かぐや姫「恋愛したい」 天女「……」 (23)

かぐや姫「そもそも月の男はダメね。器が狭くて、矮躯だもの」

天女「……で、では、今回もお見合いのほうは」

かぐや姫「もちろんよ。大体お父様も見る目もないのよ、なんであんなチビ助とさぁ。
     まぁ〜金はイッパイあるらしいけど、人の価値は資金じゃないの、心なの」

天女「しかし、姫様。アナタは我が国を背負い立つ、第一王女なのですよ? 
   先代のかぐや姫は、アナタのお父様と————」

かぐや姫「————お母さんは関係ないじゃん!! このバカ女っ。だから結婚できないのよっ!!」

天女「ッ……しかし姫様。昨晩の行幸際、王からのご質問に笑顔で————」

かぐや姫「————なに言ってるの? アレは表面よ。ほら、一応王様だから機嫌を損ねちゃけないしさ。
     つまり、こびへつらい? 阿諛追従ってやつ? 私だってバカじゃないのっ」

天女「いくら第一王女とはいえ、一国の王に向かって陰口をたたくとは……
   王国に仕える者として、見逃すことはできませぬ」

かぐや姫「なに? 私に弓を引くの? ふんっ、上等じゃない」

天女「……竹取のかぐや姫のように、追放させていただきます。
   せんずるところ地上への流謫ですが、それはよろしいでしょう?」

かぐや姫「ふ〜ん、主に逆らうんだ?」

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天女「これは王からの綸命でもございます。私一人の権能ではありませぬ。
我ら、王国上層部の総意でございます。最近アナタの粗暴を見かねてのことなのです」

かぐや姫「そうやって結婚を強要するんだ? そんなんだから私はイヤなのっ。
     まだまだゼッタイ『羽衣は渡さないもん』 まだ成人もしてないのに、結婚なんてゼッタイヤダ」

天女「はぁ〜アナタは、姫としての自覚がなさすぎます。なぜ無用に大勢へ逆らうのですか?
   見合いの相手は、今を時めく貴公子ですよ? みなが憧れる右大臣の息子ですよ」

かぐや姫「私だって……恋愛したいのっ。だから、結婚なんてまだいやっ。そんなんだから結婚できないんだよ」

天女「ならば仕方がありません。今この場で、月の都の第一王女————かぐや姫へ、地上への流罪を言い渡します」

かぐや姫「ふん、言ってろ」

天女「おい、お前ら来い!!」

 ゾロゾロゾロゾロ

かぐや姫「う、ウソでしょ? え? ウソでしょ?」

月面 天の羽衣発射場

かぐや姫「この人でなしっ!! 悪魔ぁ!! 死神ぃ!!」

王「うるさい。罪人ごときがわんわん吼えるな」

天女「おい。自分の羽衣をつけろ」

かぐや姫「うぅ……扱いが全然違う、私は姫なのよ?」

かぐや姫母「かぐやちゃん。気を付けてね。月桂樹の前で毎日祈るからね」

かぐや姫「お母さん、お母さんだけだよ、心配してくれるのぉ!!」

天女「動くな。もしも羽衣が外れたら、宇宙で凍死だぞ。それに奪われるなよ、この羽衣を」

かぐや姫「なくすわけないじゃないっ。このバカっ!! 売れ残り!!」

天女「……っ。もう飛ばせ。羽衣の防眩機能を回復、カバーを外せ」

かぐや姫「え? いや、ちょっと待って!! ごめんだから!! ごめんだからぁ!!」バタバタ

 発射まで残り5秒
 5
 4
 3
 2
 1

かぐや姫「やだやだやだぁぁぁあぁぁ!!!!!」バタバタ

……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……


王「行ってしまったな。はぁ、留めることは出来なかったのだろうか」

かぐや姫母「なにを言います。アレは王族としての通過儀礼。嫌だと言うのに、私も強いられました」

王「だけどな、もしもかぐやに悪い虫がたかってしまったらって考えたら…………」

かぐや姫母「千尋の谷に突き落とすようなお気持ちなのは、重々わかっております。
      しかし、コレは儀礼なのです。母なる星に住まうことによって、感謝の心を養うという————」

王「————でもでもでもぉ。かぐやは可愛いし、美人だしぃ〜。子供なんて出来たらさぁ!!!!」

かぐや姫母「あ〜うるさいっ!! なら、一緒にお行きになったら!?」

王「でも、俺には仕事がぁ〜。なぁ〜どうにかして、戻せないだろうかぁ?」

天女(……なるほど、姫様のワガママは親譲りか)

地球 夜道

男「たっく。自分で買いに行けよ、マヨネーズぐらい」

男(つーか、春の夜は寒いな。雨あがりだからか?)

