~ミサトのマンション~
春香『か、勘違いしないでよねっ! べ、別に、あなたのために用意してたわけじゃないんだからっ!』
春香『で……でも、仕方ないから貸してあげるわっ! はいこれ、ロード製薬の目薬!』
ナレーション『スカッと爽快! たった一滴で目のかゆみとサヨナラ!』
春香『目のかゆみには、ロード製薬ですよ、ロード製薬♪』
シンジ「…………」
アスカ「…………」
シンジ「……最近、春香さんよくCMに出るようになったねぇ」
アスカ「そうねぇ」
~翌日・第壱中学校~
シンジ「……って話を、昨日アスカとしてたんだけど」
レイ「……確かに、天海春香は以前に比べてテレビCMへの露出が目立つようになったわね」
カヲル「…………」
アスカ「まあ、春香さんってどんなキャラでも似合うからねぇ。昨日観たCMではツンデレキャラだったし」
シンジ「汎用性が高いんだね」
レイ「使い勝手が良い、とも言う」
シンジ「な、なかなか言うね、綾波……」
アスカ「まあでもいいことなんじゃない? 春香さんは765プロの顔みたいなもんだし。春香さんの人気が上がれば、765プロ全体の人気の更なる向上にもつながるでしょ」
シンジ「そうなんだよなぁ。アイドル単体ではミキミキが不動の一番人気だけど、765プロを代表するアイドル、って言ったらやっぱり春香さんなんだよね」
レイ「それが彼女の魅力。もとい、個性」
カヲル「…………」
シンジ「? カヲル君、どうしたの? さっきからずっと黙っちゃって」
カヲル「……ん? ああ……大丈夫。何でもないよ、シンジ君」
シンジ「? そう?」
アスカ・レイ「?」
~同日夕刻・ゼーレのモノリスが浮かぶ湖畔~
SEELE01「タブリス。用があればこちらから連絡するとあれほど……」
カヲル「だからそう邪険にしないでくれよ。用があるから連絡したんだ」
SEELE02「……して、今度は何用だ。さては、またライブのチケットか? 確かに、二週間後に765プロ最大規模のライブがあるが……」
カヲル「ああ、もちろんそれもそうなんだけど……それ以上に、今は聞きたいことがあるんだ」
SEELE03「何だ?」
カヲル「……最近、やけに春香さんのメディア……特にテレビCMへの露出が目立つ」
SEELE01「…………」
カヲル「もしかして、あなた達が前に言っていた、『春閣下計画』とやらに関係があるのかい?」
SEELE01「……そうだ」
カヲル「やはり……あなた達の工作か」
SEELE04「工作とは人聞きが悪いな。我々は、何一つやましいことなどしておらぬ」
SEELE05「左様。我々とつながりのある企業を通じて、宣伝広告に天海春香を起用しているというだけのこと」
カヲル「……ただの普通のテレビCMなら、それで別に良いんだけどね」
SEELE06「……? どういう意味だ?」
カヲル「―――サブリミナル効果」
SEELE01「! …………」
カヲル「たとえば、最近放映が開始された、春香さんが出演している某製薬会社の目薬のCM]
SEELE07「…………」
カヲル「これの、スロー再生でしか確認できない、ほんの1フレーム分のカットに……春香さんの顔のアップ画像が挿入されている」
SEELE01「! …………」
カヲル「もしやと思って、注意的に他のCMも見ていたら、春香さんが出演していない……どころか、765プロ自体が関わっていないテレビCMにも、同様に、春香さんのカットが挿入されているCMが多数見受けられた」
SEELE04「…………」
カヲル「その数、僕が確認できただけでも……現時点で26本」
SEELE05「…………」
カヲル「もっとも、ゼーレの資金力をもってすれば……その程度の工作をスポンサー企業にさせることなど、造作も無いことだろうね」
SEELE02「…………」
カヲル「表向きには、春香さんが出演するテレビCMの数を徐々に増やしていき、『天海春香』という存在を視聴者の『意識』に植え付ける」
SEELE06「…………」
カヲル「それと同時に、その裏では、春香さんが出演するテレビCMはもちろん、そうでない、全く無関係のCMにも、春香さんのカットを挿入し、『天海春香』という存在を視聴者の『無意識』にも植え付ける」
SEELE03「…………」
カヲル「こうして視聴者の意識・無意識の両側面において、『天海春香』という存在を刷り込ませる。少しずつ、少しずつ……不自然にならない程度に」
SEELE01「…………」
カヲル「表向きに春香さんが出演しているテレビCMは、当然日本国内でのみ放映されているものだが……」
SEELE02「…………」
カヲル「無関係のCMに春香さんのカットを仕込むのは……もう既に、世界各国のテレビCMでも行っているんじゃないかい?」
SEELE03「…………」
カヲル「もっとも、僕はまだそこまでは調べられていないけど……」
SEELE04「…………」
カヲル「そしていつか、春香さんが名実ともに日本のトップアイドルとなり、世界でも注目を集めるような存在になったときには……」
SEELE05「…………」
カヲル「当然、彼女は海外のテレビCMにも数多く出演するようになるだろうね」
SEELE06「…………」
カヲル「そうなると……それまでに仕込まれていたテレビCMのサブリミナル効果により、海外の人々も、日本のトップアイドル『天海春香』を……自然に受け容れるようになる」
SEELE07「…………」
カヲル「……無意識のうちに、その存在を脳裏に刷り込まれていたから」
SEELE01「…………」
カヲル「……そして春香さんが、全世界の人々から支持を得るに至ったとき」
SEELE02「…………」
カヲル「人類補完計画―――通称『春閣下計画』は発動する」
SEELE01「…………」
カヲル「それが『約束の時』であり……」
SEELE01「……サードインパクト発動の時となる」
カヲル「……そして、そのときのトリガーが僕ってことかい」
SEELE05「……左様。どれだけ天海春香が世界中の人々から支持を得ようとも……それだけでは、我々の計画は完成しない」
SEELE03「我々に心の壁……A.T.フィールドが存する限りはな」
SEELE04「……ゆえに、それを取り払い、自己と他者との境界を無くす必要がある」
カヲル「……それを可能にするのがサードインパクト。つまり、使徒である僕とアダムとの融合ってわけだ」
SEELE05「左様。……その瞬間、我らの持つA.T.フィールドは崩壊する」
SEELE01「……だが、それだけでは人類を完全なる単体生物に人工進化させることはかなわぬ」
SEELE02「中には補完……すなわち他者との融合を拒む者も生じうるためだ」
カヲル「…………」
SEELE03「そのリスクを排除するのが―――“閣下”天海春香への信仰……もとい、服従心」
SEELE04「その服従心を全人類が共有してさえいれば……それを憑代とすることで、我々人類は一つになれる」
SEELE05「左様。そのための『春閣下計画』である」
カヲル「……その結果、全人類は『天海春香の下僕』という単一の生命体に人工進化するってわけだね」
SEELE06「うむ。天海春香を支持し崇拝する信仰心、もとい服従心。……あるいは、彼女を唯一絶対の神として認識する、確固たる価値意識」
SEELE07「それらを全人類に刷り込み、共有させることができれば……後はA.T.フィールドを除去するだけで、我らの補完は成る」
SEELE01「全人類を一つに。それが我々の宿願である」
カヲル「…………」
SEELE02「――タブリス。我々が、お前が765プロのアイドルに傾倒してゆく様子を看過しているのはそのためだ」
カヲル「…………」
SEELE03「最後のトリガーを引くお前に、自発的に助力してもらうためには、アイドルに傾倒する者の心理、その価値意識を理解してもらう必要があったのだ」
カヲル「…………」
SEELE04「折をみて、こちらから水を向けるつもりではあったが……まさか、お前の方から、765プロのアイドルに興味を持ってくれるとは思わなかった」
SEELE05「左様。我らにとっては、実に嬉しい誤算であった」
カヲル「…………」
SEELE06「ゆえに、お前の望む通りに、今回のライブのチケットも用意しよう」
SEELE07「アイドルに傾倒する者達の心理を学び、理解し、来たるべき補完のときに備えておくがよい」
カヲル「…………」
SEELE02「さすれば、その時までに……お前も、アイドルを崇拝する価値意識が理解できているだろう」
SEELE03「それすなわち、人類の補完の意義を申し分なく理解できていることと同義」
SEELE01「補完の支障なき遂行のためにも、その時まで……存分に、アイドル達の応援に勤しむが良い」
カヲル「……ああ。わかったよ」
SEELE01~07「……全てはゼーレのシナリオ通りに」ブンッ
カヲル「……なるほど、ね」
カヲル「…………」
カヲル「さて、と……」
~二週間後・ネルフ本部/パイロット達のシンクロテスト後~
ミサト『皆、お疲れ様。もう上がっていいわよ』
シンジ「ふぅ……」
アスカ「あ~、疲れた~」
レイ「ワクワク」
シンジ「どうしたの綾波、そんな擬態語を発しちゃって」
レイ「……もう、待ちきれなくて」
シンジ「……ああ」
アスカ「……ふふっ。まあ、無理もないけどね」
シンジ「……今日の夜は、初のドーム公演となる765プロオールスターライブだもんね!」
アスカ「ドームですよ、ドーム!」
シンジ「…………」
レイ「…………」
アスカ「な、なんで黙るのよ!」
シンジ「いや、まあ……ねぇ? 綾波」
レイ「ええ……」
アスカ「くっ……そんな憐憫の眼差しをこの私に向けるとは……! 覚えてなさいよあんた達……!」
シンジ「まあまあアスカ」
レイ「…………」クスクス
シンジ「まあでも、僕達がこんな歴史的なライブに参加できるのも、全部、チケットを確保してくれたカヲル君のおかげだよ。……改めてありがとう、カヲル君」
カヲル「…………」
シンジ「本当、カヲル君には感謝してもしきれないよ」
カヲル「…………」
シンジ「? カヲル君?」
カヲル「え? あ、ああ……そうだね」
シンジ「? なんか、具合でも悪いの?」
カヲル「いや、そんなことはないよ。大丈夫」
シンジ「……? まあ、それならいいけど……」
アスカ「そういえば、今日は昼夜二回公演だから……今頃もう、昼公演やってるのよね」
レイ「……765スレで情報収集してみるわ。セトリとか分かるかもしれないし」カコカコ
シンジ「……なんかすっかり染まっちゃったね、綾波も……」
アスカ「……誰のせいよ、誰の」
シンジ「いやあ……ははは」
カヲル「…………」
ヴーッ ヴーッ ヴーッ
アスカ「!? 緊急警報!?」
シンジ「ま、まさか……」
ミサト『皆、まだいる!?』
アスカ「ええ、いるわよ」
シンジ「ミサトさん、これってまさか……」
レイ「…………」
カヲル「…………」
ミサト『ええ―――使徒よ!』
シンジ「!」
アスカ「ま……マジで!?」
ミサト『残念だけど大マジよ。そういうわけなんで、今すぐ全員ケージに集合よろしくちゃん!』ブツッ
シンジ「…………」
アスカ「…………」
レイ「…………」
カヲル「…………」
シンジ「……皆」
アスカ「……ええ、分かってるわ」
レイ「……なんとしてでも、ライブまでに」
カヲル「……絶対に、終わらせよう」
シンジ「……よし! 皆いくよ! 765プローッ! ファイトーッ!」
アスカ・レイ・カヲル「オーッ!」
~パイロット、各機搭乗後~
シンジ「……しかしなんでこう、ライブの日に限って使徒が来るんだろうねぇ」(初号機・エントリープラグ内)
アスカ「まったく、私達の邪魔をしてるとしか思えないわね……」(弐号機・エントリープラグ内)
レイ「……夜公演の開演時刻はヒトハチマルマル。……それまでに」(零号機・エントリープラグ内)
カヲル「……ああ。なんとしてでも倒さないと……ね」(Mark.06・エントリープラグ内)
ミサト『――皆、準備は良い?』
シンジ「はい」
アスカ「オーケー、ミサト」
レイ「問題ありません」
カヲル「……同じく」
ミサト『今回の使徒は、これまでのとはワケが違うわ。最強の拒絶タイプ。第10の使徒』
アスカ「最強の拒絶タイプ、ですって?」
ミサト『ええ。24層全ての特殊装甲を一撃で突破し、現在ジオフロントに接近中よ』
シンジ「24層全ての特殊装甲を、一撃で……!?」
ミサト『……もう、地上迎撃は間に合わないわ。だから、ジオフロントに侵入したところをエヴァ四機で狙い撃ちにするわよ』
レイ「了解」
シンジ「手強そうだな……分かりました」
ミサト『くれぐれも、独断専行等の無茶はしないように、チームプレーでね。ま、あなたたちなら大丈夫だと思うけど』
アスカ「ふんっ。この私がいるんだから、あったりまえよっ!」
ミサト『―――来るわよ!』
シンジ・アスカ・レイ・カヲル「!!」
ドォォォォン
青葉『目標、ジオフロント内に侵入!』
日向『エヴァ四機と会敵します!』
第10の使徒「――――」
シンジ「来た……アスカ!」
アスカ「分かってるっちゅーの!!」
ドガガガガガガガガガ
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
アスカ「……チッ、A.T.フィールドが強過ぎる……! これじゃあ埒があかないわ……!」
レイ「……それなら」チャッ
ドンッ ドンッ
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
レイ「! これも、効かない……!」
カヲル「……えらく硬いな。あのランチャー砲を難なく弾くとは……」
シンジ「……流石は最強の拒絶タイプ、だね」
レイ「……駄目。遠距離からの攻撃では、とても有効なダメージを与えられないわ」
カヲル「それなら……シンジ君」
シンジ「うん」
カヲル「遠距離が駄目なら……近距離だ」
シンジ「分かったよ、カヲル君」
カヲル「行くよ、シンジ君。ピアノの連弾を思い出して!」
シンジ「オーケー、カヲル君!」
(ナイフ付きライフルを手に、使徒に向けて跳躍する初号機及びMark.06)
シンジ「うおおおっ!!」バッ
カヲル「…………!」バッ
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
シンジ「!」
カヲル「……へぇ……」
シンジ「……こ、こいつっ……!」
カヲル「……確かに、このA.T.フィールドを破るのは、なかなか骨が折れそう、だっ……」
第10の使徒「――――」
カッ
シンジ「!」
カヲル「シンジ君!」
ドォォォォォォン
シンジ「あ、危なかった……なんて威力のビームだ……」
カヲル「……確かにこれなら、24層の特殊装甲を一撃で突破したというのも頷ける。……まともに喰らったら、ひとたまりもないね」
アスカ「二人とも、どいて!」
シンジ「! アスカ!?」
カヲル「式波さん」
アスカ「どりゃああああああああああ!!!」
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
アスカ「っぐ……。遠距離も近距離も駄目、ってんなら……」
レイ「……零距離!?」
アスカ「イエス!」
第10の使徒「――――」
カッ
アスカ「!」
シンジ「アスカッ!!」
ミサト『まずい! 弐号機シンクロカット急いで!』
マヤ『はい!』
ドシュッ
アスカ「――――!」
(吹っ飛ぶ弐号機の右腕)
シンジ「アスカ!」
カヲル「式波さん!」
レイ「アスカ!」
アスカ「……くっ……。へ、平気……よ!?」
アスカ(!? な……何? ……う、腕が……動かな……)
ミサト『……まずい! 弐号機は一旦下げるわ!』
アスカ「ミサト!? わ、私はまだ……」
ミサト『人命優先よ! これ以上は危険だわ!』
アスカ「ちょ、ちょっと……うぐっ……!」ウィィィィン
(ジオフロント地下に格納される弐号機)
~ネルフ本部・発令所~
アスカ「ま……まだやれるわ!」
ミサト「その腕じゃ無理よ! シンクロカットは間に合ったから、物理的にはくっついているけど……今のあなたは、『腕を切断された』という精神イメージに痛覚を支配されている。今だって、激痛に耐えているはずよ!」
アスカ「……た、たかが腕の一本くらい動かなくたって……シンクロさえできれば、エヴァは動くわ!」
リツコ「―――無理よ」
アスカ「あ……赤木博士!?」
リツコ「……今、ミサトが言ったように……今のあなたは、『腕を切断された』という精神イメージに痛覚が支配されている」
アスカ「…………」
リツコ「先の第9の使徒戦……覚えているでしょう?」
アスカ「! …………」
リツコ「あの戦いで、あなたは使徒から精神汚染を受けた」
アスカ「…………」
リツコ「……あのとき、あなたは驚異的な精神力で精神汚染をほぼ打ち消したけど……その影響は、完全に消えてはいなかったのよ」
アスカ「! …………」
リツコ「だから、本来なら感じるのはずの無い『痛み』を過剰なまでにイメージしてしまった」
アスカ「…………」
リツコ「精神イメージは時間が経てば消えるわ。それに、第9の使徒の精神汚染の影響も、後遺症とまではならないでしょう。……しかし、この戦闘中の回復はまず不可能だわ」
アスカ「…………」
リツコ「痛覚神経が精神イメージに支配されている以上、今エヴァに乗っても神経接続に支障をきたすわ。よって、現状のまま高いシンクロ率を出すことはまず不可能」
アスカ「……つまり、今、私が戻っても足手まとい……ってわけね」
リツコ「……そうね」
アスカ「っちくしょう!!」
ミサト「……アスカ……」
???「キミが触れたから 七彩ボタン♪」
ミサト「!?」
???「……ヒーローは遅れてやってくる、ってね♪」
ミサト「な……何者!? というか、どうやってここへ!?」
???「私は極秘にネルフに派遣されたパイロット。真希波・マリ・イラストリアス。マリって呼んでくれていーよ♪」
アスカ「なっ……!?」
ミサト「ご……極秘? の割にはえらい堂々と……じゃなくて! あ、あなた、ここに入って来れてるってことは……!?」
リツコ「ネルフの、パスコードを持ってる……?」
マリ「……ま、詳しい説明は後でするとして。とりあえず今は、私を弐号機に乗せてくんないかな?」
アスカ「は……はあ!?」
マリ「だって見たカンジ、今のままじゃ皆やられちゃうよ」
ミサト「…………」
リツコ「ミサト……」
ミサト「……分かったわ。……マリ。アスカの代わりに、弐号機に乗って頂戴」
リツコ「ミサト!?」
アスカ「は……はぁ!? 何言ってんのよミサト! こ、こんなどこの馬の骨とも知れない奴に、私の弐号機を任せられるわけないでしょ!」
ミサト「……危険と感じたら、こちらから強制的にシンクロをカットします。……現状、こちらが劣勢なのは事実だもの」
アスカ「……だっ、だからって……こんな、得体の知れない奴に……!」
マリ「……まあ、得体の知れない奴……ってのは、否定しないけど……」
アスカ「……?」
マリ「……少なくとも、キミの『仲間』だってことだけは……信じてほしいな!」バッ
アスカ「!? そ……それは……」
ミサト・リツコ「?」
アスカ「……この前の、765プロライブで売ってた会場限定Tシャツ……!?」
マリ「ふふん♪」
アスカ「……それを持ってるってことは……あんた……」
マリ「……ちなみに」
アスカ「?」
マリ「……私も、いおりん萌えなんだ♪」
アスカ「なっ……!?」
マリ「……で、これが、私のプラグスーツ。まだ、着たことないんだけどね」スッ
アスカ「!(……ピンク色のプラグスーツ……こいつ!)」
マリ「……これで、信じてくれるかな? ……私がキミの『仲間』だってこと」スッ
アスカ「……信じる!」スッ
パンッ
マリ「……じゃ、さくっと行ってくるよん」
アスカ「……言っとくけど、私の弐号機に乗って負けたら、承知しないからね!」
マリ「……分かってますって。オ・ヒ・メ・サ・マ♪」
アスカ「なっ……だ、誰がお姫様よ!」
マリ「にひひっ♪」
ミサト(……な、何で一瞬にしてハイタッチ……?)
リツコ(……ヒトの心は、ロジックじゃないものね……)
(再びジオフロント内に射出された弐号機)
マリ「よいしょっ、と……」グッパッ グッパッ
シンジ「! あれは、弐号機……?」
マリ「ふぅ、良いニオイ……他人のニオイがするエヴァも、悪くないね」
シンジ「……アスカ? もう大丈夫なの?」
マリ「あ、ごめん。中の人代わってるよー」
シンジ「……え?」
マリ「とゆーわけで、ピッチャーアスカに代わりまして、代打、マリ! 皆、よろしくね♪」
シンジ「……え?……」
レイ「…………」
カヲル「…………」
マリ「あはっ。皆、いきなりで面食らっちったかもしんないけど……私も、皆と、心は同じだからさ♪」
シンジ「心は……同じ?」
マリ「そ。皆と一緒で……765プロのアイドルが好きってこと!」バッ
シンジ・レイ・カヲル「!」
マリ「てやあああああああ!!」
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
マリ「んっ……硬いな、こりゃ……」
レイ「……そのA.T.フィールドは、エヴァ単機では破れないわ」グググ
マリ「およっ。キミは確か……千早ちゃんのファンだったね」
レイ「! ……何故、そのことを……」
マリ「なあに、765プロのファンは、皆……仲間だもんげ!」
ググググググ……
ミサト「凄い! 無理矢理A.T.フィールドを広げている……」
リツコ「でも、エヴァ二機をもってしても、まだ……」
シンジ「うおおおおおおお!!」
マリ「!」
ググググググ……
シンジ「ぐっ……!」
マリ「……へぇ。こんな至近距離で踏ん張っちゃって、いつ撃たれるか分かんないのに……意外と根性あるじゃん。ネルフのわんこ君」
シンジ「……それは、君も、一緒だ、ろッ……!」
マリ「まあ、ねぇ。……身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、ってね!」
バリッ
ミサト「! 一枚破った!」
リツコ「でもまだ、二重三重のA.T.フィールドが……」
マリ「あっちゃ~、こりゃキリが無いにゃあ……」
シンジ「……マリ? だっけ」
マリ「? うん」
シンジ「……君は、765プロの中では、誰が好きなの?」
マリ「もちろん皆好きだけど……一番を選ぶなら、いおりん!」
シンジ「……なるほど。……アスカが、君が弐号機に乗るのを許してる理由が分かったよ」
マリ「にひひ♪ いおりん好きは魂で通じ合うからね」
シンジ「……カヲル君、夜公演のチケット、まだある?」
カヲル「……まあ、打診はしてみるよ」
マリ「それなら、心配ご無用! 既に購入済み……だにゃあ!」
バリバリッ
ミサト「!」
リツコ「更に一枚、破いた!」
シンジ「うおおおっ!」
バリバリバリッ
ミサト「シンジ君!」
レイ「……最後の、一枚っ……!」
バリバリバリバリッ
リツコ「全部破った!」
シンジ「―――カヲル君!」
カヲル「分かってるよ、シンジ君」バッ
ミサト「ランチャー砲を、直接!?」
リツコ「零距離から、コアを射抜くつもりだわ!」
第10の使徒「――――」
ガキィッ
カヲル「! コアが、閉じ……!」
ドォォォォォォン
シンジ「うわあっ!!」
カヲル「ぐっ……」
レイ「…………っ」
マリ「にゃっ……!」
第10の使徒「――――」
カヲル「む、無傷……か……」
シンジ「くそっ……」
レイ「…………」
マリ「こりゃ、参ったにゃあ……」
ミサト「そ、そんな……」
リツコ「……A.T.フィールドは、完全に破っていたのに……」
~ネルフ本部・発令所~
ゲンドウ「…………」
冬月「……『バチカン条約の適用除外』という特約付きで、ゼーレから直送されてきたエヴァンゲリオンMark.06……」
ゲンドウ「…………」
冬月「その力をもってしても、こうも太刀打ちできんとはな……」
ゲンドウ「…………」
冬月「……碇……」
ゲンドウ「……冬月先生……後を頼みます」
冬月「! ああ……高木社長によろしくな」
~司令室~
ゲンドウ「…………」ピッ
ゲンドウ「…………」プルルルル…
高木『―――もしもし』
ゲンドウ「……高木か? 私だ」
高木『……なんだ、碇。またライブのチケットか? 今日の夜公演の分なら、まだなんとか――』
ゲンドウ「いや、そうではない。というか、前のだって私ではなくレ……いや、知人に頼まれたからだと言っただろう」
高木『では、何だ? 私は今まさに、ライブを行っている我が社のアイドル達の応援に忙しいのだが……』
ゲンドウ「……その、お前のところのアイドル諸君の力を、貸してほしい」
高木『! …………』
ゲンドウ「…………」
高木『……前に飲んだときに話していた、世界の危機とかいうやつか』
ゲンドウ「……ああ」
高木『……場合によっては、我が社のアイドル達の力を借りるかもしれない、という―――』
ゲンドウ「……そうだ。詳しい事情は話せないが……」
高木『……今が、そのときということか』
ゲンドウ「……ああ」
高木『……学生時代からのよしみだ。お前が話せないということを、無理に聞こうとは思わん』
ゲンドウ「…………」
高木『だが、いいのか? それでは、アイドル達にも詳しい事情を話せないことになるが。……世界の危機、なのだろう?』
ゲンドウ「世界の危機、だからこそだ」
高木『?』
ゲンドウ「詳しい事情を知らされ、事の重大さを認識してしまうと……アイドル諸君の精神に過度なプレッシャーがかかり、結果として、普段通りのパフォーマンスが発揮できなくなるかもしれん」
高木『…………』
ゲンドウ「我々に必要なのは、あくまで『普段通りの』アイドル諸君のパフォーマンスであり、歌だ。……それさえ届けてもらえれば、十分だ」
高木『……碇……』
ゲンドウ「……頼めるか?」
高木『……前にも聞いたが、お前……」
ゲンドウ「? 何だ?」
高木『……やはり、うちのアイドルのファンなんじゃないか?』
ゲンドウ「……さあな」
高木『……まあいい。……そういうことならば、お前の言う通りにしよう』
ゲンドウ「……恩に着る」
~30分後~
シンジ「ハァ……ハァ……」
レイ「……ぜぇ……ぜぇ……」
マリ「……はは、こりゃ浮かぶ瀬が無いな……」
カヲル「…………参ったね」
アスカ「…………」
アスカ(シンジ、レイ、渚……それに、マリ……)
アスカ(皆……疲弊しきってる……)
リツコ「……まずいわね……」
ミサト「……ええ……」
リツコ「……エヴァ四機で踏ん張ってるから、なんとか本部への接近は食い止めているけど……」
ミサト「使徒に対しては、未だほとんど有効なダメージを与えられていない……」
リツコ「このままじゃ……ジリ貧だわ」
ミサト「突破されるのは時間の問題……か。……ん? 電話? 私の携帯に、直で?」ピッ
ミサト「はい」
ゲンドウ『私だ』
ミサト「碇司令!?」
ゲンドウ『今から出す指示を、速やかに実行してほしい』
ミサト「は……はい。でもえっと、司令は今どこに……?」
ゲンドウ『私は今から、行かなければならんところがある』
ミサト「えっ? で、でも、まだ使徒が……」
ゲンドウ『問題無い。そっちはすぐに片が付く』
ミサト「……えっ……?」
リツコ「?」
~ジオフロント内~
第10の使徒「――――」
カッ
シンジ「!」
ドォォォォォォン
シンジ「ぐっ……」
マリ「参ったな……こいつのパワー、底無しじゃんか……」
カヲル「……こっちは機体も損耗するし、体力も失われていくってのに……」
レイ「……向こうは、全く勢いが衰えていないわ」
シンジ「くそっ……これじゃ夜公演に間に合わないじゃないか……!」
ミサト『―――まだ、諦めるのは早いわよ』
シンジ「? ミサトさん……?」
ミサト『……日向君。準備は良い?』
日向『はい、いつでも!』
シンジ「?」
ミサト『では、エヴァ全機エントリープラグ内に、特定外部音源接続! 同音源を、スピーカー最大音量で発信!』
シンジ「? 外部音源……?」
レイ「…………?」
マリ「一体、何だっていうの……?」
カヲル「…………」
春香『――ドームですよ! ドーム!』
観客『ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
シンジ「!?」
レイ「……これは……」
カヲル「まさか……」
マリ「今ドームでやってる……765プロオールスターライブの……」
シンジ「昼公演の……生音源!?」
アスカ「……なるほど、ね。……さっきから、何を準備してるのかと思ったら……そういうことだったのね」
春香『えっとですね……今さっき、聞いたばかりの話で、私達も、まだ全然分かってないんですけど……』
シンジ「……春香さん……」
やよい『……実は今、私達の全然知らないところで、物凄く頑張っている方達がいて……その方達が、私達の応援を……歌を、必要としてくれているそうなんです!』
シンジ「! ……やよいちゃん……!」
千早『詳しいことは全然分からない……というか、私達も聞いていないんですけど』
レイ「……如月千早……」
真美『どんな理由があるにせよ、真美達の歌で元気を出してもらえるんなら、精一杯、協力しようって!』
カヲル「……真美君……」
伊織『それが私達、アイドルのお仕事なんじゃないかって』
マリ「……いおりん……」
アスカ「……伊織様……」
春香『だから私達、この会場から……その方達に、私達の精一杯の歌を、応援を……届けたいって思うんです』
シンジ「…………!」
春香『だから会場の皆さんも―――協力して、もらえますよね?』
観客『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
春香『ありがとうございます! ―――それでは、今も、この世界のどこかで頑張っているあなた達へ。……聴いてください。765プロオールスターズで『GO MY WAY!!』!』
シンジ「! ……ごまえ……だと……!」
マヤ「初号機、シンクログラフに変化!」
ミサト「!? 早くね!?」
アイドル全員『GO MY WAY GO 前へ 頑張ってゆきましょう♪』
アイドル全員『一番大好きな 私になりたい♪』
シンジ「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
マヤ「初号機、シンクロ率が急激に上昇しています! 80……85……信じられません、まだ上昇しています!」
リツコ「そんな……ありえないわ!」
ミサト「まさか……こんな、ことが……!?」
冬月「……勝ったな」
春香『3・2・1 GO!』
亜美『ノンストップで行ってみましょ♪』
やよい『って思ったらまた赤信号!?!』
シンジ「FuFuu!」
美希『そんな時は凹まないで』
伊織『ハイウェイがあるファイト!!』
マリ「いおりんが応援してくれてる……こりゃあ弱音吐いてらんないにゃあ!」
マヤ「! 弐号機も、シンクロ率が急激に上昇しています!」
アスカ「ふんっ、当然よ! 伊織様の生歌を聴いてシンクロ率が上がらなかったら、伊織様の下僕の面汚しってもんだわ!」
マヤ(げ、下僕……?)
響『フルスロットル飛ばしてみましょ♪』
真美『って思ったらスピード制限!?!』
カヲル「FuFuu!」
マヤ「Mark.06も……えーと、以下同文です!」
あずさ『こんな時は悩まないで』
千早『ジェットがあるフライト!!』
レイ「フライト! Fuu!」
マヤ「零号機も……もう私、いちいち言わなくていいですかね?」
雪歩『未来は誰にも見えないモノ』
やよい『だから誰もが夢を見てれぅー♪』
シンジ「うおおおお!!! やよいちゃーん!!」バッ
ミサト「飛んだ!?(あくまでも初号機が)」
リツコ「ここにきてこの跳躍力……!」
第10の使徒「――――」
キィィィィィィン
シンジ「う……うおおおお!!!」
バリバリバリッ
ミサト「! い……一撃で、あの強固なA.T.フィールドを……!」
リツコ「ほとんど全部……破った!?」
シンジ「うおおおおあああああああ!!!!」
マリ「わはは。やるなーわんこ君。こりゃあ私達も負けてらんないっしょ!」
レイ「……ええ。碇君に続きましょう」
カヲル「……ああ……やはり歌は良いねぇ……」
真『どんな地図にも 載ってないけど』
貴音『どんな時代(とき)でも叶えてきたよ』
アイドル全員『さあ行こう!!』
シンジ「Woooo……Yeah!!」
バリバリッ
ミサト「最後の一枚を破いた!」
アスカ「いっけぇ!」
アイドル全員『GO MY WAY!』
マリ「うらあああああ!!!」
ガシィッ
リツコ「! コアの外殻を、手で……」
マリ「さ、さっきはこれに邪魔されちゃったからねっ……!」グググ
第10の使徒「――――」
カッ
マリ「やばっ!」
アイドル全員『GO MY 上へ!』
シンジ「Fuu!」ドガッ
ドォォォォォン
ミサト「ビームが発射される直前に殴って、方向を逸らした!」
リツコ「凄い反応速度ね……」
マリ「さ、サンキュー、わんこ君!」
真美『笑顔も涙でも♪』
シンジ「Fuwa Fuwa Fuwa Fuwa!」ドガッ ドガッ ドガッ ドガッ
ミサト「た……タコ殴り……」
伊織『この世界中が Wonder LandなNever Land♪』
マリ「あ、またコアが閉じかかっ……」ググッ
カヲル「おっと!」ガシッ
グググググ……
マリ「わお! ナイス、銀髪君!」
カヲル「今だ! 綾波さん、ナイフでコアを!」
アイドル全員『GO MY WAY!』
レイ「Fuu!」ドグッ
ミサト「おお、まともに入った!」
レイ「……まだ、足りない。碇君!」
アイドル全員『GO 前へ!』
シンジ「Fuu!」ドグッ
マリ「あと、ちょっとー!」グググ
カヲル「ぐっ……」グググ
千早『がんばってゆきましょう♪』
シンジ「Fuwa Fuwa Fuwa Fuwa!」ドグッ ドグッ ドグッ ドグッ
やよい『一番大好きな 私になりたい♪』
シンジ「Woooo……Yeah!!」 グッシャアアアアア
第10の使徒「――――」
カッ
ドォォォォォン
日向『目標、殲滅!』
アスカ「や……やった!」
ミサト「さ……最後が正拳突きとはね……」
リツコ「……ロジックじゃないわね……つくづく」
~ネルフ本部・地下通路~
ゲンドウ「…………さて、と」ピッ
ゲンドウ「…………」プルルルル…
高木『もしもし』
ゲンドウ「私だ」
高木『碇』
ゲンドウ「……苦労を掛けたな、高木」
高木『……何を言うか。……で、どうだったんだ?』
ゲンドウ「ああ……おかげで、万事上手くいった」
高木『そうか! では、世界の危機は回避されたんだな?』
ゲンドウ「ああ」
高木『いやー、それは良かった! 実にめでたい!』
ゲンドウ「……全てお前のおかげだ。心から礼を言う」
高木『何、礼には及ばんよ。歌で人々に元気を与えるのが、アイドルの仕事だからな』
ゲンドウ「……違いない」
高木『……ところで、碇』
ゲンドウ「? 何だ?」
高木『お前、今やってる仕事が一段落したら……どうだ? うちの事務所で、プロデューサーでもやってみんか? 才能あると思うぞ』
ゲンドウ「……考えておこう」
~765プロライブ会場・アイドル控え室~
P「皆、お疲れ様! 初のドーム公演、最高の出来だったぞ!」
律子「……まあまだ、この後の夜公演がありますけどね」
P「ま、まあ……いいじゃないか。とりあえず、昼公演は大成功に終わったんだから」
律子「……まあ、そうですね。今はそれを素直に喜びましょうか」
P「よし、そういうことだ! 皆、本当におめでとう!」
美希「……それはいいんだけど、ハニー」
P「ん? どうした? 美希」
美希「……結局、何だったの? 『どこかで何かを頑張ってる人達』の正体って。ミキ、曖昧過ぎて全然わかんないの」
P「……いや、それが俺もよく知らないんだよ。なんでも、社長の昔からの知り合いの方からのお願いだったらしいんだが」
春香「社長の、ですか?」
P「ああ。どうしてもアイドル達の力が必要だって、言われたらしい」
美希「ふーん」
P「ん? 電話だ……社長から?」ピッ
P「はい、はい……。あ、そうなんですか。はい、はい……分かりました。伝えておきます。はい」ピッ
春香「? 何か、あったんですか?」
P「ああ、今話してた人達……どうやら、上手くいったらしい。お前たちの歌のおかげで!」
春香「! 本当ですか!」
P「ああ」
美希「どこの誰か分からないけど、ミキ達が役に立てたのなら、良かったの」
響「……でも本当、どこの誰だったんだろうな?」
春香「さあ……」
千早「……確かに、どこの誰かは分からないけれど、でも……そんなことは、どうだっていいことなんじゃないかしら」
春香「千早ちゃん」
千早「『誰かが私達の歌を必要としてくれている』……それだけで、私達アイドルが歌を歌う理由としては、十分だったんじゃないかしら?」
春香「確かに……それが私達、アイドルの仕事だもんね!」
響「……うん。そうだね!」
美希「なの!」
亜美「でもまあ、正直気になるよねぇ~。さしずめ、正体不明のお兄さんお姉さん、ってカンジ?」
やよい「でも亜美、お兄さんお姉さんかどうかはわかんないんじゃない?」
亜美「いやいややよいっち、流石に亜美達より年下ってことはないっしょ→」
やよい「あー、まあそれもそっかぁ」
亜美「あー気になる気になるYO! ねね、真美はなんか心当たりない?」
真美「うーん、心当たりねぇ~……って、ん? ……『正体不明のお兄さん』……?」
亜美「? どったの? 真美」
真美「あ、あはは……なんでもない」
亜美「?」
真美(……まさか、ね……)
~ネルフ本部~
シンジ「ふぅ……これでやっと終わったね」
レイ「なんとか、ライブには間に合いそうね」
マリ「これにて一件落着だにゃ」
アスカ「……ったく、チョーシのいいやつね。……ていうかあんた、結局何者なわけ?」
マリ「ん~。それはまだヒ・ミ・ツ♪」
アスカ「はぁ!? 何よそれ」
マリ「まあまあいいじゃんいいじゃん。私達が、同じアイドルを愛する同士であることに変わりはないでしょ?」
アスカ「……いや、それはそうかもしんないけど、それとこれとは……」
カヲル「……シンジ君」
シンジ「? 何? カヲル君」
カヲル「今からちょっと来てほしい所があるんだけど……いいかな?」
シンジ「? いいけど……」
アスカ「ちょ、ちょっとちょっと。どこ行くか知らないけど、今からって……ライブには間に合うの?」
カヲル「……ああ、僕とシンジ君は、用事が済んだら直接会場に向かうよ。だから、君達は先に行っておいてくれたまえ。……はい、これチケット」
アスカ「ま……まあ、それならいいけど」
マリ「あれー! 皆すっごく前の方の席じゃん! いいなー。私なんて最後方……」
カヲル「……なんなら、君の分も、僕達の近くの席のチケットをもらってきてあげようか? 真希波さん」
マリ「マジで!? サンキュー、銀髪君!」
カヲル「いや、気にしないでくれたまえ」
アスカ「え、でも今からそんなの大丈夫なの? もうライブまで何時間もないのに……」
カヲル「……なあに、大丈夫さ」
アスカ「?」
~ネルフ本部・地下通路~
シンジ「……ねぇ、一体どこまで歩くの? カヲル君」
カヲル「……心配しなくても、もう着いたよ」
シンジ「? ……あっ」
加持「よお、遅かったじゃないか」
シンジ「加持さん!?」
加持「さっきの使徒戦、見ていたよ。なかなか大変だったな」
カヲル「……すみません。少々、手こずってしまいました」
加持「何、気にするな。初号機の覚醒リスクを現実化させなかっただけでも僥倖だ」
シンジ「?」
加持「……さあ、行こう。全ての結末はこの先にある」
シンジ「え、えっと……でもなんで、加持さんが?」
カヲル「……この先の部屋は、僕がネルフから与えられているパイロット権限のパスコードでは入れないからね。だから、協力を依頼したんだ」
加持「同士だから、な。……俺達は」
カヲル「ええ」
シンジ「……?」
カヲル「……ところで、シンジ君。この先の部屋に入る前に、確かめておきたいことがあるんだけど……いいかな?」
シンジ「? 何? カヲル君」
カヲル「……君は、765プロの中ではやよいちゃんが一番好きなんだよね?」
シンジ「? うん」
カヲル「ちなみに、僕は双海君姉妹が一押しなんだけど」
シンジ「……知ってるよ、何を今更」
カヲル「……さらにいえば、式波さんと真希波さんは伊織君が、綾波さんが千早君が、それぞれ好き」
シンジ「だからそれも知って……」
カヲル「もし」
シンジ「?」
カヲル「もしも……自分が一番好きなアイドルが他にいるのに、何らかの事情があって、そうじゃない、別のアイドルだけを応援しないといけなくなったとしたら……シンジ君は、どう思う?」
シンジ「? な、なんか……言ってる意味がよくわかんないよ。カヲル君」
カヲル「……ところで、シンジ君。この先の部屋に入る前に、確かめておきたいことがあるんだけど……いいかな?」
シンジ「? 何? カヲル君」
カヲル「……君は、765プロの中ではやよいちゃんが一番好きなんだよね?」
シンジ「? うん」
カヲル「ちなみに、僕は双海君姉妹が一押しなんだけど」
シンジ「……知ってるよ、何を今更」
カヲル「……さらにいえば、式波さんと真希波さんは伊織君が、綾波さんは千早君が、それぞれ好き」
シンジ「だからそれも知って……」
カヲル「もし」
シンジ「?」
カヲル「もしも……自分が一番好きなアイドルが他にいるのに、何らかの事情があって、そうじゃない、別のアイドルだけを応援しないといけなくなったとしたら……シンジ君は、どう思う?」
シンジ「? な、なんか……言ってる意味がよくわかんないよ。カヲル君」
カヲル「つまり……たとえば、『天海春香』だけを応援するように強要されるとか」
シンジ「春香さんだけを?」
カヲル「そう」
シンジ「そりゃあ……嫌だよ。いや、春香さんが嫌って意味じゃなく」
カヲル「…………」
シンジ「僕は……自分が一番好きなアイドルも、それ以外のアイドルも、皆同じように応援したい」
カヲル「…………」
シンジ「もちろん自分の意思で、自分の好きなアイドルだけを応援する、っていう考え方も良いと思うけど」
カヲル「…………」
シンジ「少なくとも、僕はそういう考え方じゃないし、そういう考え方を押し付けられたりしたら、嫌だ」
カヲル「…………」
シンジ「やよいちゃんが好きな僕も、双海ちゃん姉妹が好きなカヲル君も、いおりんが好きなアスカとマリも、ちーちゃんが好きな綾波も……」
カヲル「…………」
シンジ「皆、『765プロのアイドルが好き』という点では仲間だ」
カヲル「…………」
シンジ「だから……皆でライブに行って、どのアイドルに対しても全力で声援を送り、コールを入れるのが楽しみなんだ」
カヲル「…………」
シンジ「僕はやよいちゃんも、他の皆も、同じように応援したいから……そうしてる。そのやり方を変えるつもりはないし、変えろと言われても、絶対に変えない」
カヲル「……ありがとう。シンジ君」
シンジ「? 何が?」
カヲル「……君ならきっと、そう言ってくれると信じていたよ」
シンジ「…………?」
カヲル「……シンジ君。実はこの先の部屋には……今、君に言ったようなことを、しようとしている人達がいる」
シンジ「えっ」
加持「…………」
カヲル「ある特定のアイドルの応援、支持のみを是とし、それを全人類に強要しようとしている人達が」
シンジ「……全、人類……!?」
カヲル「本当は、それぞれ好きなアイドルがいるのに……そういった個人的感情を押し殺して、大仰な目的のために、皆で決めたアイドルだけを……応援しようとしている人達がね」
シンジ「そんな……そんなのおかしいよ!」
カヲル「シンジ君」
シンジ「皆……それぞれ、自分が好きなアイドルを、自分の好きなように応援すればいいんだ。他人に言われてすることじゃないし、我慢することでもない」
カヲル「……そう、そうだね。それは多分、ずっと前から、やよいちゃんをはじめ、765プロのアイドル達を追いかけてきたシンジ君にとっては、至極当たり前のことなんだろう」
シンジ「…………」
カヲル「……でも世の中には、そんな『当たり前のこと』を『当たり前』に思わない人もいるのさ」
シンジ「…………」
カヲル「……だから、教えてあげてほしいんだ。そんな人たちに、『当たり前のこと』を」
シンジ「…………」
カヲル「エヴァンゲリオン初号機パイロットの碇シンジ君としてではなく……765プロ所属アイドル・高槻やよいちゃんのファンの……碇シンジ君として」
シンジ「……やよいちゃんの、ファンとして?」
カヲル「ああ。ただの一人の、やよいちゃんのファンとして……君は、君が思うように行動してくれたらいい」
シンジ「……分かったよ。カヲル君」
~ネルフ本部内・ゼーレのモノリスが浮かぶ部屋~
SEELE01「……何の話だ」
ゲンドウ「しらばっくれるのは、もうやめて頂きたい」
SEELE02「…………」
ゲンドウ「……あなた方の工作活動は、今提示したテレビコマーシャルの映像からも明らかだ」
SEELE03「…………」
ゲンドウ「……アイドルの応援は、個々人がそれぞれの嗜好や価値観に応じて行うもの」
SEELE04「…………」
ゲンドウ「他人に押し付けられたり、ましてや無意識のうちに植え付けられた潜在意識に従ってするようなものではない」
SEELE05「……確証はなかろう。我々がそうしたという、確証は」
ゲンドウ「……いえ、既に裏付けは取れております。……世界各国に点在する、ゼーレの各関係企業において」
SEELE06「!?」
ゲンドウ「本日付で、関係各証拠が揃いました。……もっとも、使徒殲滅を優先していたので、こちらへ来るのが後回しになってしまいましたがね」
SEELE07「……どういうことだ」
ゲンドウ「……こちらの諜報部員には、あなた方の情報――たとえば関係企業等にも――通じている者がいましてね。……その者に、調査を依頼していたのです」
SEELE01「……諜報部員だと……!? ……まさか」
ギィィ
SEELE01「!」
加持「そのまさかですよ。……議長」
SEELE01「……加持……貴様……」
加持「申し訳ございません」
SEELE01「裏切ったのか……」
加持「……いえ」
SEELE01「!?」
加持「あいにくですが、俺は最初から、一番の死に場所は三浦あずさの胸の中と決めていた男です。……ま、葛城の胸の中も捨てがたいですがね」
SEELE01「あずささん……だと……!? 貴様……!」
加持「それに、俺の考えに同意してくれた友人もいましてね」
カヲル「―――どうも」
SEELE01「!? タブリス……!?」
ゲンドウ「! ゼーレの少年……?」
加持「すみません、碇司令。俺の独断で同行してもらいました」
ゲンドウ「…………」
加持「ですが心配は無用です。……彼もまた、『同士』ですから」
ゲンドウ「……わかった。ならばいい」
SEELE01「……貴様……」
カヲル「……まあ、そういうことです。……もっとも、僕が双海君姉妹推しだということは、議長もよく御存知だったと思いますけどね」
SEELE01「ぐっ……」
カヲル「……だが、今日の一番のゲストは僕じゃない」
SEELE01「!?」
ゲンドウ「?」
カヲル「すみません、碇司令。今度は僕の独断による同行者です。……入ってきなよ、シンジ君」
シンジ「……………」
SEELE01「第三の少年!?」
ゲンドウ「! シンジ……」
シンジ「……………」
ゲンドウ「…………」
シンジ「…………」
ゲンドウ「…………何故、ここにいる」
シンジ「父さん……」
ゲンドウ「…………」
シンジ「僕は……僕は……」
ゲンドウ「…………」
シンジ「……765プロ所属アイドル・高槻やよいちゃんのファン……碇シンジです!!」
ゲンドウ「! …………」
SEELE01「! …………」
カヲル「すみません、碇司令。黙って御子息をお連れしてしまって」
ゲンドウ「…………」
カヲル「ですがどうしても、今日この場には彼が必要だったんです」
ゲンドウ「…………」
カヲル「議長と同じアイドルを一押ししている……碇シンジ君がね」
SEELE01「! …………」
シンジ「? どういうこと? カヲル君」
カヲル「シンジ君。あの『01』って書いてある箱の人はね、シンジ君と同じでやよいちゃんのファンなんだよ」
シンジ「えっ! そうなの?」
SEELE01「…………」
カヲル「ああ。でも、他の箱の人達から『春香さんの応援をしろ』って言われて、春香さんの応援を……いや、春香さんの応援『だけ』を、しようとしてるんだ」
シンジ「? なんで?」
カヲル「その方が、皆が幸せになれると思っているからさ」
シンジ「? カヲル君……君が何を云っているのか、分からないよ」
カヲル「ああ、そうだね。実は僕もよく分かっていない。だからこの先は……本人に直接、聞いた方がいいだろうね」
SEELE01「…………」
カヲル「…………」
SEELE01「……愚問だな」
カヲル「…………」
SEELE01「……同じアイドルを支持し、崇拝することで……我らは一つになれるのだ」
カヲル「…………」
SEELE02「うむ。それに、各々が、好き勝手に違うアイドルを支持しているような現状では、いずれ対立や抗争を生むことは明らかではないか」
SEELE05「左様。ゆえに、そうならぬよう、我々は価値意識、思想の統一を……」
シンジ「対立? 抗争? ……一体、何を言ってるんですか?」
SEELE03「……何?」
シンジ「そんなの……あるわけないじゃないですか」
SEELE04「……何……だと……?」
シンジ「確かに、僕はやよいちゃんが好きです。765プロの中では一番」
SEELE01「…………」
シンジ「でもだからって、他のアイドルが好きな人達と対立なんて、絶対にしません」
SEELE06「…………」
シンジ「現に、僕の友達では……アスカとマリはいおりんを、綾波はちーちゃんを、カヲル君は双海ちゃん姉妹を……それぞれ好きですけど」
カヲル「…………」
SEELE07「…………」
シンジ「だからって対立したことなんて、一度も無いです」
SEELE01「…………」
シンジ「それどころか、むしろ、前より仲良くなったくらいです。……アスカと綾波なんか、最初は全然仲良くなかったけど、今では、765プロのアイドルの良さをチャットで夜な夜な語り合うほどです」
SEELE02「…………」
加持(……へぇ。あのアスカがね……)
シンジ「皆違うアイドルが好きだけど、でも……根底にある部分は、同じなんです」
SEELE03「…………」
シンジ「皆、765プロのアイドルが大好きなんです」
SEELE04「…………」
シンジ「そこが同じだから、皆同じで……仲間なんです。どのアイドルが好きかなんて、関係ない」
SEELE05「…………」
シンジ「それぞれ違うアイドルが好きだとしても……僕達はもう、一つなんです」
SEELE01「…………」
ゲンドウ「……シンジ……」
加持「よく言ったぞ、シンジ君」
カヲル「ああ、申し分ないよ。シンジ君」
シンジ「いや、そんな……僕はただ、自分の考えを述べただけで……」
SEELE01「……仮に」
シンジ「え?」
カヲル「! …………」
SEELE01「……仮に、貴様の言が真実だとして……それは所詮、貴様の周囲の者達だけの話だろう」
シンジ「…………」
SEELE01「……全人類に一般化できる話ではないと、そう言っているのだ」
シンジ「……全人類……」
SEELE01「……この世界には、70億人もの人間がいるのだ。それぞれ、国籍も人種も言語も宗教観も政治思想も、何もかも異なった人間が」
シンジ「…………」
SEELE01「……そのような全人類を一つにするには……同一の思想、価値観を植え付けるしかないのだ」
シンジ「…………」
SEELE01「価値観が同じなら、対立も抗争も起こらぬ。そしてその共通の価値観を憑代とすることで、我々は……完全なる単一の生命体へと進化することができるのだ」
シンジ「…………」
SEELE01「そうすれば、この世界には永劫の平和がもたらされる。それこそが……我らの宿願也」
シンジ「……箱のおじさん」
SEELE01「!? …………」
シンジ「ライブ。行きましょうよ」
SEELE01「!?」
SEELE01「……ライブ、だと……」
シンジ「……多分、それが一番良いです。百聞は一見に如かず、というか」
カヲル「……確かに。議長はまだ一度も、生の765プロのライブには、赴かれていないのではありませんか?」
SEELE01「…………」
シンジ「そりゃまあ、全人類を一つにするとか、この世界全体から対立を一切無くすとか……そこまでのことは、ちょっと難しいかもしれないですけど」
SEELE01「…………」
シンジ「でも実際に、765プロのライブを観てもらえれば分かると思うんです。僕が今、ここで言ったことの意味が」
SEELE01「…………」
シンジ「……ていうか、今日この後にある夜公演のチケット、なんとかならない? カヲル君」
カヲル「……それはもちろん可能だよ。だって、僕がいつも765プロのライブのチケットをもらって(買って)いたのは……この箱の人達からだったんだからね」
シンジ「え? そうだったの?」
SEELE01「…………」
シンジ「いや、ていうかそれなら……なんで尚更、自分達でライブに行かないんですか? あんなに楽しいのに」
SEELE01「…………」
SEELE01「……必要が無かったからだ」
シンジ「……必要?」
SEELE01「……左様。我々は、天海春香を神とするために行動していた。……その宿願のためには、我ら自らがライブなどに出向く必要は無い」
シンジ「……でも本当は、やよいちゃんが好きなんでしょ?」
SEELE01「! …………」
シンジ「他の箱の人達だって、本当は、春香さん以外のアイドルが好きだったりするんじゃないですか?」
SEELE01「…………」
シンジ「でも、皆でそういう計画を進めるって決めちゃったから……自分だけ抜け駆けでライブに行き、お気に入りのアイドルの応援をする……なんてことは、とてもできなかった」
SEELE01「…………」
シンジ「皆さん、本当は……ライブに行って、自分のお気に入りのアイドルを……応援したかったんじゃないですか?」
SEELE01「…………」
SEELE01「……そんな、ことは……」
SEELE02「……私はミキミキ推しだ」
SEELE01「!?」
SEELE03「響ちゃんマイラブ」
SEELE01「!?」
SEELE04「お姫ちんマジぺろぺろ」
SEELE01「!?」
SEELE05「真ちゃんマジイケメン」
SEELE01「!?」
SEELE06「真美は合法」
SEELE01「!?」
SEELE07「……なんだ、本当に春香さん推しだったのは私だけか。うー、わっほい!」
SEELE01「!? き……貴様ら……!」
シンジ「……さあ、後はあなただけですよ。01の箱の人」
SEELE01「! …………」
シンジ「あなたは……誰のファンなんですか? 本当は、誰を……一番に、応援したいんですか?」
SEELE01「…………」
シンジ「…………」
SEELE01「…………私、は―――」
~同日夜・765プロオールスターライブ会場~
アスカ「ったく、おっそいわねぇ……何やってんのかしら」
レイ「……それよりアスカ。腕、もう大丈夫なの」
アスカ「腕? ……ああ、ライブの事考えてたら忘れてたわ。所詮、精神イメージだったわけだしね」
レイ「……そう。なら、よかった」
マリ「さっすが、姫はたくましいねぇ」
アスカ「だからその姫っての、やめなさいっての!」
レイ「…………」クスクス
アスカ「? どうしたの? レイ」
レイ「……なんか、楽しい」
アスカ「え? そ……そう?」
レイ「……女子会、みたい」
アスカ「……あんたって子は……またそんな変な言葉を覚えて……」
マリ「いーじゃんいーじゃんネルフ女子会。楽しいじゃん? ……って、およ? あれ、わんこ君達じゃない?」
アスカ「えっ」
シンジ「皆ー、遅れてごめん!」
カヲル「……どうやら、開演には間に合ったようだね」
アスカ「もー、一体何やってたのよ!」
シンジ「ごめんごめん。箱の人が……」
アスカ「箱の人? ……って、ん? ……誰? その人」
キール「…………」
カヲル「ああ、僕の知り合いの人で……いつも、765プロのライブのチケットをくれていた人さ」
アスカ「えっ! そうなの!? え、えっと、い、いつもありがとうございます! ……で、いいのかしら」
レイ「…………」ペコッ
カヲル「……それで今日はね、僕達と一緒に、765プロのライブを観たいんだって」
アスカ「へぇ。……ってまさか、今まで観たことなかったの?」
キール「…………ああ」
アスカ「えーなんで!? もったいない」
マリ「私なら絶対、他の人にあげずに自分で観るけどなぁ」
レイ「…………」コクッ
キール「…………」
ピリリリリリ
カヲル「おっとすまない、僕の携帯だ」ピッ
アスカ「もう、開演前にはちゃんと電源切っとかないとダメじゃない」
カヲル「ああ、分かってるよ、式波さん。……え? ああいえ、こちらの話です。……はい、はい。そうですか。分かりました。それじゃあ」ピッ
シンジ「加持さん?」
カヲル「ああ、他のゼーr……いや、箱の人達も全員集まったから、これから皆で、VIP席で観るらしいよ」
シンジ「VIP席で? こっちの方が、アイドルの皆に近いのに」
カヲル「仕方ないよ。流石に、一般席で押さえていた分はもう無くなったからね」
シンジ「あー、そっかあ」
キール「…………」
アスカ「何? 加持さんも来てるの?」
カヲル「ああ。席はここじゃないけどね」
アスカ「ふーん。加持さんも765のファンだったのね。なんか、あずささんとか好きそう」
カヲル(鋭いな)
マリ「ねぇねぇ銀髪君。ところで例の……」
カヲル「ああ、そうだったね。はいこれ、真希波さん。これが、一般席最後のチケットだ」
マリ「おーサンキュー! 銀髪君! あ、でも今の話からするに、そっちのおじさんからかにゃ?」
カヲル「ああ、そうだよ(まあ僕が買ったんだけど)」
マリ「ありがとねー! 変なサングラスのおじさん!」
キール「…………」
シンジ「いやー、それにしても、一日に二回も765プロのライブが聴けるなんて……最高に幸せだなぁ!」
マリ「うんうん、ホントそうだよねー」
レイ「……ありがとう、おじさん。……感謝の言葉」
キール「…………」
シンジ「……さて、最後に、コール本でコールの最終確認しとこうかな。……あ、そういえばアスカ、腕はもう平気なの?」
アスカ「思い出したように言ったわね……まあ、おかげさまでもうばっちりよ。サイリウムも振りまくれるわ」
シンジ「はは。流石アスカはたくましいや」
アスカ「流石って……あんたといいマリといい、私のことを一体何だと……あっ」フッ
レイ「照明が落ちたわ」
シンジ「わ、早くサイリウムサイリウム」
キール「…………」
カヲル「……これをどうぞ。キール議長」
キール「! (……オレンジ色のサイリウム……)」
カヲル「? どうなさいました?」
キール「……いや、私に、これを振る資格など……」
カヲル「まあそう言わずに。手持ち無沙汰になってしまいますから」
キール「…………」
カヲル「そしてご覧ください。……この、サイリウムの海を」
キール「…………」
カヲル「赤、青、黄、緑、白、ピンク、オレンジ、バイオレット……みんな、みんな……とてもきれいです」
キール「…………」
カヲル「色んな色があって、でも……いや、だからこそ……とても、きれいなんです」
キール「…………」
カヲル「赤色のサイリウムを振る人も、青色のサイリウムを振る人も……そして、オレンジ色のサイリウムを振る人も」
キール「! …………」
カヲル「……皆、此処では仲間です」
キール「…………」
カヲル「此処にいる皆は、互いに互いの好きなものを尊重し、認め合っています」
キール「…………」
カヲル「そして決して、自分の好きなものを、他者に押し付けたりしない」
キール「…………」
カヲル「だからこの海は……こんなにも色鮮やかで、美しいんです」
キール「…………」
カヲル「モノリス越しには……見えなかったのではないですか?」
キール「…………」
~一般席・最後列~
高木「……なんだ、結局来ていたのか」
ゲンドウ「……高木」
高木「私とお前の仲なんだ。言ってくれれば、VIP席でも用意してやったのに」
ゲンドウ「……それには及ばん。……ここからが一番よく、会場全体を見渡せるからな」
高木「……そうか」
ゲンドウ「……高木」
高木「……ん?」
ゲンドウ「今日は本当に……世話になったな」
高木「……ふっ。何を今更……水くさいぞ、碇」
ゲンドウ「……親しき仲にも何とやら、だ」
高木「ふふっ。そうか……ああ、そういえば」
ゲンドウ「?」
高木「……お前、サイリウムなんか持っていないだろう。もしよければ、私のを貸して……」
ゲンドウ「…………問題無い」スッ
高木「! 白を二本……だと……」
ゲンドウ「…………」
高木「……碇……お前……」
ゲンドウ「…………開演だ」
高木「……うむ」
春香「会場の、み~なさ~ん!!」
観客「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
シンジ「! 春香さんだ!」
春香「ドームですよ、ドーム!!」
観客「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
アスカ「うわ、す、すごい……」
レイ「なんか……ドーム全体が振動しているようだわ」
マリ「私、こんな近くで観るの初めて……なんか、感動するにゃあ……」
春香「今まで応援してくださった皆々様のお蔭で……私達、こ~んなところまで、来ることができちゃいました!」
観客「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
カヲル(……なんかこれもう補完されてそうだな)
キール「…………」
春香「そういうわけで、今日は……皆様に感謝の気持ちをい~っぱい込めて、全身、全力で! 私達の歌を、届けたいと思います!」
観客「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
春香「それじゃあいきますよー! 765プロオールスターズで、『The world is all one !!』!」
観客「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
アイドル全員「空見上げ 手をつなごう♪ この空は輝いてる♪」
アイドル全員「世界中の 手をとり The world is all one ! Unity mind!」
アイドル全員「Yeah――――――!!」
シンジ「Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!!」
アイドル全員「Fuu――――――!!」
アスカ「Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!!」
春香「ねえ この世界で♪」
SEELE07「はるるーん!」
美希「ねえ いくつの出会い♪」
SEELE02「ミキミキ可愛いよー!!」
響「どれだけの人が 笑ってるの?」
SEELE03「響ー! オレだー! 結婚してくれー!」
貴音「ねえ 泣くも一生♪」
SEELE04「お姫ちんサイッコ―!!」
真「ねえ 笑うも一生♪」
SEELE05「真ちゃーん!!」
真美「ならば 笑って 生きようよ 一緒に!」
SEELE06「真美は合法」
加持(こいつら)
あずさ「顔を上げて みんな笑顔♪」
加持「……上から見ても、いい女だ」
伊織「力あわせて 光目指し♪」
マリ「ああ……生いおりんのおでこの光があばばば……」
アスカ「ちょ、ちょっとあんた! 気をしっかり保ちなさいよ!」
雪歩「世界には 友達♪」
ゲンドウ「…………」
亜美「一緒に進む 友達♪」
真美「いることを 忘れないで!」
カヲル「亜美君……真美君……やはり君達の『調和』は最高だよ……!」
やよい「ひとりでは」
シンジ「FuFuu!(うおおおおおおおおおやよいちゃあああああああああん!!!)」
キール「…………」
春香「出来ないこと♪」
アスカ「FuFuu!」
美希「仲間となら出来ること♪」
レイ「Fuwa Fuwa Fuwa Fuwa!」
響「乗り越えられるのは Unity is strength!」
アイドル全員「空見上げ♪」
カヲル「FuFuu!」
アイドル全員「手をつなごう♪」
マリ「FuFuu!」
アイドル全員「この空はつながってる♪」
シンジ「Fuwa Fuwa Fuwa Fuwa!」
アイドル全員「世界中の 手をとり」
アイドル全員「The world is all one !! The world is all one !! Unity mind!」
アイドル全員「Yeah――――――!!」
シンジ・アスカ・レイ「Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!!」
アイドル全員「Fuu――――――!!」
カヲル・マリ「Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!! Hey!!」
アイドル全員「Yeah――――――!!」
~ライブ終了~
シンジ「あー……終わった……」
アスカ「いやあ……今日も最高だったわね……」
レイ「……今日という日を、私は一生忘れないわ」
マリ「ああ……なんか、こう……名状しがたい高揚感だにゃあ……」
カヲル「ああ……やはり歌は良いねぇ……」
キール「…………」
カヲル「……あなたも、そう思いませんか? ……キール議長」
キール「…………」
カヲル「…………」
キール「……タブリス」
カヲル「はい」
キール「……私達が手を加えるまでも無く、この世界……否、少なくとも、この場にいる皆は……もうとうの昔から、一つになっていた……ということか」
カヲル「……ええ」
キール「……確かに、モノリス越しには……見えなかったな……」
カヲル「…………」
シンジ「? どうしたの? カヲル君」
アスカ「帰んないの?」
レイ「…………?」
マリ「ん? どったの?」
カヲル「……キール議長。そして、皆」
キール「! …………」
シンジ「? 何? カヲル君」
アスカ「何よ? 改まっちゃって」
レイ「…………」
マリ「およ?」
キール「…………」
カヲル「765プロのアイドルは、お好きですか?」
一同「……大好き!!」
了
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