モバP「俺は今から鬼となる!」 (84)
P「そうか…もう1月も終わりか…」
P「やってくるのは2月…事務所にとって一大イベントとも言えるあの行事がついにやってくるのか…」
P「そう――大節分八連制覇(だいせつぶんぱーれんせいは)が!」
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菜々「だ、大節分八連制覇だってェー!!??」
卯月「なっ!? 知っているんですか菜々ちゃん!?」
菜々「大節分八連制覇……それは年に一度行われる一大イベント…」
菜々「鬼役になったPさんを、アイドル全員で打ち倒すというルール無用、残虐無比なバトルロワイヤル……」
卯月「えっと……それっていわゆる普通の節分なんじゃ…」
菜々「甘いですよ卯月ちゃん!甘々です!」
菜々「2年前……当時17歳だった菜々もそんな軽い気持ちで大節分八連制覇に挑み瞬殺されたのはいい思い出です…」
卯月「2年前……? 17歳……?」
菜々「細かい事を気にしてはいけません! そんな事よりも重要なのはその優勝商品…」
菜々「これを聞けば卯月さんも大節分八連制覇の恐ろしさをご理解できると思います」
菜々「勝利者はただ一人、Pさんを倒せたもののみ……その優勝商品は…Pさんからのチュー!」
菜々「つまり、接吻です!」
卯月「ああ、節分と接吻を掛けて……って、ええっ!?」
まゆ「せっ!?」ガタッ
凛「ぷっ!?」ガタッ
美嘉「んんっ!?」ガタッ
卯月「うわぁ!? び、びっくりした……みんな居たんだ……」
凛「菜々――今の話、もう少し詳しく」
まゆ「もし情報を渋るようなら……ある程度の強硬手段を考えないといけませんねぇ…」
美嘉「と、というか、さっきの話がマジなら今まで最低でも二回は同じイベントやってるんだよね!?」
美嘉「そ、その時は誰が優勝したの……?」
凛まゆ「!!?? ――菜々(ちゃん)!!」
菜々「ひ、ひうっ!? え、えっとですね今までの大会は結局Pさんが勝ち残ったので優勝商品は手付かずのまま、ですよぅ…」
凛「そ、そうなんだ……ふぅーん。ま、まぁ別に私はどーでもいいんだけど…」
卯月「今更取り繕うんだ…凛ちゃん…」
まゆ「ウフフ…まゆは安心しましたよぉ…もしまゆの居ない間に優勝者が決まっていたら…まゆ、なにをしていたか解りませんからぁ」
菜々「ま、まゆちゃん。落ち着きましょう、目が笑ってないですよ!?」
美嘉「でも、そうなるとまだチャンスはあるってことよね……」グッ
未央「およ……みんな集まって何してんのー?」
卯月「あ、未央ちゃん……実はもばもばますますで……」
P「ではここで、大節分八連制覇のルールについて説明しよう!」
P「基本ルールは簡単、ゲーム開始前に各自に配られた豆を身体の何処かにぶつけられた者は鬼・人間に関わらずアウト」
P「アウトになった者はゲームからは除外され、以後直接干渉は禁止となる」
P「ゲームの終了条件は鬼――つまり俺がアウトになるか、人間――アイドル全員がアウトになるか」
P「人間側は鬼を倒した者一名のみが勝利者となる、なので人間同士の妨害も当然アリだ」
P「武器・道具の使用は許可するが相手に直接攻撃するのは反則で即アウトとなるので注意するように」
P「その他、公序良俗に反する行為を取ったものは反則となるので気をつけるように」
P「フィールドはモバマス町内全域。制限時間は条例に引っ掛かる子も居るので朝10時から18時までとする」
P「なお、参加者にはこのGPSユニットを貸し出す。これには鬼の位置をある程度表示する機能があるので活用するように」
P「制限時間までに鬼を倒せなかった場合も鬼側の勝利となるので注意するように」
P「なお、GPSには今回の細かいルール等も記載されているので、目を通しておくように」
P「開始地点に関しては、先程引いてもらったクジに町内に設置してあるA~Hポイントから三分毎順番に出発してもらう」
P「鬼に関しては開始一時間前より町内に潜伏させてもらうので、そのつもりで」
P「基本的なルール説明は以上だ! 何か質問があるものはいるか?」
ワイワイガヤガヤ
未央「これってさ……基本的なルールは変わってないんだよね?」
菜々「そうですね。殆ど同じですね」
卯月「このルールでプロデューサーさん、毎年逃げ切っているんです…か?」