男「でもなんか、雨後の月ってキレイだよ……なって、ん?」

男(なんだ、あれ? なんかユラユラ布みたいのが……落ちてくるな)

男「よっと」バシッ

 男の手が取ったモノは、キラキラ輝く一本の帯であった。
 両端は綸子模様に加工され、月影に透かして見ると、蛍火のような光りを呈出した。

男「……よし、交番に届けよう。なんかスゲー怖いし、一反木綿だったらイヤだし」

男(たしか交番は、この公園の路をまっすぐ————)

?「————ない!? ない!? ないないないぃぃぃ!!」

公園

男(着物の女の子が、吠えておられる)

?「どこにもないっ、どこにもないっ、どこにもないっ」

男(無視すべきなのか、それとも一緒に……アレ? もしかしてあの子が探してるのって)

男「すいません」

?「えっ!?」クルン

男(うぉ。すっげー美少女)

?「なにっ? 私は忙しいのっ」

男「あ、いや。君の探してるやつって、もしかしてコレじゃないかなぁって? 恰好を見るにそれっぽいし。
  反物屋とかそういう家柄…………って、ど、どうした?」

?「そそそそそれ、どどどどうしたの?」

男「え? ああ、拾った」

?「ひ、拾った……ひひ拾った」

男「ど、どうした? えっと大丈夫か?」

?「ひろ……うぅう……ううううううぅぁぁああああああ」ボロボロ

男「え? い、いや泣くなって。ちょっと、いや、マジでっ。なんか俺やった?」

?「ケ、ケッコンっ!!」

男「は?」

?「アンタと結婚しないといけないのぉ!!」

男「へ?」


 つまり、こういうことだった。
 彼女————かぐや姫は、月の裏面に住まう人間達を統べる、王の娘。
 冤罪によって流刑に付され、この街に流れ落ちたが、その際に『天の羽衣』を風にさらわれ、
 それを偶さか御遣いに出ていた自分が拾った、ということだった。
 しかし……それを信じることは到底無理な話で。

男「つまり、君は月の人間ってことだよね?」

かぐや姫「そうよ、そう。私は月の人間なの」

男「……電波を交信してるな」

かぐや姫「なに?」

男「いや、なんでもない。っで、話を進めるけど結婚ってどういうこと?」

かぐや姫「この天の羽衣は、自分の分身みたいなモノなの。だから婚姻を結ぶ証として、
     女の子は、男に渡すんだけど……今回、アンタが私のを取ったから、その結婚って」

男「じゃあ、返すよ」

かぐや姫「ダメなの……だって、触った相手の指紋を認識して……
     その、月のデータバンクに婚約したって情報を送るから」

男「……でも、君しか触れないってことはないだろ?」

かぐや姫「それを防ぐために、いつもはカバーをしてるの。
     でも、天へ飛び立つときにはそのカバーを……」

男「外して、俺が触れたってことか?」

かぐや姫「うん……」コクン

男(マジ面倒だな。シリアスな電波を受信してるし)

かぐや姫「…………」

男(ともかくこの子を家に帰さないとな)

男「あのさ、まず家に帰ろうぜ?」

かぐや姫「家? 月には帰れないわよ。月の地面に立脚した重力ポテンシャルを計算して、
     この羽衣は編まれているから、地球から月に行くのはムズカシイの」

男「そうじゃなくて、本当の家だよ。そこまで送っていくからさ」

かぐや姫「だからっ!! 月に行くのはムズカシイの!!」


男「いや、冗談じゃなくてさっ。どこの家? まず警察署に行くか?」

かぐや姫「いかない!! どうせ、流民って奴だし」

男「はぁ……なんか話になんない。俺、もう行くぜ?」

かぐや姫「ちょっと待ってよ!! 不服だけどさっ、一応夫婦なのよっ!?」

男「夢の話はいいんだよ。俺は忙しいんだ」スッ

かぐや姫「じゃ、じゃあ、私もいく!!」

男「あの先に交番があるからさ、そこで話を聞いて貰えよ」

かぐや姫「なんで信じてくれないの?」ウルウル

男(そんな目で俺を見るな)

