冬馬「ふじおかぁー、今度の日曜だけどさぁ」
藤岡「ああ。心配しなくてもスペシャルメニューを考えてきてるからな」
冬馬「お、おう……」
千秋「おい、冬馬。こら、冬馬。私の指定席を取るんじゃないっていつもいってんだろ」
冬馬「なんだよ。いいだろ別に」
千秋「よくないよ! よくないよ!」
藤岡「まぁまぁ、二人とも」
夏奈「お前ら、よく飽きないな」
千秋「うぎぎぎ……!! はなれろぉ……末っ子がぁ……!!」グググッ
冬馬「やめろぉぉ……!! 千秋も末っ子だろぉ……!!」
夏奈「ふわぁ……。ねよっと」
藤岡「み、南。二人を止めてくれよ……」
別の日
内田「ねぇねぇ、藤岡くん」
藤岡「え? なにかな?」
内田「千秋が来るまでの間でいいから膝の上に座らせてくれない?」
藤岡「ど、どうして?」
内田「だって、いつも千秋と冬馬が取り合ってるんだもん。そこまで座り心地がいいなら、私も座ってみたいなーって」
藤岡「べ、別に構わないよ」
内田「わぁーい。ありがとー」ギュッ
藤岡「あははは」
吉野「内田、千秋が見たらきっと怒るから5分だけにしようね」
内田「うん!」
夏奈「ふわぁ……」
内田「……なんか、普通」
藤岡「ご、ごめん……」
別の日
夏奈「ケイコー、ここ教えてー」
ケイコ「自分で考えて」
夏奈「えー?」
リコ「……」モジモジ
藤岡「うーん……」
ミユキ「うーん……!! 藤岡くん!!」
藤岡「な、なに?」
ミユキ「ここ!! ここ分かる!?」
藤岡「ああ、ここはね。この公式を当てはめて……」
ミユキ「うん、うん。おー、なるほどー」
夏奈「……」
ケイコ「夏奈、手が止まってるよ?」
別の日
藤岡「お邪魔します」
春香「いらっしゃい、藤岡くん。座って、座って」
夏奈「よー、藤岡」
アツコ「……」ペコッ
マキ「おー、藤岡くん!!」
藤岡「どうも」
マキ「まー。こっちにいらっしゃいな」
藤岡「は、はい」
夏奈(藤岡の奴。春香でもアツコでもなく、マキちゃんの隣に座ったか)
マキ「最近はどうなのぉ?」
藤岡「な、なにがですか?」
マキ「何がって一つしかないでしょーが。カマトトぶらないのー」
アツコ「マ、マキ……あまり困らせるようなことは……」オロオロ
別の日
夏奈「……」
マコ「夏奈ー、今日はなにするんだ?」
内田「どうかしたの?」
千秋「どーせ、何も考えてないよ」
夏奈「最近、思うんだけど。藤岡のやつ、小さい奴に優しくないか?」
マコ「へ?」
内田「小さい?」
夏奈「あいつ、小さい奴ばかりを贔屓している」
千秋「なにいってんだ?」
夏奈「なぁ、千秋よ。藤岡の寵愛を受けているお前ならそれがよくわかると思うんだが」
千秋「藤岡が小さいやつを贔屓にしているって、どんな風にだ?」
夏奈「いや、もう態度が全然違うだろ」
マコ「そーなのか?」
内田「しらない」
夏奈「いいだろう。分からないのなら、実演するまでだ」
千秋「どうするつもりだよ」
夏奈「慌てるな。既に藤岡をきちんと呼んである」
千秋「また、馬鹿なことを……。藤岡も可哀相だな」
ピンポーン
夏奈「……よーし。主賓の登場だ」テテテッ
内田「なんだろね?」
マコ「さぁ?」
藤岡「お邪魔します」
夏奈「よし。藤岡。ちょっと、そこに立ってろ」
藤岡「う、うん」
夏奈「――よいしょっと。よし、いいぞ、藤岡。誰の隣に座る?」
藤岡「え……?」
千秋「……」
内田「藤岡くん、こんにちはー」
マコ「どういうことだよ、夏奈?」
夏奈「まーまー、どこに座るかで全部分かる」
藤岡「えっと……」
千秋「ん」ポンポン
藤岡(千秋ちゃんがこれ見よがしにさりげなくこっちに来いって言ってる気がする……)
内田「私の隣、あいてるよー」
藤岡「……」
マコ「ど、どうも」
藤岡(勿論、俺は南の隣がいいけど……)
夏奈「むー……」ジーッ
藤岡(なんか、睨んでる。これはどうしろっていうんだ……)
藤岡(もしかして、いつも千秋ちゃんと一緒に座っているから何か変な誤解を……。うん。そうかもしれない)
藤岡(なら、ここは……)
藤岡「マ、マコちゃんの隣に座ろうかな」
夏奈「……!!」
マコ「ど、どうぞ」
藤岡「うん。ごめんね」
千秋「……」
夏奈「ほら、見ろ!!! 千秋!!! ざまぁーみろ!!!」
千秋「何がだよ! うるさいよ!」
内田「夏奈ちゃん、どうしたの?」
夏奈「藤岡はご覧のように小さい子が好みなんだ」
藤岡「え……」
マコ「俺はちっちゃくないぞ!!!」
千秋「そーだな。少なくともマコちゃんは私よりも大きい。つまり、席替えを要求する!!」
マコ「よし。臨むところだ」
千秋「うむ。――ふぅ」
