千早「おはようございます」
P「おはようさん」
千早「今日の予定はどうなってますか?」
P「ない……な」
千早「いつも通りって事ですか」
P「だな」
千早「お茶でも入れます?」
P「あんがと」
千早「いえ」
P「……前に発売した新曲なんだけどな」
千早「知ってますよ」
P「ん?」
千早「私の出した曲ですから、一応は売れ行きとか気になりますし」
P「あぁ、そうなの」
千早「はい」
P「まぁ、こんな事もあるさ。浮き沈みが激しい業界だし」
P「良い時もあれば、悪い時もあるさ」
千早「……」
千早「いいんです、しょうがない事ですから」
P「実力はあるんだ、だからいつかきっと――」
千早「いつか? きっと?」
P「そ、そうだ分かってくれる人は分かってくれている」
千早「そう言ってきて5年……売れた事なんてないじゃないですよね」
P「そんな事はないだろ」
千早「いえ、分かっているんです。CDが売れない事も……私に実力が無い事も」
P「……」
P「確かに売れはしてないけどな、千早お前には――」
ガチャ
小鳥「おはようございます……」
P「っと、おはようございます」
千早「おはようございます」
小鳥「うーん……頭痛い……」
千早「また、二日酔いですか?」
小鳥「うぅ、そうなのよ……」
P「しっかりして下さいよ音無さん。社長なんだからビシッとしてもらわないと」
小鳥「分かってますけど~」
小鳥「うぅー」
千早「水持ってきますか?」
小鳥「そんな事、我が事務所の唯一のアイドルにさせられないわ」
P「そうですよ、自分で水くらい持ってきて下さい」
小鳥「はーい……」
P「全く音無さんは……トップとしてどうなんだろうな?」
千早「でも高木社長の時も同じ様なものだったと思いますけど?」
P「そういえば、そうだな」
ガチャ
あずさ「遅れてすいませ~ん」
千早「おはようございます」
P「大丈夫ですよ、そもそも俺達が早いだけですし」
あずさ「そうですか?」
P「はい、そもそも事務仕事もそんな無いですし」
あずさ「そうなんですよね~」
小鳥「あっ、あずささんおはようございますー」
P「これで765プロ全員出社ですね」
小鳥「アイドル1人、事務員一人、プロデューサー一人、社長一人なんて前と比べて少なくなっちゃいましたよね」
あずさ「そうですね~」
千早「春香や他のアイドルの皆が全員いたのも5年も前ですから」
小鳥「そうよね、5年も経つのよね……」
千早「……」
あずさ「……」
P「……さっ、こんな事してないで仕事でも始めますか」
小鳥「そうですね、今日も一日頑張りましょう!!」
あずさ「はい~」
――――――
――――
――
P「……これで仕事終わりっと」
小鳥「お疲れ様ですー」
P「あれ? 音無さんまだ事務所に残ってたんですか?」
小鳥「はい」
あずさ「こんな時間まで珍しいですね」
小鳥「だって今日は花の金曜ですよ?」
P「もしかして……また酒ですか?」
小鳥「そのとーりです」
あずさ「うふふ楽しみね~」
小鳥「ほら、あずささんだって期待してたんじゃないですかー」
P「はぁ……分かりました行きますよ」
小鳥「やったー」
P「当然、社長の奢りですよね」
小鳥「えっ?」
P「後は千早が帰ってくるのを――」
ガチャ
千早「お疲れ様です」
P「言ってるそばから戻って来たか」
千早「はい?」
小鳥「ではー、私の奢りのお酒で……カンパーイ!!」
P・あずさ・千早「乾杯」
カン
小鳥「――ッ、プッハ―!!」
あずさ「そんな飲み方してるとまた二日酔いになっちゃいますよ~?」
小鳥「だーいじょぶ、大丈夫ですよー」
千早「本当ですか?」
―――
――
―
小鳥「そう言えば、千早ちゃんは春香ちゃんたちと連絡はとってるの?」
千早「春香とはたまに……」
P「まだ学生だっけか?」
千早「はい、確か今年卒業だったと思います」
あずさ「春香ちゃんの行ってる学校は、お菓子の学校だったかしら?」
千早「はい、お菓子の専門学校ですね」
P「春香のお菓子美味かったもな」
