよ」

日直「……AB両人、先ほどの証言は真か?」

A君(ここで下手な言い訳をしても逃げ切ることはできない……)

A君「はっ、真であります」

A君「しかし、それがどうしたと言うのでしょうか?」

D君「A殿がB殿に給食のプリンを渡した……」

D君「そういうことで、いいのだろうね?」

B君「ああ、その通りだとも」

D君「問題は、なぜプリンという貴重品をA殿は手放したのか……そこに尽きる」

D君「そう、価値ある物をB殿に贈ることで、A殿は相当の利益を得たのではないかとね」

A君「Dッ!!貴様ッ!!」

D君「勘違いしないでもらおう、私は咎人が正しく刑に処されることを望んでいるのだ」

D君「先ほどはたかし殿が、そして今では貴君らがその槍玉に上がっているというだけのこと」

Cちゃん「理解せよ、既に断罪の対象の矛先は貴様らに向いているのだよ」

E君「……」ニヤリ

A君「クソ……貴様ら……ッ!!」

A君「議長!!」

A君「私めにもう一度、この濡れ衣を晴らすための証言の機会をッ!!」

日直「よろしい、発言を認めよう」

A君「確かに私がB殿にプリンを譲渡した、それは確固たる事実として認めようではないか」

A君「しかし、貴君らはその理由についてなにか誤解を持っているようだ」

D君「誤解?」

D君「状況から見て、そのプリンは賄賂そのものではないか」

D君「B殿に自分に有利な証言をするように依頼する対価、そうとしか……」

A君「プリンにはそれほどの価値があるのか?」

D君「当たり前だろう、プリンなのだぞ?」

D君「月に1度出るか出ないか、その貴重品を投げ捨てておいて今更……」

A君「私はプリンが嫌いだ」

D君「ッ!?」

A君「理解できていないようだからもう一度言ってやろう」

A君「諸君、私はプリンが大嫌いだッ!!!」

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