藤岡「い、いらっしゃい、千秋ちゃん」
千秋「くるしゅうない」
夏奈「おいおい、これ以上の実証は不要だぞ」
藤岡「えっと、南。これはどういう……」
夏奈「まぁ、マコちゃんは確かに大きいところもあるからなぁ……。マコちゃんを選んだからといって完璧な証拠とは言い難い」
マコ「ああ。俺には山よりも大きな男気溢れる心があるからな」
千秋「あ……。ちょっと」
藤岡「うん」
千秋(トイレ、トイレ)タタタッ
夏奈「よし、内田」
内田「なぁに?」
夏奈「藤岡に甘えてもいいぞ」
藤岡「え!? なんで!?」
内田「でも、今は千秋がいるしぃ」
夏奈「姉の私が許可を下したんだ。できるだけ甘ったるそうにしてほしい」
内田「……」
藤岡「あの……」
内田「夏奈ちゃんがそこまでいうなら……」
藤岡「南、説明してほしいんだけど……」
夏奈「いいから。お前は内田から溢れ出る義妹オーラをかみ締めろ」
藤岡「ど、どうして……」
内田「ふじおかくーん」ギュッ
藤岡「ああ、うん」
内田「ふふっ」スリスリ
藤岡(南は一体、何を考えているんだ……。まさか、俺を試しているのか)
夏奈「……」
藤岡(そうか。夏奈はよくみんなの面倒を見ているし、きっと年下が好きなんだ)
藤岡(だからこそ俺が年下好きなのかどうか、或いは年下の扱いがうまいかどうかを見ているのかもしれない)
藤岡(もしかして、南は俺のことを……俺のことを……。それなら、俺がどれだけ年下好きかどうか見せてやる)
夏奈「うーん……」
内田「ふじおかくぅん」
藤岡「よしよし」ナデナデ
夏奈「おぉ……!!」
マコ「内田ぁ、あんまり調子に乗らないほうがよくないか?」
藤岡「マコちゃんもおいで」
マコ「えぇ?」
夏奈「お、おい……藤岡……」
藤岡「後輩の面倒見はいいほうなんだ、俺」
マコ「ああ、そうなんですか」
夏奈(やっぱり……藤岡は……)
千秋「あー!!! おーい!! 内田ぁ!! お前、なにやってんだぁ、コノヤロー!!」
内田「あ、千秋」
千秋「離れなさいよ!! 私の憩いの場から出ていきなさいよぉ!!」
内田「う、うん……」
藤岡「千秋ちゃん、そんなこと言わないで場所は譲り合うべきだよ」
千秋「でも……私はそこがいいんだ……」
内田「わ、私は藤岡くんの隣でいいから……」
藤岡「そ、そう?」
内田「はい、千秋。どーぞ」
千秋「……い、いや。いい。内田、藤岡を半分で割ろう」
内田「え? どーいうこと?」
千秋「藤岡の半分は私のものだ。残り半分は内田にやろう」
内田「いいの?!」
千秋「わ、私が大人気ないみたいな空気は嫌だ」
藤岡「半分って、どうするつもり?」
内田「じゃあ、私、藤岡くんの下半分もらうねー!!」ギュッ
千秋「な!? そう分けるつもりはなかったが……。なら、私は上半分だな」ギュッ
藤岡「あの……」
内田「藤岡くんのひざまくらー」
千秋「お、おい!! 内田!! やっぱり下は私がもらう!!」
内田「やだよー!! くれるっていったじゃない!!」
藤岡「ふ、二人とも落ち着いて……」
夏奈「む……」
マコ「で、結局どうなったんだ?」
千秋「私が右半身を貰った」
内田「私は左だよー」
藤岡「よかった、決着がついて」
夏奈「……」
千秋「うむ。悪くない寝心地だ」
内田「ふわぁぁ……。藤岡くんの匂いは眠くなるねぇ……」スリスリ
マコ「そ、そんなに寝心地がいいのか?」
内田「うん、マコちゃんもどう? 真ん中あいてるよ」
藤岡「真ん中って……!?」
マコ「そこはちょっと……。でも、匂いだけでも……いいですか?」
藤岡「うん、構わないよ」
マコ「どれどれ」
夏奈「待て。藤岡、お前そこまで小さいほうが好きなのか?」
藤岡「え……。ま、まぁ、嫌いじゃないよ。い、いや、寧ろ、好きだ」
夏奈「好きなのか……」
藤岡「ああ……」
夏奈「そうか……」
藤岡(もしかして、今南の中で俺の好感度が上がってる!? よし!! イエス!!)
マコ「ふんふん……。確かに落ち着く匂いだ」ギュッ
千秋「だろう?」
内田「すぅ……すぅ……」
夏奈「……藤岡」
藤岡「なにかな?」キリッ
夏奈「お前、小さければ何でもいいのか?」
藤岡「そんなことはないよ」
夏奈「つまり、多少大きくてもいいのか?」
藤岡「え? まぁ、うん」
夏奈「よーし。なら、私が藤岡の真ん中を陣取るとするか」
藤岡「な、なにを言ってるんだ、南ぃ!?」
夏奈「な……」
内田「ふぇ? なにぃ? おやつぅ?」
千秋「どうした、藤岡?」
マコ「あ、首筋あたりが……」クンクン
藤岡(し、しまった……!! いきなりすぎて、余計なことを……!!)