菜々「そうなんですよねー。私も初参加の時は楽勝ピーポーだと思ってたんですが…」
加蓮「ピーポー?」
菜々「うぉっほん! ごほん! とにかく、Pさんは過去二回の大節分八連制覇を共に勝利しています」
菜々「それも制限時間いっぱいまで逃げ切ったわけじゃあありません。全参加者を倒して……です」
奈緒「バケモノかあの人は……」
亜季「プロデューサー殿!ご質問があります!」ノ
P「ん、亜季か。なんだ?」
亜季「銃器の使用は可能でしょうか」
奈緒「ブホゥッ!! と、とんでもねーこと言い出すな大和さん……」
P「ああ、もちろんいいぞ」
亜子「って、ええんかいっ!!??」つズビシッ
P「武器・道具の使用はオッケーだって言っただろ。ただ、こちらで準備させて貰った小道具に限らせては貰うがな」
P「豆を打ち出せるように改造したものが用意してある。必要なら貸し出すので申請しておくように」
P「ただ、豆に関しては出発前に支給する分を除けば、主催側からの補給手段は無いので気をつけておくように」
千枝「はいPさん!支給される豆の数はどのくらいなのでしょうか!」
卯月「千枝ちゃんのあの目……」
加蓮「……本気の時の目だね」
P「豆に関しては出発時にこの小袋に入れて支給させてもらう。豆の数はまちまちだが、まぁ20~30個程度かな」
P「なお、一度使用した豆は再利用不可とする。すぐにスタッフが美味しく頂かせて貰うのでそのつもりで」
早苗「およそ一握りってとこね……使い方を誤ればすぐに弾切れ……か」
亜里沙「ただPくんは主催側からの補給手段は無い、と言った。これはつまり……」
ウサコ「他の補給手段は、ある……ということウサ……」
P「さて、質問はそのくらいか……じゃあこれで――」
凛「Pさん」ノ
まゆ「優勝商品について」ノ
美嘉「少し詳しく」ノ
未央「全体的にみんな気が立ってるけど、あの辺りはもはや殺気が渦巻いてるような……」
P「ん? ああ、そうだな。スマンスマン。それを言うのを忘れていたな」
P「実は前二回までは節分と掛けて、優勝商品は俺の接吻とか冗談半分で言ってたんだが、今回は止める事にした」
約全員「え、ええっっ!!??」
P「いやほら、俺の接吻とか言われてもみんなテンション上がらないだろうしさ。結果的に俺の二連覇になっちゃったし」
加蓮「……絶対、本気の子……居たよね?」
奈緒「ああ……まぁ、なぁ……」
菜々「そうですよ!Pさんがバケモノじみてるだけです!菜々だって本気で挑んだのにすぐ負けちゃいましたし!」
卯月「菜々ちゃん……本気だったんだ……」
菜々「あ、え、ち、違いますよ!? その言葉のあやというか、そういう意味ではなくてですね……」
P「まぁ、皆の衆落ち着きたまえよ。だから今回はみんなが欲しがる副賞を用意したんだぞ」
P「今回の大節分八連制覇。優勝者には俺が出来る範囲なら、どんな願いでも叶えてあげる権利をやろう」
杏「お仕事サボっても!?」
みちる「フゴフゴフゴフゴ(どんなパンでも)!?」
輝子「フ…フフフ…キノコ……」
P「うっ……で、できる範囲でな!あと、優勝したらだからな!」
わいわいがやがやざわざわ
美嘉「くっ……これは、ちょっとマズいかもね……」
卯月「え? どーして? 何でも叶えてくれるなんてそっちの方がよくないかなー。えへへ、もし私が優勝しちゃったら何をお願いしよー」
美嘉「それよ。事務所内でプロデューサーに好意を持ってない人だと殆ど皆無だけど、それでも明確な恋愛感情を抱いている子は少ない…」
まゆ「当然、商品がキスならばそういう子たちにとってはあまり興味の対象じゃなくなります。けど、商品がなんでもいいなら今反応した子達のように本気になったライバルが増えるのは明白」
凛「それに、今まで羞恥心やプライドが邪魔して正直になれなかった子も、商品がなんでもアリなら建前を掲げて遠慮なく全力を尽くせる……厄介ね……」
未央「君ら、マジで本気なのね……」
まゆ「くっ……己の欲望のままにPさんを求めるなんて……なんて欲深い人たち……」
加蓮「うーん、それをまゆちゃんが言っちゃうかぁー」
P「よーし、それじゃあそろそろ始めるぞー。審判役のちひろさんやトレーナーさん達の指示にはきちんと従うようになー」
P「では、大節分八連制覇――開幕だ」
P「俺は今から鬼になる!」スチャ
