P「如月千早か。どんな子なんだろう」(145)

P「今日からは俺が如月の担当になる。よろしく頼む」

千早「新しいプロデューサー? 前の方は?」

P「ストレスでゲロ吐いて辞めた」

千早「……またですか。ではこれからよろしくお願いします、新しいプロデューサー」

P「初対面だし、自己紹介でもしてもらおうかな」

千早「構いませんが、履歴書やプロフィールに書いてあること以外は特に」

P「プロフィールっていうと……趣味は、歌と音楽鑑賞、だっけ?」

千早「はい」

P「特技も歌?」

千早「そうですね」

P「歌、好きなんだ」

千早「はい」

P「ふーん」

【ダンスレッスン】


P「今日は朝からレッスンの予定が入ってる。支度してくれ」

千早「ボーカルレッスンですか?」

P「いや、ダンス。初回だから俺も付いていく」

千早「……踊れることは、それほど重要でしょうか。私は歌を評価して欲しいのに」

P「重要だよ。如月はアイドルだからな」

千早「アイドルだから……ですか。そこで思考停止するのは少し浅はかだと思います」

P「そうか? できることのレパートリーが増えたら、色々とお声もかかりやすくなるだろう」

千早「それは……不本意ですが、そうでしょう」

P「その分、大舞台に出る機会も増えて、より多くの人に歌を聴いてもらえるじゃないか」

千早「……確かに」

P「そこそこは動けるみたいだな」

千早「一応、自主的に筋トレはしてますから」

P「筋トレか……」

千早「何か問題がありますか?」

P「下手な筋肉のつけ方をすると良くない。後で俺がトレーナーに相談しておく」

千早「相談?」

P「ダンスの専門家ならどこをどれだけ鍛えれば良いか、よく知ってるはずだろ?」

千早「……そう言われてみると、素人考えで無茶するより効率は良さそうですね」

P「そういうこと。何事もまずは効率重視だ」

千早「あなたは……今までのプロデューサーとは違います」

P「そうか?」

千早「下手な愛想笑いもしませんし、私の機嫌を伺ったりもしませんし」

P「ディレクターや、よその営業担当が相手ならともかく、如月に愛想笑いしてどうする?」

千早「でも前のプロデューサーも、その前の人も、私を腫れ物のように扱っていました」

P「へぇ。よく分からないけど、如月はそういう風に扱って欲しいのか?」

千早「……嫌に決まっています、そんなの」

P「じゃあ、今のままでいい?」

千早「はい。今のままがいいです」

【初オーディション】


P「今日は音楽番組のオーディションだ。合格すればデビューだぞ」

千早「アピールポイントは何が重視されるのですか?」

P「今回はボーカルだな。もしかしたら、如月なら余裕かも」

千早「……ですが、オーディションへの参加は初めてです。うまくできるかどうか」

P「え、初めて?」

千早「はい……」

P「デビュー前でも、オーディションの1つや2つ受けてると思ってたけど」

千早「今まではどのプロデューサーも、二週間程度で辞めてしまいましたから」

P「……オーディションまでこぎつけられなかったのか」

千早「はい。ですが、原因は私にあるんです。私、うまくコミュニケーションが取れませんから」

P「そうか? 俺はそんなに困ってないけど」

千早「それは……あなたが変なんです」

P「その変な俺と噛み合ってる如月も変ってことか」

千早「……くっ」

オーディション後――


審査員「合格は……2番と5番!」

千早「……受かった」

P「おめでとう。これで堂々のデビューだな」

千早「…………あの。ありがとうございます」

P「俺は何もしてない。如月の実力だ」

千早「実力、ですか……それなら尚更、あなたにお聞きしたいことがあります」

P「なんだ?」

千早「どうして、ろくにレッスンも受けていない私が、このオーディションに受かると?」

P「それは……もちろん、如月の地力を踏まえた上で決めた。でも決定的だったのは、アレだ」

千早「アレ?」

P「初めて会った日、『特技も歌?』って質問したの覚えてるか?」

千早「よく覚えています。なぜ改めて聞いたのか疑問でしたし」

P「あの時、如月が自信満々で『そうです』って答えたからだよ。その日のうちに応募した」

千早「ええ……!? そ、それだけで……?」

P「迷ってるだけ時間の無駄だからな。どうせデビュー前なんだし、何でもやってみるもんさ」

千早「なんだか……すごい人です。思い切りがいいというか」

P「でも、結果的に良かっただろ。如月の歌は評価に値する物だってことが分かったんだから」

千早「……はい。これからも、よろしくお願いします」

【ボーカルレッスン】


千早「おはようございます」

P「おはよう。今日も早いな」

千早「朝のジョギングのために早起きしていますから」

P「へえ、ジョギングか……じゃあ喉渇いてるだろ、お茶でも淹れてやろう」

千早「気を使って頂かなくて結構です。甘やかされる為にアイドルになった訳ではありませんし」

P「いや……如月は歌が命のアイドルだから、もっと喉を大事にして欲しいだけだ」

千早「……そうですか。それなら、お言葉に甘えて」

千早「ふぅ……ご馳走様でした」

P「ところで歌といえば、今日は午後からボーカルレッスンだったな」

千早「そうですが、何か?」

P「今回は俺も付いていく」

千早「え?」

P「少しな。如月の歌を聴いて、色々勉強しようかなと」

千早「……まあ、なんでも、いいですけれど」

P「あおいぃぃ~とりぃぃぃ~もぉししあぁわぁせぇぇぇ~」

千早「それでは演歌です。私のデビュー曲を馬鹿にするなんて、最低です」

P「俺は大真面目だ。そもそも、この曲が難しいのが悪いんだ」

千早「言ってることが無茶苦茶です……ところで、なぜ急に『蒼い鳥』を歌ってみたいなんて」

P「俺は如月のプロデューサーだからな」

千早「……どういうことでしょうか?」

P「どこが歌いづらいとか、どこで息継ぎするかとか、把握しとかないとアドバイスもできないだろう」

千早「それは……私としても助かりますけど、歌唱力が絶望的では意味が……」

P「それを言うな」

【番組の都合】


千早「納得できません」

P「だいたい予想できるけど、何がだ?」

千早「あのディレクター、この番組は私がメインじゃないからもう少し下手に歌えと」

P「……やっぱりか。でもデビュー曲の初披露、思いっきり歌いたいよな」

千早「はい……私、どうすればいいのか。せっかくオーディションに合格したのに……」

P「…………」

P「如月……すまない」

千早「えっ?」

P「俺にもっと力があれば、意見もできる。偉くなればゴリ押しもできる」

千早「…………」

P「でも今の俺では、無理なんだ。無名のプロデューサーでは……」

千早「…………」

P「こればかりは、本当に……すまない……」

千早「…………」

春香「――って、昨日そんなことがあったんだ。それで千早ちゃんはどうしたの?」

千早「自分がギリギリ許せる範囲で下手に歌ったら、OKが出たわ」

春香「え……千早ちゃんが自分から折れたの!?」

千早「しょうがないでしょう」

春香「……なんか、意外」

千早「プロデューサーが無理と言うのだから、無理なのでしょうし」

春香「へぇ……プロデューサーさんのこと、結構信用してるんだね」

千早「べ、別にそういうわけではないけれど……」

P「昨日は、如月に悪いことをしたな……」

律子「芸能界にいる以上、避けられない話ですよね」

P「でも将来大舞台に上がる如月のことを考えると、下手に反論して経歴にキズをつけたくなかったんだ」

律子「……その判断は間違いじゃないと思います。同じプロデューサーとして賛同しますよ」

P「ありがとう……ただ、如月がすんなりと承知してくれたのが意外なんだ」

律子「それだけ、千早に信用されてるってことじゃないんですか?」

P「別にそういうわけじゃないと思うけど……」

【初ライブ】


P「――さて。今日は初のソロライブだ」

千早「はい。あの、プロデューサー」

P「なんだ?」

千早「プロデューサーが発言権を得るためには、どうすればいいのでしょうか」

P「……俺のプロデュースのもと、如月が成長して、もっと活躍していくこと、かな」

千早「そうすれば、この前のようなことは……」

P「うん、徐々に減っていくとは思う」

千早「……分かりました。私が努力することは、あなたの為になり、私の為にもなる」

P「そうだけど、俺もいるんだから一人で頑張られてもなぁ」

千早「あ……二人で、ですね。すみません。拗ねないでください」

P「拗ねてないし」

ライブ後――


千早「ふう……」

P「おつかれ。ほら、タオル」

千早「だから甘やかさないでくださいと……」

P「早く汗拭かないと風邪ひくだろ。そしたら如月も、俺も困るんだ」

千早「……そうですね。たまには素直に受け取ります」

P「いいライブだったよ。でもこれだけ人が集まるなら、ハコはもっと大きい方が良かったな」

千早「はい。まだこんな規模では満足できません」

P「だよな……よし、次はもう少し上を狙おう。社長や律子にも相談してみるよ」

千早「是非、お願いします」

【ランキング】


P「如月、ちょっとこれ見てみろ」

千早「なんですか? えっと、月間のCD売上ランキング?」

P「この間リリースした『蒼い鳥』が約1万枚で、50位にランクインしてる。上出来だ」

千早「い、1万枚ですか……?」

P「初シングルでそれだけ売れたのも凄いけど、50位に入ったことが大きい」

千早「1万枚……」

P「50と51じゃ雲泥の差がある。ランキングサイトは50位までを表示させるところが多いしな」

千早「いちまん……」

P「パッと見て目に入るかどうかの違いは大きい。これからもっと宣伝すれば……如月?」

P「無理もないか。最初のうちは、自分のCDを買った人が1万人もいるとは信じがたいだろうから」

千早「は、はい……」

P「でも嘘じゃない。現に、この前の番組の視聴者やライブ参加者から、何十通もファンレターが届いてる」

千早「ファンレター……」

P「あと、これはまだ未確定だけど……次の番組のお誘いも来ている。しかも2つ」

千早「2つも……」

P「ただ『蒼い鳥』に傾倒しすぎると一発屋になるから、二曲目も考え始めてて――」

千早「私が……私、アイドルに……」

P「……今さら自覚したのか。もう立派なアイドルだよ、如月千早は」

【水着撮影】


千早「水着……ですか」

P「これも名前を売るために必要なんだ。将来を考えて、ここは我慢してくれないか?」

千早「プロデューサーがそう仰るのなら……でも、私の体に需要があるとは思えませんけど」

P「ところが、ファンは色々な如月の姿を見たいと思ってるんだよ」

千早「……理解に苦しみます」

P「そういうのに敏感な年頃のはずなのにな。もっと友達が増えれば分かるかな」

千早「失礼です。私にだって友達の1人や2人くらい……」

カメラマン「如月さーん、準備できたんでお願いしまーす」

千早「あ……はい。今行きます」

カメラマン「はいこっち見てェ」

千早「こうでしょうか」クルッ

カメラマン「いいねェいいねェ、小さいのは最ッ高だねェ!」パシャパシャ

千早「……くっ」

P「…………」

カメラマン「スレンダーな体がなんともたまらないねェ」パシャパシャ

P「すまない」

千早「……屈辱です。ただの写真撮影だけでも不愉快なのに、水着のうえ……」

P「悪かった。まさかカメラマンがあんな可哀想な人間だったとは」

千早「これで成果が出なかったら、本当にプロデューサーを恨みます」

P「ごめんなさい」

千早「はぁ……もういいです。気分転換に、次の曲の話でもしませんか?」

P「そ、そうだな。『目が逢う瞬間』って曲なんだけど――」

【ストレス】


千早「プロデューサー。曲のことでご相談が」

律子「しーっ」

千早「…………?」


P「Zzz......」


千早「デスクで寝てるの……?」

律子「寝かせてあげましょう。ここ数日は家にも帰ってないみたいだから」

千早「帰ってない……? 律子、どういうこと?」

P「Zzz......」


P「Zzz......」


P「――あっ? い、いま何時だ!?」

律子「まだ夕方ですよ、ご心配なく」

P「そ……そうか。気付いたら寝てたってことは、やっぱり疲れてるのか……」

律子「最近、上手くいかないことも多かったんでしょう? ストレス疲れですよ、きっと」

P「……番組もライブも撮影も、如月が満足する形でやらせてやれなかったんだ」

律子「千早の前にまず自分でしょう。体を壊したら本末転倒ですよ?」

P「いや、如月のデビュー&50位入りで、一気に仕事が増えたんだ。ここで挽回しないと」

律子「………………」

P「よし。気合入れ直して頑張るか!」

千早「……プロデューサー」ズイ

P「うおっ!? い、いたのか如月」

千早「はい。そこの壁の裏に」

P「じゃあもしかして、今の話……」

千早「全部聞いていました。私のせいで、プロデューサーが……」

P「…………」

千早「……どうして……」

P「……律子は、如月が聞いてるって知ってたのか?」

律子「むしろ、私がこっそり聞いておけって言いました」

P「なんで……」

律子「どうせ頑張るなら、二人で支え合って頑張ればいいじゃないですか」

P「……俺はプロデューサーだぞ。アイドルに……」

律子「弱味を見せてはいけない、ですか? だからって一人で頑張って倒れて、何か生み出せます?」

千早「それに『一人で頑張られてもな』と言ったのはあなたです。ご自分の発言には責任を持って下さい」

P「ぐぅ……頭いいヤツが揃うと手に負えん……」

千早「何か言いました?」

P「何でもないです」

律子「ということで、今日は帰って寝てください」

P「次の打合せ資料が1ミリもできてないんだけど」

律子「明日やればいいことは明日やる! 千早、強制連行」

千早「分かったわ」ガシッ

P「ちょ……如月、俺はお前のために」

千早「身を削ってまで何かをしてほしいなんて、私は一言も言っていません」

P「…………」

千早「あと、私はもうプロデューサーを失いたくありませんから。あなたが休むなら何でもします」

P「……それを今言うのは、卑怯だろ……」

【Pの家】


P「……あの」

千早「はい」ジー

P「そんなに見られてると寝られない……」

千早「プロデューサーが寝たら帰ります」

P「ええ~……そうだ、そろそろ帰った方がいい。親御さんも心配してるだろうし」

千早「私は一人暮らしです。ご存知でしょう?」

P「そうだった……」

千早「いいから早く寝てください。子守唄でも歌いましょうか?」

P「恥ずかしいからやめて……」

千早「……プロデューサー?」


P「Zzz......」


千早「本当に寝たみたいね。これなら当分起きてこないでしょう」

千早「……いつも、いつも本当にありがとうございます、プロデューサー」

千早「私の我儘に付き合っていただいて、こんなになるまで頑張って」

千早「今日くらいは、ごゆっくりお休みになってください」


カシャッ


千早「……寝顔を待ち受けしたら怒られるかしら……」

千早「って、何を考えてるの、私……///」

【呼び方】


P「今日、夜にレッスン入ってたな。何時までか覚えてるか?」

千早「最長でも21時くらいですね」

P「じゃあその頃に迎えに行く。いつも通り家まで送るから」

千早「すみません、プロデューサー」

P「それが仕事だからな。それにしても最近は、ずっと如月といるような気がする」

千早「そうですね。出社から帰宅まで一緒の日もありますし」


春香「…………」ジー

春香「なんか、二人とも丸くなりましたね」

千早「そうかしら?」

P「だとすれば、如月と……お互い不満を言える関係になったから、だろうな」

春香「……『如月』って、距離が縮まったのに、まだ苗字で呼んでるんですね」

P「え?」

千早「ちょ、ちょっと。春香?」

春香「だってプロデューサーさん、律子さんのことは『律子』って呼んでるよ?」

千早「そ、そうだけど……プロデューサー、私はどちらでも結構ですから」

P「…………」

千早「…………」

P「ち……千早」

千早「はい!?」

P「うわっ、これ恥ずいな……///」

千早「うぅ、ずるいです、こんなの……///」


春香「……あれ。軽い気持ちで言っただけなのに」

【興味のあるもの】


P「きさら……ち、千早は、アレだな」

千早「な、何でしょうか……? 慣れませんね、これは」

P「千早千早千早千早千早千早千早!!」

千早「!?」

P「いっぱい呼べば慣れるかと思って千早」

千早「語尾につけないでください……それで、私が何なのですか?」

P「ああ、ほら。なんか淡々と物事を考えるフシがあるよな。歌以外のことには興味ないのか?」

千早「……まったく興味がない訳では。最近は友人を増やす努力もしていますし」

P「へぇー、千早がね……」

P「そういえば、たまに春香以外とも話してるな」

千早「はい。そもそも『友達が増えればなぁ』と言ったのはあなたでしょう」

P「……確かに言った。この前も思ったけど、よく俺の発言なんか覚えてるな」

千早「何か問題が?」

P「いや。俺ってそこそこ信頼されてるのかなって」

千早「信頼してはいけませんか?」

P「いけなくないです」

千早「………………」

P「………………」

千早「……あ、い、今の、無しで……///」

P「言って恥ずかしくなるなら言うなよ……///」

【家】


千早「どれがいいのかしら……」

P「どうした、千早。何見てるんだ?」

千早「あ……家のカタログです。もしトップアイドルになったら、どういう家に住もうかなと」

P「将来設計か。今のうちから考えてるなんて偉いな」

千早「取らぬ狸の、ですけれど。私はこの家など好みですが」

P「どれどれ……いやこれ、全部の窓が北向きだし、部屋も少ないだろ。リビングも狭い」

千早「一人で住むのなら、必要最低限の機能さえあれば問題ありません」

P「え? 旦那と子供は?」

千早「えっ?」

P「……普通に忘れてたのか。好きな人とかいないのか?」

千早「好きな、人……」


千早「…………」ジー


P「……なんだ?」

千早「い、いえ!? いません、そんな人!」

P「そんな全力で否定しなくても……そうか、いないのか」

千早「……ちなみに、好きな人などとはまったく関係の無いお話ですけれど」

P「ん?」

千早「その、あなたはどんな家がいいと思われますか? いえ、あくまで男性の意見の一例として……」

P「俺なら……そうだなあ」

P「子供は男の子が1人として、自由に使える部屋は3つ。東か南向きの窓と、ベランダも欲しいな」

千早「私は女の子2人が理想です。部屋は私と旦那さんの分を入れると3つでは足りませんね」

P「男の子がいないと寂しくないか?」

千早「それは男性の考えです。客観的に見れば女の子の方が育てやすいんです」

P「女の子は夜道とか危ないぞ。俺の帰りが遅くなった時どうするんだ」

千早「私が迎えに行きます。その頃にはアイドルを引退して共働きにはなっていないはずです」

P「それはそれで千早が危ないんじゃないか」

千早「40過ぎの女性を狙う男なんていません」

P「25で産んだら子供が5歳のとき30だろ。十分危ないから」

千早「そもそも引退する時期を25と――」


律子「……家の話は?」

【二曲目】


P「このライブが、『目が逢う瞬間』の初披露になる。うまく行くといいけどな」

千早「……プロデューサー。絆創膏とか持っていませんか?」

P「絆創膏? ケガしたのか」

千早「ケガ……というか」

P「……珍しく歯切れが悪いな」

千早「先ほど楽屋で、メインのアーティストの方に『アイドル風情が調子に乗るな』と言われまして」

P「…………あん?」

千早「黙っていたら腕を抓られたので、振り払って逃げてきました。でも、少し腫れてしまって……」

P「……千早は不器用だな」

千早「すみません。黙り通す以外のやり方が思いつきませんでした」

P「言い返さなかったのか」

千早「以前の私なら……でも、もし降板させられたら、私もプロデューサーも困りますから」

P「そうか。よく耐えたな」ナデナデ

千早「あっ……」

P「……ご、ごめん。思わず撫でてしまった」

千早「い、いえ……嫌では、ありません……///」

【快挙】


P「ご、ごごご、5万!? しかもランキング10位!」

千早「…………(呆然)」

高木「大したものだよ、キミも如月くんも。今夜はお祝いだな!」

律子「今月のシングルのラインナップが不作だったとはいえ……」

小鳥「それでも、二曲目で10位は快挙ですよ!」

P「……なんか、現実味が無い……」

千早「わ、私もです……とりあえず、春香に報告してきます」

P「俺は……そうだ、寝よう。これは夢だ」

律子「寝てる場合か! 追加で宣伝かけないと、私も手伝いますから!」

――
――――
――――――


P「ん~、あれから一週間経って、少しは落ち着いたかな」

律子「しばらくは色んなとこからの電話が鳴りっ放しでしたからね。嬉しい悲鳴です」

千早「……プロデューサー」

P「えっ、千早……まだ帰ってなかったのか?」

律子「……私、ちょっとコンビニ行ってきますね」ガチャッ

P「? 行ってらっしゃい」

千早「プロデューサー。良かったら……今日、うちにいらっしゃいませんか?」

P「……送り迎えで割と行ってると思うけど。改まってどうした?」

千早「そ、そういうことではなくて……」

P「…………」

千早「ランキング10位……ここまで連れてきてくれたお礼に、夕食をご馳走したいんです」

P「……二人だけで、お祝いってことか?」

千早「は……はい。駄目でしょうか……」

P「嬉しいお誘いだけどな……やっぱり駄目だ」

千早「…………」

P「年頃の女性の……しかもアイドルの家に、男性が上がりこむのはよくないだろ」

千早「……はい」

P「加えて、俺は千早のプロデューサーだ。もし世間にバレたら事務所まで……」

千早「……そう、ですね……その答えも」


千早「本当は、分かっていたのに……」

千早「でも……でも、私は……!」

P「つらいけど。千早がアイドルを続ける限り、俺も気持ちには応えられない」

千早「………………」




千早「…………えっ?」

千早「その……私のプロデューサーへの想いは、伝わって……」

P「さっきので、さすがにな……」

千早「でも私がアイドルだから、気持ちには応えられない」

P「……そうだよ」

千早「それなら逆に、もし十数年経って、私が普通の女性に戻ったら」

P「ちょ……言わなきゃダメか、その先……///」

千早「…………///」

P「……千早の傍で、気長に待つよ。千早のプロデューサーとして」

千早「はい……これからもよろしくお願いします。ずっと、ずっと……」



律子「あー、外は寒いなぁ。私も彼氏欲しいなぁ……」


終わり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom