照「…菫何やってるの?」 菫「見て分らないか」(571)

菫「体をチョコでコーティングしてるんだ」

照「」

照「…菫とは3年近い付き合いになるけど意味が分らない」

菫「やれやれ…お子様の照には分らないか」

照「たとえ私が100歳のおばあさんでも分らないと思うよ…」

菫「今日はバレンタインだろ?」

照「うん…今年も100個以上貰った」

菫「だから私もチョコになって行くんだ」

照「どこに…?」

菫「宥の所に決まってるだろう」

乗っ取っていい感じ?

照「……頭大丈夫?」

菫「極めて正常だ。狂っていたらこんなことはしない」ペタペタ

照「……」

菫「なんだその目は」ジト

照「いや、遂に菫がおかしくなったと思って……」

菫「だからおかしくなんてなってないと言ってるだろ」

照「そんなこと言ってるのがおかしくなった証拠」

照「菫本当に大丈夫? 頭打ったとか……」

照「……」

菫「おい、何をしている。コーティングの邪魔だから離れろ」

照(何このたんこぶ……すっごく大きい……)サワサワ

菫「おい照」

照「菫、このたんこぶは?」

菫「たんこぶ? 何の事だ」

照(本人は気付いてない……ってことは……)

照(これが原因……?)サワサワ

菫「おい」

照「……どこかで頭を打った記憶とか無い?」

菫「無い」

照「誰かに襲われた覚えとかは?」

菫「校内でそんなことが起こってたまるか」

菫「分かったらいい加減離れろ。私の頭を触るな」

照「……」スッ

菫「まったく、宥が待ってるんだ。余計な時間を取らせるな」

菫「早くしないとバレンタインに間に合わなくなる」

菫「それまでにコーティングを済ませて、宥のところに……」

照(キングオブヘタレとまで言われた菫がこんなこと……明らかに何か異変が起きてる……)

照(一体何が……)

誠子「失礼します」ガラ

照「あ、誠子……」

誠子「おはようございます、宮永先輩。弘世先……輩……」

菫「ふふ、待っていてくれ宥……もうすぐ行くからな……」ペタペタ

誠子「えっと、宮永先輩?」ボソ

照「なに?」

誠子「弘世先輩は一体何をして……?」

照「全身をチョコレートでコーティングしてるらしい」

誠子「いや、それは見れば分かりますけど……」

菫「ふふ……」ペタペタ

誠子「一体何のために……?」

照「自分自身がチョコになって、松実さんにプレゼントするらしい」

誠子「……」

誠子「ヘタレこじらせ過ぎて頭おかしくなっちゃったんですか……?」ボソ

照「それで積極的になるならずっと前におかしくなってると思う」

照「頭にすっごく大きいたんこぶが出来てるから、たぶんそれが原因」

誠子「たんこぶ……?」

誠子「ってことは頭を打ったからおかしくなって……」

照「うん、現状で出せる結論はそれだと思う」

誠子「どうすれば元に戻って……って何やってるんですか先輩!?」

菫「騒々しいぞ……一体なんだ?」

誠子「なんで服脱ごうとしてるんですか!?」

菫「脱がないと全身にチョコを塗れないだろ。何言ってるんだお前」

誠子「ほ、本気でそんなこと……」

照「……菫。冷静になって考えて」

照「全身チョコ塗れの人が自分に迫ってきたらどう思う?」

菫「そんなトチ狂ったヤツこの世の中に居る訳ないだろ」ヌギヌギ

照「えっと、じゃあ菫は全身チョコ塗れの松実さんが自分に迫ってきたらどう思う?」

菫「宥はそんなことしない」

照「……」

照「誠子、私もう帰るね」ハァ

誠子「ちょっ。何言ってるんですか先輩!?」

照「今の菫を説得するのは無理だと思う……言葉が通じないから」

照「それにこれを機に距離が縮まるかもしれないし……ちょうどいいよ。うん」

誠子「なにでどうでもよくなってるんですか!? 放っておくなんて絶対にダメですって!」

照「菫はもう麻雀部を引退してるから、警察に捕まっても大丈夫だよ」

誠子「そういう問題じゃありませんって!?」

菫「おいそこの2人。暇なら手伝ってくれ」

菫「背中にチョコを塗れなくて困ってるんだ」

誠子「っていつの間に上半身裸に……!?」カァァ

照「誠子が手伝ってくれるって」

誠子「ちょっ」

菫「そうか。亦野、頼まれてくれるか」

誠子「え……そ、そんなこと」

菫「お前にしか頼めないんだ。やってくれ」

誠子「うっ……み、宮永先輩……」ウルウル

照(そんな目で見ないで欲しい……)

菫「早く」

照「はぁ……私がしてあげるよ」

誠子「!」

菫「そうか、助かるよ」

照「その大きい筆みたいなのを使えばいいの?」

菫「ああ、ムラなく綺麗に頼む」


照「誠子、私が時間を稼ぐからここの鍵を持ってきて」ボソ

照「元に戻るまでここに閉じ込めよう」

誠子「ほ、本気ですか先輩……?」

照「治す方法が分からないならそうするしかない」

誠子「……分かりました。至急持ってきます」

照「お願い」

菫「おい照、無駄話してる時間なんて無いぞ」

照「今行くから」

誠子「わ、私急用を思い出したのでちょっと出かけますね!」ダダッ


菫「忙しないヤツだ……何をあんなにも慌ててるんだ」

照「忘れ物でもしたんだよ、きっと」

菫「それにしても急にどうした? さっきまでは帰ろうとしてたくせに」

照「気が変わっただけ。やっぱり菫の恋を応援しようと思って」

菫「そうか……ありがとうな、照」

照「どういたしまして」ペタペタ

照(百年の恋が頭打ったせいで終わりだなんて、流石に可哀想だしね)

照(早く来てくれればいいけど……)ペタペタ

菫「ふふ……」

――――――――――――――――――――――――――

誠子(急げ急げ……!)タタッ

誠子(今の先輩なら何をし始めるか分からない……!)

誠子(弘世先輩と麻雀部のためにも……早く……!)

淡「あ、いた! おーい! 亦野せんぱーい!」

誠子「淡……」

淡「ふふ、探しましたよー。どうしたんですか? そんなにも急いで」

淡「部室なら反対側だと思いますけどー……」

誠子「今大変なことが起こってるんだ。話は後でいいか?」

淡「いや、良くないですよ。こっちも亦野先輩を探してたので」

誠子「私を……?」

淡「はい。まあ、こうやって見つかったので結果オーライですが」

誠子「私に何か急用でもあるのか?」

淡「はい。それはもう大切な用事が」

誠子「一体何を……?」

淡「その前にー……照先輩はどこにいるか知ってますか?」

誠子「宮永先輩なら弘世先輩と一緒に部室にいるけど……」

誠子(照先輩……?)

淡「そうですか。ありがとうございます、それじゃあおやすみなさい」ニコ

誠子「えっ……?」


ブォン


誠子「はぅ!?」ガツーン


ドサ…


淡「うふふ……」

淡「これでいいんですよね、尭深先輩?」ニコ

尭深「うん」

淡「よーし、それじゃあ運びましょうか。保健室とかでいいですよね?」

尭深「……」コクリ

淡「了解です。私こっち持つんで、先輩はそっちを」スッ

尭深「……」スッ

淡「運んだ後でいいんで、例の物くださいね」ニコ

尭深「うん」


誠子「あぅ……」チーン

―――――――――――――――――――――――――――

宥「……」ボー

玄「お姉ちゃん」

宥「ひゃあ!?」

玄「あ、ごめんね急に話しかけちゃって……」

玄「驚かせちゃったよね、大丈夫?」

宥「う、うん。大丈夫……」アハハ

玄「昨日一緒に作ったチョコ、もう渡したの?」

宥「……ううん、まだ渡してない」

玄「え……も、もう放課後だよ!? 早く渡しに行かないと!?」

宥「う、うん……分かってるつもりなんだけどね……」

宥「……」

玄「そんなんじゃダメだよお姉ちゃん……ちゃんと勇気出さなきゃ……」

宥「……でも」

玄「渡すチャンスはいっぱいあったんだよね? 何がそんなにも心配なの?」

宥「そ、それは……」


憧「部長は本命以外のチョコ受け取らないから、それが心配なんでしょ」


宥「!」

玄「憧ちゃん……」

憧「渡せないでいるんだろうなー、って思ってたけど。予想通りだね」アハハ

憧「あとこの話めっちゃ有名だよ? 知らなかったの玄?」

玄「初めて聞きました……」アハハ

憧「まあクロはクロで虎姫様にご執心だし、しょうがないか」

玄「ななっ……」カァァ

宥「そういえば……クロちゃんは宮永さんにチョコ渡したの?」

玄「……渡してないです」

憧「ってそれじゃあクロも人のこと言え無いじゃん」

玄「そ、そういう憧ちゃんはどうなのですか! 穏乃ちゃんに渡せたの!?」

憧「渡したよ? 今日の朝一にはい、って」

玄「そうなんだ……」

宥(憧ちゃんすごい……)

憧「姉妹揃って臆病になって……そんなんじゃ他の誰かに先超されちゃうよ?」

憧「ただでさえあの2人は競争率高いのにさ」

憧「宮永先輩なんてチョコ100個以上もらったとかいう噂だし」

玄「え……」

憧「部長も受け取ってないだけで100人以上から渡されててもおかしくないよ?」

宥「……」

憧「奥手なのは構わないけど……手遅れになっても知らないよ?」


玄宥「……」


憧(これくらい言わないと分かんないだろうからなぁ……)

憧(灼もそうだけど、ウチのチームヘタレ率高過ぎ……)ハァ

憧(シズはそれ以前に恋愛事に疎過ぎるけど……)


ガチャ


憧「?」

玄「あ、穏乃ちゃん……」

穏乃「こんばんわ、玄さん。宥さん」

穏乃「憧、借りてもいいですか?」

憧「え?」

宥「う、うん……大丈夫だけど……?」

穏乃「ありがとうございます」グイ

憧「えっ。ちょ、ちょっとシズ!? いきなりなに!?」

穏乃「来て」

憧「行くのはいいけど用件を……ってちょっと! 引っ張り過ぎだって!?」

穏乃「……」テクテク

憧「ってコラ! 話聞きなさい! シズ!!」

憧(もう、なんだって言うのよ……ってなにこのたんこぶ……)



玄「つ、連れてかれちゃったね……」

宥「うん……穏乃ちゃん、なんか様子が変だったような……?」

玄(心配だけど……私たちは人のことを心配出来るような立場じゃ……)

晴絵「2人ともおはよー」

玄「赤土先生……」

晴絵「さっきシズと憧がすごい勢いで通り過ぎてったけど……なんかあった?」アハアh

宥「それが私たちもよく分からなくて……」

晴絵「特にシズの様子がおかしく見えたけど……まあどうでもいっか」

晴絵「ところで照と菫知らない? 渡しときたい資料があってさ」

宥「2人なら虎姫の部室にいると思いますけど……?」

晴絵「そっか。んじゃどっちか渡しに行ってくれないかな?」

晴絵「今から別の用事があってさ」

宥「……」

玄「……」

晴絵「どっちかでもいいし、なんなら2人で行ってくれても……」

玄「わ、私が行きますね」

宥「!」

晴絵「そっか。んじゃ頼んだ」ニコ

玄「……お姉ちゃんも行くよね?」

宥「私は……」

玄「憧ちゃんの言う通りだよ……いつまでも臆病なままじゃダメ」

玄「だから、ね? お姉ちゃんも……」

宥「……」モジ…

晴絵(ふふ、青春してるなぁ……)

宥「私、絶対にあとで行くから……クロちゃん先に行っててくれるかな」

玄「お姉ちゃん……」

宥「少しだけ心の準備がしたいの……だから」

玄「分かった。絶対に来てね?」

宥「うん」ニコ

玄「それじゃあ、行ってきますね」

晴絵「ごめんね面倒かけさせて。私も職員室戻らないとだから、途中まで一緒に行くよ」

宥「2人とも行ってらっしゃい」

玄「お姉ちゃん! 約束だよー!!」


宥「……」

 
 

――――――――――――――――――――――――――

照「……」ペタペタ

菫「……」

照(遅い……誠子は一体何をして……)

菫「なあ照、もう塗れたか?」

照「ま、待って。あと少し」

菫「それを言われて10分は経つと思うんだが……」

照「ね、ねえ菫、どうしてこんなことをしようと思ったの?」

菫「どういうことだ?」

照「気持ちを伝えるならもっと良い方法があると思うけど……」

菫「照、今日はバレンタインだぞ? 想いと共にチョコを渡す日だぞ?」

照「それは分かってるけど……」

菫「相手を好きだという気持ちと渡すチョコの質は比例していないといけない」

菫「さらに言うなら、チョコの大きさや質の良さがそのまま想いの大きさを現すと私は思う」

照「分からないこともないけど……」

照(それがどうしてこんな変態行為に繋がって……)

菫「宥に予め作ってあったチョコを渡そうとしたとき……私は絶望した」

菫「こんなものじゃ私の想いの強さを現せていない、小さ過ぎるしお粗末過ぎると」

菫「チョコを作り直す必要があった。あんなものを宥に渡す訳にはいかなかった」

菫「しかし、そう思った時には時間がなかった……もちろん材料も調理器具も無い……」

菫「私は絶望した……悲しみに打ちひしがれた……」

照(なんでそんなドキュメンタリーみたいな語り口調で……)

菫「もうダメだと無気力になっていた私に一筋の光が差した」

菫「渋谷がこの溶けたチョコを持ってきてくれたんだ」

照「尭深が……?」

菫「そしてこのドロドロになったチョコを見た瞬間、私は気付いた」


菫「バレンタインとは……私自身がチョコになることだと」


照「……はぁ」

菫「全身をチョコでコーティングし、リボンを巻き付け……」

菫「そして私は宥にこう言うんだ」

菫「『ハッピーバレンタイン。ずっと好きだった。私の気持ちを受け取ってくれ』と」

照「……菫はそれで松実さんが受け取ってくれると思ってるの?」

菫「勿論だ。絶対に喜んでくれる」

照「普通はドン引きだと思うけど……二度と口聞いてもらえなくなってもおかしくないし……」

菫「それはお前がお子様だからそう思うんだよ」フッ

照「……」イラッ

照(もうこのまま行かせようかな……)

菫「ふふ……今行くから待っていてくれ宥……今日こそ結ばれて……」ニヤニヤ

照(バカなことやってるのに、こんなにも幸せそうな顔して……)

照「はぁ……菫、私が思った事を聞いてくれる?」

菫「なんだ?」

照「まずこうやってチョコを体に塗っても体温で溶けるから、」

照「きっと松実さんの所に着く頃にはめちゃくちゃ汚くなってる」

菫「!」

照「相手を思う気持ちがチョコの質と比例するなら……その汚いのが松実さんに対する菫の気持ちってことになる」

菫「そ、そんなものは絶対にダメだ!」

照「だよね。だから、全身をチョコでコーティングするのはやめよう」

菫「し、しかしだな……ここまで時間をかけたのに今さら……」

照「時間はまだあるから大丈夫だよ」

照「とりあえず、松実さんの所に行く前にシャワールームに行って体洗ってきて」

菫「代わりのチョコはどうするんだ? 今から作っている時間なんて無いぞ?」

照「そこにまだまだいっぱいあるから、それを使えばいい」

菫「コイツを……」

照「菫の発想はそのままに、少しアレンジを加えれば良いと思う」

照「そうすれば、綺麗なままで美味しくチョコを食べてもらえるよ」

菫「……」

照「具体的に言うと―――」

自保守

―――――――――――――――――――――――――――――――――

菫「照、色々と世話になったな」

照「……私は思った事を言っただけだから」

菫「お前のアドバイスが無ければ今頃……」

照「早く行きなよ、チョコ冷めちゃうよ。それに時間がたくさんあるわけでもないし」

菫「それもそうだな……礼を言うのはまた今度にさせてもらおう」

菫「じゃあな」バタン


照「……」

照(ヘタレの菫にとって、これはある意味チャンスなのかもしれない……)

照(もしこれで上手く行かなかったら、あと3年はかかるだろうな……)

照(まあ、何はともあれ……)


照「疲れた……」ハァ


淡「ふふ、お疲れ様です。照先輩」

照「淡……」

淡「いいんですか? 行かせちゃって」

照「うん、間違っても警察沙汰にはならないだろうから……」

淡「あんな菫先輩でも後押ししてあげるなんて、先輩は優しいですね……そういうところも大好きです」ニコ

照「……」

照「淡?」

淡「なんですか?」

照「その喋り方、どうしたの?」

照「それに私の呼び方もおかしい……いつもなら、テル、って……」

淡「ふふ……」

照(も、もしかして……)

淡「ねえ照先輩。チョコ、作ってきました。食べてもらっていいですか?」

照「あ、淡からのチョコは朝に貰ったと思うけど……」ジリ…

淡「もう一つあげたいんです。食べてください」

照「……」ジリ…

淡「……どうして距離を取るんですか? 逃げるような真似しないでください」

照「……」ゴクリ

淡「そんなに怯えられると少し傷ついちゃうんですけど……」

照「ご、ごめんなさい……でも……」

淡「私に何か変なことされるかもとか思ってます?」クス

照「……」

淡「ふふ……」

淡「ねえ、知ってますか先輩?」

淡「そういうことを想像するってことはつまり……」

淡「そういうことをされたいっていう願望があるってことなんですよ?」

照「……来ないで」

淡「じゃあ行きません」ニコ

照「えっ……?」

淡「ふふ、冗談ですよ冗談。先輩が私のこと怖そうにしてるから、ちょっと脅かしてあげようって思って」

淡「別に先輩に変な事しませんよ。そんな趣味ありませんし」アハハ

照「……」

淡「ただ単にこのチョコを食べて欲しいだけなんで。ここ、置いときますね」

淡「先輩にはこれ以上近付きませんから安心してください」ニコ

照「……」

淡「もう、そんな顔して」クス

淡「そこまで疑心暗鬼になられると本気で傷ついちゃいますよ?」

照「ごめん。いつもの淡と全然違うから、戸惑ってて……」

淡「私は至って普段通りだと思いますけど……あ、菫先輩はかなりおかしかったですね」

照(自分の異常には気付いてないのに菫がおかしいってことには気付いてる……)

照(一体何が起こって……)

淡「先輩、チョコ食べてください。感想が訊きたいです」

照「……」ジー

淡「もう、何も入ってませんよ。なんでそんなにも警戒するんですか」アハハ

照「……なんとなく、嫌な予感がして」

淡「頑張って作ってきた物を嫌な予感がするって……さっきからホント酷いですよ?」

照「……家で食べるから、感想は明日でもいい?」

淡「何言ってるんですか、今食べてくださいよ」

照「……」

淡「はぁ……そこまで疑うなら私が毒味してあげますよ」

照「えっ?」

淡「本当は全部食べて欲しいのに……」ゴソゴソ

照「……」

淡「どうですかこれ、ショコラみたいな感じに仕上げてみたんです。美味しそうでしょ?」

照「……」ゴクリ

淡「ふふ、本当に甘いもの大好きですよねー……」

淡「どれを食べて欲しいですか? 先輩が選んでください」ニコ

照「……私が選んでいいの?」

淡「何も問題ありませんので」

照「……じゃあ、これ」スッ

淡「頂きまーす……あむ」

照「……」

淡「うん……なかなか良い出来れす……」モグモグ

淡「はい、先輩もどうぞ」ニコ

照「……」

淡「これ以上疑われると本気で傷ついちゃうんですけど……」

淡「私ってそんなにも信用無いのかな、って……」ショボン

照「っ……」

淡「先輩……」

照「……あむ」

淡「!」

照(あ、美味しい……)モグモグ

淡「どうですか?」

照「うん、すごく美味しい……こういうケーキみたいなのも好き……」

淡「それは良かったです。量もそんなに無いんで、全部食べてくださいね」ニコ

照「うん……」モグモグ

淡「……」フフ

照「……ごめんね淡、変に疑っちゃって」

淡「どうしてそんなにも警戒したんですか? いつもなら出されるもの全部ぱくぱく食べるのに」

照「……」

淡「ま、言いたくないなら言わなくてもいいですけど」クス


照(……松実さんのことが好きな菫は、あんなおかしなことをしてまで気持ちを伝えようとしていた)

照(もし私の勘違いじゃないのなら……淡は私のことが好きだ)

照(菫があんな風になったのなら、淡が私に対して何かとんでもないことをしようとしてても不思議じゃ……)


―――カチャン


照「えっ……?」

淡「……」

照「……何してるの?」

淡「鍵を閉めたんですよ」

照「ど、どうして……?」

淡「中に誰も入れないようにするためです」ニコ

照「っ……」

淡「チョコ、あとちょっとだけ残ってますね……私が食べさせてあげます」

照「……」ガタ…

淡「またそうやって私から逃げようとして……ふふ」


淡「もう逃げられないのに」ボソ


照「っ……!」ゾク…

淡「バレンタインはまだまだこれからです」

淡「2人きりでゆっくり楽しみましょうね……先輩」ニコ

キリもいいし、そろそろお猿さんに襲われそうなので一旦区切ります
また2時間くらいしたら再開するので、それまで自保守しときます

保守

保守

そろそろ再開します

――――――――――――――――――――――――――――――

宥「……」チラ

宥(もうこんなにも時間経ってたんだ……)

宥(クロちゃん、宮永さんにチョコ渡せたのかな……)

宥(去年はちゃんと渡せてたから、たぶん大丈夫だと思うけど……)

宥「……」

宥(私は今年も渡せそうにない……)

宥(ごめんねクロちゃん。約束破っちゃって)

宥(受け取って貰えなかった時のことを考えたら……私……)

宥「……寒い」ハァ

宥(今日はもう帰ろう……クロちゃんにはメールを……)


コンコンコン


宥「……?」

宥(こんな時間に誰だろう……先生? でも、それならノックなんて……)

菫「入るぞ」ガチャ

宥「!」

菫「ここに居てくれたか……本当に良かった。探す手間が省けたよ」

宥「す、菫ちゃん……?」

宥(嘘……どうして……?)

菫「こんばんわ宥。君に会いに来た」

宥「えっ……」ドキ

菫「渡したいものがあるんだ。君さえ良ければ、受け取って欲しい」キリ

宥「わ、渡したいもの……?」

宥(それって……)ドキドキ…

菫「よっと……」

宥(お鍋……? すごく大きいけど……)

菫「宥、私からのバレンタインチョコだ」

宥「!!」

宥「バレタインチョコ……?」

宥「菫ちゃんが……私に……?」

菫「あ、ああ……本当はもっとちゃんとしたのを渡したかったんだが……」

宥「……」ポロ…

菫「!?」

宥「本当に……ぐずっ、私にくれるの……?」

菫「あ、ああ。そのために持ってきたんだ、是非受け取って欲しい」

宥「ありがとう菫ちゃん……すごく、嬉しい……」ポロポロ

菫「ゆ、宥……」

宥(早く泣き止まなきゃ……こんなにも泣いたら変に思われちゃう……)グズ

宥(きっとこれは友達としてのチョコだから……普通に振る舞わないと……)

宥「ご、ごめんね菫ちゃん。急に泣き出したりしちゃって……」

宥「菫ちゃんからチョコ貰えるなんて想像したこともなかったら……嬉しくて」

菫「私からチョコを貰う事がそんなにも嬉しいのか……?」

菫(まだどんなものなのか説明すらしていないのに……)

宥「うん、すごく嬉しい……本当に、ぐずっ、今でも信じられないくらいに……」ポロ…

菫(チョコレートでコーティングされた私自身をプレゼントしていたら、もっと喜んでくれたのだろうか……?)

菫(こんなただ鍋に入っただけのチョコを渡されてこんなにも喜んでくれているんだから、きっと……)

宥「ねえ菫ちゃん……これってチョコフォンデュだよね?」

菫「チョコフォンデュ?」

宥「私が温かいの好きだから、そこまで考えてくれて……」

菫(ちょ、チョコフォンデュってなんだ……?)

菫(これだけで見れば、溶かしたチョコレートが鍋に入れてあるだけだと思うんだが……)

宥「蓋、空けてもいい?」

菫「あ、ああ。宥へのプレゼントなんだ。好きにしてくれ」


パカ


宥「わぁ……すごくあったかそう……」キラキラ

菫(そういえば照が温め直していたが……それも計算の内なのか……?)

菫(お、落ち着け。冷静になるんだ)

菫(今の私は主菜を出す前の前菜であまりにも感動されて戸惑ってるだけだ。今のところ何も問題は起きていない)

菫(ここからは当初の予定通りに……)ゴソゴソ

宥(菫ちゃん鍋しか持ってきてないように見えるけど……具はどこに……)

菫「……宥、冷めてしまう前に食べてくれるか?」

宥「私も食べてみたいんだけど……えっと、そのまま食べるの? 具とかは……」

菫「……」ヌギヌギ

宥「え……?」

菫「っと……」

菫(とりあえず……上はシャツだけでいいか)スル…

宥「……」

宥「ふぁ!?」

宥「ななな、何してるの菫ちゃん!!?」カァァ

菫「何って……服を脱いでるんだが……」

宥「ななな、なんで脱ぐの!?」

菫「ある程度脱がないと汚れてしまうだろう?」

菫「シャツはまだしもブレザーを汚す訳には……」

宥(もしかして……このチョコフォンデュって……)

菫(まあ、こんなものでいいだろう……)

菫(スカートも取った方がいいんだろうが、流石にまだ恥ずかしいな……)

菫「さあ宥……好きなだけ食べてくれ」ニコ

宥「……」

宥「あぅ……」クラ…

菫「ゆ、宥!?」

菫「どど、どうしたんだ!? 大丈夫か!?」

宥「きゅぅ……」

菫(め、目を回してる……一体何故……?)

菫「宥! しっかりしろ! 気を確かに持つんだ!」ユサユサ

宥(きっとこれは私の夢……今思えば、菫ちゃんが私なんかにチョコを渡す訳がないよ……)

宥(いきなり服を脱ぎ出すのもあり得ないし、チョコを傍らに置いて好きなだけ食べてくれなんて言う訳が……)

菫「宥! 宥!!」ユサユサ

宥「あぅ……」

菫(クソっ。意識が戻らない……)

菫(目はどんどん虚ろになっていくし、顔も赤いままだ……)

菫「一体どうすれば……」

菫「!」

菫(そうだ……人工呼吸だ……)

菫(この症状から察するに、宥は貧血か何かに見舞われたんだ……)

菫(脳に酸素が回らなくなっているなら、人工呼吸をして……!)

宥(菫ちゃんがこんなにも近くにいて、真剣に私を見つめてくれて……)

宥(あれ、なんだろう……だんだん菫ちゃんの顔が近付いて―――)

菫「……」チュウ…

宥「……」

宥(あれ……)

宥(私今、何をして……?)

菫「ぷぁ……」

菫「ん……」チュウ…

宥(柔らかくてあったかいの……唇に……)

宥(菫ちゃんの顔が……こんなにも近くに……)

菫「ぷぁっ……」

菫「んっ……」チュウ…

宥(え……嘘……これってもしかして……)

菫「……」

宥(キス……?)

菫「ぷぁ……大丈夫か宥? しっかりするんだ」ユサユサ

宥「ん、んぅ……すみれちゃん……?」

菫「おお! 意識が戻ったか!」

宥「私さっき……菫ちゃんとなにして……?」

菫「君は貧血で倒れたんだ。だから私が人工呼吸をして……」

宥「……」

菫「宥?」

宥「じ、人口呼吸……?」

菫「ああ、人口呼吸だ」

宥「それってつまり……」カァァ

菫「?」

菫「まあ、何はともあれ本当に良かった。急に倒れるから心配したよ」

菫「立ち上がれそうか? 体調が悪いなら保健室に……」

宥「菫ちゃん……」

菫「?」

宥「夢じゃないんだよね……?」

菫「……」ムニ

菫「痛いか?」

宥「いひゃくない……」

菫「ふふ、力を入れてないからな」ニコ

宥「……」ウルウル

菫「とりあえず、少し横になった方が良い」

菫「さっき倒れるようなことがあったんだ。きっとまだ体調が悪いに決まってる」

菫「少し休めば夢じゃないという実感も涌いて来るだろう」

菫「向こうのソファーまで運ぶよ。立てそうか?」

宥「ご、ごめんなさい……腰が抜けちゃったみたいで……」

菫「そうか……なら」グッ

宥「え……?」

宥「きゃあ!?」

菫「宥は軽いな……それに小柄だから簡単に持ち上がるよ」

宥「ぅ……ぁ……」カァァ

菫「このままどこかに連れ去りたくなるな……」

宥「ふぇっ!?」

菫「ふふ、冗談だ」テクテク

宥「じょ、冗談……」

菫「ふふ……」テクテク…

宥「……あ、あの」

菫「?」

宥「あなたは本当に菫ちゃんなんですか……?」

菫「はは、随分とおかしなことを訊くんだな……急にどうしたんだ?」

宥「分からない……でも、今の菫ちゃんは菫ちゃんじゃないみたいで……」

菫「どうしてそう思うんだ?」

宥「いつもの菫ちゃんなら、私にこんなことしないから……」

菫「こんなこと?」

宥「私のことを抱きかかえたり……じ、人工呼吸したり……」

菫「ふふ、それはそうだろう。今までする機会が無かったんだからな」

宥「そ、そういうことじゃなくて……」

菫「よっと」

宥「……」

宥「え、えっと。菫ちゃん……?」

菫「どうした? 私の膝の上は嫌か?」クス

宥「っ……」ドキ

宥(や、やっぱり今日の菫ちゃんおかしいよぉ……)カァァ

菫「ふふ……」

宥(もし菫ちゃんが変になってるとしたら……)

宥(さっきのキスもチョコも全部、菫ちゃんの本心じゃ……)

菫「……」ギュ

宥「っ……」

宥(だ、抱きしめられて……)

菫(ああ、とても気持ちいい……このまま一緒に溶けてしまいたい……)

菫(柔らかくて、良い匂いがして……)ギュウ…

宥「ふぁ……」

すみません、全然頭回らないのでもう寝ます
18時頃まで残ってたら続き頑張ってみます

保守

保守ありがとうございました。再開します
クッソ遅いと思いますが、付き合ってもらえると嬉しいです

菫「宥……私は君が好きだ」

宥「ふぇ……?」

菫「愛してる……君を私だけのものにしたい……」

宥「っ……」カァァ

菫「ずっとずっとこの気持ちを伝えたかった……」

菫「どうして今まで言えなかったんだろうな……理解出来ない……」ポロ…

宥「菫ちゃん……」

菫「こんなにも……ひぐっ、好きなのに……」

  ノ  /"´ ̄'''" ̄`´"''-、      '、
  .シ /            |    │
   | |            |     .|
   .ソ__,   、__   \    |
   .{ __,ニ、ヽ    ,.ニ、_   .| .,ニミ
    〉.ヽ._・ゝ〉 ,   ノ__・ノ    | //ヽ}  
   .|   ̄/     ̄     ミ .>ノ/
    '、.  (   .ヽ       .__,.イ
    ヽ.  `コj⌒´_      / |.|/
     | ノ/ 7 Thヽ_  .ノ   | |   にぃに、にぃに
     .'、`ヾ二ン´       / .|
       '、  '⌒    ,,-''´  .| 

      /           \
     /   ノ(( ̄ ̄ ̄ ̄\  \
     /   .| `).   ―   .\  i
    ,'   ,'  ⌒ヽ     '⌒ヽ, .レ)
    |   / (  , =、   , ., =、 .ノ'゙
    |  ,'  `.く_ ・._). , 〈 .く_ ・_)ヽ
    i'^ヽ|     _ノ   '、ヽ_  〉
    ',( {|\      (c、,ィ)    /  どうした,藤浪?
    ((_>:r|        ,.へへ、 .イ
  、_> / \   、_∠ィ'lエlュ.レ /  
   .`Z/!、i \   ヽ\ェェン/ /    
  _,, -く  \   \.  `ー‐'´/

  ノ  /"´ ̄'''" ̄`´"''-、      '、
  .シ /            |    │
   | |            |     .|
   .ソ__,   、__   \    |
   .{ __,ニ、ヽ    ,.ニ、_   .| .,ニミ
    〉.ヽ._・ゝ〉 ,   ノ__・ノ    | //ヽ}  
   .|   ̄/     ̄     ミ .>ノ/
    '、.  (   .ヽ       .__,.イ
    ヽ.  `コj⌒´_      / |.|/
     | ノ/ 7 Thヽ_  .ノ   | |   にぃに、にぃに
     .'、`ヾ二ン´       / .|
       '、  '⌒    ,,-''´  .|

宥「……」

菫「宥、私は君のことがもっと知りたい……君ともっと一緒に居たい……だから」

菫「結婚を前提に私と付き合ってくれないか……?」

宥「……」

宥「え……?」

菫「君の残りの人生を私に預けて欲しい。絶対にこの手で幸せにしてみせる」

宥(つ、付き合う……? 結婚……?)

宥(菫ちゃんが……私と……?)カァァ

菫「答えを訊かせてくれないか?」

    /                   \
   ./      ノノ)ノ ̄ ̄リノ\    .'、
.    |     .,ノリ'´ '´  ―'´  \  |
    .|    ,'  ,.-――'´ `ー‐-、ヽ,リ
.   |   ./ .(  __ノ  ヽ_  ノ゙

    i⌒'リ .|  `<_・_ゝ , 〈 .く__・>´ヽ
    |(.ヽ|ノ.   (つ__,ノ   '、ヽ_o .〉
    .ト、_,イ \   .i    (c、,ィ)    /
    リ ノ.|.    'J   ,.へへ、 .イ
    ノ/ \     、_∠ィ'lエlュ.レ /  にぃには… 去年でやめたんや。
    /ヽ .i  \    `ヽ二.ン /
 _,, -く  \   .\.   ン '、 /

>>255
ラスト修正
菫「返事を訊かせてくれないか?」

 ノ  /"´ ̄'''" ̄`´"''-、      '、
  .シ /            |    │
   | |            |     .|
   .ソ__,   、__   \    |
   .{ yr=ミ:、    /行ミt    .| .,ニミ
    〉{_ヒri}゙、〉 ,  ゙ヒrリ.》    | //ヽ} だいじっこ!
   .|   ̄/     ̄     ミ .>ノ/
    '、.  (   .ヽ       .__,.イ
    ヽ.  `コj⌒´_      / |.|/
     |ヽ{ニニニィヽ_  .ノ   | |
     .'、∨    }       / .|
       '、 ゙こ三/   ,,-''´  .|  

     /   ノ(( ̄ ̄ ̄ ̄\  \
     /   .| `).   ―   .\  i
    ,'   ,'  ⌒ヽ     '⌒ヽ, .レ)  
    |   / ( yr=ミ:、  , ./行ミノ'゙ 
    |  ,'  ` {_ヒri}゙. , 〈 .゙ ヒrリ.》ヽ 
    i'^ヽ|     _ノ   '、ヽ_  〉 だいじっこ!
    ',( {|\      (c、,ィ)    /    
    ((_>:r|       {ニニニィ .イ
  、_> / \   、_ ∨    } /  
   .`Z/!、i \   ヽ ゙こ三/ /    
  _,, -く  \   \.  `ー‐'´/
     .\. `"''ー\____/''- ,,_

   ./                 ノ  /"´ ̄'''" ̄`´"''-、      '、
  /      ノノ)ノ ̄ ̄リノ\シ /            |    │
.  |      ,ノリ'´ '´  ―'´  | |            |     .|
  .|    .,'   ⌒ヽ     ^ソ__,   、__   \    |
. │   / (  ,二、ヽ  ノ^二 __,ニ、ヽ    ,.ニ、_   .| .,ニミ  …ちゅ……ん……んちゅ………
  i⌒'リ .|  `''"⌒`  . , 〈 '"⌒〉ヽ.・_ゝ〉 ,   ノ・__ノ    | //ヽ}  ん……ちゅ…んちゅ……
  |(.ヽ|ノ.    `_ノ   '、ヽ_|   ̄/     ̄     ミ .>ノ/    
  . \_,イ \       (c、,ィ)  '、 (   .ヽ       .__,.イ
  (J ||           ,へへ、ヽ `コj⌒´_      / |.|/
 .ヽフ |.\       ⌒ヽ _ノ_'^)( r、ヽ,        ノ   | |
  `ーァ.|  \       ノヽ⌒´X`´^シ          / .|
   ´/.\  `''-、.       ̄ノヽ ̄       ,,-''´  .|

    / ,,-''"´ ̄ ̄ ̄`"''-、                    \
   ,'  /            ,.',_/  (,リ ̄ ̄(,(!、(,     ゙i
    |.   |     -      .-(   `' ―  `' `'リ(,,     |
   |  |    ⌒\   . /ヽ⌒'     ,r'⌒   `,.   | ん……ちゅ…んちゅ………
  .,⊥、.|     ,ニ、    /゙ .(, 二,\  ノ ,.二,  ) ゙i   │  ちゅ……ん……んちゅ………
  |⌒.ヽ|    ノ-.・ゝ  、〈.・ヽ-'⌒゛' 〉 , .  `⌒゛''`  |. リ'⌒`i
  | ヽ<       . ̄       '、 ( _,r' ,'   !、_´    i |,r '^)|
  .\_.         ,.-   | }    (ィ,、c)       / ト,,./
    |. '、  \    `⌒iエ,r ヽ  ,            || (
    |. '、   .',         ノ_,ィ)(_ンヽ i _r'⌒     /|  >
    |  `''-、         ヽ二X`⌒ ,r'!、     /  |  {
  _,,-〈.\  '、 \        '⌒∧ ̄     _-´  /^ヽ

  ./ ,,-''"´ ̄ ̄ ̄`"''-、  |     /                   \
   ,'  /            \|   ,.'.    /(,リ ̄ ̄(,(!、(,      ゙i
    |.   |     -       - '、  |  /  `'―  `' `'リ(,,      |
   |  |    ⌒\    /⌒ '、ヽ i ,⌒'     ,r'⌒   `,.    |
  .,⊥、.|     ,ニ、      ,ニ、 ',  ゙(, ,.二,\  ノ ,.二,  ) ゙i   │  ちゅ……ん……んちゅ………
  |⌒.ヽ|    ノ-.・ゝ  、〈.ノ・-ヽ.| , r''`⌒゛' 〉 , .  `⌒゛''`  |. リ'⌒i
  | ヽ<       . ̄       '、 ̄ .   〈  _,r' ,'   !、_´    i |,r'.)|
  .\_.         ,.-   |  .,'   ゙i    (ィ,、c)       / ト,_ /
    |. '、  \    `⌒iエ´ , イ    \  へへ,          || J)
    |. '、   .',     ノ_,ィ ノ / /     ゙i (_ンヽ i _r'⌒    /.| フノ
    |  `''-、     ヽ二ノ \_ _ノU ̄(`⌒ ,r'!、    /  | ーイ
  _,,-〈.\  '、 \   '⌒ /   U    \ ̄    .、-''´  /.゙i`

       rn          / ̄ ̄ ̄ ̄\         riヽ
       ノノ i         /  /)) ̄ ̄\ \       〉〉)
      《 (n        i / , =、   ,=\レ)     nレl i 〉
       〉 `i        |.|  く_>) 〈く<)ノ゙      |  ^l
       い イ        (iリ   U' (c、,ィ) U 〉      f二イ
       | ,r'ト、────、>|\   ,.へへ、イ─-、....,,,r'"  |
      (    〉     Z__\ 、∠ィ'lエlュレ'/~`=-''/  i    l
       `ー='--        |\`ヽ二.ン/      |   ソ
           `--{ i|       `ー-´       レヲ-'´
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宥(そ、そんなことって……)

菫「宥」

宥「ご、ごめんなさいっ……あ、あの、私こんなこと言われるの初めてだから、その……」

宥「気持ちの整理が出来なくて……」カタカタ

菫(体が震えてる……)

宥(信じられない……あの菫ちゃんが私に……)

菫「……ゆっくり考えてくれればいい。返事はいくらでも待つ」

宥「う、うん……ありがとう……えっと、ちょっとだけ離れてもらってもいい……?」

菫「どうして?」

宥「こ、この状態だとぼーっとしちゃって……考え事が出来ないから……」

菫「……分かった」スッ

宥「……」

菫「……?」

宥(これでもまだ、すごく近いと思う……)

宥(菫ちゃんと私との距離は、もっと離れていて……)

宥(本当なら私たちの間には、色々な人がたくさんいて……)

宥「……」チラ

菫「……」ジー

宥(この人は……本当に菫ちゃんなのかな……)

宥(私の知ってる菫ちゃんは、こんな風に私の事を……)

菫(宥……)

宥「……」スッ

菫「?」

ピト…

菫(宥の手が……頬に……)

菫「どうしたんだ? 宥」

宥「……」グイ…

菫「……」

宥(こ、こんなにも顔を近づけてるのに……顔色一つ変えずに……)

菫(なんだこれは……どういう意図で……?)

宥「……」

菫(キスか……?)スッ

宥「きゃあ!?」バッ

菫(一体なんなんだ……?)

宥(す、菫ちゃん今……私にキスしようと……)ドキドキ

菫(分からない……宥は何を考えて……)

宥「……」スッ

菫「?」

宥「……」ギュ…

菫(手を握られて……)

宥「……」

菫(これはつまり……抱き寄せればいいのか?)グイ

宥「きゃっ」

菫「……」

宥「……」カァァ

宥「ご、ごめんなさい!!」バッ

菫(さっきから一体何を……?)

宥(やっぱりおかしい……今思えば最初から……)

菫「宥……」

菫「どうしてそんな目で私を見るんだ……?」

宥「えっ……?」

菫「まるで私じゃない誰かを見ているような……」

菫「私に何か疑いを持っているような……そんな目をしている」

宥「……」

菫「どういうことだ。一体何を憂いている?」

宥「それは……」

菫「私の言葉が信じられないのか?」

宥「……ううん、違う。そうじゃない」

宥「私が信じられないのは……菫ちゃん自身なの」

菫「……その言葉の意味を訊かせてくれないか?」

宥「菫ちゃんはね……私にチョコを渡したりしないの」

菫「は……?」

宥「顔を近づけたらすぐに離れるし、手を握ったら慌てて離す」

宥「私のことを抱きかかえたりもしないし……キスなんて絶対にしない」

宥「3年間ずっと一緒に居たから分かるの……菫ちゃんのことはよく知ってるから」

宥「あなたは菫ちゃんだけど……私にとっての菫ちゃんじゃない」

菫「な、何を言ってるんだ宥……?」

菫「弘世菫は私だ。私以外に存在する訳がない」

菫「宥にとっての私も何も、私は私じゃないか。そんな意味の分からないことを言われても……」

宥「ごめんね菫ちゃん、こんなこと言われても戸惑うよね……」

宥(きっと本当の自分のことを忘れちゃって……どうしてこんなことが……)

菫「……この話はもうやめよう。どれだけ言葉を重ねられても、私には理解出来ないだろう」

宥「うん……私もそう思う」

菫「告白の返事を訊かせてくれないか? もうとっくに答えは出ているんだろう?」

宥「……」

菫「宥」

宥「ごめんなさい」

菫「なっ……」

すみません、少しだけ席外します

宥「私ね、菫ちゃんのことは大好きなんだよ……?」

宥「それこそずっと一緒に居たいし、もっと菫ちゃんの事をいっぱい知りたい」

宥「本当にお付き合い出来るなら、それはすごく幸せなことだと思う……」

菫「ならどうして……?」

宥「私が好きな菫ちゃんは、あなたじゃないから」ニコ

菫「……」

宥「本当にごめんなさい……」ペコ

菫「宥……」ウルウル

宥「……」

菫「宥っ……」ポロ…

宥「菫ちゃん……」ギュ…

菫「ひぐっ……どうして……なんで……」ポロポロ

宥「……」ナデナデ…

菫「私の何がいけないんだ……私に悪い所があるなら全部直す……だからっ……」ギュウ

宥「悪い所なんて何もない……今の菫ちゃんもすごく素敵だよ……」ヨシヨシ

菫「うっ……うぅ……」

宥「元に戻る頃には、辛い気持ちも忘れてると思うから……今はたくさん泣いて?」

宥「菫ちゃんが元気になるまで側にいるから……1人になんてしないから……」ギュ…

菫「宥っ……」ギュ…


宥(私の腕の中で泣き続ける菫ちゃんは……まるで小さい子供みたいだった)

宥(普段からは考えられないくらいに弱々しくて……こんな菫ちゃんの姿を見るのは初めてだった)

――――――――――――――――――――――――――――――――

照「はぁ……ぁ……」

淡「ふふ……先輩、今すっごくカワイイ顔してますよ……?」

照「ぁ……」

淡「目がとろーんってなってて……私とのキスそんなに気持ちよかったですか……?」

照「淡……」

淡「ふふ、もっと気持ちよくしてあげますね……先輩のカワイイ顔、いっぱい見たいです……」

照「も、もうやめて淡……これ以上は本当に……」ウルウル

淡「先輩は素直じゃないですね……口ではそんなこと言っても、体は準備万端なんですから……」サワ…

照「んっ……」ビク

淡「胸、小さいですね……服の上からじゃあんまり分かりません……」クス

淡「脱がしちゃいますね……」スル…

照「や、やだっ……」ググ…

淡「もう、そんなことしちゃって……誘ってるようにしか見えませんよ?」

淡「そんなにいじめられたいんですか?」

照「違うっ……」

淡「じゃあ大人しくしててください。抵抗しない限りは優しくしてあげますから」ニコ

淡「激しくして欲しいなら、そう言ってくれても構いませんけど……」クス

照(ただでさえ力が入らないのに、淡に馬乗られたこの状態じゃ……)

淡「ねえ照先輩……私にどんなことして欲しいですか……?」

淡「抱きしめたり、キスしたり、えっちなとこ弄ったり……今なら何でもしてあげますよ?」

照「私から離れて……」

淡「そういうのは却下でお願いします。もっと素直になって、2人でいっぱい気持ちよくなりましょうよ」

淡「体うずうずして仕方ないんですよね。さっきからもぞもぞしてるの分かってますよ?」クス

照「っ……」

淡「弄って欲しいならそう言ってください。ちゃんとお願いしたらしてあげますから」ニコ

照「……」

淡「ふふ、強情ですね。いつまで持つのか楽しみです……」

淡「照先輩がおねだりするまで、キスしかしてあげませんから」スッ

照「あ、あわっ」

淡「ん……」チュウ

照「んんっ」

淡(柔らかくて、すごくドキドキして……やっぱりこれが一番好き……)レロ…

照「んっ……!」

照(あ、淡の舌がっ……)

淡(あったかい……照先輩の中に入って、繋がって……)

淡(今は私がしてばっかりだけど、いつか先輩からも……)チュウ

照「ぷぁっ……!」バッ

照「はぁ……ぁ……」

淡「……まだ押し退けるだけの力があるなんて意外です」

淡「そんな顔してるんですから、もう受け入れてくれてもいいじゃないですか」

照「ん、ぁ……」

淡「喋る事すらままならないクセに……」ギュ…

照「……」

淡(……体弄ったりするより、こうやって抱きしめたりする方が好きかも……)

淡「……ねえ先輩。どうして自分がこんな目に遭ってるのか分かりますか?」

照「……淡が頭を打ったから」

淡「ほんっとアンポンタンですね……そんなんだから襲われちゃうんですよ……」

照「……?」

淡「照先輩、私の気持ち分かってますよね?」

照「……」

淡「ずっと前から気付いてるくせに、分かってないフリして……」

淡「何度も何度も好きだって言ってるのに、ちゃんと受け止めてくれなくて……」

淡「それがどれだけ辛い事なのか先輩は分かってないんです……」

淡「相手を拒む以上に傷つけてるってことにも気付かないで……本当に私が可哀想……」

照「淡……」

淡「普段の私はアホですから、何か企もうとは絶対にしません……」

淡「それ以上に先輩のことが好きだから、こんなことをしようとしても出来ないんです……」

淡「だからこうやって、私が代わりに先輩をいじめてるんですよ?」

淡「胸の奥に隠してた言葉とか気持ちとかを全部ぶつけて……アンポンタンなあなたに分からせてあげてるんです」

ラスト修正
淡「胸の奥に隠してた言葉とか気持ちを全部ぶつけて……

照「……」

淡「言っときますけど、先輩のことが好きなのは私だけじゃありませんからね?」

淡「100個以上貰ったそのチョコの中にどれだけ本命があるのかは知りませんけど……そのうちの誰かはあなたに対して恋心を持ってるんです」

淡「形だけ気持ちを受け入れて保留するような真似、これからは絶対にしないでください」

淡「そうやっていろんな人に愛想を振りまくこと自体、気に食わないと思ってる人もいるんですから」

照「……分かった」

淡「……どうしてチョコを贈るのか、その意味をちゃんと考えてあげてください」

淡「先輩にとってはお菓子貰えるだけでも……あげる人にとってはそうじゃありませんから」

照「……」

淡「言いたい事はそれだけです」スッ

照(私から離れて……)

淡「……そういう気分じゃなくなったんで、もうやめてあげます」

淡「こういうことは雰囲気が大切ですから」

照「……」

淡「……無理やり変な事しちゃってごめんなさい」

淡「だから、その……元の私は嫌いにならないであげて欲しいです。見た目一緒でも別人なので」

照「……淡や菫はどうすれば元にも戻るの?」

淡「頭ぶっ叩けばいいじゃないんですか。知りませんけど」

照(そんな適当な……)

淡「私は尭深先輩に叩かれてこうなったので」

照「え……た、尭深に!?」

淡「先輩に悪気はありません。偶然の発見、ってヤツです」

淡「菫先輩ぶっ叩いたのは私たちの思惑ですけど」

照「……」

淡「本当に人格が変わるのかどうかの実験で通りすがった子……」

淡「って言っても穏乃なんですけど、アイツもぶっ叩いたんでまた直してあげてください」

照「……」ジト

淡「ふふ、そんな目で見ないでくださいよ。悪ふざけじゃなくて善意でやったことなんですから」

淡「私たちのおかげで2人とも幸せになってるかもしれませんよ?」クス

淡「それに照先輩だってこの機会を利用しようとしたんですから、お互い様です」

照「いつもの菫じゃ何があっても進展しそうにないからね……」

淡「それについては宥先輩にも非があると思いますよ? どっちもどっちの似た者同士です」クス

照(これからどうしよう……淡も含めてみんな元に戻さないといけないけど、どうせなら……)

淡「もう少し待ってみませんか? 何なら明日の放課後くらいまで」

照「うーん……」

淡「ありふれた日常に舞い降りた非日常を楽しみましょうよ」

淡「こんな超常現象、そうお目にかかれませんよ?」クス

淡「それに私自身、もうちょっと照先輩とイチャついていたいですし♪」ギュ

照「っ……」

照「……淡、離れて」

淡「いいじゃないですか。誰も見てませんよー」チラ


「……」ムムム


照「そういう問題じゃない……それに淡もさっき自分で言ったでしょ?」

照「誰に対しても愛想を振りまくのは良くないって。私はこういうこともそうだと思う」

淡「お説教が利いてるのは良い事ですけどちょっと面白くないです……」

照「……」

淡「じゃあ私に対してだけオッケーにしてください。それで解決です」

照(いつもの淡が敬語口調になっただけのようにも思える……)

淡「まあ何にせよ、他の人のことは置いといて2人だけを楽しみましょう」ニコ

淡「チョコレートまだありますよ?」

照「それはもういらない……」

淡「じゃあもう家に帰ります? 私元に戻るまで先輩に付いて行くんでなんでもいいですよ?」

照「……ほ、放課後が終わったら私の家に来るの?」

淡「勿論です。期間限定なんですからそれくらいは」ニコ

照「はぁ……」

淡「お泊まり会とか楽しみです。あわよくばさっきの続きも……」フフ


ブォン


淡「っと!」

照「!?」

淡「後ろから殴ろうとするなんて酷くないですかー? 玄先輩」クス

玄「それ以上は許さないのです淡ちゃん……!」

照「……」ポカーン

ちょっと飯食います。30分もしないうちに戻るんで自保守しときます

淡「ふふ、いつ出て来るのかと思えばこのタイミング……」

淡「玄先輩は相変わらずですねー。誰かに頭ぶっ叩いてもらえばヘタレ直るかもですよ?」クス

玄「むむむ……!」

照「玄……いつからここに……?」

淡「結構前からいましたよ? 私がお説教する前くらいに入ってきてました」

淡「ここの鍵取りに行くのに時間かかってたみたいですけど」フフ

玄「宮永さん、下がっててください。私が淡ちゃんを元に戻します」

淡「お断りします。照先輩のヴァージン頂くまでは戻れません」

照「なっ……」カァァ

玄「そ、そんなこと私が許さないのです!!」

淡「玄先輩のことなんて知りませんよー。私と照先輩の間に入って来ないでください」ニコ

玄「淡ちゃん……!!」

淡「ふふ……」

照(な、なにこれ……)

淡「モテる女は辛いですね、先輩」

淡「気付いてるかどうか知りませんが、玄先輩も先輩のことが……」

玄「わーーー!? わーーー!?」カァァ

淡「ふふ、せっかく玄先輩の代わりに言ってあげようと思ったのに……」

玄「おお、大きなお世話だよ!?」

淡(ま、照先輩はかなり勘が良いですから、十中八九気付いてるでしょうけど)

照「……」

玄「淡ちゃん! 大人しく私に叩かれるのです!」

玄「これ以上宮永さんに迷惑かけちゃダメ! いつもの淡ちゃんに戻って!」

淡「嫌です」ニコ

玄「むむむ……!」

淡「それに照先輩に迷惑なんてかけてませんし」

玄「かけてるよ! 今も宮永さん困ってる!」

淡「困ってませんよ。むしろ玄先輩に対する反応に困ってそうです」

玄「そ、そんなこと……!」

玄「ないですよね……?」チラ

照「……どちらかというと淡に困ってる」

淡「え……」

玄「……!」パァァ

淡「な、なんでですか先輩……? 私何もしてないのに……」

照「……セクハラ紛いの発言は反応に困る」

淡「何言ってるんですか!? こんなにも可愛い女の子の言葉がセクハラになるわけないじゃないですか!」

照(そういうのも含めて反応に困る……)ハァ

玄「ふふ……私の勝ちだね淡ちゃん。大人しく叩かれるのです」フンス

淡「いつどこで何の勝負が始まっていたんですか! そんなものに勝手に参加させないでください!」

淡「そもそも照先輩を巡る勝負で言えば私の圧勝だと思いますけど?」クス

玄「わ、私は1年も早く宮永さんの後輩やってるんだよ!?」

玄「ぽっと出の淡ちゃんとは積み重ねてきた物が違うんだから!」

淡「なーにも積み重ねて無いのに何言ってるんですか」

玄「そ、そんなこと……!」

淡「未だに下の名前で呼べてないのが良い証拠じゃないですか」クス

玄「う……」

ラスト一つ前修正
淡「未だに下の名前で呼べてないのが良い証拠だと思いますけど?」クス

淡「それに照先輩がいる虎姫に選ばれたのも私ですし?」

淡「玄先輩と私じゃそもそも勝負にすらなってないかとー」

玄「あうぅ……」

照「虎姫に選ばれる事がそこまで大切だと思わないけど……玄は玄で龍妃のエースだし」

淡「分かってないですね先輩は」

淡「この勝負において言うなら先輩と同じチームっていうのはすごく重要な要素なんですよ?」

淡「そこらの有象無象と虎姫である私じゃ比べ物になりませんよ」フフ

玄(そのことだけは本当に羨ましい……)

淡「あ、そうだ。虎姫と言えば先輩知ってますか?」

照「?」

淡「玄先輩、絶対に入れると思ってた虎姫に選ばれなくて大泣」

玄「わーーー!? わーーー!?」

照「おおな……?」

玄「なな、なんでもないです宮永さん! 淡ちゃんの妄言です!」

淡(妄言って……)アハハ

玄「あ、淡ちゃん! そ、その話は絶対に内緒って言ったでしょ!?」

淡「元の私にとってはそうでも今の私には関係ないですよ」シレ

玄「むむむ……!」


照(淡の性格が変わってもこの2人は仲良いな……)

淡「もう私の完勝ってことで大人しく引き下がってくださいよ」

淡「玄先輩がこの勝負で私に勝ってることなんて何一つないじゃないですか」ハァ

玄「そ、そんなことないもん……」ウルウル

淡「じゃあ玄先輩はこんなこと出来ますか?」ギュ

照「っ……」

玄「!」

淡「こーんなこととか」グイッ

チュッ

照「!?」

玄「ななっ……!?」

淡「ふふ、絶対に出来ませんよね?」

淡「その鞄の中に入ってるものすらロクに渡せないんですから、ね」ニコ

玄「っ……」ドキ

照(鞄の中……?)

淡「さ、帰りましょうか照先輩。これ以上ここに残っててもしょうがないです」

淡「私照先輩と一緒にお風呂入ったり……」

玄「だ、ダメだよ!!」

淡「……どうしてダメなんですか? 玄先輩には関係の無い事だと思いますけど」

玄「関係あるよ……だって私も……」

淡「……」フフ

玄「私も宮永さんのことが好きだもん!!」

照「!」

淡(やっとですか……)

玄「……」

玄(わ、私今……すごいこと言っちゃったような……)カァァ

淡「だそうですよ照先輩。分かってます? 告白ですよこれ告白」

玄「わ、私はそんなつもりじゃ……」

淡「ないんですか?」

玄「そ、それは……」

照「……」

照「……えっと、玄の好きはどういう好き?」

玄「……?」

照「ライクなのかラブなのか……」

照「それが分からないことには何も言え無いから」

淡(またそんな逃げ道作るような言い方して……)ハァ

玄「……」モジ…

照「ライクなら私もたくさん好きな人はいるし……何もおかしいことはないと思うよ?」

淡「……その辺はどうなんですか、玄先輩」

淡「ちなみに私は照先輩のことラブですから」

玄「!?」

淡「本気ですよ? 同性同士とか関係ないです」

淡「好きになったからにはこの気持ちに誇りを持ってるつもりです」チラ

照「う……」

淡「玄先輩はどうなんですか?」

淡「正直、生半可な気持ちじゃ負ける気しませんけど」

玄「……私の好きも淡ちゃんと同じ好きだよ」

照「!」

玄「1年生の時からずっと好きだった……好きになった時のことも絶対に忘れないよ」

淡「じゃあ私と玄先輩はライバルですね」

玄「うん……そうだね」

照「……」

淡「ねえ玄先輩、決着をつけるべきだと思いませんか?」

淡「照先輩に惚れてる人はまだまだいると思いますけど……その中でも特に親しいのは私たちだと思うんです」

淡「互いにとって一番の障害になりそうなのも」

玄「……」

淡「……」

照(な、なんか……良からぬ雰囲気に……)

玄「……宮永さん」

照「……なに?」

玄「私と淡ちゃん……どっちが好きですか?」

照「うっ」

淡「分かってると思いますけど、どっちも好きとかは無しですからね」

淡「ちゃんとどっちか選んでください」

玄「これで選ばれなかった方が宮永さんを諦める……それでいいよね、淡ちゃん」

淡「望む所です。負ける気しませんし」

照「ふ、2人とも待って。そういうのは良くない」

淡「照先輩、さっき言いましたよね。保留はしないでくださいって」

照「……」

玄「その、自分の気持ちに正直になってください」

玄「宮永さんにとってどっちが大切なのか、それを選んでもらえればいいですから」

玄「恋愛感情は無くても、なんとなくの好みとかでいいのsw」

照「そんなこと……」

淡「照先輩、私からもお願いします。こういうことは絶対に曖昧にしちゃいけないです」

淡「はぐらかすことは……私たちの両方を傷つけることになりますから」

照「……」

玄「宮永さん」

淡「照先輩」

照「……分かった。どっちか選ぶ」

「「!!」」

3行目修正
玄「恋愛感情は無くても、なんとなくの好みとかでいいので」

照「2人とも目を閉じて」

玄「え……?」

照「その、選んだ方にキスするから」

玄「き、キス……」ドキ

淡「照先輩にしては随分と粋なことするんですね」クス

照「……せ、せっかくだから」

淡「それじゃあ早速お願いします」スッ

玄「え、えっと。よろしくお願いします」スッ

照「……」

淡「……どうしたんですか先輩? 早くしてください」

照「……心の準備をしてるから、もう少し待って」

玄(ど、どうしよう……もし選ばれなかったら、私……)

淡「は、早くしてくださいね。答えは分かってても心臓に悪いですから」

玄(うぅ……宮永さん……)

淡(大丈夫……先輩は絶対に私のことを選んでくれる……)

玄(諦めるなんて嫌……何があっても、この気持ちだけは絶対に……)

淡(照先輩……早く……!)

玄(お願いします宮永さん……!)


「「…………」」


玄(まだ、なのかな……)

淡(いくらなんでも引っ張り過ぎじゃ……)

淡「……先輩? 何してるんですか?」パチ

玄「宮永さん……?」パチ

 
 
「「…………」」



玄「も、もしかして……」

淡「逃げた……?」

玄「……」

淡「……玄先輩、下足室に行ってください。照先輩の靴があったら回収して」

玄「分かった。淡ちゃんは? どうするの?」

淡「大声出して探しまわります」

玄「……見つけたらどうしよっか?」

淡「……とりあえず縛り上げましょう」

6行目修正
玄「分かった。淡ちゃんはどうするの?」

――――――――――――――――――――――――――――――

宥(もうすぐ最終下校だと思うけど……今何時なんだろう……)

宥(だんだん暗くなってきてるから、そろそろ帰りたいんだけど……)

菫「……」ギュウ…

宥(ど、どうしよう……菫ちゃん、さっきからずっとこんな感じで……)

宥(話しかけてもちゃんと返事してくれないし……)アワワ

菫「……宥」

宥「っ……」ビク

菫「起きてるか?」

宥「う、うん、起きてるけど……どうしたの菫ちゃん?」

菫「今、何時か分かるか?」

宥「ごめんなさい……携帯、鞄の中で……」

菫「そうか……」

宥「隣の部屋に行けば時計があるから、時間も分かると思うけど……」

菫「分かった。もういい……ありがとう」ギュ…

宥「……もうそろそろ最終下校だと思うから、部室に荷物取りに行った方が……」

菫「……」ギュゥ

宥「っ……」

宥(ど、どうしよう……このままじゃ絶対に離れてくれないよね……?」

宥(早く学校から出ないと先生に怒られちゃうし……閉じ込められちゃうことだって……)

宥「……」

宥(菫ちゃん、もしかして……?)

菫「……」

宥「……帰りたくないの?」

菫「……家に帰る事に抵抗はない」

宥「じゃあどうして……?」

菫「……宥から離れたくないんだ」

宥「え?」

菫「一度離れてしまうと……もう二度と会えなくなるような気がして……」

宥「そ、そんなことないと思うけど……」

菫「もし会えたとしても、こうやって触れ合えるのは今この瞬間だけだと思う」

菫「なんとなく分かるんだ……次に触れ合うときは、私が私じゃなくなっていると」

宥「……」

菫「宥の心を掴んで離さない人間が本当に恨めしい」

菫「そいつから君を奪い取ってやりたいと思っているくらいなんだ」

菫「どうしても諦めきれなくて……今この瞬間も、なんとか出来ないのか考えていて……」

宥「菫ちゃん……」

菫「フラれたにも関わらずこんなことをして……本当に惨めだと思う」

菫「格好も付かないし情けない……宥にこんな姿を曝け出していると思うと、自分自身が恥ずかしくなる……」

菫「ただそれでも……ぐずっ……」

菫「どんなにみっともない姿を晒しても……私は君を手に入れたい……」ポロ…

菫「絶対に離したくない……」ギュ…

宥「ぅ……」カァ

菫「こんなにも人のことを好きになったのは、生まれて初めてなんだ……」

菫「君の全てが欲しい……」

菫「心が手に入らないのなら、体だけでも私のものにしたい……」サワ…

宥「ひゃっ!?」ビクッ

菫「私と体を重ねたという事実を……宥の体に残したい……」チュ…

宥「ゃっ……!! す、菫ちゃ……!」

菫「すまない宥……こんなけだもののような私を許してくれ……」スッ


カプ


宥「ぁ……!」

菫「ん……」チュウ

ちょっと休憩します
自保守しときます。1時間もしたら再開します

ホッシュ

ホッ酒

ほまれ

宥「だ、ダメ……あっ……」

宥「ふぁあっ……」

菫「宥……少し寒いだろうけど我慢してくれ」スル…

宥(ま、マフラーが……)

菫(綺麗な首筋だ……日に当たらない分、真っ白で……)

菫(強く吸い付けば、痕が付いて……)カプ

宥「ぁっ……」

菫「……」チュウウ…

宥「や、やぁっ……!!」ビクッ

菫「ん……」

宥「す、菫ちゃんっ……ダメだよそんなっ……」

菫(どうせマフラーで見えないんだ……)

菫(それならいっそのこと、くっきりと残すくらいに強く……)チュウウ…

宥「ゃぁっ……」

菫(宥を力で組み伏せて、こんなこと……)

菫(性欲だけで相手を襲う獣と何ら変わりない……)

菫(思いやりの気持ちなんて一切無しに、ただ自分の存在を相手に刻み付けるためだけに……)

宥「はぁ……ぁ……」

菫「ぷは……」

菫(こんなにもハッキリと……痕が付いて……)

宥(どうしよう……本当はもっと嫌がらないといけないのに……)

宥(全然嫌じゃない……むしろ、菫ちゃんにこんなことをされてるって思うと、すごくドキドキして……)ボー

菫「こんなことをしておいて言えた義理じゃないんだが……人前でマフラーを取るなよ」

宥「え……?」

菫「その……かなりハッキリと痕が付いてしまってる」

宥「!?」

菫「たぶん、遠目から見ても分かるくらいに……」

宥「あ、痕って……キスマークのこと……?」

菫「ああ、そうだ」

宥(どうして吸い付いてるのか分からなかったけど……そんなことしてたんだ……)

宥(キスマークって、普通は恋人同士が付けるものだよね……?)

宥(そんなものを……菫ちゃんが私に……)カァァ

菫「……痛くなかったか?」

宥「え……?」

菫「こんなにも赤くなってるんだ。それなりの痛みが伴っていても不思議じゃ……」

宥「だ、大丈夫だよ? なんて言えばいいのか分からないけど、痛くはなかったから」

菫「そうか……それは良かった」ハァ

宥(私のことを気遣って……?)

菫(ダメだ……ふと我に返ると宥の体を気遣ってしまう……)

菫(本当はもっと激しい行為をしたいんだが、理性に抑えられて……)

宥「うぅ……」ブルッ

菫「……寒いのか?」

宥「うん……マフラー取られちゃったから……」アハハ

菫「すまない。宥の寒がりはよく知っているはずなのに……今付け直すよ」ファサ…

宥「あ、ありがとう……」

菫(私は何をやっているんだろう……自分から剥ぎ取ったものを付け直して……)クルクル…

菫(ただでさえ時間は限られてるのに、こんなことじゃいつまで経っても……)

宥「……菫ちゃんはやっぱり優しいね」

菫「え……?」

宥「性格が変わっても、こういうところは変わらないんだね……」フフ

ラスト修正
宥「性格が変わっても、こういうところは変わってない……」フフ

宥「もしかしたら、だんだん元に戻ってきてるのかも……」

菫「……宥にとっての私はどんなヤツなんだ」

宥「すごく優しい人だよ?」

宥「それでいて真面目で、正義感が強くて、しっかり者で……」

宥「それこそ今の菫ちゃんとの違いなんてほとんどないと思う」

菫「それならどうして私の告白を受け入れてくれなかったんだ……?」

菫「ほとんど違いが無いのなら何も問題は……」

宥「菫ちゃんと私は全然似てなくて、色々な意味で正反対なんだけどね……一つだけ似ている所があるの」

菫「似ている所……?」

宥「うん。今の菫ちゃんにはそれが無いから、本当の菫ちゃんじゃないんだよ?」

菫「教えて欲しい。それは一体なんなんだ?」

宥「私も菫ちゃんも……すごく臆病なの」

菫「臆病……?」

宥「私は菫ちゃんに対して臆病で、菫ちゃんも私に対して臆病で……」

宥「それは私たちにとって互いの距離感を測るための大切なものなんだけどね」

宥「今の菫ちゃんにはそれが無いの」

菫「それは私という存在に必要なものなのか……?」

菫「今の私なら宥に対してどんなことも出来る」

菫「それこそ君が望むことだってなんでも……」

宥「そ、それはすごく魅力的だけど……やっぱり元の菫ちゃんにしてもらいたいかな」アハハ

宥「私が好きになったのは臆病な菫ちゃんだから」

菫「……」

宥「今の菫ちゃんはすごくカッコいいと思うけど、やっぱり……」

菫「理解出来ない」

宥「え……?」

菫「そんな軟弱な性格をした私が、今の私より優れているとは思わない」

宥「す、優れてるとかそういうことじゃなくて……」

菫「宥、元の私とキスをしたことはあるか?」

宥「ふぁ!?」

菫「無いんだな」

宥「そ、そんなこと出来る訳ないよ……恋人同士でもないのに……」

菫「宥は私のことが好きなんだろう?」

菫「それなら私が求めれば君は受け入れてくれるはずだ、違うか?」

宥「そ、それは……そうだけど……」モジ…

菫「……やはり私には理解出来ない。求めれば受け入れられると分かっているのに、どうして……」

菫「元の私はそういう行為に対してトラウマでもあるのか……?」

菫「そうじゃないなら宥の体を求めないなんてことがあり得るわけ……」ブツブツ

宥(や、やっぱりこの菫ちゃんおかしいかも……)

菫「宥、悪い事は言わない。私の物になるんだ」

宥「っ……」ドキ

菫「そんな甲斐性無しは君に相応しくない。私こそが真に君に相応しい」

菫「絶対に幸せにしてみせる。結婚を前提に付き合おう」

宥(ど、どうして真顔でこんなことが言えるんだろう……)カァァ

菫「宥」

宥「な、何度も言うように、私にとっての菫ちゃんは1人だけで……」

菫「」

宥「ほ、本当にごめんなさい……」

菫「……ぐずっ」ウルウル

宥「なな、泣かないで菫ちゃん! 元に戻れば私たちも結ばれると思うから!」

菫「そんなわけあるか……元の私と今の私は別人なんだぞ……」

菫「元に戻るということは今の私は消えるということだ……」

菫「宥と結ばれることなんて絶対にない……」

宥「で、でも記憶が残ってたら元の菫ちゃんも今の菫ちゃんも関係なくなるよ?」

宥「2人が1つになるってことだから、消えるってことにはならなくて……」

菫「……記憶が残るのかどうかなんて分からないんだろう」

菫「それに元の私も今の私も関係ないのなら、今の私を受け入れてくれてもいいだろう?」

宥「そ、それは……そうだけど……」

8行目修正
菫「……記憶が残るかどうかなんて分からない」

菫「なら結婚を前提に私と……」

宥「そ、それはもういいから……」

菫(クソっ、どうすればいいんだ……どうすれば宥の心を射抜く事が出来る……?)

菫(どうすれば元の私から宥を奪い取る事が出来て……)


キーンコーンカーンコーン


宥「あ、チャイム……」

菫(最終下校……ってことはつまり、このまま宥と離ればなれに……)

菫(……ふざけるな。そんなことは絶対に認めない)

菫(心と体、どちらか片方すら手に入れてないのにそんなこと……!)

菫(まだだ……まだ終わっていない……)

菫(このあと私の家に宥を連れ込めば、まだチャンスは……!)


宥(あ、そういえば菫ちゃんにチョコ渡せてない……)

宥(ど、どうしよう……この菫ちゃんに渡せばいいのかな……?)

宥(でもそれって少し違うような気がするし……)ウーン

菫(宥とくんずほぐれずしていたあの時に最後まで行っていれば……)

菫「くっ……!」ギリ…

宥(す、菫ちゃんどうしたんだろう……様子が変だけど……)

菫(冷静になれ……過去のことを悔やんでも仕方がない。いつ元に戻るか分からないんだ)

菫(それなら今、私が出来る最善の選択を……)

宥「もうそろそろ先生たちも見回りに来るし、帰ろっか」

菫「で、でも……」

宥「大丈夫だよ。きっとまた明日会えるから」ニコ

菫「……明日じゃダメなんだ」

宥「え……?」

菫「いや、何がダメなのかはよく分からないが……明日にはもう私は私じゃなくなっているような気がして……」

宥「でも明日になれば元に戻るのかも分からないよ?」

宥「もしかしたらずっとこのままで……」

菫「そうか……戻る可能性があるなら戻らない可能性もあるのか……」

宥「うん。だから今の菫ちゃんがそこまで悲観することはないと思うけど……」

菫「……いや、ダメだ。いつ元に戻るのか分からない状況で、時間を無駄にするわけにはいかない」

宥「菫ちゃんは家に帰りたくないならどうしたいの……?」

菫「宥と一緒に居たい」

宥「そ、そうなんだ……」アハハ

菫「なあ宥、このあとは暇か?」

宥「うん……特に予定はないけど……」

菫「なら、その……私の家に来ないか?」

宥「す、菫ちゃんの家に……?」

菫「ああ。出来るだけ長い時間、宥と一緒に居たいんだ」

宥「その、遊びに行くのはいいんだけど……」

宥「へ、変なことしないよね……?」

菫「う……」ドキ

宥「さっきああいうことがあったから、その……」

菫「……すまない。それは約束できない」

宥「えぇ!?」

菫「宥を家に呼ぶ目的の1つがそれなのに、するなというのは流石に……」

宥「す、菫ちゃん……こういうときは嘘でもしない、って言うものなんだよ……?」

菫「宥に嘘はつきたくない」

宥「……」

宥「えっと。それじゃあ菫ちゃんの家にお邪魔するのはやめておくね……」ニコ

菫「な……」

菫「どうして……?」

宥「ど、どうしてって言われても……」モジ…

菫「私と一緒に居るのが嫌なのか……?」

宥「菫ちゃんと一緒に居るのはいいんだけど……変なことされるのはちょっと……」

菫「……なら私が宥の家に行くのはどうだ?」

宥「私の家に?」

菫「宥の家には玄がいるし、その他にも旅館で働く人が大勢いるだろ?」

菫「それなら私に何かされても助けを呼べると思うんだ」

宥「へ、変な事をするっていう前提は絶対に変えないんだね……」アハハ

菫「それだけは譲れないからな……」

菫(なんとしてでも既成事実を作って、元の私から宥を……)

宥(どうしよう……)

宥(菫ちゃんとは一緒に居てあげたいんだけど、変なことされるのは困るし……)

宥(私の家ならまだ大丈夫だとは思うけど、クロちゃんだけじゃ少し心配で……)


バタン!!


宥「!?」

照「た、助けて2人とも!!」

菫「照……?」

宥「ど、どうしたの宮永さん? そんなにも慌てて……」

照「す、少しの間でいいからここに隠れさせて!!」

菫「隠れさせてって……この部屋に隠れられる場所なんてどこにも……」


淡「照先輩!」

玄「宮永さん!!」


照「ひぃぃ!?」

淡「ほんっと手間かけさせて……!」

玄「もう逃がしませんから……!」


宥「く、クロちゃんに淡ちゃん……」

照「菫、松実さん……助けて……」カタカタ

菫「なにやらかしたんだお前……」

照「何もしてない……2人が私に無理難題を突きつけてきて……」

淡「先輩方、大人しくその人をこっちに渡してください」

玄「宮永さんに大切な用事があるんです」

宥「え、えっと……」

菫(大切な話の途中で……)ハァ

菫「……おい照、どういうことだ」ボソ

照「事情は後で説明するから……今はあの2人を落ち着かせて……」カタカタ

菫「落ち着かせろって言っても……」チラ


淡「……」ゴゴゴ

玄「……」ゴゴゴ


菫「……無理だろ」

宥(クロちゃん滅多に怒らないのに……宮永さん何しちゃったんだろ……?)

照「お願い2人とも……助けて……」

照「このままじゃ……私の貞操が……」

菫「はぁ?」

淡「先輩……無駄な抵抗はやめてくださいね……」ユラ…

玄「今度はちゃんと逃げられないように縛ってあげますから……」ユラ…


照「……」カタカタ

菫(面倒だから引き渡してもいいんだが……)

菫(アドバイスの借りもあるし、肩を持ってやるか)ハァ

菫「おい2人とも。ちょっと落ち着け」

淡「なんですか菫先輩。もしかして照先輩の味方するつもりですか」ジト

玄「宮永さんは庇ってもらえるようなことはしていないですよ?」

菫「とりあえず話だけでも聞かせてみろ。庇うかどうかはそれからだ」


宥「宮永さん大丈夫……?」

照「松実さん……」ウルウル

淡「分かりました。一から全部話してあげます」

淡「ついさっきのことなんですが、私と玄先輩が照先輩に」


晴絵「はいストップ。それ以上は長くなりそうだから校舎の外でやってくれる?」


「「!!」」

宥「先生……」

菫「監督……」

晴絵「とっくに最終下校時間過ぎてるよ? さあ全員帰った帰った」

菫「そういうことらしい。とりあえずこの話は一旦中断だ」

照(このどさくさに紛れて逃げられ……)

淡「絶対に逃がしませんよ? 照先輩」ニコ

玄「続きは別の場所でしましょう」ニコ

照「」

照「うぅ……」

淡「ほら、しゃきしゃき歩いてください」ギュ…

玄「妙な真似しちゃダメですよ?」ギュ…


晴絵「捕獲された宇宙人みたいになってるけど大丈夫なの?」クス

宥「たぶん……」アハハ

晴絵「まあ、仲が良いのはいいことだけど」

菫(とりあえず、このあとは照の世話に奔走させられそうだな……)

菫(宥との時間を作りたいが……先に向こうを優先するべきだな)ハァ

晴絵「戸締まりは私がしとくから、2人も帰っていいよ」

晴絵「パッと見ただけでも照がヤバそうだったから、早く行ってあげな」アハハ

8行目修正

菫(宥との時間を作りたいが……優先させるべきは向こうか)ハァ

――――――――――――――――――――――――――――――――

淡「話し合いはどこでするんですか?」

菫「ここから近くて広い場所がベストだが……」

玄「それなら松実館に行きましょうか。小広間でもこれだけの人数なら十分だと思います」

淡「それじゃあそれで決定で」

淡「覚悟してくださいね照先輩。裁判が済んだらお仕置きですからね」ニコ

照「っ……」ゾク…

玄「ダメだよ淡ちゃん! それは私の役目で……!」



宥「みんな仲良さそうだね……」

菫「1人死んだ魚みたいな目をしてるヤツがいるがな……」

宥「少し気になったんだけど……淡ちゃんの喋り方、おかしくないかな?」

菫「ああ、私も思っていたところだ。なんでアイツ敬語で喋って……」

宥(頭に大きいたんこぶがあるけど……何か関係あるのかな……?)

宥(菫ちゃんにも同じようなたんこぶがあったし、もしかして……)

菫「ま、どうせまた何かの悪ふざけだろ。特に気に留める必要もないさ」

宥「ならいいんだけど……」

菫「……ところで宥」

宥「?」

菫「このあと宥の家に行く事になっていると思うんだが……私はそのまま泊まってもいいだろうか?」

宥「う、うん……みんなも一緒に泊まるなら……」ニコ…

菫「そうか……なら良かった。ふふ……」

宥(宮永さんたちと話してる時は普通なのに……)

菫(照の一件を片付ければあとはフリーだ)

菫(アイツにも協力させて、なんとか宥との甘い夜に……)

宥(今の菫ちゃんになら、渡せる気がする……)

宥(少しだけ相手は違うかもしれないけど……別にいいよね?)

宥(今日中には元に戻らないだろうし……渡せないよりかは……)

宥「……菫ちゃん」

菫「?」

宥「これ……もらってください」スッ

菫「これって……」

菫「チョコ……?」

宥「うん、菫ちゃんのために作ってきたの」ニコ

菫「……」

菫「宥……」

宥「?」

菫「結婚を前提に私と付き合ってくれないか?」


終わり

やっと着地出来たのにこれ以上は勘弁してくんさい

支援ありがとうございました
お疲れ様でした
体育倉庫とはまったくの無関係です

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