私「嗚呼、寒い」 (8)

ご機嫌よう諸君。
今宵私がこうして寒い春空の下にさらされているのは他でもなく彼女との約束を果たす為である。
彼女はいったい今どこで何をしているのであろうか。
時は遡り一月前。

私は何時ものように部室に向かっていた。
部室に向かう廊下の途中にある沢山の落書きを何気無く眺めながら歩いていく、そんないつもと変わらない日常に私は久しく満足感を覚えた。
しかしそんな日常は彼女によって打ち破られるのであった。
部室に入ると手品部の面々が揃っていた。

「あら、先輩おはようございます」
そう言って副部長の安藤が私に声をかけてきた。
「おはよう、新入部員は?」
唐突に投げかけた質疑には差し支えて意味はなく単なる好奇心からなるモノであった。
まあ、答えは決まっているな。
「残念ながら有りませんわ、このまま来年には廃部になってしまうのかしら」
そう彼女が呟くこともまた予想の範疇で有った。
「うーん…」
そう私は唸るように考えて一つの答えを導き出した。

「勧誘をしよう」
うむ、我ながら至極普遍的な考えであろう。
「勧誘と仰りましても部員は私達二人だけですわ」
それもまた予想の範疇であった為に返す言葉の用意を怠っていなかった。
「安藤」
「はい何でしょう」

「お前は勧誘というものの具体的な定義を知っているかね」
そう私は安藤に尋ねて見たところでこの論の着地点を見失った。
不思議な顔をする安藤に続けざまに適当に見繕った自論を振りかざす。
「勧誘とは人数が多い方が一般的には効率的だとされている」
「はい」
安藤がいささか適当に相槌を打った気がしたが私は続ける。
「だがね安藤よ俺は一般の定義の中に収まっている様ではこの大義を成し遂げる事は出来ないと思うのだよ」
「と、いうと」
安藤が素で尋ねてくる。
「と、とにかく勧誘に行くぞ安藤」
素の安藤には勝てる気がしなかったので身を引いておく事にした

人いない…
せっかく書き溜めたのに…

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