かぐや姫「信じてよっ」

男「……わかった。交番まで付いてこい」

誤字脱字がある場合は、指摘してくれるとうれしいです。
短いですが、今回はここで終わりです。

交番

警官「……っで二人は夫婦なんだね」

男「いや、違います。この子がうるさい————」

かぐや姫「————ふざけないでよっ。私たちは夫婦になっちゃったのよっ」

男「だから、妄想の話をするな」

かぐや姫「妄想じゃない!! なんで信じてくれないのっ?」

警官「痴話ゲンカに巻きこまないでくれ」

男「痴話じゃないです。コイツとは赤の他人です」

かぐや姫「ヒドイっ。アンタがはじめただったのに。だれにも触られたことなかったのに。
     そうやって見捨てるのって、男としてどうなの?」

男「それは偶々だろ? 俺だってべつに欲しかったわけじゃない」

警官「……これは、君がわるいよ」

男「え? 俺?」

警官「責任を取りなさい。女の子の初めてを奪って、ポイ捨てみたいに捨てるなんて、クズの行為だ。
   おまけにこんな可愛い子を捨てるなんて、それは……勿体ないじゃないか」

かぐや姫「そうよ、勿体ない」

警官「ほらっ、君たちは肩を組んで、人生を歩むんだ。ほらっ、こんなところに居てはいけない」

男「え? ちょっと、俺はべつに処女を————」

警官「————ほらほらっ!! 行くんだ!!」

かぐや姫「ほらっ、行こう!!」

警官「出立のときだ!!」


夜道

かぐや姫「ふふ〜ん、正義は勝つっ!!」

男「おいっ、正義ってなんだよ。あの警官になんか勘違いさせちまったぞ」

かぐや姫「どういうこと?」

男「お前の初めてを奪ったってことだよ」

かぐや姫「?」

男「お前の、アレだ。処女を奪ったってことだ」

かぐや姫「処女? しょ————そそそそんなわけないじゃない!!
     会って間もないのに、そんなわけ!!」カァー///

男「だから、誤解させたって————」

かぐや姫「————誤解を解くわよ!! ほらっ!!」

男「待てっ。もう諦めろって。つーかお前、マジで家に帰れって。親が心配してるだろ」

かぐや姫「だから、帰る家がないの」

男「だからなんだよ」

かぐや姫「だから、家がないのよ」

男「ケンカしたのか、親と?」

かぐや姫「まぁーそうだけど……もう親じゃないし」

男「ふ〜ん、金は?」

かぐや姫「持ってるわけないでしょ? お城の中じゃ必要ないもんっ」

男「それじゃあ、どうすんのお前?」

かぐや姫「だから家がないの」チラチラ

男「はっきり言えよ」

かぐや姫「うぅ……と、泊めて欲しいのよっ。だいたい夫なんだから止める義務があるんだからねっ」

男「……べつにいいけど、母さんに訊いたあとな」

かぐや姫「お、お母様? 不運な結婚だとしてもいきなり、お母様と同居なんて」アセアセ

男(相手するのやめよっ。さて母さんにかけるか)

Prrrrrrr ピッ

男「ああ、母さん。実はさぁ…………

母『べつに泊めるのは良いけど、はやくマヨネーズ買ってきなさいよ?』

男「ああ、わかった。うん、じゃあ」

 ピッ

かぐや姫「でもアレよね、お母様には悪いけど不慮の事故で結婚したわけで、
     その、頭を下げて、縁を切らせてもらって……」ブツブツ

男「なにやってるんだ?」

かぐや姫「え? 破談の段取りを考えてるの」

男(まだ言ってるのかよ、懲りないな)