卯月「あ、Pヘッドを脱いで般若面を被るんですね」
午前10時・モバマスタワー(Dポイント)
トレ「時間だ。一番手のもの、出発したまえ」
茄子「はーい、それじゃあ出発しまーす」トテトテ
未央「さっすがは茄子さん。安定の一番手だなぁ…」
未央「このゲーム、プロデューサーを早い者勝ちで討ち取ればそこで終わりだから、どうしたって先に出発した方が有利なんだよねー」
未央「まぁでもそこはこの未央ちゃんパワーでしっかり二番手に付けれたんだけどね!」
未央「ふふふー。しぶりん達には悪いけど、優勝商品は私が頂いちゃうよん!」
未央「まぁ、お願いを何にするかは勝ってから決めるとして……どうしよっかなー。うふふー」
トレ「二番手の者、準備を……なんだ、本田か」
未央「ぬわっ、『なんだ』ってなんですかトレーナーさん『なんだ』って!?」
トレ「いや、なんでもない。出発したら気をつけるんだぞ……十分に、な」
未央「へっへー。私がプロデューサーに負けるとでも? ふふふ、そん時は返り討ちにしてくれちゃうよ!」
トレ「まぁそれもなんだが…まぁいい、時間だ。出発したまえ」
未央「へいへーい。じゃあ皆、おっ先にー!」タッタッタ
未央「とまぁ、勢いこんで飛び出したはいいものの、どこに向かえばいいのかなー?」
未央「えっと……そう確かGPSを見ればいいんだよね…」ゴソゴソ
未央「お、あったあった…えっと、この光点がプロデューサーの位置だよね……って近ッ!?」
未央「ここから20メートルくらい北東方向……あ、そっか茄子さんがここに居るからこっちのポイントに引き寄せられて……ん? 居たから?」
未央「まぁどっちでもいいや。これはみおちゃーんす!」
未央「他の皆には悪いけど、ここで一気に決めさせてもらうよ!」ダッ
未央「見えた――プロデューサーの背中! 相手しているのは死角になっててよく見えないけど……やっぱ茄子さんか!」
未央「ふっふっふー。ここで遭ったが百年目!プロデューサー、お覚悟ォ!」
茄子「未央さん!?」
P「来たのは未央、か。まったく折角の奇襲なのに叫んだらバレバレだろうが」
P「けど、これは俺も茄子さんの幸運にあやかれたってことかな」
P「ホラおかげで、俺が未央に討ち取られずに済みますよ」スッ
未央(なっ!? プロデューサーがこっちに背中を向けたまま避けた!?)
未央(マズッ……止めらんないッ…)バサァッ
茄子「きゃあぁっ!?」
未央「うわ、プロデューサーが避けちゃったから、ぶん投げた豆が全部茄子さんに!?」
P「いくら茄子さんでも、一握り分の豆の散弾を全部幸運で避けきれはしないでしょう?」
ちひろ「茄子さん。アウトー」
未央「う、うわぁ!ごめんなさい、茄子さん!?」
茄子「わ、私のことは構いません! それより未央さん逃げて!」
未央「へ?」
P「はい、これでオマエもアウトなー」パチンッ
ちひろ「未央ちゃん、アウトー」
茄子「うう…負けちゃいましたー」
未央「ぬおわぁー!? プ、プロデューサー。ズ、ズルい!」
P「ズルくない。それに未央、おまえは大役を果たしてくれた、胸を張っていいんだぞ」
P「このゲーム、俺が一番怖かったのは茄子さんだった。だから参加者が増えて場が混沌とする前にできるだけ早く茄子さんとは決着を付けたかったんだ」
P「ただ、こんなにも上手くいくとは思わなかったよ。それもこれも未央、おまえのおかげだ」
未央「え、そ…そうなの?」
P「ああ、本当だとも。今日のMVPはオマエさ! ほぅら、誉めてやろう。よしよーし」ナデナデ
未央「えへへー。そこまで言われると悪い気はしないなぁー」
茄子「未央ちゃん……体よく騙されちゃってますよ……」
未央「――ハッ!? そ、そうだよ。じゃあなんでその後容赦なく私を倒したのよ!?」
P「え、だってほら、そういうゲームだし?」
P「それじゃあ、ここにあんまり長居するとマズいから俺はこの辺でオサラバさせてもらうぜ!バイビー!」
未央「こ、コラー! 菜々さんみたいな捨て台詞を残して逃げるなー!!」
鷹富士茄子・脱落
本田未央・脱落
午前10時42分・モバマス森林公園
凛(私はGポイント10番目の出発か……大分遅れちゃったな……)
凛(既にゲーム開始から40分強、参加者の殆どはもう参加してプロデューサーを追ってる筈…)
凛(でも、プロデューサーの光点はまだ消えてない。チャンスは十分にある!)
凛「この森林公園を抜ければ目的地まですぐだ!」ダッ
凛(鬱蒼とした木々を乗り越え、開けた場所に出る)
凛(ここから公園の出口までは一直線。一気にトップスピードで駆け抜ける)
凛(そう思った。けど)
凛「――クッ!?」バッ
凛(本能が、危険信号(シグナル)を発した。疾走する為の前傾姿勢から、戦う為の戦闘体制に)
凛(横っ飛びに飛び跳ね、姿勢を正す間もなく真横。自分とほぼ同時に森から飛び出てきた相手を見つめる)
まゆ「あら……奇遇、ですね。凛ちゃん」
凛「そうだね、まゆ。本当に……奇遇」
凛(まゆもまた、自分と同じように身構えていた。何時でも動けるように、何にでも反応できるように)
まゆ「フフ……どうしたんです凛ちゃん。そんなに怖い顔をして? 私達の狙いはPさん……ですよね?」
凛(私の顔は強張ってるだろうか。少なくともまゆの顔は確かに笑顔だ。ただし、その形だけが)
凛「確かに、私達の狙いはプロデューサー。でも速い者勝ちな以上、私達はライバル……だよね」
まゆ「ふふ……ここで、それを宣言しますか。凛ちゃん」
凛「腹の探りあいをしている時間も無いしね……それに、いずれにしろまゆとは決着をつけなくちゃならない」
まゆ「うふふ…ありきたりなセリフで申し訳ないですけど、凛ちゃんとは違う出逢い方をしていたら、きっとステキなお友達になれていたと思います」
凛「そうなの? 私は、まゆのこと大事な友達だと思っていたんだけどね」
まゆ「うふ……それは光栄だわ。それじゃあ凛ちゃん。ここで」
凛「うん、この場所で」
凛(お互いに、武器(豆)を握りしめる)
凛(そうして、私達はまるで示し合わせたかのように互い目掛けて走り出した)
凛まゆ「ここで――」ダッ
麗奈「――二人纏めて、オシマイよォーッ!!」ガサッ
ズババババババ!!!!
凛(突然森の茂みから、麗奈は現れた)
凛(彼女が手に持っているのは回転式多砲身機関銃(ガトリングガン))
凛(そこから吐き出される弾丸(豆)は薙ぎ払うような軌道を持って私達に襲い掛かってきた)
凛(突然の奇襲。横合いからの弾幕射撃は本来ならば避けようのない攻撃だった)
凛(けど、その時私は――確かに、まゆと目が合った)
まゆ「凛ちゃん!」
凛(差し延ばされる掌。たった今までお互いを宿敵とし、戦おうとしていた間柄)
凛(けど、私は迷わず差し出されたその手を、瞬間確かに握り返していた)
まゆ「んっ――ええいっっ!!」
凛(そのまま、まゆは急ブレーキ。上体を反らすように握り締めた手を振り回す)
凛(その動きに逆らわずハンマー投げの要領で、私は円弧を描くように迫り来る弾丸を避けた)
凛(弾丸(豆)は私側から薙ぎ払う形で掃射されていた。つい先程まで私が居た場所を弾丸(豆)が通過していく)
凛(まゆのおかげで私は助かった――そして、このまま繋がれた手を離せば、弾丸(豆)は次にまゆを貫くだろう)
凛(そう、考えなかったわけじゃない)
凛(けど、気付けば私の身体はすでに動き始めていた)
凛「ええいっ!!」ブンッ
麗奈「――ギャ!?」
凛(遠心力を利用して放たれた私の豆は、見事に麗奈の額に直撃)
凛(その一撃に、麗奈は構えたガトリングごと仰け反った)
凛(まゆを討ち果たす筈の弾丸(豆)はその動きを正確にトレースし、まゆの遥か上空を通過して行った)
麗奈「いっつぅ~……な、なにしてくれんのよこのレイナさまに向かって!」
凛「いや、それこっちのセリフだから……」
まゆ「うふふ、いけませんねぇ麗奈ちゃん。イタズラが過ぎると……めっ、ですよ」
麗奈「ひぅっ……!? フ、フン。なによ!そうやって余裕ぶってられるのも今のうちよ!い、今に後悔するといいわ!」
凛「強がるのはいいけど、麗奈もうアウトになっちゃったのに、これ以上どうする気?」
麗奈「フフフ。フフフフフフフッ! アンタたち、自分がどれほど危険人物か解ってないようね」
まゆ「うふふ……いやですねぇ。そんな、まゆ達が危ない人みたいな……」
麗奈「危ないのよ!特にアンタ!フフン、でも危険だからこそ目を付けられるのよ――私“達”にね!」
凛「――――!?」
まゆ「……これは」
凛(気付けば。私達は四方を新しい敵に囲まれていた)
小関麗奈・脱落
午前11時30分・モバマス商店街はずれ
卯月「ふふんふんふーん。プロデューサーさんはどーこかなー」
卯月(私、島村卯月17歳!どこにでもいる普通の高校生……けど、トップアイドル目指して精一杯頑張ってます!)
卯月「と、今更ながらモノローグで自己紹介なんてやってみましたけど……誰もいませんねー」
卯月「GPSの情報どおりだと、プロデューサーさんはこの辺りにいる筈なんですけど……」
卯月「プロデューサーさんどころか、出発してから他のアイドルにも全然出逢わないなんて…」
卯月「でもでもっ、考えようによっては良い傾向なのかも。なんかこう戦わずに勝つ、みたいな!」
卯月「えへへー。どうしよっかなー。私が勝ったりしちゃったらー」
卯月「プロデューサーさんへのお願い、なんにしようかなー。なんでもって言ってたしなー」
卯月「そっかー、なんでもかー。ウィヒヒヒヒ……」
真奈美「おや、卯月くんじゃないか。奇遇だな」バッタリ
卯月(あ、死んだな私。と思いました)(^q^)
卯月「木場さん、なんでこんなトコに……くぅ、こうなったら死なばもろともー!!」ブンッ
真奈美「おっと危ない」ヒョイ
卯月「あっさりかわされたー!?」
真奈美「まぁまぁ、そう焦らずに落ち着きたまえよ、卯月くん」
卯月「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいー!?」
真奈美「やれやれ……どうやら驚かせてしまったみたいだね。安心しなさい、今は別に君と事を荒立てるつもりはないよ」
卯月「え……そ、それはほんとですか…?」
真奈美「ああ、もちろん、君が戦闘を希望するならその限りではないけどね」
真奈美「まぁ先程の一発は出会い頭と言う事で除外しておこうか」
卯月「ほんとっ!ごめんなさい!」
真奈美「なに気にする事はないよ。それよりもだ。卯月くん、よければ私と手を組まないか?」
卯月「え……ええぇ!? そ、それって、私が、木場さんと、ですか!?」
真奈美「ああ、強制はしないから君が良ければだがね」
真奈美「もちろん、断ってもその瞬間、君に危害を加えるような真似はしないと誓おう」
卯月「あ、いえ…私は全然構わないっていうかありがたいくらいなんですけど……」
卯月「私が仲間になったところで木場さんの足手纏いにしかならないんじゃ……?」
真奈美「そうかい? 君が仲間になってくれればこれほど心強い事はないと思うんだが」
卯月「え、ええぇ……そうですか? こう言っては何ですけど、私なんて運動神経とかも全然フツウですし…」
真奈美「そんなことはないさ。例えばそうだな……GPSを見る限り、この商店街にプロデューサーくんは潜んでいるみたいなんだが」
真奈美「このGPSだと詳細な位置情報は解らない。そこで聞きたいんだが、君は今プロデューサーくんが何処でなにをしていると思う?」
卯月「え、プロデューサーさんがですか? う、うーん…?」
真奈美「なに、簡単なクイズだと思ってくれていい。外れてもそれはそれさ」
卯月「だったら……えっと、なんとなくですけど、この先の裏路地に美味しいお茶屋さんがあるんですけど」
卯月「そこで一服してるんじゃないかなぁー、って」
真奈美「プッ!!」
卯月「え、と、突然噴出したりしてどうしたんですか木場さん」
真奈美「い、いや、失礼。ククク…私達アイドルが必死になって街中を探していると言うのに…」
真奈美「当の本人は優雅に茶を嗜んでいるかと思うと、なにやら可笑しくてね」
卯月「そうですかね…? プロデューサーさんならそれくらいやりかねないと思いますけど……?」
真奈美「君がそういうのなら、きっとそうなんだろうね。さぁ、それじゃあ行こうか」
卯月「え!? ど、どこにですか?」
真奈美「もちろん、優雅に御茶しているプロデューサーくんを捕まえに、さ」
午前11時40分・モバマス商店街裏路地・喫茶『OH抹茶殿』
P「ゲェェ!? 真奈美さん!!?? なぜここが!?」
真奈美「まぁ、ある程度予想はしていたが、本当に堂々と休憩しているとはね」
卯月「あ、やっぱりプロデューサーさんここに居たんですね」
P「くっ…なるほど、情報源は卯月か。まさか真奈美さんとタッグを組むとは…」
真奈美「私達単体ならそれほど危険性は無いと判断したようだが、どうやら考えが足りなかったようだな」
P「ある程度の組み合わせは考えてたんですが……さすがにこれは意外でしたよ」
真奈美「そうかい? 君が教えてくれた事だ。人との繋がり、誰かと力を合わせる事で私達は何倍も輝けるって事をね」
P「うわー、優秀なアイドルの担当になれてボカァ幸せだなー」
真奈美「そう言って貰えると光栄だな。ならこれは大恩あるプロデューサーくんへのささやかな恩返しという事で」
P「もっと別の形がよかったんですけどねー」ジリジリ
真奈美「卯月くん!」
卯月「ひゃ、ひゃい!?」
真奈美「残念だが、勝者が一人である以上、事ここに至っては仕方ない」
真奈美「ここからは正々堂々、どちらが先にプロデューサーくんを仕留めるか、勝負と行こうじゃないか」
卯月「木場さん……はい、わかりました!卯月、がんばりますっ!」
P「くっ……ここで解りやすく仲間割れとかしてくれれば良かったのに」
真奈美「私もその辺りの人選は見誤らないさ……さぁ、覚悟して貰おう、プロデューサーくん!」
P「――――けど、一手遅い。俺の居場所が解ったら、問答無用で急襲するべきでしたね」ポチッ
真奈美「――なっ!?」
午前11時45分・モバマス商店街・メインストリート
美羽「う、うええぇ!? い、今のなに!? 凄い音がしたけど、ば、爆発……?」
かな子「あっちの方向は……美味しい和菓子を出してくれるお茶屋さんの方向!?」
同刻・モバマス商店街裏路地・喫茶『OH抹茶殿』
真奈美(爆発、いや大量の煙――煙幕か!?)
真奈美(こんなものまで用意していたとは……音はともかく、これでは視界がまったく効かない!)
P「俺の行動パターンを読める人間は怖いですからね」
P「ここで確実に仕留める為に、あらかじめ罠を仕掛けて貰ってたんですよ」
真奈美(始めから罠を張っていたのか……なら狙いは私ではなく……卯月くんか!?)
卯月「う、うわわ……目の前が真っ白で何も見えませーん……」
真奈美「卯月くん、喋ってはダメだ!位置を知られるぞ!」
P「遅いッ!」ビシュッ
真奈美「……くっ!?」ガバッ
卯月「木場さん……ッ!? どうして私を庇って……」
真奈美「ここまで連れて来てしまったのは私だからな……」
真奈美「勝機ならともかく、負け戦に付き合わせるわけにはいかんだろう?」
卯月「……真奈美さん」
真奈美「……ッ! 煙が晴れてきた……今のうちに早く逃げるんだ!」
卯月「で、でもそれじゃあ真奈美さんが!?」
真奈美「私の事はいい……実は、さっきの豆に撃たれてしまってな……もう助からないんだ」
卯月「そ、そんな……!?」
真奈美「いま、無策でプロデューサーくんに立ち向かっても勝てない!」
真奈美「だから、ここはいったん引いて、次のチャンスに備えるんだ!」
真奈美「卯月くん……君ならきっと出来る。だから……後の事は……頼んだ……ぞ」ガクッ
卯月「真奈美さぁーん!!」
木場真奈美・脱落
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