魔王「一撃でやられるとはとんだ未熟勇者よ!」(82)

「ここで…死ぬのか…?」

「その程度の力で単独魔王に挑むなど笑止千万、身のほどをわきまえない結果だ。勇者よ」

「…ちが、う」

「ほう?この期に及んでまだ戦う気か?」

「勇者では…ない」

「ハッハッハッ!命乞いか!お主が勇者でないのなら何者だと言うのだ!」

「新聞の…勧誘で、す…」

「…え?」

「しんぶ…」

「待って待って!えっ…?」

「………」

「えっ?丸腰の民間人?」

「………」

「本当なら威厳的にヤバイよヤバイよ!どうしよう!?まだ生きてる!?ねえっ」

「………ぅ」

「生きてた!薬草!」

ーーーー

新聞勧誘員「なんとか、一命とりとめました」

魔王「そうか、ではお主が勇者ではないという証拠を見せてみよ」

新聞勧誘員「証拠と言われましても…」

魔王「お主、この城まで何で来たのだ?」

新聞勧誘員「チャリです」

魔王「チャリ!?城の周りに毒の沼とかあったでしょ!?」

新聞勧誘員「三段ギアなので…」

魔王「なんの解決にもならないオプション」

魔王「…ならば、この辺りの魔物はどうした?強者揃いの筈だ。ドラコン系などは我輩でも手を焼くことがある」

新聞勧誘員「それもチャリで通過しました」

魔王「魔物をチャリで通過!?」

新聞勧誘員「三段ギアなので…」

魔王「だから三段ギアがなんの役に立つの!?」

新聞勧誘員「“速”で漕ぐんです」

魔王「それがなんになるの!?」

魔王「…戯れはもうよい、城内はどうした?城内は流石に歩きだろう?」

新聞勧誘員「あ、はい。呼び鈴もなく正門も閉まってましたので横にあった梯子から二階に上がらさせていただきました」

魔王「うむ、魔王城の正門はあまり開けないのでな。流石に梯子はチャリでは登れまい」

新聞勧誘員「城内に入りうろうろしていたら一階の正門まで出たので、レバーを引いたところ正門があいたので一旦外に出て」

新聞勧誘員「チャリで来ました」

魔王「またチャリで来た!」

魔王「で、では城内の魔物やトラップは…」

新聞勧誘員「チャリで通過しました」

魔王「やっぱり」

新聞勧誘員「三段ギアなので…」

魔王「“速”?」

新聞勧誘員「あ、はい」

魔王「そっかあ…」

新聞勧誘員「流石に階段は大変でしたので“軽”にしました」

魔王「マウンテンバイク?クロスバイク?」

新聞勧誘員「12,800円のママチャリです」

魔王「ママチャリ…ママチャリで魔王城」

新聞勧誘員「洗剤とか積むんでママチャリがよくて…」

魔王「ああ、勧誘用の?」

新聞勧誘員「はい。ギアと自動電灯ライトがなければもっと安いチャリもあったんですが」

魔王「ギアはあって正解だったと思うよ」

新聞勧誘員「そこを妥協する勇気も電動アシスト買う余裕もありませんでした」

新聞勧誘員「で、ここまで来てドアを開けて話しかけたら

魔王「よく来たな!勇者よ!魔王が直々に鉄槌を食らわせてやるわ!」

と攻撃を受けました」

魔王「まさか新聞の勧誘とは思わなかったから…」

新聞勧誘員「チャリは降りてドアの前にあるから無事だったみたいです」

魔王「そのチャリなら攻撃を受けても大丈夫だったんじゃない」

新聞勧誘員「や、洗剤とか燃えちゃうと困ります!」

魔王「ああ、そう、そうね…」

新聞勧誘員「あの、お話なんですが」

魔王「なんだ?城から生きて帰った人間はおらんぞ!残念だったな!」

新聞勧誘員「深夜新聞と契約、いかがですか?」

魔王「勧誘かあ」

新聞勧誘員「最初のふたつきは代金はこちらで負担します!」

魔王「よくあるサービス」

新聞勧誘員「今ならなんとっラップ、洗剤をつけてさらにお得!」

魔王「うん」

新聞勧誘員「抽選で毎月20名様に深夜スライムズの観戦チケットが当たるキャンペーン中!!」

魔王「キャラ変わったなあ、我輩も人のこと言えないけど」

新聞勧誘員「かなーり無理してます!お客さま!お客さまのためにっ!さらにもう一品!」

魔王「勧誘というか通販な気がしてきた」

新聞勧誘員「他のお客さまには内緒ですよ?この高えだ切りばさみお付けしちゃいます!」

魔王「やっぱり」

新聞勧誘員「見てください!魔王城の窓からちょっと身を乗りだして、ほらチョッキン!蔦の絡まりもスッキリ解消!!」

魔王「くっ…ほしくなってきた!」

新聞勧誘員「いかがです?ここまでするのは深夜新聞がいまだけですよ!」

魔王「確かに新聞の勧誘がここまで来ること自体がないだろうからなあ」

新聞勧誘員「…どうでしょう?」

魔王「確かに魅力的ではあるが、新聞は有益な情報があってこそだな」

新聞勧誘員「それなら日曜版なんですが、勇者情報があります」

魔王「はいぃ?」

新聞勧誘員「右京さんですか」

魔王「ファンでな」

新聞勧誘員「似てましたよ」

魔王「よく言われる。して、勇者勇者情報とは?」

新聞勧誘員「勇者様が今どこで何をしているか、仲間や呪文、装備などの情報です」

勇者「すんごい有益だった」

新聞勧誘員「あとコラムも勇者様が書いています。人気のコーナーです」

魔王「へえ」

新聞勧誘員「今や町は勇者様コスプレが大流行ですよ」

魔王「まあ、人間の希望の星だからな」

新聞勧誘員「私もローブの下はホラッ」

魔王「だから間違えたんだよね」

魔王「そもそもなぜ魔王城に新聞の勧誘に来たのだ?」

新聞勧誘員「ノルマが厳しくて…」

魔王「ノルマ」

新聞勧誘員「はい、魔王城なら他社と契約してないだろうし、もししていてもお金持ちだから契約してくれるかと思いまして…」

魔王「無駄にちゃんと考えてる」

新聞勧誘員「生活、かかってます!」

魔王「いやー命かけすぎでしょ」

新聞勧誘員「じゃあ命、かかってます!」

魔王「なにかがズレている」

魔王「新聞か…うー…ん」

新聞勧誘員「契約だめですかね?」

魔王「したいのは山々だが、ここに配達しに来てくれるのか?」

新聞勧誘員「あっ………」

魔王「配達員は別なのだろう?」

新聞勧誘員「はい」

魔王「死ぬよ、普通はね」

新聞勧誘員「うぅー…この辺りは配達ルート外だったような…」

魔王「ね?ルーラ覚えてる人でも最低一回はここに来ないといかんぞ」

新聞勧誘員「……2日!2日待ってください!」

魔王「2日?」

新聞勧誘員「一旦帰ってルーラ使える配達員を連れてきます」

魔王「なるほど」

新聞勧誘員「そしたら契約してもらえますか?」

魔王「それならなんの問題もない」

新聞勧誘員「ありがとうございます!」

魔王「あっ出来たら日曜版一部持ってきてくれない?そしたら、ふたつき無料いらないから」

新聞勧誘員「わかりました!」

チリンチリーン…

魔王「普通に難攻不落魔王城から出ていったな…脚の力どうなっているんだろうか……?」




ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー

ピンポーンチリンチリーン
新聞勧誘員「こんにちはー、新聞の勧誘でーす」

魔王「来たか…む、一人か?」

新聞勧誘員「はい…インターホン着けたんですね」

魔王「ああ、前回のようなことがないようにな。もしもガッツあるヤクルトレディが来たらと思うといてもたってもいられなかった」

新聞勧誘員「いいと思います」

魔王「そうか、チャイム鳴ってすぐここまで到着したのにはもう触れないでおくぞ。してなぜ一人なのだ?」

新聞勧誘員「それが…配達員がおびてえしまって」

魔王「それが普通だ」

新聞勧誘員「そこで本部と掛け合いまして、魔王城の配達は私がすることになりました」

魔王「ほう…お主がか」

新聞勧誘員「ただ私のすむ町まではほぼ一日がかりになるんです。配達に往復二日かかります」

魔王「新聞屋としては致命的だな」

新聞勧誘員「はい、なので近場に越そうかと」

魔王「近場?…今はどこに住んでいるのだ?一番近い人里の最後の渓谷ではないのか?」

新聞勧誘員「いえ、始まりの城下町に住んでいます」

魔王「…待って、地図だすから」

新聞勧誘員「はい」

魔王「どこだ?」

新聞勧誘員「ここです。大陸渡って西側の城」

「………」

新聞勧誘員「勇者と同郷なんです。だから勇者コスの聖地と言われます」

魔王「…へえ…、ねえ」

新聞勧誘員「はいぃぃ?」

魔王「右京さんそのもの」

新聞勧誘員「気に入って契約してもらうためには物真似くらい習得します!」

魔王「クオリティ高すぎて魔王物真似形無しなんだけど」

魔王「どうやって海わたってるの?話を聞いた感じルーラ使えないんだよね?まさか海上をチャリで走ってる…じゃないよね?」

新聞勧誘員「それは無理ですよ」

魔王「だよねえ。船?」

新聞勧誘員「はい、スワンボート借りてチャリ乗せて漕いでわたってます」

魔王「」

魔王「え、自分で漕いでるの?」

新聞勧誘員「はい、船代もバカになりませんしね」

魔王「知ってる?海ってすごいひろいんだ」

新聞勧誘員「わたるだけで半日くらいかかりますもんね」

魔王「色々規格外なあんよだね」

新聞勧誘員「規格はわかりませんが、昔から足腰は強いですね」

魔王「だろうね」

新聞勧誘員「脚、触ってみます?」

魔王「良いの?」

新聞勧誘員「どうぞ」

魔王「うっわっカッチカチ」

新聞勧誘員「くすぐったいです」

魔王「ゴーレム…より上か…オリハルコンすら…」

新聞勧誘員「またまた、そんなわけないじゃないですか!魔物じゃないですし」

魔物「いや、蹴られたらただ事じゃない兵器レベル」

新聞勧誘員「最後の渓谷に身をおいてそこから配達するつもりです」

魔王「新聞は大陸わたって最後の渓谷に届くのか?」

新聞勧誘員「そこまではルーラで行ってもいいという配達員がいましたので…」

魔王「それなら毎日新鮮な情報が届くな」

新聞勧誘員「はいっ!ルーラの配達員は先ほど最後の渓谷まで2ケツで送ったので準備万端です」

魔王「……配達員、息してた?」

新聞勧誘員「船酔いしたのか始終無言でした」

魔王「船酔いじゃないだろうなー御愁傷様」

魔王「この城に新聞を届けるためだけに引っ越すのは気がひけるな…本業の勧誘は大丈夫なのか?」

新聞勧誘員「実はこの大陸は深夜新聞の普及率が低めでして…」

魔王「だろうな。なかなか別大陸の新聞をとる酔狂なものはいないだろう」

新聞勧誘員「新しく開拓するチャンスです!」

魔王「ものはいいようだな」

新聞勧誘員「足が棒になるまで勧誘しまくります!」

魔王「その慣用句がこれ程似合わない人間がかつていただろうか」

新聞勧誘員「ゆくゆくはエルフやドワーフ、マーメイドも勧誘したいですね」

魔王「魔王城に乗り込んで勧誘するより難易度は低いよ」

新聞勧誘員「人間嫌いらしいのでうまく話ができるのか不安で…」

魔王「我輩、魔王だし。人間の敵だし」

新聞勧誘員「なるほどです!人間の敵と契約できたらいけますよね!」

魔王「そうそう、世界樹の森も地下の坑道も海底神殿もチャリで行けちゃうだろうし」

魔王「本来民間人は道中で死ぬはずなんだけどね!」

新聞勧誘員「そうだ!」

魔王「なんだ?」

新聞勧誘員「要望の日曜版、もってきました」

魔王「おおっ勇者情報待っていたぞ!」

新聞勧誘員「今日は木曜なので約一週間前の情報ですが…」

魔王「構わぬ。予測がたてられれば大分違うからな」

新聞勧誘員「打倒勇者ですね!」

魔王「それで良いのか人間よ…」

新聞勧誘員「命、かかってます!」

魔王「何々?パーティーは男女混合4人か」

新聞勧誘員「ですね」

魔王「バランス型の勇者、アタッカーの剣士、補助の魔法使いに回復の賢者…王道だな」

新聞勧誘員「王道なんですか」

魔王「うむ、レベルもなかなか高いな」

新聞勧誘員「凄いですよね。レベルあげるのって経験値必要ですし…」

魔王「ちなみにお主のレベルは?」

新聞勧誘員「恥ずかしながら3です」

魔王「3!?」

新聞勧誘員「はい、魔物を倒したことほとんどないんです。チャリで上を通るだけなので…」

魔王「いみわかんない」

新聞勧誘員「えっ…とチャリをこぐと走りますよね」

魔王「ああ」

新聞勧誘員「いっぱいこぐと速くなります」

魔王「うん」

新聞勧誘員「そのまま魔物の上をズババーって通るんです」

魔王「へえ……」

新聞勧誘員「だから倒してはいませんね…」

魔王「魔物は怒るでしょ?」

新聞勧誘員「さあ、後ろは振り向かないんで…」

魔王「追っかけても追い付けないんだろうね」

魔王「まあ、お主は我輩の一撃で瀕死だったしな」

新聞勧誘員「はい!お強いですね!」

魔王「ん…?レベル3で我輩の一撃うけて瀕死程度?」

新聞勧誘員「?」

魔王「…っぶなーい!勇者でレベル上げて来なくてよかったー!新聞勧誘の職についてくれてよかったー!!神様ありがとう!」

新聞勧誘員「魔王さんも神様信仰するんですか?」

魔王「たまにはな。腹痛のときとか必死に祈るぞ」

新聞勧誘員「わかります、わかります!」

魔王「あ、勇者コラム」

新聞勧誘員「深夜新聞日曜版大人気コーナーです」

魔王「“ゆぅしゃんぽ”…」

新聞勧誘員「勇者様はあちこち旅してますからね。ぶらぶらと歩いて地域のひととの触れ合いや変わったお店が載っています」

魔王「なんか…なんか…」

新聞勧誘員「その際は勇者としてでなく一人間としてがモットーで兜をハンチングにかぶり変えます」

魔王「…うん」

新聞勧誘員「パーティーメンバーにあーんするのがお約束です」

魔王「…ちぃさん…なんで死んじゃったの。我輩が征服しても番組をお願いするつもりだったのに……」

新聞勧誘員「魔王さんどうしましたか?おきに召しませんでしたか!?」

魔王「…ちょっと色々思い出して凹んでただけだ」

新聞勧誘員「そうですか…なんかすみません」

魔王「いや、一部メンタルの成長が課題と知れたのは収穫だ……」

新聞勧誘員「魔王さんでもまだまだ成長する予定なんですね!」

魔王「上にたつものなら慢心はご法度だ」

新聞勧誘員「カッコいいです!」

魔王「ハッハッハ!照れるではないか!」

コメント支援ありがとうございます
半分越えましたのであと少しおつきあい下さい

おやすみなさい

魔王「しかし、思いのほか魔王城の近くまで勇者たちは近付いておるな」

新聞勧誘員「決戦が近いんですか」

魔王「うむ、毒の沼やトラップをいくつか増やさなければなるまい」

新聞勧誘員「仕込みは大切ですね」

魔王「そうだな。相手は4人でこちらは一人だ。対峙する前に出来るだけHPMPを削らせておくことが重要だろう」

新聞勧誘員「なるほどです」

魔王「実はな、我輩は第三形態まで変身できるのだがこの姿は魔力特化型であまりHPは高くない」

新聞勧誘員「なんかすごいですね!」

魔王「まあな。勇者パーティーのスペック的にこの形態はあまり長くは持たぬだろう」

新聞勧誘員「弱気になってはだめですよ」

魔王「いや、戦術的な目算なのだ。全体HPの1/5を第一形態は占めておるが、最終形態は魔力の放出が大きすぎてな、あまりなりたくない」

新聞勧誘員「魔力の放出?」

魔王「うむ、魔物や人間の体は常に微弱な魔力を放出していてそれが魔法耐性や回復に自然と使われておる」

新聞勧誘員「へえ、魔王さんは物知りですねえ」

魔王「ふふふ、そうだろう、そうだろう!?第一形態は常に放出より溢れ出る回復がかなり上回るのでな、しんどくないのだ」

新聞勧誘員「勉強になります!第二形態も魔力の放出が多いんですか?」

魔王「いや?第二形態は打撃中心のパワータイプなので魔力回復は多くはないが放出も少ないぞ」

新聞勧誘員「常に第二形態なのは駄目なんですか?」

魔王「え?」

新聞勧誘員「そうしたら魔力の放出もHPの消費も少なくなるのでは?」

魔王「いや、ほら、でも魔法が……」

新聞勧誘員「ああ、魔法が使えなくなるんですね!」

魔王「ん?いや、そんなことはないな」

新聞勧誘員「第二形態がお嫌い、とか…」

魔王「まさか。……ん?ちょっと待って、ホワイトボード持ってくる」

新聞勧誘員「はい」

ーーー

魔王「まず、第一形態から戦った場合のメリットを書き出してみるぞ」

新聞勧誘員「はい」

*魔力の放出はあるがカバーできる魔力回復がある
*魔法の手数が多い
*魔法耐性や自然治癒が高い
*あと二回変身可能

魔王「こんなものか」

新聞勧誘員「かなりお強そうですね!」

魔王「実はかなり強いんだ。魔王だから。次にデメリット」

*打撃に弱い
*実質全HPの1/5を捨てるはめになる

魔王「む、数は少ないが不安だな」

新聞勧誘員「1/5は大きいですね。500円玉と400円では安心度が違います」

魔王「そうそう、不思議と500円玉って心強いよね」

新聞勧誘員「小銭の王者、いえ魔王さまですね!」

魔王「ハッハッハッ!うまいこと言ったな、次は第二形態から戦った場合のメリット」

*魔力放出がほぼない
*防御、回避率が高い
*打撃が強い
*蓄えた第一形態のHPを繰越して全HPの3/5で戦える

魔王「…あれ」

新聞勧誘員「どうしました?」

魔王「い、いや、デメリットいくぞ」

*魔法耐性や自然回復が低い
*魔法の手数が少ない

魔王「………なあ」

新聞勧誘員「はいぃぃ?」

まみれとかが「基本は第二形態のデメリットは第一形態がやられてからでもかわらんよな?」

新聞勧誘員「そうですね」

魔王「どの形態も二回攻撃と凍てつく波動は完備だ」

新聞勧誘員「二回攻撃!スピードもありますね」

魔王「お主にスピード誉められてもな…下手すると、第一形態繰り越しの第二形態が第三形態より強いんじゃないの?」

新聞勧誘員「そうなんですか?でも第三形態には第三形態のいいところがありますよね?」

魔王「第三形態は打撃と魔法の手数が多い第一第二を合わせたタイプだな」

新聞勧誘員「なら強いですよ!」

魔王「ただ、魔力放出が大きいのと体型がでかすぎてな…城が半壊になる」

新聞勧誘員「それは眠るとき寒そうです」

魔王「修繕費も高いしなー勇者だけではなく懐にも大打撃だ」

新聞勧誘員「立派なお城ですもんね」

魔王「家政婦のドラキー雇用費がバカにならん」

新聞勧誘員「では、第二形態で過ごすんですか?」

魔王「ああ、ちょっと退いてて。変身しちゃうから」

新聞勧誘員「はいっ」

魔王「はあぁぁぁあぁぁっ…!!」

新聞勧誘員「……一方その頃亀ハウスでは」

魔王「ぁぁあぁ……!気が散るから止めて?八奈見さんまでうまくて驚くし」

新聞勧誘員「すみません…契約はお願いします!」

魔王「うん、契約はするから!待っててね」

新聞勧誘員「はいっ!」

魔王「いいえがお」

魔王「では気をとりなおして…はあぁぁぁあぁあぁっ」

ジャーン

魔王「どうだ?」

新聞勧誘員「一気に魔物っぽくなりましたね」

魔王「そうだな」

新聞勧誘員「オーラがすごいです」

魔王「ハッハッハ!魔王たる所以だな!」

新聞勧誘員「これで勇者戦もバッチリですか?」

魔王「ああ、お主のお陰だ。褒美をとらせよう」

新聞勧誘員「契約の方が……」

魔王「ああそうか、そうだよね」

新聞勧誘員「ここにサインお願いします」

魔王「うむ、ま…王…っと」

新聞勧誘員「ありがとうございます!」

魔王「いや、お安いご用だ」

新聞勧誘員「こちらに洗剤とラップ、高枝切りばさみおいておきます」

魔王「うむ、ありがたいな」

新聞勧誘員「私の引っ越しが終わってからですので日曜日からの配達になります」

魔王「そうか」

新聞勧誘員「なにか他に質問はありますでしょうか?」

魔王「特にないな」

新聞勧誘員「ではこれで失礼します」

チリンチリーン…

魔王「人間は仕事のために引っ越しまでするのか…あまりよろしくないことだな…ふぅむ…」





ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー

おい、どこ行った
続きはよ

>>59 わかった!時間できたから一気に終わらす!

ピンポーンチリンチリーン

新聞勧誘員「こんにちはー!すみません、ポストがなくて…お取り込み中ですか」

魔王「ああ、ちょっと忙しいな。最終決戦中だから」

勇者「なっ…民間人!?賢者のいし!」

賢者「危険ですよっ逃げてください!ベホマ!」

新聞勧誘員「新聞の配達に来ただけです」

魔法使い「新聞!?悠長だな!バイキルト!」

魔法「凍てつく波動」

魔法使い「あ…」

剣士「くっ…攻撃!」

魔王「攻撃!」

剣士「つえぇー」

勇者「賢者のいし!とにかく危険だぞ!」

新聞勧誘員「じゃあ、ここに置いときますね。失礼しま…」

魔王「ちょっと待って」

新聞勧誘員「はいぃぃ?なんでしょう?」

賢者「右京さん!?スクルト!」

魔法使い「物真似上手いな!バイキルト!」

魔王「凍てつく波動!正直、勇者逹に勝てそうなのよ」

魔法使い「あー!もうっ」

剣士「バイキルト無駄じゃね?攻撃!」

魔王「勇者を倒したら勇者情報は不用になるだろう?瞑想」

勇者「賢者のいし!完っ全になめられてる…」

新聞勧誘員「そうですね…勇者様が死んだら日曜版はどうなるんでしょうか……」

賢者「ベホマラー!そういえば今日刷りの“ゆぅしゃんぽ”読んでません」

魔法使い「バイキルト!私もだな」

魔王「凍てつく波動!勇者情報目当てだったから解約したいのだ」

新聞勧誘員「え」

魔法使い「凍てつく波動イライラする!イラつく波動に改名しろよ!」

魔王「攻撃!無論ひとつき分は払うぞ」

剣士「だからバイキルト無駄だって!攻撃!」

魔王「新聞社は多分魔王の傘下に入るしせっかく別大陸にきたんだ、脚をいかして旅でもしながら自由に生きてみたらどうだ?我輩の権限で給金は出すぞ」

賢者「勇者様を差し置いて厚待遇な話を命のやり取り中にしてますね」

新聞勧誘員「………は?」

勇者「緊張感の欠片もないよね。賢者のい」

新聞勧誘員「ふざけんなやあぁあぁぁぁ!!!!!」

なんと新聞勧誘員が躍り出た!▽

新聞勧誘員の渾身の蹴り!▽

魔王につうこんの一撃!▽

魔王を倒した!▽

勇者「」

賢者「」

魔法使い「」

剣士「」

勇者「……えっなに?魔王死んじゃったの?」

新聞勧誘員「………生きてますよ。第三形態までありますから」

勇者「あ、そう…えっ第二形態は?」

新聞勧誘員「今が第二形態です」

剣士「へえ…」

魔王「う…お主…なぜ…」

新聞勧誘員「ね?」

魔法使い「うん…」

新聞勧誘員「ちなみに第三形態は今より弱いらしいですよ」

賢者「そう…ですか…」

魔王 「な……ぜ、攻撃した…?お主に感謝を込めて自由を与えたかったのに…」

新聞勧誘員「はあぁ!?そんなん自分がきめんなや!!!」

賢者「なんか急に怒りだしましたけど」

魔法使い「こわい……」

新聞勧誘員「あんなあ!魔王だろうが人がコツコツやってきたもんを壊す理由にはならんのわからんの???このあったまスッカスカなん?」

勇者「あの、魔王といえど流石に頭を踏みつけるのは」

新聞勧誘員「あぁん!?」

勇者「でしゃばってごめんなさい」

剣士「勇者が迫力で負けた」

魔王「う…うぅ……人間に仏心を出した我輩がバカだったのか………?」

新聞勧誘員「仏心だあ!?はっ!ただのお節介やろ!!?自己満は世界征服程度にしとけよ!!ゴミカスが!お客様としては蹴ってしまい大変申し訳ありませんっっ!」

魔法使い「世界征服されたら困るんだが」

賢者「世界征服程度………」

魔法使い「なんかへこむな」

勇者「オレって本当に勇者なの…?」

新聞勧誘員「配達先を増やして地図に色つけんのが楽しみなの!!深夜新聞が進出すんのを見てニヤニヤすんのが好きなのっっ!!」

賢者「メチャ切れですね」

新聞勧誘員「こう…世界が自分色に染まる…ぶっちゃけ征服すんのがたまらないんだよ!」

魔法使い「あの民間人の思考が魔王とかわらないんだけど…」

新聞勧誘員「給料安いしキツいけど好きでやってんだよ!嫌だったらとっくに辞めてるわ!!」

賢者「社蓄ってやつですか?」

剣士「いや、よくわからんが趣味と自己満足を兼ねた天職のようだ」

勇者「羨ましい…」

魔王「くっ…人間風情が…人の親切をお節介だなんだと………人間…人間ニクい……ニンゲ…ニク…イ……ニンゲンニクイ…」

賢者「勇者様!様子がおかしいです!」

勇者「…皆!構えろ!」

剣士「おう!」

魔法使い「くる…!」

チャチャラチャッチャッチャー

勇者「!?」

剣士「あ、さっきの経験値入るんだラスボスなのに」

魔法使い「親切だなレベル上がったの誰だ?私じゃないぞ」

新聞勧誘員のレベルが28に上がった!▽

勇者「」

賢者「」

魔法使い「」

剣士「」

魔王「」

新聞勧誘員「あれ?28?…経験値一気に入ったからレベルがスキップしたのかな」

さいだいHPが200上がった!▽

力が810上がった!▽

素早さが66上がった!▽

身の守りが40上がった!▽

賢さが34上がった!▽

運が73上がった!▽

勇者「力だけおかしくない?」

剣士「MPは上がらないし完全なパワータイプだな」

スキルを振り分けてください▽

新聞勧誘員「実生活に使えそうなやつ………全部、脚で」

脚のスキルが10になった!▽

魔王「」

魔法使い「あ、カンスト」

賢者「思いきりがいいですね」

新聞勧誘員「さ、魔王さんこれからのことをきちんと話し合いましょうか」

魔王「うわーーん!!世界征服もうやだ!ごめんなさいぃぃいぃぃ!!!あと引っ越しソバ用意してます!!よかったら勇者逹も一緒にどうですかあぁぁぁ!!」

勇者「あ、はい……いただきます」

剣士「……こんな結末で良いのか!?」

ーーーー

こうして、勇者達の働きで魔王は降参し世界に平和が訪れた


そして、夜が明けた!

チリンチリーン

新聞勧誘員「ふんふーん♪今日はドワーフをガンガン勧誘するぞ!!」

今日も元気に新聞勧誘する人物が世界を救う一端を担ったことを知るものは、少ない


おわり

ありがとうございましたー

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