男「そう、じゃあマヨネーズを買いに行くぞ」

かぐや姫「マヨネーズ? なにそれ?」

男「マヨネーズ知らないのか?」

かぐや姫「なんか、バカにしてない?」

男「してねぇーよ、ただ珍しいなぁーって」

かぐや姫「ふ〜ん。じゃあ、そのマヨ・ネーズとやらを買いに行きましょ。知識の探究は大切よっ」

コンビニ 前

かぐや姫「これがマヨ・ネーズ」ジー

男「ああ。二本買ったからそれをやるよ」

かぐや姫「どうやって使うの? 白いの入ってるけど……これなに?」

男「どうやってって。赤いキャップを外すと、銀紙が丸い口についてるから」

かぐや姫「ここを外して……この銀色を取って—————キャッ!!」

 ビュリュリュリュリュ————べちゃ

男(うわっ。マヨネーズまみれ……エロい)

かぐや姫「イッパイ出たじゃん……。口にも入ったっ。どうしてくれ————ん?」

男「ど、どうした?」

かぐや姫「おいしぃ。これ、おいしいっ!!」

男「……え、それは直接食べる物じゃ」

かぐや姫「チュウチュウ」

男「え、あっ……なんかもう、これでいいか」

かぐや姫「なに? あげないわよ? マヨ・ネーズっ」チュウチュウ

かぐや姫「チュウチュウ」

男「さて……自宅に着いたものの、どうするか」

かぐや姫「チュウチュウ?」

男「……マヨネーズなんか与えなければよかった」

かぐや姫「チュウチュウっ————ぱっ。ほらっ、お母様に会いましょう」

男「おい、口のマヨネーズ拭けよ」

かぐや姫「ん?」ズイッ

男「ん? ってなんだよ」

かぐや姫「拭いて」

男「自分で拭けよ」

かぐや姫「汚れるもん」

男「はぁ……(ヘンに言葉を返すのは、剣呑だからな)

 男は人差し指で、少女の頬についたマヨネーズを取る。
 爪先にはべったりと、白いマヨネーズ。
 すると少女はパクッと。

男「お、おい。いきなり」

かぐや姫「んぱッ。……これで汚れなくて済んだわ。ほら、会いましょうよ」

男「いやいや、人の指を舐めといて、そんな平々然とすんなっ」

かぐや姫「べつに舐めたのは、マヨネーズだし。アンタの指は舐めなかったわ」

男「でもさぁ、普通人の指はなめないだろ」

かぐや姫「だって、イッパイあったし」

 ————ガチャ

妹「お兄ちゃん探してくるねっ!!」タタタタ

男「おっ、」

かぐや姫「え? 女? え? 二股?」

妹「え? 二股?」

男「二股?」

かぐや姫「え?」

妹「え?」

リビング

母「じゃあ、かぐやちゃんは男のお嫁さんなの?」

かぐや姫「はい。色々あって嫁なんです」

妹「い、色々っ……」

男「お前の想像してるようなものはないぞ。ああ、一切ないぞ」

母「でも、かぐやちゃんは宇宙人なんでしょ?」

かぐや姫「うんっ。でも、マヨ・ネーズがあるから大丈夫っ」

男(なにが大丈夫なんだろうか)

妹「でも、お月様に本当に住んでるの?」

かぐや姫「うんっ。ケッコー広いのよ?」

妹「へ〜住んでみたい。太陽とかデッカク見えるのかなぁ」

母「じゃあ、かぐやちゃん。この地球に御友達いる?」

かぐや姫「トモダチ? 友達は……いない」

母「じゃあ、さっきの電話は」

男「電話?」

妹「うん。『私、今、十字路に入るの』って電話があったんだ。」

男「メリーさんじゃねぇーか」

かぐや姫「メリー・サン?」

男「ああ、それがどうした?」

かぐや姫「え? いや、メ、メリー・サンは—————」

Prrrrrr

母「あっ、電話ねっ」

 ガチャ

母「もしもし」

母「もしもし? え? 交番前?」


男「メリーさんがなんだって?」

かぐや姫「メリー・サンは、月の殺し屋だよっ」

男「はっ?」


母「もしもし? 家の前にいる?」


男「おい、バカにするなよ」

かぐや姫「バカにしてないないっ。メリー・サンは」


ピンポーン


妹「あっ、私出るねっ!!」タタタタタ


かぐや姫「に、逃げないと」

男「お前の電波は留めることを知らないな」


母「今、かぐや姫の後ろにい————」

男「ん?」クルンッ

男(う、うそだろぉ……)

メリーさん「」ドドドド

かぐや姫「め、メリー・サン」

男(すげぇームキムキなんですけど)

メリーさん「」ムキムキ

 今回はここまでです

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