伊織「中卒の分際で今までよくも偉そうなこといえたもんね」
P「う、ううっ」
亜美「に、兄ちゃん、大丈夫だYO。亜美が勉強教えるからさ」
P「うううっ」
千早「……仕事さえきちんとしてくれるなら、別に経歴なんてどうでもいですけど」
響「じ、自分も学校行ってないから大丈夫だぞプロデューサー!」
P「か、完全に俺、バカにされてる……う、うわっー!!!!!」ダダダダッ
冬馬「……そんで俺の所に来たと」
P「お前ぐらいにしか相談出来ないんだよ……」
冬馬「別にいいんじゃねーの。お前の所の社長がいいって言ってんだろ」
P「いや、まぁ、と言うか清掃のバイトで765プロのビルに言ったら社長が「君のその笑顔にティンと来た!」
とか言い出して気がついたらPに……」
P「アイドルたちからは軽蔑の眼差しで見られるし、俺もうしにたい」
冬馬「別に仕事はちゃんとしてるんだからいいじゃねーか」
P「でもさぁ」
冬馬「俺はもう行くぞ。忙しいんだ」スタスタスタ
P「お、おいていかないでぇええええ」
雪歩「ぷ、プロデューサー」
P「ひっ」ビクゥ
雪歩「こ、こんな所で大声出してどうしたんですか……」サササッ
P(……前より避けられてる……)
P「う、うわぁあああああ」ダダダダッ
雪歩「あっ!」
P(アイドルたちに嫌われるなんて嫌だ……)
P(死んでやるっ!)
P「あっ」ズテーン
P「い、痛い……。体だけじゃなくて、心も」
P(あれ、今俺すごいイイ事言ったんじゃね?)
P「……とりあえず死ぬのは保留にしとこう」
あずさ「困ったわ~ここはいったいどこなのかしら」
P「あ、あずさん、また迷子に……」
あずさ「あっ、プロデューサーさん」ニパッ
P(く、くそっ、そんな笑顔に騙されないぞ……心の中では俺の事バカにしてるはず……)
P「……事務所ならそこを右に曲がって最初に見えるT字路を左に曲がってまっすぐ進めばつきますよ」
あずさ「助かります~。プロデューサーさんもこれから事務所に?」
P「……お、俺は、ちょっと天国まで、そ、それじゃさようなら!」ダダダダッ
あずさ「え?」
P(いいんだ俺なんか。俺なんか)キィキィ
美希「ハニーいたの!」
P「み、美希」
美希「探したんだから!」
P「さ、探さなくていいんだ……俺はね、ウジ虫なんだ。経歴も性格もね」
P「美希みたいにキラキラしてないんだ、俺」
P「どっちかというと、ドロドロしてる」
美希「なら美希の傍にいればいいの! きっとハニーもキラキラになると思うな」
P「そ、そうやって俺をからかっているんだな……」
P「う、うわぁあああああああ」ダダダダダッ
P「う、ううっ、社長からの着信が既に20件を超えている」
P「心配、してくれているのか?」
P「メールもこんなに……どんな内容なんだろう」ピッ
社長『今年のクリスマスについてなんだけれど、サンタとトナカイのコスプレどっちがいいと思うかね?』
社長『体調が悪いと音無くんから聞いたよ。そういうときは乾布摩擦をするといい』
P「ぜ、全然俺の心配してねぇ……」
P「第一乾布摩擦ってなんだよ……そんなんよりホッカイロのほうが体温まるだろ」
社長「ううむ、心配だ……」
音無「どうしたんですかそんなにソワソワして」
社長「彼の事だよ。いつも笑顔で、アイドルたちも随分懐いていたみたいだからね、彼を
失うのは痛手だよ」
音無「うーん、多分そのうち帰ってくると思いますけど。プロデューサーさんは異常なくらいポジティブが
取り得じゃないですか」
社長「そうだといいんだが……」
P「俺は、俺は……ううっ」ズルズル
P「餓死してやろうと思ったのに」ズルズル
P「腹減ってラーメン食っちゃってる……」ズルズル
貴音「らぁめんはやはり美味しいものですね」
P「うむ」
P「……ん?」
貴音「どうなされました貴方さま」
P「ううん、俺の見間違いかな」ゴシゴシ
貴音「何が見間違いなのですか?」
P「……疲れているのかな」
貴音「では早く休まねばなりませんね」
P「うん……」スタスタ
P「……今日は星空が綺麗だな……」
P「こんな日は、えいっ」バフッ
P「土手の草っぱらの上に寝転がるに限る」
P「少し肌寒いけど、なんかこう、良い気分になるな」
タッタッタッ
P(ん? ジョギングでもしてるヤツがいるのか?)
真「あれっ、プロデューサー? こんな所で何してるんですか」
P(真か……)
P「……別にっ」
真「風邪ひきますよ」
P「ひきたいんだよ、風邪。そんで俺肺炎になって死ぬの」
P「そんで生まれ変わって今度はもっとマシな人生送るんだ」
真「……僕たちのプロデューサーするの、そんなに、嫌、でした?」
P「……嫌じゃないけど、お前らは嫌だろ。俺がプロデューサーなのがさ」
真「少なくとも僕は嫌じゃないですよ」
P「嘘言わなくていいよ本当もう俺アレだからさゴミクズだからさ」
真「いつも一生懸命なプロデューサーがゴミクズなわけないじゃないですか」
P(……な、なんか恥ずかしい)
P「こ、この場から逃げたいっ!」ゴロゴロゴロ バチャン
真「あっ、プロデューサーが川に落ちたっ!!!」
P「ぶい~っくしゅ!」
P「か、風邪ひきたいって言ったけどさぁ」ブルブル
P「じ、実際、正直、引きたくない……」ヘクション
P「か、川から上がって、か、からだが、キンキンに冷えて」ブアックション
やよい「プッ、プロデューサーがずぶぬれです」
P「や、やよい」
やよい「風邪引いちゃいます! 服かわかさないと!」
P「あ、あぁ、いいよ別に」ブルブル
P「俺、ほら、修験者目指そうとしてるから」ブルァックショイ
やよい「うっうー! 早くくるです!」ギュッ
P「お、おいっ」
P「こ、ここって」
長介「姉ちゃんが男つれてきた……」
ワイワイ ガヤガヤ
P「やよいの家か…・・・」
P(こ、このアットホームな感覚、なんだか、背中がかゆくなってくる……スマン、やよい)
ダダダダダッ
「アーッ ニゲター」
P「はぁぁあああ、上着脱いだままやよいの家から出てきたから、すごい寒い」
P「シャツもズボンもずぶ濡れのまま……」
P「ブァアアアックショイ」
律子「こんな時間に何しているんですか?」
P「り、律子、いや、律子さん」
律子「……どうしたんですかいきなり」
P「いや、ほら、俺、アレじゃないですか。クズでゴミで、ほら、明らかに人類の最底辺のウジ虫毛虫みたいな」
律子「本当にそうならもうクビになっててもおかしくないんじゃないですか」
P「えっ?」
亜美「いおりんさすがに言いすぎっしょ」
真美「兄ちゃん凄い落ち込んでたYO」
伊織「だ、だってアイツいつも私の事デコりんとか言うんだもん。ちょっと仕返ししただけじゃない」
伊織「大体アイツがあんな事くらいで落ち込むわけないわよ」
真「さっき川に身投げしてたよ……」
雪歩「発狂しながら走っていくの見ちゃいました……」
貴音「疲れている、と申していました」
美希「ハニー、凄い追い込まれていたの……」
あずさ「天国に行くとかも言ってたような~」
千早「それに、何か凄い複雑な事情がある様よ」
伊織「え?」
千早「さっき社長から聞いたのだけれど、プロデューサー、母子家庭だったらしくて、でもプロデューサーが
中学生の時に母親が男を作って出て行ってしまって、高校に行こうにも行けなかったとか……」
亜美「兄ちゃんかわいそうだYO……」
真美「うん……」
響「い、いつもニコニコしてるプロデューサーにそんな過去が……」ウルウル
真「プロデューサー……」
雪歩「苦労した人は表情に出さないって言いますけど……」
伊織「な、何よっ……」
小鳥「……きっと、大変な人生だったのね。頭を下げることをなんとも思わないようだったし」
千早「そういえば何か問題が起こると真っ先に土下座してましたよね」
真「『悪いのはアイドルじゃありません、俺です』とか、言いながらね」
亜美「亜美たちの為に兄ちゃん、そこまでしてくれるのに」
真美「いおりんときたら……」
伊織「わ、わたしはっ……そりゃ、ちょっとは悪い事言ったかなとは思うけど……」
響「ちゃんと謝ればプロデューサーもきっと許してくれるさ」
P(結局律子の家で服をかわかして貰ってしまった……)
P(さて、そろそろ事務所に戻るか……さすがにもう皆いないだろう。死ぬにしても、辞めるに
しても仕事だけはキッチリしてからにしよう)
ガチャ
小鳥「あっ」
亜美「兄ちゃんだYO!」
美希「ハニー復活したの!」
真「風邪引きませんでしたか?」
P「おま、えら……」
P「ごめん」バタン
P(皆の前に出れない……俺は、俺は……)
P「俺は、駄目プロデューサーなんだから……中卒だし」
真「かなり気にしてるね」ボソボソ
伊織 ギクッ
ごめんねるわ
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