夏奈「ふっ。やはり、そういうことか……。藤岡……」
藤岡「み、みなみ?」
夏奈「お前なんか千秋や内田と仲良くしてろ!!」
藤岡「えぇ!?」
夏奈「お前にはおやつはやらん!!」
藤岡「南、どうして……」
夏奈「ふんっ」
内田「夏奈ちゃん!! 私には!?」
夏奈「内田にもやらん!!」
内田「うぇーん!! なんでぇー?!」
夏奈「内田と藤岡の分は私が食べる!! ついでに千秋とマコちゃんの分もだ!!」
千秋「お前、おやつを独り占めしたいだけだろ、このばかやろう」
夏奈「うるさい!! 私はえこ贔屓するやつが大嫌いなんだ!!!」
藤岡「そんな……。俺は……」ガクッ
千秋「泣くな、藤岡。私がいる」
内田「そーだよ、私もいるよ!!」
マコ「かなぁー、おやつわけてくれよー」
夏奈「やなこった!!」
千秋「藤岡が可哀想だろ!」
内田「そーだ! そーだ!!」
マコ「夏奈、大人気ないぞ」
夏奈「なんだおまえらぁ!!! 全員で藤岡の味方をしやがってぇ!! 益々ゆるさぁん!!!」
千秋「そりゃ、10割お前に非があるからだろ」
夏奈「しるかぁー!! 小さいもの贔屓する藤岡がわるいんだぁー!!!」
藤岡「南……」
夏奈「全部食べてやる!!」バクッ
千秋「やめろー!!」
マコ「貴重な食糧がぁー!!」
内田「藤岡くぅーん」ギュッ
藤岡「え?」
内田「夏奈ちゃんをとめてよぉ」
藤岡「で、でも……」
千秋「ふじおかぁー。私たちじゃ夏奈をとめられない」ギュッ
藤岡「それは俺にだって……」
マコ「おねがいしますぅ」ギュッ
藤岡「……わかった」
夏奈「なんだ? やる気か?」シュッシュッ
藤岡「南。南だって、年下の面倒見はいいほうじゃないか。俺が南と同じ事をしてなにが悪いんだ?」
夏奈「私とお前は違う」
藤岡「一緒だよ。南は年下にはすごく優しいじゃないか。そんな南が素敵だって、俺は思う」
夏奈「なに……」
藤岡「みんなもそう思うでしょ?」
千秋「え? まぁ……」
内田「どうかな……」
マコ「……どうだろう」
夏奈「おやおや、こんなところで後輩どもの本音を聞けちゃうとはお姉さんびっくりだよ」
藤岡「みんな照れているだけだって」
夏奈「ふんっ。藤岡は私といるより千秋や内田、冬馬や吉野と一緒にいるほうがいいんだろ?」
藤岡「そ、そんなことないって」
夏奈「見え透いた嘘はいい。おい、千秋」
千秋「なんだ?」
夏奈「おやつやるから冬馬と吉野を呼んでくれ」
千秋「お安い御用だ」
藤岡「南……なにを……」
夏奈「お前にとってこの南家を楽園に変えてやるぅ。それではっきりするだろうね」
藤岡「南は何か誤解をしている」
夏奈「してないね。ずっと思ってたんだ。藤岡は小さい奴にだけ、やけに優しかったから」
藤岡「え?」
夏奈「無自覚か……。うんうん、そんな気もしてたよ」
藤岡(小さい奴って……。確かに千秋ちゃんや冬馬とはよく話すし、冬馬に至ってた外でも頻繁に会うけど……)
夏奈「ふんっ」
藤岡(南……俺の何が気に入らないんだ……)
千秋「夏奈。すぐ行くって」
夏奈「そうか。よかったな、藤岡。小さい奴がいっぱいいて」
藤岡「だから……」
千秋「藤岡、おやつを取り戻したぞ」
内田「一緒にたべよ、たべよ」
マコ「わぁーい」
藤岡「あ、ああ。うん、そうだね」
夏奈「……」
吉野「お邪魔します」
冬馬「きたぞー」
夏奈「来たか。どうぞ、お二人さん。テーブルの向こう側へ」
吉野「え?」
冬馬「向こう側って……」
千秋「藤岡、次は私の番だ」
藤岡「はいはい」
内田「千秋ばっかりずるーい!! 私もたべさせてー」
藤岡「ちょっと待ってね」
マコ「はむっ……うまいっ! あ、冬馬! 吉野!!」
吉野「楽しそうだね。何してるの?」
冬馬「あ!! 藤岡!! 俺にもくれよ、それ!!」
藤岡「ああ、冬馬まで!! 順番だから!!」
吉野「……私もください」
藤岡「えぇ……」
夏奈「おーおー、藤岡。どーだ? まさにパラダイスだろ?」
藤岡「えっと……」
内田「あー……」
千秋「あー……」
冬馬「何、大口あけてんだ?」
マコ「食べさせてほしいんだって」
冬馬「なに? 藤岡がおやつを配ってるのか?! よーし!!」
吉野「ふふっ」
藤岡「まってよ。みんな、もういいでしょ?」
千秋「なんだと? 面倒見がいいんじゃなかったのか?」
藤岡「いや、そうだけど」
千秋「なら、最後まで面倒見ろ」
藤岡「南」
夏奈「しらん」
藤岡(どうして……なにを間違えたんだ……)
内田「――でねでね」
千秋「こら、内田。私の陣地にはいってくるんじゃないよ」
内田「小指がはみ出しただけでしょー?」
千秋「それでも駄目だ」
内田「けちー」
藤岡「南、機嫌を直して欲しいんだけど」
夏奈「……」
マコ「やっぱり、いい匂いの発生源は首筋だと思うんだ」
冬馬「そうか? 耳の裏って感じもするけどな」
吉野「くんくん……。なんか、落ち着くね」
藤岡(どうしよう……。どうして南が不機嫌なのかわからないし……。今日はもう諦めたほうがいいかな……)
夏奈「なぁ、藤岡」
藤岡「な、なに!?」
夏奈「その中で誰が一番好みなんだ? 冬馬込みで」
藤岡「え……」
夏奈「全員好きなのは分かった。だけど、お前にも好みぐらいあるだろう?」
藤岡「それは……」
千秋「何を言っている、夏奈?」
内田「様子が変だよ、夏奈ちゃん」
冬馬「いつも変だけどなぁ」
マコ「な、吉野!! やっぱり首筋だよな!!」
吉野「うん。そうかもね」
夏奈「ほら、答えなさいよ」
藤岡(もしかして……南は……。千秋ちゃんたちに嫉妬を……?)
夏奈「うぅー……」
藤岡(そんな……南に限って……。そもそも南から面倒を見てみろって言ってきたわけだし……)
藤岡(だけど……。ここで千秋ちゃんたちの中から一人を選ぶのは、間違っている気もする)
夏奈「ほら、藤岡。答えなさいよぉ、はやくぅ」
藤岡「お、俺は、みな……夏奈が一番好みだ……」
夏奈「……え?」
内田「わぁ……」
吉野「……」ニコニコ
千秋「そうなのか?」
冬馬「まぁ、そうだろ」
藤岡「夏奈が一番、好みだ」
夏奈「……なるほど。それで世間体を保とういう魂胆か」
藤岡「南?」
夏奈「私はそんなことで篭絡される女じゃない!!!」
藤岡「ちょっと待ってくれ!!」
夏奈「私はそんなに甘くないぞ!! 藤岡ごときにだまされるかぁ!!!」ダダダッ
藤岡「みなみー!!」
冬馬「かなぁー!! どこいくんだよぉー!!」
千秋「変なやつ」
内田「そだね」
吉野「夏奈ちゃん……」
マコ「それじゃ、またくるよー」
千秋「ああ。碌なお持て成しもできずにすまなかった」
マコ「そんなことないって」
内田「それにしてもあれから夏奈ちゃん、出てこなかったね」
吉野「そーだね」
冬馬「なんかあったのか?」
藤岡「俺にもわからない……」
内田「藤岡くぅん、元気だしてー。途中まで一緒にかえろっ」
千秋「もう暗いし、藤岡に送ってもらえ」
内田「え!? いいの?!」
藤岡「うん。危ないからね」
内田「わぁーい、ありがとー!!」ギュッ
吉野「よろしくお願いします」
夏奈「――小さいやつが好きなやつは二度と南家の敷居は跨がせないからなー」
藤岡「えぇ……」
つづけろ
千秋「おい、夏奈。藤岡がお前に何をしたというんだ?」
夏奈「あいつは駄目だ。千秋とかマコちゃんしか目に入ってないらしい」
千秋「そうなのか?」
夏奈「お前が馬鹿を無意識に視界に入れないようにしているのと同様に、あいつも一定以上の大きさの奴は視界に入らないんだ」
千秋「ふぅーん。その割には夏奈ばかり見ていたような気もするが」
夏奈「ないね。もうあいつは千秋以下にしか興味がない。今日、それがわかった」
千秋「まて。お前の言い分には決定的な欠陥がある」
夏奈「なに?」
千秋「今日、何人がこの家にきた?」
夏奈「えーと、内田にマコちゃんに、冬馬でしょ、吉野……あと、小さいやつが好きなやつで5人だ」
千秋「そこに私とお前を含めると7人いたことになる」
夏奈「それがどうした?」
千秋「わからないのか? その7人の内、実に半数以上が小学生だったんだぞ。目に入る比率が多くなるのは当然じゃないか」
夏奈「な……」
千秋「藤岡だけじゃなく春香姉さまだって、私たちばかりを見ていただろう。何故なら、圧倒的に小学生の人数が多いから」
夏奈「なな……」
千秋「初めから検証するための条件が整っていないんだよ、バカヤロー」
夏奈「そ、そうなのか……」
千秋「あれだな。きちんと人数比を同じにしなければならない。それで小学生ばかりを見ていたのなら、それは藤岡にも問題はあるかもしれない」
夏奈「なるほどな……」
千秋「な。徹頭徹尾お前が悪いんだ。謝りなさいよ」
夏奈「……いや、でも、まだ藤岡がおかしいという可能性もなくはないわけでしょ!?」
千秋「お前、反省する気ゼロか」
夏奈「ふふ……。なら、セカンドステージを用意するまでだ」
千秋「なんだと」
夏奈「今度こそ、藤岡の化けの皮を剥いでやる……。ふっふっふっふっふ……」
千秋「どうするつもりだ?」
夏奈「そんなの決まってるだろ?」
春香「――ただいまー。遅くなってごめんねー」
夏奈「はるかぁー!!おかえりぃー!!」
ケイコとリコを呼んでくれはやく
別の日
アツコ「お邪魔します」
マキ「やっほー、春香ー」
春香「上がって、上がって」
夏奈「来ましたか、マキちゃん、アツコ」
アツコ「今日はどうしたの?」
マキ「なんか、私たちに会いたいっていうから来ちゃったけど」
夏奈「藤岡のことで協力してほしいんだ」
マキ「藤岡くん? いいよ、いいよ。お姉さんに何でもいいなさい」
アツコ「マキ……。あまりテキトーなことは言わないほうが……」
夏奈「まぁ、主役が来るまで待っててよ。他の連中も呼んであるし」
マキ「他?」
内田「おじゃましまぁーす」
冬馬「きたぞー」
夏奈「おー、入れ入れ」
春香「夏奈? 今日は何人来るの?」
夏奈「藤岡込みであと3人」
春香「もう。藤岡君、困るんじゃない?」
マキ「この女だらけの空間に少年を一人放り込むとは、まさに地獄だねぇ」
アツコ「わ、私たちお邪魔じゃあ……」
