穂乃果『……うん、ごめんね』
穂乃果『お母さんの知り合いが亡くなって……』
穂乃果『今から私も行かなくちゃいけないんだよ……』
ことり「う、ううん、仕方ないよ」
穂乃果『本ッ当にごめんね!』
穂乃果『海未ちゃんにも謝っておいて!』
ことり「うん、わかった」
ことり「じゃあ、また学校で」
…ピッ
海未「……」
ことり「……」
ことり「穂乃果ちゃんが――」
海未「聞いてました。来れないんですね」
ことり「う、うん……」
海未「まったく、穂乃果には困ったものです」
海未「人がせっかく、仕度をしてきたというのに……」
ことり「そ、そうだね」
海未「……」ハア…
ことり「ど、どうしよっか?」
海未「どうしよう、とは?」
ことり「えっと……、穂乃果ちゃんが来れないから……」
ことり「二人になっちゃうねって……」
海未「……帰りましょう」
ことり「あ……、そ、そう?」
海未「そんな白々しい真似はやめなさい」
ことり「え……」
海未「ことりも穂乃果が来ない時点で……」
海未「帰りたいと思っていたのでしょう?」
ことり「べ、別にそんなこと思ってないけど……」
海未「じゃあ、私と遊びに行きますか?」
海未「二人で」
ことり「あー、えっと……」
海未「カラオケ? ゲームセンター?」
ことり「……」
海未「さあ、行きましょう」
ことり「……」
海未「……」
海未「帰るってことでいいですね?」
ことり「……そ、そうだね」
ことり「元々、三人の予定だったし……」
海未「……」
海未「そうなら、先に言ってください」
海未「時間の無駄ですから」
ことり「……私はただ――」
海未「……?」
ことり「海未ちゃんに悪いなあ、って思って」
海未「な、なにがですか!?」
ことり「だって海未ちゃん、私たち以外に友達いないでしょ?」
海未「な……!」
ことり「今日の予定崩れたら……」
ことり「ひとりぼっちになっちゃうんじゃないかなあって……」
海未「ことり、あなた……」ギリッ
ことり「ま、私はいるけどね?」
海未「……」
ことり「しょうがないから、他の友達と遊ぼっかな?」
海未「……」
ことり「じゃあね。海未ちゃん」
ことり「また、学校でね?」
ことり「穂乃果ちゃんたちと一緒に」
海未「……」
海未「そ、そうですね」
海未「私は確かに友達は多くありません……」
ことり「……」
海未「……クラスでも、穂乃課ぐらいしか友達はいませんから」
ことり「……」
海未「それじゃあ、ことり」
海未「また学校で。穂乃課と一緒の時に」
ことり「うん、またね海未ちゃん」ニッコリ
ことり「私はこれから友達と遊びに行くから」
ことり「気をつけてお家に帰ってね?」ニッコリ
海未「ええ、それでは」ニッコリ
海未「これから、どうしましょう……」トボトボ
海未「今日は一日、遊ぶ予定だったのに……」
ことり『気をつけてお家に帰ってね?』
海未「……」
海未「本屋にでも行きましょうか……」
海未「せっかく外に出て、帰るにはまだ早すぎますし……」
――本屋――
海未(ああ、ここは落ち着きます……)
海未(ここには誰の会話もありませんから……)
海未(一人でも気軽に入れます)
海未(少し、見て回りましょうか)トコトコ
海未「……」ペラペラ
海未(あ…・・・、この洋服かわいい……)
海未(ブランドは……、ここですか)
海未(このレベルのブランドになると……)
海未(正直、一人ではお店に行けませんね)
海未(今度、穂乃果たちと一緒に行きましょう)
海未「……」フゥ…
海未(さすがに立ちっぱなしで長居はできませんね……)
海未(でも、一人でカフェに入るのはちょっと勇気が……)
海未(仕方ありません。帰りましょう……)
海未「……」トコトコ
ことり「あ……」
海未「……ッ!」ビクッ
ことり「……」
海未「う……」
ことり「海未ちゃん、まだ帰ってなかったんだ?」クスッ
海未「……」
ことり「私はお友達が来るまで時間潰してるんだけどー」
ことり「そっかー。そうだよねえ」
海未「……」
ことり「せっかく楽しみにして来たのに……」
ことり「午前中で帰ることになるとは思ってなかったよねー」
海未「……」
ことり「……」
海未「……」タタタッ!
海未「はあ、はあ……」
海未(な、なんて運が悪いのかしら……)
海未(まさか、あんなところを見られるなんて……)
海未「……」グゥゥ…
海未「あ……」
海未(お腹が空いたわ……)
海未(せっかくだからどこかに食べに行きましょう……)
海未(ダイエットなんて知ったことですか!)
海未(ストレスを食にぶつけてやります!)
海未「……」
海未(でも……)
海未(ご飯屋さんに一人では入るのは……)
海未(ちょっと勇気がいりますね……)
海未(こんな時、穂乃果がいてくれたら……)
穂乃果『海未ちゃん! ラーメン食べに行こうよ!』
海未『ラ、ラーメンですか?」
海未『しょ、正直……、ラーメン屋さんは敷居が高くないですか?』
穂乃果『ええー!? 大丈夫だよ! 行こうよ!』
穂乃果『すっごく美味しいって評判なんだよ!?』
海未(なんて具合にどこにでも入れるのですが……)
海未(で、でも……)
海未(今日くらいは……)
海未(なにか一人でも歓迎みたいなお店は……)キョロキョロ
海未「あ……」
海未(お一人様大歓迎?)
海未(普通の洋食屋さんですが、こんな謳い文句とは……)
海未(渡りに船ですね)
海未(ここにしましょう!)
カランカラーン
海未「……」
ザワザワ ガヤガヤ
海未(お、思ったより人が入ってますね……)
海未(正直、もう少し、落ち着いたお店だと思ってましたが……)
店員「いらっしゃいませー!」
海未「……」ビクッ
店員「お客様、お一人でよろしいですか?」
海未「は、はいぃ……」////
海未(こ、声がうまくでない……)
店員「では、こちらどうぞー!」
店員「こちら、どうぞー」
店員「いまお冷、お持ちしますねー」
海未「ど、どうも……」
海未(よりによって窓際……)
海未(しかも、この席……)チラッ
海未(大通りに面してるから通行人に丸見えじゃないですか!)
海未(ああ…・・・)
海未(歩いてる人たちに……)
海未(私が一人ぼっちだってわざわざ晒すことになるなんて……)
――――
――――――
店員「お冷でーす」コトッ
海未「……」ペコリ
海未(メニュー、決めましょう……)ペラッ
海未「……ッ!」
海未(た、高い……ッ!)
海未(し、しまった……)
海未(ここは……、学生がくるレベルのお店じゃない)
海未(い、痛い出費に……)
海未「あ……」
海未(ランチメニュー?)サッ
海未(オムライスにスープ、サラダがついて……)
海未(……すごいお得!)
海未(ああ、良かったわ……)
海未(これにしましょう)
海未「……?」
海未(よ、呼び鈴がない……)
海未(え? そんなはずは……)キョロキョロ
海未(調味料の裏に隠れて……)
海未(――ない)
海未(ま、まさか……)
海未(直接、お店の人を呼ばなくちゃいけないパターン!?)
海未「……」チラッ
ガヤガヤ ワイワイ イラッシャーセ-ッ
海未「……」
海未「あ、あのう……」サッ
ガヤガヤ ワイワイ
海未「あ、あのー」
ガヤガヤ ガヤガヤ
海未「す、すみま――」
ザワザワ ザワザワ
海未「……」
――――
――――――
店員「Aランチでよろしいですか?」
海未「は、はい……」
店員「少々、お待ちください」
海未(結局、店員さんが近くに来るまで待ってしまったわ)グゥゥ
海未(お腹空いた……)
海未(さっさと帰ればよかったわ……)
なんか口調が絵里っぽい
――――
――――――
海未(結構、待つわね……)
海未(話し相手もいないし……)
海未(時間が長く感じるわ)
海未「……」グゥゥ
海未「……」
>>54
すまん
――――
――――――
海未(結構、待ちますね……)
海未(話し相手もいませんし……)
海未(時間が長く感じます……)
海未「……」グゥゥ
海未「……」
――――
――――――
店員「……」スタスタ
海未「あ……」
店員「お待たせしましたー」
海未「……」
店員「こちら、Bランチのナポリタンですねー」コトッ
海未「……?」
店員「こちら、スープとサラダでーす」ササッ
海未「……?」
店員「以上でご注文の品お揃いでしょうか?」
海未「あ……」
店員「……?」
海未「……」
海未「は、はい……」
店員「ごゆっくりどうぞー」ニコッ
海未(い、言い間違えたのかしら……)
海未(オムライスが食べたくて、Aランチを頼んだはずなのですけど……)
海未「……」グゥゥ
海未「食べましょう……」
海未「……」カチャ
海未「……」モグモグ
海未「……」モグモグ
海未(もし、ここに穂乃果がいてくれたら……)
穂乃果『海未ちゃんはオムライス食べるの?』
穂乃果『じゃあ、私はナポリタンにしよー!』
穂乃果『それで、一口ずつ分けっこしようね?』ニコニコ
海未(なんて感じになったのでしょうね……)
海未「……」モグモグ
海未「……」モグモグ
海未「……」
海未「……」コクコク
――――
――――――
海未(あっという間に食べ終わってしまいました……)
海未(まあ、一人でもくもくと食べていたのですから――)
海未(ある意味、当然の結果なのですが……)
海未(お水、もう一杯飲みたいですけど……)
海未「……」チラッ
ワイワイ ガヤガヤ
海未(外でお茶でも買いましょう……)ガタッ
――――
――――――
海未「ふう……」
海未(なんだか、外の空気が清清しく感じますね……)
海未(気を遣うばっかりで……)
海未(一人で外食なんてするものではありませんね……)
海未「……」
海未(でも、ナポリタンは美味しかったですね)
海未(今度、穂乃果にも教えてあげましょう)
海未「……」スタスタ
――コンビニ――
ウィーン
海未「……」トコトコ
イラッシャーセー
海未(お茶のコーナーは……)スタスタ
ことり「……」
海未「……」スタスタ
ことり「……」ペラッ
海未「……ッ!」
ことり「……?」
海未「こ、ことり……」
ことり「あ、海未ちゃん」
海未「ひ、一人でなにしてるんですか?」
ことり「……?」
海未「わ、私のことをあんなに言っておきながら――」
海未「あなたもひとりじゃないですか」ニヤニヤ
ことり「……?」
ことり「ああ、今お友達はトイレに行ってるの」
海未「え……」
ことり「海未ちゃんは?」
海未「……」
ことり「 海 未 ち ゃ ん は ? ど う し た の ? 」
海未「……」
海未「ちょ、ちょっとお茶を買いに……」
ことり「ふーん」
海未「……」
ことり「あんまりしょっぱいもの食べ過ぎちゃダメだよ」
海未「え……」
ことり「ナポリタンとか」
海未「な、なぜそれを……」
ことり「さあ? なぜでしょう?」
海未「え? え……?」
ことり「……」
海未「な、なんで……」
ことり「口の周り」
海未「え?」
ことり「ソース、ついてるよ」
海未「え……?」////
ことり「……」クスッ
海未「うう…・・・」////
ことり「ひとりで食べてたの?」ニヤニヤ
海未「ううう……」
ことり「……」ニヤニヤ
海未「……」タタタッ
――――
――――――
海未「……」ゴシゴシ
海未「……」ゴシゴシ
海未(なんて災難……)
海未『あなたもひとりじゃないですか』
ことり『ああ、今お友達はトイレに行ってるの』
海未「ううう……」////
海未(バカバカバカ! 私は大バカです!)////
海未(ううう……。恥ずかしい……)////
海未(ちゃ、ちゃんと綺麗になったでしょうか……)
海未(鏡で確認したいですね……)
海未(それに……)
海未(と、トイレにも行きたいです……)
海未(でも……)
海未(この辺りだと、さっきのコンビニくらいしか……)
海未(ま、まあ……)
海未(ことりもそこまで長居はしないでしょうし……)
海未(様子だけ伺いに行きましょうか……)
海未「……」サササッ
海未(こ、ことりはまだいるでしょうか……)
ことり「……」
海未(ま、まだいますね……)
海未(――ということはトイレも空いてないですね)
海未「……」
海未(少し、ここで待ちましょう……)
ことり「……」ペラッ
海未「……」
ことり「……」ペラッ
海未「……」
ことり「……」カタン
海未「……」
ことり「……」スタスタ
海未「……?」
ことり「……」スタスタ
…ガーッ
アリアトアシター
ことり「……」スタスタ
海未「???」
海未「……?」
海未「お、お友達は……?」
海未「こ、ことり!」タタタッ
ことり「……?」
ことり「あ、海未ちゃん」
海未「お、お友達は? 置いていっていいのですか?」
ことり「……」
ことり「うん、お友達は先にお店に行っててもらってるんだ」
ことり「私は今から向かうところなの」
海未「……」
海未「あ、あの……」
ことり「……?」
海未「わ、私、外からずっと見ていたのですが……」
ことり「……」
ことり「……え?」
ことり「……」
海未「……」
ことり「う……」
海未「……?」
ことり「海未ちゃんが悪いんだよ!」
海未「な、なぜそうなるんですか!?」
ことり「海未ちゃんが帰りたいでしょなんて言うから!」
ことり「私、遊ぶ気だったのに!」
海未「そ、そんな……」
ことり「あんな言われかたしたらこっちもむきになるよ!」
海未「こ、ことりはいつもいつも穂乃果ばっかりとくっついて!」
海未「私のことなどどうでも良いのでしょう!?」
ことり「海未ちゃんに言われたくない! 海未ちゃんだって!」
ことり「穂乃果ちゃん穂乃果ちゃんじゃない!」
ことり「第一、私が他の誰と遊べるの!?」
ことり「候補がいないよ!」
海未「……」
ことり「海未ちゃんも! 遊びたいなら遊びたいって言えばいいじゃない!」
ことり「こんな風に遠くから眺めてないで!」
海未「……」
海未(本当はトイレに行きたかっただけなんですけど……)
海未(さすがに言わないほうが良さそうですね……)
ことり「……」
海未「……」
ことり「カラオケ」
海未「……?」
ことり「いまから行くけど……」
海未「……」
海未「……ご一緒します」
ことり「……」
海未「……」
――――
――――――
海未「ことりはお昼ご飯食べたのですか?」
ことり「うん」
海未「そうですか、私も食べました」
ことり「ナポリタン」
海未「ふふっ……。そうです」クスッ
海未「ことりは何を食べたんですか?」
ことり「オムライス」
海未「大通りの二階の?」
ことり「……知ってるの?」
海未「……」
海未「ええ、まあ……」
おわり
――おまけ
穂乃果「お洒落なお店だねー!」
海未「ええ」
ことり「ここ美味しいんだよ」ニコニコ
穂乃果「ふたりは何にするか決めた?」
海未「私はオムライスを」
ことり「私はナポリタン!」
穂乃果「そっかー! じゃあ、私はハンバーグにしよう!」
穂乃果「すいませーん! 店員さーん!」
おわり
蛇足
にこ「え……、これって招待券じゃなくて優待券なんですか……?」
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