姉「もう最後だもんね」 (80)

―夜、弟の部屋―

姉『弟ー、入るよー』

弟「いいよー」

カチャ


姉「どうしたの? スマホ持って構えたりして?」

弟「部屋の写真撮ってたんだよ」

姉「あ、そうか。もう最後だもんね」

弟「うん。で?」

姉「あ、夜食買っておいたから一緒に食べようよ」

弟「お、いいね、食べよう」

姉「おにぎりとお茶でいい?」

弟「いいよ。姉ちゃんは何食べるの?」

姉「私は乾き物とチューハイ」

弟「オヤジくさくね?」

姉「いいの!」

姉・弟「かんぱーい」


弟「でもいいなー、姉ちゃんは酒飲んで。僕にも少し飲ませてよ」

姉「何言ってるの、未成年でしょあんた」

弟「ちぇー」

姉「もうすぐ二十歳でしょ? 二十歳になれば死ぬまで飲めるんだから我慢しなさい」

弟「へーい」

弟「ところで姉ちゃん、彼氏とはうまくいってるの?」

姉「気になる?」

弟「彼氏ができた時は一日中スマホいじってたのに最近はあんまりいじってないからさ」

姉「…別れちゃったんだ」

弟「え?」

姉「なんかね、ときめきが無いって言うかいまいち気分が盛り上がらないって言うか」

姉「それなのにダラダラ付き合ってても相手に悪いかなと思ってね」

弟「なるほどね。姉ちゃんは綺麗だから長続きすると思ってたんだけどなぁ」

姉「そんなこと言ったって何も出ないよ」

弟「元から期待してないし」

姉「」パシッ
弟「いてっ」

姉「そう言うあんたはどうなのよ。彼女はいないの?」

弟「いないよ」

姉「だったら私の…」

弟「私の?」

姉「私の恋愛成就のお守りあげようか?」

弟「それは自分で持っていたほうがいいんじゃないの?」

姉「…そうだね」

姉(あぶないあぶない。思わず『私の彼氏になってよ』って言いそうになっちゃった)

弟「夜食も食べたし、そろそろ寝ようかな」

姉「寝る? じゃ私も寝よう」

姉「」ヨロ

弟「おっと大丈夫か? チューハイ飲み過ぎたんじゃないの?」

姉「ちょっとバランス崩しただけよ。全然大丈夫だから」

姉「じゃおやすみ」

弟「おやすみ姉ちゃん」

―姉の部屋―

姉(私も部屋の写真撮って寝よっと)

カシャ…カシャ…



姉(『長続きすると思ってた』か。誰のせいで長続きしなかったと思ってるの)

姉(弟の事を忘れようと思って男の人とお付き合いしたけど、結局ダメだったなぁ)

姉(男の人とデートしてても弟の事ばっかり考えちゃうんだもんなぁ)

姉(何で弟を好きになっちゃったんだろ…)

姉(……)

姉(眠れない…)

姉(トイレに行ってこよう)


カチャ

姉「あ」

弟「トイレ?」

姉「あんたも?」

弟「うん、僕は行って来たとこ」

姉「ねぇ、私の部屋に来ない? 眠れなくて」

弟「いいよ。僕も眠れなくてさ」

姉「じゃ私の部屋で待っててね。トイレ行ってくるから」

弟「珍しいね、姉ちゃんが眠れないなんて」

姉「なんか色々考え事しちゃってね」



姉「一緒に夜景見ようよ」

弟「いいよ」


姉「この夜景も見られなくなっちゃうんだよね。何だか切ないね」

弟「だな」



姉「二人っきりだね…」

弟「う、うん」

姉(もう最後だから、ここで告っちゃおうかな)

姉「ねぇ、弟…」

弟「ん?」

姉「これからずっと私の傍に居てよ」

弟「え?」

姉「誰とも結婚しないで私の傍に居て」

弟「姉ちゃん…」

姉「私の心、全部あんたに持っていかれてスッカラカンになっちゃったんだから責任取ってよね」

弟「」

弟(さっきチューハイ飲んだから酔っ払ってるんだろうな。それと彼氏と別れて寂しいからこんなこと言ってるんだろう)

弟「分かったよ、結婚しないでずっと姉ちゃんの傍に居るから」

姉「本当? 酔っぱらってるのと彼氏と別れて寂しいからこんなこと言ってるんだろうとか思ってない?」

弟「」ギク

弟「そ、そんなこと無いってば」

姉「声が上ずってるような気がするけど?」

弟「気のせいだよ」

姉「まぁいいわ」

姉「本当に本心だからね」

弟「うん、分かってる」

弟(マジ告白か。まぁ俺も姉ちゃんのことが好きだけど、一応姉ちゃんがシラフの時に気持ちを確かめてみよう)

姉「ねぇ、キスして」

弟「へ?」

姉「いいでしょ?」

弟「え、うん」


チュッ


姉「ふふっ」
弟「」ニコ

姉「一緒に寝よっか」

弟「姉ちゃんと?」

姉「嫌? 寝るだけよ?」

弟「嫌じゃないけど。いいのか本当に?」

姉「このベッドで寝るのも最後だからさ、いいでしょ?」

弟「まぁ姉ちゃんがそう言うならいいけど」

姉「ね」

弟「2人で寝ると狭いね」

姉「いいじゃない。その分くっついて寝られるから」

弟「そうは言うけどなぁ」

姉「ねぇ、私達向こうでもずっと一緒だよね?」

弟「何言ってるんだよ、当たり前じゃないか」

姉「だよね」

―翌朝、姉の部屋―

弟「準備出来てる? そろそろ時間だよ」

姉「うん、出来てる」

姉(もう最後なのよね。寂しいなぁ)

姉(神様、願わくばもう一度チャンスを…)

―上野駅プラットホーム―

弟「どうだった姉ちゃん、半年ぶりの寝台列車あけぼの号は?」

姉「実家に帰省して東京の私達の家に戻る時はいつも使っているけど、もう乗れないのかなって思うと何だか寂しいね」

姉「機会があったらもう一度乗りたいなぁ」

弟「ゴールデンウィークとかお盆休みの時は復活するらしいから、その時にまた乗ればいいじゃん」

姉「そうは言うけど、あんたも私もオフシーズンしか休暇取れないじゃない。だからもう乗れないでしょ」

弟「そんなこと無いよ。店長にお願いして何とかあけぼの号が復活する日に休み取ればいいじゃん」

姉「取れるかなぁ」

弟「頼み方次第だよ」


姉「ふぁーあ・・・、まだ眠いよ」

弟「眠そうな顔してるよ」

姉「寝不足は美容の敵なんだけどね」

弟「僕たちの家に着いたらゆっくり昼寝すればいいじゃん」

姉「私ね、あけぼの号の鉄道模型があったらそれ買って自分の部屋に飾っておこうと思ってるんだ」

弟「模型を?」

姉「あ、もしかして引いてる?」

弟「全然。姉ちゃんは姉ちゃんだよ。最近は女の鉄オタもいるみたいだからいいんじゃないの」

姉「そうかな」

弟「姉ちゃんはあけぼの号に思い入れがあるんだね」

姉「実家へ帰省する時はいつも使っていたから」

弟「姉ちゃん、昨日の夜言ってた事、あれマジなの?」

姉「そうよ。思い出になる場所だったし、私なりの、その…、プロポーズなんだから」

弟「プロポーズっすか…」

弟「……」

弟「姉ちゃん」

姉「何?」

弟「幸せにしてみせるよ」

姉「じゃキスして」

弟「ここで!?」

姉「そうよ。あけぼの号をバックにキスしてほしいの」

弟「こんな所で無理だよ。恥ずかしいよ」

姉「じゃ、抱きしめてくれるだけでいいから」

弟「まぁそれなら何とか」

ギュ
姉「ふぁ…」


弟「好きだよ姉ちゃん」

姉「わたしも」

姉「末永くよろしくね」

弟「こちらこそよろしく」

その後姉弟は、夫婦を装っていつまでも幸せに暮らしました

終わりです
保守などありがとうございました

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