千早「今度、海外に勉強に行くらしいです」
あずさ「頑張ってるのね」
小鳥「うー、それに比べて765プロは……」
あずさ「まぁまぁ」
P「そうですよ、音無さんは頑張ってますよ、多分」
小鳥「多分は余計ですよー」
あずさ「亜美ちゃんと真美ちゃんも頑張ってるそうですよ~」
千早「そうなんですか?」
P「あぁ、この前やよいが来た時に話してましたね」
小鳥「あの亜美ちゃんと、亜美ちゃんが勉強頑張ってるなんてね~」
あずさ「お父さんのお仕事を手伝うために一生懸命だそうです」
P「亜美と真美が勉強を頑張る姿は……」
千早「ちょっと想像できませんね」
あずさ「皆頑張っているのね」
小鳥「そうですね……となれば――」
P「えっ?」
小鳥「私達も頑張らないとですよー!!」
小鳥「では765プロの将来を祝してカンパーイ!!」
千早「またですか……」
小鳥「だーかーらー、私はあれなんですよー、結婚を諦めて、仕事の出来る女にー///」
あずさ「分かります―、分かりますよー小鳥さん///」
小鳥「本当れすかー///」
あずさ「はいー///」
P「やっぱり、こうなったか……」
千早「……うぅ」
P「大丈夫か、千早?」
千早「うぷ……ト、トイレ……」
千早「ゲホッ……ゲホッ……」
P「大丈夫か千早?」
千早「うぷ……大丈夫……じゃないです」
P「ほら、背中さするぞ」
サスサス
千早「……すいません」
千早「……ゲホッ……うっぷ」
P「大丈夫か?」
千早「ぐぷっ……プロデューサー?」
P「なんだ」
千早「……私……怖いんです……」
P「何が?」
千早「……この……今の現状がです」
P「今の現状?」
千早「はい……うぷっ」
P「あぁ、大丈夫か?」
さすさす
P「……今のこの状況か」
千早「……このままだと……事務所が潰れちゃいます……」
P「事務所が……」
千早「そしたら春香や……美希達みたいに……居なくなっちゃいます……」
P「そんなこと……」
千早「事務所が潰れたら……事務所の皆や事務所……プロデューサーが居なくなっちゃいます……」
P「……」
千早「うぷ……」
千早「……うぅ……うぅ」
P「……」
千早「……」
P「……千早?」
千早「……ス―……ス―」
P「……」
P「トイレで寝るなよな……」
―――
――
―
千早(……はぁ、憂鬱だわ)
千早(お酒の席の時の記憶がおぼろげで)
千早(トイレで、プロデューサーに何か言ったってしまったような気がする……)
千早(変な事を言ってないと良いんだけど)
千早「なんて考えてたらもう事務所ね」
千早「すーはーすーはー、よし」
ガチャ
千早「おはようございます」
P「おう、遅いぞ千早」
千早「えっ、す、すいません」
あずさ「おはよう千早ちゃん」
千早「はい」
小鳥「おはようございまーす」
P「遅い!! 遅刻です!!」
小鳥「ひゃっ!? す、すいません?」
P「よしっ、全員集まったな?」
あずさ「はい」
千早「そうですね、これで全員です」
小鳥「うぅ、私社長なのに怒られた……」
P「じゃあ発表します――」
P「ライブをやります!!」
千早・小鳥・あずさ「えっ?」
小鳥「ら、ら、ら、ライブ!?」
あずさ「あのm歌ったり踊ったりするライブですか?」
P「えぇ、アイドルでライブと言ったらあれしかないでしょう」
小鳥「き、規模は?」
P「未定です……ですが、なるべく大きな会場でと考えてます」
あずさ「いつごろやるんですか?」
P「……クリスマスでと、考えてます」
小鳥「く、クリスマス!? あと3か月もないじゃないですか!?」
千早「ライブ……」
P「急なのは分かってます、けどどうにか出来ないですか?」
小鳥「うーん……」
あずさ「どうですか、小鳥さん?」
小鳥「とは言っても、これからスポンサー探して場所確保してですよ……」
P「お願いします音無さん!! いや、社長!!」
小鳥「むぅーん」
千早「お願いします、音無さん。私もライブやりたいです!! お願いします」
小鳥「むぐぐぐ……わ……かりましたぁ!! やりましょう、クリスマスライブ!!」
P「!! ありがとうございます、音無さん!!」
あずさ「あらあら、忙しくなるわ~」
小鳥「あうー……資金調達しなきゃだわ……」
P「よっし、じゃあ早速準備を始めましょう!!」
あずさ「お~!」
千早「はい」
――――――
――――
――
P「なんとか、形にはなってきましたね」
あずさ「そうですね~、だけど重要な――」
P「資金と会場……ですよね」
あずさ「はい、そこが決まらないとどうにも……」
P「資金が決まらないと会場もな……」
ガチャ
小鳥「おはようございますー……」
P「あっ、音無さん、資金の事なんですけど」
小鳥「!! ご、ごめんなさい」
あずさ「どうかしたんですか?」
小鳥「さ、最有力だった企業に、こ、断られちゃいました」
P「えっ!?」
千早「……」
あずさ「そ、それじゃあ」
小鳥「資金不足……ライブは中止……」
P「ま、待って下さい、まだ他にどこか……」
小鳥「私の伝手は全て当たりました」
P「今からでも知らない所に……」
小鳥「落ち目の事務所にそんな急に大金を出してもらえるとは……」
P「……ダメか」
あずさ「お金の事は……どうにもならないわね」
千早「ダメ……なんですか? ライブは……歌は……」
千早「私は、私は……歌えないんですか!?」
「お金なら私が出すわ」
P「い、伊織!?」
伊織「ふふん、そうよ」
小鳥「い、伊織ちゃん? なんでここに? 水瀬グループのお仕事は?」
伊織「小鳥も久しぶりね~、あんたしっかりと社長やってるのー?」
あずさ「どうして伊織ちゃんがここに?」
伊織「どうしてってそれは……」チラッ
千早「水瀬さん……」
伊織「ビジネスの為よ」
P「ビジネス?」
伊織「そっ」
小鳥「伊織ちゃんが、ライブの出資者になってくれるって事?」
伊織「私がと言うより、私の会社ね」
あずさ「でも、大丈夫なの?」
伊織「何がよ?」
P「正直……このライブに出資して大丈夫なのか?」
伊織「何言ってんのよ私はね……あんとと同じで如月千早の実力を知ってる数少ない一人よ」
飯行ってきます
保守ありがとうございました
千早「水瀬さん……」
伊織「このライブは成功する? そうでしょ?」
P「あぁ……絶対!!」
伊織「資金面では私が出資するからあんたちはライブに集中しなさい」
P「おお」
あずさ「ありがとうね~伊織ちゃん」
ムギュムギュ
伊織「ちょ、ちょっとあずさ、抱きつかないでよ」
千早「ありがとう水瀬さん、本当にありがとう」
伊織「そ、そんな事より助けなさーい」
P「これで、大体は終了っと」
千早「お疲れ様です」
P「会場も急に手配したにしては大きな所が取れたぞ」
千早「そうですか」
P「あぁ」
千早「あの……久しぶりに歌を聞いてもらってもいいですか?」
P「歌を?」
千早「ライブは新曲もやりますし……」
千早「それに、この頃聞いてもらってなかったですから」
P「そういえばそうだったな……」
千早「えぇ」
P「いいよ、ここでいいか?」
千早「はい」
千早「すーはー……では――」
ガチャ
小鳥「大変ですプロデューサーさん!?」
P「音無さん!? どうしたんですか?」
千早「会場がダメになりそう?」
P「な、なんでそんな急に!?」
小鳥「それが――」
P「フェアリーが会場を!?」
千早「美希達……」
小鳥「はい、それで内に断りの連絡を……」
P「な、なんで!? だって、美希達はジュピターとの合同ライブだったはずじゃ!!」
小鳥「私にも何が何だか……」
P「まさか、また妨害?」
千早「……」
P「こんなに急には普通ありえません、断固抗議しましょう」
小鳥「は、はい」
P「すまんな千早、歌はまた今度だ」
千早「……えぇ、しょうがないですよね」
テクテク
千早「……」
テク……
千早「……」
千早「……」
スッ
ピッ……ピッ……
prrrrrrrrrrr prrrrrrrrrrr
真「えぇーじゃあライブ無くなっちゃうんですか?」
雪歩「そうなんですぁ?」
あずさ「それがね~、961プロから提案があったのよ~」
雪歩「提案ですかぁ?」
小鳥「その会場を掛けて、ネットで投票するんですって」
真「ネットで投票?」
あずさ「3分間のPVを作って、投票するそうよ」
雪歩「そうなんですかぁ」
小鳥「不思議な事に、急にこの申し出をしてきたのよ」
真「へ~」
小鳥「こんな申し出をしても961プロには何の利益もないのに」
真「そうですよね、このまま961プロはライブをやればいい訳ですし」
雪歩「ま、負けない自信があるんですかねぇ?」
あずさ「そうなのかしら?」
小鳥「けど、そんな事はどーでもいいわ!! この勝負に勝ってライブ会場ゲットよー」
P「あれっ? お前達、来てたのか?」
真「プロデューサー!」
雪歩「お、お久しぶりですぅ」
P「大学の方は忙しくないのか?」
真「忙しいですよーだけど千早がライブやるって聞いて」
雪歩「何か手伝えることがあればと思って……」
P「そうなのか、ありがとうな」
真「PV作るんですよね? 手伝いますよ!」
P「えっ?」
真「体育大学でダンスはずっとやってましたからね、ダンスなら任せて下さい!!」
雪歩「わ、私も手伝えることがあれば」
P「あぁ……ありがとうな、でもいいんだ」
真「……あぁ、もうバックダンサーとか決まっちゃってますよね?」
P「違う違う、バックダンサーは決まってない……というか居ない」
雪歩「へっ?」
P「PVというか、千早が歌うだけにしたんだ。映像も千早が歌っている映像だけ」
小鳥「えぇー!!」
小鳥「だ、だって伊織ちゃんがすんごPV作るって言ってたじゃないですか!!」
P「断りました」
あずさ「断っちゃったんですか? 伊織ちゃんCGですごい事をするって張り切ってましたけど」
P「伊織に任せてたらとてつもない物が出来そうでしたし……」
小鳥「も、も、もったいないですよー! それに負けちゃいますよプロデューサーさん!!」
雪歩「……でも」
真・小鳥・あずさ「?」
雪歩「で、でも、騒がしいのよりそっちの方が千早ちゃんぽい……かなって……」
お風呂行って来ます
保守ってもらえたら嬉しいです
み
き
保守ありがとうございました
真「それも……」
あずさ「そうかしらね~」
小鳥「うぅ、最新CG映像……」
P「そう言ってもらえると助かるよ雪歩」
雪歩「いえ……えへへ」
真「じゃあ何かあったら言って下さい。直ぐに飛んでいきますから」
雪歩「わ、私も」
P「おぉ、ありがとう、必要な時にはそうさせてもらうよ」
――――――
――――
――
千早「はぁ……」
ガチャ
やよい「おはようございまーす」
千早「高槻さん」
やよい「おはようございます千早さん。今日は千早さんだけですか?」
千早「そう……ね、皆ライブの関係で出払ってるわ」
やよい「そうなんですかー」
千早「高槻さんはバイトはどう? もう慣れた?」
やよい「はい、一生懸命バイトしてます!」
やよい「あっ、でも事務所に手伝いに行くの少なくなっちゃって残念なんです」
千早「それは大丈夫よ。高槻さんは自分の事を優先して」
やよい「うっうー、ありがとうございますー」
千早「ふふっ……」
やよい「……? 千早さん大丈夫ですか?」
千早「えっ?」
やよい「今日の千早さんはなんか元気ないかなーって」
千早「元気がない……そう見えるかしら?」
やよい「はい」
千早「そう……かもしれないわね」
千早「ロクにCDが売れない私と、人気グループの美希達が勝負だもの……」
やよい「千早さん……」
千早「怖いの……とても……」
やよい「こわい?」
千早「私に歌の才能がないんじゃないかって……」
千早「それが、それがとても怖いの」
やよい「うっうー……」
千早「ましてや事務所を掛けた大きな勝負だから余計にね」
やよい「ち、千早さんなら大丈夫ですよー」
千早「そう言ってもらえると助かるわ、ありがとう高槻さん」
やよい「うぅー……」
―――――――
――――
――
ガチャ
やよい「うっうー、プロデューサーいますかー?」
P「ん? おっ、やよい久しぶりだな……って今日の昼も来たんじゃないのか?」
やよい「はい、千早さんしかいませんでした―」
P「あぁ、千早からその話は聞いたよ。で、どうしたんだ? 忘れ物でもしたのか?」
やよい「違うんですー」
やよい「千早さんに千早さんの歌は大丈夫だよって言ってほしいんですー」
P「千早に?」
やよい「はい」
P「良く意味が分からないんだが……」
やよい「うぅー」
P「それに、俺が言うより音楽の先生に行ってもらった方が……」
やよい「それじゃあダメなんですー」
P「……大丈夫だって言えばいいのか?」
やよい「はい」
P「なら、やよいの言う事を聞こう」
やよい「本当ですか?」
P「あぁ、やよいがそこまで言うなら」
やよい「良かったです―」
P「……なんか、やよいも立派なお姉さんだな」
やよい「えへへ、私ももう高校生ですから」
P「だよな」
千早「~♪」
千早「……はぁ」
コン
P「お疲れさん」
千早「プ、プロデューサ―!? どうしたんですか、レッスン場に来るなんて?」
P「ん、いや、時間が空いたからさ」
千早「そ、そうなんですか」
P「……」
千早「……」
P「歌わないのか?」
千早「えっ、は、はい、じゃ、じゃあ今から歌いますね」
P「あぁ」
千早「……」
P「……?」
千早「……」
P「どうした?」
千早「……プロデューサーはなんで私を選んだんですか?」
P「はい?」
千早「美希と私の……です」
P「……なんでその話を知ってるんだ?」
千早「美希に聞きました」
――
――――
――――――
美希「千早さん久しぶりなの」
千早「えぇ、久しぶり」
美希「千早さんから電話なんて初めてだから驚いちゃったの」
千早「ごめんなさいね、急に連絡なんかして」
美希「んーん、お仕事あったけど別に大丈夫だよー」
千早「……そう」
千早「実は……ライブ会場を譲ってほしいの」
美希「……やっぱりその話なんだ」
千早「お願い美希。このライブは765プロの――」
美希「絶対、嫌なの!!」
千早「な、何故?」
美希「千早さんはハ二……プロデューサーだけじゃなくアイドルとしてもキラキラと光ろうとしてるの」
美希「そんなの千早さんは欲張りだと思うの! プロデューサーに選ばれただけでも全然いいと思うの!!」
千早「プロデューサーに……選ばれる?」
千早「私が選ばれた訳じゃ……美希と我那覇さんと四条さんが961プロに引き抜かれて行ったんじゃ」
美希「違うよ……社長が言ってたの」
美希「プロデューサーは千早さんを選んだって」
千早「私を?」
美希「響と貴音は961プロに行くのは決まってたけど、最後の一人はプロデューサーが決めたんだって」
千早「……」
美希「……だから、だから美希は千早さんのライブやらせたくないの!」
美希「千早さんだけズルイから美希が社長にお願いしたの」
千早「美希が……?」
美希「そうだよ、美希がお願いしたんだよ」
美希「だから、千早さんにはライブはやらせないよ」
千早「……」
美希「……じゃあ美希はもう帰るから」
千早「……待って美希!」
美希「へっ?」
さよならーそれもいいさーどこかでーげんきでやれよー
千早「美希は……プロデューサーに認められたいんじゃないの?」
美希「そんなの認められたいに決まってるの」
千早「それなら、今回がその機会なんじゃないのかしら?」
美希「……」
千早「私と美希……いやフェアリーでその会場を巡って勝負をするの」
千早「それで私を負かせば、プロデューサーは美希を認めるんじゃない?」
美希「……あはっ☆千早さん面白いの」
美希「いいよ、その勝負のったの」
千早「そう……」
――――――
――――
――
P「そんな事があったのか」
千早「えぇ」
P「それにしても、黒井社長の口の軽さには困ったもんだな……」
千早「……」
千早「……それで、なんで私を選んだんですか?」
千早「聞かせて……もらえませんか?」
P「……そうだな」
P「961プロの移籍の話は3人って事で決まってたんだ」
P「それで響と貴音は上京組で仲も良いから、決まったんだが残りの一人が……」
千早「私と美希ですね」
P「悩んだんだ……けど、美希に行ってもらう事にしたんだ」
P「美希はあんな性格だけどさ……なんでも出来るし、どんなことも輝けるそんな奴だと思うんだ」
千早「……」
P「で、千早は音楽以外は興味が無くてコミュニケ―ションも上手いとは言えない」
千早「……はい」
P「だけど、歌がとても上手で、真摯に歌について考えている」
P「そんな不器用なアイドルだと思うんだ」
P「そんな不器用なアイドルをさ……」
千早「……」
P「理解しているのは、俺くらいだからな」
P「だから俺は、千早を765に残ってもらったんだ」
千早「そうだったんですか」
千早「でも、そんなプロデューサーの期待を裏切ってしまって……」
P「期待?」
千早「CDを出しても売れない、話題にもならない……だってそれはつまり歌の才能がない……期待を裏切って――」
P「そんな事は全くない!!」
千早「でも……」
P「千早のいい所をファンに出せなかったのは俺のミスだ、すまない」
千早「そ、そんな頭を上げて下さい」
P「けど、今回でそれは変わる!! このライブを機会に絶対!!」
千早「プロデューサー……」
P「皆が千早の歌を聞けばきっとトップアイドルになれる! 皆が千早の歌を聞くようになる!」
P「それほど、千早の歌は力がある……と俺は思っているんだ」
千早「……」
P「……」
千早「プロデューサー」
P「なんだ?」
千早「……」
千早「勝ちましょうね」
P「当然だ」
――――――
――――
――
真「あぁ、まだかな? まだかな?」
伊織「落ち着きなさいよ真。女子大生になっても落ち着きなわねー」
真「何をー」
伊織「何よ」
雪歩「あわわ」
やよい「わー、ダメだよ伊織ちゃん」
小鳥「変わりませんねー」
P「ですね」
あずさ「あっ、投票始まりましたよ―」
伊織「ど、どうなのよ?」
真「えっと……」
雪歩「あぅ……」
やよい「うぅ……」
あずさ「負けてますね……」
小鳥「さすがは人気アイドルグループね」
千早「やっぱり……」
P「大丈夫だ、信じろ千早」
千早「……はい」
――――――
――――
――
やよい「あぁ、どんどん離されちゃいます」
小鳥「なんというか、これは……」
P「この投票の速さ……歌を聞かずにフェアリーだけ見て投票してるんじゃ……」
真「そんな!? それじゃあ勝負じゃなくて始めっからどっちを入れるか決めてるって事じゃないですか!?」
雪歩「うぅ……聞いてもらえないなんて……」
あずさ「聞いてもらえないんじゃ、どうしようもないわ」
千早「……」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
響「なぁなぁ貴音どうだ?」
貴音「そうですね、これは……」
美希「美希達の方が勝ってるのー」
律子「これは……勝負って感じじゃないわね……」
美希「えっ?」
貴音「やはりそう思いますか?」
律子「こんな、投票が早いって事は歌を聞かないで投票してるんじゃないかしら?」
響「えぇー、それじゃあ公平な勝負じゃないぞー」
律子「私もそう思うわ……公平じゃない」
美希「……」
貴音「ですが、それは私達へ声援を送っている者たちです」
貴音「私達が両方聞いてもらうように呼びかけてはどうですか?」
響「おー、さすが貴音」
律子「そうね、そうすれば完全とは言えないけど今よりは公平になると思う」
律子「けど、いいの?」
貴音「えぇ、公平に千早と競い合いたいですから」
響「自分もそうだぞー」
律子「美希は?」
美希「そんなの決まってるの……」
―――――――――――――――――
真「わわっ、どんどん差が……」
雪歩「開いちゃいます……」
小鳥「……これは難しいかしら」
あずさ「最後まであきらめないで頑張りましょう」
ピコーン
P「……ん」
千早「なんですか、これ?」
――
貴音『こんにちは皆さん』
響『皆参加してくれてありがとうさ―』
美希『でも一つ、聞いてもらいたい事があるの』
貴音『投票をする際に必ず』
響『両方のPVを見てほしいんだぞ』
貴音『その上でどちらが良いのかを投票して下さい』
美希『ちゃんと公平に比べてほしいの!! どうか、よろしくお願いしますなの』
――
真「美希達……」
あずさ「美希ちゃん達も正直に勝負がしようとしてるのね」
雪歩「……す、少しづつ千早ちゃんの方も投票増えてきてますぅ」
やよい「あっ、本当ですー」
伊織「これならいい勝負なんじゃないの?」
P「微妙なラインだが、千早の方が伸びがある……」
小鳥「あと、少しでフェアリーを抜けるわ……」
あずさ「けど、もう時間も……」
千早「……」
真「……いけ」
雪歩「……いってぇ」
やよい「……いってくださいー」
伊織「……いきなさいよ」
P「……いけ」
千早「……いって」
―――――――
――――
――
響「久しぶりだぞー」
P「あぁ、久しぶり、響、貴音……美希」
貴音「えぇ」
美希「……」
P「勝負が終わったその日に来るなんて、相変わらず急だな」
響「でも自分達、すぐ来たかったんだからしょうがないぞー」
貴音「そうですよ」
P「でもな……勝った陣営が負けた陣営に来るっていうのも……」
貴音「ですが、直ぐに伝えなければ行けない事があるのです」
千早「伝えなければいけない事?」
貴音「そうですよね美希?」
美希「……うん」
――――――
――――
――
―――――――
――――
――
小鳥「はぁー、昨日のライブはすごかったわね―」
あずさ「そうですね~、ファンの人たちも千早ちゃんもすごく盛りあがってたわ~」
P「ですね……」
P「……」
小鳥「いやー、本当良かったわねー」
P「そろそろ、現実的な話でもしますか」
小鳥「……」
P「ライブはしたはいいけど、会場は961プロが用意してくれた予想よりも小さい規模の会場……」
あずさ「……お客さんはいっぱい来てくれたんですけれど」
小鳥「それでも、ギリギリ黒字ラインって所ね……」
千早「……すいませんでした、私のせいで」
P「千早のせいじゃないさ」
あずさ「そうよ千早ちゃん」
P「でも音無さん……この状態だとやはり事務所は……」
小鳥「潮時なのかもしれないですね」
P「やっぱりそうですか?」
小鳥「はい、今回はギリギリ黒字でしたけど年度でみると……」
あずさ「赤字……ですね」
千早「……」
小鳥「千早ちゃんのせいじゃないの、私の経営がヘタだったのよ」
P「……俺も、千早を上手くプロデュース出来なかったです」
あずさ「……」
あずさ「でも――最後にとても素敵なライブが出来ましたよね」
P・小鳥・千早「……」
P「ですね、良い思い出になりました」
小鳥「とても」
千早「えぇ、一生の思い出に」
あずさ「……この事務所がなくなってもきっと大丈夫です」
あずさ「あんな良い思い出が出来たんですから」
P「そうですよね……」
千早「あのライブを思い出せば、どこでも元気でやれます」
千早「そうですよね、プロデューサー?」
P「あぁ」
小鳥「よーっし、じゃあ今日も打ち上げやるわよー!!」
えー、またですかー?
飲みすぎないで下さいよ?
分かってますって。
……
ほら千早も、行こう。
はい。
「ねーねー真美? これ見た?」
「あれっ千早姉ちゃんじゃん」
「この動画、今すっごく話題になってるらしいよ―」
「そうなんだー、って事はもしかしたら、これから765プロも大盛況なんじゃん?」
「まっ、千早姉ちゃんなら当然って感じだけどねー」
「だよねー」
おわり
これで終わりです
こんな時間まで見て下さった方、保守・支援ありがとうございました
あと、スレタイは>>120が気付いたっぽいけどアジカンのソラニンをイメージでした
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません