「あるがままをさらけ出す覚悟さえあれば」 (45)
あまりに久しぶりにものを書くので色々指摘がほしいです。
誤字や描写不足、日本語がおかしいなどについては、レス番を教えていただけると大変
>>1が喜びます。
もちろん喜んでいただけるとやる気が上がります。
ではよろしくお願いいたします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391334807
1年も同じ環境にいれば、ある程度人はその状況に慣れていくのだろう。しかしながら彼、男はいつもの愚痴をこぼしていた。
「俺はこんなところにいるべきじゃない。もっと上を目指せる」
そんなことを1年間言い続けているだけで、特に何かを変える努力をしているわけでもない以上、最も環境に適応しているのではないのだろうか。そう思いつつも言わぬが華、男にも譲れないものがあるのだろうと理解し友1もいつもの受け答えを行う。
「それなら海外にでも留学してみるかい?きっと物事に対するスケールが変わると思うよ」
「いや、俺は日本人だ。そのことに誇りを持っている。それを捨ててわざわざ海外に行くなんてまっぴらごめんだよ。メリケン文化なんて肌に合わん」
これも決まった返事。所詮学生生活。同じサイクルでの生活しかしていない以上、出てくる話題が大きく変わることなぞそうはない。あるとすれば誰かが付き合いだしたとか、テレビの話題だとかその位の内容だろう。人付き合いの多い友1はその手の話にも造詣があるが、友人を友1を除いて作ろうとしない男にとっては、噂話や流行について考えることはなかった。
「またそんな実りのない話をしているの。男、いい加減1年も同じことを言っていて自分が惨めになってこない?あ、自虐芸ね。いつも優しい友2が助け舟を出してくれるものね。良い?聞いてるこっちが迷惑なの。それに友2の話も不快だからできれば呼吸するの止めてくれない?」
隣の机で縦肘をつきながら物凄い笑顔で、まるで傷口に塩を塗りたくるような、それでいて的確な事実と要求をしてきたのは、クラス内で「顔は最高。口は最悪」と名高い女1だった。
惨めだなんてわかっている。それでも言わずにはいられないんだよ。心の中で男は呟く。更にこの性格ブスめと口には出さずに罵る。そんな考えを読み取ったのか或いは沈黙した男が気に入らなかったのか女1は追撃を止めない。
「ほら、反論できる要素がないから黙っているのでしょう。クラスで浮いて、無駄な自尊心だけは高くて、それで人生楽しい?」
楽しいわけがない。第一志望の高校を受験する日にノロウイルスにかかり動けなくなる。何とか回復し第二志望だったこの高校に来たものの、体育会系の友2に弄られ続け、あまつさえ成績も彼とそう変わらないとあっては、男にとって高校生活は苦痛以外何物でもなかった。更にクラス替えがあったにもかかわらず、友1は良いにしても友2に女1と自分のちっぽけなプライドをぼっこぼこにしてくる筆頭が一緒にいるわけだから、教室で彼らの顔を見た男の顔は大層がっかりした表情であった。
「まぁまぁ、女1もその辺で。でもごめん、迷惑だったね」
一触即発。いや、男の性格では実際に言い合いや喧嘩になることはないとしりつつも、友1は矛先を抑える事ができなくなった女1に対し仲介の姿勢をとった。
「そうね。熱くなりすぎたわ。ごめんね友1」
友1に謝意を示しつつも、女1は男を睨んでいた。一度かみついた以上、感情にすぐブレーキが効くほど彼女もまだ精神的に成熟してはいない。部活動や勉学、課外活動等を真面目にこなしてきた女1にとって、男のように行動が伴っていないのに口が働く輩や、努力をしない人間のことを好ましく思っていない。そんな彼女からすれば、男のことを気に入るはずもなかった。
「男もあまりそんなことは言わないほうがいいんじゃないかな」
基本的に否定をしない友1であったが、女1の言うことも尤もであったのでこのときは珍しく嗜める発言をした。男はこれに少々驚きつつも、分かったと言って友1の席を離れ自分の席に戻った。
「今日も女1に罵声を浴びせられたんだって?相変わらず情けない奴だなぁ。女に言われっぱなしで悔しくねぇの?みんなそう思わねぇ?」
お前のことも言ってたわ。そう思いつつ机に突っ伏した顔を上げながら、男は声の主である友2の顔を見やった。
「ほら、なんか言えよ」
この男はいつもそうだ。自分の苛立ちを知らず揶揄し、中傷する。おかげでクラス内での評価も常にワーストカーストだ。男の思考は友2に対する怒りでいっぱいになった。この男を相手にするといつも自分が無力に思えてくる。運動神経もいい。コミュニケーション能力も高い。勉強だってそれなりにできる。その上で自分はお前よりも凄いという態度で絡んでくる。悔しさで涙が出そうになるもそれが更なる揶揄につながることがわかっていたので何とか堪える。
喧嘩なんてしたところで、どうせ運動能力の差で友2には敵わない。見下したい人間は実際のところ自分よりも上位に立っているのだ。本当は見下されるべきは自分なのだろう。短い間に怒りから自分に対する呆れまで含みながら男は答えた。
「ごめんなさい…」
何に対しての謝罪かまるで分らない。聞いていた人間も、自分もだれもわからない。ただ、まるで見当はずれな発言をしたことで勝手に周りで盛り上がり、自分に対する言及が来なくなったことは僥倖だろうと男は割り切った。ただ、一日中このごめんなさいでクラスが盛り上がり、肩身が余計に狭くなったことに気が付いたのは次の授業が始まってからだったが。
授業が終わり、件のごめんなさい騒動で気まずくなった男は足早に学校を後にしたが、このまま家に帰ってもイライラが収まることもなさそうだと思い、最寄り駅から少し離れた本屋に足を運んだ。特に読みたい本があるわけでもないが友1以外にまともにクラスメイトと話すことができないことは自覚していたので『コミュニケーション能力を得るには』などという、いかにもな自己啓発の本に手を伸ばした。
本の中には対話能力を上げるには恋愛の場数を踏むことなどと書かれている文面があったが、そもそもこんな本に手をかける時点で口説き文句すらわからねぇよと思わず突っ込む。つい声を上げてしまったが、幸い周囲にはだれもおらず男は安堵した。それこそ友2にこんな所を見られたら、コミュ障キチガイほら吹きヘタレなど不名誉な異名を欲しい侭にしてきたが、キモ男まで追加されてしまう。すでに手遅れ感が半端なくあるのだが、男にとっては死活問題だ。
考えた末にこれ以上の黙読はできないと判断、そして本棚へと戻した。
ほかにも何冊かの本・雑誌を手にしたが、結局漫画誌を立ち読みして満足してしまい、店を出た。
「ロクな本がなかったな」
本能のままに呟いただけで、本屋の品ぞろえについては別段不備がないのは理解している。それでも、心が納得していないが故に出てきた言葉だった。
まぁ詮無きことだと独り言ちて少し歩いていたら突然の事態に思わず声が出た。
「えっ?」
目の前で人が消えたのだ。否、正しくは目の前の人間がきれいにすっ転んだのだ。
「おっ、おい。大丈夫か?」
心配になったので男は転んだ人間、女子高生に手を差し出し声をかけた。制服を見て同じ高校、ネクタイのカラーで学年も一緒のようだ。反対側だったらパンツ丸見えだったのにとある意味で男らしい思考に一瞬誘惑されたが、ひどい転び方だったのですぐに頭の隅に追いやった。
「っ!!あ、その、ありがとうございます」
かなり痛いのか顔を顰めながら差し出された手を取った。それでも感謝を述べてくる女子高生に感心しつつ男が思ったことは、「可愛い」の一言だった。
黒髪にボブカット、150㎝程の低い身長ながらも制服越しでもわかる胸の起伏にすらりとした白い生足にそれを際立たせるかのような紺のソックスと黒の革靴。大きな瞳にあどけなさの残る顔つき。高校生というよりは中学生に間違えられそうな一歩間違えれば犯罪の匂いを醸し出す少女だった。
1学年8クラスほどの学校ではあったのでこんな娘がいれば気付くのがふつうであるのだが、交友関係が極端に狭い男にとっては今日初めて彼女のことを知った。
「消毒液と絆創膏あるけど使う?」
少女を引き起こした後、右ひざのあたりに赤みが買った擦り傷を発見した男は、すぐに鞄からそれらを取り出した。
男性にしては珍しくそんなものを持ち歩いている理由は、中学時代に美術の授業で小刀を使用した際に指を深く切った経験がトラウマになっているからだ。この為美術の授業がある日には必ずこの二つを携帯するようにしていた。切った瞬間は痛みがないが、血液がぼたぼたと垂れて周囲を侵食しだしたころにしびれるような痛みがやってくる。消毒をすれば激しく染みる。結局怪我をしてしまえば同じ痛みを再び味わうことになるのだが、すぐ治療ができる安心感を得る為に男は常に携行している。
「…そうですね。痛いですけど化膿したら大変ですもんね。お借りさせていただいてもよろしいでしょうか?」
消毒液を受け取った少女は、しばらくそれと睨めっこをするようにしていたが、意を決して患部に液を吹きかけた。染みる痛みにくぐもった声を出したものの、所持していたハンカチで出血部を拭い絆創膏を貼りつけた。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。歩けそうかい?」
「多分大丈夫だと思います。……いたっ!」
問題ないと態度で示そうとしたのだろう。少女はぴょんとその場で飛び跳ねたのだが、やっぱりひざに痛みを感じたようで右ひざのあたりを右手で抑えた。
下心がないかと言われれば、少しはあるがそれよりも見ていられないなと男は思い、左手で持っていた少女の鞄を引っ手繰った。
「家どっち?送るよ。ってか痛みでまた転ばれたりしたら目覚め悪いし」
下心がないよアピールを男なりにしたつもりだが、文脈の繋がりもなければ不器用な物言いであるため、女1当たりが聞いたらさぞ不愉快になるのであろうが、表情を見るに好意的に少女は受け取ったようだ。
「そんな、悪いですよ。でもそうですね。お願いしてもよろしいですか男さん」
男は驚いた。自分は少女の名前すら知らないのに何故?少なくとも同じクラスになったことはない。初対面のはずであるこの娘はまさか自分のことが好きなのだろうかと錯覚をしたがその考えはすぐに彼女の発言で改められた。
「あ、初めて話すのに慣れ慣れすぎですかね?えっと、噂はいつも女1ちゃんから聞いていたしよく教室にもお邪魔しているので、存じてなかったですか?」
「そんなことはないよ。あーっと、ごめん。覚えてないや」
記憶を手繰る以前に自分に強い叱責を浴びせてくる女1を視界に入れようと思ってはいなかったので、男が少女のことを見たことがないといったのは嘘ではなかった。無論見てはいるのだろうが記憶に残るほどのことではなかった。
「でも良かったです。一度男さんとはお話ししたいと思っていたので」
再びこの娘は自分に気があるんだろうか?そう思いつつも男は女1がどんな噂を流したのか知らないが、彼女との関係を考えればそれはまずないだろうと気持ちを切り替えた。
「俺なんかと話してもいいことなんかないと思うけど…」
「あ、そこの道を右です。そんな事ないですよ。女1ちゃんの噂よりも優しい人でしたし、それに男さんの話を聞いてると昔の自分と女1ちゃんの関係を思い出しちゃって懐かしくなっちゃいました」
にこりと笑顔を向けられ、どきりとしながらも男は少女の言葉が気になった。このおっとりした少女と勝気で平然と他人にきつく物事を言える女1が友人であることも驚きではあったが、この発言から鑑みるにまるで嘗ては自分と女1のような関係だったというのだ。
「どういうこと?」
「あはは。女1ちゃんには秘密にしてくださいね。私よりも多分女1ちゃんの方がこのこと気にしてると思うので。あ、少し長くなるかもしれないのでそこで話しませんか?」
ひょこひょこと歩きながらではあるが、自宅に着くまでには話し終わらないと判断した少女は公園のベンチを指さした。それにうんと男は返事をして、自販機でアイスレモンティーを二本購入すると先にベンチに座っていた少女に一本を手渡し、隣に腰を掛けた。少女が財布を出そうとするのを諌め、奢りであることを強調する。
「あまり優しくされちゃうとそのうち惚れちゃいますよ?」
えへへとはにかみながら冗談半分に少女がそんなことを言ってきたが、女性に免疫のない男にとってみれば破壊力満点を通り越して完全にオーバーキル状態となっていた。今なら彼女が死ねといえば死ねる気がすると飽くまで気がするだけであるが、完全に目の前の少女に夢中になっている自分に気が付いた。
「そんなに目を白黒させないでください。私なんかに惚れられてもいいことなんかないですよ。…、話が逸れてしまいましたね。くどいとわかってはいますがくれぐれも女1ちゃんには言わないでくださいね」
「わかったよ」
むしろこっちが惚れました。話が逸れてくれる方が最高です。そう思いながらも男は先程の続きを聞くことにした。
「中学時代、私は女1ちゃんに虐められていました」
その告白に男はどきりとした。他人にきつく当たるやつではあるが、そこまでするのかよとふつふつと女1に対して怒りがこみ上げてくる。その様子に気づいた少女は大丈夫ですからと優しく男を宥めた。男が落ち着いたのを確認してから少女は話を続けた。
「どちらかと言えばあなたと友2さんの関係に近いかもしれません。尤も女1ちゃんの場合は周囲を利用したりといった行為はせず、単独できつく言ってきましたけど」
そこまで聞いてるのかよと男は憂鬱になったが、少女が昔自分と同様の経験をしたことだけはよく理解ができた。
「それはもう学校に行く度にですからね。精神的なものが原因で体調を崩すこともありました。そんな状態が入学から1年ほど続いて2年生に進学した時にですね、何も言い返せなかった自分に限界がきたのか勢いに任せて彼女を引っ叩いたんです。その上で二度と話しかけないでと言いました」
君と僕とは違うよ。自分はそんな強さはない。そう男は思った。少女のように自分を変える強さなんてない。立ち向かう気概なんて持ち合わせちゃいない。同類に見えたこの少女もやはり自分とは違って何かはわからないが自分にはない強さを持っている。男は先程はその可愛さで彼女がまぶしく見えていたが、今は違った意味で彼女がまぶしく見えた。
少しの間沈黙が空間を包み込んだが、少し風が強くなってきたのと同時に少女が言葉を紡ぐ。
「それからは女1ちゃんは私に話しかけなくなりました。顔を突き合わせても気まずそうに俯くだけで。最初は彼女から解放されたことに私は安堵していました。でも時が経過して私はある罪悪感に囚われるようになりました」
少女はそこでアイスティーを口に含み、一呼吸置いた。
「私、友達がいなかったんですよ。女1ちゃんもですがね。彼女は部活の付き合いもあるから友達が多そうに見えたんですがプライベートで話すほど周りと打ち解けていなかったみたいです。私も運動が苦手だったしあまり人と話すことが得意ではないですか距離感を見ながら人と話す癖ができちゃったんです。いつも真面目に一生懸命に物事に取り組んでいた女1ちゃんは消極的な私のことを気に入らなかった。…いえ、改善できるように声をかけてたんだと思います。そう考えだしたら彼女に悪いことをしてしまったんじゃないかって」
「それはおかしいだろ!!どんな理由でも他人を傷つけて許す必要があるものか!!」
心からの叫びだった。男からしてみれば、どう考えても女1が少女を虐めてたとしか思えない。友達がいないから何を言っても許されるのか。そんな理屈は現在虐げられる側にいる男にとっては到底受け入れられる理屈ではなかった。
「そうですね。でも私がそう思ってしまったから。それからは寝ても覚めてもそのことで頭がいっぱいになりました。そこで私は思ったんです。振り返れば全力で私と距離感を考えずに接してくれたのは親を除けば彼女が初めてなんじゃないのかなと」
「それは………」
「男さんの気持ちを否定する気持ちは私にはまったくありませんよ。ただ、私の想いを、過去の経験を今同様の気持ちを味わっている仲間に知ってもらいたいんです」
さっきまでの怒りはどこへやら、彼女の笑顔を見るたびに自分という存在は音を立てて崩れていくのを男は感じた。まるで自分の心を置くまで見透かすかのような大きな瞳。その中に眠るネガティブな感情を振り払う笑顔に慈愛を感じる優しい声色。
「わかったよ。取り敢えず最後まで聞いてから考えるよ」
少女を受け入れることが正しいわけじゃない。根幹では少女1や友2への否定的な感情を振り払うことはできていない。それでも話をしたこともない自分を仲間だと言ってくれた少女の気持ちを男は尊重した。
「はいっ!ありがとうございます。結局のところ本心をむき出しに私に付き合ってくれた女1ちゃんと友達になろう。そう結論が出たのですから。それからの時間は早かったですよ。部活帰りの彼女を待ち伏せして引っ叩いたことときついこと言ってごめんなさい。それから友達になってくださいと返事も聞かずに一方的に話してました」
「あいつの反応はどうだったの?」
「目をぱちくりさせて気が付いたら土下座してました。私が起こそうとしても絶対に止めずごめんなさいを繰り返してました」
女1が他人に謝っている姿を想像できない男だったが、自分が虐めてた相手が謝りながら友達になってと迫ってくる様は想像したくはなかった。
「それから一週間くらいが経過してもう一度同じことを言ったんですよ。そうしたら女1ちゃんがか細い声で「良いの?」と返事をしてくれたんですよ。それからはこっちは親友だと思って交流させてもらってます」
成程と男は思った。この少女の勢いには舌を巻くものがあったが、結局のところ自分との違いは行動に移したかどうかの違いだったわけだ。
俺はこんなところにいるべきじゃない。もっと上を目指せる。
こんなことを自分が言っていたのは結局のところこの高校にいることがつらいのではなく、自分を変える力がほしかっただけだ。高校そのものが気に入らないのではない。ただ、友2のように適当に生きているように見えた人間に詰られるのが嫌だっただけだ。
「ふふ。少しは参考になったみたいですね。良かったです」
少女が男の表情を伺うと、先ほどまでとは違って目には強い意志が宿っているのが掴めた。
「足の痛みもだいぶ良くなってきたのでここでお別れしましょうか」
一人で考える時間も必要だろう。そう判断した少女はベンチから立ち上がる。
「ありがとう。ほとんど初対面の自分に辛いだろう話をしてくれて」
「何言ってるんですか?男さんは私と似たような経歴のいわば仲間ですし、優しくしてくれたんです。気にされなくていいんですよ。だから頑張ってください」
そういって少女は踵を返して公園を後にした。少女を見送ってから男が最初に考えたことはそういえば彼女の名前聞いてなかったと本来考えなければならないこととは全く違う内容だった。
少し休憩します。
あれ、男ってその気になればリア充になれるんじゃね?
指摘というかもう少し改行を増やしてもらえると読みやすくなるはず
とりま期待
>>24
助言ありがとうございます。
少し改善させていただきます。
では再開します。
家に帰宅して自室の椅子に腰かけながら男は今日の出逢いについて改めて考えを纏めた。
「彼女と違って俺は自分が悪い部分が先に判っている。自分の周りの環境を否定しているんだ。その環境に身を置いているほかの人間からすれば腹も立つだろうな」
分かりきったことではあるが自分は周りが見えていなかった。
自分に肯定的な友1だけが理解してくれれば他はどうでもいい。
そんな風に考えつつも周りからの評価が常に気になっていた。
それに伴う焦りや劣等感が先の発言をつづけた原因なのだろう。
だが、彼女の話を聞いた今、自分の考えを改めるきっかけができた。名も知らぬ少女に惚れてしまい、自分を変えるだなんてどんな三流ドラマだよと男は苦笑してしまった。
「でも、パッと見おっとりしたあの娘がやってのけたんだ。確かに俺とは違う強さを彼女は持っているんだろう。だが、だから何だってんだ。俺は俺でいいんだよ。あるがままをさらけ出す覚悟さえあれば」
シナリオなんていらない。
ただ、自分の真っすぐをあの二人に、友1に、クラスにぶつけてやろうじゃないか。
すでに自分の評価なんて全くと言っていいほどない位に友2がぶっ壊している。
ならば、あとは進むだけだ。
失敗すれば黒歴史が一つ増えるだけだと割り切ろう。
気が付けばいつもは就寝する時間になっていたのだが、風呂はおろか食事もとっていなかったことに気が付き、それらを済ませた後ベッドで横になった。
「おはよう友1」
男は教室に入ると既に席についていた友1に話しかけた。
声色がやたら晴れやかで一瞬男だと気が付かなかった友1であるが、表情を見ても疑念が広がる一方だったので思わずそのままの感想を述べた。
「おはよう男。なんだかいつもと違ってかなり機嫌がいいね」
「いや、これから黒歴史を一つ追加するところだ。でも、それが俺にとって必要なことだと思うからお前には見届けてほしい」
目の前の人間は、こんなに真っ直ぐな感情をぶつけてくるような手合いだっただろうか。友1はたった一日でこれだけ変化を催した人間を見たことがなかった。
それでも、これまでの男と違って前にあった危うさみたいなものが無くなり、不思議と安心できる雰囲気をまとっていたため奇妙なくすぐったさのようなものを感じつつ友1は彼を温かく見守ることにした。
あるがままの心で生きようと願うから人はまた傷ついてゆくんだよなぁ……
改行してください
「OK。何をするかわからないけど程々にしときなよ」
「あぁ、ありがとう」
後は時間を待つだけだ。男は席に戻りその時を静かに待っている。
ショートホームルームが終わり一限の授業を迎えるのだが、本日は担当教諭が忌引きのため欠席であることから自習となっていた。
担任が教室から離れるのを確認した友2は昨日の話題でさっそく男に絡んできた。
「よぉ男。昨日はごめんな」
友2はにやにやした表情を隠しもせず、昨日のごめんなさい騒動をちゃかそうとしていた。
いつもは不快で怒りが頭から離れなくなる男だったが、このときは何故か安堵した。
そして覚悟を決めて友2に返事をした。
「あぁ。入学してからの俺の態度がひどすぎた。
だからお前がそれを見かねて俺をイジラレキャラにすることできっと助け舟を出してくれてたんだろうがもう大丈夫だ。
これまでありがとう。俺はこんなところにいるべきじゃない。もっと上を目指せる。
こんなふざけた態度で学校全体を見下してたんだよ。
ほんと何様だ俺は。そんな高尚な人間じゃないのにな。
だから、友2も女1もクラスのみんなも済まなかった!!
こんなふざけたやつを許してくれとは言わんが謝罪だけは聞いてほしい」
話しながら教壇の前に歩き、そこにたどり着くと男はその場で土下座した。
女1の話を受けたからではないが、自分が謝る形はそれが自然なのだとこの時は感じていた。
他人を嘲り自分のプライドを満たす。そんな下卑た考えを高校入学からずっと隠しもせずクラスメイトと接してきた以上土下座でも許されるとは思っていない。
友2や女1の態度に決して不満がないわけじゃない。
だが原因は自分の態度から始まっているわけだし、彼らが悪いからと言って自分が悪くなくなるわけじゃない。
きっと少女もこんな気持ちで女1と話をしたのだろうと思うと少し気が楽になった。
「お、おい。もうわかったから」
「あぁ、他のセンコーに見られるとまた面倒なことになるから」
クラスメイトらは謝罪を受け入れたというよりもただ狼狽していた。
何故か急に謝られた位にしか思えなかったのだ。
正直なところ、男が思うほどクラスの人間は彼に関心があったわけではない。友2が絡んでるのを見てそれを助長してたに過ぎない。むしろ自分たちが下手をすると虐めをしてて男がおかしくなってしまったのではないか。そんな風な印象だったためだ。
男も教師まで出てくる騒ぎになると面倒だと判断し、頭を上げ席に戻った。
その顔は憑き物が落ちたようで大層晴れやかだった。
「成程」
両隣の席に座っている生徒には多分聞こえていただろう。
友1は誰にともなくぽそりと呟いた。
つまるところ男は環境を変えず自分を変えたのだ。
そうすることでおそらく環境も変わるだろう。自分には出来ないことだ。
自分が男の立場であったならおそらく友2とは殴り合いになっていただろうし、女1とも壮絶な罵り合いをしたはずだ。
誰のことも否定せず、周りを受け入れる姿勢から友1には敵がいない。
詰まる所自分の感情をさらけ出すことで敵を作ることが嫌だっただけだ。
男のように作ってしまった敵に対して攻撃をせず、それこそ大人の対応をすることは難しいだろう。
クラスの大半はその意味に気が付いていないだろうが、男が気付いてほしかった三人にはしっかりとその意思が伝わっていた。
友1も、女1も、友2も確かに彼の本気がその時初めて理解できたのだ。
「今度は学年中で噂になってますよ男さん」
昼休みを迎え友1と弁当を食べていたら、ひょこりと声をかけてきたのは昨日の少女だった。
「あぁ、君か。昨日はありがとう。おかげで色々吹っ切れたよ」
男は素直に礼を述べた。
正直このおっとりとした可愛らしい少女を前にすると自身の体温が僅かながらも上昇していくのを感じるが、取り敢えず今日の話が優先だろう。
「どういたしまして。それで女1ちゃんは何て言ったのかな」
あの後友2も女1も特に男に何かを話しかけてはいない。
あんな風に直球でボール毎自分が体当たりをしてくるような投球では会話のキャッチボールなんてできない。
それをわかった上でこの少女は女1に話を振ったのだ。
「なっ、なんか言う必要があるの?原因はこいつにあるんだから謝って当然よ!!て言うかあんたたちいつの間に知り合いになってんのよ!!」
「ツンツンな女1ちゃん可愛いね。昨日転んじゃったときに男君に介抱してもらったの。えっと、友1さんはじめまして」
少女はそう言って友1にお辞儀をした。
女1の隣の席に座っているため、名前くらいは少女も聞いていたのだが、話をしたのはこれが初めてである。
「女2さんだよね。隣のクラスに可愛い子がいるって男子の間でよく噂になってるよ。声をかけてもらって光栄だよ。よろしく」
やっぱり人気なのか。
というかそんな噂があったのかと男は少し焦りを覚え、それを払拭するかのようにほほを人差し指で掻いた。
「もしかして口説かれてます?でもダメですよ。私今気になる方がいますので」
この発言に教室内にいた男子が聞き耳を立て始め、男はショックを隠しきれてなかったりするのだが、もっと感情をあらわにしたのは女1だった。
「ちょっと!!そんな相手がいるなんて聞いてないわ。あんたに恋愛はまだ早いわよ。絶対そいつコンクリ詰めにして港に沈めてやるから誰か教えなさい」
こんな姑がいる限り女2との恋愛はあきらめた方がいいなと聞き耳を立てていた男子の大半は話を聞くのを止めた。
リスクよりリターンを考えるのが現代社会の風潮なのだ。
「心配してくれてありがとう。でも私のことは私が決めるよ。ねっ、男さん」
相も変わらぬ笑顔を向けられ男は気が付いた。
昨日初めて会話をし、今日初めて名前を知った相手であるが、この少女が求めているのはきっとそういう事なのだろう。
ここで覚悟を決めろと、そう言っているのだ。
「おっとりした娘だと思ってたけどとんだ悪女に引っ掛ったみたいだね」
「男さんが失礼なのは生来のものだったみたいですね」
まるで友1といつもの会話をしているような錯覚に男は囚われた。
そして彼の周りからあらゆる音と景色がそぎ落とされ、目の前の女2だけが視界に残った。
おそらく最初は冗談だったのだろうが、気持ちがお互いに判りすぎてしまったようだ。
そしてさらにその奥の気持ちを知りたいと。
「女2さん、あにゃたに惚れました。ちゅきあってください」
二回も噛んだ。
顔から火が出ているんじゃないのか。
そう思った途端に男の中で静寂していた空間と視界が元に戻った。
告白しやがったと周りはどっと盛り上がり、女1は自分を睨んでいる。
友1は気が付いたら席を離れていた。
「締まらない性分もきっと男さんの良いところなんですよ。可愛らしくていいと思いますよ。返事ですが、これを返事にさせてもらって良いですか?」
そう言うと女2は男の胸に飛び込み背を伸ばして突然のことにぽっかりと開いた彼の唇に自身の唇を宛がった。
こうして罵倒と祝福とヤジを一身に集め、校内に一組のカップルが誕生した。
END
短いのと回収していない伏線がいくつかありますが、本編そのものについてはいったん区切りをつけさせていただきました。
一番の理由としては友2を本当に友達だと思えない人が多そうであること。
私の考えでは彼は男の友達の表現で相違ないだと考えておりますが、こんな奴は友達とは言わないという意見も間違いないと思います。
よってこの伏線は回収せず、アフターシナリオ等は需要があった場合のみ書いていく方針にしました。
またスレッド消費数が少ないので、他の話も書いていったら書き込んでいく予定です。
この話の続きや番外編は1週間から2週間ほどで完成させ、同時進行で別の話も書いていきたいと思っています。
目標文字数は前者が7,000字ほど、別話も似たような文字数になってくると思います(今回が約11,000字)。
定期的にスレッドは開いていますので、批評やテーマのリクエスト等があればどんどん書き込んでください。
申し忘れましたが、何卒よろしくお願い申し上げます。
グダグダくっちゃべってないでとっとと書けい
あと地の文は句点毎に1行、行間開けた方がもっと読みやすい
このSSまとめへのコメント
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