和「催眠音声」(199)
+B1n1ZzVPの代行
和(私がデザインしたキャラクター「のどっち」が、一部の人間のあいだでアイドル化されていることは知っていましたが……)
和(まさか卑猥な同人誌が作られるほどとは……)ズーン
和(しかもコレは……のどっちが他の有名女性アバターに……)
和(汚らわしい雄と絡まされない分、助かったと言えますが)
和(これは……あんまりでは……)カチ
和(…………)カチ カチ
和(……)カチ
和「アリで……はっ!!」
書き忘れてた
咲「催眠オナニー?」
の続きです
和(いけません!! こんなことは許されては……!)
和(…………)
和(正確な批判を行うためには、やはり最後まで目を通すことも必要ですね)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和(まったく、なんてハレンチな!)
和(そもそも私はされるよりする方が……)
和「違います! そういう話じゃありません!!」バンッ
和(くっ……こんなことは許されていいはずがありません!)
和(製作者は……『サークル玉露』)
和(サイトのURLが記載されていますね)
和(ここを通じて抗議することにします!)
和(……)カチカチ
和(のどっちの本だけでなく、他の同人誌もたくさんありますね)
和(百合同人誌を専門としているサークルのようですが……)
和(『束縛レイプ! タチと化した部長!』)
和(『タカミの異常な愛情~または私はいかに心配するのをやめてあわいちゃんを愛するようになったか~』)
和(『おもち職人はおせんべいの夢を見るか』)
和(…………)ゴクリ
和「いけません……見たいなどと思ってしまっては……」
和(しかし、敵を知り己を知れば100戦危うからずと言いますし……)
和(ここは相手の手の内を知るためにも……)
和(そうなんです、これは極めて合理的判断であって、決して欲望に流された行為ではありません)
和(DL販売をしているようですね……)
和(まずはIDを……)
~翌日~
――サークル玉露 チャットルーム――
<<のどっち さんが入室しました>>
D:のどっち!?
八十八:本物ですか?
のどっち:こんばんは、本物ののどっちです
八十八:待ってください。本当にのどっちであるなら、地鳳のプロフィールに、私たちがわかるようなサインを書き込んでみてください
のどっち:わかりました
D:これって、やっぱりあの件ですか……?
八十八:たぶん……いや、間違いないと思う
D:Clearさんに伝えたほうがいいんじゃ
八十八:サークルの責任者は私です
八十八:この件は私が何とかします。彼女に伝えるのはその後でいいでしょう
D:……わかりました
のどっち:これで問題はありませんか
八十八:プロ欄に『@玉露』ですか。本物のようですね
八十八:疑って申し訳ありません。どのようなご用件かは、わかっているつもりです
のどっち:あなたのサークルが先月発行した『吾輩はネコである』についてお話したいことがあるます
八十八:本当に申し訳ありませんでした
八十八:サークル内だけで回すつもりだったのですが、こちらの不手際でネット上に流出してしまいました
八十八:もちろん、サークル内だけだったとしても、あのようなモノを作られることは不愉快だということもわかっています
八十八:今回の件の非は全て私にあります
八十八:こちらに出来る限りの償いをさせていただきたいと思います
のどっち:人の話は最後まで聞くべきだと思うのですが
八十八:はい、申し訳ありません
のどっち:別に私は、あなたがたを責めるために来たのではありません
八十八:え?
のどっち:ただ、私がネコであるかのような表現を、次回からは控えていただきたいということを伝えに来たのです
のどっち:私はあくまでバリタチですので
八十八:えあの、え?
のどっち:可能なら『異常な愛情』のあわあわくらいの描写でお願いします
D:なんかすごいことになってるんでー
八十八:あの、のどっちさんは私たちの同人誌を?
のどっち:とりあえず読ませていただきました
のどっち:貴女方の繊細な絵と、登場人物のセリフ回しは非常に素晴らしいものだと思います
のどっち:しかし、重大な欠点があるのもまた事実です
八十八:そ、それは?
のどっち:貴女方は『百合』の“ゆ”の字も理解していないということです!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
のどっち:分かりましたか? これが百合の心得です
のどっち:これを理解していない人間が、百合同人を描くなど言語道断!
のどっち:さながら蜂蜜の皮をかぶった豚の骨髄のようなものです
八十八:私が、間違っていました
D:目が覚めるような気分なんでー……
のどっち:貴女方の技術には私も大いに期待しています
のどっち:技術すらないサークルが私のキャラクターの創作物を作っていたならば、私も容赦しなかったでしょう
のどっち:しかし、貴女方には未来があります。可能性があります
のどっち:期待していますから、是非頑張ってください
八十八:ありがとうございます
D:ご指導ご鞭撻、ありがとうございました
のどっち:では、健闘を祈ります
八十八:待ってください!
のどっち:? なんでしょう
八十八:のどっちさんの百合にかける情熱、感動しました
八十八:同時に私たちの至らなさも、身にしみて痛感しました
八十八:もしよろしければ、私たちのサークルに参加して、ストーリーの監修をしていただけないでしょうか
のどっち:え?
八十八:厚かましいことはわかっています
八十八:しかし、のどっちさんのご指摘のとおり、私たちは百合に関して深い見地があるわけではありません
八十八:言うなればこの道の素人
八十八:ぜひ私たちにご指導を!
D:私からもお願いします!
のどっち:わかりました……
のどっち:貴女方の熱意、十分に伝わりました
のどっち:その役目、引受けさせていただきましょう
八十八:ありがとうございます!!
のどっち:ともに百合を広めるための啓蒙活動を進めていきましょう
八十八:はい! よろしくお願いします!
~数ヶ月後~
―skype―
鸚哥『そういえばのどっちさんはもう卒業ですよね』
八十八『やっぱり麻雀部の有名な高校に?』
和「いえ、私は友人と一緒の高校へ行くつもりなので、麻雀部のことは良くわからないんです」
和「そもそも麻雀部がないところかもしれません」
八十八『のどっちさんほどの人がインハイに出ないというのは、もったいない気もしますが』
和「私は趣味として麻雀を続けていくだけで十分ですので」
鸚哥『ちょっと話がそれちゃいましたが、次の新刊の話でしたね』
鸚哥『私は監禁調教性欲処理器系の先輩後輩モノがいいと思うんですが』
D『でもそれ、半年前に出したのと若干かぶりそうですけど』
八十八『私はこのあたりで一度純愛系に回帰してみてもいいと思いますが』
和「以前からやりたいと思っていたんですが、3角関係をこじらせたドロドロなやつを出してもいいと思うんです」
八十八『いいですね、具体的な展開とかはできていますか?』
和「いえ、そこまでは」
和「ですが、簡単な展開くらいなら」
和「幼馴染に恋をしていた主人公が、ある日血の繋がった姉と幼馴染がキスをしているところを目撃してしまうとか」
和「そこから鸚哥さんの好きな展開に持っていくこともできると思いますし」
D『あー、いいですねー』
鸚哥『背筋が震えますね』
鸚哥『じゃあその方向で私はプロットを作ってみます』
和「よろしくお願いします」
D『じゃあ私はサークル内用の作品の仕上げにかかるのでこのへんで』
鸚哥『じゃあ私もプロット作りにかかりますね』
八十八『お疲れ様でした』
和「おやすみなさい」
D『おやすみなさい』
鸚哥『ではまた』
<<D さんが退室しました>>
<<鸚哥 さんが退室しました>>
八十八『本当にありがとうございます』
和「いきなりどうしたんですか?」
八十八『リョナ専だった鸚哥が、最近まともな道にも興味を示したこと』
八十八『Dが創作活動に本格的に取り組むようになったこと』
八十八『そのほかのメンバーも、のどっちさんのおかげで生まれ変わったように感じられます』
八十八:尭深
D:でー子
鸚哥:笑顔を忘れたトリッピー
お茶淹れてきます
八十八『うちのサークルが、今や押しも押されぬ有名サークルに』
八十八『壁サークルさえ夢ではないと思える程の躍進を遂げられたのも、ひとえにのどっちさんのおかげです』
八十八『いくら感謝してもしきれません』
和「何を言っているんですか、ここまで規模を拡大させられたのも、みなさんが元から高いポテンシャルを持っていたからですよ」
和「私はただ、その巨大な力を向ける方向を調整しただけに過ぎません」
和「誇ってください、みなさんの努力と技術を」
八十八『…………ありがとうございます』
和「ではそろそろ私も失礼させていただきます」
八十八『あ、ちょっといいですか』
和「なんでしょうか?」
八十八『実は最近、うちのサークルで新たに音声コンテンツを出そうと考えているんです』
和「音声……ですか」
八十八『単刀直入に言いますと、のどっちさんにぜひそのコンテンツの声優を担当していただきたいのです』
和「!? 私がですか?」
八十八『こういう場でのどっちさんとお話しするようになってから、その声質の素晴らしさをなんとかして活かせないかと考えていました』
八十八『今回の企画も、のどっちさんの声を活かすために考えたんです』
八十八『どうでしょう、受けていただけないでしょうか』
和「……その、コンテンツの内容をお聞きしないと、なんとも」
八十八『のどっちさんは催眠音声というものをご存知ですか?』
和「催眠音声?」
八十八『簡単に説明しますと、聞くことによってリラックスできる音声コンテンツです』
八十八『催眠と銘打ってはいますが、実際はヒーリング・ミュージックのようなものだと思っていただいて構いません』
和「それを私にやってほしいということなんですね」
八十八『はい』
和「そういうものなら引き受けてもいいんですが、どんなことを話せばいいのか……」
八十八『文章はこちらで考えます』
八十八『それを、指示に従って音読していただけるだけで結構です』
和「……わかりました、とりあえず原稿が完成したら送ってください」
八十八『! ありがとうございます!』
和「ですが、私の声に果たしてそれほどの魅力があるのでしょうか?」
八十八『のどっちさんの甘い声は、確実に聴く人の心をつかみます』
八十八『それに、内容に関しても、うちのサークルには心強いメンバーがいますので』
和「どなたですか? 文章というと、玄米茶さんあたりでしょうか?」
八十八『いえ、のどっちさんはおそらく会ったことがないと思います』
八十八『ほとんどサークルの会合に顔を出さない“ロコモコ丼”という方がいるのですが』
八十八『その人がとても人の心に訴えかけるような台詞回しを書くんです』
和「そうなんですか……それは少し楽しみですね」
八十八『とにかく、近いうちに彼女に頼んで原稿を仕上げてもらうので、それからまた具体的なことを話しましょう』
和「わかりました」
八十八『では、今日はこれで失礼します』
和「はい、おやすみなさい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和「音声コンテンツ……声優ですか……」
和(今まで私は本当に口先だけの支持を飛ばす存在として、サークルにお世話になっていました……)
和(高校に入ってからの趣味をどうするか悩んでいましたが、これを機に本格的に創作活動に力を入れても良いかもしれませんね)
和「ちょっと、楽しみになってきました……ね」フフ
~1週間後~
和「なるほど……こういうモノなんですね」
八十八『どうですか? ロコモコさんの文章は』
和「素晴らしいと思います。ただ、私がこの文章の魅力を引き出して、聴く人を安眠させられる演技が出来るかどうか……」
八十八『のどっちさんなら大丈夫ですよ! 声質は抜群、要領もいいですし、すぐにマスターできます』
和「わかりました、とりあえず一度やってみましょう」
和「じゃあ、レコーディングをしてみますので、明日また連絡を差し上げますね」
八十八『お待ちしております』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和(さて……と)
和(ロコモコさんの文章……この素晴らしさを表現するためには、まず私が誰よりもコレを理解しなくてはならないはずです)
和(まずはじっくり読み込んで、そしてこのセリフを話す人が、どんな思いなのかを汲み取らなければいけません)
和(大変な作業になりそうですが……)
和(ワクワクしますね)
~翌日~
八十八『すごいです……まさか初めてでここまでの完成度とは……』
和「そ、そうでしょうか?」
D『別にベッドの上でリラックスして聴いてるわけでもないのに、眠りそうになっちゃいましたよ……』
八十八『このままいけば、本物の催眠まで到達できそうな勢いですね』
和「そんな……買いかぶりすぎですよ」
八十八『買いかぶりかどうかは、お客さんの反応を見れば分かります』
八十八『早速DLサイトに登録しておきましょう』
八十八『とりあえず無料配布という形で良いでしょうか?』
和「ええ、私はそのつもりでしたので……」
D『これは結果が楽しみなんでー!』
和(まぁ、そう上手くはいかないでしょうね……)
~3日後~
八十八『どうですか? この結果は』
和「……こんなオカルトありえません」
D『紛れもない真実ですよ、のどっちさん!』
和(既に50件を超える☆5つのレビュー……)
和(ダウンロード件数は200を超えている……)
鸚哥『これならすぐに有料版ば出してもいけそうな気がするけんね』
和「いえ、それはさすがに時期尚早では……」
八十八『確かに、慎重になるべきだとは思いますが、有料版を出すことはほぼ決定したといってもいいですね』
D『早速準備に取り掛かるんでー!!』
鸚哥『次は私に原稿ば書かせてもらえませんか?』
八十八『いえ、とりあえずしばらくはロコモコさんの文章で知名度を上げていきましょう』
八十八『変化球はのどっちのイメージがある程度固定してからの方が、いいスパイスになると思います』
和「あの、本当にいいんでしょうか」
D『何がですか?』
八十八『のどっちさんが戸惑うのは仕方ないことだと思いますが、今は素直に結果を受け入れてください』
八十八『いずれ、あなた自身の能力に納得できる日が来るでしょう』
八十八『あなたの声には、力があります』
八十八『そしてその力で、癒されている人が存在するということは、紛れもない事実』
八十八『差し出がましいようですが、あなたはその力を人々のために役立てる義務があると、私はそう思います』
和「……ノズレスオブリージュだと、そう言いたいわけですね」
八十八『無礼は重々承知しています』
和「…………そうですね、今後も好評を得られるようでしたら、この活動に本腰を入れましょう」
八十八『どの言葉を待っていた!』
D『よーし、新しいコンテンツ、本格的に始動するんでー!』
鸚哥『楽しみたい!』
~初夏~
和「今回の音声も好評だったみたいで良かったです」
和「これで枕を高くして眠れますよ」
八十八『心配しなくても、大丈夫ですよ』
八十八『そういえば、高校の方はどうですか?』
和「今まで隠していたんですが、実は最近高校生活の方も充実していて」
和「学校に行くのが楽しみで仕方ないんです」
八十八『順風漫歩といったところですか、良かったですね』
和「はい♪」
八十八『そういえば、私がよく利用している地鳳のチャットで、のどっちさんの音声を布教してきましたよ』
和「そうなんですか?」
八十八『はい、今までほとんど自慰をしたことがないというウブな女の子に、のどっちさんの傑作催眠オナニー集を』
和「ちょ!? いきなりなんてものを勧めてるんですか!!」
アカン
×ノズレスオブリージュ
○ノブレスオブリージュ
×どの言葉を待っていた
○その言葉を待っていた
眠いわ……
八十八『ですが、今一番人気はなんといってもソッチ系の音声じゃないですか』
八十八『全国の乙女の子宮を掴んで離さない、のどっち謹製催み』
和「そういう言い方はやめえてくださいよ!?」
八十八『ウフフ、冗談……ってわけでもないんですけどね』
八十八『知り合いにも、はまってしまったという人がいるくらいですし』
和「ああああああ……」
八十八『あれをしゃべっている本人がこんな反応をするとは……』
八十八『相変わらず変なところで純情ですね』
和「……なんというか、アレを録っているときはトランス状態になっているといいますか」
和「とにかく、終わったあとにものすごい羞恥心が襲ってくるんですよ」
八十八『でもやめられないんですよね』フフフ
和「…………この話は終わりにしましょう」
八十八『じゃあ、次の音声の打ち合わせをしましょうか』
和「この流れでそれを……そうですね」ハァ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和(昨夜は議論が盛り上がって、よく眠れませんでした……)
和(でも、学校を休むわけには行きませんし……)
和(ん? あれは……)
和「おはようございます、咲さん」
咲「はひぇ!?」ビクン
和「えぇ!?」
和(ど、どうしたんでしょうか……)
咲「あ、の和ちゃんおはよう!」
和「お、おはよう……ございます」
和(明らかに挙動不審……昨日まではなんともなかったはずですが……)
和「あの、大丈夫ですか?」
咲「だ、大丈夫だよ! それより早く学校に行こ!」
和「はぁ……」
和(本当に大丈夫なんでしょうか……)
―帰宅路―
和「今日はなんだか調子が出ませんでしたね、やっぱり朝から具合が悪かったんじゃ……」
咲「そんなことないよ、今日はたまたま憑いてなかっただけで」
和「でも、須賀くんにあんな振込み方をするなんて……」
咲「た、たまにはそういう日もあるよ」
和(まさか、とは思いますが……)
和「……もしかして、須賀くんに花を持たせてあげようとわざと手加減したとかじゃありませんよね?」ジー
咲「え!? そんなことないよ!?」
和(それならいいんです、しかしやはり怪しいですね)
和「本当ですか? だとしたら朝から様子がおかしかったのはなんでですか?」ジー
和「今日の咲さんは、なんだか怪しいですよ?」ジー
咲「うっ」
和(こんなふうに隠し事をされるというのは、気持ちいいものではありませんね……)
和(胸のうちがモヤモヤします……)
咲「あ! もうこんなとこ来ちゃったね! バイバイ和ちゃん!」タタタ
和「あ! 咲さん!」
和「逃げられました、かね」ハァ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和「というわけで、友人の様子がおかしいんです」
D『あー、それはきっとあれですよ』
D『のどっちさんに恋してるに違いないんでー!』
和「そういえば八十八さん、遅いですね」
D『スルー!?』
和「またどこかで油を売っているんでしょうか」
D『最近のどっちさんの私に対する愛情が感じられないんでー……』シクシク
八十八「こんばんは」ピコン
和「あ、こんばんは」
D『八十八さーん! のどっちさんが私のこといぢめるんでー!』
八十八『のどっちさん、彼女、堕ちたみたいですよ』
D『メゲるんでー……』
和「彼女といいますと?」
八十八『昨日私が話した、あの』
和「あぁ……堕ちたってどういうことですか?」
八十八『とうとう魅惑の悦楽にその身を落としてしまいそうということです』
和「八十八さん……」
八十八『いいじゃないですか、本人も望んでやっているようですし』
八十八『気持ちよくなりたいと思うのは自然なこと、そうですよね?』
和「……そもそも、そういう音声を作っている私が文句を言うのもおかしな話ですね」
和「もう何も言いません。私は今できる最高のパフォーマンスをすることに専念します」
八十八『それでこそのどっちさんです』
八十八『そういう職人気質から生み出される作品だからこそ、Dちゃんも虜にするんでしょうね』
D『ちょ!?』ガタガタッ
和「……Dさん?」
D『あ…………でー…………』
<<D さんが退出しました>>
和「今日はよく逃げられる日ですね……」
~放課後~
―麻雀部部室―
和(どうしたんでしょう……咲さんが一層おかしくなっています)
和(しかもなんだか、私の声に反応して挙動が……)
和「あの、咲さん?」
咲「はひぃ!?」ビクン
和「や、やっぱり送っていきますから、帰ったほうが……」
咲「そそうだね帰ったほうがいいよね!」
咲「でも、私一人で帰れるから大丈夫だよ!」
咲「すすすみませんお先に失礼します!!」
和「…………また、ですか」ズーン
久「なんか、昨日といい今日といい、咲の様子がおかしいわね」
和「そうなんです。でも原因がさっぱりで……」
まこ「こういう時は整理ができるまでほっといてやるんもひとつの手段だとおもうんじゃがな」
久「そうよね、プライベートな話題だったら、私たちには口出しできないし」
和(咲さん……)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和「はぁ……」
鸚哥『どげんしとった?』
和「いえ、最近友人の様子がおかしくて……」
鸚哥『のどっちさんも!?』
和「も、というと、鸚哥さんも周りに様子がおかしくなった人が?」
鸚哥『うん……最近というか今日やったんだけど、部長の様子が……』
和「お互い、大変ですね」
鸚哥『本当に……』
~数日後~
―買い出し経路―
和(最近になって咲さんは普通に話してくれるようになりましたが、まだどこかよそよそしいですね)
和(一体何があったのか、そろそろ問い詰めたいところですが……)ハァ
優希「のどちゃん、咲ちゃんがおかしいのが心配なのはわかるけど、のどちゃんまで沈んでるのはマズイじぇ」
優希「こういう時こそ前向きに! だじぇ」
和「ゆーき……そうですね」
優希「む! あそこに見えるは」
優希「おーい!」
京太郎「お? なんだ、買い出しか?」
優希「お前にメールしたのに返事がないから、仕方なく私たちが買い物に行こうとしていたのだ!」
京太郎「まじか? ……ほんとだ、メール来てる」
優希「まったく! これだから駄犬は!」
和(これは、お邪魔かもしれませんね)フフ
和「ゆーき、須賀くん、申し訳ないのですが、おふたりに買い物をしてきてもらっても良いでしょうか」
和「ちょっと目を通しておきたい牌譜が溜まっているので」
優希「うむ、いい荷物持ちもいることだし、存分に練習に励むといいじぇ」
京太郎「オイコラ」
和「ではお願いしますね」
―部室―
ガチャ
和「え?」
和(テーブルの上に置いておいたエトペンが……いない)
和(どういうこt……!?)
ハァハァ アッ!
和(こ、この声は……)
和(ベッドの方から……ですよね?)ソー
和「ゆーき、須賀くん、申し訳ないのですが、おふたりに買い物をしてきてもらっても良いでしょうか」
和「ちょっと目を通しておきたい牌譜が溜まっているので」
優希「うむ、いい荷物持ちもいることだし、存分に練習に励むといいじぇ」
京太郎「オイコラ」
和「ではお願いしますね」
―部室―
ガチャ
和「え?」
和(テーブルの上に置いておいたエトペンが……いない)
和(どういうこt……!?)
ハァハァ アッ!
和(こ、この声は……)
和(ベッドの方から……ですよね?)ソー
スッ
和「!!??」
和(さ、咲さんが……お、オナニーを!?)
和(し、しかも私のエトペンに顔をうずめて……)ゴクリ
和(それにあれは……イヤホン?)
和(も、もしかして……催眠音声を聞きながら……?)
咲「のど……ちゃ……」ハァハァ クリクリクチュクチュ
和(え!? い、いま「のどかちゃん」って……)カァ
和(もし催眠音声なら……もうちょっと近づいても……)ソロー
咲「ぁ……のどかちゃん……」ボヤー
和「あっ!」
和(め、目が合って……!)
咲「のどかちゃん……のどかちゃん……」クチュクチュ
和(き、気づいて……ない?)ゴクリ
和(咲さん……咲さん……)ハァハァ
和(…………)
和「気持ちいいですか、咲さん……」クチュ
咲「うん……きもちいよぉ……」クチュクチュ
和(咲さん、かわいい……)クリクリ
咲「入れてぇ、もっと気持ちよくしてぇ」クチュクチュ
和「かわいい……かわいいですよ咲さん……」クリュクリュ
咲「はぁっ……イっちゃう……イっちゃうよぉ」
和「愛してますよ……咲さん……」
咲「ああ、のどかちゃああんっ!」ビクビク!
咲「ぁ……」カクッ
和「……ぁ」ハァハァ
和(!!)
和「わわ、私はなんてことを!?」
和(は! 大きな声を出しては……)
咲「ZZZ」スゥー スゥー
和(それにしても……咲さんが私の名前を呼びながら……)カァ
和(何の音声を聞いていたのでしょうか……)
和(ちょっと確認するだけなら、見てしまっても構いませんよね……?)
和「! このタイトルとアーティストは……」
和(咲さん……咲さんが私の声でオナニーを……)ゾクゾクッ
和「咲さん……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
咲「ふぇ!!」ガバ
和(起きたみたいですね)
和「起きましたか、咲さん」
咲「の、和ちゃん!?」
和「あんまり気持ちよさそうに寝ていたので、そのままにしておいたんですけど……」
和(ふふふ、焦ってますね……)ニコニコ
咲「その……私、何か変じゃ……」
和「? 何がですか?」
和(バレてないと思ってる咲さんかわいい!)
咲「そういえば優希ちゃんは?」
和「途中で須賀くんと出会って、いっしょに買い物に行くことになりました」
和「優希の邪魔をするのも気が引けるので、私は先に帰ってきたんです」
咲「そうだったんだ……」
和「それにしても、咲さんも好きなんですか?」
和(そんなに、私の声が?)
咲「ふぇ!? ななな何が!?」
和「だって、しっかり抱きついて離れなかったんですよ? エトペンから」
咲「あ……ごごめんなさい!」
和「ふふ、別に構いませんよ?」
咲「と、とりあえず麻雀しようか!」
和「え、でも」
咲「きっとすぐに京ちゃんと優希ちゃん戻ってくるし、それまでネトマで時間潰そう! ね!」
和(今日はこのへんでやめておいてあげましょうか)
和(まだまだ時間は、たぁっぷりありますから、ね♪)
和「それもそうですね、じゃあパソコン起動しますよ」
咲「あ、うん。ありがとう」
和(本当に可愛い咲さん……)フフフ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和「こんばんは」ピコン
八十八『あ、こんばんは』
和「すみません、突然なんですが、以前私の催眠音声を紹介したという人のことについて教えていただけませんか?」
八十八『え?』
和「ちょっと、熱心なファンについて知っておきたくて」
八十八『……? まあ、構いませんが……』
八十八『ハンドルネームは“Bloom” 地鳳でプレイしている高校生だそうです』
八十八『麻雀部に所属しているらしいですね』
和「その、なにか麻雀についてのことは話してませんでしたか?」
八十八『そうですね、リアルで麻雀をやるときは嶺上開花をたくさん出せるとか……』
八十八『地鳳は部長に言われて最近やり始めたそうです』
和(Bloom……咲く……嶺上開花……間違いありませんね)
和「……ありがとうございます」
和「もう一つ、お願いがあるのですが」
八十八『のどっちさんにこんなにお願い事されるなんて珍しいですね、いいですよ』
和「実は……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―サークル玉露 チャットルーム―
<<Bloom さんが入室しました>>
Bloom:あの、ここに来ればのどっちさんが居るって聞いたんですけど……
のどっち:はい、初めての方ですか
Bloom:あの、私聞いたんですけど本当ですか?
のどっち:すみません、何の真偽を問われているのでしょうか
Bloom:あ、すいません!
Bloom:その、今なら音声のリクエストを受け付けてくれるって、
のどっち:はい、サークルメンバーの紹介であるなら
のどっち:どなたの紹介でいらっしゃったんですか?
Bloom:八十八さんの紹介です
のどっち:わかりました、そのリクエストお受けしましょう
のどっち:どんなものをご所望ですか?
Bloom:その、できれば、えっちなのおおねがいしたいんえすけおd
のどっち:落ち着いてください、大丈夫ですから
Bloom:すいません……
のどっち:そっち方面といっても、いろいろなパターンがあるので、そういうことも聞いておかないとBloomさんに満足していただけるモノを作れないのですが……
Bloom:えっと、ここでのことは八十八さんには
のどっち:大丈夫ですよ、お望みでしたら八十八には漏らしませんので
Bloom:あの、電車の中で痴漢される音声をお願いしたいんですが
のどっち:痴漢プレイですか……
Bloom:やっぱりだめですよねすいませんごめんなさい
のどっち:待ってください、別に問題があるわけではありませんし、それくらいなら作りますよ?
Bloom:ほほんとうですか!
のどっち:はい、大丈夫です
のどっち:もっと細かい指定もできますが、どうしますか?
Bloom:えっと、名前を指定してもらうことってできますか
Bloom:呼んでもらいたい名前なんですけど
のどっち:構いませんよ
Bloom:あの「さきさん」って、呼びかけるようなものを
のどっち:さき……Bloomだから咲、ですか?
Bloom:あの別に私の名前と関係あるわけじゃ
のどっち:ふふ、分かりました
のどっち:ご注文は以上でよろしいですか?
Bloom:はい、お願いします
のどっち:では、完成したら八十八経由でパスワードを教えますので
Bloom:あの、一つ質問があるんですけど
のどっち:なんでしょう?
Bloom:その「のどっち」っていうHNは
のどっち:ああ、これはネットアイドルみたいな麻雀プレイヤーからお借りしたもので
のどっち:本当は良くないんでしょうけど、今のところこれで問題は起きていないので
Bloom:そうだったんですか、ありがとうございます
のどっち:では、楽しみにしててくださいね♪
Bloom:ははい!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
和(ふう……これで確定ですね)
和(Bloomさんは咲さんで、間違いありません)
和(そうとわかれば、さらに事態を前進させましょう)
和「待っててくださいね、咲さん……」
~1ヶ月後~
―地鳳チャットルーム―
竜騎士:何か最近、Bloomが元気そうやね
八十八:満たされてるから
Bloom:まぁ否定はしませんけど
末:何事も、自分の欲望に忠実なんが一番ですよ
亀甲:そのとおり
竜騎士:あんたらはもうちょっと自重せなあかんやろ
八十八:それにしても最近のBloomさんの進歩は目覚しいですよ
Bloom:進歩……なんですかね
Bloom:あ、もうこんな時間
Bloom:お先に失礼します
竜騎士:あんまりハッスルし過ぎんようになー
<< Bloom さんが退室しました>>
末:ほな、私も
亀甲:あ、じゃあ私も
<<末 さんが退室しました>>
<<亀甲 さんが退室しました>>
八十八:最近、あの二人は出るとき足並みを揃えますよね
竜騎士:ダークサイドに堕ちてしまったんや……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
咲「あ……ふ……」ハァハァ
咲(のどっちさんにリクエスト受けてもらえるようになってから、すごい充実してるよぉ……)
咲(それにしても……本当に和ちゃんとそっくりだよね……)
咲(…………決めた)
咲(いつまでもはっきりしないのは嫌だし、明日聞いてみよう!)
咲(聞き方を考えれば、大丈夫だよね、多分……)
~部活後~
―通学路―
和「じゃあまた来週会いましょう」
咲「…………あ、あのね」
和「え?」
咲「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど……」
和「……なんでしょう」
咲「あの……その……」
和「…………私の部屋にきますか?」
咲「ふぇ?」
和「そこならゆっくり話が出来るでしょう?」
和「さ、行きましょう」グイ
咲「あ、のどちゃ……」
―和部屋―
咲「…………」モジモジ
咲(うう、ベッドに座らされちゃった……)
咲(こ、ここで和ちゃんが毎晩寝てるんだよね……)
咲「……っ」ゾク
和「それで……咲さんは私に何を?」
咲「あ……その、和ちゃんて……」
咲「あの……その……」モジモジ
和「……」
咲「……ううん、やっぱりなんでもないよ」
咲「ごめんね、変なこといっちゃt」
咲「きゃ!」ドサ
和「咲さん……」
咲「のの、和ちゃん!?」
和「そんなに気持ちよかったんですか?」
和「私の声で……オナニー……するの?」ボソッ
咲「……っ!!」ゾクゾク
咲「や、やっぱりあれ……和ちゃん……だったの?」
和「うふふ、いつ気づくのかと思ってたら、全然聞いてこないんですから……」
和「待ってたんですよ? 咲さんが声をかけてくれるのを……」フゥ
咲「あぁ……!」ビクンッ
和「ねぇ……気持ちよかったですか?」スー
咲「あっ……気持ち……良かったよぉ……」ゾクゾク
和「ふふ、咲さんは、同級生の声をオカズにオナニーしちゃう、変態さんだったんですね?」スルッ
咲「ああっ!そ、そんな……」ビク
和「しかも、リクエストしてくるのは痴漢とか、焦らしプレイとか……」スリスリ
和「咲さんがマゾヒストだったなんて……」カリッ
咲「あああぁっ!!」ビクンッ
和「乳首も、私の指示通りにいじってたみたいですね……」コリコリ
和「とっても敏感になってますよ?」クリクリ
咲「あっ! あっ! だって……ひゃぁ!」ガクガク
和「下もこんなに……ふふ、かわいい」クチュ
咲「のどかちゃ……のどかちゃあん!」ビクビク
和「朝までたっぷり可愛がってあげますよ」
和「でも、1回もイカせてあげませんからね?」
和「ずぅっと、焦らしてあげますから、たくさぁん、可愛く鳴いてくださいね?」
咲「そんなぁ……ひどいよぉ……」ゾクゾクゾク
和「だって、好きなんでしょう?」
和「ひどくされるの、が♪」
槓
八十八『こんばんは』
和「あ、どうもこんばんは」
八十八『調子いいみたいですね、彼女と』
和「うふふ……おかげさまで」
八十八『でも、のどっちさんのおかげで、向こうも開発されすぎちゃったみたいですよ?』
和「はい?」
八十八『なんでも、のどっちさんの家から帰ってから、また催眠オナニーしてるみたいです』
和「……そう、なんですか」
和「ま、まぁデザート感覚で私の声を使っていただけるなら……」
八十八『それが……最近他の催眠音声を作っているところにも興味が出てきたみたいで……』
和「なんっ!!??」ガタン
八十八『KO-KOスタジオとか、遠野通信とか……』
八十八『そう言うところの音声も試そうとしてるみたいで……』
和「……ふ、ふふふふ」
八十八『のどっちさん?』
和「そうですよね、まだお腹がすいてるんだったら、デザートが欲しくなりますよね……」
和「デザートなんかいらないくらい、見たくもないってなるくらい、メインディッシュを食べさせてあげないといけませんね……」フフフフフフフ
八十八『…………南無』ボソ
もいっこ槓
咲(きっと、八十八さんはさっきのことを和ちゃんに告げ口するはず……)
咲(特に口止めもしなかったし、あの人の性格を考えるとほぼ確実)
咲(そうすれば和ちゃんは、きっと私がそんなことをする元気もなくなるくらい)
咲(たっくさん、いじめてくれるはず♪)ゾクゾクッ
咲(えへへ……楽しみだなぁ……和ちゃん♪)
嶺上開花!
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