夏奈「いーの、いーの。これは藤岡のことを調べるためだから」
マキ「えー? どういうこと?」
夏奈「マキ先生、実は藤岡のやつ小さい奴が好きなのかもしれないんですよ」
マキ「なんですと?」
アツコ「ち、ちいさい……?」
春香「それ、夏奈の勝手な思い込みでしょ?」
夏奈「いーや!! もうね、藤岡の目は完全に焦点がそこにしかあってない!!!」
マキ「マジ? それはきっついね。まだ中学生なのに」
アツコ「……小さいほうが可愛いから」
マキ「なにそれ、嫌味?」
アツコ「嫌味じゃないよぉ……」
マキ「つまり、小学生にしか興味がないと」
夏奈「そーなんですよぉ!!」
マキ「それは参ったね」
内田「別にいいと思うけど」
冬馬「何が問題あるのかわかんねーよな」
内田「ねー?」
マキ「ダメダメ。それって期間限定でしか愛してくれないってことなんだよ?」
アツコ「マ、マキ……勝手なこといわないほうが……」オロオロ
マキ「私を小学生扱いするなら絶対に許さん!!!」
アツコ「あぁ……」
春香「マキ。落ち着きなさい」
ピンポーン
夏奈「お? きたきた」
春香(藤岡君……大丈夫かしら……)
ケイコ「急にどうしたの?」
リコ「あああ、あの……ふ、藤岡君もくるんでしょ!?」
夏奈「まぁ、上がってよ。時間はとらせないから」
ケイコ「随分、お客さんが多いようだけど……」
夏奈「気にしないでいいよ。ささ、どうぞ」
リコ「お、おじゃまします……」
ケイコ(塾があるから早く帰りたいんだけど)
千秋「なんだ、今日は賑やかだな」
夏奈「千秋。これで文句ないな」
千秋「あ?」
夏奈「高校生3人。中学生3人。小学生3人だ。人数比はばっちり!!」
千秋「あぁ……」
夏奈「これで藤岡に逃げ場はない」
千秋「お前、必死だな。どうした」
夏奈「危険人物なら早めに対処しておかないとだめだろ?」
素晴らしい
藤岡(ふぅー……。まさか、南に絶対に来て欲しいなんて言われるとは思わなかった)
藤岡(前回のことがあったから、もう誘われることなんてないって思ってたけど……)
藤岡(でも、嫌われてないってことでいいんだよな……これは……)
藤岡「……よし」
夏奈「――よぉ、藤岡」ガチャ
藤岡「うわぁ!? 南!?」
夏奈「中に入れよ。みんな待ってるぞ」
藤岡「み、みんな?」
夏奈「ああ。お前を待つ9人がな」
藤岡「な、なに? どういうこと?」
夏奈「いいか! 前回は人数比の偏りがあったから言い訳もできたが、今回はそうはいかないぞ!!」
夏奈「年下だけでなく年上もいるんだ。その中で視線を一点に集中させていれば、もう弁解はできない!! いいか!! そういうことだ!!」
藤岡「う、うん……。よくわからないけど、わかったよ」
夏奈「よーし、入れ」
藤岡「お、お邪魔します」
藤岡「な……!?」
マキ「おーす、藤岡くん」
春香「ごめんね、藤岡君。賑やかだけど、許してね。夏奈ったら考えなしに呼ぶから……」
藤岡「い、いえ……」
リコ「ケイコ……ケイコ……ふ、ふ、ふふ、藤岡くん……キター……」ギュゥゥゥ
ケイコ「う、うん……きたね……。スカート掴むの……やめて……」
内田「ふじおかくーん!!」
冬馬「で、藤岡をどうするんだよ、夏奈?」
夏奈「さぁ、藤岡。誰の隣に座る?」
藤岡「ま、また……?」
夏奈「当然だろ?」
アツコ「あ、どうぞ。座布団、あるから」
藤岡「すいません」
夏奈「おいおいおいおいおい!!!! なんだよぉ!!! でかいのもいいのかぁ!?」
藤岡「え? いや、勧められたから……つい……」
アツコ「デカイ……」
夏奈「アツコも勝手なことしないでよぉ!! ちゃんとしたデータが欲しいんだから!!」
アツコ「ご、ごめんなさい……」
春香「もう。夏奈、藤岡くんが困るだけじゃない」
夏奈「春香、これは重要なことなんだ。口出ししないでくれ」
春香「何言ってるの。これだけ女の子がいるのに、誰かを選んで隣に座るなんてできるわけないでしょ? ね、藤岡くん?」
藤岡「え、ええ……」
夏奈「駄目だ。これはこれから藤岡を家に入れていいかどうかを試すためなんだから」
ケイコ「どうしたら藤岡くんは夏奈の家に自由に来ることができるの?」
夏奈「それを言ったらテストにならないでしょ」
ケイコ「そ、そう……」
リコ「わ、わたしの隣はいいのかなぁ……ね? いいとおもう?」ギュゥゥゥ
ケイコ「さぁ……」
内田「藤岡くーん。こっち、あいてるよー」
冬馬「藤岡も大変だなぁ」
藤岡(これは南が俺に課した試練なのか……!!)
藤岡(誰だ……!! 誰が正解なんだ……!!)
夏奈「さぁ!! 選べ!!」
藤岡(南の隣か……。いや、南は俺を警戒しているわけだし、南本人を選ぶのはリスクが大きすぎる……)
内田「こっち、こっちー」グイッグイッ
千秋「まぁ、折角来たんだ。こっちに座れ」グイッ
藤岡(だからといって、千秋ちゃんたちもまずい。この前は小さい子……年下と遊ぶ俺を見て南は機嫌を損ねたようにも見えたし……)
ケイコ(藤岡くん……とりあえず、夏奈の隣に座ろう……。それで私はすぐに帰ることができると思う)
リコ(藤岡くんのレア顔……!!)
藤岡(あの二人の間に行くのはもっと危ない。となれば……)
マキ「こっちには来るなぁ……」
アツコ「マキ……。失礼だよ」
春香「そうよ」
マキ「こっちに来たら私は小学生ってことになるじゃない!! そんなのいやー!!!」ジタバタ
藤岡(春香さんの隣ぐらいしかない気がする……!!!)
冬馬「ふじおかぁ、しゃきっとしろよ」
藤岡「え?」
冬馬「座りたい奴の隣にいけばいいだけだろ?」
藤岡「冬馬!! 簡単に言うけどな!!」
冬馬「藤岡の中ではもう決まってるんじゃないのか?」
藤岡「冬馬……」
冬馬「堂々といけよ」
藤岡「……ありがとう、冬馬。そうだな。うじうじ悩むほどのことじゃなかったんだ」
ケイコ「藤岡くん、かっこいい」
リコ(藤岡君、かっこいい!!!)
藤岡「よし」スタスタ
夏奈「ん?」
春香「あ……」
藤岡「――俺は、ここに座る!!!」
マキ「ほほう、夏奈ちゃんと春香の間かぁ……。良い線いくじゃない、藤岡君」
いいぞ
春香「えーと……」モジモジ
夏奈「なんだ、おまえ!!! 世間体保持と家主につけいることを同時にするなんて最低だな!!!」
藤岡「ええ!? い、いや、違う!!」
春香「夏奈。藤岡くんは夏奈のとな――」
リコ「……」ウルウル
春香「あー……」
ケイコ(すいません! それ以上は言わないであげてください、春香さん!!)
春香「ああ、そうね。藤岡くん、わざわざ私に気を遣ってくれたのね、嬉しいわ!!」
藤岡「は、春香さん?!」
春香「今日は晩御飯食べて行ってね」ナデナデ
藤岡「えーと……」
夏奈「はるかぁー!! こんな危ない奴に食わせる晩御飯なんてないだろぉー!!!」
春香「ありますぅ!」
千秋「なんだ、藤岡。お前、春香姉様のことが好きだったのか。まぁ、春香姉様の美しさと優しさに惹かれるのは人間である以上は避けられないことだが」
藤岡「あ……うん……」
春香「藤岡くんのために腕によりをかけるからねっ」
藤岡「は、はい」
リコ「流石、藤岡くん。気遣いも完璧なんて……」
ケイコ(流石、春香さん……。よかった)
内田「私も春香ちゃんの腕によりをかけたりょーり、たべたーい!!」
冬馬「おれもー!!」
マキ「わたしもー」
アツコ「マキ……」
夏奈「なんだよ、なんだよぉ!! ちゃんとした検証ができないだろぉ!!」
ケイコ「夏奈、結局藤岡君の何を調べたかったの?」
夏奈「ん? 私の中で藤岡は小さな奴が好きという仮説が出来上がってるんだ」
ケイコ「小さい?」
夏奈「ああ」
ケイコ「それはえっと……年齢のこと? それとも身体的なこと?」
夏奈「残念だけどどっちもなんだ、ケイコ」
こうなったらケイコしか夏奈を止められない
リコ「えぇ!? そ、そうなの?!」
藤岡「南!!」
リコ「ねえ!! ケイコ!! この胸を引っ込めるいい方法ない!?」ギュゥゥゥ
ケイコ「……スカート引っ張るのやめて……」
マキ「だからって、私を狙うのはNGだからね!!」
アツコ「……もういや……」ウルウル
藤岡「南!! 誤解だよ!!」
夏奈「誤解だとぉ!? ここ最近、お前のえこ贔屓っぷりは目に余るぞ!!」
ケイコ「夏奈。具体的に藤岡くんはどういうことをしていたの?」
夏奈「千秋の友達が来たときはいつもそっちばかりにかまけてるし、千秋と冬馬に体を許している」
リコ「な……!?」
ケイコ「それ、すごく面倒見のいいお兄さんじゃない」
夏奈「それだけじゃない!! この前、ケイコたちと勉強会したときだって、藤岡はずっと千秋と同体型のミユキちゃんに付きっ切りだったし!!」
ケイコ「いや、あのとき夏奈が教えてって言えば藤岡くんは丁寧に教えてくれたよ? 夏奈が私ばかりに訊くからミユキちゃんは藤岡君に訊いていただけで」
夏奈「……」
ケイコ「夏奈……」
夏奈「ま、まて!! 前にマキちゃんたちが来たとき、藤岡は迷わず一番小柄なマキちゃんの隣に座ったぞ!!」
ケイコ「そのとき、藤岡くんは自分から座ったの?」
夏奈「え?」
ケイコ「さっきみたいに誘われたから自然とそこに座っただけじゃないの?」
夏奈「う……うーん……」
アツコ「そういえば、マキが隣に座れって言ってたよね」
マキ「そうだっけ? 覚えてないや」
ケイコ「はい。別に藤岡くんは小さい子が特別好きってわけじゃない。ってことでいい?」
夏奈「えーと……」
ケイコ「いいよね?」
夏奈「……うん」
ケイコ「なら、藤岡君に言うことは?」
夏奈「……藤岡。騒いで、ごめん」
藤岡「う、ううん……。き、気にしてないから……」
ケイコ「ごめんね、藤岡君。これにめげずに夏奈のことお願い」
藤岡「え!? いや、俺は……!!」
ケイコ「リコ、かえろ」
リコ「え? もう?」
ケイコ「用事は済んだみたいだし。いいよね?」
夏奈「うん、なんか、ごめん」
ケイコ「それじゃ、また。お邪魔しました」
ケイコ(やっと帰れる……。疲れたぁ……)
リコ「また明日ね!! 藤岡くん!!」
藤岡「う、うん」
マキ「なんだー、そういうことかぁー」
アツコ「よかったね、誤解がとけて」
藤岡「は、はい」
内田「え? 藤岡くんの何がまずかったの?」
冬馬「よくわかんないけど、俺たちはこれからも藤岡と遊んでもいいってことだよな!」
夏奈「ごめんよ、藤岡。変に疑って」
藤岡「いや、何を疑われていたのかピンとはきてないけど」
マキ「要は、藤岡くんが千秋ちゃんたちしか見てないのが嫌だったんでしょ?」
夏奈「な、なにぃ!? そんなことあるかぁ!!」
マキ「分かる、分かる。下手に仲良くなりすぎると、他の子と話しているだけでなんかつまんなく感じちゃうのよねー」
夏奈「マキ先生、私の分析なんてどーでもいいでしょう?!」
千秋「なんだ、夏奈。お前も藤岡の膝の上に座りたいのか?」
藤岡「えぇぇ!?」
夏奈「誰が!! 私は千秋みたいに幼稚じゃない!!」
内田「あー。そっか。千秋、私と千秋だけで藤岡くんを半分っこしちゃったのがまずかったんだよぉ」
千秋「なら、三等分だな」
内田「右、左、中! だね!」
冬馬「お前ら、俺にもくれよ」
千秋「四等分か? それなら横に分けないと面倒だな」
藤岡「あの……」
アツコ「よ、よこに……?」
マキ「春香の分もいるでしょーに」
千秋「そうか。五等分にしなきゃいけないな」
内田「えー? それなら頭、胸、腕、お腹、足でいいかな?」
冬馬「俺は足を貰うぞ。サッカーするのに大事だからな!!」
マキ「つまり、冬馬は下半身を頂くと……」
アツコ「はるかぁー……たすけてぇー……」テテテッ
内田「じゃあ、私は腕ー!! 藤岡君にお姫様だっこしてもらうんだぁ……」
千秋「なら、私は胸だ! 胸に座る!!」
藤岡「千秋ちゃん、どういうことかな?」
マキ「夏奈ちゃんは頭かお腹、どっちにするぅ?」
夏奈「ど、どっちでもいい!!」
マキ「頭のほうが色々できることありますよ」
夏奈「うるさいって!!」
マキ「藤岡くんも夏奈ちゃんが頭を選んだほうがうれしいよね?」
藤岡「え?」
マキ「ほら、キ――」
春香「マ~キ~」
マキ「はるか……?」
春香「料理、手伝ってくれる?」
マキ「……ぁぃ」
夏奈「ふぅ……。これで一件落着だね」
内田「ふじおかくぅーん」ギュッ
藤岡「わぁ!?」
内田「お姫様だっこしてほしぃなぁ」スリスリ
千秋「お前、強欲だな!!」
冬馬「おい、内田。藤岡はお前だけのものじゃないぞ」
内田「えー? 甘えるのもだめー?」
藤岡「あー……別に……」
夏奈「藤岡……やっぱりお前は……小さいほうが……!!!」
藤岡「南!! これは!!」
夏奈「……」
藤岡「ごめん!! お姫様だっこはまた今度で!!」
内田「え~? なんでぇ~?」
夏奈「お前らも!! 必要以上に藤岡に近づくな!!」
千秋「なんだと? おやつだけでは飽き足らず、藤岡まで独り占めか、コノヤロー」
内田「夏奈ちゃんばっかりずるぃ~!!」
冬馬「夏奈、大人気ないぞ」
夏奈「そんなんじゃない!! お前らが藤岡にスキンシップを働くとあらぬ誤解を生むからだ!!」
千秋「それはお前だけじゃないのか?」
夏奈「違う!!」
内田「夏奈ちゃんだけだよ」
夏奈「あー!! もう!! 藤岡!! こっちこい!!」ギュッ
藤岡「わわ、南?!」
千秋「こら、夏奈。藤岡をどこにつれていくぅ」
夏奈の部屋
夏奈「全く、あいつらは。これまでの惨劇を見て、何一つ反省しないんだな」
藤岡「南……」
夏奈「なんだ?」
藤岡「いや……。俺はどうしたらいいかなって……」
夏奈「む……」
藤岡「……」
夏奈「……お前、さっきはどっちの隣に座ったんだ?」
藤岡「え?」
夏奈「春香か? 私か?」
藤岡「……夏奈に決まってるだろ」
夏奈「……ホントか」
藤岡「うん」
夏奈「そうか……。春香より、私なのか?」
藤岡「そうだ。夏奈のほうだ」
夏奈「藤岡……」
藤岡「夏奈……」
藤岡(この雰囲気は……もしかして……いや……でも……!!!)
夏奈「……結局、小さいほうか」
藤岡「え?」
夏奈「ああ!! そうだよ!! 私の胸はちっちゃいよ!! うるさいなぁ!!!」
藤岡「え……あの……」
夏奈「これでも気にしてるんだ!! ほっといてよぉ!!!」
藤岡「えぇ……?」
夏奈「うぇぇぇん……!! 春香みたいになりたいよぉぉ……!!!」
藤岡「……俺は、夏奈が好きだ」
夏奈「……ふぇ?」
藤岡「小さくても大きくても関係なく、夏奈が好きだ」
夏奈「……お前、顔真っ赤だぞ」
藤岡「それは仕方ないじゃないか……」
夏奈「分かった。つまり、お前は小さい私が好きなんだな」
藤岡「う、うん」
夏奈「そうかそうか」
藤岡「だから、落ち込むことは……」
夏奈「私ぐらいのが理想なのか?」
藤岡「え」
夏奈「どうなんだ?」
藤岡「そ、そうだ!!」
夏奈「千秋よりは私なんだな!?」
藤岡「そうだ!!」
夏奈「……よし、そこまでいうなら。床に座れ」
藤岡「なんで?」
夏奈「そこまで私のことが好きなら仕方ない、私がお前の膝の上に乗ってやろう」
藤岡「南……!! ちょっと、それは……!!」
夏奈「千秋や冬馬は座らせて、私は座らせないなんておかしな話はないはずだ!!」
夏奈「よっと」ギュッ
藤岡「おぉ……」
夏奈「ふーん……。なんだか、普通」
藤岡「ごめん……」
夏奈「何をモゾモゾしてるんだ?」
藤岡「だ、だって……南の……匂いが……」
夏奈「ん? 藤岡もいい匂いだぞ?」
藤岡「い、いや……」
夏奈「まさか、私、臭うのか?!」
藤岡「そんなことないよ!!」
夏奈「なんだ、やっぱり花から生まれただけのことはあるな、私」
藤岡「……」
夏奈「つっこめよ」ゴスッ
藤岡「ご、ごめん……緊張して……それどころじゃない……」
夏奈「情けないなぁ、藤岡は」
藤岡「……」
夏奈「……」
藤岡「あ、あの……いつまでこうしてれば……」
夏奈「すぅ……すぅ……」
藤岡「南……?」
夏奈「うぅん……やめてぇ……はるかぁ……」
藤岡「はぁ……。緊張して損した」
藤岡(南はまだ俺のことそこまで意識してくれてないんだろうか……)
藤岡(まだ付き合ってるってわけじゃないのに、こうして居眠りするってことは、異性っていうより家族なんだろうか)
藤岡(それなら、南に恋愛感情は……)
夏奈「う……ぅん……」ギュッ
藤岡「……!」ピクッ
藤岡(まぁ、いいか。今のままでも……)
夏奈「うにゃ……」
藤岡(南の寝顔をこんな間近で見れたんだ。もう十分すぎるぐらい俺は幸せだから!!!!)
『夏奈ー、藤岡くーん。ごはんできたわよー』
夏奈「できたか!!!」ガバッ
藤岡「うわぁ!?」
夏奈「どうした、小さいほうが好きな藤岡」
藤岡「急に南が起きるから」
夏奈「……」
藤岡「なに?」
夏奈「別に。ほら、いくぞ」
藤岡「うん。ごめん、いつも夕飯まで……」
夏奈「そうだな。ついでだ、朝まで私を膝の上に乗せておくか?」
藤岡「何言ってるんだよ!!」
夏奈「さっきよりチャンスは増えるぞ?」
藤岡「南!! 俺はそんなやましいことは考えてないから!!」
夏奈「はいはい。おまえは凄くいい奴だよ。全く」
藤岡「あ、ありがとう」
/. ノ、i.|i 、、 ヽ
i | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ |
| i 、ヽ_ヽ、_i , / `__,;―’彡-i |
i ,’i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三”―-―’ / .|
iイ | |’ ;’(( ,;/ ’~ ゛  ̄`;)” c ミ i.
.i i.| ‘ ,|| i| ._ _-i ||:i | r-、 ヽ、 / / / | _|_ ― // ̄7l l _|_
丿 `| (( _゛_i__`’ (( ; ノ// i |ヽi. _/| _/| / | | ― / \/ | ―――
/ i || i` – -、` i ノノ ’i /ヽ | ヽ | | / | 丿 _/ / 丿
‘ノ .. i )) ’–、_`7 (( , ‘i ノノ ヽ
ノ Y `– ” )) ノ “”i ヽ
ノヽ、 ノノ _/ i \
/ヽ ヽヽ、___,;//–’”;;” ,/ヽ、 ヾヽ
夏奈「おー、おいしそうだねー」
藤岡「ホントだね」
冬馬「やっと出てきたか」
内田「藤岡くんのとーなり!」
千秋「私だ、ばかやろう」
冬馬「待てって。夏奈と春香も含めて相談をだな」
夏奈「いいよ。体はお前らにくれてやる」
藤岡「え?! みなみぃ!?」
夏奈「そのかわり、心だけは譲らないからな。お前たち」
藤岡「え……」
マキ「ひゅー」
春香「ちょっと、おかしな話はやめてよぉ」
千秋「藤岡、どういうことだ?」
藤岡「えっと……」
夏奈「藤岡の好みは私ってことだよ。な、藤岡?」
おしまい
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません