獣心乱舞 くるい猫 (21)
獣のココロで乱れマウ
注意!オリジナルです。
猫が割と酷い目にあう描写があるから苦手な方はバックお願いしまする。
少々グロだろうがなんだろうがひまつぶしOKな方歓迎しまする。
グロという単語に嫌な予感を覚えた方は退避お願いしまする。
妖怪、獣の要素が入った現代ものでござる。
タイトル詐欺にならないよう気をつけまする。
Fooo! vipスレ立て初だぜ。気軽に楽しんでくれたらうれしいな。
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経験からさつきはあることを学んだ。黄昏時に影は蠢く。
毎日毎日、日が暮れる。
-みゃあん-
「にゃーん。」指の先の鉤爪と白い柔毛が体に混じる。黒い靄の人影が揺らめく。
「おじょうちゃん。あまり立ち入り過ぎると戻れなくなるよ?」いつの間にか現れた二又の猫が塀の上から話し掛ける。
「あなたがしゃべったの?」さつきが瞳をまん丸にして驚く。
「そうだよ。僕は猫だからね。」
「それってとってもおかしなことだよ?」
「ここで可笑しくない事なんてあるのかい。」二又が尻尾をピンピンと動かす。
「うーん、ないかな。」
「そうさ、ここでおかしくならない奴はいない。」
「でも、でも。あいつらあたしたちをおそうもん。」白い自分のしっぽをさつきがなでる。
「本当にそうかな?」二又はさつきをじっと見ていた。何かを期待するように。
「そうだよ。あたしもういくから。」猫がじっと見てくる。さつきは言葉を話す猫が急に薄気味悪く思えて駆けだした。
「帰り道はしっかり覚えておくんだよ。後戻りができるように……。」二又の猫が見送る。
-ガァァ- -ガァァァァ- -ウォン ワンワン-
「アアアア!」影が裂ける。四足で道路を跳ねて宙の標的を掻き、全身で着地の衝撃をやわらげた。
-ジャマダ!!- -カミコロス-
「やってみロ!」さつきは全身の毛を逆立てた。舌がざらざらして呂律がよく回らなかった。
黒い鳥が顔面に嘴を突っ込んできた。さつきはクワっと口腔を開き逆に鳥へ咬みつく。舌に痛みを感じる。
嘴で舌が傷つき血の味がじわりと広がる。
「フゥーーーッ。」ジタバタ鳥が暴れる。さつきは顎に思いっきり力を込めた。
バキリっと音を立てて鳥の嘴の半分が砕けた。鳥はジタバタと地面でのたうち、やっとのことで体勢を直すと空に舞い上がる。
「ナオォォォ。」さつきがカチドキを上げるように叫ぶ。黒い犬達が身を竦め、尻尾を巻く。
-ニゲロ- -クルイネコダ- -ジャマバカリ-
-アレノナカマカ- -アイツノニオイガスル-
-ジャアナンデジャマスルンダ- -キグルイメ-
四方八方に影が散っていく。
「フゥフゥ……。」口の中に破片が残っている。想像通りとても苦い味がした。
「イツキー、帰ろう?」放課後の教室で友人がイツキを呼ぶ。
返事をしようとしてちらりと視界の片隅にある人物が映った。
「……。」イツキはよく分からない感情にとらわれ逡巡する。
「イツキー?」友人が急かす。
「ごめん!用事があるの思い出した。」
「え?」
「先に帰って。」「それってすぐ終わらない?」「終わらない。」「ちぇー、また明日!」「うん、バイバイ。」
教室の廊下の窓の方に手を降る。友人が振り返してくれた。
机の荷物を鞄に入れていたイツキが椅子から立ち上がり、視線を一人教室に残っていた生徒へ向けた。
教室にはイツキとその男子学生しかいなかった。
夕暮れの赤光が教室に射していた。
「サガノ君。」
「何か用ですか?」鞄をあさっていたサガノは怪訝な顔をする。クラスの女子と関わり合いになること自体がいままでなかった。
「サガノ君ってさ、優しいよね。」
「いえそんなことはないと。」困惑が深くなる。
「よく人に気を使うし“嫌な事”も引き受けてくれるもの……。」
「それは……。」顔が歪む。イツキは笑う。
「そのお礼をしたいなって思ったの。」
さつきがTVを見る。お魚特集だった。鰯の群れが泳いでいる。
「さかな…いやささみが一番かな。」目が釘付けになっていた。
ガチャンと玄関から音がする。イツキが帰って来たのだろう。さつきはTVに夢中になって出迎えなかった。
母はパートに出ていて、家の中はTVが立てる音以外静かなもの。
姉の部屋の方からパタン戸を開閉する音がした。最近のイツキは部屋に引きこもりがちだった。
魚特集が終わる。漁師の顔が出てきてなにやらインタビューが始まる。
さつきはそわそわとした。最近イツキに遊んでもらうことがなかった。母が勉強の邪魔をしたらだめよと止められて、
イツキもさつき煙たそうにした。
今まで気にならなかったのに、さつきはTVをみている自分を寂しく思った。リモコンでTVを消す。
たったったっと姉の部屋の方へ早歩きした。コンコンとドアをノックする。
反応がなくもう一度。ドアの向こうで人の動く気配がした。
ドアが静かに開く。
「何か用?」イツキがさつきを見おろす。
「部屋入ってもいい?」さつきが聞く。勝手に入ったら怒るのだ。
イツキがじっとさつきを見る。さつきはデジャブを感じた。二又の観察するような目。イツキのはそれよりずっと…冷たい?
「さつき、獣くさいわよ。お風呂に入りなさい。」イツキがさつきの体の向きを変え追い返す。さつきはその言葉にぎょっとした。
「…は、はーい。」怯んだものの大人しく風呂の用意に行く。
「………、気持ち悪い。あの猫みたい。」
さつきの足が止まりそうになる。ぼそりと呟かれた言葉は微かで、しかし、しっかりと耳に拾っていた。
泣きそうになりながら風呂場に向かう。聞こえない振りをするしかなかった。
「イツキー、さつきーただいまー。」母が帰る。さつきが出迎えた。
「おかえりー。」「お腹空いたでしょ。すぐに作るから。」
「きょうのごはんなになに?」「鮭よ。」
「やったー!」「ホイル焼きにするからね。」「うん!」
母がさつきの頭を撫でる。母の手はとても温かい。
居間で少し休憩を取った母が台所に入る。さつきは気もそぞろにTVを見ながら御飯ができるのを待った。
「イツキーご飯できたわよ。いらっしゃい。」テーブルに皿を並べながら母が呼ぶ。
さつきはもう席についてスタンバっていた。ホイルを開く。よい香りが食欲をそそる。母がにこにこしながら二人を見ていた。
夜の早い時間に子供達を食べさせ、母は遅い父に付き合って夕飯を食べていた。
リリリリリリリと呼び出し音が鳴る。母が電話を取るため席を立つ。
さつきとイツキは構わずご飯を口に運ぶ。
「たまねぎおいしい!」「そうね。」
「はい、もしもし?はい、そうですけど……えっ、まぁ…。」
「ねぇねぇ、しゃけのかわって食べたほうがいい?」「残さない方がいいけど、嫌いなら食べなくてもいいと思うわ。」
「わかった。」
「イツキー?ちょと聞きたいんだけど。」
「何?母さん。」イツキが大きめの声を出し返事をする。
「今日サガノさんの息子さんがまだ帰宅してないんだけど何か聞いてる?」
「知らない。」「分かった。ありがとー。」
「ええ、ええ、特に何も聞いてないと。ええ、はい。分かりました。はい、はいー。」カチャン。
「もうこんな時間なのにまだ息子さん帰ってないんですって。」母が戻ってくる。壁に掛かる時計が八時半を指す。
「そんなに慌てるような時間じゃないんじゃない?」「そうね、年頃だし。ただ今までこんなことなかったっていうから。」
「なにかわるいの?」「そうね親に心配させる事は悪いことよ。なにかあればすぐに連絡しなさいね。」「「はーい。」」
食卓のご飯はもう半分もない。
「おいしい?」母が聞いた。「おいしい!」さつきがすぐに返す。
「……。」無言で箸に挟んでいた鮭の身をイツキが食べる。そして、「とっても美味しいわ。」と、にっこりと笑った。
グロ耐性のある獣好きが来てくれるかと思ったらそんなことなかった。(号泣)
マイナージャンルだろうし、何人か興味本位で来てくれるかと予想してたのにスルーでござる。
あまり獣獣してないし、グロあり、地の文あり、オリジナルで地雷要素あり過ぎたか……
空気でも一応完結は目指して鈍行投下を続けます
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